(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171455
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造
(51)【国際特許分類】
B62M 6/80 20100101AFI20241205BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241205BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241205BHJP
B60L 50/71 20190101ALI20241205BHJP
B62M 6/40 20100101ALI20241205BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241205BHJP
【FI】
B62M6/80
H01M8/04 Z
H01M8/04694
H01M8/00 Z
B60L15/20 Z
B60L50/71
B62M6/40
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088467
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA18
5H125AC07
5H125BA00
5H125FF08
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127BA41
5H127FF13
(57)【要約】
【課題】燃料電池の姿勢が傾くことに起因した生成水の排水性の低下を抑制できる人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造を提供する。
【解決手段】自転車における燃料電池30の連結構造は、人力により車輪を駆動する駆動軸23と、駆動軸23に対してアシスト駆動力を付与するモータ27と、モータ27に対して電力を供給する燃料電池30とを備える自転車に適用される。また、連結構造は、自転車の車体フレーム10に対して燃料電池スタック31を連結する構造であるとともに、連結機構80を有する。連結機構80は、車体フレーム10に対して燃料電池スタック31を相対揺動可能に連結する。また、連結機構80は、直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きθ1が直立姿勢からの車体フレーム10の姿勢の傾きθ2よりも小さくなるように燃料電池スタック31の姿勢の変位を規制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力により車輪を駆動する駆動軸と、前記駆動軸に対してアシスト駆動力を付与するモータと、前記モータに対して電力を供給する燃料電池と、を備える人力駆動式の電動アシスト車両に適用され、前記車両の車体フレームに対して前記燃料電池を連結する構造であって、
水平面上において前記車両が直立している姿勢を直立姿勢とするとき、
前記車体フレームに対して前記燃料電池を相対揺動可能に連結するとともに、前記直立姿勢からの前記燃料電池の姿勢の傾きが前記直立姿勢からの前記車体フレームの姿勢の傾きよりも小さくなるように前記燃料電池の姿勢の変位を規制する連結機構を備える、
人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【請求項2】
前記車体フレームは、前記燃料電池の鉛直方向上方に位置する上フレームを有し、
前記連結機構は、前記上フレームに連結され、前記燃料電池を揺動可能に吊り下げる吊り下げ部を有する、
請求項1に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【請求項3】
前記連結機構は、互いに間隔をあけて配置される複数の前記吊り下げ部を有する、
請求項2に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【請求項4】
前記吊り下げ部は、弾性部材を含む、
請求項2または請求項3に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【請求項5】
前記吊り下げ部は、ボールジョイントを含む、
請求項2または請求項3に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【請求項6】
前記連結機構は、互いに間隔をあけて配置される複数の前記吊り下げ部を有し、
前記吊り下げ部は、前記ボールジョイントと、前記ボールジョイントと前記燃料電池とを連結する伸縮シリンダと、を有する、
請求項5に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【請求項7】
前記車体フレームは、前記燃料電池の鉛直方向下方に位置する下フレームを有し、
前記連結機構は、前記下フレームに対して前記燃料電池を相対揺動可能に支持する支持機構を備える、
請求項2に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動アシスト自転車(以下、自転車という)が記載されている。特許文献1に記載の自転車は、フレーム、フレームに取り付けられた駆動軸、駆動軸を介して回動可能に支持されたクランク、及び駆動軸に連結され、クランクの回動駆動を補助する電動モータを備える。また、自転車は、電動モータに供給される電力を発電する燃料電池と、燃料電池を保持するケーシングとを備える。フレームは、サドル部を支持する立フレーム、ハンドル部を支持するヘッドパイプ、及び立フレームとヘッドパイプとを連結する上パイプ及び下パイプを備える。ケーシングは、立フレームの前面のうち上パイプと下パイプとの間の部分に固定されている。燃料電池は、複数の単セルを積層して構成されたスタック部を備える。単セルは、立フレームの軸線方向に沿って積層されている。
【0003】
燃料電池においては、単セルの発電部において反応ガスの電気化学反応により水が生成される。こうして生成された水(以下、生成水という)は、単セルに供給される反応ガスの流動圧や、生成水の自重によって単セルのガス流路から、スタック部を貫通するマニホルド孔を通じてスタック部の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自転車を含む従来の人力駆動式の電動アシスト車両では、路面の傾斜や、走行姿勢の変化などによってフレームと一緒にスタック部の姿勢が傾く。この場合、スタック部の姿勢が傾くことに起因して単セルからの生成水の排水性が低下することで、燃料電池の発電性能が低下するなどの問題が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造は、人力により車輪を駆動する駆動軸と、前記駆動軸に対してアシスト駆動力を付与するモータと、前記モータに対して電力を供給する燃料電池と、を備える人力駆動式の電動アシスト車両に適用され、前記車両の車体フレームに対して前記燃料電池を連結する構造であって、水平面上において前記車両が直立している姿勢を直立姿勢とするとき、前記車体フレームに対して前記燃料電池を相対揺動可能に連結するとともに、前記直立姿勢からの前記燃料電池の姿勢の傾きが前記直立姿勢からの前記車体フレームの姿勢の傾きよりも小さくなるように前記燃料電池の姿勢の変位を規制する連結機構を備える。
【0007】
同構成によれば、直立姿勢から車体フレームの姿勢が傾いた際に、連結機構により、車体フレームに対して燃料電池が揺動するとともに直立姿勢からの燃料電池の姿勢の傾きが車体フレームの姿勢の傾きよりも小さくなる。したがって、燃料電池の姿勢が傾くことに起因した生成水の排水性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る連結機構を備える電動アシスト自転車の側面図である。
【
図2】
図2は、燃料電池スタックの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る連結機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図5を参照して、人力駆動式の電動アシスト車両の連結構造を、電動アシスト自転車(以下、自転車という)の連結構造として具体化した第1実施形態について説明する。
【0010】
<自転車>
まず、自転車の構造について説明する。
以降において、自転車の前後方向及び車幅方向をそれぞれ単に前後方向L及び車幅方向Wとし、前後方向Lにおける前方及び後方をそれぞれ単に前方及び後方として説明する。また、水平面上において自転車が直立している姿勢での上下方向を単に上下方向Zとし、上下方向Zにおける上方及び下方をそれぞれ単に上方及び下方として説明する。
【0011】
図1に示すように、自転車は、車体フレーム10、ハンドル17、フロントフォーク18、サドル19、前輪20、後輪21、駆動部29、燃料電池30、及び連結機構80を備える。
【0012】
車体フレーム10は、上下方向Zに延びる筒状の前フレーム11と、前フレーム11の後面から後方に延びるダウンフレーム12と、ダウンフレーム12の後端から上方に延びる立フレーム13とを有する。また、車体フレーム10は、一対の下フレーム14(
図4参照)と、一対の上フレーム15(
図4参照)と、一対の上フレーム15の下面に固定される取付部16とを有する。
【0013】
前フレーム11は、前フレーム11の軸線を中心にフロントフォーク18を回動可能に支持している。
立フレーム13の前面には、ホルダ部13aが固定されている。立フレーム13の上端には、サドル19が固定されている。
【0014】
一対の下フレーム14は、ダウンフレーム12の後端から後方に延びるとともに、車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて設けられている。
一対の上フレーム15は、立フレーム13から後方に延びるとともに、車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて設けられている。上フレーム15は、立フレーム13の上部から後方に延びる第1フレーム15aと、第1フレーム15aの後端から後方に延びるとともに下フレーム14の後端に連結される第2フレーム15bとを有する。第1フレーム15aは、立フレーム13の延在方向と直交する方向に沿って延在している。一対の第1フレーム15aの下面には、車幅方向Wに延びる取付部16が固定されている。
【0015】
フロントフォーク18は、前フレーム11に挿入される筒状の基端部18aと、基端部18aの下端から車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて下方に延びる一対のフォーク部18bとを有する。基端部18aは、前フレーム11により、前フレーム11の軸線を中心に回動可能に支持されている。基端部18aの上端には、ハンドル17から延びるハンドルポスト17aが固定されている。
【0016】
前輪20は、一対のフォーク部18bの間においてフォーク部18bに対して回動可能に設けられている。
後輪21は、一対の下フレーム14及び一対の上フレーム15の間において、下フレーム14及び上フレーム15に対して回動可能に設けられている。後輪21には、スプロケット21cが同一軸線上に位置するように連結されている。
【0017】
駆動部29は、ダウンフレーム12及び下フレーム14の下方においてダウンフレーム12及び下フレーム14に固定されている。駆動部29は、クランクセット22と、一対のペダル26と、ハウジング28と、ハウジング28に収容されるモータ27とを有する。クランクセット22は、車幅方向Wに沿って延びる駆動軸23と、駆動軸23の車幅方向Wの両端に固定される一対のクランク24と、駆動軸23の車幅方向Wの両端に固定されるチェーンリング25とを有する。
【0018】
駆動軸23は、ハウジング28に設けられた軸受けにより、車幅方向Wに沿って延びる軸線を中心に回動可能に支持されている。クランク24には、ペダル26が取り付けられている。チェーンリング25は、図示しないチェーンを介して、スプロケット21cに連結されている。
【0019】
モータ27は、駆動軸23に対してアシスト駆動力を付与する。モータ27の出力軸は、図示しない減速ギアを介して駆動軸23に連結されている。
<燃料電池30>
次に、燃料電池30について説明する。
【0020】
図1に示すように、燃料電池30は、電気化学反応により発電するとともに、モータ27に対して電力を供給する。燃料電池30は、キャニスタ30aと、燃料電池スタック31と、エアコンプレッサ(図示略)と、制御装置(図示略)とを備える。
【0021】
キャニスタ30aは、燃料ガスが高圧状態で充填されるものであり、図示しない可撓性のホースを介して燃料電池スタック31に対して燃料ガスを供給する。キャニスタ30aは、ホルダ部13aに収容される。
【0022】
コンプレッサは、酸化剤ガスとしての外気を、図示しない可撓性のホースを介して燃料電池スタック31に対して圧送するものである。
燃料電池スタック31、エアコンプレッサ(図示略)、及び燃料電池の各種制御を実行する制御装置(図示略)は、立フレーム13、下フレーム14、上フレーム15、及び後輪21によって囲まれる収容空間Sに収容される。燃料電池スタック31は、車体フレーム10に連結されるとともに、車体フレーム10に固定されたハウジング90内に収容されている。ハウジング90は、立フレーム13の後方であり、上フレーム15と下フレーム14との間に位置する。
【0023】
図2に示すように、燃料電池スタック31は、積層体32と、ケース70と、前側エンドプレート71と、後側エンドプレート72とを有する。
積層体32は、燃料ガス、冷却媒体、及び酸化剤ガスを積層体32内にそれぞれ導入するための導入孔34,36,38と、積層体32内の燃料ガス、冷却媒体、及び酸化剤ガスをそれぞれ外部へ排出するための排出孔35,37,39とを有する。積層体32は、前後方向Lにおいて単セル33が複数積層されて構成されている。
【0024】
図3に示すように、単セル33は、発電部41と、発電部41を囲む電気絶縁性の枠部材40と、発電部41及び枠部材40を挟持するアノード側セパレータ50及びカソード側セパレータ60とを有する。
【0025】
発電部41は、図示しない固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の両面に設けられた図示しない電極とを有する。電極は、電解質膜に接合された図示しない触媒層と、触媒層に接合された図示しないガス拡散層とを有する。
【0026】
枠部材40は、孔34,35,36,37,38,39をそれぞれ構成する貫通孔44,45,46,47,48,49を有する。
枠部材40は、中央に開口部40aを有する。開口部40aの内周縁部には、前後方向Lの一側(
図3の前側)から発電部41の周縁部が接合されている。
【0027】
カソード側セパレータ60は、発電部41のカソード電極側(
図3の前側)に設けられている。
カソード側セパレータ60は、発電部41に対向する第1面60aと、第1面60aとは反対側の面である第2面60bとを有する。
【0028】
カソード側セパレータ60は、孔34,35,36,37,38,39をそれぞれ構成する貫通孔64,65,66,67,68,69を有する。
カソード側セパレータ60は、酸化剤ガスが流通する複数の溝流路61と、冷却媒体が流通する複数の溝流路62とを有する。溝流路61は、第1面60aに設けられている。溝流路62は、第2面60bに設けられている。なお、
図3には、カソード側セパレータ60において、複数の溝流路61が形成された部分の外縁と、複数の溝流路62が形成された部分の外縁とをそれぞれ簡略化して示している。
【0029】
アノード側セパレータ50は、発電部41のアノード電極側(
図3の後側)に設けられている。
アノード側セパレータ50は、発電部41に対向する第1面50aと、第1面50aとは反対側の面である第2面50bとを有する。
【0030】
アノード側セパレータ50は、孔34,35,36,37,38,39をそれぞれ構成する貫通孔54,55,56,57,58,59を有する。
アノード側セパレータ50は、燃料ガスが流通する複数の溝流路51と、冷却媒体が流通する複数の溝流路52とを有する。溝流路51は、第1面50aに設けられている。溝流路52は、第2面50bに設けられている。なお、
図3には、アノード側セパレータ50において、複数の溝流路51が形成された部分の外縁と、複数の溝流路52が形成された部分の外縁とをそれぞれ簡略化して示している。
【0031】
図2に示すように、ケース70は、積層体32の外周面を取り囲んでいる。ケース70の外周面には、取付部73が設けられている。
取付部73は、ケース70の上面に設けられる上側取付部73aと、ケース70の下面に設けられる下側取付部73bとを有する。
【0032】
上側取付部73aは、車幅方向Wにおけるケース70の上面の中央に1つ設けられている。
下側取付部73bは、車幅方向Wにおけるケース70の下面の両端に1つずつ設けられている。
【0033】
エンドプレート71,72は、ケース70の前側及び後側の開口をそれぞれ閉塞している。
後側エンドプレート72は、孔34,35,36,37,38,39にそれぞれ連通される貫通孔74,75,76,77,78,79を有する。
【0034】
<連結機構80>
次に、連結機構80について詳しく説明する。
図4に模式的に示すように、連結機構80は、車体フレーム10に対して燃料電池スタック31を相対揺動可能に連結する。また、連結機構80は、水平面上において自転車が直立している姿勢(以下、直立姿勢という)からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きが直立姿勢からの車体フレーム10の姿勢の傾きよりも小さくなるように燃料電池スタック31の姿勢の変位を規制する。
【0035】
連結機構80は、取付部16に連結される吊り下げ部81と、下フレーム14に連結される支持機構85とを有する。
吊り下げ部81は、取付部16に対して燃料電池スタック31を揺動可能に吊り下げる。吊り下げ部81は、弾性部材であることが好ましい。本実施形態では、弾性部材は、コイルばねである。
【0036】
吊り下げ部81の下端は、ケース70の上側取付部73a(
図3参照)に連結されている。
支持機構85は、下フレーム14に対して燃料電池スタック31を相対揺動可能に支持する。支持機構85は、弾性部材であることが好ましい。本実施形態では、弾性部材は、コイルばねである。
【0037】
一対の支持機構85が、一対の下フレーム14とケース70の下側取付部73b(
図3参照)とを連結している。
直立姿勢において、カソードガスを導入する導入孔36は、カソードガスを排出する排出孔37よりも上方に位置している。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5に模式的に示すように、直立姿勢から車体フレーム10の姿勢が傾いた際に、連結機構80により、車体フレーム10に対して燃料電池スタック31が揺動する。このため、直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きθ1が車体フレーム10の姿勢の傾きθ2よりも小さくなる。
【0039】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1-1)連結機構80は、車体フレーム10に対して燃料電池スタック31を相対揺動可能に連結する。また、連結機構80は、直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きθ1が直立姿勢からの車体フレーム10の姿勢の傾きθ2よりも小さくなるように燃料電池スタック31の姿勢の変位を規制する。
【0040】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、燃料電池スタック31の姿勢が傾くことに起因した生成水の排水性の低下を抑制できる。
(1-2)連結機構80は、上フレーム15に連結され、燃料電池スタック31を揺動可能に吊り下げる吊り下げ部81を有する。
【0041】
こうした構成によれば、吊り下げ部81を起点として燃料電池スタック31が揺動することで上フレーム15に対して燃料電池スタック31が相対揺動する。これにより、車体フレーム10の上フレーム15を有効に利用することができる。
【0042】
(1-3)吊り下げ部81は、弾性部材を含む。
こうした構成によれば、直立姿勢から車体フレーム10の姿勢が傾いた際に、弾性部材が弾性変形する。このため、車体フレーム10に対して燃料電池スタック31が揺動するとともに直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きθ1が車体フレーム10の姿勢の傾きθ2よりも小さくなる。したがって、連結機構80の構成を簡単にすることができる。
【0043】
(1-4)連結機構80は、下フレーム14に対して燃料電池スタック31を相対揺動可能に支持する支持機構85を備える。
こうした構成によれば、燃料電池スタック31が下フレーム14に対して支持機構85により燃料電池スタック31を相対揺動可能に支持される。このため、直立姿勢から車体フレーム10の姿勢が傾いた際に、直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きθ1を車体フレーム10の姿勢の傾きθ2よりも小さくすることが容易にできる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、
図6~
図8を参照して、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、連結機構の構成と、支持機構が設けられていない点で第1実施形態と相違している。
【0045】
なお、以降において、第2実施形態の構成のうち第1実施形態の構成と同一または対応する構成については、第1実施形態の構成の符号「**」に「100」を加算した符号「1**」を付すことで重複する説明を省略することがある。
【0046】
図6に示すように、連結機構180は、車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて設けられる2つの上側ボールジョイント182と、2つの伸縮シリンダ183と、連結部材184と、1つの下側ボールジョイント185とを有する。
【0047】
<上側ボールジョイント182>
上側ボールジョイント182は、取付部116の下面に連結されたボールスタッド182aと、ボールスタッド182aのボール部に対して球面接触するソケット182bとを有する。
【0048】
<伸縮シリンダ183>
伸縮シリンダ183は、ソケット182bから下方に延びるロッド183aと、ロッド183aの下端に連結されたピストン183bと、ピストン183bを収容するシリンダ183cとを有する。ピストン183bは、シリンダ183c内において往復動可能に設けられている。
【0049】
2つのシリンダ183cの下端には、連結部材184が連結されている。
<下側ボールジョイント185>
下側ボールジョイント185は、連結部材184の下面に連結されたボールスタッド185aと、ボールスタッド185aのボール部に対して球面接触するソケット185bとを有する。
【0050】
ボールスタッド185aは、車幅方向Wにおいて自転車の中央位置であり、且つ2つの上側ボールジョイント182の中間に位置している。ソケット185bの下端は、ケース70の上面に連結されている。
【0051】
本実施形態では、上側ボールジョイント182と伸縮シリンダ183とにより、吊り下げ部181が構成される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0052】
図7に模式的に示すように、直立姿勢から車体フレーム110の姿勢が傾いた際に、上側ボールジョイント182を介して、車体フレーム110に対して複数の伸縮シリンダ183が揺動する。このとき、上下方向Zにおけるボールスタッド182aと連結部材184との間の距離が変化した場合には、伸縮シリンダ183が伸縮することによって、燃料電池スタック31の姿勢が維持される。
【0053】
また、
図8に模式的に示すように、伸縮シリンダ183が最大まで延びた場合には、下側ボールジョイント185を介して、車体フレーム110に対して燃料電池スタック31が揺動することによって、燃料電池スタック31の姿勢が維持される。
【0054】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態に係る連結構造によれば、第1実施形態の効果(1-1)及び(1-2)に加え、新たに以下の効果を奏することができる。
【0055】
(2-1)連結機構180は、車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて配置される複数の吊り下げ部181を有する。
こうした構成によれば、燃料電池スタック31が車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて配置される複数の吊り下げ部181により吊り下げられる。このため、直立姿勢から車体フレーム110の姿勢が傾いた際に、直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きを車体フレーム110の姿勢の傾きよりも小さくすることが容易にできる。
【0056】
(2-2)吊り下げ部181は、ボールジョイント182,185を含む。
こうした構成によれば、直立姿勢から車体フレーム110の姿勢が傾いた際に、ボールジョイント182,185によって、車体フレーム110に対して燃料電池スタック31が揺動する。さらに、直立姿勢からの燃料電池スタック31の姿勢の傾きが車体フレーム110の姿勢の傾きよりも小さくなる。したがって、連結機構180の構成を簡単にすることができる。
【0057】
(2-3)連結機構180は、車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて配置される複数の吊り下げ部181を有する。吊り下げ部181は、ボールジョイント182と、ボールジョイント182と燃料電池スタック31とを連結する伸縮シリンダ183とを有する。
【0058】
こうした構成によれば、吊り下げ部181がボールジョイント182と伸縮シリンダ183とを有する。このため、複数のボールジョイント182を有しながらも、直立姿勢から車体フレーム110の姿勢が傾いた際に、車体フレーム110に対して燃料電池スタック31を揺動させることができる。
【0059】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
・第1実施形態において、支持機構85を省略してもよい。
・第2実施形態において、下側ボールジョイント185を省略することもできる。この場合、伸縮シリンダ183をケース70の上面に連結させればよい。
【0061】
・吊り下げ部は、3つ以上設けられていてもよい。
・第2実施形態において、上側ボールジョイント182及び伸縮シリンダ183を省略し、下側ボールジョイント185によって吊り下げ部を構成するようにしてもよい。
【0062】
・上記各実施形態では、吊り下げ部81,181によって、燃料電池スタック31を上フレーム15から吊り下げるようにしたが、連結機構の構成はこれに限定されない。例えば、下フレーム14の上面に連結機構を設けるとともに、連結機構によってケース70を下方から支持するようにしてもよい。この場合、連結機構としては、例えば、複数のジンバルにより構成される機械式ジャイロであってもよい。
【0063】
・単セルの積層方向は、前後方向Lに限定されず、任意の方向であってもよい。例えば、単セルの積層方向を車幅方向Wとしてもよい。
<付記>
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
【0064】
[付記1]人力により車輪を駆動する駆動軸と、前記駆動軸に対してアシスト駆動力を付与するモータと、前記モータに対して電力を供給する燃料電池と、を備える人力駆動式の電動アシスト車両に適用され、前記車両の車体フレームに対して前記燃料電池を連結する構造であって、水平面上において前記車両が直立している姿勢を直立姿勢とするとき、前記車体フレームに対して前記燃料電池を相対揺動可能に連結するとともに、前記直立姿勢からの前記燃料電池の姿勢の傾きが前記直立姿勢からの前記車体フレームの姿勢の傾きよりも小さくなるように前記燃料電池の姿勢の変位を規制する連結機構を備える、人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【0065】
[付記2]前記車体フレームは、前記燃料電池の鉛直方向上方に位置する上フレームを有し、前記連結機構は、前記上フレームに連結され、前記燃料電池を揺動可能に吊り下げる吊り下げ部を有する、[付記1]に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【0066】
[付記3]前記連結機構は、互いに間隔をあけて配置される複数の前記吊り下げ部を有する、[付記2]に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
[付記4]前記吊り下げ部は、弾性部材を含む、[付記2]または[付記3]に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【0067】
[付記5]前記吊り下げ部は、ボールジョイントを含む、[付記2]または[付記3]に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
[付記6]前記連結機構は、互いに間隔をあけて配置される複数の前記吊り下げ部を有し、前記吊り下げ部は、前記ボールジョイントと、前記ボールジョイントと前記燃料電池とを連結する伸縮シリンダと、を有する、[付記5]に記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【0068】
[付記7]前記車体フレームは、前記燃料電池の鉛直方向下方に位置する下フレームを有し、前記連結機構は、前記下フレームに対して前記燃料電池を相対揺動可能に支持する支持機構を備える、
[付記2]~[付記6]のいずれか1つに記載の人力駆動式の電動アシスト車両における燃料電池の連結構造。
【符号の説明】
【0069】
10,110…車体フレーム
11…前フレーム
12…ダウンフレーム
13…立フレーム
13a…ホルダ部
14…下フレーム
15…上フレーム
15a…第1フレーム
15b…第2フレーム
16,116…取付部
17…ハンドル
17a…ハンドルポスト
18…フロントフォーク
18a…基端部
18b…フォーク部
19…サドル
20…前輪
21…後輪
21c…スプロケット
22…クランクセット
23…駆動軸
24…クランク
25…チェーンリング
26…ペダル
27…モータ
28…ハウジング
29…駆動部
30…燃料電池
30a…キャニスタ
31…燃料電池スタック
32…積層体
33…単セル
34,36,38…導入孔
35,37,39…排出孔
40…枠部材
40a…開口部
41…発電部
44~49…貫通孔
50…アノード側セパレータ
50a…第1面
50b…第2面
51…流路
52…流路
54~59…貫通孔
60…カソード側セパレータ
60a…第1面
60b…第2面
61…流路
62…流路
64~69…貫通孔
70…ケース
71…前側エンドプレート
72…後側エンドプレート
73…取付部
73a…上側取付部
73b…下側取付部
74~79…貫通孔
80,180…連結機構
81,181…吊り下げ部
85…支持機構
90…ハウジング
182…ボールジョイント
182a…ボールスタッド
182b…ソケット
183…伸縮シリンダ
183a…ロッド
183b…ピストン
183c…シリンダ
184…連結部材
185…下側ボールジョイント
185a…ボールスタッド
185b…ソケット