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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171471
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20241205BHJP
   G05B 19/416 20060101ALI20241205BHJP
   B65H 54/64 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C70/54
G05B19/416 E
B65H54/64
B29C70/16
B29C70/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088492
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松井 利裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木野 義浩
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水辺 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】澤邉 航
【テーマコード(参考)】
3C269
4F205
【Fターム(参考)】
3C269AB27
3C269CC01
3C269CC17
3C269EF02
3C269EF30
3C269EF55
4F205AD16
4F205AG07
4F205AP20
4F205AR20
4F205HA02
4F205HB01
4F205HC02
4F205HK19
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】繊維束の巻きデータの一部がスキップされる場合でも、当該巻きデータに忠実な制御を実行する。
【解決手段】制御装置5は、データ変換部123と、基準データ設定部124と、転送部132と、セレクタ103とを備える。データ変換部123は、巻付条件に基づいて生成された複数の第1巻きデータを、処理順序番号と巻付装置2の状態の情報とが関連付けられて構成された複数の第2巻きデータに変換する。基準データ設定部124は、一部の第2巻きデータを複数の基準データとして予め設定する。転送部132は、単位時間が経過するごとに、選ばれた第2巻きデータを巻付装置2へ順次転送する。セレクタ103は、スキップ数を決めるためのオーバーライド値を設定可能である。さらに、制御装置5は、転送部132が複数の基準データの全てを巻付装置2へ転送するように、複数の基準番号の各々の前後においてスキップ数を調整する調整部131を備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーに繊維束を巻き付ける巻付装置を有するフィラメントワインディング装置を制御するように構成された数値制御装置であって、
前記繊維束の前記ライナーへの巻付条件に基づいて予め生成された、時間の情報と前記巻付装置の状態の情報とが関連付けられてそれぞれ構成された複数の第1巻きデータを、所定の単位時間の経過に対応させて付された処理順序番号の情報と前記巻付装置の状態の情報とが関連付けられてそれぞれ構成された複数の第2巻きデータに変換可能に構成されたデータ変換手段と、
前記複数の第2巻きデータのうち一部の第2巻きデータを複数の基準データとして予め設定可能に構成された基準データ設定手段と、
前記単位時間が経過するごとに、前記複数の第2巻きデータの中から順次選ばれる複数の所定巻きデータを前記巻付装置へ順次転送可能に構成された転送手段と、
前記複数の所定巻きデータを順次選ぶ際にスキップされる前記処理順序番号の数であるスキップ数を決定するためのオーバーライド値を設定可能に構成されたオーバーライド値設定手段と、
前記転送手段が前記複数の基準データの全てを前記巻付装置へ転送するように、前記オーバーライド値に基づいて、前記複数の基準データに対応する複数の前記処理順序番号である複数の基準番号の各々の前後において前記スキップ数を調整可能に構成された調整手段と、を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
前記オーバーライド値の設定値が所定の値に維持されている状態で、各基準番号の前後における前記スキップ数の変化の大きさに関するレベルである調整レベルを変更可能に構成されたレベル変更手段、を有することを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記レベル変更手段は、各基準番号の前における前記調整レベルと各基準番号の後ろにおける前記調整レベルとを異ならせることが可能であることを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記オーバーライド値設定手段は、任意のタイミングで前記オーバーライド値の設定値を切替可能に構成され、
前記調整手段は、
前記巻付装置の動作中に前記オーバーライド値が前記オーバーライド値設定手段によって切り替えられた場合に、変更後の前記オーバーライド値を変更前の前記オーバーライド値と比較して、前記スキップ数を調整することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置を制御する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ライナーに繊維束を巻き付ける巻付装置を備えるフィラメントワインディング装置が開示されている。より具体的には、巻付装置とライナーとを相対的に平行移動及び回転させながら、繊維束を巻付装置からライナーへ供給することにより、繊維束がライナーの外表面に巻き付けられる。これにより、ライナーと繊維束とを含む製品が製造される。巻付装置の動作は、制御装置によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-37702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻付装置の動作用のデータとして、巻付装置とライナーとの各種位置関係(以下、巻付装置の状態)と、時間とが関連付けられて構成された複数の巻きデータ(以下、第1巻きデータ)を公知のソフトウェアによって生成できる。当該ソフトウェアは、ライナーの長さ、ライナーの太さ、巻付角度、及び巻付完了までの時間等の条件に基づき、製品の製造時における巻付装置の一連の動作に対応する複数の第1巻きデータを生成可能にプログラムされている。
【0005】
また、複数の第1巻きデータに基づく巻付装置の制御を制御装置が実行できるようにするために、複数の第1巻きデータを所定の複数の第2巻きデータに変換する検討が行われている。複数の第2巻きデータは、巻付装置の動作速度(すなわち、巻付速度)を製品の製造時よりも遅くすることにより各種検討を行えるようにするため、複数の第1巻きデータを補間したデータとして生成される。制御装置は、所定の単位時間が経過するごとに、複数の第2巻きデータの中から選ばれた所定の第2巻きデータを巻付装置に順次転送する(このような制御装置を、以下、数値制御装置と呼ぶ)。数値制御装置が複数の第2巻きデータの全てを巻付装置に順次転送する場合、第2巻きデータを利用した動作のうち最も遅い動作を実行できる。また、数値制御装置が第2巻きデータの一部をスキップすることにより、上記最も遅い動作よりも速い動作を実行できる。つまり、単位時間が経過するごとに、複数の第2巻きデータのうちスキップされない第2巻きデータのみを巻付装置に順次転送することにより、巻付速度を速くすることができる。
【0006】
しかし、数値制御装置が第2巻きデータの一部をスキップする処理を行う場合、巻付装置に本来必ず行わせたい動作が、意図せずスキップされてしまう可能性がある。このような場合、繊維束が巻かれる巻き位置がライナー上の目標位置からずれ、製品の品質が低下するなどの問題が生じうる。
【0007】
本発明の目的は、繊維束の巻きデータの一部がスキップされる場合でも、当該巻きデータに忠実な制御を実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の数値制御装置は、ライナーに繊維束を巻き付ける巻付装置を有するフィラメントワインディング装置を制御するように構成された数値制御装置であって、前記繊維束の前記ライナーへの巻付条件に基づいて予め生成された、時間の情報と前記巻付装置の状態の情報とが関連付けられてそれぞれ構成された複数の第1巻きデータを、所定の単位時間の経過に対応させて付された処理順序番号の情報と前記巻付装置の状態の情報とが関連付けられてそれぞれ構成された複数の第2巻きデータに変換可能に構成されたデータ変換手段と、前記複数の第2巻きデータのうち一部の第2巻きデータを複数の基準データとして予め設定可能に構成された基準データ設定手段と、前記単位時間が経過するごとに、前記複数の第2巻きデータの中から順次選ばれる複数の所定巻きデータを前記巻付装置へ順次転送可能に構成された転送手段と、前記複数の所定巻きデータを順次選ぶ際にスキップされる前記処理順序番号の数であるスキップ数を決定するためのオーバーライド値を設定可能に構成されたオーバーライド値設定手段と、前記転送手段が前記複数の基準データの全てを前記巻付装置へ転送するように、前記オーバーライド値に基づいて、前記複数の基準データに対応する複数の前記処理順序番号である複数の基準番号の各々の前後において前記スキップ数を調整可能に構成された調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、転送手段が複数の第2巻きデータの全てを巻付装置に順次転送した場合、繊維束のライナーへの巻付速度を最も遅くすることができる。また、本発明では、オーバーライド値に応じて複数の第2巻きデータの一部をスキップできる。オーバーライド値が最大(すなわち、100%)のとき、巻付速度は最も速くなる。オーバーライド値が大きければ大きいほど(すなわち、100%に近ければ近いほど)、巻付装置に順次転送されるデータの数が少なくなり、巻付速度はより速くなる。
【0010】
さらに、本発明では、各基準番号の前後においてスキップ数が調整される。これにより、オーバーライド値が大きい場合でも、複数の基準データの全てを巻付装置へ転送できる。このため、巻付装置に必ず行わせたい動作がスキップされることを防止できる。したがって、繊維束の巻きデータ(第2巻きデータ)の一部がスキップされる場合でも、当該巻きデータに忠実な制御を実行できる。
【0011】
第2の発明の数値制御装置は、前記第1の発明において、前記調整手段は、前記オーバーライド値の設定値が所定の値に維持されている状態で、各基準番号の前後における前記スキップ数の変化の大きさに関するレベルである調整レベルを変更可能に構成されたレベル変更手段、を有することを特徴とする。
【0012】
基準番号の直前及び直後においてスキップ数が急激に調整されると、巻付装置又はライナーの動作の急減速及び急加速が起こりうる。これにより、繊維束の巻き位置が目標位置からずれるおそれがある。この点、本発明では、レベル変更手段によって調整レベルを変更できる。これにより、スキップ数を緩やかに調整できるため、巻付装置又はライナーの急減速及び急加速を抑制できる。したがって、巻きデータにさらに忠実な制御を実行できる。
【0013】
第3の発明の数値制御装置は、前記第2の発明において、前記レベル変更手段は、各基準番号の前における前記調整レベルと各基準番号の後ろにおける前記調整レベルとを異ならせることが可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明では、製品の最適な製造条件を見出すための検討段階において、必要に応じて柔軟な検討を行うことができる。
【0015】
第4の発明の数値制御装置は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記オーバーライド値設定手段は、任意のタイミングで前記オーバーライド値の設定値を切替可能に構成され、前記調整手段は、前記巻付装置の動作中に前記オーバーライド値が前記オーバーライド値設定手段によって切り替えられた場合に、変更後の前記オーバーライド値を変更前の前記オーバーライド値と比較して、前記スキップ数を調整することを特徴とする。
【0016】
本発明では、オーバーライド値の変更を考慮に入れてスキップ数を調整できる。したがって、オーバーライド値が巻付装置の動作途中で変更された場合でも、基準データを確実に巻付装置へ転送できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
図2】フィラメントワインディング装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】(a)、(b)は、ヘリカル巻ユニットの正面図である。
図4】制御装置等のより詳細な電気的構成を示すブロック図である。
図5】(a)は、巻付条件を示す表であり、(b)は、複数の第1巻きデータをテーブルの形式で示した表である。
図6】複数の第2巻きデータをテーブルの形式で示した表である。
図7】(a)、(b)は、処理順序番号とライナーの前後方向における位置との関係を示す模式的なグラフである。
図8】セレクタの入力画面を示す図である。
図9】(a)、(b)は、スキップ数の調整手段をテーブルの形式で示した説明図である。
図10】スキップ数の調整の手順を示すフローチャートである。
図11】(a)~(d)は、スキップ数の調整結果を示す模式図である。
図12】基準番号に係る処理が確実に実行されている様子を示す模式的なグラフである。
図13】オーバーライド値が途中で変更された場合の処理を示すフローチャートである。
図14図13に示す処理の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を示す斜視図である。図2は、フィラメントワインディング装置1の電気的構成を示すブロック図である。説明の便宜上、図1に示す方向(前後方向及び左右方向)を定義する。前後方向及び左右方向は、水平方向と平行な方向である。前後方向と左右方向は互いに直交する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。
【0019】
フィラメントワインディング装置1は、ライナーLに複数の繊維束(図1では図示省略)を同時に巻き付ける多給糸型のものである。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、複数のクリールスタンド3と、複数の前処理部4とを備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。巻付装置2は、円筒状のライナーLに繊維束を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば、炭素繊維などの繊維材料に熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。ライナーLの形状は、最終製品に応じて異なりうる。例えば最終製品が圧力タンクである場合、図1に示すように、円筒部の両側にドーム部を有するライナーLが使用される。ライナーLの材料としては、高強度アルミニウム、金属、樹脂などが用いられる。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成などの熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力タンクなどの最終製品を得ることができる。
【0020】
複数のクリールスタンド3は、例えば、巻付装置2の左右方向における両側に配置されている。複数のクリールスタンド3は、例えば、前後方向において巻付装置2の後端部の近傍に配置されている。各クリールスタンド3は、例えば、前後方向に延びる略直方体状のフレーム11を有する。フレーム11には、例えば、1以上のボビンホルダ群12が設けられている。ボビンホルダ群12は、例えば、後述するヘリカル巻ユニット50の複数のノズルユニット53の各々に対応して設けられている。各ボビンホルダ群12は、例えば前後方向に並んだ複数の(本実施形態では5つの)ボビンホルダ13を有する。各ボビンホルダ13は、例えば、左右方向に延びる軸を有する。各ボビンホルダ13は、繊維束が巻かれたボビン14を回転可能に支持する。本実施形態では、例えば9つのボビンホルダ群12が設けられ、その各々に5つのボビン14が装着されている(すなわち、計45個のボビン14が配置されている)。各ボビンホルダ群12に属する5つのボビン14から、5本の繊維束がまとめて供給される。クリールスタンド3から供給される複数の繊維束は、ヘリカル巻ユニット50によってライナーLに巻き付けられる。なお、図1においては2つのクリールスタンド3が図示されているが、クリールスタンド3の数はこれに限られない。また、図面の煩雑化を避けるため、図1においては、複数のボビンホルダ群12のうち1つのみが図示されている。
【0021】
複数の前処理部4は、複数の繊維束に所定の前処理(例えば張力付与等)を施すように構成されている。複数の前処理部4は、例えば、繊維束の走行方向において、対応するクリールスタンド3と、ヘリカル巻ユニット50(後述)との間に配置されている。
【0022】
(巻付装置)
巻付装置2のより具体的な構成について説明する。巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻ユニット40と、ヘリカル巻ユニット50と、を備える。
【0023】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻ユニット40、及び、ヘリカル巻ユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が設置されている。支持ユニット30及びフープ巻ユニット40は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット50は、例えば、基台20に対する位置が固定されている。第1支持ユニット31、フープ巻ユニット40、ヘリカル巻ユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0024】
支持ユニット30は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を有する。第1支持ユニット31は、フープ巻ユニット40よりも前側に配置されている。第2支持ユニット32は、ヘリカル巻ユニット50よりも後側に配置されている。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(図2参照)。移動用モータ34は、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35の動作は、制御装置5によって制御される。
【0025】
フープ巻ユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット40は、例えば、本体部41と、回転部材42と、複数(本実施形態では5個)のボビンホルダ43と、を有する。本体部41は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。回転部材42は、ライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状の部材である。回転部材42は、ライナーLの軸周りに回転可能な状態で、本体部41に支持されている。複数のボビンホルダ43は、周方向に等間隔で回転部材42に取り付けられている。各ボビンホルダ43は、前後方向に延びる回転軸を有しており、繊維束が巻かれたボビン(図示省略)を回転可能に支持する。
【0026】
フープ巻ユニット40は、移動用モータ46及び回転用モータ47を有する(図2参照)。移動用モータ46は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ47は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ46及び回転用モータ47の動作は、制御装置5によって制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置5は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビンから繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に同時にフープ巻きされる。
【0027】
ヘリカル巻ユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット50は、例えば、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、例えば基台20に固設されている。フレーム部材52は、ライナーLが通過可能な通過穴54が形成された円環状の部材である。フレーム部材52は、本体部51に支持されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心に放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に取り付けられている。
【0028】
図3(a)及び図3(b)は、ヘリカル巻ユニット50の正面図である。詳細には、図3(a)は、ライナーLの円筒部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。図3(b)は、ライナーLのドーム部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体55を有する。ガイド体55は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。各ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ56が配置されている。クリールスタンド3の各ボビンホルダ群12から引き出された5本の繊維束Fは、ガイドローラ56を経由して何れかのガイド体55に導入され、ガイド体55の先端からライナーLに供給される。
【0029】
ヘリカル巻ユニット50は、ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58を有する(図2参照)。ガイド移動用モータ57は、各ガイド体55を一斉に径方向に移動させる。ガイド回転用モータ58は、各ガイド体55を一斉に回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58の動作は、制御装置5によって制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置5は、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。これとともに、制御装置5は、各ノズルユニット53のガイド体55を、径方向に適宜移動させつつ回転軸周りに適宜回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体55の先端から5本の繊維束Fが適切に引き出され、合計で45本の繊維束FがライナーLの周面に同時にヘリカル巻きされる。
【0030】
(制御装置等のより詳細)
次に、制御装置5等のより詳細について図4図6を参照しつつ説明する。図4は、制御装置5等のより詳細な電気的構成を示すブロック図である。図5(a)は、巻付条件(後述)を示す表である。図5(b)は、巻付条件を変換することにより生成された複数の第1巻きデータ(後述)をテーブルの形式で示した表である。図6は、複数の第1巻きデータを変換することにより生成された複数の第2巻きデータ(後述)をテーブルの形式で示した表である。
【0031】
制御装置5(本発明の数値制御装置)は、巻付装置2を制御するための複数のデータ(以下、巻きデータ。より具体的には後述)を利用して、所定のプログラムに従って巻付装置2の動作(以下、巻付動作)を実行させるように構成されている。制御装置5は、例えばコンピュータ101と、PLC(Programmable Logic Controller)102と、セレクタ103(本発明のオーバーライド値設定手段及びレベル変更手段)とを有する。コンピュータ101は、例えば一般的なコンピュータ装置である。コンピュータ101は、PLC102が使用するための複数の巻きデータ(後述する第2巻きデータ)を生成可能に構成されている。PLC102は、所定の単位時間ごとに複数の第2巻きデータから所定の第2巻きデータを選択して巻付装置2に送る(転送する)ことが可能に構成されている。セレクタ103は、PLC102による第2巻きデータの選択の方法を必要に応じて切り替えるためのものである。
【0032】
コンピュータ101は、例えば一般的なコンピュータ装置である別の外部コンピュータ100と通信可能に接続されていても良い。外部コンピュータ100は、巻付条件(図5(a)参照)のデータに基づいて、複数の第1巻きデータを含む第1巻きデータ群(図5(b)参照)を生成可能に構成されている。外部コンピュータ100は、例えば巻付条件入力部111、第1巻きデータ生成部112及び記憶部113を有する。
【0033】
巻付条件入力部111は、例えば不図示のキーボード、マウス及び/又はタッチパネルを有する。巻付条件入力部111は、作業者によって巻付条件を入力されることが可能に構成されている。巻付条件とは、繊維束FをライナーLに巻き付けるために必要となる基本的な条件である。以下、説明の簡単化のために、例としてヘリカル巻ユニット50における巻付条件について述べる。巻付条件は、例えば繊維束Fが巻き付けられるライナーLの長さと、当該ライナーLの太さと、当該ライナーLに巻き付けられる繊維束Fの巻付角度と、巻付開始から巻付完了までの所要時間とを含む(図5(a)の「巻付完了時間」を参照)。図5(a)においては、上述したパラメータのみを示し、具体的な数値の図示を省略している。なお、一般的に、繊維束FはライナーL上に複数の層を形成するように巻き付けられる。したがって、一般的に、巻付角度に関しては複数の条件が入力される。
【0034】
第1巻きデータ生成部112は、巻付条件に基づいて、時間と巻付装置2の状態の情報とが関連付けられて構成された複数の第1巻きデータ(図5(b)参照)を生成するように構成されている。第1巻きデータ生成部112は、例えば市販のソフトウェアによって複数の第1巻きデータを生成可能である。ソフトウェアの例として、MATERIAL社のCADWIND(商標)などが挙げられる。巻付装置2の状態の情報は、例えばライナーLの前後方向における位置(ライナー位置)、ライナーLの軸周りの回転角度(ライナー角度)、ライナーLの径方向におけるノズルユニット53の位置(ノズル位置)、及びノズルユニット53の回転角度(ノズル角度)を含む。つまり、各第1巻きデータは、例えば、巻付動作の開始からの経過時間と、ライナー位置と、ライナー角度と、ノズル位置と、ノズル角度とが関連付けられて構成された一式のデータである(図5(b)参照)。図5(b)においては、時間以外の具体的な数値の図示を省略している。複数の第1巻きデータによって、1つの第1巻きデータ群が構成されている。第1巻きデータ群は、例えば制御装置5が巻付装置2の動作を開始させるよりも前に予め生成されている。なお、複数の第1巻きデータにおいて、順序が隣り合う複数の第1巻きデータ間の時間間隔は、必ずしも統一されていない。これは、一連の巻付動作において、短時間で巻付装置2を大きく動作させるタイミングと、ある程度時間をかけて巻付装置2を少しずつ動作させるタイミングとが混在しうるためである。また、CADWINDを用いた場合、1つのノズルユニット53に対応する1つの第1巻きデータ群が生成される。第1巻きデータ群の作成の作業を行う作業者は、例えば複数のノズルユニット53にそれぞれ対応する複数の第1巻きデータ群を順次作成しても良い。或いは、作業者は、あるノズルユニット53に対応する第1巻きデータ群を作成した後、何らかの手段を用いて、当該第1巻きデータ群を他のノズルユニット53に対応する1以上の第1巻きデータ群に変換しても良い。勿論、他のソフトウェアを用いることにより、複数の第1巻きデータ群が一度に生成されても良い。
【0035】
記憶部113は、少なくとも第1巻きデータ群を記憶可能に構成されている。記憶部113の代わりに、例えば、外部コンピュータ100及びコンピュータ101のいずれにも脱着可能な記憶媒体(不図示)が設けられていても良い。
【0036】
或いは、コンピュータ101が外部コンピュータ100の一部又は全部の機能を有していても良い。
【0037】
コンピュータ101は、入力部121と、記憶部122と、データ変換部123(本発明のデータ変換手段)と、基準データ設定部124(本発明の基準データ設定手段)とを有する。入力部121は、少なくとも第1巻きデータが入力されることが可能に構成されている。記憶部122は、各種データを記憶可能に構成されている。
【0038】
データ変換部123は、第1巻きデータ群(図5(b)参照)を所定の第2巻きデータ群(図6参照)に変換可能に構成されている。第2巻きデータ群は、PLC102によって読み込まれる複数の第2巻きデータを有する。複数の第2巻きデータの各々は、PLC102が所定の単位時間毎に(すなわち、一定の時間間隔で)巻付装置2に転送するためのデータである。より具体的には、データ変換部123は、複数の第1巻きデータを例えば公知の補間法によって補間し、等時間間隔の複数の巻きデータとして複数の第2巻きデータを生成する。補間法の例として、スプライン補間や直線補間が挙げられる。単位時間は、PLC102の仕様等に応じて変わりうる。本実施形態では、単位時間は例えば2msecである。なお、各第1巻きデータに含まれる時間の値が単位時間の倍数である必要はない。
【0039】
各第2巻きデータは、例えば、処理順序番号と、ライナー位置と、ライナー角度と、ノズル位置と、ノズル角度とが関連付けられて構成された一式のデータである(図6参照)。図6においては、処理順序番号以外の具体的な数値の図示を省略している。処理順序番号は、単位時間の経過に対応させて各第2巻きデータに順次付された通し番号である。1つの第2巻きデータ群に含まれる第2巻きデータの数は、処理順序番号の数と等しい。処理順序番号の数は、例えば5000(図6参照)であるが、これには限られない。第2巻きデータ群は、例えば制御装置5が巻付装置2の動作を開始させるよりも前に予め生成されている。後述するように、複数の第2巻きデータの全部又は一部が、PLC102によって巻付装置2に転送される。
【0040】
基準データ設定部124は、複数の第2巻きデータのうち特定の第2巻きデータを基準データとして設定するためのものである。詳細については後述する。
【0041】
PLC102は、例えば、機械の制御に適した公知のコンピュータである。PLC102は、所定のプログラムに従って、コンピュータ101から複数の第2巻きデータを受信し、複数の第2巻きデータから所定の第2巻きデータを順次選択して巻付装置2に転送可能に構成されている。PLC102は、例えば調整部131(本発明の調整手段)と転送部132(本発明の転送手段)とを有する。
【0042】
調整部131は、コンピュータ101によって生成された複数の第2巻きデータの中から、巻付装置2に転送されるべき第2巻きデータを順次選択するように構成されている。調整部131による具体的な第2巻きデータの選択方法(調整方法)については後述する。
【0043】
転送部132は、調整部131によって選択された第2巻きデータを単位時間毎に巻付装置2に転送するように構成されている。
【0044】
セレクタ103は、例えば作業者による入力操作を受け付けることが可能に構成された入力操作端末である。セレクタ103は、例えばPLC102と電気的に接続されている。セレクタ103は、調整部131による調整方法(後述)を切替可能に構成されている。以下、調整方法と関連する「オーバーライド」及び「オーバーライド値」について説明する。
【0045】
本実施形態におけるオーバーライドは、巻付装置2によって繊維束FをライナーLに巻き付ける巻付速度を変更する機能を意味する。巻付速度は、具体的に数値で表される情報ではなく、繊維束FをライナーLに巻き付ける速さの指標となる概念である。巻付速度は、第2巻きデータ群の全部又は一部を用いて繊維束FのライナーLへの巻付けを開始してから、巻付けが完了するまでの時間(巻付時間)が短いほど速い。また、巻付時間が長いほど巻付速度が遅い。巻付速度を変更する目的は、繊維束FをライナーLに巻き付けて製品を生産する条件(以下、生産条件)を確定させる前に、ライナーLの外表面における繊維束Fの巻付位置の確認等の詳細な検討を可能にすることである。このような検討を可能にするための機能を、説明の便宜上、オーバーライドと呼ぶ。
【0046】
製品が生産されるときの巻付速度を、説明の便宜上、最大巻付速度と呼ぶ。上述した検討が行われる際に、オーバーライドの機能を用いて、最大巻付速度よりも遅い巻付速度をセレクタ103によって設定できる。設定される巻付速度の最大巻付速度に対する倍率(%)を、説明の便宜上「オーバーライド値」と呼ぶ。オーバーライド値は、最大巻付速度を100%としたときの倍率の値である。つまり、オーバーライド値は、0よりも大きく且つ100%以下である。本実施形態のセレクタ103は、オーバーライド値を例えば10%~100%の範囲で切替可能に(設定可能に)構成されている。本実施形態において、選択可能な(設定可能な)オーバーライド値は、例えば10%、30%、50%及び100%のように、不連続的な既定の値である。以下、セレクタ103において選択されている(設定されている)オーバーライド値を、オーバーライド値の設定値とも呼ぶ。セレクタ103は、例えば所定の時間間隔で(例えば、上述した単位時間が経過するごとに)オーバーライド値の設定値の情報をPLC102に転送可能に構成されている。オーバーライド値は、後述するスキップ数を決めるための値でもある。
【0047】
(基本的な調整)
次に、オーバーライド値に応じてPLC102の調整部131が行う基本的な調整について、図7(a)及び図7(b)を参照しつつ説明する。図7(a)及び図7(b)は、処理順序番号とライナーLの前後方向における位置(以下、ライナー位置)との関係を示す模式的なグラフである。
【0048】
オーバーライド値が最小(本実施形態では10%)であるとき、調整部131は、第2巻きデータ群に含まれる全ての(本実施形態では5000個の)第2巻きデータを順次選択する。これにより、転送部132が全ての第2巻きデータを単位時間毎に巻付装置2に順次転送する。その結果、巻付装置2は、単位時間に第2巻きデータの総数を掛けることにより得られる時間(以下、最大時間と呼ぶ)をかけてゆっくりと巻付動作を行う。これにより、全ての第2巻きデータに忠実な制御が行われ(図7(a)参照)、ライナーLの所望の位置に繊維束が巻き付けられる。本実施形態では、最大時間は、オーバーライド値が100%であるときに巻付動作の開始から完了までに要する時間の約10倍である。このとき、図7(a)に示すように、例えばライナー位置(ライナーLの前後方向における位置)が、各時間において目標どおりの位置になる。他のパラメータ(ライナー角度、ノズル位置及びノズル角度)についても同様である。
【0049】
オーバーライド値が最小値以外の値であるとき、調整部131は、複数の第2巻きデータの一部(以下、複数の所定巻きデータ)を順次選択する。例えばオーバーライド値が50%であるとき(図7(b)参照)、調整部131は、原則として、5000個の第2巻きデータの中から約1000個のみの第2巻きデータを順次選択する。より具体的には、例えば処理順序番号が1、5、10、15、20等に係る第2巻きデータを選択する。言い換えれば、調整部131は、転送部132に一部の処理順序番号(例えば2、3、4、6、7、8、9等)をスキップさせるように第2巻きデータを選択する。言い換えると、調整部131は、オーバーライド値に応じて、原則として所定の数の第2巻きデータを読み飛ばす処理を行う。転送部132は、調整部131が選んだ第2巻きデータ(所定巻きデータ)を、単位時間毎に巻付装置2へ順次転送する。
【0050】
以下、説明の便宜上、単位時間が経過するごとにスキップされる処理順序番号の数をスキップ数と呼ぶ。また、上記所定の数を基本スキップ数と呼ぶ。基本スキップ数は、スキップ数の一種である。基本スキップ数は、オーバーライド値の設定値を10で割って得られる値に100を掛けることによって得られる数値である。例えばオーバーライド値の設定値が50%であるときの基本スキップ数は5である。例えばオーバーライド値の設定値が100%であるときの基本スキップ数は10である。
【0051】
このように、単位時間が経過するごとに、複数の第2巻きデータのうちスキップされない第2巻きデータ(すなわち、所定巻きデータ)のみを巻付装置2に順次転送することにより、巻付速度を速くすることができる。より具体的には、オーバーライド値が50%であるときには、オーバーライド値が10%であるときと比べて約5倍の巻付速度で巻付装置2に巻付動作を行わせることが可能である。
【0052】
しかし、その一方で、制御装置5が第2巻きデータの一部をスキップする処理を行う場合、巻付装置2に本来必ず行わせたい動作が、意図せずスキップされてしまう可能性がある。例えば図7(b)の参考図に示すように、所定の時間において、塗りつぶされた丸印で示されたライナー位置にライナーLを位置させる必要があると仮定する。このような状況において、単に基本スキップ数と同じ数の第2データをスキップするという基本的な調整しか行われないと(破線参照)、所定の時間において本来あるべき位置にライナーLが位置しないおそれがある(図7(b)の下向きの矢印を参照)。このような場合、繊維束Fが巻かれる巻き位置がライナーL上の目標位置からずれ、製品の品質が低下するおそれがある。そこで、第2巻きデータの一部がスキップされる場合でも、第2巻きデータに忠実な制御を実行するため、制御装置5は以下のように構成されている。
【0053】
(概要)
詳細な説明の前に、制御装置5が実行する処理の概要を説明する。まず、制御装置5は、複数の第2巻きデータのうち、巻付装置2に必ず行わせたい動作に係る一部の第2巻きデータを、複数の基準データとして予め設定可能に構成されている。そして、PLC102は、転送部132が当該複数の基準データを必ず巻付装置2に転送するように第2巻きデータを選択可能にプログラムされている。このような選択のために調整部131が行う処理を、以下、説明の便宜上、スムージング処理と呼ぶ。スムージング処理とは、簡単に説明すると、複数の基準データの各々に係る処理順序番号(以下、基準番号)の前後において、スキップ数を基本スキップ数よりも小さい数に調整する処理である。
【0054】
(基準データ)
基準データを設定するための手段について説明する。上述したように、制御装置5のコンピュータ101は、基準データ設定部124(図4参照)を有する。基準データ設定部124は、一部の第2巻きデータを複数の基準データとして設定するためのものである、基準データ設定部124は、例えば作業者による操作入力を受け付けることが可能に構成されている。基準データ設定部124は、作業者による操作入力に応じて基準番号フラグをオン又はオフすることが可能である。基準番号フラグとは、各処理順序番号に係る第2巻きデータが基準データであるか否かを示すフラグである。ある処理順序番号と関連付けられた基準番号フラグがオンであるとき、当該処理順序番号に係る第2巻きデータは基準データである。また、当該処理順序番号は基準番号である。当該フラグがオフであるとき、当該処理順序番号に係る第2巻きデータは基準データではない。基準データ設定部124によって更新された複数の巻きデータは、例えば記憶部122に記憶される。
【0055】
本実施形態では、作業者は、制御装置5が巻付装置2の動作を開始させる前にコンピュータ101を操作し、複数の基準データを予め設定する。作業者は、上述したライナー位置、ライナー角度、ノズル位置及びノズル角度のうちどの情報に基づいて複数の基準データを設定しても良い。なお、最初の処理順序番号(本実施形態では「1」)に係る基準番号フラグ及び最後の処理順序番号(本実施形態では「5000」)に係る基準番号フラグは、通常、オンに設定される。
【0056】
セレクタ103について、図8を参照しつつ簡単に補足説明する。図8は、セレクタ103の入力画面Sを示す図である。セレクタ103は、上述したように、オーバーライド値の設定値を切替可能に構成されている(図8参照)。作業者は、セレクタ103を操作することによりオーバーライド値の切替作業を実行可能である。また、セレクタ103は、オーバーライド値の設定値が所定の値に維持されている状態で、スムージング処理のレベル(以下、調整レベル。図8参照)を変更可能に構成されている。セレクタ103は、調整レベルを例えば「弱」、「中」及び「強」の間で切り替えることが可能に構成されている(図8においては「強」が選択されている)。概要として、調整レベルが強いほど、スキップ数の調整がより長い時間をかけて(すなわち、よりスムーズに)行われる。より詳細については後述する。
【0057】
(スムージング処理)
スムージング処理(すなわち、スキップ数の調整)について、図9(a)~図12を参照しつつ説明する。図9(a)及び図9(b)は、スキップ数の調整手段をテーブルの形式で示した説明図である。図10は、スキップ数の調整の手順を示すフローチャートである。図11(a)~図11(d)は、スキップ数の調整結果を示す模式図である。図12は、基準番号に係る処理が確実に実行されている様子を示す模式的なグラフである。なお、図12に示す複数の基準データ(塗りつぶされた丸印)に係る処理順序番号は、単に説明の便宜のために短い間隔で示されている。当該処理順序番号は、他の図面の説明における基準データの処理順序番号と一致するものではないことに留意されたい。
【0058】
まず、スムージング処理を行うための手段について図9(a)及び図9(b)を参照しつつ説明する。PLC102は、単位時間が経過するごとに、所定のプログラムに基づく各種演算及び各種制御等の処理を行うように構成されている。以下、説明の便宜上、このような各種演算及び各種制御をまとめて周期的制御と呼ぶ。周期的制御の周期を、以下、制御周期と呼ぶ。制御周期の長さは、例えば単位時間の長さと等しい。
【0059】
PLC102は、例えば以下の機能を有するようにプログラムされている。PLC102は、制御周期ごとに、現在の制御周期における(以下、単に「現在の」ともいう)処理順序番号を把握可能である。PLC102は、制御周期ごとに、現在のスキップ数を把握可能である。PLC102は、制御周期ごとに、現在の処理順序番号から所定数先までの処理順序番号に係る基準番号フラグを読み取ることが可能である。PLC102は、読み取った基準番号フラグがオンかオフか判断可能である。所定数は、オーバーライド値及び調整レベルに応じて変更されても良い。例えば、オーバーライド値が50%であり且つ調整レベルが強であるとき、所定数が14であっても良い(図9(a)参照)。例えば、オーバーライド値が100%であり且つ調整レベルが強であるとき、所定数が54であっても良い(図9(b)参照)。或いは、所定数は、オーバーライド値及び調整レベルに関わらず一定であっても良い。つまり、所定数は、想定される数のうち最大の数であっても良い。
【0060】
また、PLC102は、基準番号フラグがオンであると判断した処理順序番号(すなわち、基準番号)と現在の処理順序番号との差(以下、単に差分値とも呼ぶ)に基づき、スキップ数を調整可能である。例えば図9(a)及び図9(b)に示すように、PLC102は、差分値とスキップ数とが関連付けられて構成された複数のデータ(データ群)を記憶している。以下、当該データ群をスキップ数データ群と呼ぶ。スキップ数データ群は、各オーバーライド値及び各調整レベルに対応してPLC102に予め記憶されている。1つのスキップ数データ群において、差分値が小さいほどスキップ数が少ない(例えば図9(a)を参照)。PLC102は、オーバーライド値、調整レベル、現在の処理順序番号及び基準番号に基づいて、所定のスキップ数データ群における所定のデータを読み取ることによって、スキップ数を取得可能である。或いは、PLC102は、オーバーライド値、調整レベル、現在の処理順序番号及び基準番号に基づいて、何らかの演算によってスキップ数を導き出すようにプログラムされていても良い。
【0061】
また、PLC102は、現在のオーバーライド値と、直前の制御周期における(以下、単に「直前の」という)オーバーライド値と、セレクタ103から入力されているオーバーライド値の設定値とを記憶可能である。この機能を利用して行われる処理については後述する。
【0062】
(スキップ数の調整の例)
次に、スキップ数の調整の手順の例、及びスキップ数の調整結果の例について、図10に示すフローチャート及び図11(a)~図11(d)を参照しつつ説明する。説明の簡単化のため、ここでは、巻付動作の開始から終了までオーバーライド値及び調整レベルが一定である場合の周期的制御について説明する。巻付動作の開始から完了までの間にオーバーライド値の設定値が変更された場合の処理については後述する。また、説明の簡単化のため、ここでは、ある基準番号とその次の基準番号との間には十分な数の処理順序番号が存在すると仮定する。また、第2巻きデータを巻付装置2に転送する処理はPLC102の転送部132によって行われ、それ以外の処理はPLC102の調整部131によって行われるものとする。
【0063】
当該周期的制御において、まず、PLC102は、現在の処理順序番号及び現在のスキップ数を把握する。PLC102は、例えば、現在の処理順序番号に係る第2巻きデータを巻付装置2に転送する(S101)。次に、PLC102は、現在の処理順序番号から所定数先までの第2巻きデータを読み取る。PLC102は、読み取った複数の巻きデータのいずれかの基準番号フラグがオンであるかどうか判断する(S102)。いずれの基準番号フラグもオフである場合(S102:No)、PLC102は、現在のスキップ数が基本スキップ数と等しいかどうか判断する(S103)。現在のスキップ数が基本スキップ数と等しい場合(S103:Yes)、PLC102は、現在の処理順序番号に現在のスキップ数を足すことにより、次の処理順序番号を得る(S104)。次の処理順序番号は、次の(すなわち、単位時間経過後の)周期的制御が行われる際に用いられる。以上の処理は、スムージング処理が不要な範囲における処理である。ここでの「範囲」とは、ある2つの処理順序番号の間に存在する処理順序番号の範囲を意味する(当該範囲には、当該2つの処理順序番号も含まれる)。スムージング処理が不要な範囲を、以下、通常範囲とも呼ぶ。また、スムージング処理が必要な範囲を、以下、スムージング範囲とも呼ぶ。
【0064】
より具体的な例として、オーバーライド値の設定値が50%であるときの通常範囲における処理結果を、図11(a)を参照しつつ説明する。例えば処理順序番号が10(図11(a)のN10を参照)から55(図11(a)のN55を参照)までの範囲においてスムージング処理が不要である場合、少なくともN10~N55の範囲は通常範囲である。通常範囲においては、スキップ数が一定に維持される。この場合のスキップ数は、基本スキップ数と等しい5である(図11(a)の「5pt」を参照)。
【0065】
次に、同じく図10のフローチャートを参照しつつ、スムージング処理が必要な場合について説明する。読み取った複数の巻きデータのいずれかの基準番号フラグがオンである場合(S102:Yes)、PLC102は、基準番号と現在の処理順序番号との差(すなわち、差分値)に基づき、スキップ数を調整する(S105)。そして、PLC102は、調整後のスキップ数を現在の処理順序番号に足して次の処理順序番号を得る(S104)。ステップS105のより具体的な例を説明すると、PLC102は、現在のオーバーライド値及び調整レベルに対応するスキップ数データ群の中から、差分値と関連付けられたスキップ数を選択する。PLC102は、当該スキップ数を現在のスキップ数として設定する。フローチャートにおける具体的な図示は省略するが、スキップ数データ群に含まれる複数のデータに現在の差分値が含まれている場合(すなわち、現在の処理順序番号がスムージング範囲の中に収まっている場合)、PLC102はスキップ数の調整を行う。また、スキップ数データ群に含まれる複数のデータに現在の差分値が含まれていない場合、PLC102はスキップ数の調整を行わない。
【0066】
オーバーライド値の設定値が50%であり調整レベルが強であるときを想定する(図9(a)参照)。差分値が10であるとき、スキップ数は4に設定される(図9(a)の破線の丸で囲まれた数字を参照)。そして、PLC102は、ステップS104において現在の処理順序番号に当該スキップ数を足すことにより、次の処理順序番号を得る。すると、次の制御周期において、差分値は6になり、スキップ数は3に設定される(図9(a)の破線の丸で囲まれた数字を参照。以下同様)。さらに次の制御周期において、差分値は3になり、スキップ数は2に設定される。さらに次の制御周期において、差分値は1になり、スキップ数は1に設定される。このように、単位時間が経過するごとにスキップ数を順次減少させる処理が行われる。以下、このような処理を、説明の便宜上、減少処理と呼ぶ。
【0067】
オーバーライド値の設定値が50%であり調整レベルが強であるときの減少処理の結果を、図11(b)を参照しつつ説明する。例えば、複数の基準番号の1つが95(図11(b)のN95を参照)であると仮定する。現在の処理順序番号が例えば75又は80であるとき(図11(b)のN75及びN80を参照)、スムージング処理はまだ不要である。現在の処理順序番号が85になったとき、減少処理が始まる。これにより、スキップ数が4、3、2、1と減少し、処理順序番号はN85、N89、N92、N94、N95となる。このような減少処理が行われることにより、基準番号(ここでは95)に係る第2巻きデータを確実に巻付装置2に転送できる。
【0068】
次に、同じく図10のフローチャートを参照しつつ、オーバーライド値の設定値が50%であり調整レベルが強であるときに、現在の処理順序番号が基準番号よりも大きくなった後の処理について説明する。いずれの基準番号フラグもオフであり(S102:No)、且つ現在のスキップ数が基本スキップ数と異なる場合、(S103:No)、PLC102はスキップ数を1段階増加させる(S106)。1段階増加させるとは、単位時間が経過するごとに、減少させられたスキップ数を2、3、4、5のように段階的に元に戻す(増加させる)ことを意味する。そして、PLC102は、増加させたスキップ数を現在の処理順序番号に足して、次の処理順序番号を得る(S104)。これを繰り返すことにより、減少処理により減少したスキップ数が基本スキップ数に戻る。以下、このようにスキップ数を元に戻す(増加させる)処理を、説明の便宜上、増加処理と呼ぶ。
【0069】
図10に示すフローチャートにおいては、上述したいずれの条件分岐が行われた場合でも、ステップS104が実行された時点で周期的制御が完了する。その次の制御周期においては、PLC102は、直前に得た処理順序番号を現在の処理順序番号として取り扱う。
【0070】
オーバーライド値の設定値が他の値であるときの例についても簡単に説明する。例えばオーバーライド値の設定値が100%であり調整レベルが強であるとき、図9(b)に示すようなスキップ数データ群が利用される。減少処理の結果は、例えば図11(c)に示すようになる。例えば基準番号が95であると仮定する。現在の処理順序番号が例えば40であるとき(図11(c)のN40を参照)、スムージング処理はまだ不要である。現在の処理順序番号が50になったとき、減少処理が始まる。スキップ数は9、8、7、6、5、4、3、2、1と減少する。処理順序番号はN50、N59、N67、N74、N80、N85、N89、N92、N94、N95となる。
【0071】
調整レベルが強以外のレベルであるときの例についても簡単に説明する。例えば調整レベルが弱であるときには、調整レベルが強であるときと比べて、スムージング処理中のスキップ数の変化が大きくなる。オーバーライド値の設定値が100%であり調整レベルが弱であるときの例を説明する。このときのスムージング範囲は、調整レベルが強であるときのスムージング範囲と比べて狭い。また、調整レベルが弱であるとき、PLC102は、スキップ数をより少ない制御周期で大きく変化させる。減少処理の結果は、例えば図11(d)に示すようになる。例えば、複数の基準番号の1つが186であると仮定する(図11(d)のN186を参照)。現在の処理順序番号が例えば150、160又は170であるとき(図11(d)のN150、N160及びN170を参照)、スムージング処理はまだ不要である。現在の処理順序番号が180になったとき、減少処理が始まる。単位時間が経過するごとに、スキップ数は5、1と大きく減少する。処理順序番号はN180、N185、N186と変化する。増加処理時も同様に、単位時間が経過するごとにスキップ数が5、10と大きく増加する。処理順序番号はN186、N187、N192、N202と変化する。つまり、調整レベルが弱であるときには、狭い処理基準番号の範囲内で急な減少処理及び増加処理が行われる。言い換えると、調整レベルが弱であるときには、PLC102は、調整レベルが強であるときよりもスキップ数の変化率を大きくする。
【0072】
調整レベルが中であるときには、PLC102は、調整レベルが強であるときよりもスキップ数の変化率を大きくし、調整レベルが弱であるときよりもスキップ数の変化率を小さくする。詳細な説明については省略する。
【0073】
以上のように、処理順序番号が通常範囲内に収まっている場合には、スキップ数が基本スキップ数に維持される。これにより、原則としてオーバーライド値の設定値に基づく制御が行われる。また、処理順序番号がスムージング範囲内に収まっている場合には、原則として、オーバーライド値の設定値及び調整レベルに応じた減少処理及び増加処理の処理(すなわち、スキップ数の調整)が行われる。これにより、例えば図12に示すように、ライナーLを基準データに係る目標位置に必ず位置させることができる。
【0074】
(オーバーライド値が巻付動作中に変更される場合)
次に、巻付動作中に作業者がセレクタ103を操作してオーバーライド値の設定値を変更した場合の処理について、図13及び図14を参照しつつ説明する。図13は、オーバーライド値の設定値が途中で変更された場合の処理を示すフローチャートである。図14は、図13に示す処理の一部を示すフローチャートである。
【0075】
図13に示すフローチャートに係る制御は、上述した周期的制御の一つである。すなわち、単位時間が経過するごとに、PLC102はステップS201~S206の処理を実行する。
【0076】
上述したように、PLC102は、現在のオーバーライド値と、直前のオーバーライド値と、セレクタ103から入力されているオーバーライド値の設定値とを記憶可能に構成されている。また、セレクタ103は、任意のタイミングで(すなわち、巻付装置2の動作開始前及び動作中のいずれにおいても)オーバーライド値を変更可能に構成されている。以下、現在のオーバーライド値は、本発明の変更後のオーバーライド値に相当する。直前のオーバーライド値は、本発明の変更前のオーバーライド値に相当する。
【0077】
まず、PLC102は、セレクタ103から入力されているオーバーライド値(以下、単に入力値)を現在のオーバーライド値として仮に取り扱う。PLC102は、現在のオーバーライド値が選択肢のうち最小の値(本実施形態では、10%)であるかどうか判断する(S201)。現在のオーバーライド値が最小である場合(S201:Yes)、基本スキップ数に基づいて現在の動作を継続する(S202)。オーバーライド値が最小である場合には、そもそもスムージング処理が不要なためである。
【0078】
現在のオーバーライド値が最小でない場合(S201:No)、PLC102は、現在スムージング処理を実行中であるかどうか判断する(S203)。スムージング処理を実行中の場合(S203:Yes)、PLC102は、現在のオーバーライド値と直前のオーバーライド値と比較し、比較結果に基づく処理を実行する(S204)。詳細については後述する。
【0079】
スムージング処理が実行されていない場合(S203:No)、PLC102は、現在の処理順序番号がスムージング範囲の中に収まっているどうか判断する(S205)。ここでのスムージング範囲とは、現在のオーバーライド値(及び調整レベル)に対応するスムージング範囲である。
【0080】
現在の処理順序番号がスムージング範囲の中に収まっていない場合(S205:No)、PLC102は、基本スキップ数に基づいて現在の動作を継続する(S202)。この場合には、スムージング処理を行う必要がないためである。
【0081】
現在の処理順序番号がスムージング範囲の中に収まっている場合(S205:Yes)、PLC102は、現在のオーバーライド値(及び調整レベル)に基づきスムージング処理を実行する(S206)。この場合、PLC102は、現在のオーバーライド値(及び調整レベル)に対応するスキップ数データ群を利用してスムージング処理を実行する。
【0082】
次に、上述したステップS204の処理(以下、サブプロセスと呼ぶ)の詳細について図14を参照しつつ説明する。まず、PLC102は、現在のオーバーライド値(以下、単に現在値と呼ぶ)を、直前のオーバーライド値(以下、単に直前値と呼ぶ)と比較する(S301)。比較結果に基づいて条件分岐が行われる。
【0083】
現在値が直前値と等しいとき、PLC102は、現在値に基づいてスムージング処理を継続する(S302)。この段階でサブプロセスが完了する。
【0084】
現在値が直前値よりも増加したとき、PLC102は、現在値を直前値と同じ値に戻してスムージング処理を継続する(S303)。言い換えると、PLC102は、セレクタ103からの入力値を無視する。これは、実行中のスムージング処理を直前のオーバーライド値に基づいて完遂させるためである。この段階でサブプロセスが完了する。次の制御周期においてサブプロセスが実行される際、直前値は増加前の値に維持されている。
【0085】
現在値が直前値よりも減少したとき、PLC102は、現在の処理順序番号がスムージング範囲から外れるかどうか判断する(S304)。
【0086】
現在の処理順序番号がスムージング範囲から外れない場合(S304:No)、PLC102は、現在値を直前値と同じ値に戻してスムージング処理を継続する(S303)。すなわち、この場合にも、セレクタ103による入力値が無視される。この段階でサブプロセスが完了する。
【0087】
現在の処理順序番号がスムージング範囲から外れる場合(S304:Yes)、PLC102は、現在のオーバーライド値に基づいて通常の動作(すなわち、基本スキップ数に基づく巻付動作)を開始する。現在値は、入力値と同じ値に維持される。この段階でサブプロセスが完了する。
【0088】
以上のようにして、セレクタ103によってオーバーライド値の設定値が巻付動作中に切り替えられた場合、PLC102は、現在値を直前値と比較してスキップ数を調整する。
【0089】
以上より、オーバーライド値が大きい場合でも、各基準番号の前後において、調整部131によってスキップ数が調整される。これにより、複数の基準データの全てを巻付装置2へ転送できる。このため、巻付装置2に必ず行わせたい動作がスキップされることを防止できる。したがって、繊維束Fの巻きデータ(第2巻きデータ)の一部をスキップする場合でも、当該巻きデータに忠実な制御を実行できる。
【0090】
また、セレクタ103によって調整レベルを変更できる。これにより、スキップ数を緩やかに調整できるため、巻付装置2又はライナーLの急減速及び急加速を抑制できる。したがって、巻きデータにさらに忠実な制御を実行できる。
【0091】
また、巻付動作中のオーバーライド値の変更を考慮に入れてスキップ数を調整できる。したがって、オーバーライド値が巻付装置2の動作途中で変更された場合でも、基準データを確実に巻付装置2へ転送できる。
【0092】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0093】
(1)セレクタ103は、基準番号の前における調整レベルと基準番号の後ろにおける調整レベルとを異ならせることが可能に構成されていても良い。これにより、製品の最適な製造条件を見出すための検討段階において、必要に応じて柔軟な検討を行うことができる。
【0094】
(2)前記までの実施形態において、セレクタ103は、巻付装置2の動作途中でオーバーライド値を変更可能に構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。セレクタ103は、例えば巻付装置2の動作開始前にのみオーバーライド値を変更可能であっても良い。
【0095】
(3)前記までの実施形態において、セレクタ103は、調整レベルを弱、中及び強の3つの選択肢の中から選択可能に構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。調整レベルの数は、2つであっても良く、4つ以上であっても良い。或いは、セレクタ103は、調整レベルを変更可能に構成されていなくても良い。
【0096】
(4)前記までの実施形態において、PLC102が巻付装置2の動作を制御するものとした。しかしながら、PLC102の代わりに、巻付装置2の動作を制御可能な別のコンピュータ装置(不図示)が設けられていても良い。
【0097】
(5)前記までの実施形態において、制御装置5はセレクタ103を有するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、コンピュータ101がセレクタ103としての機能を有していても良い。
【0098】
(6)前記までの実施形態において、オーバーライド値の選択肢が10%、30%、50%及び100%であるものとした。しかしながら、オーバーライド値の選択肢はこれには限られない。また、オーバーライド値の最小値は、10%以外の値であっても良い。
【0099】
(7)前記までの実施形態において、巻付条件にもとづいて第1巻きデータ群を生成する処理が外部コンピュータ100によって実行されるものとした。しかしながら、これには限られない。例えばコンピュータ101が第1巻きデータ群を生成しても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 フィラメントワインディング装置
2 巻付装置
5 制御装置(数値制御装置)
103 セレクタ(オーバーライド値設定手段、レベル変更手段)
123 データ変換部(データ変換手段)
124 基準データ設定部(基準データ設定手段)
131 調整部(調整手段)
132 転送部(転送手段)
F 繊維束
L ライナー
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