(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171468
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】繊維束ガイド機構
(51)【国際特許分類】
B65H 57/14 20060101AFI20241205BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20241205BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20241205BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20241205BHJP
B65H 23/32 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65H57/14
B29C70/16
B29C70/32
B29C70/54
B65H23/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088488
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松井 利裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木野 義浩
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水辺 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 吉典
【テーマコード(参考)】
3F104
3F110
4F205
【Fターム(参考)】
3F104AA00
3F104GA01
3F104GA04
3F110BA00
3F110CA03
3F110DA09
3F110DB03
3F110DB11
4F205AD16
4F205AJ08
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HB01
4F205HC02
4F205HF23
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】幅方向に並べた状態の複数本の帯状の繊維束を、整列状態を維持しつつ、ひねり距離を短く抑え且つ繊維束にねじれが生じるのを抑制してひねる。
【解決手段】幅方向に並べられた状態で走行する複数本の帯状の繊維束Fと接触するガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間に配置される。繊維束Fのガイドローラ61bとの接触箇所での幅方向である第1方向と、繊維束Fのガイドローラ61cとの接触箇所での幅方向である第2方向と、が互いに異なっている。幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束Fを挟持可能なローラ対71を備えており、第1方向に対して第2方向がなす角度をひねり角度θ
0とし、第1方向に対してローラ対71によって挟持される繊維束Fの幅方向である第3方向がなす角度を案内角度θ
nとしたとき、0°<θ
n<θ
0である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に並べられた状態で走行する複数本の帯状の繊維束と接触する第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間に配置される繊維束ガイド機構であって、
繊維束の前記第1糸道形成部材との接触箇所での幅方向である第1方向と、繊維束の前記第2糸道形成部材との接触箇所での幅方向である第2方向と、が互いに異なっており、
幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束を挟持可能な少なくとも1つのローラ対を備えており、
前記第1方向に対して前記第2方向がなす角度をひねり角度θ0とし、前記第1方向に対して前記ローラ対によって挟持される繊維束の幅方向である第3方向がなす角度を案内角度θnとしたとき、0°<θn<θ0であることを特徴とする繊維束ガイド機構。
【請求項2】
前記ローラ対を構成する2つのローラのうちの少なくとも一方は、前記2つのローラにより繊維束を挟持する挟持位置と、前記挟持位置に比べて前記2つのローラ間の距離が長い挟持解除位置と、の間で移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の繊維束ガイド機構。
【請求項3】
前記ローラ対を構成する2つのローラのうちの一方は、その軸線方向と直交する方向であり、且つ、前記2つのローラの両方の軸線と直交する方向に沿って移動可能に構成されており、
前記一方のローラを他方のローラに向かって付勢する付勢部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の繊維束ガイド機構。
【請求項4】
ひねり角度θ0は90°であることを特徴とする請求項1に記載の繊維束ガイド機構。
【請求項5】
案内角度θnが変わるように前記ローラ対の配置を調整可能な調整機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維束ガイド機構。
【請求項6】
前記ローラ対は、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間の糸道に沿って複数配置されていることを特徴とする請求項5に記載の繊維束ガイド機構。
【請求項7】
前記ローラ対は、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間の糸道に沿って複数配置されており、
前記複数のローラ対は、前記第2糸道形成部材の近くに配置されているものほど案内角度θnが大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維束ガイド機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の繊維束をガイドする繊維束ガイド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糸道に沿って走行する帯状の繊維束を取り扱う繊維機械が知られている。かかる繊維機械においては、設計上の都合等により、糸道において繊維束をひねる必要が生じる場合がある。例えば特許文献1には、帯状の繊維束をボビンに巻取る巻取り装置が開示されている。かかる巻取り装置においては、繊維束は、溝付きローラ(第1糸道形成部材)と円筒状ガイド(第2糸道形成部材)とを経由してボビンに巻き取られる。溝付きローラと円筒状ガイドとは、それらの軸線同士がなす角度が直角となるように配置されている。繊維束は、溝付きローラと円筒状ガイドとの間で直角にひねられる。
【0003】
特許文献1の装置においては、溝付きローラと円筒状ガイドとの間に一対の円錐状ガイド(繊維束ガイド機構)が配置されている。一対の円錐状ガイドは、互いの軸線同士がなす角度がほぼ直角となるように配置されている。繊維束は、溝付きローラと円筒状ガイドとの間で一対の円錐状ガイドに案内されつつ直角にひねられる。
【0004】
第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間で繊維束をひねる場合、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間の距離(ひねり距離)が短いと、繊維束が途中でねじれる場合がある。繊維束にねじれが生じるのを防ぐために必要なひねり距離は、繊維束の幅が広いほど長くなる。特許文献1の装置のように、繊維束ガイド機構を設けることで、繊維束にねじれが生じるのを抑制しつつ、ひねり距離を比較的短く設定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のボビンから解舒された複数本の帯状の繊維束を繊維束の幅方向に並べた状態で繊維機械を構成する各ユニットに搬送する場合、各ユニットの設計上又は繊維機械の大型化防止のため、幅方向に並べた状態の繊維束を糸道の途中でひねる必要がある。複数本の帯状の繊維束を幅方向に並べた状態では、全体の繊維束の幅が単一の繊維束の幅より広くなるので、繊維束にねじれが生じることを防ぐために必要なひねり距離も長くなる。したがって、途中で繊維束を案内する繊維束ガイド機構を設けることが重要となる。しかしながら、特許文献1に開示されているような一対の円錐状ガイドを繊維束ガイド機構として採用した場合、複数本の繊維束がばらけてしまうので、幅方向に並べた状態の繊維束をまとめて案内することができない。
【0007】
本発明の目的は、幅方向に並べた状態の複数本の帯状の繊維束を、整列状態を維持しつつ、ひねり距離を短く抑え且つ繊維束にねじれが生じるのを抑制してひねることができる繊維束ガイド機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明にかかる繊維束ガイド機構は、幅方向に並べられた状態で走行する複数本の帯状の繊維束と接触する第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間に配置される繊維束ガイド機構であって、繊維束の前記第1糸道形成部材との接触箇所での幅方向である第1方向と、繊維束の前記第2糸道形成部材との接触箇所での幅方向である第2方向と、が互いに異なっており、幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束を挟持可能な少なくとも1つのローラ対を備えており、前記第1方向に対して前記第2方向がなす角度をひねり角度θ0とし、前記第1方向に対して前記ローラ対によって挟持される繊維束の幅方向である第3方向がなす角度を案内角度θnとしたとき、0°<θn<θ0である。
【0009】
本発明では、ローラ対により幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束を挟持できる。よって、複数本の繊維束がばらけたり、全体の繊維束の幅が変化したりするのを避けることができる。すなわち、ローラ対により複数本の繊維束の整列状態を維持しつつ案内することができる。このように、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間で、複数本の繊維束をローラ対によってまとめて案内できる。よって、幅方向に並べられた状態の複数本の帯状の繊維束を、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間の距離(ひねり距離)を短く抑えつつ、繊維束にねじれが生じるのを抑制してひねることができる。
【0010】
第2の発明にかかる繊維束ガイド機構では、第1の発明において、前記ローラ対を構成する2つのローラのうちの少なくとも一方は、前記2つのローラにより繊維束を挟持する挟持位置と、前記挟持位置に比べて前記2つのローラ間の距離が長い挟持解除位置と、の間で移動可能に構成されている。
【0011】
本発明では、糸掛けを行う際には、少なくとも一方のローラを挟持解除位置に移動させることで、糸掛け作業が容易となる。糸掛け終了後に、少なくとも一方のローラを挟持位置に移動させることで、繊維束を挟持できる。
【0012】
第3の発明にかかる繊維束ガイド機構では、第1又は第2の発明において、前記ローラ対を構成する2つのローラのうちの一方は、その軸線方向と直交する方向であり、且つ、前記2つのローラの両方の軸線と交わる方向に沿って移動可能に構成されており、前記一方のローラを他方のローラに向かって付勢する付勢部材をさらに備えている。
【0013】
本発明では、付勢部材により一方のローラが他方のローラに向かって付勢されるので、2つのローラによって繊維束を安定的に挟持できる。
【0014】
第4の発明にかかる繊維束ガイド機構では、第1~第3のいずれかの発明において、ひねり角度θ0は90°である。
【0015】
本発明では、幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束を90°ひねることができるので、繊維機械に設けた場合に、装置の設計の自由度が増す。
【0016】
第5の発明にかかる繊維束ガイド機構は、第1~第4のいずれかの発明において、案内角度θnが変わるように前記ローラ対の配置を調整可能な調整機構をさらに備えている。
【0017】
本発明では、案内角度θnを所望の角度に変更できる。
【0018】
第6の発明にかかる繊維束ガイド機構では、第5の発明において、前記ローラ対は、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間の糸道に沿って複数配置されている。
【0019】
本発明では、幅方向に並べられた状態の複数本の帯状の繊維束を、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間で、複数のローラ対により案内できる。したがって、ひねり距離をさらに短く抑えつつ、繊維束にねじれが生じるのを確実に抑制できる。
【0020】
第7の発明にかかる繊維束ガイド機構では、第1~第4のいずれかの発明において、前記ローラ対は、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間の糸道に沿って複数配置されており、前記複数のローラ対は、前記第2糸道形成部材の近くに配置されているものほど案内角度θnが大きい。
【0021】
本発明では、幅方向に並べられた状態の複数本の帯状の繊維束を、第1糸道形成部材と第2糸道形成部材との間で、複数のローラ対により段階的にひねることができる。したがって、ひねり距離をさらに短く抑えつつ、繊維束にねじれが生じるのを確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
【
図2】フィラメントワインディング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)、(b)は、ヘリカル巻ユニットの正面図である。
【
図6】前処理部で走行する複数の繊維束の状態を示す図である。
【
図7】(a)はひねり角度を説明するための図であり、(b)は案内角度を説明するための図である。
【
図9】ローラ対を構成するローラが挟持位置である状態の繊維束ガイド機構を示す図である。
【
図10】ローラ対を構成するローラが挟持解除位置である状態の繊維束ガイド機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を示す斜視図である。
図2は、フィラメントワインディング装置1の電気的構成を示すブロック図である。説明の便宜上、
図1に示す方向(前後方向及び左右方向)を定義する。前後方向及び左右方向は、水平方向と平行な方向である。前後方向と左右方向は互いに直交する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。
【0024】
フィラメントワインディング装置1は、ライナーLに複数の繊維束(
図1では図示省略)を同時に巻き付ける多給糸型のものである。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、複数のクリールスタンド3と、複数の前処理部4とを備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。巻付装置2は、円筒状のライナーLに繊維束を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば、炭素繊維などの繊維材料に熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。ライナーLの形状は、最終製品に応じて異なりうる。例えば最終製品が圧力タンクである場合、
図1に示すように、円筒部の両側にドーム部を有するライナーLが使用される。ライナーLの材料としては、高強度アルミニウム、金属、樹脂などが用いられる。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成などの熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力タンクなどの最終製品を得ることができる。
【0025】
複数のクリールスタンド3は、例えば、巻付装置2の左右方向における両側に配置されている。複数のクリールスタンド3は、例えば、前後方向において巻付装置2の後端部の近傍に配置されている。各クリールスタンド3は、例えば、前後方向に延びる略直方体状のフレーム11を有する。フレーム11には、例えば、1以上のボビンホルダ群12が設けられている。ボビンホルダ群12は、例えば、後述するヘリカル巻ユニット50の複数のノズルユニット53の各々に対応して設けられている。各ボビンホルダ群12は、例えば前後方向に並んだ複数の(本実施形態では5つの)ボビンホルダ13を有する。各ボビンホルダ13は、例えば、左右方向に延びる軸を有する。各ボビンホルダ13は、繊維束が巻かれたボビン14を回転可能に支持する。本実施形態では、例えば9つのボビンホルダ群12が設けられ、その各々に5つのボビン14が装着されている(すなわち、計45個のボビン14が配置されている)。各ボビンホルダ群12に属する5つのボビン14から、5本の繊維束がまとめて供給される。クリールスタンド3から供給される複数の繊維束は、ヘリカル巻ユニット50によってライナーLに巻き付けられる。なお、
図1においては2つのクリールスタンド3が図示されているが、クリールスタンド3の数はこれに限られない。また、図面の煩雑化を避けるため、
図1においては、複数のボビンホルダ群12のうち1つのみが図示されている。
【0026】
複数の前処理部4は、複数の繊維束に所定の前処理(例えば張力付与等)を施すように構成されている。複数の前処理部4は、例えば、繊維束の走行方向において、対応するクリールスタンド3と、ヘリカル巻ユニット50(後述)との間に配置されている。
【0027】
(巻付装置)
巻付装置2のより具体的な構成について説明する。巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻ユニット40と、ヘリカル巻ユニット50と、を備える。
【0028】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻ユニット40、及び、ヘリカル巻ユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が設置されている。支持ユニット30及びフープ巻ユニット40は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット50は、例えば、基台20に対する位置が固定されている。第1支持ユニット31、フープ巻ユニット40、ヘリカル巻ユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0029】
支持ユニット30は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を有する。第1支持ユニット31は、フープ巻ユニット40よりも前側に配置されている。第2支持ユニット32は、ヘリカル巻ユニット50よりも後側に配置されている。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(
図2参照)。移動用モータ34は、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35の動作は、制御装置5によって制御される。
【0030】
フープ巻ユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット40は、例えば、本体部41と、回転部材42と、複数(本実施形態では5個)のボビンホルダ43と、を有する。本体部41は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。回転部材42は、ライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状の部材である。回転部材42は、ライナーLの軸周りに回転可能な状態で、本体部41に支持されている。複数のボビンホルダ43は、周方向に等間隔で回転部材42に取り付けられている。各ボビンホルダ43は、前後方向に延びる回転軸を有しており、繊維束が巻かれたボビン(図示省略)を回転可能に支持する。
【0031】
フープ巻ユニット40は、移動用モータ46及び回転用モータ47を有する(
図2参照)。移動用モータ46は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ47は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ46及び回転用モータ47の動作は、制御装置5によって制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置5は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビンから繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に同時にフープ巻きされる。
【0032】
ヘリカル巻ユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット50は、例えば、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、例えば基台20に固設されている。フレーム部材52は、ライナーLが通過可能な通過穴54が形成された円環状の部材である。フレーム部材52は、本体部51に支持されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心に放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に取り付けられている。
【0033】
図3(a)及び
図3(b)は、ヘリカル巻ユニット50の正面図である。詳細には、
図3(a)は、ライナーLの円筒部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。
図3(b)は、ライナーLのドーム部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体55を有する。ガイド体55は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。各ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ56が配置されている。クリールスタンド3の各ボビンホルダ群12から引き出された5本の繊維束Fは、ガイドローラ56を経由して何れかのガイド体55に導入され、ガイド体55の先端からライナーLに供給される。
【0034】
ヘリカル巻ユニット50は、ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58を有する(
図2参照)。ガイド移動用モータ57は、各ガイド体55を一斉に径方向に移動させる。ガイド回転用モータ58は、各ガイド体55を一斉に回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58の動作は、制御装置5によって制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置5は、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。これとともに、制御装置5は、各ノズルユニット53のガイド体55を、径方向に適宜移動させつつ回転軸周りに適宜回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体55の先端から5本の繊維束Fが適切に引き出され、合計で45本の繊維束FがライナーLの周面に同時にヘリカル巻きされる。
【0035】
(前処理部)
続いて、
図4~
図7をさらに参照しつつ、前処理部4のより具体的な構成について説明する。前処理部4は、対応するクリールスタンド3の前方に配置されている。前処理部4は、対応するクリールスタンド3から供給された5本の繊維束Fに対して、張力付与等の前処理を施す。そして、前処理部4は、前処理を施した5本の繊維束Fをヘリカル巻ユニット50に供給する。
【0036】
前処理部4は、基台60、ガイドローラ61a~61m、繊維束ガイド機構70、80、ダンサーローラ62、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64及びテンションローラ65を主に備えている。基台60には、上記のローラ及び機構が取り付けられている。ガイドローラ61a~61mは、走行する繊維束Fと接触して繊維束Fをガイドする。
【0037】
図4に示すように、ガイドローラ61a~61c及び繊維束ガイド機構70は、基台60の上面60a(上下方向に対して略直交する面)に取り付けられている。ガイドローラ61a~61c及び繊維束ガイド機構70は、前後方向に沿って並んでいる。繊維束Fの走行方向(後方から前方に向かう方向)の上流側から、ガイドローラ61a、61b、繊維束ガイド機構70、ガイドローラ61cの順で並んでいる。ガイドローラ61bは、本発明の「第1糸道形成部材」に相当する。また、ガイドローラ61cは、本発明の「第2糸道形成部材」に相当する。
【0038】
ガイドローラ61a、61bには、対応するクリールスタンド3から供給された5本の繊維束Fが巻き掛けられる。ここで、
図6に示すように、クリールスタンド3から供給された5本の繊維束を繊維束F1、F2、F3、F4、F5とする。繊維束F1、F2、F3、F4、F5は、いずれも帯状である。
図6に示すように、ガイドローラ61a、61bに巻き掛けられる繊維束F1、F2、F3、F4、F5は、互いに略平行となっており、且つ、繊維束の幅方向に並んでいる。繊維束F1、F2、F3、F4、F5は、隣り合うもの同士が幅方向の一部で重なっている。繊維束Fの走行方向において、ガイドローラ61a、61bよりも下流側では、
図6に示すように並んだ5本の繊維束F1、F2、F3、F4、F5をまとめて繊維束Fとし、1本の繊維束であるかのように取り扱う。すなわち、5本の繊維束F1、F2、F3、F4、F5は、引き揃えられた状態で巻付装置2まで走行する。
【0039】
ガイドローラ61a、61bは、軸方向が左右方向となる姿勢で配置されている。繊維束Fのガイドローラ61a、61bとの接触箇所での幅方向(本発明の「第1方向」に相当する)は、左右方向となる。ガイドローラ61cは、軸方向が上下方向となる姿勢で配置されている。繊維束Fのガイドローラ61cとの接触箇所での幅方向(本発明の「第2方向」に相当する)は、上下方向となる。繊維束Fは、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間でひねられる。繊維束ガイド機構70は、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間で繊維束Fをひねるようガイドする。
【0040】
ここで、
図7(a)に示すように、繊維束Fの走行方向の上流側(後方側)から視たときに、繊維束Fのガイドローラ61bとの接触箇所での幅方向(左右方向)に対して、繊維束Fのガイドローラ61cとの接触箇所での幅方向(上下方向)がなす角度をひねり角度θ
0とする。本実施形態においては、ひねり角度θ
0は、90°である。
【0041】
ガイドローラ61d~61m、繊維束ガイド機構80、ダンサーローラ62、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64及びテンションローラ65は、基台60の前方の側面60b(前後方向に対して略直交する面)に取り付けられている。これらは、繊維束Fの走行方向において、ガイドローラ61cの下流側に配置されている。繊維束Fの走行方向の上流側から、ガイドローラ61d、繊維束ガイド機構80、ガイドローラ61e~61g、ダンサーローラ62、ガイドローラ61h、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64、ガイドローラ61i、テンションローラ65、ガイドローラ61j~61mの順で並んでいる。
【0042】
ガイドローラ61d、繊維束ガイド機構80、ガイドローラ61eは、基台60の側面60bにおける上端部において、左右方向に沿って並んでいる。より詳細には、左方から右方に向かって、ガイドローラ61d、繊維束ガイド機構80、ガイドローラ61eの順で並んでいる。ガイドローラ61dは、ガイドローラ61cよりも左方に位置している。ガイドローラ61dは、本発明の「第1糸道形成部材」に相当する。また、ガイドローラ61eは、本発明の「第2糸道形成部材」に相当する。
【0043】
ガイドローラ61dは、基台60の側面60bに設けられた支持台69に取り付けられている。ガイドローラ61dは、軸方向が上下方向となる姿勢で配置されている。繊維束Fのガイドローラ61dとの接触箇所での幅方向(本発明の「第1方向」に相当する)は、上下方向となる。ガイドローラ61eは、軸方向が前後方向となる姿勢で配置されている。繊維束Fのガイドローラ61eとの接触箇所での幅方向(本発明の「第2方向」に相当する)は、前後方向となる。
【0044】
繊維束Fは、ガイドローラ61dとガイドローラ61eとの間でひねられる。繊維束Fの走行方向の上流側(左方側)から視たときに、繊維束Fのガイドローラ61dとの接触箇所での幅方向(上下方向)に対する、繊維束Fのガイドローラ61eとの接触箇所での幅方向(前後方向)がなす角度であるひねり角度θ0は、90°である。繊維束ガイド機構80は、ガイドローラ61dとガイドローラ61eとの間で繊維束Fをひねるようガイドする。
【0045】
なお、前処理部4における繊維束Fの走行方向においてガイドローラ61e以降に配置されたローラは、いずれも軸方向が前後方向となる姿勢で配置されている。すなわち、繊維束Fの走行方向においてガイドローラ61eよりも下流側では、繊維束Fは幅方向が前後方向となる姿勢で搬送される。
【0046】
ガイドローラ61f~61hは、ガイドローラ61eのやや下方に位置している。右方から左方に向かって、ガイドローラ61f、ガイドローラ61g、ガイドローラ61hの順で並んでいる。ガイドローラ61g及びガイドローラ61hは、ほぼ同じ高さに位置している。ガイドローラ61fは、ガイドローラ61g及びガイドローラ61hよりも下方に位置している。
【0047】
ダンサーローラ62は、左右方向に関してガイドローラ61gとガイドローラ61hとの間に位置している。ダンサーローラ62は、ガイドローラ61g及びガイドローラ61hよりも下方において上下方向に沿って移動可能に構成されている。ダンサーローラ62には、ウェイト62aにより下向きに荷重が加えられている。したがって、繊維束Fに弛みが生じると、ダンサーローラ62が下方に移動し、繊維束Fの弛みを除去できる。
【0048】
搬送ローラ63a~63cは、ガイドローラ61hよりも左方に位置している。上方から下方に向かって、搬送ローラ63a、搬送ローラ63b、搬送ローラ63cの順で並んでいる。搬送ローラ63a及び搬送ローラ63cは、左右方向に関する位置がほぼ同じである。搬送ローラ63bは、搬送ローラ63a及び搬送ローラ63cよりも右方に位置している。搬送ローラ63a~63cは、モータ(不図示)等の駆動により回転し、繊維束Fに搬送力を付与する。
【0049】
ガイドローラ61iは、搬送ローラ63cよりも下方且つやや左方に位置する。ダンサーローラ64は、上下方向に関して搬送ローラ63cとガイドローラ61iとの間に位置している。ダンサーローラ64は、搬送ローラ63c及びガイドローラ61iよりも右方において、モータ(不図示)等により駆動されて左右方向に沿って移動可能に構成されている。ダンサーローラ64が左右方向に移動することで、繊維束Fの走行速度の変動を吸収し、繊維束Fの張力を一定に維持できる。
【0050】
ガイドローラ61jは、ガイドローラ61iよりも下方且つ左方に位置する。テンションローラ65は、上下方向に関してガイドローラ61iとガイドローラ61jとの間に位置している。テンションローラ65は、ガイドローラ61i及びガイドローラ61jよりも右方において、エアシリンダ65aにより駆動されて左右方向に沿って移動可能に構成されている。テンションローラ65は、左右に移動することで、繊維束Fの張力を調整可能である。
【0051】
ガイドローラ61k、61lは、ガイドローラ61jの下方に位置している。ガイドローラ61k、61lは、ほぼ同じ高さに位置する。ガイドローラ61kは、ガイドローラ61jよりも右方に位置している。ガイドローラ61lは、ガイドローラ61jよりも左方に位置している。ガイドローラ61mは、ガイドローラ61lよりも上方であって、ガイドローラ61lよりもやや左方に位置している。なお、
図5において配置されている各ガイドローラ61d~61m、ダンサーローラ62、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64及びテンションローラ65の数や配置はこれに限られない。
【0052】
続いて、
図8~
図10をさらに参照しつつ、繊維束ガイド機構70の構成について説明する。繊維束ガイド機構70は、2つのローラ対71を主に備えている。ローラ対71は、
図6に示すように幅方向に並べられた状態の5本の繊維束F1、F2、F3、F4、F5を挟持可能である。2つのローラ対71は、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間の糸道に沿って配置される。ローラ対71は、2つのローラ71a、71bによって構成されている。以降の説明において2つのローラ対71を区別する場合は、2つのローラ対71のうち繊維束Fの走行方向の上流側(後方側)に位置するものを第1ローラ対79aと称し、繊維束Fの走行方向の下流側(前方側)に位置するものを第2ローラ対79bと称する。
【0053】
ここで、
図7(b)に示すように、繊維束Fの走行方向の上流側(後方側)から視たときに、繊維束Fのガイドローラ61bとの接触箇所での幅方向(左右方向)に対して、ローラ対71に挟持される繊維束Fの幅方向(すなわち、ローラ対71を構成するローラ71a、71bの軸方向、本発明の「第3方向」に相当する)がなす角度を案内角度θ
nとする。このとき、0°<θ
n<θ
0である。
【0054】
ローラ71aは、第1支持部材72に支持されている。より具体的には、ローラ71aの軸が第1支持部材72に取り付けられている。第1支持部材72には、搖動部材73が取り付けられている。搖動部材73は、軸73aを中心に第1支持部材72に対して搖動可能である。軸73aは、前後方向に沿って延びている。
【0055】
ローラ71bは、第2支持部材74に支持されている。より具体的には、ローラ71bの一方の軸端部が第2支持部材74に取り付けられている。第2支持部材74は、搖動部材73に支持されている。したがって、ローラ71bは、搖動部材73が搖動した際に、搖動部材73及び第2支持部材74と共に移動する。
【0056】
ローラ71bは、搖動部材73が搖動することで、
図9に示す挟持位置と、
図10に示す挟持解除位置と、の間で移動する。ローラ71bが挟持位置に位置しているとき、ローラ71aの軸線とローラ71bの軸線とは平行となる。ローラ71bが挟持位置に位置しているとき、ローラ71a及びローラ71bにより繊維束Fを挟持可能である。ローラ71bが挟持解除位置に位置しているとき、ローラ71bが挟持位置に位置しているときに比べて2つのローラ71a、71b間の距離が長い。繊維束ガイド機構70への糸掛け作業を行う際には、ローラ71bを挟持解除位置とする。
【0057】
ここで、ローラ71bが挟持位置に位置しているときにローラ71aとローラ71bとが並ぶ方向を並設方向とする。並設方向は、ローラ71bが挟持位置に位置しているとき、ローラ71a及びローラ71bの軸線方向と直交する方向であり、且つ、ローラ71a及びローラ71bの両方の軸線と直交する方向と平行である。
図9において、第1ローラ対79aを構成するローラ71a及びローラ71bの並設方向を二点鎖線で示す。
【0058】
第2支持部材74は、搖動部材73の前後方向の両端部に取り付けられたボルト73bに挿し通されている。
図8及び
図9に示すように、ローラ71bが挟持位置に位置しているとき、ボルト73bは並設方向に沿って延びている。また、ボルト73bは、搖動部材73からローラ71a側とは反対側に突出している。第2支持部材74は、ボルト73bにおける搖動部材73からローラ71a側とは反対側に突出した部分に挿し通されている。第2支持部材74は、並設方向に沿って移動可能にボルト73bに挿し通されている。第2支持部材74が並設方向に沿って移動することで、ローラ71bも設方向に沿って移動する。
【0059】
ボルト73bにおける第2支持部材74を挟んで搖動部材73とは反対側の部分には、付勢部材76であるバネが嵌め込まれている。付勢部材76は、例えばゴム等の弾性部材であってもよい。第2支持部材74は、付勢部材76により搖動部材73に向かって付勢されている。第2支持部材74が搖動部材73に向かって付勢されることで、ローラ71bがローラ71aに向かって付勢される。
【0060】
第1支持部材72には、調整板77が取り付けられている。調整板77は、前後方向と直交する面を有する。調整板77には、弧状のスリット77aが形成されている。基台60の上面60aには、取付板78が設けられている。取付板78は、前後方向と直交する面を有する。調整板77は、スリット77aに挿し通された複数のボルト78aによって取付板78に取り付けられる。弧状のスリット77aのどの部分でボルト78aを固定するかで、案内角度θnが変わるようにローラ対71の配置を調整できる。
【0061】
ここで、第1ローラ対79aの案内角度θnを案内角度θ1とし、第2ローラ対79bの案内角度θnを案内角度θ2とする。第2ローラ対79bの案内角度θ2は、第1ローラ対79aの案内角度θ1よりも大きくなるように調整する。すなわち、ガイドローラ61cの近くに配置されるローラ対71ほど、案内角度θnが大きくなるように調整する。
【0062】
繊維束ガイド機構80も、繊維束ガイド機構70と同様の構成を有している。すなわち、繊維束ガイド機構80は、2つのローラ対81を備えている。繊維束Fのガイドローラ61dとの接触箇所での幅方向(上下方向)に対して、ローラ対81によって挟持される繊維束Fの幅方向がなす角度を案内角度θnとしたとき、0°<θn<θ0である。繊維束ガイド機構80の詳細な構成の説明は、省略する。
【0063】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の繊維束ガイド機構70は、幅方向に並べられた状態で走行する複数本の帯状の繊維束F(F1、F2、F3、F4、F5)と接触するガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間に配置される。繊維束Fのガイドローラ61bとの接触箇所での幅方向である第1方向と、繊維束Fのガイドローラ61cとの接触箇所での幅方向である第2方向と、が互いに異なっている。そして、幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束Fを挟持可能なローラ対71を備えており、第1方向に対して第2方向がなす角度をひねり角度θ0とし、第1方向に対してローラ対71によって挟持される繊維束Fの幅方向である第3方向がなす角度を案内角度θnとしたとき、0°<θn<θ0である。
【0064】
上述の構成により、ローラ対71により幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束Fを挟持できる。よって、複数本の繊維束Fがばらけたり、全体の繊維束Fの幅が変化したりするのを避けることができる。すなわち、ローラ対71により複数本の繊維束Fの整列状態を維持しつつ案内することができる。このように、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間で、複数本の繊維束Fをローラ対71によってまとめて案内できる。よって、幅方向に並べられた状態の複数本の帯状の繊維束Fを、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間の距離(ひねり距離)を短く抑えつつ、繊維束Fにねじれが生じるのを抑制してひねることができる。
【0065】
また、本実施形態の繊維束ガイド機構70では、ローラ対71を構成する2つのローラ71a、71bのうちの一方であるローラ71bは、ローラ71a、71bにより繊維束Fを挟持する挟持位置と、挟持位置に比べてローラ71a、71b間の距離が長い挟持解除位置と、の間で移動可能に構成されている。したがって、糸掛けを行う際には、ローラ71bを挟持解除位置に移動させることで、糸掛け作業が容易となる。糸掛け終了後に、ローラ71bを挟持位置に移動させることで、繊維束Fを挟持できる。
【0066】
さらに、本実施形態の繊維束ガイド機構70では、ローラ対71を構成する2つのローラ71a、71bのうちの一方であるローラ71bは、その軸線方向と直交する方向であり、且つ、ローラ71a、71bの両方の軸線と直交する方向(並設方向)に沿って移動可能に構成されており、ローラ71bをローラ71aに向かって付勢する付勢部材76をさらに備えている。したがって、付勢部材76によりローラ71bがローラ71aに向かって付勢されるので、2つのローラ71a、71bによって繊維束Fを安定的に挟持できる。
【0067】
加えて、本実施形態の繊維束ガイド機構70では、ひねり角度θ0は90°である。したがって、幅方向に並べられた状態の複数本の繊維束Fを90°ひねることができるので、フィラメントワインディング装置1に設けた場合に、装置の設計の自由度が増す。
【0068】
また、本実施形態の繊維束ガイド機構70は、案内角度θnが変わるようにローラ対71の配置を調整可能な調整板77をさらに備えている。したがって、案内角度θnを所望の角度に変更できる。
【0069】
さらに、本実施形態の繊維束ガイド機構70では、ローラ対71は、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間の糸道に沿って複数(2つ)配置されている。したがって、幅方向に並べられた状態の複数本の帯状の繊維束Fを、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間で、複数のローラ対71により案内できる。よって、ひねり距離をさらに短く抑えつつ、繊維束Fにねじれが生じるのを確実に抑制できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
上述の実施形態においては、繊維束ガイド機構70、80が、2つのガイドローラの間に配置されている場合について説明したが、これには限定されない。繊維束ガイド機構70、80は、ガイドローラ以外の複数本の帯状の繊維束Fと接触する部材の間に設けられていてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態においては、繊維束ガイド機構70、80が、2つのローラ対を備えている場合について説明したが、これには限定されない。繊維束ガイド機構70、80に備えられるローラ対の数は、1つであってもよい。また、3つ以上のローラ対を備えていてもよい。
【0073】
さらに、上述の実施形態においては、軸73aを中心に搖動部材73が搖動することで、ローラ対71を構成する2つのローラ71a、71bのうちの一方であるローラ71bが、挟持位置と挟持解除位置との間で移動可能に構成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、移動するローラは、ローラ71bでなくローラ71aであってもよい。また、ローラ71a、71bの両方が移動可能に構成されていてもよい。加えて、ローラは、直線的に移動してもよい。さらに、ローラは、挟持位置と挟持解除位置との間で移動可能でなくてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態においては、付勢部材76によってローラ71bがローラ71aに向かって付勢されている場合について説明したが、これには限定されない。付勢部材76は、ローラ71aをローラ71aに向かって付勢するものであってもよい。付勢部材76は、設けられていなくてもよい。
【0075】
加えて、上述の実施形態においては、ひねり角度θ0が90°である場合について説明したが、ひねり角度θ0は90°に限定されるものではない。
【0076】
また、上述の実施形態においては、案内角度θnが変わるようにローラ対71の配置を調整可能な調整板77を備えている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、案内角度θnは調整可能なものでなくてもよい。この場合、ガイドローラ61cの近くに配置されるローラ対71ほど、案内角度θnが大きくなるように配置する。これにより、幅方向に並べられた状態の複数本の帯状の繊維束Fを、ガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間で、複数のローラ対71により段階的にひねることができる。したがって、ひねり距離をさらに短く抑えつつ、繊維束Fにねじれが生じるのを確実に抑制できる。
【0077】
さらに、上述の実施形態においては、フィラメントワインディング装置において繊維束をガイド可能な繊維束ガイド機構について説明したが、これには限定されない。本発明は、フィラメントワインディング装置以外の走行する複数の帯状の繊維束を取り扱う繊維機械に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
61b ガイドローラ(第1糸道形成部材)
61c ガイドローラ(第2糸道形成部材)
70、80 繊維束ガイド機構
71 ローラ対
76 付勢部材
77 調整板(調整機構)
81 ローラ対
θ0 ひねり角度
θn 案内角度