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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171463
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光伝送装置及び光伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/073 20130101AFI20241205BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20241205BHJP
   G01M 11/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04B10/073
H04J14/02
G01M11/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088481
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛二
(72)【発明者】
【氏名】川西 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 智裕
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA12
5K102AA42
5K102AD01
5K102AK02
5K102LA06
5K102LA11
5K102LA22
5K102LA53
5K102PA02
5K102PD14
5K102PH13
5K102PH49
(57)【要約】
【課題】光伝送路のゼロ分散波長を既設装備で特定する光伝送装置及び光伝送方法を提供することを目的とする。
【解決手段】光伝送装置は、少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信する送信部と、前記別の光伝送装置で計測された、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信する送信部と、
前記別の光伝送装置で計測された、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、
を有する光伝送装置。
【請求項2】
中心波長を空けた所定の単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に複数の異なる単位波長帯で送信する送信部と、
前記別の光伝送装置で計測された、前記複数の異なる単位波長帯での前記疑似信号光の前記中心波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、
を有する光伝送装置。
【請求項3】
複数の異なる波長を単位波長間隔ずつ空けた所定の波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信する送信部と、
前記別の光伝送装置で計測された、前記所定の波長帯に空けた前記複数の異なる波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、
を有する光伝送装置。
【請求項4】
上流の光伝送装置から上流の光伝送路を介して送信された、少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を下流の光伝送路に透過する透過部と、
前記上流の光伝送路で、前記少なくとも一つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光を遮断する遮断部と、を有し、
前記上流の光伝送装置が、前記下流の光伝送路を介して接続される下流の光伝送装置で計測された、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生した前記FWMによるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記下流の光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部を含む、
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記FWMによる前記クロストーク光パワーのピーク値に基づいて、前記ゼロ分散波長を特定する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項6】
前記疑似信号光を発生する光源は、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項7】
前記光伝送装置に入力された信号光を増幅して前記光伝送路に入力する増幅部と、
前記ゼロ分散波長に基づいて、前記光伝送路への入力パワーを前記増幅部に設定するパワー設定部と、
をさらに有する請求項1から3のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項8】
前記光伝送路は、DSF(Dispersion Shifted Fiber)を含む、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項9】
少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信し、
前記別の光伝送装置で、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーを計測し、
前記クロストーク光パワーの計測値に応じた情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する、
光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は光伝送装置及び光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長が異なる複数の光信号を波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)し、光ファイバ内を伝送する通信技術が知られている(例えば特許文献1参照)。また、光ファイバのゼロ分散波長を測定する技術も知られている(例えば特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-290360号公報
【特許文献2】特開平5-180729号公報
【特許文献3】米国特許第5557694号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した光ファイバには様々な種別がある。例えばSMF(Single-Mode Fiber:シングルモードファイバ)、DSF(Dispersion Shifted Fiber:分散シフトファイバ)、NZ-DSF(NonZero-DSF:非零分散シフトファイバ)といった光ファイバが光伝送路として利用される。
【0005】
ところで、DSFやNZ-DSFといった光伝送路のゼロ分散波長を実測すると、ゼロ分散波長が15nm(ナノメートル)程度の範囲内で大きくばらつくことがある。ゼロ分散波長の実測値によって光伝送路への光信号の入力パワーの設計値が固定的に決定されるため、ゼロ分散波長がばらつくと、ゼロ分散波長の実測値に応じて入力パワーの大きさを変えるなどの対処が求められる。
【0006】
例えばゼロ分散波長を監視し、監視結果に応じて適応的に入力パワーを決定することも想定される。この場合、3波長以上(例えば4波長など)のOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を使用すれば、JIS C 6827:2015で示された2次以上(例えば3次など)の近似多項式に基づいて、ゼロ分散波長を監視することができる。しかしながら、ROADM(Reconfigurable. Optical Add/Drop Multiplexer)といった光伝送装置に3波長以上のOTDRを追加的に実装する場合、OTDRに3波長以上の光源を実装することに伴う費用負担が発生する。
【0007】
そこで、1つの側面では、光伝送路のゼロ分散波長を既設装備で特定する光伝送装置及び光伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、光伝送装置は、少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信する送信部と、前記別の光伝送装置で計測された、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
光伝送路のゼロ分散波長を既設装備で特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】光ネットワークの一例である。
図2】ROADMのブロック図の一例である。
図3】(a)はROADM(送信側)のCPUの機能構成の一例である。(b)はROADM(受信側)のCPUの機能構成の一例である。
図4】ROADM(送信側)とROADM(受信側)の各フローチャートである。
図5】疑似信号光の段階的送信とクロストーク光の一例を説明する図である。
図6】疑似信号光の光パワーと四光波混合のクロストーク量の関係を説明するグラフである。
図7】S帯の疑似信号光とC帯の疑似信号光の段階的送信の一例を説明する図である。
図8】(a)は疑似信号光の一括送信の一例を説明する図である。(b)は疑似信号光の一括受信とクロストーク光の一例を説明する図である。
図9】光ネットワークの他の一例である。
図10】ILAのブロック図の一例である。
図11】(a)はROADMから送信されてILAが受信する疑似信号光とクロストーク光の一例を説明する図である。(b)はILAから送信されてROADMが受信する疑似信号光とクロストーク光の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、光ネットワークNWは複数のROADM装置(以下、単にROADMという)100,200を含んでいる。ROADM100は光伝送装置の一例である。ROADM200は別の光伝送装置の一例である。ROADM100は第1局舎10に設置される。ROADM200は第2局舎20に設置される。ROADM100,200は光伝送路F1,F2によって互いに接続されている。光伝送路F1,F2はDSFをであってもよいし、NZ-DSFであってもよい。
【0013】
詳細は後述するが、ROADM100は空きスロットとして中心波長を空けた所定の単位波長帯に属する複数のASE光(Amplified Spontaneous Emission:自然放射増幅光)を疑似信号光として段階的にROADM200に送信する。これにより、疑似信号光は光伝送路F1の上流に位置するROADM100から光伝送路F1の下流に位置するROADM200に導かれる。
【0014】
また、ROADM100はOSC(Optical Supervisory Channel)光をROADM200に送信し、ROADM200から送信されたOSC光を受信する。ROADM100が送信するOSC光はROADM200に疑似信号光を送信することを予告する送信予告を含んでいる。また、このOSC光はFWM(Four-Wave Mixing:四光波混合)現象により生じるクロストークのクロストーク量の測定を指示する測定指示を含んでいる。クロストーク量はFWMによるクロストーク光パワー(具体的には後述するクロストーク光の光パワー)の情報の一例である。一方、ROADM100が受信するOSC光はクロストーク量を測定値として含んでいる。ROADM100は、クロストーク量に基づいて、クロストーク量のピークを検出し、検出したピークに対応する波長をゼロ分散波長として特定する。
【0015】
図2を参照して、ROADM100の詳細について説明する。なお、ROADM200についてはROADM100と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0016】
ROADM100は、OSC通信部(以下、単にOSCという)110とASE光源120とWSS(Wavelength Selective Switch)130とを備えている。また、ROADM100は、CPU(Central Processing Unit)140とOCM(Optical channel monitor)150とEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)160とを備えている。OCM150には光スイッチ151が接続されている。なお、ASE光源120とWSS130とによって疑似信号光を送信する送信部を実現することができる。CPU140によってROADM100の動作全体を制御する制御部を実現することができる。EDFA160によって増幅部を実現することができる。
【0017】
CPU140は、OSC110、ASE光源120、WSS130、OCM150、EDFA160と電気的に接続されている。CPU140は、電気的な制御信号により、OSC110、ASE光源120、WSS130、OCM150、EDFA160の各動作を制御する。なお、CPU140に代えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)を制御部として採用してもよい。
【0018】
OSC110は光スプリッタ12と光ファイバ13を介して光学的に接続されている。光スプリッタ12は光ファイバ11上に設けられている。また、OSC110は光スプリッタ22と光ファイバ23を介して光学的に接続されている。光スプリッタ22は光ファイバ21上に設けられている。OSC110は例えば光トランシーバを含んでいる。光トランシーバにより、OSC110はOSC光を送信することができる。また、光トランシーバにより、OSC110はROADM200から送信されたOSC光を受信することができる。
【0019】
例えば、OSC110は、CPU140による制御に基づいて、ROADM200に向けたOSC光Lxを送信する。OSC光Lxは疑似信号光の送信予告を含んでいる。OSC光LxはROADM200に向けて光ファイバ11内を透過する。また、OSC110は、ROADM200から送信されて光ファイバ21を透過するOSC光Lyを受信する。OSC光LyはROADM200が測定したクロストーク量を含んでいる。
【0020】
光ファイバ11上には光スプリッタ14,15が設けられている。光スプリッタ14,15は光スプリッタ12の下流に設けられている。光ファイバ21上には光スプリッタ24,25が設けられている。光スプリッタ24,25は光スプリッタ22の上流に設けられている。
【0021】
光スプリッタ14,15,24,25はいずれも光スイッチ151と光学的に接続されている。具体的には、光スプリッタ14は光ファイバ16を介して光スイッチ151と接続されている。光スプリッタ15は光ファイバ17を介して光スイッチ151と接続されている。光スプリッタ24は光ファイバ26を介して光スイッチ151と接続されている。光スプリッタ25は光ファイバ27を介して光スイッチ151と接続されている。
【0022】
ASE光源120はWSS130と光学的に接続されている。具体的には、ASE光源120は光ファイバ31を介してWSS130と接続されている。ASE光源120は第1ASE光源121と第2ASE光源122とを含んでいる。第1ASE光源121はS帯(Short-wavelength-band)のASE光を出射する。第2ASE光源122はC帯(Conventional-band)のASE光を出射する。第1ASE光源121と共に、または、第1ASE光源121に代えて、L(Long-wavelength-band)帯のASE光を出射する第3ASE光源をASE光源120に設けてもよい。ASE光源120は、CPU140による制御に基づいて、S帯とC帯のどちらかのASE光Lzを選択的に出射する。
【0023】
WSS130は光ファイバ11と光ファイバ21の両方に跨って配置される。より詳しくは、WSS130は光スプリッタ15と光伝送路F1との間、及び光スプリッタ24と光伝送路F2との間の両方に跨って配置される。WSS130は設定に応じて波長ごとに方路を選択する。例えば、OSC光Lxが光スプリッタ15からWSS130に入力された場合、WSS130はOSC光Lxを光伝送路F1に導く方路を選択する。OSC光Lyが光伝送路F2からWSS130に入力された場合、WSS130はOSC光Lyを光スプリッタ24に導く方路を選択する。
【0024】
また、WSS130は、ASE光Lzが入力されると、CPU140による波長設定の制御に基づいて、ASE光Lzから疑似信号光Lpsを生成する。例えば、WSS130は、C帯に属する複数の波長の中から連続する20波長程度の波長を単位波長帯として選択し、単位波長帯における中心波長を空けた疑似信号光LpsをASE光Lzから生成する。WSS130は、疑似信号光Lpsを生成すると、疑似信号光Lpsを光伝送路F1に導く。これにより、疑似信号光LpsはROADM100からROADM200に導かれる。
【0025】
なお、波長が異なる複数の光信号を多重化したWDM光がWSS130に入力された場合、WSS130は設定に応じてWDM光に含まれる一部の波長の光信号を分岐部(drop)に導く。挿入部(add)から所定の波長の光信号がWSS130に入力された場合、WSS130はこの光信号をWDM光に合波して光スプリッタ24に導く。
【0026】
EDFA160は光ファイバ11と光ファイバ21の両方に跨って配置される。より詳しくは、EDFA160は光スプリッタ14,15間と光スプリッタ24,25間の両方に跨って配置される。EDFA160は第1増幅部161と第2増幅部162と減衰部163とを含んでいる。減衰部163は第2増幅部162の出力端と接続されている。減衰部163は例えばVOA(Variable Optical Attenuator)によって実現することができる。第1増幅部161は光スプリッタ14,15間に配置される。第2増幅部162と減衰部163は光スプリッタ24,25間に配置される。第1増幅部161は、CPU140によるパワー設定の制御に基づいて、OSC光Lxを増幅する。第2増幅部162は、CPU140によるパワー設定の制御に基づいて、OSC光Lyを増幅する。減衰部163は、CPU140による制御に基づいて、第2増幅部162で増幅された後のOSC光Lyの光パワーを所望の伝送路入力パワーになるように調整する。なお、WDM光が光ファイバ11や光ファイバ21を透過する場合、第1増幅部161や第2増幅部162は、CPU140によるパワー設定の制御に基づいて、WDM光を増幅する。また、WDM光が光ファイバ11や光ファイバ21を透過する場合、減衰部163は、CPU140による制御に基づいて、第2増幅部162で増幅された後のWDM光の光パワーを所望の伝送路入力パワーになるように調整する。
【0027】
光スイッチ151はCPU140の制御に基づいて波長単位に光路を切り替える。これにより、OCM150は疑似信号光の波長ごとの光パワーを監視して計測し、計測結果をCPU140に電気的に通知する。なお、詳細は後述するが、本実施形態では、ROADM200に設けられたOCMが疑似信号光Lpsの波長ごとの光パワーを監視して計測する。
【0028】
図3(a)及び(b)を参照して、ROADM100のCPU140とROADM200のCPU240の詳細について説明する。なお、CPU140とCPU240は基本的に同様の構成を有するが、本実施形態では、CPU140とCPU240の役割に分けて個別に説明する。図3(a)に示すように、CPU140は、指示部141、検出部142、特定部143、パワー設定部144、及び波長設定部145を含んでいる。図3(b)に示すように、CPU240は測定部241を含んでいる。
【0029】
図3(a)に示すように、指示部141は、光ネットワークNWを管理する管理装置(不図示)からの指示に基づいて、クロストーク量の測定をROADM200に指示する測定指示と疑似信号光Lpsの送信を予告する送信予告の通知をOSC110に指示する。これにより、OSC110は測定指示と送信予告とを含むOSC光LxをROADM200に向けて送信する。
【0030】
波長設定部145は、指示部141から出力の完了が通知されると、疑似信号光Lpsの生成と送信をWSS130に指示する。WSS130にC帯のASE光Lzが出射されていれば、WSS130はASE光Lzから疑似信号光Lpsを生成し、疑似信号光LpsをROADM200に送信する。このように、WSS130はASE光源120と連携して疑似信号光Lpsを送信する。
【0031】
図3(b)に示すように、ROADM200のOSC210がOSC光Lxを受信すると、測定部241はOSC光Lxに含まれる送信予告に基づきOCM250による疑似信号光Lpsの受信を待機する。OCM250が疑似信号光Lpsを監視し、ROADM100から送信された疑似信号光Lpsを受信すると、測定部241は疑似信号光Lpsに基づいてクロストーク量を測定する。測定部241は、クロストーク量を測定すると、クロストーク量をOSC210に通知する。これにより、OSC210はクロストーク量を含むOSC光LyをROADM100に向けて送信する。
【0032】
検出部142は、OSC110がOSC光Lyを受信すると、OSC光Lyに含まれるクロストーク量のピークを検出する。特定部143は、検出部142がクロストーク量のピークを検出すると、検出したクロストーク量のピークに対応する波長をゼロ分散波長として特定する。パワー設定部144は、特定部143が特定したゼロ分散波長に基づいて、EDFA160の増幅度を設定する。これにより、ROADM100はゼロ分散波長に基づいて光伝送路F1への入力パワーを適応的に決定することができる。
【0033】
図4乃至図6を参照して、ROADM100,200の動作について説明する。
【0034】
まず、図4に示すように、CPU140は、OSC110、ASE光源120、WSS130、OCM150、EDFA160を起動する(ステップS1)。例えば、CPU140は、上述した管理装置からの指示を検出すると、OSC110、ASE光源120、WSS130、OCM150、EDFA160を起動する。また、CPU140は、CPU240と連携して、OSC210とOCM250を起動する。
【0035】
ステップS1の処理が完了すると、CPU140は疑似信号光を生成する(ステップS2)。例えば、波長設定部145がWSS130を制御することにより、図5の左側1回目に示すように、WSS130は中心波長1535nmを空けた1530nmから1540nmまでの0.5nm刻みの複数の波長を含む単位波長帯の疑似信号光LpsをASE光Lzから生成する。
【0036】
ステップS2の処理が完了すると、CPU140は疑似信号光Lpsの送信予告を通知し(ステップS3)、CPU240は送信予告を受け取る(ステップS4)。より詳しくは、CPU140の指示部141は送信予告と測定指示とをOSC110,210を介してCPU240の測定部241に通知し、測定部241は送信予告と測定指示とを受け取る。
【0037】
ステップS4の処理が完了すると、CPU140は疑似信号光Lpsを送信し(ステップS5)、CPU240は疑似信号光Lpsを受信する(ステップS6)。具体的には、CPU140の波長設定部145はWSS130に疑似信号光Lpsの送信を要求する。これにより、WSS130が疑似信号光LpsをROADM200に向けて送信する。そして、ROADM200のOCM250(図3(b)参照)が疑似信号光Lpsを監視することにより、CPU240は疑似信号光Lpsを受信する。この結果、図5の右側1回目に示すように、疑似信号光Lpsの中心波長1535nmにFWM現象に起因するアイドラ光(以下、クロストーク光という)XTが出現する。
【0038】
なお、クロストーク光XTが出現する理由は以下のとおりである。3つの等間隔の波長の光が高いパワーで光ファイバに入力すると、3つの波長の和や差に相当する4つ目の波長の光が生成される。この4つ目の光が発生する現象が四光波混合と呼ばれる。特に、4本の光のうち、両端以外の2本の光が重なる現象を縮退四光波混合と呼ぶ。これにより光は3本となる。すなわち、縮退して重なった光が両端以外の2本の光の中心に出現する。本実施形態に係るクロストーク光XTは中心波長とこれに隣接する3本の光の中の中心に相当する。四光波混合については以下の文献も参考することができる。
文献:麻生修、外2名、「光ファイバ中の四光波混合発生とその応用技術開発」、WDM関連技術小特集、古河電工時報、平成12年1月、第105号、pp.46-51
【0039】
ステップS6の処理が終了すると、CPU240はFWM現象に起因するクロストーク量を通知し(ステップS7)、CPU140はFWM現象に起因するクロストーク量を受け取る(ステップS8)。具体的には、CPU240の測定部241は、OCM250が監視して計測する疑似信号光Lpsの光パワーの最小値に基づいて、FWM現象に起因するクロストーク量を測定する。例えば、図6の上段に示すように、OCM250が1回目の疑似信号光Lpsの光パワーの最小値を計測すると、図6の下段に示すように、クロストーク量を測定する。測定部241は、クロストーク量を測定すると、OSC210,110を介して、クロストーク量をCPU140に通知する。これにより、CPU140はFWM現象に起因するクロストーク量を受け取る。
【0040】
ステップS8の処理が完了すると、CPU140は空き波長を変更する(ステップS9)。例えば、CPU140は空き波長を5nm長波長側に移動させる。1回目の疑似信号光Lpsの送信時における空き波長は1535nmであったため、ステップS9の処理により、CPU140は2回目の疑似信号光Lpsの送信時における空き波長を1540nmに変更する。
【0041】
ステップS9の処理が完了すると、ステップS5,S6の処理と同様に、CPU140は疑似信号光Lpsを送信し(ステップS10)、CPU240は疑似信号光Lpsを受信する(ステップS11)。この結果、図5の右側2回目に示すように、疑似信号光Lpsの中心波長1540nmにFWM現象に起因するクロストーク光XTが出現する。
【0042】
ステップS11の処理が終了すると、ステップS7,S8の処理と同様に、CPU240はFWM現象に起因するクロストーク量を通知し(ステップS12)、CPU140はFWM現象に起因するクロストーク量を受け取る(ステップS13)。これにより、CPU140は1回目とは別のクロストーク量を新たに受け取る。
【0043】
ステップS13の処理が完了すると、CPU140は空き波長が1560nmになったか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、CPU140の波長設定部145は空き波長が1560nmになったか否かを判断する。空き波長が1560nmになっていない場合(ステップS14:NO)、ステップS9の処理に戻り、CPU140はステップS9からS13までの処理を繰り返す。これにより、図5に示すように、3回目から6回目まで、CPU140から疑似信号光Lpsが送信され、CPU240がこの疑似信号光Lpsを受信する。
【0044】
この際、CPU240が受信する疑似信号光Lpsの中心波長に出現するクロストーク光XTの光パワーは、CPU140が送信する疑似信号光Lpsに応じて、変化する。例えば、本実施形態であれば、4回目の疑似信号光Lpsが送信された場合に、クロストーク光XTの光パワーは2回目や6回目など他の回数の場合と比べて最大になる。このようなクロストーク光XTの光パワーに応じたクロストーク量がCPU240からCPU140に通知されるため、CPU140はクロストーク光XTに関して複数の様々なクロストーク量を受け取る。
【0045】
そして、空き波長が1560nmになっている場合(ステップS14:YES)、CPU140はFWM現象に起因するクロストーク量のピークを検出する(ステップS15)。具体的には、CPU140の検出部142が複数のクロストーク量の中からクロストーク量のピークを検出する。本実施形態であれば、検出部142は4回目の疑似信号光Lpsを送信した際に出現したクロストーク光XTの光パワーに応じたクロストーク量をクロストーク量のピークとして検出する。
【0046】
ステップS15の処理が完了すると、CPU140はゼロ分散波長を特定し(ステップS16)、処理を終了する。具体的には、CPU140の特定部143がゼロ分散波長を特定する。本実施形態であれば、検出部142が検出したクロストーク量のピークに対応する波長である1550nmを特定部143はゼロ分散波長として特定する。そして、特定部143がゼロ分散波長を特定すると、パワー設定部144は、特定部143が特定したゼロ分散波長に適した増幅度をEDFA160に設定する。これにより、光伝送路F1への入力パワーが適切に設定される。
【0047】
この結果、例えばゼロ分散波長の最悪値を1565nmと想定して入力パワーを設定していた場合に、ゼロ分散波長の実測値が1550nmであると、最適な入力パワーが2dB程度低下する可能性があったが、本実施形態によりこのような可能性を回避することができる。すなわち、ゼロ分散波長の実測値に基づいて入力パワーを設定することができるため、ゼロ分散波長の最悪値を想定した入力パワーの設計が不要となる。したがって、既設の光伝送路F1に適応する最良な特性の光通信サービスを提供することができる。特に、ROADM100にOTDRを追加的に実装しないで済み、既設装備であるASE光源120を利用することができる。このため、OTDRの実装に伴う費用負担が発生を回避することができる。
【0048】
(第2実施形態)
続いて、図7を参照して、本件の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、C帯の疑似信号光Lpsを一例して説明したが、図7に示すように、C帯と共にS帯の疑似信号光Lpsを利用してもよい。これにより、ゼロ分散波長を1550nm帯から短波長側に少しずらすことにより、1550nm帯での非線形現象を抑制したNZ-DSFについても同様に最悪値を想定しなくても済む。
【0049】
ROADM100のCPU140は、第1実施形態と同様に、S帯の疑似信号光Lpsを1回目から5回目まで段階的に送信する。CPU140は、ROADM200のCPU240から受け取るクロストーク量に基づいて、光伝送路F1の一例であるNZ-DSFのゼロ分散波長を特定することができる。
【0050】
その後、CPU140は、C帯の疑似信号光Lpsを6回目から11回目まで段階的に送信する。CPU140は、ROADM200のCPU240から受け取るクロストーク量に基づいて、光伝送路F1の一例であるDSFのゼロ分散波長を特定することができる。
【0051】
(第3実施形態)
続いて、図8を参照して、本件の第3実施形態について説明する。上述した実施形態では、ROADM100のCPU140が20波長単位の単位波長帯の疑似信号光Lpsを段階的に送信することを説明した。第3実施形態では、図8(a)に示すように、CPU140が5nm間隔で波長を空けたC帯に属する全ての波長の疑似信号光Lpsを一括して送信してもよい。これにより、図8(b)に示すように、ROADM200のCPU240はクロストーク光XTの光パワーに応じたクロストーク量のピークを1回測定すればよい。
【0052】
これにより、CPU140はCPU240が測定したクロストーク量のピークに応じたゼロ分散波長を特定することができる。第3実施形態によれば、CPU240による測定回数が低減される。この結果、CPU140によるゼロ分散波長が短時間で特定される。一方で、疑似信号光Lpsを段階的に送信する場合は、一括して送信する場合と異なり、複数回の測定となるが、それぞれの回においてクロストーク光XTの光パワーが精度良く検出される。これにより、クロストーク光XTの光パワーに応じたクロストーク量を精度良く測定できるという第3実施形態とは異なる利点がある。
【0053】
(第4実施形態)
続いて、図9乃至図11を参照して、本件の第4実施形態について説明する。上述した実施形態では、光伝送路F1,F2を介してROADM100,200を接続することを説明した。第4実施形態では、図9に示すように、ROADM100,200間にILA(In-Line Amplifier)300を設けてもよい。ILA300は、光伝送装置の一例であって、例えば第3局舎30に設置される。ROADM100とILA300とは光伝送路F3,F6によって互いに接続される。光伝送路F3は上流の光伝送路の一例であって、光伝送路F6は下流の光伝送路の一例である。ROADM200とILA300とは光伝送路F4,F5によって互いに接続される。
【0054】
図10に示すように、ILA300はCPU340とOCM350とEDFA360とDGE(Dynamic Gain Equalizer)370とを備えている。DGE370は透過部及び遮断部の一例である。OCM350には光スイッチ351が接続されている。なお、図10において、ROADM100と同様の構成には、対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。例えば光ファイバ36は光ファイバ16に対応し、光ファイバ46は光ファイバ26に対応する。また、第1増幅部361は第1増幅部161に対応し、第2増幅部362は第2増幅部162に対応し、減衰部363は減衰部163に対応する。
【0055】
DGE370は、CPU340による制御に基づいて、波長毎の光パワーを動的に制御する。例えば、図11(a)に示すように、ROADM100のCPU140が中心波長1550nmを空けた疑似信号光Lpsを送信した場合、ILA300のCPU340は疑似信号光Lpsを受信する。疑似信号光Lpsが光伝送路F3を通過する際には、FWM現象に起因するクロストーク光XTが発生する。
【0056】
CPU340は、OCM350が光スイッチ351を介して監視する疑似信号光Lpsの光パワーを計測する。CPU340は、クロストーク光XTの出現を確認すると、クロストーク光XTが発生する波長である1550nmをDGE370に通知する。これにより、図11(b)に示すように、DGE370は該当波長のクロストーク光XTを遮断し、疑似信号光Lpsを改めて生成する。すなわち、DGE370は結果的に疑似信号光Lpsを透過する。
【0057】
CPU340が中心波長1550nmを遮断した疑似信号光Lpsを送信した場合、ROADM200のCPU240は疑似信号光Lpsを受信する。疑似信号光Lpsが光伝送路F4を通過する際には、FWM現象に起因するクロストーク光XTが発生する。CPU240は、OCM250が光スイッチ251を介して監視する疑似信号光Lpsの光パワーを計測する。CPU240はOSC210,110を介して、クロストーク光XTの光パワーに応じたクロストーク量をCPU140に通知する。これにより、CPU140はFWM現象に起因するクロストーク量を受け取る。この結果、CPU140はこのクロストーク量に基づいてゼロ分散波長を特定することができる。このように、第4実施形態によれば、ROADM100,200間にILA300が介在していても、ROADM100は既設装備でゼロ分散波長を特定することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態では、光スプリッタを一例として説明したが、光スプリッタに代えて光タップや波長フィルタを採用してもよい。
【0059】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信する送信部と、前記別の光伝送装置で計測された、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、を有する光伝送装置。
(付記2)中心波長を空けた所定の単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に複数の異なる単位波長帯で送信する送信部と、前記別の光伝送装置で計測された、前記複数の異なる単位波長帯での前記疑似信号光の前記中心波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、を有する光伝送装置。
(付記3)複数の異なる波長を単位波長間隔ずつ空けた所定の波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信する送信部と、前記別の光伝送装置で計測された、前記所定の波長帯に空けた前記複数の異なる波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部と、を有する光伝送装置。
(付記4)上流の光伝送装置から上流の光伝送路を介して送信された、少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を下流の光伝送路に透過する透過部と、前記上流の光伝送路で、前記少なくとも一つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光を遮断する遮断部と、を有し、前記上流の光伝送装置が、前記下流の光伝送路を介して接続される下流の光伝送装置で計測された、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生した前記FWMによるクロストーク光パワーの情報に基づいて、前記下流の光伝送路のゼロ分散波長を特定する特定部を含む、ことを特徴とする光伝送装置。
(付記5)前記特定部は、前記FWMによる前記クロストーク光パワーのピーク値に基づいて、前記ゼロ分散波長を特定する、ことを特徴とする付記1から4のいずれか1項に記載の光伝送装置。
(付記6)前記疑似信号光を発生する光源は、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源である、ことを特徴とする付記1から4のいずれか1項に記載の光伝送装置。
(付記7)前記光伝送装置に入力された信号光を増幅して前記光伝送路に入力する増幅部と、前記ゼロ分散波長に基づいて、前記光伝送路への入力パワーを前記増幅部に設定するパワー設定部と、をさらに有する付記1から3のいずれか1項に記載の光伝送装置。
(付記8)前記光伝送路は、DSF(Dispersion Shifted Fiber)を含む、ことを特徴とする付記1から3のいずれか1項に記載の光伝送装置。
(付記9)前記波長帯は、C帯(Conventional-band)を含む、ことを特徴とする付記1から8のいずれか1項に記載の光伝送装置。
(付記10)前記波長帯は、S帯(Short-wavelength-band)を含む、ことを特徴とする付記1から8のいずれか1項に記載の光伝送装置。
(付記11)少なくとも1つの空いた波長を有する単位波長帯に属する疑似信号光を、光伝送路を介して接続された別の光伝送装置に送信し、前記別の光伝送装置で、前記疑似信号光の少なくとも1つの空いた波長に発生したFWM(Four-Wave Mixing)によるクロストーク光パワーを計測し、前記クロストーク光パワーの計測値に応じた情報に基づいて、前記光伝送路のゼロ分散波長を特定する、光伝送方法。
【符号の説明】
【0060】
100,200 ROADM
110,210 OSC
120 ASE光源
130 WSS
140,240 CPU
150,250 OCM
160 EDFA
300 ILA
NW 光ネットワーク
F1~F6 光伝送路
Lps 疑似信号光
XT クロストーク光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11