(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171467
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置
(51)【国際特許分類】
F01D 21/00 20060101AFI20241205BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20241205BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F01D21/00 W
F01D25/24 S
F01D25/00 W
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088487
(22)【出願日】2023-05-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発/タービン発電設備次世代保守技術開発」」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】志鷹 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】二宮 義和
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 司
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰規
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071BA22
(57)【要約】
【課題】計測された情報に基づいて予測された過去から現在までの損傷量および将来の運転条件に基づいて予測された将来の損傷量を時系列で認識することができる蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置100は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンの高温部品の損傷量に関する情報を示す過去損傷量関連情報と、ユーザインターフェース140の入力画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および過去損傷量関連情報に基づいて算出された将来における高温部品の将来損傷量に関する情報を示す将来損傷量関連情報とを、ユーザインターフェース140の表示画面に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部128を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンの高温部品の損傷量に関する情報を示す過去損傷量関連情報と、ユーザインターフェースの入力画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去損傷量関連情報に基づいて算出された将来における前記高温部品の将来損傷量に関する情報を示す将来損傷量関連情報とを、前記ユーザインターフェースの表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備えることを特徴とする蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、
前記過去損傷量関連情報および前記将来損傷量関連情報の双方を時系列で前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項3】
前記表示情報生成部は、
所定時間おきに、前記過去損傷量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項4】
前記表示情報生成部は、
前記将来の運転条件が入力されるごとに、前記将来損傷量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項5】
前記高温部品は、タービンケーシングを含み、
前記表示情報生成部は、
前記タービンケーシングの点検が推奨される所定の点検閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項6】
前記高温部品は、タービンケーシングを含み、
前記表示情報生成部は、
前記将来損傷量に基づいて算出された前記タービンケーシングの点検が推奨される点検推奨時期に関する情報および交換が推奨される交換推奨時期に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項7】
前記高温部品は、タービン回転部を含み、
前記表示情報生成部は、
前記将来損傷量に基づいて算出された、前記タービン回転部の点検が推奨される点検推奨時期に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項8】
前記高温部品は、高温部品としての高圧タービン回転部、中圧タービン回転部、高圧外部ケーシング、高圧内部ケーシング、中圧外部ケーシング、中圧内部ケーシングを含むことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項9】
前記表示情報生成部は、
ユーザインターフェース画面を用いた操作において入力された第2の将来の運転条件および前記過去損傷量関連情報に基づいて算出された将来における前記高温部品の第2の将来損傷量に関する情報を示す第2の損傷量関連情報をさらに前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項10】
前記高温部品は、タービンケーシングを含み、
前記表示情報生成部は、
第2の損傷量に基づいて算出された前記タービンケーシングの点検が推奨される点検推奨時期および交換が推奨される交換推奨時期に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【請求項11】
前記高温部品は、タービン回転部を含み、
前記表示情報生成部は、
第2の損傷量に基づいて算出された、前記タービン回転部の点検が推奨される点検推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンに使用されるケーシングやロータなどの高温部品は経年的にクリープや疲労によって徐々に寿命を消費していき、やがてき裂や損傷が発生するリスクがある。そのため、従来、適切な評価を行うために実機の計測および非破壊検査が必要であった。
【0003】
近年、発電設備において、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する対策として再生可能エネルギの導入が加速されている。再生可能エネルギを利用した発電においては、天候などによって発電量が変化する。そのため、近年では、火力発電設備は、再生可能エネルギを利用した発電における不安定な電力供給を補うため、調整火力を中心とした運用に移行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-26273号公報
【特許文献2】特許4575176号公報
【特許文献3】特開2002-297710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、蒸気タービンを備える火力発電設備では、定格負荷を中心とした運用から調整火力を中心とした運用に移行している。調整火力としての運用に移行すると、起動停止回数や負荷変動の頻度が増える。この結果、蒸気タービンの特に高温部品、すなわち、高温の環境下で使用される高圧タービンおよび中圧タービンのロータおよび車室に関して、その使用温度が定常状態を維持しにくくなる。これによって、疲労損傷によるき裂の進展量が増加することになり、余寿命の観点では厳しい条件となる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、計測された情報に基づいて予測された過去から現在までの損傷量および将来の運転条件に基づいて予測された将来の損傷量を時系列で認識することができる蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、実施形態に係る蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置は、計測された情報に基づいて算出された疲労損傷およびクリープ損傷による過去から現在までの蒸気タービンの部品の損傷量に関する情報を示す過去損傷量関連情報と、ユーザインターフェースの入力画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去損傷量関連情報に基づいて算出された将来における前記高温部品の将来損傷量に関する情報を示す将来損傷量関連情報とを、前記ユーザインターフェースの表示画面に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る損傷量管理装置を有する蒸気タービンを備えた発電所の構成を模式的に示す系統図である。
【
図2】第1の実施形態に係る損傷量管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る損傷量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる高圧外部車室のハツリ深さの入力画面の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る損傷量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる将来の運転条件の入力画面の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る損傷量管理装置によるき裂進展評価ステップの手順を示すフロー図である。
【
図6】第1の実施形態に係る損傷量管理装置による将来予測演算の手順を示すフロー図である。
【
図7】第1の実施形態に係る損傷量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる高圧外部車室の定周期計算および将来予測計算の結果の一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る損傷量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる中圧タービン回転部の定周期計算および将来予測計算の結果の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る損傷量管理装置による損傷量管理方法における基本環境の設定ステップを説明するためのフロー図である。
【
図10】第1の実施形態に係る損傷量管理装置による損傷量管理方法における定周期演算処理の手順を説明するためのフロー図である。
【
図11】第1の実施形態に係る損傷量管理装置による損傷量管理方法における将来予測演算処理の手順を説明するためのフロー図である。
【
図12】第2の実施形態に係る損傷量管理装置における将来予測演算処理を説明するための第1のフロー図である。
【
図13】第2の実施形態に係る損傷量管理装置における将来予測演算処理を説明するための第2のフロー図である。
【
図14】第2の実施形態に係る損傷量管理装置における表示画面の一例を示す図である。
【
図15】第2の実施形態に係る損傷量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる比較演算結果を選択する選択画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る蒸気タービンの高温部品の損傷量管理装置(以下、「損傷量管理装置」という)について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100を有する蒸気タービン10を備えた発電所1の構成を模式的に示す系統図である。
【0011】
発電所1は、蒸気タービン10、発電機20、および熱源装置30を備える。ここで、熱源装置30は、ボイラ31および再熱器32を有する。
【0012】
図1に示すように、蒸気タービン10は、高圧タービン11、中圧タービン12、低圧タービン13、復水器16、給水ポンプ17、および損傷量管理装置100を備える。高圧タービン11は、高圧タービン回転部11a、高圧外部ケーシング(高圧外部車室)11bおよび高圧内部ケーシング(高圧内部車室)11cを有する。また、中圧タービン12は、2つが設けられている場合を例示している。それぞれの中圧タービン12は、中圧タービン回転部12a、中圧外部ケーシング(中圧外部車室)12bおよび中圧内部ケーシング(中圧内部車室)12cを有する。ここで、高圧タービン回転部11aおよび中圧タービン回転部12aはそれぞれ、複数の動翼(羽根)が植設されたロータシャフトである。
【0013】
ボイラ31は、蒸気タービン10側から供給される給水を加熱して蒸気を発生させる。ボイラ31で発生した蒸気は、主蒸気管33により高圧タービン11に導かれる。高圧タービン11は、主蒸気管33から導入された蒸気の熱エネルギを高圧タービン回転部11a等の回転エネルギに変換し、高圧タービン11で仕事をした蒸気を低温再熱管34に排出する。低温再熱管34に排出された蒸気は再熱器32に導入される。再熱器32は導入された蒸気を再熱して、その蒸気を高温再熱管35に導出する。
【0014】
中圧タービン12は、高温再熱管35から導入された蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換し、中圧タービン12で仕事をした蒸気をクロスオーバー管14に排出する。低圧タービン13は、クロスオーバー管14から導入された蒸気の熱エネルギを低圧タービン回転部(図示しない)等の回転エネルギに変換し、低圧タービン13で仕事をした蒸気を排気管15に排出する。発電機20は、高圧タービン11、中圧タービン12および低圧タービン13により駆動されることによって回転エネルギを電気エネルギに変換し、発電を行う。
【0015】
復水器16は、排気管15から導入された蒸気を凝縮させて復水とする。給水ポンプ17は、復水器16の復水を給水として給水管18を介してボイラ31に供給する。
【0016】
損傷量管理装置100は、蒸気タービン10における疲労損傷およびクリープ損傷によるき裂進展に係る健全性を管理するための装置である。蒸気タービン10に係る各状態量は、図示しないそれぞれの検出器により測定され、これらの信号は、たとえばDCS(Distributed Ccontrol System)などの発電所内制御装置40に取り込まれる。損傷量管理装置100は、損傷量管理に必要な計測データを、発電所内制御装置40から取得する。なお、損傷量管理装置100の詳細については、後述する。なお、以下では、損傷量管理装置100が管理する対象として、蒸気タービン10の高温部品を例にとって示しているが、以下の内容は、例えば蒸気弁のケーシングなどのようにクリープと疲労が原因のき裂によるものについても適用可能である。
【0017】
ここで、本実施形態において、損傷量管理装置100が対象とする蒸気タービン10の高温部品とは、高圧タービン11の高圧タービン回転部11a、高圧外部車室11b、高圧内部車室11c、中圧タービン12の中圧タービン回転部12a、中圧外部車室12bおよび中圧内部車室12cである。なお、以下、高圧タービン回転部11aおよび中圧タービン回転部12aをタービン回転部10aと総称する。また、高圧外部車室11b、高圧内部車室11c、中圧外部車室12bおよび中圧内部車室12cを車室10bと総称する。また、タービン回転部10aを以下ではロータとも呼ぶものとする。
【0018】
<損傷量管理装置の構成>
次に、損傷量管理装置100について説明する。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0020】
損傷量管理装置100は、例えば、実機で計測された情報(以下、「計測情報」または「計測された情報」)に基づいて過去から現在までのき裂進展量、き裂長さおよび損傷量の予測、および将来想定する運転条件に基づいて将来のき裂進展量、き裂長さおよび損傷量を予測して、損傷量を管理する装置である。また、損傷量管理装置100は、例えば、損傷量などの予測結果を表示部に表示させるための表示情報を生成する。なお、計測情報は、当該計測値が計測された時刻情報を含む。
【0021】
図2に示すように、損傷量管理装置100は、計測情報取得部110、演算部120、記憶部130、ユーザインターフェース140、および進行制御部150を備える。損傷量管理装置100は、たとえば、コンピュータシステムであるが、それぞれの要素の機能を有する個別の機器、装置の集合であってもよい。
【0022】
計測情報取得部110は、損傷量管理に必要な計測データを、発電所内制御装置40から取得するインターフェースである。計測情報取得部110は、発電所内制御装置40に取り込まれる計測データのうち、損傷量管理に必要な運転時の蒸気タービン10に関する計測情報(以下、計測データともいう)をたとえば1分などの所定の時間間隔(計測情報取得周期)で取得する。
【0023】
計測情報は、たとえば、主蒸気圧力、主蒸気温度、再熱蒸気温度などの蒸気条件、タービン回転部10aの回転数、および、たとえば、高圧タービン11の第1段落ノズルの入口圧力または出口圧力などのタービン内部の状態量、および車室10bの温度等の状態量である。
【0024】
計測情報取得部110は、取得した計測情報を、記憶部130の計測情報記憶部132に出力する。計測情報記憶部132は、この計測情報を収納、記憶する。
【0025】
演算部120は、状態量演算部121、応力評価部122、脆化演算部123、疲労き裂進展演算部124、クリープき裂進展演算部125、損傷量演算部126、将来予測部127、および表示情報生成部128を有する。
【0026】
演算部120のうち、以下に説明する状態量演算部121、応力評価部122、脆化演算部123、疲労き裂進展演算部124、クリープき裂進展演算部125、および損傷量演算部126は、過去から現在までのき裂長さa、き裂深さd、および損傷量Dに関する演算処理である定周期演算処理にかかわる部分である。
【0027】
状態量演算部121は、計測情報取得部110がたとえば1分などの計測情報取得周期ごとに取得した計測情報に基づいて、伝熱計算に用いる状態量の推定演算を行う。具体的には、たとえば1分などの計測情報取得周期を、たとえば10秒などの状態量の演算の間隔(応力演算周期)に分割する。計測情報取得周期ごとに取得した計測情報それぞれの間における状態量の変化は線形であると仮定して、内挿により応力演算周期ごとの状態量を算出する。
【0028】
応力評価部122は、状態量演算部121により算出された応力演算周期ごとの状態量に基づいて、評価部位における応力、具体的には、熱応力ならびに圧力などの外力および遠心力による応力を算出する。
【0029】
脆化演算部123は、当該損傷量管理装置100用としてインストールされたプログラムを収納するプログラム記憶部133に収納された材料データ、および状態量演算部121により算出された評価部位の温度等に基づいて、評価部位の材料の脆化度を算出する。
【0030】
疲労き裂進展演算部124は、応力評価部122により算出された評価部位の応力、および、脆化演算部123により算出された評価部位の材料の脆化度に基づいて、たとえば1日などの、損傷量演算周期で、評価部位の疲労き裂進展速度を算出する。この結果、新たな、き裂進展量が得られる。
【0031】
クリープき裂進展演算部125、応力評価部122により算出された評価部位の応力、および、脆化演算部123により算出された評価部位の材料の脆化度、およびプログラム記憶部133に収納された材料データに基づいて、クリープき裂進展速度を算出する。この結果、新たな、き裂進展量が得られる。
【0032】
なお、以下では、疲労き裂進展とクリープき裂進展を総称してき裂進展と、また、疲労き裂進展量とクリープき裂進展量を総称してき裂進展量と呼ぶものとする。
【0033】
損傷量演算部126は、疲労き裂進展演算部124により算出された疲労き裂進展速度、およびクリープき裂進展演算部125により算出されたクリープき裂進展速度により得られた「き裂長さa」に変換定数を乗じて「き裂深さd」に変換する。この「き裂深さd」を「限界き裂深さdth」で除することにより、損傷量Dを算出する。変換定数および「限界き裂深さdth」は、当該損傷量管理装置100にインストールされたプログラムに付随するデータとして、後述する記憶部130のプログラム記憶部133に収納されている。「限界き裂深さdth」は、具体的には、後述するロータの点検管理値と車室の交換管理値に相当するき裂深さ[mm]である。
【0034】
将来予測部127は、将来、すなわち現在より後の期間のき裂長さa、き裂深さd、および損傷量Dに関する演算処理である将来予測演算処理を行う。将来予測部127は、定周期演算処理のような演算を行うのではなく、後述するユーザインターフェース140に将来の運転計画(
図4参照)として入力された情報に基づいて、運転パターン毎に発生する応力を予め評価し記憶しておき、その応力を読み込んで、損傷量を計算、積算して各1年分の損傷量を算出する。ここで、運転計画として入力された情報は、演算の条件であるので、以下、運転条件とも呼ぶ。将来予測部127は、起動条件と運転パターンの2つの条件に基づいて将来予測演算処理を行う。
【0035】
起動条件は、たとえば冷態起動、温態起動、および急速起動の3つのパターンのそれぞれ年間の回数に基づいている。ここで、冷態起動とは、蒸気タービン起動時の高圧タービン第一段落内面金属温度が所定の温度(たとえば180℃)以下であるときの起動であり、一般に数日間以上の停止時間後の起動が該当する。温態起動とは、蒸気タービン起動時の高圧タービン第一段落内面金属温度が所定の範囲(たとえば180~350℃)にあるときの起動であり、一般に2~3日程度の停止後の起動が該当する。また、急速起動とは、起動時に現れる各種の過渡的状態値が,制限値を超えない範囲で可能な限り短時間で起動することをいう。
【0036】
また、運転パターンは、1日の各時刻における出力[MW]、言い換えれば1日のうちでの出力[MW]の時間変化のパターンである。あらかじめ設定された複数の運転パターンのそれぞれの日数の1年の日数に対する割合(%)が入力される。なお、以下では、運転パターンを日負荷条件、運転パターンを示す曲線を日負荷曲線という場合もある。
【0037】
起動条件および日負荷条件のそれぞれのパターンについて、あらかじめ応力履歴が算出されており、記憶部130のパターン別応力記憶部135に記憶、収納されている。なお、これらの値は、インストールされ記憶部130のプログラム記憶部133に収納されているプログラム内のデータ部分として、プログラムとともにプログラム記憶部133に収納されてもよい。
【0038】
将来予測部127は、将来の運転計画として入力されたそれぞれのパターンの稼働率に基づいて稼働時間を算出する。また、将来予測部127は、パターン別応力記憶部135に記憶された応力履歴から、定周期計算と同様の手法で、き裂長さa、き裂深さd、および損傷量Dの増加分を算出する。将来予測部127は、この損傷量Dの増加分を、前年の損傷量Dに加えて、当該年の損傷量Dとして算出する。また、当該年の損傷量の増加は直線的であるとする。
【0039】
表示情報生成部128は、ユーザインターフェース140に表示させる入力画面および出力画面の表示情報を生成する。入力画面については
図3および
図4を、また出力画面については
図7および
図8を、それぞれ引用しながら後に説明する。
【0040】
記憶部130は、入力情報記憶部131、計測情報記憶部132、プログラム記憶部133、演算結果記憶部134、パターン別応力記憶部135、テンプレート記憶部136、および表示情報記憶部137を備える。記憶部130は、例えば、ハードディスクドライブ、不揮発性メモリ装置などにより実現される。記憶部130は、損傷量管理装置100と物理的に一体ではなく図示しないネットワークを介して接続される形態とされてもよい。
【0041】
入力情報記憶部131は、ユーザインターフェース140を介して入力された、例えば、車室のクラック・欠陥を機械的な方法で除去して表面を滑らかにした記録、すなわちハツリの記録を含む定期検査情報、将来の運転条件、各種設定条件などを記憶する。
【0042】
計測情報記憶部132は、計測情報取得部110により取得された計測情報を、順次、収納、記憶する。
【0043】
プログラム記憶部133は、損傷量管理装置100にインストールされたプログラムを収納する。この際、プログラムに付属する演算用のデータを併せて収納する。
【0044】
演算結果記憶部134は、演算部120で演算された結果を順次、収納、記憶する。演算結果記憶部134は、過去から現在までのき裂進展量(過去き裂進展量)、き裂長さ(過去き裂長さ)、き裂深さ(過去き裂深さ)、および損傷量(過去損傷量)に関する情報として、例えば、後に
図10を引用しながら説明する定周期演算処理における過去から現在までのき裂進展量、き裂長さ、き裂深さ、および損傷量の演算結果などを記憶する。なお、この情報は、過去損傷量関連情報として機能する。
【0045】
また、演算結果記憶部134は、後に
図11を引用しながら説明する将来の損傷量に関する情報として、例えば、将来におけるき裂進展量(将来き裂進展量)、き裂長さ(将来き裂長さ)、き裂深さ(将来き裂深さ)、および損傷量(将来損傷量)、点検閾値、点検推奨時期、交換閾値、交換推奨時期などの演算結果を記憶する。これらの情報は、将来損傷量関連情報として機能する。
【0046】
ここで、点検閾値とは、着目する指標が所定の値に達する時点で、点検の実施を推奨することになるその所定の値のことである。また、点検推奨時期とは、その推奨する点検の実施の時点のことである。詳細には、タービン回転部10aの場合は、着目する指標は、損傷量であり、点検閾値は所定の損傷量である。また、車室10bの場合は、着目する指標は、当該車室10bの使用開始からの期間であり、点検閾値は当該車室10bの使用開始から所定の期間(たとえば10年)である。この点検閾値も過去損傷量関連情報として機能する。
【0047】
また、交換閾値とは、車室10bについての閾値である。交換閾値についての着目する指標は損傷量であり、交換閾値は所定の損傷量である。また、交換推奨時期は、当該車室10bの損傷量が交換閾値に到達する時点である。
【0048】
パターン別応力記憶部135は、ユーザインターフェース140を介して入力された将来の運転条件における各パターンについて、予め算出されている応力履歴、温度履歴等を収納する。なお、パターン別応力記憶部135は、プログラム記憶部133の一部であってもよい。すなわち、プログラムに付属する演算用のデータの一部として、プログラム記憶部133に収納されており、その部分をパターン別応力記憶部135と呼ぶことでもよい。
【0049】
テンプレート記憶部136は、ユーザインターフェース140に表示させる画像の生成の際に、共通部分となるテンプレートを収納する。
【0050】
表示情報記憶部137は、表示情報生成部128が生成した表示情報を収納する。
【0051】
ユーザインターフェース140は、各種情報をユーザ(管理者)に対して表示する表示部と、ユーザが各種情報を入力する入力装置とを備える。表示部は、例えば、ディスプレイなどで構成される。また、表示部は、表示用の画面の機能を備えるとともに、画面に直接入力可能な入力装置としての機能を備えるタッチパネルで構成されてもよい。入力装置は、例えば、キーボードやマウスなどで構成されてもよい。入力装置は、例えば、車室のクラック・欠陥除去の記録を含む定期検査情報、各種設定条件などの入力を、所定のフォーマットで入力可能とするUSBポートなどとの情報授受端末を有する。なお、前述のように、表示部の入力機能を用いる場合があってもよい。
【0052】
ユーザインターフェース140は、特に入力部は、発電所1の管理者用と、蒸気タービン10の製造メーカの管理者用とが異なってもよい。すなわち、後に例示する車室10bのハツリの深さの入力のように、発電所1の管理者には入力ができない場合があってもよい。
【0053】
進行制御部150は、損傷量管理装置100による損傷量管理方法におけるそれぞれのフローの進行を制御する。進行制御部150は、これらのフローにおける各判定ステップについての判定も行う。具体的には、進行制御部150は、後述する
図9ないし
図11に示すフローにおける判定を行い、またそれぞれのステップで損傷量管理装置100内の当該機能を行うべき部分にその機能の実行を命ずる。進行制御部150として、たとえば、プログラマブルロジックコントローラ(Progarammable Logic Controller)を用いてもよい。
【0054】
<入力画面>
以下、
図3を引用しながら、ユーザインターフェース140の直接入力可能な画面として、定期検査における車室10bのハツリ、すなわち、車室10bのクラック・欠陥除去量の入力画面(ハツリ図)について高圧外部車室11bの場合を例にとって説明する。車室10bの場合は、定期検査においてクラック・欠陥が確認された場合、その部分をはつる、すなわち除去する。その除去量は、定期検査の記録に残される。車室10bのそれぞれの部位について、定期検査の記録から読み取り、入力画面から入力することができる。入力は、蒸気タービン10の製造メーカが行う。
【0055】
図3は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100におけるユーザインターフェース140に表示させる高圧外部車室11bのハツリ深さの入力画面141の一例を示す図である。
図3は、車室10bの中の高圧外部車室11bの場合を例示したものである。前述のように、入力は、蒸気タービン10の製造メーカが行うことから、この入力画面141は、製造メーカ側のみに表示される。
【0056】
なお、「ハツリ」とは、部材の表面のクラックまたは欠陥を除去して表面を滑らかにすることを意味することから、「クラック・欠陥除去」とも言うこととする。
【0057】
入力画面141において、左上の破線で囲んだA部には、車室のクラックハツリ深さ記録の表題として”Casing crack excavation depth record”と表示されている。
【0058】
表題の下の破線で囲んだB部には、右側の「レ」部をタッチすると、対象機器の選択肢がプルダウン表示される。入力画面141は、「高圧外部車室」を選択した場合であり、選択された対象機器である”HP Outer Casing”と表示されている。
【0059】
入力画面141内の対象機器の表示の下の矢印Cで示す部分には、選択された対象機器に対応する図が表示されている。入力画面141では、「高圧外部車室」が選択されていることから、高圧外部車室11bの図を表示している。
【0060】
入力画面141内のC部には、損傷量評価部位(ハツリ深さ入力部位)の位置の例が、中抜きの丸印C1で表示されている。他の対象機器の場合を含めて、それぞれの対象機器について表示される図にも同様の丸印があり、これら中抜きの丸印は対象機器とセットとなって表示される。丸印C1の他にも丸印がある場合は、たとえば、異なる線種や色別の表示としてもよい。
【0061】
入力画面141において、「クラック評価部位」(“Crack Evaluation Part”)の表題の下の破線で囲んだE部は、ハツリ部位の図であり、各ハツリ図に共通である。
【0062】
入力画面141において、右側のF部は、ハツリ量の入力箇所である。番号および部位の名称が表示される。部位の名称の右側のG部に示す四角い枠に、ハツリ量をmm単位で入力可能である。
【0063】
入力画面141において、右下に、H部の”Back”およびJ部の”Upload”が並んで表示されている。H部の”Back”をクリックすると、入力内容をキャンセルして前の画面に戻る。また、J部の”Upload”をクリックすると、入力内容を損傷量管理装置100にアップロードする。すなわち、入力情報記憶部131に収納されていた当該部分のハツリ量データが、今回入力されたハツリ量に書き換えられる。
【0064】
以上に説明した入力画面141において、A部の表題、E部のハツリ部の説明図、D部の表題、H部、J部については、各ハツリ図について共通であり、共通の図のデータとして、テンプレート記憶部136に収納されている。
【0065】
図4は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100におけるユーザインターフェース140に表示させる将来の運転条件の入力画面142の一例を示す図である。
【0066】
入力画面142の左上のA部には、「将来運転計画の設定」(”Future operation plan setting”)の表題が表示されている。
【0067】
表題の下のB部には、「起動パターン選択」(”Select Start Up Pattern”)の小題が表示され、その下に「起動パターン選択」の入力用の表Cが表示されている。
【0068】
「起動パターン選択」の入力用の表Cは、各年における各起動モードの回数を入力する表である。上から順に、「冷態起動モード」(”Start up mode:Cold”)、「温態起動モード」(” Start up mode:Warm”)、および「急速起動モード」(” Start up mode:Hot”)となっている。横方向は、現在の属する年から以降の年の枠となっている。
【0069】
「起動パターン選択」入力用の表Cの下のD部には、「運転パターン選択」(”Select Oparaion Pattern”)のタイトルが表示されている。
【0070】
さらにその下のE部には、「日負荷曲線」(”Daily Load Curve”)の小題が表示されており、その下に、
図4の例では、3つの1日における負荷の時間的な変化を示す曲線(日負荷曲線)が運転パターンとして描かれたグラフFが表示されている。グラフFの横軸は、1日における時刻、縦軸は、負荷(”Load[MW]”)である。ここで、負荷は、発電機20の出力[MW]としてよい。
【0071】
グラフFの下に、運転パターン入力用の表Gが表示されている。表Gの横の各列は、運転パターン、単位、現在の属する年から以降の年の各年の入力用の欄である。表Gの縦の各行は、パターン1ないし3および各年の稼働率[%]である。パターン1ないし3の入力欄は、当該パターンの運転を行う日の1年の日数に対する割合[%]である。稼働率[%]の値は、パターン1ないし3の割合[%]の合計である。このように、将来における運転条件、すなわち各年における起動パターンおよび運転パターンを任意に設定することができる。
【0072】
入力画面142における右上の部分には、“Back”の選択表示H、および“Save”の選択表示Kが表示されている。“Save”を押した場合は、表Cおよび表Gに入力した情報が、表示情報記憶部137に収納、記憶される。また、“Save”を押さずに“Back”を押した場合は、表Cおよび表Gに入力した情報の表示が、入力前の表示に戻る。
【0073】
なお、ここで、選択表示を「押す」のように表現した場合は、タッチスクリーンでタッチする動作、あるいは、カーソルでクリックする動作など、当該部分に外部から働きかけて当該部分を特定あるいは選択する動作を総称するものとする。以下においても同様である。
【0074】
<き裂進展評価>
ここで、定周期演算処理におけるき裂進展評価について説明する。
【0075】
図5は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100によるき裂進展評価ステップS100の手順を示すフロー図である。
【0076】
き裂進展評価ステップS100に先立って、計測情報取得部110が、発電所内制御装置40から計測情報を取得する(ステップS22)。
【0077】
ここで、き裂進展評価の価対象部位は、タービン回転部10aおよび車室10bについてあらかじめ評価を行った結果で選定された箇所である。
【0078】
き裂進展評価ステップS100は、状態量・応力評価ステップS110、および損傷量評価ステップS120を有する。
【0079】
状態量・応力評価ステップS110として、まず、状態量演算部121が、取得した計測情報(計測された情報)に基づいて、伝熱計算に用いる状態量の推定演算を行う(ステップS111)。具体的には、まず、たとえば1分の計測情報取得周期を、たとえば10秒の状態量の演算の間隔(応力演算周期)に分割する。計測情報取得周期ごとに取得された計測情報それぞれの間は線形の変化と仮定して、内挿によりたとえば10秒の応力演算周期ごとの状態量を算出する。
【0080】
状態量演算部121は、応力演算周期ごとの状態量に基づいて、伝熱計算に用いる各部の蒸気温度、圧力、熱伝達率を算出する。
【0081】
次に、応力評価部122が、温度、熱応力評価を行う(ステップS112)。詳細には、応力評価部122は、まず、応力演算周期ごとに得られた各部の蒸気温度および熱伝達率に基づいて伝熱計算を行い、評価部位の温度の推定値を算出する。なお、この際に必要な、評価部位の形状(伝熱面積)および、比熱、熱伝導率等の物性値は、プログラムに付随するデータとしてプログラム記憶部133に収納されている。応力評価部122は、続いて、これらの温度分布に基づいて評価部位の熱応力を算出する。
【0082】
応力評価部122は、ステップS112に並行して、圧力および遠心力による応力評価を行う(ステップS113)。具体的には、蒸気圧力によるタービンケーシングの応力分布を算出する。また、タービン回転部の遠心力による応力を算出する。この結果、評価部位の圧力および遠心力による応力が得られる。
【0083】
次の、損傷量評価ステップS120では、演算部120は、ステップS112およびステップS113での演算結果を用いてき裂進展量を算出し、損傷量・余寿命計算を行う。その詳細なステップを以下に説明する。
【0084】
まず、応力評価部122が、各評価部位についての応力振幅評価を行う(ステップS121)。具体的には、まず、応力評価部122が、熱応力と、圧力および遠心力による応力の合計値である合計応力値を算出する。応力評価部122は、続いて、所定の時間幅に亘る合計応力値の時間変化から、たとえば、レインフロー法を用いて応力振幅を導出する。ここで、所定の時間幅とは、損傷量評価ステップS120で行う損傷量等の評価における演算周期(損傷量演算周期)である。損傷量演算周期はたとえば1日である。
【0085】
ステップS121に並行して、脆化演算部123が、脆化評価を行う(ステップS122)。金属材料の吸収エネルギの低下としての脆化は、通常、シャルピー衝撃試験において延性破面と脆性破面の割合が等しくなる試験温度である延性脆性遷移温度(FATT:Fracture Appearance Transition Temperature)で表現される。脆化演算部123による脆化量評価においては、まず、当該損傷量管理装置100用としてインストールされたプログラムを収納するプログラム記憶部133に収納された材料データ、およびステップS112で算出した評価部位の温度に基づいて、評価部位の材料の飽和脆化量ΔFATT∞を算出する。次に、脆化演算部123は、初期設定データ中の材料データによる評価部位の材料中の不純物元素量、運転状態による使用温度(保持温度)および使用時間(保持時間)に基づいて、脆化量FATTの飽和脆化量ΔFATT∞に対する評価部位の材料の脆化比率RFを算出する。次に、脆化演算部123は、脆化量ΔFATTを、(飽和脆化量ΔFATT∞×脆化比率RF)により算出する。脆化量ΔFATTは、演算結果記憶部134に収納・記憶されている。損傷量演算周期ごとに演算された脆化量ΔFATTは、演算結果記憶部134から読み出された積算された脆化量ΔFATTに加算され、新た積算された脆化量ΔFATTが算出され、演算結果記憶部134に収納・記憶される。
【0086】
次に、疲労き裂進展演算部124による疲労き裂進展量評価(ステップS123)およびクリープき裂進展演算部125によるクリープき裂進展量評価(ステップS124)について説明するが、それに先立ち、初期き裂について説明する。
【0087】
き裂進展量の評価を行う際には、解析条件として初期き裂(き裂の長さまたは深さ)の値すなわち時刻ゼロにおけるき裂の値が必要であることから、微小な値を設定する。この各評価部位の初期き裂の値は、当該損傷量管理装置100用としてインストールされたプログラムに付属するデータとして、プログラムを収納するプログラム記憶部133に収納される。この付属データは、初期データとして、演算結果記憶部134に収納される。また、車室10bについては、定期検査時にクラック・欠陥除去(ハツリ)を行っている場合、入力情報記憶部131に記憶された初期き裂の情報が、
図3の入力画面141の例で示す評価対象機器用の入力画面でユーザインターフェース140を介して入力された値に書き換えられる。
【0088】
疲労き裂進展演算部124による疲労き裂進展量評価(ステップS123)およびクリープき裂進展演算部125によるクリープき裂進展量評価(ステップS124)では、それぞれ、損傷量演算周期ごとのき裂進展量の増分を算出し、演算結果記憶部134に記憶されたき裂進展量にその増分を加算して新たなき裂進展量を算出する。演算結果記憶部134に記憶されたき裂進展量は、この新たなき裂進展量に書き換えられる。
【0089】
まず、疲労き裂進展演算部124が、ステップS121の応力振幅評価およびステップS122の脆化評価の結果に基づいて疲労き裂進展量評価を行う(ステップS123)。
【0090】
疲労き裂進展演算部124は、疲労き裂進展速度(da/dN)を算出するとともに、演算結果記憶部134に収納されているき裂長さaの値を読み出し、これに疲労き裂進展速度による増分を加えて、新たなき裂長さaを算出する。演算結果記憶部134に収納されたき裂長さaは、この新たなき裂長さaに書き換えられる。
【0091】
疲労き裂進展演算部124は、応力振幅評価(S121)の結果から、この期間の応力拡大係数の差分ΔKを算出し、疲労き裂進展速度(da/dN)を算出する。疲労き裂進展演算部124は、疲労き裂進展速度(da/dN)の演算式の係数を、脆化演算部123により算出された脆化量ΔFATTに基づいて算出する。
【0092】
次に、クリープき裂進展演算部125が、ステップS112で算出された熱応力、ステップS113で算出された応力、プログラム記憶部133に収納された降伏強さなどの材料データに基づいて、クリープき裂進展量評価を行う(ステップS124)。クリープき裂進展演算部125は、たとえば、応力拡大係数Kおよび温度に依存する演算式を用いて、クリープき裂進展速度(da/dt)を算出する。クリープき裂進展演算部125は、クリープき裂進展速度の演算式の係数を、脆化演算部123により算出された脆化量FATTに基づいて算出する。なお、応力拡大係数Kを用いた評価以外にも、必要に応じて、C*、J*あるいは修正J積分を用いた評価を行ってもよい。
【0093】
クリープき裂進展演算部125は、クリープき裂進展速度(da/dt)を算出するとともに、演算結果記憶部134に収納されているき裂長さaの値を読み出し、これにクリープき裂進展速度による増分を加えて、新たなき裂長さaを算出する。演算結果記憶部134に収納されたき裂長さaは、この新たなき裂長さaに書き換えられる。この結果、クリープき裂進展演算部125により算出されたき裂長さaは、次のステップでの疲労き裂進展演算部124によるき裂進展量の演算の初期値となる。また、車室10bについて定期検査時にクラック・欠陥除去(ハツリ)を行っている場合には、その直後の初期値は、前述のように、評価対象機器用の入力画面でユーザインターフェース140を介して入力された値となる。
【0094】
なお、このように定期検査時にクラック・欠陥除去(ハツリ)を行っており、入力情報記憶部131に記憶された初期き裂の情報が書き換えられた場合、定周期演算および将来予測演算処理におけるき裂進展量の演算の初期条件が変更となることから、出力画面143における定周期演算分の表示曲線L1の表示は消去され、新たな定周期演算分の表示に切り替わる。また、将来予測演算処理分の表示曲線L2は初期条件が変更後の曲線L2に変更される。
【0095】
次に、損傷量演算部126が、損傷量・余寿命計算を行う(ステップS125)。損傷量演算部126は、演算結果記憶部134で新たに書き換えられた「き裂長さa」を読み出し、「き裂長さa」を「き裂深さd」に変換のうえ、プログラム記憶部133に収納されている「限界き裂深さdth」で「き裂深さd」を除することにより、損傷量Dを算出する。
【0096】
<将来損傷量の演算>
図6は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100の将来予測部127による将来予測演算のステップ(将来予測ステップ)S200の手順を示すフロー図である。
図6は、
図11を引用しながら後述する将来運転計画の読み出しステップS42に続く将来予測ステップS200の手順の詳細である。将来予測ステップS200では、予め、各パターンについて算出されて、パターン別応力記憶部135に収納されている応力履歴に基づいて、き裂進展量を計算する。算出された各パターンのき裂進展量を積算したき裂長さに基づいて、き裂深さに換算のうえ、年ごとの損傷量Dすなわちき裂進展量の限界き裂深さd
thに対する比を算出する。
【0097】
まず、将来予測部127は、m=1、D1=D0と設定する(ステップS201)。ここで、mはたとえば2045年のように年を示す。また、D0は、将来計算の最初の年(たとえば、現在の属する年、あるいは翌年)の損傷量計算の初期値である。たとえば、m=1が現在の属する年であれば、現在の損傷量、すなわち、定周期計算による現在の値である。D0の値は、演算結果記憶部134に収納されている。また、演算結果記憶部134は、以下のステップで算出された最新の損傷量を収納する。
【0098】
次に、将来予測部127は、D
m=D
m―1、ΔD
m=0、j=1とする(ステップS202)。すなわち、算出対象年のき裂長さの初期値を、前年末のき裂長さとする。ここで、j(j=1~J)は、
図4の入力画面142における、将来運転パターンの番号である。表Cの「起動パターン」に係るそれぞれの起動モードおよび表Gの「運転パターン」に係るそれぞれのパターンを一貫番号に並べて、その総数をJとする、たとえば、
図4に示す入力画面142の場合は、Jは6(=3+3)である。
【0099】
次に、将来予測部127は、第jパターンの稼働時間を導出する(ステップD203)。具体的には、ユーザインターフェース140から入力され入力情報記憶部131に収納された第m年における第jパターンの稼働率に1年間の総時間を乗じて第jパターンの稼働時間を算出する。
【0100】
次に、将来予測部127は、パターン別応力記憶部135から、あらかじめ算出されているパターン別の応力を読み出す(ステップS204)。次に、将来予測部127は、第jパターンの応力に基づいて、損傷量への1時間当たりの寄与分Δdjを算出したうえで、損傷量への1時間当たりの寄与分Δdjに第jパターンの稼働時間を乗じて、第jパターンによる増分損傷量ΔDmjを導出する(ステップS205)。
【0101】
次に、将来予測部127は、ステップS205で導出した第jパターンの増分損傷量ΔDmjを順次加算して、第m年における損傷進展量ΔDmを算出する(ステップS206)。次に、将来予測部127は、jがJに達したか否かを判定(ステップS207)し、jがJに達していなければ(ステップS207 NO)、jに1を加え(ステップS208)、ステップS203からステップS207までを繰り返す。
【0102】
jがJに達していると判定すれば(ステップS207 YES)、将来予測部127は、演算結果記憶部134に収納された第(m-1)年における損傷量Dm-1を読み出し、これにステップS206で算出した第m年における増分損傷量ΔDmを加算して、第m年における新たな損傷量Dmを算出する(ステップS209)。演算結果記憶部134に第m年における損傷量Dmは新たな損傷量Dm(すなわち新たなき裂深さの限界き裂深さdthに対する比)が収納される。
【0103】
次に、将来予測部127は、mがMに達したか否かを判定(ステップS210)し、mがMに達していなければ(ステップS210 NO)、mに1を加え(ステップS211)、ステップS202からステップS210までを繰り返す。mがMに達していれば(ステップS210 NO)、将来予測ステップS200を終了する。
<出力画面>
【0104】
図7は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100におけるユーザインターフェース140に表示させる車室10bの例としての高圧外部車室11bの定周期計算および将来予測計算の結果の一例を示す出力画面143である。
【0105】
最上部のA部には、「蒸気タービン高温部品の余寿命予測」(”Remaining Life Prediction for High Temperature Steam Turbine Components”)の表題が表示されている。
【0106】
その下のB部には、当該プラントの名称が表示される。
【0107】
B部の下のC部には、対象機器の名称が表示される。C部は、右側のチェック部によりプルダウン表示で、対象機器の名称が表示され、選択したものが表示される。出力画面143の場合は、対象機器として「高圧外部車室」(”HP Outer Casing”)が選択、表示されている。
【0108】
C部の表題の下のD部には、C部で選択された対象機器を含む高圧タービン11の全体図が表示される。また囲みD1によって、選択された対象機器が、全体図のどの部分であるのかを示される。
【0109】
D部の全体図の右側のE部には、選択された対象機器の図が表示される。出力画面143の例では、高圧外部車室の図が表示される。また、E部の対象機器の図中に、評価部位が中抜きの丸印E1で表示される。出力画面143では、評価部位が1つの場合を例示しているが、複数表示されてもよい。この場合は、線種の変更あるいは色別等で識別してもよい。
【0110】
出力画面143の下側部分には、定周期計算および将来予測計算の結果を示すグラフKが表示される。グラフの横軸は歴年であり年の表示位置は、当該暦年の中間時点(たとえば6月30日)としている。また、縦軸は「基準に対するき裂進展深さ[%]」(“Crack depth vs Criteria”)、すなわち損傷量である。ここで、「基準」とは「限界き裂深さdth」を意味する。
【0111】
グラフKの上のG部には、”5yeares”、”10yeares”、”15yeares”、”20years”の選択肢が表示されている。出力画面143の場合は、”5years”が選択されているので、グラフKの横軸の暦年は、横軸の中央が現在を示す実線H1であり、実線H1の左側に過去の5年分、右側に将来の5年分が表示されている。
【0112】
グラフKには、横軸方向に、当該機器すなわち高圧外部車室の使用開始から10年の時点に、点検閾値を示す破線H2が表示されている。また、縦軸方向に、交換閾値を示す破線H3が示されている。
【0113】
グラフK中の曲線L1は、現在までの定周期計算の結果を示す曲線である。また、曲線L2は、将来計算の結果を示す曲線である。グラフKの右上のH部には、曲線が示す評価部位が表示される。なお、曲線L1、L2の表示は、E部で表示した点検対象を示すE1部と対応する識別(線種、色など)方法とする。
【0114】
後述するように、将来の曲線L2を作成する将来予測演算処理は、将来の運転計画が入力されたと判断されたときのみ行われる。この際の孔食の初期値は、将来の運転計画が入力されたと判断されたときの最終値である。一方、過去の曲線L1を作成する損傷量の定周期演算は、損傷量演算周期ごと(たとえば1時間おき)に行われる。したがって、たとえば1時間ごとに、過去の曲線L1が変化し、過去の曲線L1の最終値すなわち実線H1との交点は増加し続ける。このため、過去の曲線L1の最終値すなわち実線H1との交点と、将来の曲線L2の始点すなわち実線H1との交点は1時間ごとにずれが増加することになる。
【0115】
図7のグラフKは、過去の曲線L1の最終値すなわち実線H1との交点と、将来の曲線L2の始点すなわち実線H1との交点が一致している時点の場合、すなわち、将来予測演算処理が行われその結果が将来の曲線L2として表示されてから、1時間以内の時点の場合を示している。
【0116】
グラフKの右上のH部には、曲線が示す評価部位が表示される。なお、曲線L1、L2の表示は、E部で表示した点検対象を示すE1部と対応する識別(線種、色など)方法とする。
【0117】
出力画面143の右上部分には、点検および交換の推奨時期を示すアラーム表示としての表Mが表示される。表Mの縦の行は、「詳細点検」(“Detail Inspection”)および「車室交換」(“Casing Replace”)である。表の横の列は、「推奨時期」(“Recommendation”)および「残余期間」(“Remaing Period”)である。表M中には、グラフKの内容に対応する時期とそれに基づく残余期間が表示される。なお、表Mは、
図10および
図11を引用しながら後述する判定結果により、表示されない場合と表示される場合とがある。
【0118】
出力画面143において表Mの上には、選択表示(「レ」の部分)を有するプルダウン選択欄Nが表示されている。選択表示を押すと、プルダウンで、将来の運転計画の入力画面142やハツリ深さ入力画面141などの選択候補画面が表示され、遷移する画面を選択できる。
【0119】
なお、出力画面143に表示されている項目のうち、A部、B部、G部、N部は、各出力画面に共通である。
【0120】
図8は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100におけるユーザインターフェース140に表示させるタービン回転部10aの例としての中圧タービン回転部12aの定周期計算および将来予測計算の結果の一例を示す出力画面144である。以下では、高圧外部車室11bの出力画面143と異なる部分についてのみ説明する。
【0121】
出力画面143のC部に代えて、出力画面144のCa部には、プルダウンで選択した”IP Rotor”が表示されている。また、これに伴って、Da部には、中圧タービン12の全体図が表示され、対象機器をD1aで囲んでいる。また、全体
図Daの右側には、対象機器の
図Eaが表示される。
図Ea中には、評価部位Ea1ないしEa4が白抜きの丸印で表示されている。表示は識別のために、互いに異なる線種となっているが、色別等で識別できるようにしてもよい。
【0122】
グラフKには、評価部位Ea1ないしEa4のそれぞれの定周期計算結果および将来計算結果を示す曲線L11およびL21ないしL14およびL24が示されている。また、Ha部には、それぞれの曲線に対応する評価部位の名称が表示される。ここで、対象機器
図Ea中の表示を含めて、評価部位同士の識別は、線種や色において同じ表示を用いるものとする。
【0123】
車室10bの場合と異なり、タービン回転部10aでは、閾値は点検閾値のみとしているので、グラフKの縦軸方向に、点検閾値のレベルを示す破線H1が表示されている。これに対応して、出力画面144中の右上の表示されたアラーム表示としての非破壊点検推奨表Maには、「詳細点検」(”Detail Inspection”)の「推奨時期」(”Date”)および「残余期間」(”Remaining Period”)が表示される。なお、非破壊点検推奨表Maは、
図10および
図11を引用しながら後述する判定結果により、表示されない場合と表示される場合とがある。
【0124】
次に、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100による損傷量管理方法におけるそれぞれのフローについて説明する。
【0125】
<基本環境の設定処理>
図9は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100による損傷量管理方法における基本環境の設定ステップS10を説明するためのフロー図である。
【0126】
まず、損傷量管理装置100にプログラムを書き込む(ステップS11)。書き込まれたプログラムは、損傷量管理装置100のプログラム記憶部133に収納、記憶される。ここで、プログラムが書き込まれる際には、ミルシート情報などの材料データ、演算用の各種パラメータ、設定値などのテータ情報が付随して書き込まれる。以下のステップは、プログラムがインストールされた後に、損傷量管理装置100を起動した状態を前提としている。
【0127】
次に、過去の定期検査情報を入力する(ステップS12)。定期検査情報は、ユーザインターフェース140に設けられた情報授受端末を介して入力する。なお、ユーザインターフェース140の表示画面の入力機能を用いる場合があってもよい。
【0128】
次に、タービン回転部10a、車室10b関係の記録があるか否かを判定する(ステップS13)。これらの記録があると判定されなかった(ステップS13 NO)場合は、本フローを終了する。
【0129】
これらの記録があると判定された(ステップS13 YES)場合は、車室10bのクラック、欠陥除去の記録が有るか否かを判定する(ステップS14)。
【0130】
車室10bのクラック、欠陥除去の記録が有ると判定されなかった(ステップS14 NO)場合は、タービン回転部10a、車室10b関係の記録のみの登録を行う(ステップS16)。
【0131】
車室10bのクラック、欠陥除去(ハツリ)の記録が有ると判定された(ステップS14 YES)場合は、まず、車室10bのクラック、欠陥除去量の入力を行う(ステップS15)。クラック、欠陥除去量の入力は、
図3で例示したそれぞれの車室10bのクラック、欠陥除去量の入力画面で行う。そのうえで、タービン回転部10a、車室10b関係の記録の登録を行う(ステップS16)。
【0132】
以上が、基本環境の設定ステップS10のフローである。
【0133】
<定周期演算処理>
図10は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100による損傷量管理方法における定周期演算処理の手順を説明するためのフロー図である。
【0134】
まず、進行制御部150が、発電所1が運転中か否かを判定する(ステップS21)。判定は、計測情報記憶部132に記憶された情報のうち、例えば、発電機出力を用いて、これがノイズを考慮した判定値(たとえば、0.1MW)より大きいか否かの判定により行われる。
【0135】
発電所1が運転中と判定されなかった(ステップS21 NO)場合は、定周期演算処理を実施せずに終了する。
【0136】
発電所1が運転中と判定された(ステップS21 YES)場合は、計測情報取得部110が発電所内制御装置40から、運転データとしての計測情報を取得する(ステップS22)。ここで、取得する計測情報(計測された情報)としては、前述のように、主蒸気圧力、主蒸気温度、再熱蒸気温度などの蒸気条件、タービン回転部10aの回転数、および、タービン内部の状態量、および車室10bの温度等の状態量がある。
【0137】
次に、
図5を引用しながら説明したステップS100の損傷量の算出等が実行される。生成された演算結果は、演算結果記憶部134に収納、記憶される。
【0138】
表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS23)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、その表示情報を記憶する。
【0139】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報を
図7および
図8に示すように表示部に表示する(ステップS24)。
【0140】
ここで、表示情報生成部128は、損傷量演算周期(たとえば1時間)ごとに、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。そのため、表示部に表示される過去損傷量に関する143および144に例示される演算結果を示すグラフ中の過去から現在までの曲線は、損傷量演算周期ごとに更新される。
【0141】
以上のステップS21からステップS24までの処理が、損傷量演算周期ごとに、すなわち、たとえば1時間おきに繰り返される。そのため、
図7の出力画面143および
図8の出力画面144で例示したグラフKに表示される定周期演算結果の曲線が、損傷量演算周期ごとに更新される。
【0142】
次に、進行制御部150は、ステップS200の演算結果による損傷量の演算結果に基づいて、管理対象であるタービン回転部10aおよび車室10bのそれぞれについての判定を行う。これらの判定も、損傷量演算周期(たとえば1時間)ごとに行われる。
【0143】
まず、進行制御部150がステップS100の演算結果による損傷量に基づいて、タービン回転部10aについて行う判定について説明する。
【0144】
進行制御部150は、ステップS100の演算結果による損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したか否かを判定する(ステップS25)。
【0145】
損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS25 NO)場合は、損傷量演算周期ごとに、この判定を繰り返す。
【0146】
損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定された(ステップS25 YES)場合は、進行制御部150は、損傷量が点検閾値に達した年月日に関する情報(点検推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部134に出力する。演算結果記憶部134は、この情報を記憶する。表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS26)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0147】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS27)。ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、
図7に示す出力画面143の場合は表Mに、
図8に示す出力画面144の場合は表Maに、示される“Detail Inspection”の部分である。
【0148】
次に、進行制御部150がステップS100の演算結果による損傷量に基づいて、車室10bについて行う判定について説明する。
【0149】
まず、進行制御部150は、車室10bの点検閾値に達したか否かを判定する(ステップS28)。ここで、車室10bの点検閾値は、当該車室10bの使用開始から所定の期間(たとえば10年)経過した時点であるので、損傷量による判定ではない。すなわち、
図7のグラフKに表示された点検閾値を示す点線H2と損傷量を示すL1との交点が存在するか否かを判定する。この点検閾値も将来損傷量関連情報として機能する。
【0150】
車室10bの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS28 NO)場合は、損傷量演算周期ごとに、この判定を繰り返す。
【0151】
車室10bの点検閾値に達したと判定された(ステップS28 YES)場合、進行制御部150は、さらに、ステップS100の演算結果による損傷量が車室10bの交換閾値に達したか否かを判定する(ステップS29)。
【0152】
ステップS100の演算結果による損傷量が車室10bの交換閾値に達したと判定されなかった(ステップS29 NO)場合には、表示情報生成部128は、入力情報記憶部131に収納されている点検推奨時期に係る情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS30)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、アラーム表示として点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS31)。ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、
図7に示す出力画面143の表Mに示される“Detail Inspection”の部分、および
図K中の点検推奨時期を示す破線H2である。
【0153】
ステップS100の演算結果による損傷量が車室10bの交換閾値に達したと判定された(ステップS29 YES)場合には、進行制御部150は、損傷量が交換閾値に達した年月日に関する情報(点検推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部134に出力する。演算結果記憶部134は、この情報を記憶する。表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS32)。
【0154】
さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、交換推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS33)。ここで、画面における交換推奨時期に係る情報は、
図7に示す出力画面143の場合は表Mに示される“Casing Replace”の部分である。
【0155】
以上が、定周期演算処理のフローである。次に、将来予測演算処理のフローについて説明する。
【0156】
<将来予測演算処理>
図11は、第1の実施形態に係る損傷量管理装置100による損傷量管理方法における将来予測演算処理の手順を説明するためのフロー図である。
【0157】
ここで、損傷量管理装置100の導入日時点において、
図4に示す将来の運転条件は、初期設定されている。ユーザは、導入後、ユーザインターフェース140における
図4に示す入力画面142の表Cおよび表Gに、将来の運転条件を1年単位で入力する。
【0158】
例えば、
図7に示した出力画面143、
図8に示した出力画面144等の画面例におけるプルダウン選択欄Nの選択ボタンを押すことによって、プルダウン表示された中から、将来の運転条件の入力画面142を含む選択画面項目が表示される。プルダウン選択欄Nにおいて入力画面142が選択されると、ユーザインターフェース140の表示部の画面は、
図4に示す将来の運転条件の入力画面142に切り替わる。この際、表示情報生成部128は、ユーザインターフェース140からの入力画面142の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース140に入力画面142を表示させるための表示情報を出力する。
【0159】
ユーザは、将来の運転条件を入力後、
図4の入力画面142中の“Save”表示を押す。ユーザインターフェース140は、“Save”表示からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部131に出力する。入力情報記憶部131は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。
【0160】
進行制御部150は、“Save”表示が押されたことに伴うユーザインターフェース140からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0161】
以上のような背景のもとで、
図11で示す将来予測演算処理の手順において、まず、進行制御部150は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS41)。
【0162】
ステップS41の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定された場合(ステップS41 NO)、進行制御部150は、ステップS41の判定を繰り返す。
【0163】
ステップS41の判定において、将来の運転条件の入力がされていると判定された場合(ステップS41 YES)、将来予測部127は、プログラム記憶部133から将来予測演算を実行するためのプログラム、入力情報記憶部131に記憶された将来の運転条件を読み出す(ステップS42)。
【0164】
次に、将来予測部127は、
図6を参照して説明した演算方法で、将来き裂進展量、将来き裂長さ、将来き裂深さ、および将来損傷量(将来損傷量等)を算出し、演算結果を演算結果記憶部134に出力する(ステップS200)。演算結果記憶部134は、演算結果を記憶する。
【0165】
表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS43)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0166】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報を
図7および
図8の例に示すように表示部に表示する(ステップS44)。
【0167】
ここで、表示情報生成部128は、ステップS41において将来の運転計画が入力されたと判定される(ステップS41 YES)ごとに、ステップS200での将来損傷量等の演算処理を実行し、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。そのため、表示部に表示される将来損傷量に関する演算結果を示すグラフK(
図7、
図8)は、ステップS200での将来損傷量等の演算処理が実行されるごとに更新される。換言すると、将来損傷量に関する演算結果を示すグラフKは、将来の運転条件の入力画面142におけるK部の“Save”が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0168】
以上のステップS41からステップS44までの処理が、将来の運転計画が入力されたと判定されるごとに繰り返される。そのため
図7の出力画面143および
図8の出力画面144で例示したグラフKに表示される将来損傷量に関する演算結果を示す曲線が、その都度更新される。
【0169】
次に、進行制御部150は、ステップS200の演算結果による損傷量に基づいて、タービン回転部10aおよび車室10bのそれぞれについての判定を行う。これらの判定も、将来の運転条件が入力されるごとに行われる。
【0170】
まず、タービン回転部10aについて説明する。
【0171】
進行制御部150は、ステップS200の演算結果による損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したか否かを判定する(ステップS45)。
【0172】
損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS45 NO)場合は、表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS46)。詳細は次のとおりである。
【0173】
まず、当該損傷量管理装置100の製造メーカから当該発電所1の顧客への納品の段階では、製造メーカ内で初期の環境設定がなされ、
図8に例示する当該損傷量管理装置100の出力画面144に、アラーム表示としての表Maが表示されている場合がある。あるいは、今回のステップS45の判定の前に、すでにアラーム表示としての表Maが表示されている場合がある。
【0174】
したがって、今回のステップS45の判定で、損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS45 NO)場合は、表示情報生成部128は、アラーム表示としての表Maの表示のない表示情報を生成する(ステップS46)。すでにアラーム表示のない表示となっている場合にも同様の表示情報を出力するが、この場合は、改めて同じ表示情報を出力しない方式でもよい。
【0175】
さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を収納、記憶する。ユーザインターフェース140は、生成された情報に基づいて画面を表示する(ステップS47)。この後、ステップS45以下を繰り返す。
【0176】
損傷量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定された(ステップS45 YES)場合は、進行制御部150は、損傷量が点検閾値に達した年月日に関する情報(点検推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部134に出力する。ここで、
図8に例示された出力画面144のグラフKの場合、将来損傷量を示す曲線L24他は、各年については、直線的に変化する。すなわち曲線L24他は折れ線状となっている。年月日に関する情報は、点検閾値を示す直線H1と曲線L24とが交差する点の横軸の値が算出されることに得られる。
【0177】
演算結果記憶部134は、この情報を記憶する。表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS48)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0178】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS49)。ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、例として示した
図8の出力画面144中の表Ma、グラフKで点検閾値を示す点線Hである。
【0179】
次に、車室10bについて、進行制御部150がステップS200の演算結果による損傷量に基づいて行う判定のフローを説明する。
【0180】
まず、進行制御部150は、車室10bの点検閾値に達したか否かを判定する(ステップS51)。ここで、車室10bの点検閾値は、当該車室10bの使用開始から所定の期間(たとえば10年)経過した時点であるので、損傷量による判定ではない。すなわち、ステップS28と同様に、
図7のグラフKに表示された点検閾値を示す点線H2と損傷量を示すL1との交点が存在するか否かを判定する。この点検閾値も将来損傷量関連情報として機能する。
【0181】
詳細には、車室10bの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS51 NO)場合は、表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS52)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS53)。
【0182】
ここで、今回のステップS41の判定で、車室10bの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS51 NO)場合は、表示情報生成部128は、アラーム表示としての表Mの表示のない表示情報を生成する(ステップS52)。すでにアラーム表示のない表示となっている場合にも同様の表示情報を出力するが、この場合は、改めて同じ表示情報を出力しない方式でもよい。
【0183】
車室10bの点検閾値に達したと判定された(ステップS51 YES)場合、進行制御部150は、さらに、ステップS200の演算結果による損傷量が車室10bの交換閾値に達したか否かを判定する(ステップS54)。
【0184】
ステップS200の演算結果による損傷量が車室10bの交換閾値に達したと判定されなかった(ステップS54 NO)場合には、進行制御部150は、表示情報生成部128は、入力情報記憶部131に収納されている点検推奨時期に係る情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS55)。さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS56)。
【0185】
ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、
図7に示す出力画面143の表Mに示される“Detail Inspection”の部分、および
図K中の点検推奨時期を示す破線H2である。
【0186】
ステップS100の演算結果による損傷量が車室10bの交換閾値に達したと判定された(ステップS54 YES)場合には、進行制御部150は、損傷量が交換閾値に達した年月日に関する情報(交換推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部134に出力する。演算結果記憶部134は、この情報を記憶する。表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS57)。
【0187】
ここで、
図7に例示された出力画面143のグラフKの場合、将来損傷量を示す曲線L2は、各年については、直線的に変化する。すなわち曲線L2は折れ線状となっている。年月日に関する情報は、点検閾値を示す直線H1と曲線L24とが交差する点の横軸の値が算出されることに得られる。
【0188】
さらに、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報に基づいて、交換推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS58)。ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、
図7に示す出力画面143の場合は表Mに示される“Casing Replace”の部分、および
図K中で交換閾値を示す点線H3である。
【0189】
上述のように、将来予測演算処理の手順によって、
図7および
図8に例示した出力画面143、144における将来損傷量に関する情報が更新される。将来の運転条件によって、出力画面143、144における将来損傷量に関する情報が変化する。また、将来の運転条件によって、交換推奨時期、点検推奨時期および交換推奨時期も変化する。
【0190】
上記した本実施形態の損傷量管理装置100によれば、ユーザインターフェース140の表示部に、実機の運転データに基づいて予測された過去から現在までの損傷量、および将来想定する運転条件に基づいて予測された将来の損傷量を時系列で、出力画面143、144のグラフKに表示することができる。これによって、ユーザは、損傷量の時間に伴う変化を目視で確認することできる。
【0191】
また、損傷量管理装置100において、車室10bについて例示する出力画面143のグラフKに点検閾値および交換閾値のラインを、また、タービン回転部10aについて例示する出力画面144のグラフKに点検閾値のラインを、それぞれ表示することができる。これによって、ユーザは、車室10bについては点検推奨時期および交換推奨時期を、また、タービン回転部10aについては点検推奨時期を、目視で確認することできる。
【0192】
さらに、損傷量管理装置100において、アラーム表示として、車室10bについて例示する出力画面143の表Mに点検推奨時期および交換推奨時期を、また、タービン回転部10aについて例示する出力画面144の表Maに点検推奨時期、それぞれ表示することができる。これによって、ユーザは、点検推奨時期および交換推奨時期を具体的に認識することができる。そしてユーザは、点検推奨時期を具体的に認識することで、該当する定期検査においての工程や作業場所の調整、予算の確保等の準備を的確に行うことができる。また、車室10bについては、交換のための製作準備、交換する定期検査における工程や作業場所の調整、予算の確保等の準備を的確に行うことができる。
【0193】
損傷量管理装置100では、
図4に示す将来の運転条件の入力画面142において入力された運転条件に基づく将来の損傷量の演算結果を表示することができる。そのため、ユーザは、将来の運転条件の入力画面142において運転条件を変更することによって、運転条件による将来の損傷量の違いを出力画面143、144のグラフKにおいて目視で確認することできる。また、ユーザは、将来の運転条件による点検推奨時期および交換推奨時期の違いを出力画面143の表M、出力画面144の表Maなどのアラーム表示において目視で確認することできる。
【0194】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、ユーザインターフェース140の表示部に表示される将来損傷量に関する情報の他の一例を説明する。
【0195】
図12および
図13は、第2の実施形態に係る損傷量管理装置100における将来予測演算処理を説明するための第1および第2のフロー図である。なお、図面の構成上、フロー図を一図で示すことができないため、
図12のステップS41のNOに続くフロー図を
図13に示す。
図14は、第2の実施形態に係る損傷量管理装置100における出力画面の一例を示す図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態の損傷量管理装置100の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡単な説明とする。
【0196】
第2の実施形態では、損傷量の演算結果を示す出力画面143、144において、他の将来の運転条件における演算結果を同時に表示できる点が第1の実施形態における損傷量管理装置100と異なる。ここでは、この異なる構成について主に説明する。なお、第2の実施形態におけるき裂進展の定周期演算処理は、第1の実施形態における定周期演算処理と同様である。
【0197】
図12および
図13に示す第2の実施形態における将来予測演算処理では、第1の実施形態における将来予測演算処理に、ステップS61からステップS66の処理が追加されている。
【0198】
ここで、ユーザは、将来の運転条件を入力後、
図4の“Save”の選択表示Kを押す。第2の実施形態における将来予測演算処理において、第1の実施形態における将来予測演算処理と同様に、ユーザインターフェース140は、“Save”の選択表示Kからの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部131に出力する。入力情報記憶部131は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。
【0199】
また、進行制御部150は、”Save”の選択表示Kが押されたことに伴うユーザインターフェース140からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0200】
図12に示すように、進行制御部150は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS41)。
【0201】
ステップS41の判定において、将来の運転条件の入力がされたと判定した場合(ステップS41 YES)、前述したように、ステップS42からステップS200を経て、ステップS44までの処理が実行される。そして、前述したように、ステップS44の処理の後、再びステップS41の処理が実行される。
【0202】
一方、ステップS41の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定した場合(ステップS41 NO)、
図13に示すように、表示情報生成部128は、他の将来の運転条件で演算した結果(比較演算結果)の表示要求があるか否かを判定する(ステップS61)。比較演算結果は、他の将来の運転条件に基づいてすでに予測された演算結果であり、演算結果記憶部134に記憶されている。なお、他の将来の運転条件は、第2の将来の運転条件として機能し、比較演算結果は、第2の将来損傷量関連情報として機能する。
【0203】
ここで、
図15は、第2の実施形態に係る損傷量管理装置におけるユーザインターフェース140に表示させる比較演算結果を選択する選択画面146の一例を示す図である。
【0204】
例えば、
図7に示した出力画面143におけるプルダウン選択欄Nを押すことで、図示されていないが、プルダウン選択欄Nに選択画面146などの選択項目が表示される。そして、プルダウン選択欄Nの選択項目の中の選択画面146が選択されると、ユーザインターフェース140の表示部の画面は、
図15に示す選択画面146に切り替わる。この際、表示情報生成部128は、ユーザインターフェース140からの選択画面146の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース140に選択画面146を表示させるための表示情報を出力する。
【0205】
図15の選択画面146には、演算結果記憶部134に記憶されているすでに演算された演算結果のリストがリスト表示部146aに表示される。また、ここでは、演算結果記憶部134に記憶された日時も表示するリスト表示部146aの一例が示されている。リスト表示部146aには、例えば、演算結果記憶部134に記憶された日時の新しい順に5つの演算結果のファイル名が表示される。なお、リスト表示部146aに表示される構成は、これに限られない。リスト表示部146aには、すでに演算された演算結果のリストが表示されればよい。
【0206】
ユーザは、リスト表示部146aに表示されたリストの中から比較演算結果としてたとえば
図7の出力画面143のグラフKに表示させたい演算結果のファイル名を選択する。そして、ユーザは、選択画面146のLoadボタン146bを押す。ユーザがLoadボタン146bを押すと、画面が演算結果を示す出力画面143に切り替わる。
【0207】
なお、BACKボタン146dは、Loadボタン146bまたはResetボタン146cを押さずにたとえば出力画面143に戻る場合に押すボタンである。
【0208】
表示情報生成部128は、ユーザインターフェース140からのLoadボタン146bが押されたことに基づく信号を受け、ステップS61において比較演算結果の表示要求があると判定する。
【0209】
ステップS61の判定において、比較演算結果の表示要求があると判定した場合(ステップS61 YES)、表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS62)。ここでは、表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果および選択された比較演算結果の双方を読み出す。そして、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0210】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報を
図14に示すように表示部に表示する(ステップS63)。
図14に示すように出力画面145には、将来損傷量として、将来の運転条件に基づく演算結果および比較演算結果の双方が表示される。
【0211】
具体的には、将来損傷量として、それぞれの演算結果における損傷量が時系列で示される。なお、比較演算結果における損傷量は、破線L3で示されている。また、アラーム表示としての表Mでは、それぞれの演算結果における点検推奨時期および交換推奨時期が表示される。なお、
図14に示すように、過去き裂進展量における損傷量も時系列で示されている。
【0212】
なお、比較演算結果における点検推奨時期は、第2の点検推奨時期として機能し、比較演算結果における交換推奨時期は、第2の交換推奨時期として機能する。
【0213】
ステップS61の判定において、比較演算結果の表示要求がないと判定した場合(ステップS61 NO)、表示情報生成部128は、比較演算結果の表示削除要求があるか否かを判定する(ステップS64)。
【0214】
ここで、ユーザは、
図15の選択画面146において、Resetボタン146cを押すことによって、
図14の出力画面145に示されている比較演算結果を削除することができる。表示情報生成部128は、ユーザインターフェース140からのResetボタン146cが押されたことに基づく信号を受け、ステップS64において比較演算結果の表示削除要求があると判定する。なお、ユーザがResetボタン146cを押すと、画面が演算結果を示す表示画面に切り替わる。
【0215】
ステップS64の判定において、比較演算結果の表示削除要求があると判定した場合(ステップS64 YES)、表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS65)。ここでは、表示情報生成部128は、演算結果記憶部134に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果を読み出す。そして、表示情報生成部128は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0216】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部128から出力された表示情報を
図7に示すように表示部に表示する(ステップS66)。すなわち、
図7に示すように出力画面143には、比較演算結果が削除され、将来の運転条件に基づく演算結果のみが表示される。
【0217】
ステップS64の判定において、比較演算結果の表示削除要求がないと判定した場合(ステップS64 NO)、ステップS41の処理に戻る。
【0218】
また、進行制御部150は、ステップS200の処理後、前述したように、ステップS200の演算結果に基づいて損傷量が交換閾値に達しているか否かを判定する(ステップS45、S51)。そして、前述したように、ステップS46からステップS58までの処理が実行される。
【0219】
出力画面145の将来損傷量に関する情報は、将来の運転条件の入力画面142における”Save”の選択表示K、および比較演算結果の選択画面146におけるLoadボタン146bまたはResetボタン146cが押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0220】
なお、ここでは、比較演算結果として一つの演算結果を選択する一例を示したが、複数の比較演算結果を選択できるように設定されてもよい。
【0221】
上記した第2の実施形態の損傷量管理装置100によれば、第1の実施形態の損傷量管理装置100における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0222】
さらに、第2の実施形態の損傷量管理装置100によれば、出力画面145に、将来損傷量として、将来の運転条件に基づいて予測された演算結果および比較演算結果の双方を表示することができる。
【0223】
これによって、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果における損傷量と比較演算結果における損傷量との違いを出力画面145のグラフKにおいて目視で確認することできる。また、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果における点検推奨時期および交換推奨時期と比較演算結果における点検推奨時期および交換推奨時期との違いを出力画面145のアラーム表示としての表Mにおいて目視で確認することできる。
【0224】
以上、説明した第1の実施形態によれば、計測された情報に基づいて予測された過去から現在までの損傷量および将来の運転条件に基づいて予測された将来の損傷量を時系列で認識することができる蒸気タービンの損傷量管理装置を提供することが可能となる。
【0225】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0226】
10…蒸気タービン、10a…タービンロータ、10b…車室、11…高圧タービン、11a…高圧タービン回転部、11b…高圧外部ケーシング(高圧外部車室)、11c…高圧内部ケーシング(高圧内部車室)、12…中圧タービン、12a…中圧タービン回転部、12b…中圧外部ケーシング(中圧外部車室)、12c…中圧内部ケーシング(中圧内部車室)、13…低圧タービン、14…クロスオーバー管、15…排気管、16…復水器、17…給水ポンプ、18…給水管、20…発電機、30…熱源装置、31…ボイラ、32…再熱器、33…主蒸気管、34…低温再熱管、35…高温再熱管、40…発電所内制御装置、100…損傷量管理装置、110…計測情報取得部、120…演算部、121…状態量演算部、122…応力評価部、123…脆化演算部、124…疲労き裂進展演算部、125…クリープき裂進展演算部、126…損傷量演算部、127…将来予測部、128…表示情報生成部、130…記憶部、131…入力情報記憶部、132…計測情報記憶部、133…プログラム記憶部、134…演算結果記憶部、135…パターン別応力記憶部、136…テンプレート記憶部、137…表示情報記憶部、140…ユーザインターフェース、141、142…入力画面、143、144、145…出力画面、146…選択画面