(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171476
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】リチウム金属二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20241205BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241205BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241205BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241205BHJP
H01M 4/1315 20100101ALI20241205BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20241205BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0587
H01M4/1315
H01M4/70 A
H01M4/80 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088503
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆太
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】池田 丈典
(72)【発明者】
【氏名】阿部 武志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC25
5H017DD01
5H017EE01
5H017EE04
5H017HH03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029HJ04
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050FA05
5H050FA10
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】負極反応の可逆性を改善すること。
【解決手段】リチウム金属二次電池は、発電要素および電解質を含む。発電要素は、正極および負極を含む。負極は、基材および凸部を含む。基材は、導電性である。凸部は、絶縁性である。基材の表面に、凹部が形成されている。凸部は、基材の表面に配置されている。凸部は、基材の表面から外側に突出している。式「0.001≦d/h≦10」の関係が満たされている。dは、凹部の深さを示す。hは、凸部の高さを示す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素および電解質を含み、
前記発電要素は、正極および負極を含み、
前記負極は、基材および凸部を含み、
前記基材は、導電性であり、
前記凸部は、絶縁性であり、
前記基材の表面に、凹部が形成されており、
前記凸部は、前記基材の前記表面に配置されており、
前記凸部は、前記基材の前記表面から外側に突出しており、
式:
0.001≦d/h≦10
の関係が満たされており、
前記式中、
dは、前記凹部の深さを示し、
hは、前記凸部の高さを示し、かつ
前記深さおよび前記高さは、前記基材の前記表面を基準とする、
リチウム金属二次電池。
【請求項2】
前記基材は、多孔質である、
請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項3】
前記凹部の内部に、シード材料が配置されており、かつ
前記シード材料は、Li、Mg、Al、Zn、Ag、Pt、および、Auからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項4】
前記凹部の内部に、固体電解質およびゲル電解質からなる群より選択される少なくとも1種が配置されている、
請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項5】
平面視において、前記凸部は線状に延びている、
請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項6】
平面視において、前記凸部は点状に分布している、
請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項7】
断面視において、前記凸部は、テーパ形状または逆テーパ形状を有する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項8】
前記発電要素は、巻回電極体であり、
前記基材は、内周面および外周面を有し、
前記巻回電極体において、前記内周面は内周側に配置されており、
前記外周面は、前記内周面の反対面であり、
前記内周面および前記外周面の各々に、前記凸部が配置されており、
前記内周面において、前記凸部は、前記テーパ形状を有し、かつ
前記外周面において、前記凸部は、前記逆テーパ形状を有する、
請求項7に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項9】
前記発電要素は、巻回電極体であり、
前記基材は、内周面および外周面を有し、
前記巻回電極体において、前記内周面は内周側に配置されており、
前記外周面は、前記内周面の反対面であり、
前記内周面および前記外周面の各々に、前記凸部が配置されており、
前記内周面において、前記凸部は、前記逆テーパ形状を有し、かつ
前記外周面において、前記凸部は、前記テーパ形状を有する、
請求項7に記載のリチウム金属二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム金属二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平04-004563号公報(特許文献1)は、セパレータと接する側が凸型形状を有する負極集電体を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウム金属二次電池(以下「LMB(Lithium-Metal secondary Battery)」と略記され得る。)が検討されている。LMBにおける負極反応は、Liの溶解反応および析出反応である。充電時、負極集電体の表面においてLiイオンが電子を受け取ることにより、Liが析出する。Liはデンドライトを形成し得る。デンドライトが正極に向かって成長することにより、負極反応の可逆性が低下すると考えられる。
【0005】
例えば、負極集電体に凸部を設けることが提案されている。凸部がスペーサとして機能することにより、凸部の周囲に格納スペースが形成される。格納スペースにLiが析出することにより、負極反応の可逆性が改善することが期待される。しかしながら、凸部にも電子が供給されることにより、凸部の先端からデンドライトが発生する可能性もある。すなわち、格納スペースの外部にLiが析出する可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、負極反応の可逆性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは、本開示の技術的範囲を限定しない。
【0008】
1.リチウム金属二次電池は、発電要素および電解質を含む。発電要素は、正極および負極を含む。負極は、基材および凸部を含む。基材は、導電性である。凸部は、絶縁性である。基材の表面に、凹部が形成されている。凸部は、基材の表面に配置されている。凸部は、基材の表面から外側に突出している。下記式の関係が満たされている。
0.001≦d/h≦10
dは、凹部の深さを示す。hは、凸部の高さを示す。深さおよび高さは、基材の表面を基準とする。
【0009】
上記「1」に記載のLMBにおいては、凸部が絶縁性である。凸部には電子が供給されないと考えられる。Liは、導電性を有する基材の表面から析出することが期待される。基材の表面には、凹部が形成されている。基材が大きい表面積を有することにより、基材の表面からのLiの析出が促進されることが期待される。さらに、凹部の深さと、凸部の高さとが特定の関係を満たす時、格納スペースにおける、Liの析出反応および溶解反応が促進されることが期待される。これらの作用の相乗により、負極反応の可逆性が改善することが期待される。
【0010】
2.上記「1」に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。基材は、多孔質である。
【0011】
基材が多孔質であることにより、面内方向において負極反応の均一性が向上することが期待される。基材は、三次元網目構造を含んでいてもよい。細孔が三次元的に連通することにより、負極反応の均一性が向上する可能性がある。
【0012】
3.上記「1」または「2」に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。凹部の内部に、シード材料が配置されている。シード材料は、Li、Mg、Al、Zn、Ag、Pt、および、Auからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0013】
シード材料は、Liの核生成の種となることが期待される。シード材料は、例えば、Liであってもよい。シード材料は、例えば、Liと合金化し得る金属であってもよい。シード材料が凹部内に配置されていることにより、負極反応の可逆性が改善することが期待される。
【0014】
4.上記「1」から「3」のいずれか1項に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。凹部の内部に、固体電解質およびゲル電解質からなる群より選択される少なくとも1種が配置されている。
【0015】
凹部内に、固体電解質およびゲル電解質の少なくとも一方が配置されていることにより、基材の表面におけるLiイオンの分布が均一になることが期待される。これにより、負極反応の可逆性が改善することが期待される。
【0016】
5.上記「1」から「4」のいずれか1項に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。平面視において、凸部は線状に延びる。
【0017】
凸部は、例えば、壁状であってもよい。
【0018】
6.上記「1」から「4」のいずれか1項に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。平面視において、凸部は点状に分布する。
【0019】
凸部は、例えば、柱状であってもよい。
【0020】
7.上記「1」から「6」のいずれか1項に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。断面視において、凸部は、テーパ形状または逆テーパ形状を有する。
【0021】
凸部がテーパ形状または逆テーパ形状を有することにより、負極反応の可逆性が改善することが期待される。
【0022】
8.上記「7」に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。発電要素は、巻回電極体である。基材は、内周面および外周面を有する。巻回電極体において、内周面は内周側に配置されている。外周面は、内周面の反対面である。内周面および外周面の各々に、凸部が配置されている。内周面において、凸部はテーパ形状を有する。外周面において、凸部は逆テーパ形状を有する。
【0023】
発電要素が巻回電極体である時、例えば、負極の内周面と外周面との間で、反応性の差が大きいために、性能劣化が促進される可能性がある。内周側と外周側との間で、凸部の形状が異なることにより、例えば、内周面と外周面との間における、反応性の差が緩和される可能性がある。
【0024】
9.上記「7」に記載のLMBは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。発電要素は、巻回電極体である。基材は、内周面および外周面を有する。巻回電極体において、内周面は内周側に配置されている。外周面は、内周面の反対面である。内周面および外周面の各々に、凸部が配置されている。内周面において、凸部は逆テーパ形状を有する。外周面において、凸部はテーパ形状を有する。
【0025】
上記「8」と逆の配置においても、内周面と外周面との間における、反応性の差が緩和される可能性がある。
【0026】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態は、本開示の技術的範囲を限定しない。本実施形態は、全ての点で例示である。本実施形態は非制限的である。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態におけるLMBの一例を示す概念図である。
【
図2】本実施形態における負極の一例を示す概略断面図である。
【
図3】凸部の平面パターンの第1例を示す概略平面図である。
【
図4】凸部の平面パターンの第2例を示す概略平面図である。
【
図6】巻回電極体における凸部の配置の第1例を示す概略断面図である。
【
図7】巻回電極体における凸部の配置の第2例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.用語の説明
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形は、オープンエンドの用語である。オープンエンドの用語は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズドの用語である。ただしクローズドの用語で表現される構成であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は含み得る。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズドの用語である。セミクローズドの用語においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0029】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0030】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「凸部」は、「1個の凸部」のみならず、「複数の凸部」も含む。「凹部」も同様である。
【0031】
幾何学的な用語は、厳密な意味に解されるべきではない。幾何学的な用語としては、例えば、「平行」、「垂直」、「直交」等が例示される。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。読者の理解を助けるために、各図中の寸法関係が変更されている場合がある。例えば、長さ、幅、厚さ等が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0032】
「mからn%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「mからn%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。「以上」および「以下」は、等号付き不等号「≦」によって表される。「超」および「未満」は、等号を含まない不等号「<」によって表される。数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0033】
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、特に断りのない限り、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0034】
特に断りのない限り、測定装置等の具体例は、一例に過ぎない。具体例と同等品が使用されてもよい。
【0035】
化学量論的組成式は、化合物の代表例を示す。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、「Al2O3」は、「Al/O=2/3」の物質量比(モル比)を有する化合物に限定されない。「Al2O3」は、特に断りのない限り、AlおよびOを任意の組成比で含む化合物を示す。例えば、該化合物に微量元素がドープされていてもよい。AlおよびOの一部が別の元素で置換されていてもよい。
【0036】
「誘導体」は、母体となる化合物の一部において、置換基の導入、原子の置換、酸化、還元、および、その他の化学反応からなる群より選択される少なくとも1種により、改変がなされた化合物を示す。改変箇所は、1箇所でもよいし、複数箇所でもよい。「置換基」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、OH基、SH基、CN基、SCN基、OCN基、ニトロ基、アルコキシ基、不飽和アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、および、シリル基等からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの置換基はさらに置換されてもよい。置換基が2つ以上ある場合、置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。なお、高分子化合物(樹脂材料)の誘導体は、「変性体」とも称され得る。
【0037】
「共重合体」は、無指定型、統計型、ランダム型、交互型、周期型、ブロック型、および、グラフト型からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0038】
「平面視」は、対象物(例えば負極)の厚さ方向と平行な視線で、対象物を視ることを示す。平面視は平面図に対応する。「断面視」は、対象物の厚さ方向と直交する視線で、対象物を視ることを示す。断面視は断面図に対応する。
【0039】
「凸部の高さ」および「凹部の深さ」は、負極の断面画像において測定される。断面は、厚さ方向と平行である。断面画像は、例えば、光学顕微鏡画像であってもよい。断面画像は、例えば、SEM(Scanning Electron Microscope)画像であってもよい。断面画像において、基材の表面が基準線とされる。高さは、凸部の最高部と、基準線との距離である。深さは、凹部の最低部と、基準線との距離である。凸部が複数である場合、算術平均が採用される。10個以上の凸部がある場合、ランダムに抽出された10個の凸部の算術平均が、凸部の高さとみなされる。凹部の深さについても同様である。なお、基材が多孔質である場合、開気孔が凹部とみなされる。開気孔において、開口部から細孔の内壁までの垂直距離が、凹部の深さとみなされる。
【0040】
2.リチウム金属二次電池
リチウム金属二次電池(LMB)においては、負極反応がLiの溶解反応および析出反応を含む。なお、一般的なリチウムイオン二次電池においては、Liの析出反応が意図せぬ反応である。LMBは、任意の形態を有し得る。LMBは、例えば、円筒形、角形、または、ラミネート形のいずれでもよい。ラミネート形は、外装体が金属箔ラミネートフィルムを含む。本実施形態においては、一例として、円筒形のLMBが説明される。
【0041】
図1は、本実施形態におけるLMBの一例を示す概念図である。LMB100は、発電要素50および電解質(不図示)を含む。LMB100は、外装体90をさらに含んでいてもよい。外装体90が発電要素50および電解質を収納していてもよい。外装体90は、例えば、円筒形の金属ケースであってもよい。
【0042】
3.発電要素
発電要素50は、任意の形態を有し得る。発電要素50は、例えば、巻回電極体または積層電極体のいずれを含んでいてもよい。巻回電極体は、帯状電極が渦巻き状に巻回されることにより形成され得る。巻回電極体は、例えば、円柱状の外形を有し得る。巻回電極体は、扁平状に成形されていてもよい。積層電極体は、電極が厚さ方向に積み上げられることにより形成され得る。積層電極体は、例えば、板状の外形を有し得る。
【0043】
発電要素50は、正極10および負極20を含む。発電要素50は、セパレータ30をさらに含んでいてもよい。セパレータ30は、正極10と負極20との間に配置され得る。正極10、負極20およびセパレータ30は、いずれもシート状であってもよい。
【0044】
4.負極
図2は、本実施形態における負極の一例を示す概略断面図である。負極20は、基材21および凸部22を含む。
【0045】
4-1.基材
基材21は、例えば、シート状であってもよい。基材21は、例えば、帯状であってもよい。基材21は、例えば、5から500μmの厚さを有していてもよい。基材21は導電性である。基材21は、負極集電体として機能し得る。基材21は、例えば、金属箔等を含んでいてもよい。基材21は、例えば、Cu、Ni、Fe、Zn、Pb、Ag、および、Auからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。基材21は、例えば、Cu箔、Cu合金箔等を含んでいてもよい。基材21は、例えば、多孔質であってもよい。基材21は、全体が多孔質であってもよいし、部分的に多孔質であってもよい。例えば、基材21の表面が多孔質であってもよい。基材21は、例えば、三次元網目構造を有していてもよい。基材21は、例えば、金属多孔体、金属不織布、粉末積層箔等を含んでいてもよい。粉末積層箔は、金属箔および金属粉末が焼結されることにより形成され得る。粉末積層箔は、箔部および粉末部を含む。粉末部は、箔部の表面に積層されている。粉末部は焼結体である。粉末部は多孔質である。
【0046】
4-1-1.凹部
基材21の表面に、凹部1が形成されている。凹部1は、基材21の全面に形成されていてもよい。凹部1は、基材21の一部に形成されていてもよい。凹部1の個数密度は、凸部22の個数密度に比して高くてもよい。「個数密度」は、単位面積あたりの個数を示す。例えば、基材21が金属箔である場合、例えば、ショットピーニング、粗化めっき、レーザ加工、エッチング等により、凹部1が形成されてもよい。例えば、レーザ加工においては、ポーラス箔(例えば、粉末積層箔等)が使用されてもよい。例えば、金属箔の表面に、導電性粒子が塗布されてもよい。粒子間の隙間が凹部1を形成し得る。導電性粒子は、例えば、炭素粒子、金属粒子等を含んでいてもよい。金属粒子は、例えば、後述のシード材料を含んでいてもよい。例えば、金属箔に、金属多孔体が積層されることにより、凹部1が形成されてもよい。
【0047】
断面視において、凹部1は、深さ(d)を有する。平面視において、凹部1は、例えば、点状に分布していてもよい。すなわち、凹部1は、ピットを形成していてもよい。平面視において、凹部1は、例えば、線状に延びていてもよい。すなわち、凹部1は、トレンチを形成していてもよい。凹部1は、例えば、基材21の表面の算術平均高さ(Sa)により評価され得る。基材21のSaは、例えば、0.1μm以上、1μm以上、または、5μm以上のいずれでもよい。基材21のSaは、例えば、20μm以下、10μm以下、5μm以下、または、1μm以下のいずれでもよい。Saは、表面粗さ計により測定され得る。
【0048】
凹部1の深さ(d)は、例えば、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、または、0.9μm以上のいずれでもよい。凹部1の深さ(d)は、例えば、1.0μm以下、0.9μm以下、0.7μm以下、0.5μm以下、または、0.3μm以下のいずれでもよい。
【0049】
4-1-2.充填材
凹部1は、任意の断面形状を有し得る。凹部1の断面形状は、例えば、矩形状、V字状、U字状等であってもよい。基材21が多孔質である場合、凹部1は、より複雑な断面形状を有し得る。凹部1の内部に充填材2が配置されていてもよい。充填材2は、例えば、凹部1の内壁を被覆していてもよい。充填材2は、凹部1の少なくとも一部を埋めていてもよい。凹部1の充填率は、例えば、1%以上、10%以上、30%以上、または、50%以上のいずれでもよい。凹部1の充填率は、例えば、100%以下、90%以下、または、70%以下のいずれでもよい。「充填率」は、凹部1の断面画像において、凹部1の面積に対する、充填材2の面積の百分率を示す。
【0050】
充填材2は、任意の成分を含み得る。充填材2は、例えば、シード材料、固体電解質、およびゲル電解質からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。シード材料は、例えば、Li、Mg、Al、Zn、Ag、Pt、および、Auからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。シード材料は、例えば、膜状であってもよい。シード材料は、例えば、凹部1の内壁を被覆していてもよい。シード材料は、例えば、粒子状であってもよい。シード材料は、例えば、金属ナノ粒子を含んでいてもよい。シード材料は、例えば、1nmから20nmのD50を有していてもよい。
【0051】
固体電解質は、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、水素化物固体電解質、および、窒化物固体電解質からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2O-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12、Li4P2S6、Li7P3S11、Li3PS4、Li7PS6、および、Li6PS5X(X=Cl、Br、I)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiI、LiBrおよびLi3PS4が任意のモル比で混合されることにより合成された材料を示す。例えば、メカノケミカル法により固体電解質が合成されてもよい。「Li2S-P2S5」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SおよびP2S5が「Li2S/P2S5=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
【0052】
ハロゲン化物固体電解質は、例えば、下記式により表されてもよい。
Li6-naMaX6
上記式中、nは、Mの酸化数を示す。Mは、例えば、+3の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。Mは、例えば、+4の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。Mは、例えば、Y、Al、Ti、Zr、Ca、および、Mgからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。aは、0<a<2の関係を満たしていてもよい。Xは、例えば、F、Cl、Br、および、Iからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0053】
ハロゲン化物固体電解質は、例えば、下記式により表されてもよい。
Li3-aTiaAl1-aF6
上記式中、aは、例えば、0≦a≦0.1、0.1≦a≦0.2、0.2≦a≦0.3、0.3≦a≦0.4、0.4≦a≦0.5、0.5≦a≦0.6、0.6≦a≦0.7、0.7≦a≦0.8、0.8≦a≦0.9、または、0.9≦a≦1の関係を満たしていてもよい。
【0054】
ハロゲン化物固体電解質は、例えば、下記式により表されてもよい。
Li3YClaBrbI6-a-b
上記式中、0≦a+b≦6の関係が満たされる。aは、例えば、0≦a≦1、1≦a≦2、2≦a≦3、3≦a≦4、4≦a≦5、または、5≦a≦6の関係を満たしていてもよい。bは、例えば、0≦b≦1、1≦b≦2、2≦b≦3、3≦b≦4、4≦b≦5、または、5≦b≦6の関係を満たしていてもよい。
【0055】
酸化物固体電解質は、例えば、LiNbO3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、La2/3-xLi3xTiO3、および、Li7La3Zr2O12からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。水素化物固体電解質は、例えば、LiBH4等を含んでいてもよい。窒化物固体電解質は、例えば、Li3N、Li3BN2等を含んでいてもよい。
【0056】
ゲル電解質は、液体電解質および高分子材料を含んでいてもよい。高分子材料は、高分子マトリックスを形成していてもよい。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0057】
4-2.凸部
凸部22は、基材21の表面に配置されている。凹部1の上に凸部22が配置されていてもよい。凸部22は、基材21の片面のみに配置されていてもよい。凸部22は、基材21の両面に配置されていてもよい。凸部22は、基材21の表面に、間隔をあけて配置されている。凸部22は、基材21の表面から外側に突出している。凸部22の高さ(h)に対する、凹部1の深さ(d)の比(d/h)は、0.001以上10以下である。比(d/h)は、例えば、0.005以上、0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.5以上、1以上、または、5以上のいずれでもよい。比(d/h)は、例えば、5以下、1以下、0.5以下、0.1以下、0.05以下、0.01以下、または、0.005以下のいずれでもよい。
【0058】
凸部22の高さ(h)は、例えば、凹部1の深さ(d)に比して、大きくてもよい。凸部22の高さ(h)は、例えば、凹部1の深さ(d)に比して、小さくてもよい。凸部22の高さ(h)は、例えば、0.1μm以上、1μm以上、10μm以上、30μm以上、50μm以上、70μm以上、または、90μm以上のいずれでもよい。凸部22の高さ(h)は、例えば、100μm以下、90μm以下、70μm以下、50μm以下、30μm以下、10μm以下、または、1μm以下のいずれでもよい。
【0059】
凸部22は、絶縁性である。凸部22の体積抵抗率は、例えば、1×105Ω・cm以上、1×1010Ω・cm以上、または、1×1015Ω・cm以上のいずれでもよい。
【0060】
凸部22は、例えば、セラミックス材料、ガラス材料、樹脂材料等を含んでいてもよい。凸部22は、例えば、SiO2、GeO2、B2O3、P2O5、As2O5、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、BaO、Al2O3、TiO2、ZrO2、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PVdF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、および、ポリアミドイミド(PAI)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0061】
凸部22は、任意の方法により形成され得る。例えば、ロールトゥロール法による転写により、凸部22が形成されてもよい。例えば、スクリーン印刷により、凸部22が形成されてもよい。さらに、例えば、フォトリソグラフィ、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、EPD(Electrophoretic Deposition)、選択ドライエッチング、レーザ加工、積層造形等により、凸部22が形成されてもよい。
【0062】
図3は、凸部の平面パターンの第1例を示す概略平面図である。凸部22は、例えば、壁状であってもよい。平面視において、凸部22は、例えば、線状に延びていてもよい。凸部22は、例えば直線状に延びていてもよい。凸部22は、例えば曲線状に延びていてもよい。凸部22同士間に、Liの格納スペースが形成され得る。凸部22の平面パターンは、例えば、平行線の集合であってもよい。凸部22の平面パターンは、例えば、格子状であってもよい。凸部22が壁状である時、凸部22の厚さは、例えば、1から1000μm、10から500μm、50から500μm、または、100から500μmのいずれでもよい。隣接する凸部22同士の間隔は、例えば、1から1000μm、5から500μm、10から300μm、または、50から500μmのいずれでもよい。
【0063】
図4は、凸部の平面パターンの第2例を示す概略平面図である。凸部22は、例えば、柱状であってもよい。平面視において、凸部22は、例えば、点状に分布していてもよい。各凸部22の周囲に、Liの格納スペースが形成され得る。平面視において、格納スペースは網状であり得る。例えば、平面視において、析出したLiがネットワーク構造を有することにより、負極反応の可逆性が向上する可能性もある。凸部22の配置は、任意である。凸部22の配置は、ランダムであってもよい。凸部22の配置は、規則的であってもよい。凸部22の配置は、例えば、三角格子状、二等辺三角格子状、正三角格子状、矩形格子状、正方格子状等であってもよい。凸部22が柱状である時、凸部22の直径は、例えば、1から1000μm、10から500μm、50から500μm、または、100から500μmのいずれでもよい。凸部22は、例えば、円柱状、角状等であってもよい。凸部22が円柱でない場合、凸部22の直径は、最大径を示す。隣接する凸部22同士の間隔は、例えば、1から1000μm、5から500μm、10から300μm、または、50から500μmのいずれでもよい。凸部22の頂部は、平坦面または曲面のいずれでもよい。負極20は、壁状の凸部22、および、柱状の凸部22の両方を含んでいてもよい。
【0064】
4-2-1.テーパ形状
図5は、凸部の一例を示す概略断面図である。凸部22は、例えば、テーパ形状または逆テーパ形状を有していてもよい。「テーパ形状」は、凸部22が基材21から離れる程、凸部22が細くなる形状を示す。「逆テーパ形状」は、凸部22が基材21から離れる程、凸部22が太くなる形状を示す。基材21の両面において、凸部22がテーパ形状を有していてもよい。基材21の両面において、凸部22が逆テーパ形状を有していてもよい。
【0065】
凸部22の全体がテーパ形状を有していてもよい。凸部22の一部がテーパ形状を有していてもよい。テーパ形状または逆テーパ形状は、任意のテーパ比を有し得る。テーパ比は、例えば、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.5以上、または、1以上のいずれでもよい。テーパ比は、例えば、5以下、3以下、2以下、または、1以下のいずれでもよい。テーパ比は、下記式により求まる。
r=(a-b)/c
r:テーパ比
a:テーパ部分の最大径
b:テーパ部分の最小径
c:aとbとの距離
なお、凸部22の全体がテーパ形状を有する時、cは凸部22の高さ(h)に等しくなり得る。
【0066】
図6は、巻回電極体における凸部の配置の第1例を示す概略断面図である。
図6には、巻回電極体の巻回軸と垂直な断面が示されている。巻回電極体において、基材21は、内周面21aおよび外周面21bを有する。内周面21aは、内周側に配置されている。内周面21aは、巻回軸(中心)を向いている。外周面21bは、内周面21aの反対面である。内周面21aおよび外周面21bの各々に、凸部22が配置されている。例えば、内周面21aにおいて、凸部22がテーパ形状を有していてもよい。例えば、外周面21bにおいて、凸部22が逆テーパ形状を有していてもよい。内周面21aおよび外周面21bの少なくとも一方において、テーパ形状の傾斜は、巻回電極体の中心を通る直線と平行であってもよい。テーパ形状の傾斜と、直線とのなす角は、例えば、30度以下、15度以下、10度以下、5度以下、または、1度以下のいずれでもよい。
【0067】
図7は、巻回電極体における凸部の配置の第2例を示す概略断面図である。例えば、内周面21aにおいて、凸部22が逆テーパ形状を有していてもよい。例えば、外周面21bにおいて、凸部22がテーパ形状を有していてもよい。
【0068】
5.正極
正極10は、例えば、シート状であってもよい。正極10は、例えば、正極集電体および正極活物質層を含んでいてもよい。正極集電体は、導電性を有する。正極集電体は、正極活物質層を支持している。正極集電体は、例えばシート状であってもよい。正極集電体は、例えば5から50μmの厚さを有していてもよい。正極集電体は、例えば、金属箔を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、Al、Mn、Ti、Fe、および、Crからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、Al箔、Al合金箔、Ti箔、ステンレス鋼箔等を含んでいてもよい。
【0069】
正極集電体と正極活物質層との間に、中間層(不図示)が配置されていてもよい。中間層は、正極活物質を含まない。中間層は、例えば、0.1から5μmの厚さを有していてもよい。中間層は、例えば、導電材、絶縁材、バインダ等を含んでいてもよい。絶縁材は、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム等を含んでいてもよい。
【0070】
正極活物質層は、正極集電体の表面に配置されている。正極活物質層は、正極集電体の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層は、正極集電体の両面に配置されていてもよい。正極活物質層は、例えば、10から1000μm、50から500μm、または、100から300μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、例えば、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。
【0071】
5-1.導電材
導電材は、正極活物質層内に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば、0.1から10質量部であってもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、および、グラフェンフレーク(GF)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0072】
5-2.バインダ
バインダは、正極活物質層を正極集電体に固着させ得る。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば、0.1から10質量部であってもよい。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、PVdF、PVdF-HFP、PTFE、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0073】
5-3.その他の成分
正極活物質層は、例えば、無機フィラー、有機フィラー、固体電解質、表面改質剤、潤滑剤、難燃剤、保護剤、フラックス、カップリング剤、吸着剤等をさらに含んでいてもよい。正極活物質層は、例えば、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート、ゼオライト、シランカップリング剤、MoS2、WO3等を含んでいてもよい。
【0074】
5-4.正極活物質
正極活物質は、例えば、粒子状であってもよい。正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えば、遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物等を含んでいてもよい。ひとつの粒子(正極活物質)内において、組成は均一であってもよいし、不均一であってもよい。例えば、粒子の表面から中心に向かって、組成が傾斜していてもよい。組成は連続的に変化していてもよいし、不連続的(ステップ的)に変化していてもよい。
【0075】
5-4-1.遷移金属酸化物(空間群R-3m)
遷移金属酸化物は、任意の結晶構造を有し得る。遷移金属酸化物は、例えば、空間群R-3mに帰属する結晶構造等を含んでいてもよい。例えば、一般式「LiMO2」で表される化合物は、空間群R-3mに帰属する結晶構造を有し得る。遷移金属酸化物は、例えば、下記式により表されてもよい。
Li1-aNixM1-xO2
上記式中、-0.5≦a≦0.5、0<x≦1の関係がみたされる。
Mは、例えば、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0076】
上記式中、xは、例えば、0<x≦0.1、0.1≦x≦0.2、0.2≦x≦0.3、0.3≦x≦0.4、0.4≦x≦0.5、0.5≦x≦0.6、0.6≦x≦0.7、0.7≦x≦0.8、0.8≦x≦0.9、または、0.9≦x≦1の関係を満たしていてもよい。aは、例えば、-0.4≦a≦0.4、-0.3≦a≦0.3、-0.2≦a≦0.2、または、-0.1≦a≦0.1の関係を満たしていてもよい。
【0077】
遷移金属酸化物は、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNi0.9Co0.1O2、LiNi0.9Mn0.1O2、および、LiNiO2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0078】
5-4-1-1.NCM
遷移金属酸化物は、例えば、下記式により表されてもよい。下記式で表される化合物は、「NCM」とも称され得る。
Li1-aNixCoyMnzO2
上記式中、-0.5≦a≦0.5、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1の関係が満たされる。
【0079】
上記式中、xは、例えば、0<x≦0.1、0.1≦x≦0.2、0.2≦x≦0.3、0.3≦x≦0.4、0.4≦x≦0.5、0.5≦x≦0.6、0.6≦x≦0.7、0.7≦x≦0.8、0.8≦x≦0.9、または、0.9≦x<1の関係を満たしていてもよい。
【0080】
上記式中、yは、例えば、0<y≦0.1、0.1≦y≦0.2、0.2≦y≦0.3、0.3≦y≦0.4、0.4≦y≦0.5、0.5≦y≦0.6、0.6≦y≦0.7、0.7≦y≦0.8、0.8≦y≦0.9、または、0.9≦y<1の関係を満たしていてもよい。
【0081】
上記式中、zは、例えば、0<z≦0.1、0.1≦z≦0.2、0.2≦z≦0.3、0.3≦z≦0.4、0.4≦z≦0.5、0.5≦z≦0.6、0.6≦z≦0.7、0.7≦z≦0.8、0.8≦z≦0.9、または、0.9≦z<1の関係を満たしていてもよい。
【0082】
NCMは、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2、LiNi0.3Co0.4Mn0.3O2、LiNi0.3Co0.3Mn0.4O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、LiNi0.5Co0.4Mn0.1O2、LiNi0.5Co0.1Mn0.4O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.6Co0.3Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.1Mn0.3O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、および、LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0083】
5-4-1-2.NCA
遷移金属酸化物は、例えば下記式により表されてもよい。下記式により表される化合物は、「NCA」とも称され得る。
Li1-aNixCoyAlzO2
上記式中、-0.5≦a≦0.5、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1の関係が満たされる。
【0084】
上記式中、xは、例えば、0<x≦0.1、0.1≦x≦0.2、0.2≦x≦0.3、0.3≦x≦0.4、0.4≦x≦0.5、0.5≦x≦0.6、0.6≦x≦0.7、0.7≦x≦0.8、0.8≦x≦0.9、または、0.9≦x<1の関係を満たしていてもよい。
【0085】
上記式中、yは、例えば、0<y≦0.1、0.1≦y≦0.2、0.2≦y≦0.3、0.3≦y≦0.4、0.4≦y≦0.5、0.5≦y≦0.6、0.6≦y≦0.7、0.7≦y≦0.8、0.8≦y≦0.9、または、0.9≦y<1の関係を満たしていてもよい。
【0086】
上記式中、zは、例えば、0<z≦0.1、0.1≦z≦0.2、0.2≦z≦0.3、0.3≦z≦0.4、0.4≦z≦0.5、0.5≦z≦0.6、0.6≦z≦0.7、0.7≦z≦0.8、0.8≦z≦0.9、または、0.9≦z<1の関係を満たしていてもよい。
【0087】
NCAは、例えば、LiNi0.7Co0.1Al0.2O2、LiNi0.7Co0.2Al0.1O2、LiNi0.8Co0.1Al0.1O2、LiNi0.8Co0.17Al0.03O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、および、LiNi0.9Co0.05Al0.05O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0088】
5-4-1-3.多成分系
正極活物質は、例えば、2種以上のNCM等を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、NCM(0.6≦x)と、NCM(x<0.6)とを含んでいてもよい。「NCM(0.6≦x)」は、一般式「Li1-aNixCoyMnzO2」において、x(Ni比率)が0.6以上である化合物を示す。NCM(0.6≦x)は、例えば「ハイニッケル材料」とも称され得る。NCM(0.6≦x)は、例えば、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等を含む。「NCM(x<0.6)」は、一般式「Li1-aNixCoyMnzO2」において、x(Ni比率)が0.6未満である化合物を示す。NCM(x<0.6)は、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等を含む。NCM(0.6≦x)と、NCM(x<0.6)との混合比(質量比)は、例えば、「NCM(0.6≦x)/NCM(x<0.6)=9/1から1/9」、「NCM(0.6≦x)/NCM(x<0.6)=9/1から4/6」または「NCM(0.6≦x)/NCM(x<0.6)=9/1から3/7」のいずれでもよい。
【0089】
正極活物質は、例えば、NCAおよびNCMの両方を含んでいてもよい。NCAと、NCMとの混合比(質量比)は、例えば、「NCA/NCM=9/1から1/9」、「NCA/NCM=9/1から4/6」または「NCA/NCM=9/1から3/7」のいずれでもよい。NCAとNCMとの間で、Ni比率は同一であってもよいし、異なっていてもよい。NCAのNi比率は、NCMのNi比率より高くてもよい。NCAのNi比率は、NCMのNi比率より低くてもよい。
【0090】
5-4-2.遷移金属酸化物(空間群C2/m)
遷移金属酸化物は、例えば、空間群C2/mに帰属する結晶構造等を含んでいてもよい。遷移金属酸化物は、例えば、下記式により表されてもよい。
Li2MO3
上記式中、Mは、例えば、Ni、Co、Mn、および、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0091】
正極活物質は、例えば、LiMO2(空間群R-3m)とLi2MO3(空間群C2/m)との混合物を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、LiMO2とLi2MO3との固溶体(Li2MO3-LiMO2)等を含んでいてもよい。
【0092】
5-4-3.遷移金属酸化物:空間群Fd-3m
遷移金属酸化物は、例えば、空間群Fd-3mに帰属する結晶構造等を含んでいてもよい。遷移金属酸化物は、例えば、下記式により表されてもよい。
LiMn2-xMxO4
上記式中、0≦x≦2の関係がみたされる。Mは、例えば、Ni、Fe、および、Znからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0093】
LiM2O4(空間群Fd-3m)は、例えば、LiMn2O4、および、LiMn1.5Ni0.5O4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、LiMO2(空間群R-3m)と、LiM2O4(空間群Fd-3m)との混合物を含んでいてもよい。LiMO2(空間群R-3m)と、LiM2O4(空間群Fd-3m)との混合比(質量比)は、例えば、「LiMO2/LiM2O4=9/1から9/1」、「LiMO2/LiM2O4=9/1から5/5」または「LiMO2/LiM2O4=9/1から7/3」のいずれでもよい。
【0094】
5-4-4.ポリアニオン化合物
ポリアニオン化合物は、例えば、リン酸塩(例えば、LiFePO4等)、ケイ酸塩、ホウ酸塩等を含んでいてもよい。ポリアニオン化合物は、例えば、下記式のいずれかにより表されてもよい。
LiMPO4、Li2-xMPO4F、Li2MSiO4、または、LiMBO3
上記式中、Mは、例えば、Fe、MnおよびCoからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。上記式中、例えば、0≦x≦2の関係が満たされていてもよい。
【0095】
正極活物質は、例えば、LiMO2(空間群R-3m)と、ポリアニオン化合物との混合物を含んでいてもよい。LiMO2(空間群R-3m)と、ポリアニオン化合物との混合比(質量比)は、例えば、「LiMO2/ポリアニオン化合物=9/1から9/1」、「LiMO2/ポリアニオン化合物=9/1から5/5」または「LiMO2/ポリアニオン化合物=9/1から7/3」のいずれでもよい。
【0096】
5-4-5.ドーパント
正極活物質にドーパントが添加されていてもよい。ドーパントは、粒子全体に拡散していてもよいし、局所的に分布していてもよい。例えば、粒子表面にドーパントが偏在していてもよい。ドーパントは、置換型固溶原子であってもよいし、侵入型固溶原子であってもよい。ドーパントの添加量(正極活物質全体に対するモル分率)は、例えば、0.01から5%、0.1から3%、または、0.1から1%であってもよい。1種のドーパントが添加されていてもよいし、2種以上のドーパントが添加されていてもよい。2種以上のドーパントが複合体を形成していてもよい。
【0097】
ドーパントは、例えば、B、C、N、ハロゲン、Si、Na、Mg、Al、Mn、Co、Cr、Sc、Ti、V、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Bi、Sb、Sn、W、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、および、アクチノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0098】
例えば、NCAに、「Zr、Mg、W、Sm」の組、「Ti、Mn、Nb、Si、Mo」の組、または、「Er、Mg」の組が添加されていてもよい。
【0099】
例えば、NCMに、Tiが添加されていてもよい。例えば、NCMに、「Zr、W」の組、「Si、W」の組、または、「Zr、W、Al、Ti、Co」の組が添加されていてもよい。
【0100】
5-4-6.表面被覆
正極10は、複合粒子を含んでいてもよい。複合粒子は、コア粒子および被覆層を含む。コア粒子は、正極活物質を含む。被覆層は、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。被覆層は、例えば、1から3000nm、5から2000nm、10から1000nm、10から100nm、または、10から50nmの厚さを有していてもよい。被覆層の厚さは、例えば、粒子断面のSEM画像等において測定され得る。すなわち、複合粒子が樹脂材料に包埋されることにより、試料が準備される。イオンミリング装置により、試料に断面出し加工が施される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のイオンミリング装置「製品名ArBlade(登録商標)5000」が使用されてもよい。試料の断面がSEMにより観察される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のSEM装置「製品名SU8030」が使用されてもよい。10個の複合粒子について、それぞれ20個の視野で、被覆層の厚さが測定される。合計で200箇所の厚さの算術平均が採用される。
【0101】
コア粒子の表面のうち、被覆層により被覆されている部分の割合は、「被覆率」とも称される。被覆率は、例えば、1%以上、10%以上、30%以上、50%以上、または、70%以上であってもよい。被覆率は、例えば、100%以下、90%以下、または、80%以下であってもよい。
【0102】
被覆率は、例えば、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により測定され得る。例えば、アルバック・ファイ社製のXPS装置「製品名PHI X-tool」が使用されてもよい。複合粒子からなる試料粉末がXPSにセットされる。ナロースキャン分析が実施される。測定データが解析ソフトフェアにより処理される。例えば、アルバック・ファイ社製の解析ソフトフェア「製品名MulTiPak」が使用されてもよい。測定データが解析されることにより、複数種の元素が検出される。各ピークの面積から、各検出元素の比率が求まる。下記式により、被覆率が求まる。
θ={I1/(I0+I1)}×100
θ:被覆率[%]
I0:コア粒子に由来する元素の比率
I1:被覆層に由来する元素の比率
例えば、コア粒子がNCMを含む場合、I0は「Ni、Co、Mn」の合計元素比率を示す。例えば、コア粒子がNCAを含む場合、I0は「Ni、Co、Al」の合計元素比率を示す。例えば、被覆層がP、Bを含む場合、I1は「P、B」の合計元素比率を示す。
【0103】
被覆層は、任意の成分を含み得る。被覆層は、例えば、単体、有機物、無機酸塩、有機酸塩、水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、ハロゲン化物等を含んでいてもよい。被覆層は、例えば、B、Al、W、Zr、Ti、Co、F、リチウム化合物(例えばLi2CO3、LiHCO3、LiOH、Li2O等)、酸化タングステン(例えばWO3等)、酸化チタン(例えばTiO2等)、酸化ジルコニウム(例えばZrO2)、酸化ホウ素、リン酸ホウ素(例えばBPO4等)、酸化アルミニウム(例えばAl2O3等)、ベーマイト、水酸化アルミニウム、リン酸塩〔例えばLi3PO4、(NH4)3PO4、AlPO4〕、ホウ酸塩(例えば、Li2B4O7、LiBO3等)、ポリアクリル酸塩(Li塩、Na塩、NH4塩等)、酢酸塩(例えば、Li塩等)、CMC(Na塩、Li塩、NH4塩等)、LiNbO3、Li2TiO3、および、Li含有ハロゲン化物(例えば、LiAlCl4、LiTiAlF6、LiYBr6、LiYCl6等)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0104】
5-4-7.中空粒子/中実粒子
中空粒子は、二次粒子である。中空粒子の断面画像においては、中心部の空洞の面積の割合が、粒子全体の面積の30%以上である。中空粒子における空洞の割合は、例えば、40%以上、50%以上、または、60%以上のいずれでもよい。中実粒子は、二次粒子である。中実粒子の断面画像においては、中心部の空洞の面積の割合が、粒子全体の面積の30%未満である。中実粒子における空洞の割合は、例えば、20%以下、10%以下、または、5%以下のいずれでもよい。正極活物質は、中空粒子であってもよいし、中実粒子であってもよい。中空粒子と中実粒子との混合物が使用されてもよい。中空粒子と中実粒子との混合比(質量比)は、例えば、「中空粒子/中実粒子=1/9から9/1」、「中空粒子/中実粒子=2/8から8/2」、「中空粒子/中実粒子=3/7から7/3」または「中空粒子/中実粒子=4/6から6/4」のいずれでもよい。
【0105】
5-4-8.大粒子/小粒子
正極活物質は、例えば、単峰性の粒度分布(個数基準)を有していてもよい。正極活物質は、例えば、多峰性の粒度分布を有していてもよい。正極活物質は、例えば、二峰性の粒度分布を有していてもよい。すなわち、正極活物質は、大粒子および小粒子を含んでいてもよい。粒度分布が二峰性である時、粒子径が大きい方のピークトップに対応する粒子径が、大粒子の粒子径(dL)とみなされる。粒子径が小さい方のピークトップに対応する粒子径が、小粒子の粒子径(dS)とみなされる。粒径比(dL/dS)は、例えば、2から10、2から5、または、2から4のいずれでもよい。dLは、例えば、8から20μm、または、8から15μmであってもよい。dSは、例えば、1から10μm、または、1から5μmのいずれでもよい。
【0106】
例えば、波形分析ソフトウエアにより、粒度分布にピーク分離処理が施されてもよい。大粒子由来のピーク面積(SL)と、小粒子由来のピーク面積(SS)との比は、例えば「SL/SS=1/9から9/1」、「SL/SS=5/5から9/1」または「SL/SS=7/3から9/1」のいずれでもよい。
【0107】
個数基準の粒度分布は、顕微鏡法により測定される。正極活物質層から、複数の断面試料が採取される。断面試料は、例えば正極活物質層の表面に垂直な断面を含んでいてもよい。例えば、イオンミリング等により観察対象面に清浄化処理が施される。SEMにより、断面試料が観察される。観察視野内に10から100個の粒子が収まるように、観察倍率が調整される。画像内の全粒子のフェレ径が測定される。「フェレ径」は、粒子の輪郭線上において最も離れた2点間の距離を示す。複数の断面試料が観察されることにより、合計で1000個以上のフェレ径が取得される。1000個以上のフェレ径から、個数基準の粒度分布が作成される。
【0108】
二峰性の粒度分布は、2種の粒子が混合されることにより形成され得る。2種の粒子は、互いに異なる粒度分布を有する。例えば、2種の粒子は、互いに異なるD50を有していてもよい。「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい側からの頻度の累積が50%に到達する粒子径を示す。D50は、レーザ回折法により測定され得る。測定試料は、粉末である。例えば、大粒子は、8から20μm、または、8から15μmのD50を有していてもよい。例えば、小粒子は、1から10μm、または、1から5μmのD50を有していてもよい。小粒子のD50に対する、大粒子のD50の比は、例えば、2から10、2から5、または、2から4のいずれでもよい。大粒子と小粒子との混合比(質量比)は、例えば「大粒子/小粒子=1/9から9/1」、「大粒子/小粒子=5/5から9/1」または「大粒子/小粒子=7/3から9/1」のいずれでもよい。
【0109】
なお、大粒子と小粒子とは、同一組成を有していてもよいし、互いに異なる組成を有していてもよい。例えば、大粒子がNCAであり、かつ小粒子がNCMであってもよい。例えば、大粒子がNCM(0.6≦x)であり、かつ小粒子がNCM(x<0.6)であってもよい。
【0110】
6.電解質
電解質は、Liを溶解している。電解質は、液体電解質またはゲル電解質のいずれでもよい。液体電解質は、例えば、電解液を含んでいてもよい。電解液は、溶媒および溶質を含む。
【0111】
6-1.溶質
溶質の濃度は、例えば、0.5から1mоl/L、1から1.5mоl/L、1.5から2mоl/L、2から2.5mоl/L、または、2.5から3mоl/Lのいずれでもよい。溶質は、支持塩(Li塩)を含む。溶質は、例えば、無機酸塩、イミド塩、オキサラト錯体、ハロゲン化物等を含んでいてもよい。溶質は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、LiN(SO2F)2「LiFSI」、LiN(SO2CF3)2「LiTFSI」、LiB(C2O4)2「LiBOB」、LiBF2(C2O4)「LiDFOB」、LiPF2(C2O4)2「LiDFOP」、LiPO2F2、FSO3Li、LiI、LiBr、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0112】
6-2.溶媒
6-2-1.エーテル系溶媒
電解液は、エーテル系溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等を含んでいてもよい。HFEは、例えば、ジフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、および、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0113】
HFEは、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ジフルオロメチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0114】
溶媒は、HFE以外のエーテル(以下「第2エーテル」とも記される。)も含んでいてもよい。第2エーテルは、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン(DOX)、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エチルグリム、トリグリム、テトラグリム、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、体積分率で、1から50%の第2エーテル(DME等)と、残部のHFEとを含んでいてもよい。溶媒は、例えば、体積分率で、10から40%の第2エーテルと、残部のHFEとを含んでいてもよい。
【0115】
6-2-2.カーボネート系溶媒
電解液は、例えば、カーボネート系溶媒(炭酸エステル系溶媒)を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート、フッ素化カーボネート等を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、パーフルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、ジフルオロプロピレンカーボネート、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0116】
溶媒は、環状カーボネート(EC、PC、FEC等)と、鎖状カーボネート(EMC、DMC、DEC等)とを含んでいてもよい。環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比(体積比)は、例えば、「環状カーボネート/鎖状カーボネート=1/9から4/6」、「環状カーボネート/鎖状カーボネート=2/8から3/7」または「環状カーボネート/鎖状カーボネート=3/7から4/6」のいずれでもよい。
【0117】
溶媒は、環状カーボネート(EC、PC等)と、フッ素化環状カーボネート(FEC等)とを含んでいてもよい。環状カーボネートと、フッ素化環状カーボネートとの混合比(体積比)は、例えば、「環状カーボネート/フッ素化環状カーボネート=99/1から90/10」、「環状カーボネート/フッ素化環状カーボネート=9/1から1/9」、「環状カーボネート/フッ素化環状カーボネート=9/1から7/3」、または「環状カーボネート/フッ素化環状カーボネート=3/7から1/9」のいずれでもよい。
【0118】
溶媒は、例えば、EC、FEC、EMC、DMC、および、DECを含んでいてもよい。各成分の体積比は、例えば下記式の関係を満たしていてもよい。
VEC+VFEC+VEMC+VDMC+VDEC=10
上記式中、VEC、VFEC、VEMC、VDMC、VDECは、それぞれ、EC、FEC、EMC、DMC、DECの体積比を示す。
1≦VEC≦4、0≦VFEC≦3、VEC+VFEC≦4、
0≦VEMC≦9、0≦VDMC≦9、0≦VDEC≦9、6≦VEMC+VDMC+VDEC≦9
の関係が満たされる。
【0119】
上記式中、
例えば、1≦VEC≦2、または、2≦VEC≦3の関係が満たされていてもよい。
例えば、1≦VFEC≦2、または、2≦VFEC≦4の関係が満たされていてもよい。
例えば、3≦VEMC≦4、または、6≦VEMC≦8の関係が満たされていてもよい。
例えば、3≦VDMC≦4、または、6≦VDMC≦8の関係が満たされていてもよい。
例えば、3≦VDEC≦4、または、6≦VDEC≦8の関係が満たされていてもよい。
【0120】
溶媒は、例えば、体積比で「EC/EMC=3/7」、「EC/DMC=3/7」、「EC/FEC/DEC=1/2/7」、「EC/DMC/EMC=3/4/3」、「EC/DMC/EMC=3/3/4」、「EC/FEC/DMC/EMC=2/1/4/3」、「EC/FEC/DMC/EMC=1/2/4/3」、「EC/FEC/DMC/EMC=2/1/3/4」、「EC/FEC/DMC/EMC=1/2/3/4」等の組成を有していてもよい。
【0121】
6-3.添加剤
電解液は、任意の添加剤を含んでいてもよい。添加量(電解液全体に対する質量分率)は、例えば、0.01から5%、0.05から3%、または、0.1から1%のいずれでもよい。添加剤は、例えば、ガス発生剤、過充電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、電極保護剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0122】
添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、1,3-プロパンサルトン(PS)、tert-アミルベンゼン、1,4-ジ-tert-ブチルベンゼン、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、エチレンスルフィット(ES)、プロパンスルトン(PS)、エチレンスルファート(DTD)、γ-ブチロラクトン、ホスファゼン化合物、カルボン酸エステル〔例えば、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、ジエチルマロネート(DEM)等〕、フルオロベンゼン〔例えば、モノフルオロベンゼン(FB)、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、1,2,3,4-テトラフルオロベンゼン、1,2,3,5-テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5-テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン等)、フルオロトルエン(例えば、2-フルオロトルエン、3-フルオロトルエン、4-フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,6-ジフルオロトルエン、3,4-ジフルオロトルエン、オクタフルオロトルエン等)、ベンゾトリフルオリド(例えば、ベンゾトリフルオリド、2-フルオロベンゾトリフルオリド、3-フルオロベンゾトリフルオリド、4-フルオロベンゾトリフルオリド、2-メチルベンゾトリフルオリド、3-メチルベンゾトリフルオリド、4-メチルベンゾトリフルオリド等)、フルオロキシレン(例えば、3-フルオロ-o-キシレン、4-フルオロ-o-キシレン、2-フルオロ-m-キシレン、5-フルオロ-m-キシレン等)、含硫黄複素環式化合物(例えば、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、テトラチアフルバン等)、ニトリル化合物(例えば、アジポニトリル、スクシノニトリル等)、リン酸エステル(例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等)、カルボン酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等)、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0123】
溶質および溶媒として前述された成分が、微量成分(添加剤)として使用されてもよい。添加剤は、例えば、LiBF4、LiFSI、LiTFSI、LiBOB、LiDFOB、LiDFOP、LiPO2F2、FSO3Li、LiI、LiBr、HFE、DOX、PC、FEC、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0124】
6-4.イオン液体
液体電解質は、イオン液体を含んでいてもよい。液体電解質は、例えば、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、モルホリニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0125】
6-5.ゲル電解質
ゲル電解質は、液体電解質および高分子材料を含んでいてもよい。高分子材料は、高分子マトリックスを形成していてもよい。高分子材料は、例えば、PVdF、PVdF-HFP、PAN、PVdF-PAN、PEO、PEG、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0126】
7.セパレータ
セパレータ30は、正極10を負極20から分離し得る。セパレータ30は、電気絶縁性である。セパレータ30は、例えば、樹脂膜、無機粒子層、および、有機粒子層からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、樹脂膜および無機粒子層を含んでいてもよい。
【0127】
7-1.樹脂膜
樹脂膜は、多孔質である。樹脂膜は、例えば、微多孔膜、不織布等を含んでいてもよい。樹脂膜は、樹脂骨格を含む。樹脂骨格は、例えば網状に連続していてもよい。樹脂骨格の隙間に細孔が形成されている。樹脂膜は、電解質を透過させ得る。樹脂膜は、例えば、1μm以下の平均細孔径を有していてもよい。樹脂膜は、例えば、0.01から1μm、または、0.1から0.5μmの平均細孔径を有していてもよい。「平均細孔径」は、水銀圧入法により測定され得る。樹脂膜は、例えば、50から250s/100cm3のガーレ値を有していてもよい。「ガーレ値」は、ガーレ試験法により測定され得る。
【0128】
樹脂膜は、例えば、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、および、ポリエステル系樹脂等からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。樹脂膜は、例えば、PE、PP、PA、PAI、PI、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。樹脂膜は、例えば、延伸法、相分離法等により形成され得る。樹脂膜の厚さは、例えば、5から50μm、または、10から25μmであってもよい。
【0129】
樹脂膜は、例えば、単層構造を有していてもよい。樹脂膜は、例えば、PE層からなっていてもよい。PE層の骨格は、PEにより形成されている。PE層は、シャットダウン機能を有し得る。樹脂膜は、例えば、多層構造を有していてもよい。樹脂膜は、例えば、PP層およびPE層を含んでいてもよい。PP層の骨格は、PPにより形成されている。樹脂膜は、例えば3層構造を有していてもよい。樹脂膜は、例えば、PP層、PE層およびPP層がこの順に積層されることにより形成されていてもよい。PE層の厚さは、例えば、5から20μmであってもよい。PP層の厚さは、例えば、3から10μmであってもよい。
【0130】
7-2.無機粒子層
無機粒子層は、樹脂膜の表面に形成されていてもよい。無機粒子層は、樹脂膜の片面のみに形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。無機粒子層は、正極10に対向する面に形成されてもよいし、負極20に対向する面に形成されてもよい。なお、無機粒子層は、正極10の表面に形成されていてもよい。
【0131】
無機粒子層は、多孔質である。無機粒子層は、無機粒子を含む。無機粒子は、「無機フィラー」とも称され得る。無機粒子同士の隙間に細孔が形成されている。無機粒子層は、例えば、0.5から10μm、または、1から5μmの厚さを有していてもよい。無機粒子は、例えば、耐熱材料を含んでいてもよい。耐熱材料を含む無機粒子層は、「HRL(Heat Resistance Layer)」とも称される。無機粒子は、ベーマイト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアおよびシリカ等からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。無機粒子は、任意の形状を有し得る。無機粒子は、例えば、球状、棒状、板状、繊維状等であってもよい。無機粒子は、例えば、0.1から10μm、または、0.5から3μmのD50を有していてもよい。無機粒子層は、バインダをさらに含んでいてもよい。バインダは、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、および、液晶ポリエステル系樹脂等からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0132】
7-3.有機粒子層
セパレータ30は、例えば、有機粒子層を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、樹脂膜に代えて、有機粒子層を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、無機粒子層に代えて、有機粒子層を含んでいてもよい。セパレータ30は、樹脂膜および有機粒子層の両方を含んでいてもよい。セパレータ30は、無機粒子層および有機粒子層の両方を含んでいてもよい。セパレータ30は、樹脂膜、無機粒子層および有機粒子層の全部を含んでいてもよい。
【0133】
有機粒子層は、例えば、0.1から50μm、0.5から20μm、0.5から10μm、または、1から5μmの厚さを有していてもよい。有機粒子層は、有機粒子を含む。有機粒子は、「有機フィラー」とも称され得る。有機粒子は、耐熱材料を含んでいてよい。有機粒子は、例えば、PE、PP、PTFE、PI、PAI、PA、および、アラミド等からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。有機粒子は、例えば、球状、棒状、板状、繊維状等であってもよい。有機粒子は、例えば、0.1から10μm、または、0.5から3μmのD50を有していてもよい。
【0134】
セパレータ30は、例えば、混合層を含んでいてもよい。混合層は、無機粒子および有機粒子の両方を含む。
【符号の説明】
【0135】
1 凹部、2 充填材、10 正極、20 負極、21 基材、21a 内周面、21b 外周面、22 凸部、30 セパレータ、50 発電要素、51 直線、90 外装体、100 リチウム金属二次電池(LMB)。