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特開2024-171465ソルベントインクジェットインク及び印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171465
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ソルベントインクジェットインク及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20241205BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20241205BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20241205BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09D11/36
C09D11/30
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088485
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中尾 彩弥子
(72)【発明者】
【氏名】北ノ原 光子
(72)【発明者】
【氏名】我有 紘彰
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186BA11
2H186DA16
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AD09
4J039AD10
4J039AE06
4J039BC14
4J039BC15
4J039BC25
4J039BC75
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA04
4J039DA05
4J039EA38
4J039EA39
4J039EA43
4J039FA02
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】耐水性、耐エタノール擦過性、及び基材への密着性のいずれにも優れた画像を形成可能なソルベントインクジェットインクを提供する。
【解決手段】顔料、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤、バインダ樹脂、及び有機溶剤を含み、前記バインダ樹脂は、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂と、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂とを含み、前記酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂に対する前記酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Aが、1.00未満である、ソルベントインクジェットインク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤、バインダ樹脂、及び有機溶剤を含み、
前記バインダ樹脂は、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂と、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂とを含み、
前記酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂に対する前記酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Aが、1.00未満である、ソルベントインクジェットインク。
【請求項2】
前記酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤に対する前記酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Bが、0.10以上0.50以下である、請求項1に記載のソルベントインクジェットインク。
【請求項3】
前記質量比Aが、0.05以上0.20未満である、請求項1に記載のソルベントインクジェットインク。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル樹脂のガラス転移点が60℃以上である、請求項1に記載のソルベントインクジェットインク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のソルベントインクジェットインクを、インクジェット法で基材に付与することを含む、印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ソルベントインクジェットインク、及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた基材に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって基材上で乾燥するのに対して、油性インクは基材への浸透が主となって乾燥する。
【0003】
塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等のプラスチック基材に対して、インクジェット印刷が行われることがある。
【0004】
特許文献1には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテルの少なくともどちらか一方とジエチレングリコールエチルメチルエーテルとを含むインクが、低臭気で、かつポリ塩化ビニル樹脂基材に対する優れた密着性等を有するインクジェット記録用インクとして記載されている。
【0005】
特許文献2には、主に塩化ビニル基材への印刷に適した非水性インクジェットインクとして、特定の分子量分布をもった塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を使用した非水性インクジェットインクが記載されている。
【0006】
特許文献3には、酸価10mgKOH/g以下であるバインダ樹脂、塩基性分散剤、顔料、及び有機溶剤を含むインク組成物が、ポリ塩化ビニル樹脂シートに好ましく使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-233086号公報
【特許文献2】特開2018-59106号公報
【特許文献3】特開2010-24352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性のいずれにも優れた画像を形成可能なソルベントインクジェットインクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、顔料、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤、バインダ樹脂、及び有機溶剤を含み、前記バインダ樹脂は、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂と、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂とを含み、前記酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂に対する前記酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Aが、1.00未満である、ソルベントインクジェットインクに関する。
本発明の他の実施形態は、上記のソルベントインクジェットインクを、インクジェット法で基材に付与することを含む、印刷物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性のいずれにも優れた画像を形成可能なソルベントインクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。以下の説明において、ソルベントインクジェットインクを単に「ソルベントインク」又は「インク」と称することがある。
【0012】
<ソルベントインクジェットインク>
実施形態によるソルベントインクジェットインクは、顔料、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤(以下、「顔料分散剤D」と称することがある。)、バインダ樹脂、及び有機溶剤を含み、バインダ樹脂は、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂(以下、「(メタ)アクリル樹脂M」と称することがある。)と、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(以下、「ポリエステル樹脂P」と称することがある。)とを含み、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂に対する酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Aが、1.00未満である、ソルベントインクジェットインクである。
【0013】
実施形態のソルベントインクジェットインクを用いる場合、耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性のいずれにも優れた画像を形成可能である。また、実施形態のソルベントインクジェットインクは、保存安定性にもすぐれている。特定の理論に拘束されるものではないが、その理由は、下記のように推測される。
【0014】
(メタ)アクリル樹脂は、画像の基材への密着性の向上に寄与し得る。バインダ樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含むと、とくにオレフィン基材等のプラスチック基材に対する密着性を向上させやすい。一方、(メタ)アクリル樹脂は、耐水性及び耐アルコール性が十分ではない場合があるが、ポリエステル樹脂は、画像の耐水性及び耐アルコール性の向上に寄与し得る。しかしながら、(メタ)アクリル樹脂とポリエステル樹脂とは相溶性が低い場合があり、このため、樹脂の乾燥膜が不均一になる場合がある。樹脂の乾燥膜が不均一であると、画像の耐水性及び耐アルコール性が低下したり、膜が弱くなることで画像の基材への密着性が低下する場合がある。また、樹脂同士の相溶性が低く、インク中で不均一な混合状態であると、インクの保存安定性も悪くなる傾向がある。本発明者らは、(メタ)アクリル樹脂として、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂((メタ)アクリル樹脂M)を用い、ポリエステル樹脂として、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂P)を用い、かつ、これらのインク中の量が、(メタ)アクリル樹脂Mに対するポリエステル樹脂Pの質量比Aが1.00未満となるような量である場合、これらの樹脂を相溶性のよい状態でインク中に存在させることが可能であることを見出した。
また、(メタ)アクリル樹脂の酸価が10mgKOH/gより大きいと、ポリエステル樹脂との相溶性を良好なものとしやすい。一方、(メタ)アクリル樹脂の酸価が30mgKOH/g以下であると、(メタ)アクリル樹脂自体の耐水性及び耐アルコール性が良好となる傾向があり、(メタ)アクリル樹脂自体の基材への密着性も良好となる傾向がある。また、ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以下であると、ポリエステル樹脂の耐水性、耐アルコール性が良好となる傾向がある。
【0015】
また、例えば、顔料分散剤を多く使用すると、基材上でインクを乾燥させる際、顔料分散剤とバインダ樹脂とが十分に相溶しにくい場合がある。このように、顔料分散剤とバインダ樹脂との相溶性が低い場合、基材上でインクを乾燥させる際、乾燥膜の強度が低下して画像の耐久性が低下する場合がある。また、顔料分散剤とバインダ樹脂との相溶性が低いと、これらを含むインクの保存安定性も低くなる傾向がある。本発明者らは、顔料分散剤として、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤Dを用いると、ポリエステル樹脂Pと(メタ)アクリル樹脂Mとを含むバインダ樹脂との相溶性を良好なものとすることができることを見出した。
【0016】
このように、(メタ)アクリル樹脂M、ポリエステル樹脂P及び顔料分散剤Dを用い、(メタ)アクリル樹脂Mとポリエステル樹脂Pとの質量比を所定のものとするとき、耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性のいずれにも優れた画像を形成可能であり、保存安定性にも優れたソルベントインクを得ることができる。
【0017】
インクは、顔料を含むことができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
インク中における顔料粒子の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。インク中における顔料粒子の平均粒子径は、発色性の観点から、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、50nm以上であることが好ましい。インク中における顔料粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、例えば、50~500nm、50~300nm、50~200nm、50~150nm、又は50~100nmであってよい。
【0019】
顔料は、顔料分散体としてインクに配合されてよい。顔料分散体としては、顔料が溶媒中に分散可能なものであって、インク中で顔料が分散状態となるものであればよい。例えば、顔料を顔料分散剤で分散媒中に分散させたもの、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を分散媒中で分散させたもの等を用いることができる。
【0020】
顔料の含有量は、印刷濃度とインク粘度の観点から、インク全量に対して0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましく、例えば、1~5質量%であってよい。
【0021】
顔料の分散形態は、顔料を非油溶性樹脂で被覆したいわゆるカプセル顔料や着色樹脂粒子を顔料分散剤で分散させた分散体であってもよいが、顔料分散剤を顔料表面に直接吸着させて分散させた分散体であることが好ましい。
【0022】
インクは、インク中で顔料を安定して分散させるために、顔料とともに顔料分散剤を含むことが好ましい。顔料分散剤としては、インクの保存安定性、画像の耐水性及び耐アルコール性の観点から、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤(顔料分散剤D)を好ましく使用することができる。
【0023】
バインダ樹脂との相溶性の向上の観点から、顔料分散剤Dの酸価は、10mgKOH/g以下が好ましく、8mKOH/g以下がより好ましい。一方、顔料分散剤Dの酸価は、例えば、1mKOH/g以上であってよい。顔料分散剤Dの酸価は、例えば1~10mgKOH/g又は1~8mgKOH/gであってよい。
【0024】
顔料表面への吸着性の観点から、顔料分散剤Dは、アミン価を有することが好ましい。顔料吸着性の観点から、顔料分散剤Dのアミン価は、8mgKOH/g以上であることがより好ましく、10mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。一方、バインダ樹脂との相溶性をさらに向上させる観点から、顔料分散剤Dのアミン価は、20mgKOH/g以下が好ましく、15mgKOH/g以下がより好ましい。顔料分散剤Dのアミン価は、例えば、8~20mgKOH/g、10~20mgKOH/g、又は10~15mgKOH/gであってよい。
【0025】
本開示において、酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム(mg)数で表される。アミン価は、試料1g中に含まれる塩基性成分を中和するのに要する塩酸又は過塩素酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数で表される。
酸価及びアミン価は、JIS K2501:2003「石油製品及び潤滑油─中和価試験方法」にしたがって測定することができる。
【0026】
顔料分散剤の種類としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が挙げられる。顔料分散剤Dとしては、例えば、これらの顔料分散剤のなかで、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤を使用することが好ましい。
【0027】
顔料分散剤Dとしては、適宜合成してもよく、また市販品を使用してもよい。市販の顔料分散剤Dとしては、例えば、日本ルーブリゾール株式会社製の「ソルスパース75000」、「ソルスパース75500」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース37500」等、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「DISPERBYK-163」、「DISPERBYK-168」、「DISPERBYK-182」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-2009」、「DISPERBYK-2013」等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
顔料分散剤Dは、顔料1に対し0.2~1.0の質量比で含まれていることが好ましい。顔料分散剤Dは、インク全量に対し、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0029】
インクは、バインダ樹脂として、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂((メタ)アクリル樹脂M)及び酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂P)を含むことができる。
バインダ樹脂は、油溶性樹脂であることが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル単位を含む樹脂、アクリル単位を含む樹脂、又はこれらの単位をともに含む樹脂であってよい。(メタ)アクリル樹脂は、アクリル単位及び/又はメタクリル単位以外の単位を含んでもよく、例えば、スチレン単位等を含んでもよい。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸エステルの重合体、メタクリル酸エステルの重合体、又はこれらとスチレン等との共重合体等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、1000~200000が好ましく、10000~100000がより好ましい。
本開示において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により、ポリスチレン換算で得られる値である。
【0032】
(メタ)アクリル樹脂Mの酸価は、ポリエステル樹脂Pとの相溶性の向上の観点から、10mgKOH/gより高いことが好ましく、11mgKOH/g以上であることがより好ましく、15mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂Mの酸価は、(メタ)アクリル樹脂Mの耐水性及び耐アルコール性の向上の観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂Mの酸価は、例えば、10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下、11~30mgKOH/g又は15~25mgKOH/gであってよい。
画像の耐水性及び耐アルコール性をより効率的に高める観点から、(メタ)アクリル樹脂Mは、アミン価を有していないことが好ましい。
【0033】
画像の耐久性の観点から、(メタ)アクリル樹脂Mのガラス転移点(Tg)は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂Mのガラス転移点は、例えば、50~150℃、又は60~150℃であってよい。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移点がこのような範囲のとき、より優れた印刷画像の耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性が得られやすい。本開示において、樹脂のガラス転移点は、特に説明のない限り、示差走査熱量測定(DSC)に従って測定された数値である。
【0034】
(メタ)アクリル樹脂Mの市販品としては、例えば、コベストロ社製の「Neocryl B-735」、「Neocryl B-809」、「Neocryl B-819」、「Neocryl B-841」、「Neocryl B-851」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールBR-77」等があげられる(いずれも商品名)。
【0035】
(メタ)アクリル樹脂Mは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
(メタ)アクリル樹脂Mは、インク全量に対して、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってよい。一方、(メタ)アクリル樹脂Mは、インク全量に対して、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。(メタ)アクリル樹脂Mは、インク全量に対して、例えば、0.1~20質量%、1~10質量%、又は2~5質量%以上であってよい。
【0036】
ポリエステル樹脂は、単量体である多塩基酸と多価アルコールとを脱水重縮合させることで得られる構造を含むことができる。例えば、ポリエステル樹脂は、単量体である多価カルボン酸とポリアルコールとを通常の方法により脱水重縮合させることにより得ることができ、単量体の種類や使用量を調整することにより、所望の重量平均分子量が得られる。
ポリエステル樹脂Pとしては、ポリエステル樹脂であって、酸価が5mgKOH/g以下のものを用いることができる。
【0037】
ポリエステル樹脂に用いられる多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、9,10-アントラセンジカルボン酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸;p-オキシ安息香酸、p-(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、テトラマー酸などの脂肪族不飽和多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸等を例示できる。また、多塩基酸に一部一塩基酸を併用しても良い。一塩基酸類としては、例えば、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、t-ブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、3-メチル安息香酸、4-メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、t-ブチルナフタレンカルボン酸、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸等が挙げられる。
【0038】
ポリエステル樹脂に用いられる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリオール及びテトラオール類等の脂肪族多価アルコール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族多価アルコール類;パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール等の芳香族多価アルコール類を例示できる。また、多価アルコールに一部、一価アルコールを併用しても良い。
【0039】
ポリエステル樹脂Pの粘度平均分子量は1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上がさらに好ましい。ポリエステル樹脂Pの粘度平均分子量は、例えば、50000以下、30000以下又は20000以下であってよい。ポリエステルPの粘度平均分子量は、例えば、1000~50000、1500~30000、又は2000~20000であってよい。
本開示において、樹脂の粘度平均分子量は、毛細管粘度計により求めたポリマー希釈溶液の固有粘度から算出される値である。
【0040】
ポリエステル樹脂Pの酸価は、画像の耐久性の観点から、5mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂Pの酸価は、例えば、0mgKOH/g以上であってよく、例えば、0~5mgKOH/g、又は0~3mgKOH/gであってよい。
【0041】
画像の耐水性及び耐アルコール性をより効率的に高める観点から、ポリエステル樹脂Pは、アミン価を有していないことが好ましい。
【0042】
顔料分散剤との相溶性の向上の観点から、ポリエステル樹脂の水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましく、例えば、20mgKOH/g以上であってもよい。顔料分散剤との相溶性が向上すると、分散体の粘度をより良好なものとすることができる。
本開示において、水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数で表される。水酸基価は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」にしたがって求めることができる。
【0043】
ポリエステル樹脂Pの市販品としては、例えば、ユニチカ株式会社製「エリーテルUE-3320」、「エリーテルUE-9820」、「エリーテルUE-3350」、「エリーテルUE-3380」、「エリーテルUE-3300」、「エリーテルUE-3980」、東洋紡株式会社製「バイロン220」、「バイロン226」、「バイロン802」、「バイロン885」、「バイロンGK-810」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0044】
ポリエステル樹脂Pは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
ポリエステル樹脂Pは、インク全量に対して、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上又は0.2質量%以上であってよい。一方、ポリエステル樹脂Pは、インク全量に対して、例えば、5質量%以下、2質量%以下又は1質量%以下であってよい。例えば、ポリエステル樹脂Pは、インク全量に対して、0.01~5質量%、0.1~2質量%、又は0.2~1質量%であってよい。
【0045】
(メタ)アクリル樹脂Mに対するポリエステル樹脂Pの質量比A(ポリエステル樹脂P/(メタ)アクリル樹脂M))は、0より大きければよい。質量比Aは、1.00未満であることが好ましい。質量比Aは、例えば、0.01以上1.00未満であることが好ましく、0.03以上0.50未満であることがより好ましく、0.05以上0.20未満であることがさらに好ましい。
画像の耐水性及び耐アルコール性の観点から、質量比Aは、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂Mとポリエステル樹脂Pとの相溶性、及び顔料分散剤Dとポリエステル樹脂Pとの相溶性の観点、及び、画像の耐水性、耐アルコール性及び基材への密着性の観点から、質量比Aは、1.00未満であることが好ましい。より優れたインクの保存安定性及び画像の基材への密着性の観点から、質量比Aは0.50未満であることがより好ましく、0.20未満であることがさらに好ましい。
【0046】
顔料分散剤Dに対するポリエステル樹脂Pの質量比B(ポリエステル樹脂P/顔料分散剤D)は、0.10以上0.50以下であることが好ましく、0.15以上0.35以下であることがより好ましく、0.20以上0.30以下であることがさらに好ましい。
画像の耐水性及び耐アルコール性をさらに向上させる観点から、質量比Bは、0.10以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましい。より優れたインクの保存安定性及び画像の基材への密着性の観点から、質量比Bは、0.50以下が好ましく、0.35以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましい。
【0047】
インクは、ポリエステル樹脂P及び(メタ)アクリル樹脂M以外のバインダ樹脂をさらに含んでもよい。このようなバインダ樹脂としては、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂等の塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂等、通常のインク組成物に用いられる樹脂を用いることができる。
塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂の市販品としては、例えば、日信化学工業製の塩酢ビ系樹脂「ソルバインCL」、「ソルバインCNL」、「ソルバインC5R」、「ソルバインTA3」、「ソルバインTA5R」、ワッカー社製の塩酢ビ系樹脂「VINNOL E15/45」、「VINNOL H14/36」、「VINNOL H40/43」、「VINNOL E15/45M」、「VINNOL E15/40M」等があげられる(いずれも商品名)。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂M及びポリエステル樹脂Pの合計量は、インク中のバインダ樹脂全量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、インク中のバインダ樹脂の総量は、インク全量に対して、1~10質量%が好ましく、3~8質量%がより好ましい。
【0049】
有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アセテート系溶剤などが挙げられる。有機溶剤としては、印刷作業時の臭気の抑制の観点から、沸点が100℃以上の有機溶剤を使用することが好ましく、沸点が150℃以上の有機溶剤を使用することがより好ましい。また、乾燥性の観点から、沸点が250℃以下の有機溶剤を使用することが好ましく、沸点が200℃以下の有機溶剤を使用することがより好ましい。沸点150℃以上200℃以下の有機溶剤が、有機溶剤全体の70質量%以上を占めることが好ましい。
【0050】
グリコールエーテル系溶剤の例としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
アセテート系溶剤の例としては、エチルセルソルブアセテート、エチレングリコールジアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート等が挙げられる。
これら有機溶剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
有機溶剤は、インク全量に対して、60~95質量%であることが好ましく、65~90質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
インクは、界面活性剤を含むことが好ましい。例えば、疎水性を有する基材表面においてもインクの濡れひろがりを良好にし、乾燥速度を上げ良好な画像を形成させる観点から、インクは、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、例えばシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体等が挙げられる。
【0053】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品の例としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「BYK-307」、「BYK-313」、「BYK-330、「BYK-333」、「BYK-342」、「BYK-370」、「BYK-377」、「BYK-378」、「BYK-3550」、「BYK-3565」「BYK-3750」、「BYK-3761」、「BYK-3762」、「BYK-3764」、「BYK-SILCLEAN 3700」、日信化学工業株式会社製の「シルフェイスSAG005」、「シルフェイスSAG008」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0054】
フッ素系界面活性剤の市販品の例としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「BYK-340」、AGC株式会社製の「サーフロンS-211」、「サーフロンS-131」、「サーフロンS-132」、「サーフロンS-141」、「サーフロンS-144」、「サーフロンS-145」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0055】
ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品の例としては、例えば、エボニックインダストリーズ社製の「サーフィノール82」、「サーフィノール104」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」、「サーフィノールTG」、日信化学工業株式会社製の「オルフィンSTG」、「オルフィンE1004」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0056】
印刷時の連続吐出性と画像の発色性の点から、インクはシリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。
【0057】
界面活性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、インク全量に対して、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
【0058】
インクは、用途等によっては、各種添加剤を含んでよい。添加剤としては、例えば、UV吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、可塑剤等が挙げられる。
【0059】
インクの製造方法は特に限定されないが、一方法としては、各成分を一括ないし分割して混合及び撹拌してインクを作製することができる。具体的には、ビーズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより作製することができる。
【0060】
インクの製造方法では、例えば、予め、顔料を、顔料分散剤D及び有機溶剤等と混合及び撹拌して顔料を分散させて顔料分散体を作製してもよい。顔料分散体の作製では、例えば、ポリエステル樹脂Pを加えてもよい。顔料分散剤Dとポリエステル樹脂Pとの相溶性が良い状態で、疎水性表面をもつ顔料の分散安定化に寄与し、インクの保存安定性をさらに向上させるとともに、画像の耐久性の低下をより効果的に抑制することが可能となる。
【0061】
ソルベントインクは、好ましくはインクジェットインクである。
【0062】
インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5~30mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、8~13mPa・sであることが、一層好ましい。本開示において、インク粘度は、23℃において測定した数値である。粘度測定装置には、例えば、株式会社アントンパール・ジャパン製「レオメーターMCR302」を用いることができる。
【0063】
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから一実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
【0064】
本実施形態において、基材は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。例えば、実施形態のソルベントインクは、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等のプラスチック基材にも好ましく用いることができる。オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。このようなプラスチック基材は、インク受容層を有する基材等の、付与されたインクを吸収可能である吸収性基材であってもよいが、インク受容層を有していない非吸収性基材であってもよい。実施形態のインクは、インクが浸透しにくい基材に対しても好ましく用いることができる。例えば、実施形態のソルベントインクは、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂製の合成紙等にも好ましく用いることができる。
【0065】
<印刷物の製造方法>
一実施形態の印刷物の製造方法は、ソルベントインクを、インクジェット法で基材に付与することを含むことができる。ソルベントインクとして、上述の一実施形態のソルベントインクを用いることができる。また、基材としては、上述の一実施形態のソルベントインクを用いることができる基材として説明した基材を用いることができる。
【0066】
ソルベントインクを基材に付与する工程において、ソルベントインクは、インクジェット法で基材に付与されることが好ましい。インクジェット法は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。
【0067】
基材へのソルベントインクの付与量は、1~500g/mが好ましく、3~100g/mがより好ましく、5~50g/mがさらに好ましく、10~30g/mが最も好ましい。
【0068】
印刷物の製造方法は、前処理工程、加熱工程などの工程を含んでよい。
【0069】
本開示は、下記の実施形態を含む。
<1>顔料、酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤、バインダ樹脂、及び有機溶剤を含み、
前記バインダ樹脂は、酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂と、酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂とを含み、
前記酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂に対する前記酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Aが、1.00未満である、ソルベントインクジェットインク。
<2>前記酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤に対する前記酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂の質量比Bが、0.10以上0.50以下である、<1>に記載のソルベントインクジェットインク。
<3>前記質量比Aが、0.05以上0.20未満である、<1>又は<2>に記載のソルベントインクジェットインク。
<4>前記(メタ)アクリル樹脂のガラス転移点が60℃以上である、<1>~<3>のいずれか一項に記載のソルベントインクジェットインク。
<5><1>~<4>のいずれか一項に記載のソルベントインクジェットインクを、インクジェット法で基材に付与することを含む、印刷物の製造方法。
【実施例0070】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0071】
<顔料分散体の製造>
表1~3に記載の各材料を表1~3に示す割合でビーカーに測りとり、プレミックスした後、蓋つきプラスチック容器に移した。そこに、直径0.8mmのジルコニアビーズを加え、ロッキングミルRM-05(株式会社セイワ技研製)で30分間分散した後、ビーズを分散液から分離し、顔料濃度20質量%の顔料分散体1~15を製造した。
【0072】
表1~3に記載の材料の詳細を下記に示す。
【0073】
(顔料)
顔料1:カーボンブラック、三菱ケミカル株式会社製「#950」
顔料2:シアン顔料、DIC株式会社製「Fastogen Blue 5452K」
顔料3:マゼンタ顔料、DIC株式会社製「Fastogen Super Magenta JM02」
顔料4:イエロー顔料、ランクセス株式会社製「Bayscript Yellow 4GF」
【0074】
(顔料分散剤)
顔料分散剤1:顔料分散剤、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース75000」(酸価4.0±2.0mgKOH/g)、有効成分100質量%
顔料分散剤2:顔料分散剤、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース32500」(酸価6.3±1.3mgKOH/g)、有効成分40質量%
顔料分散剤3:顔料分散剤、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース32550」(酸価6.3±1.3mgKOH/g)、有効成分50質量%
顔料分散剤4:顔料分散剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK-2014」(酸価0mgKOH/g)、有効成分100質量%
顔料分散剤5:顔料分散剤、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース32000」(酸価15.5±2.5mgKOH/g)、有効成分100質量%
【0075】
(バインダ樹脂)
ポリエステル樹脂1:ユニチカ株式会社製「エリーテルUE-3350」(酸価1mgKOH/g)
ポリエステル樹脂2:ユニチカ株式会社製「エリーテルUE-3300」(酸価1mgKOH/g)
ポリエステル樹脂3:ユニチカ株式会社製「エリーテルUE-3380」(酸価1mgKOH/g)
ポリエステル樹脂4:ユニチカ株式会社製「エリーテルUE-9820」(酸価3mgKOH/g)
ポリエステル樹脂5:東洋紡株式会社製「バイロンGK-810」(酸価5mgKOH/g)
ポリエステル樹脂6:ユニチカ株式会社製「エリーテルUE-9885」(酸価22mgKOH/g)
【0076】
(有機溶剤)
有機溶剤1:ジエチレングリコールジエチルエーテル、東京化成工業株式会社製
有機溶剤2:プロピレングリコールジアセタート、東京化成工業株式会社製
有機溶剤3:ジアセトンアルコール、東京化成工業株式会社製
有機溶剤4:プロピオン酸へキシル、東京化成工業株式会社製
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
<インクの製造>
表4~7に記載の各材料を表4~7に示す割合でプレミックスし、その後、ホモジナイザーで1分間分散し、その後孔径3μmのメンブレンフィルターで濾過し、インク1~29を得た。
【0081】
表4~7に記載の原材料の詳細を下記に示す。
【0082】
(顔料分散体)
顔料分散体1~15:上記で製造したもの
【0083】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂1~6:顔料分散体の製造に用いられたポリエステル樹脂1~6と同じ
【0084】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂1:コベストロ社製「Neocryl B-809」(酸価19mgKOH/g、ガラス転移点80℃)
(メタ)アクリル樹脂2:三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールBR-77」(酸価18mgKOH/g、ガラス転移点84℃(FOXの式による推算値))
(メタ)アクリル樹脂3:コベストロ社製「Neocryl B-841」(酸価25mgKOH/g、ガラス転移点69℃)
(メタ)アクリル樹脂4:コベストロ社製「Neocryl B-735」(酸価11mgKOH/g、ガラス転移点74℃)
(メタ)アクリル樹脂5:コベストロ社製「Neocryl B-819」(酸価16mgKOH/g、ガラス転移点49℃)
(メタ)アクリル樹脂6:コベストロ社製「Neocryl B-890」(酸価75mgKOH/g)
(メタ)アクリル樹脂7:三菱ケミカル株式会社製「ダイヤナールBR-83」(酸価0mgKOH/g)
【0085】
(有機溶剤)
有機溶剤1~4:顔料分散体の製造に用いられた有機溶剤1~4と同じ
【0086】
(界面活性剤)
界面活性剤:シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK-3565」
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
<インクの保存安定性>
インク1~29を用いてその保存安定性の評価を行った。具体的には、以下のようにして評価を行った。20mLのガラス瓶に、ガラス瓶の内部容積の9割程度となるような量でインクを入れ、ガラス瓶に蓋をして60℃の恒温槽に2週間保管後、インクの粘度を測定した。この2週間保管後のインクの粘度の、作製された直後のインクの粘度(初期粘度)からの変化率を求め、下記の基準に従って、インクの保存安定性を評価した。
A:初期粘度からの粘度変化率が±3.0%以内
B:初期粘度からの粘度変化率が±3.0%より大きく、±5.0%以内
C:初期粘度からの粘度変化率が±5.0%より大きく、±10.0%以内
D:初期粘度からの粘度変化率が±10.0%より大きい
【0092】
<印刷物の作製>
画像の耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性の評価を行うため、インク1~29を用いて印刷物を作製した。
具体的には、作製したインク1~29を、市販のラージフォーマット用インクジェットプリンタのヘッドに導入し、インクの吐出量が20g/mとなるように設定したうえで、ポリプロピレン製合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション製「ニューユポFGS110」に単色のベタ画像を印刷した。
【0093】
<画像の耐水性>
水を含ませた綿棒に100gの荷重をかけた状態で、上記で得られた印刷物のベタ画像部の塗膜への擦過を50往復行い、擦過部及び擦過した綿棒の状態を目視で観察して、下記の基準に従って、画像の耐水性を評価した。
A:綿棒の着色も、印刷面の色落ちも無し
B:綿棒が着色したが、印刷面には色落ちは見られなかった
C:綿棒が着色し、印刷面にも色落ちが見られた
D:綿棒が着色し、印刷面にも色落ちがあり、剥ぎ取られた部分の基材が見えた
【0094】
<画像の耐アルコール性>
100%エタノールを含ませた綿棒に100gの荷重をかけた状態で、上記で得られた印刷物のベタ画像部の塗膜への擦過を5往復行い、擦過部及び擦過した綿棒の状態を目視で観察し、下記の基準に従って、画像の耐アルコール性を評価した。
A:綿棒の着色も、印刷面の色落ちも無し
B:綿棒が着色し、印刷面にも若干の色落ちが見られたが目立たない程度
C:綿棒が着色し、印刷面にも色落ちが見られた
D:綿棒が着色し、印刷面にも色落ちがあり、剥ぎ取られた部分の基材が見えた
【0095】
<画像の基材への密着性>
上記で得られた印刷物のベタ画像部にテープを貼り、テープを剥がした後の画像を及びテープを観察し、下記の基準に従って、画像の基材への密着性を評価した。
A:画像に剥がれなし、剥がした後のテープにも汚れなし
B:画像に目立った剥がれなし、剥がした後のテープにやや汚れあり
C:画像に明らかに剥がれあり、剥がした後のテープにも汚れ付着
D:テープを貼った部分の画像がほぼ剥がれ、剥がした後のテープに転移
【0096】
表8~11に、インクの保存安定性、画像の耐水性、画像の耐アルコール性、及び画像の基材への密着性の評価結果を示す。
また、表8~11に、各インクについて、インク全量に対する顔料分散剤D(酸価が10mgKOH/g以下の顔料分散剤)の量(質量%)、インク全量に対するポリエステル樹脂P(酸価が5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂)の量(質量%)、インク全量に対する(メタ)アクリル樹脂M(酸価が10mgKOH/gより大きく30mgKOH/g以下の(メタ)アクリル樹脂))の量(質量%)、質量比A((メタ)アクリル樹脂Mに対するポリエステル樹脂Pの質量比)、及び質量比B(顔料分散剤Dに対するポリエステル樹脂Pの質量比)も記す。
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
【表11】
【0101】
表に示されるように、実施例1~23は、インクの保存安定性、画像の耐水性、画像の耐アルコール性、及び画像の基材への密着性のいずれにおいても良好な結果が示された。
【0102】
ポリエステル樹脂を含まないインク24が用いられた比較例1では、画像の耐水性及び耐アルコール性が不足していた。
顔料分散剤Dの代わりに酸価が高い顔料分散剤を含むインク25が用いられた比較例2では、インクの保存安定性が低下した。これは、顔料分散剤とポリエステル樹脂との十分な相溶性が得られなかったためと推測される。また、画像の耐水性及び耐アルコール性も低下した。
ポリエステル樹脂Pの代わりに酸価の高いポリエステル樹脂を含むインク26が用いられた比較例3では、画像の耐水性及び耐アルコール性が低下した。
(メタ)アクリル樹脂Mの代わりに酸価の高い(メタ)アクリル樹脂を含むインク27が用いられた比較例4は、画像の耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性が低下した。
(メタ)アクリル樹脂Mの代わりに酸価を有しない(メタ)アクリル樹脂を含むインク28が用いられた比較例5では、インクの保存安定性が低下した。これは、ポリエステル樹脂との十分な相溶性が得られなかったためと推測される。また、画像の耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性も低下した。これも、相溶性が悪いことが影響していると考えられる。
質量比A((メタ)アクリル樹脂Mに対するポリエステル樹脂Pの質量比)が高いインク29が用いられた比較例6では、画像の耐水性、耐アルコール性、及び基材への密着性が低下した。これは、(メタ)アクリル樹脂、顔料分散剤との十分な相溶性が得られなかったためと考えられる。