(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171481
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】送液システム、液滴吐出装置及びキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B41J2/175 307
B41J2/175 121
B41J2/175 133
B41J2/175 501
B41J2/175 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088512
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慶太
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕文
(72)【発明者】
【氏名】津川 栞
(72)【発明者】
【氏名】福本 和子
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EA29
2C056EB21
2C056EB34
2C056EB48
2C056EB50
2C056EC18
2C056EC32
2C056EC34
2C056EC61
2C056EC62
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB15
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC20
(57)【要約】
【課題】タンク内の液量を容易かつ正確に検知できる送液システム、液滴吐出装置及びキャリブレーション方法を提供する。
【解決手段】第1タンク42内の液体を送液ポンプ451により第2タンク43に送液する送液システム40は、第1タンク42内の圧力を計測する圧力計423と、第2タンク43内の液量の情報を計測する液量センサー431と、圧力計423の計測値と第2タンク43内の液量に関する情報との関係に基づいて、液量センサー431の計測値をキャリブレーションする制御部50と、を備える。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タンク内の液体を送液ポンプにより第2タンクに送液する送液システムであって、
前記第1タンク内の圧力を計測する圧力計と、
前記第2タンク内の液量に関する情報を計測する液量センサーと、
前記圧力計の計測値と前記第2タンク内の液量に関する情報との関係に基づいて、前記液量センサーの計測値をキャリブレーションする制御部と、
を備える送液システム。
【請求項2】
前記液量に関する情報は、第2タンク内の液面高さであり、
前記第2タンクの水平方向の断面積がいずれの高さにおいても既知である請求項1に記載の送液システム。
【請求項3】
前記第2タンクの水平方向の断面積がいずれの高さにおいても同一である請求項2に記載の送液システム。
【請求項4】
前記液量センサーは、磁気センサーであり、
前記液量センサーは、前記第2タンクの上面に取り付けられている請求項2に記載の送液システム。
【請求項5】
前記送液ポンプの送液量をV、前記第1タンクの初期空気圧をP0、前記第1タンク中の初期空気体積をV0、前記送液ポンプの送液後の前記第1タンクの空気圧をP、前記送液ポンプの送液後の前記第2タンクの液面高さをL、前記第2タンクの初期液面高さをL0、前記第2タンクの底面積をAとした時、前記制御部は、下記式(1)及び(2)に基づいて、前記第1タンクの空気圧Pから前記送液ポンプの送液後の前記第2タンクの液面高さLを算出する請求項2に記載の送液システム。
V=(P0V0)/P-V0…式(1)
L=L0+V/A…式(2)
【請求項6】
前記液量センサーの計測値を校正するための測定数を設定する設定部を備える請求項1に記載の送液システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の送液システムと、
前記第2タンクから送液された液体を液滴として吐出する液滴吐出部と、
を備える液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項2から5の何れか一項に記載の送液システムにおける前記液量センサーの計測値をキャリブレーションするキャリブレーション方法であって、
前記第1タンク及び前記第2タンク内の液体量を下限値に調整する調整ステップと、
前記第1タンクを密閉にする閉鎖ステップと、
密閉された前記第1タンク内の液体を、前記第2タンク内の液体量が上限値になるまで前記送液ポンプにより送液する送液ステップと、
前記圧力計の測定値に基づいて、前記送液ステップ中の前記第2タンクの液面高さを算出する算出ステップと、
前記送液ステップ中の前記液量センサーによる計測値を取得する取得ステップと、
前記算出ステップで算出した前記第2タンクの液面高さと、前記取得ステップで取得した前記第2タンクの液面高さと、に基づいて前記液量センサーの計測値をキャリブレーションするキャリブレーションステップと、を備えるキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液システム、液滴吐出装置及びキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の記録面に、液滴吐出部から液滴を吐出して画像を記録する液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、液体の入った第1のタンクを備え、送液ポンプにより、当該液体を液滴吐出部の近傍の第2のタンクに送液する。
【0003】
このような液滴吐出装置においては、送液ポンプが故障する前にその劣化を検知して交換することで、ダウンタイムを減縮させることが求められる。一般に、送液ポンプが劣化すると、その送液機能が低下する。結果、第2のタンクの液面高さが低くなる。そのため、第2のタンクに液量センサーを設けて液面高さの変化をモニタリングすることで、送液ポンプの劣化を検知できる。
【0004】
しかしながら、液量センサーが劣化すると、実際の液面高さと異なる値を出力するため、送液ポンプの劣化を正確に検知できなくなる。また、液量センサーは、劣化した場合のみならず、固体差、取付位置あるいは使用温度に応じても、実際の液面高さと異なる値を出力することがある。そのため、液量センサーの出力値を適宜校正可能にすることで、第2のタンクの正しい液面高さを取得できるようにする必要がある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、タンク内の液面高さを検出可能な光学センサーのキャリブレーションをする発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明は、キャリブレーションを実行する際に、光源を移動させる必要があり、煩雑である。また、特許文献1の発明は、光源が発した光線をCCDに入射させることでインク残量を検知する。そのため、光源ないしCCDが汚損した場合、検知結果に誤りが生じることがある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、タンク内の液量を容易かつ正確に検知できる送液システム、液滴吐出装置及びキャリブレーション方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
第1タンク内の液体を送液ポンプにより第2タンクに送液する送液システムであって、
前記第1タンク内の圧力を計測する圧力計と、
前記第2タンク内の液量に関する情報を計測する液量センサーと、
前記圧力計の計測値と前記第2タンク内の液量に関する情報との関係に基づいて、前記液量センサーの計測値をキャリブレーションする制御部と、を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の送液システムであって、
前記液量に関する情報は、第2タンク内の液面高さであり、
前記第2タンクの水平方向の断面積がいずれの高さにおいても既知である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の送液システムであって、
前記第2タンクの水平方向の断面積がいずれの高さにおいても同一である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の送液システムであって、
前記液量センサーは、磁気センサーであり、
前記液量センサーは、前記第2タンクの上面に取り付けられている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の送液システムであって、
前記送液ポンプの送液量をV、前記第1タンクの初期空気圧をP0、前記第1タンク中の初期空気体積をV0、前記送液ポンプの送液後の前記第1タンクの空気圧をP、前記送液ポンプの送液後の前記第2タンクの液面高さをL、前記第2タンクの初期液面高さをL0、前記第2タンクの底面積をAとした時、前記制御部は、下記式(1)及び(2)に基づいて、前記第1タンクの空気圧Pから前記送液ポンプの送液後の前記第2タンクの液面高さLを算出する。
V=(P0V0)/P-V0…式(1)
L=L0+V/A…式(2)
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の送液システムであって、
前記液量センサーの計測値を校正するための測定数を設定する設定部を備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、液滴吐出装置であって、
請求項1から6の何れか一項に記載の送液システムと、
前記第2タンクから送液された液体を液滴として吐出する液滴吐出部と、を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、
請求項2から5の何れか一項に記載の送液システムにおける前記液量センサーの計測値をキャリブレーションするキャリブレーション方法であって、
前記第1タンク及び前記第2タンク内の液体量を下限値に調整する調整ステップと、
前記第1タンクを密閉にする閉鎖ステップと、
密閉された前記第1タンク内の液体を、前記第2タンク内の液体量が上限値になるまで前記送液ポンプにより送液する送液ステップと、
前記圧力計の測定値に基づいて、前記送液ステップ中の前記第2タンクの液面高さを算出する算出ステップと、
前記送液ステップ中の前記液量センサーによる計測値を取得する取得ステップと、
前記算出ステップで算出した前記第2タンクの液面高さと、前記取得ステップで取得した前記第2タンクの液面高さと、に基づいて前記液量センサーの計測値をキャリブレーションするキャリブレーションステップと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タンク内の液量を正確に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】液量センサー及び第2サブタンクの概略断面図である。
【
図5】キャリブレーション処理のフローチャートである。
【
図6A】キャリブレーション処理の実施前の第1タンク及び第2タンクの概略断面図である。
【
図6B】調整ステップにおける第1タンク及び第2タンクの概略断面図である。
【
図6C】閉鎖ステップにおける第1タンク及び第2タンクの概略断面図である。
【
図6D】送液ステップにおける第1タンク及び第2タンクの概略断面図である。
【
図7A】送液ステップにおける第1タンクの概略断面図である。
【
図7B】送液ステップにおける第2タンクの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る送液システムについて、図面を用いて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
[インクジェット記録装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る送液システムが適用された液滴吐出装置である、インクジェット記録装置1の主要構成を示す側断面図である。また、
図2は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30、送液部40及び制御部50等を備える。
【0021】
(給紙部)
給紙部10は、画像形成前の記録媒体Pを格納する。給紙部10は、制御部50の制御下で、記録媒体Pを画像形成部20に搬送する。給紙部10は、給紙トレー11及び搬送部12等を備える。
【0022】
{給紙トレー}
給紙トレー11は、記録媒体Pを格納する板状部材である。給紙トレー11は、一又は複数の記録媒体Pを載置可能に設けられる。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動する。給紙トレー11は、当該上下動により、最上の記録媒体Pが搬送部12によって搬送される位置で保持される。
【0023】
{搬送部}
搬送部12は、給紙トレー11から画像形成部20へ記録媒体Pを搬送する。搬送部12は、搬送機構を備える。搬送機構は、ベルト123を駆動して、ベルト123上の記録媒体Pを搬送する。ベルト123は、輪状である。ベルト123の輪の内側は、複数のローラー121、122により担持される。
【0024】
搬送部12は、供給部を備える。供給部は、給紙トレー11に載置された最上の記録媒体Pをベルト123上に受け渡す。搬送部12は、当該供給部により、記録媒体Pをベルト123に沿わせるように搬送する。
【0025】
(画像形成部)
画像形成部20は、送液部40と協働して、制御部50の制御下で記録媒体Pに記録動作を実行する。画像形成部20は、画像形成ドラム21、受け渡しユニット22、用紙加熱部23、ヘッドユニット24、照射部25及びデリバリー部26等を備える。
【0026】
{画像形成ドラム}
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、回転に伴って当該記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24及び照射部25と対向し、搬送される記録媒体Pに対して画像形成処理を実行する。
【0027】
{受け渡しユニット}
受け渡しユニット22は、搬送部12と画像形成ドラム21の間に介在する位置に設けられる。受け渡しユニット22は、爪部221及び受け渡しドラム222等を備える。
【0028】
爪部221は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持する円筒状部材である。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録媒体Pを誘導する部材である。
【0029】
受け渡しユニット22は、搬送部12上の記録媒体Pを爪部221で取り上げて受け渡しドラム222の外周面に沿わせる。受け渡しユニット22は、当該動作により、記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。
【0030】
{用紙加熱部}
用紙加熱部23は、例えば、電熱線等を備え、通電に応じて発熱する。用紙加熱部23は、制御部50の制御下で、その近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように発熱する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であり、かつ、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の上流側に位置するよう設けられる。
【0031】
用紙加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられる。制御部50は、当該温度センサーにより用紙加熱部23付近の温度を計測する。制御部50は、当該計測した温度に基づいて、用紙加熱部23の発熱を制御する。
【0032】
{ヘッドユニット}
ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対してインク滴を吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の各色に対応するものがそれぞれ設けられている。
図1では、記録媒体Pの搬送方向に対して、上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。
【0033】
ここで、平面視において記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向を幅方向とする。本実施形態のヘッドユニット24は、幅方向につき、記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で複数配列されるように設けられている。また、本実施形態のヘッドユニット24は、液滴吐出部であるインクジェットヘッド24a(
図3参照)が複数配列されて構成される。すなわち、インクジェット記録装置1は、例えばワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。
【0034】
なお、画像形成部20に設けられるヘッドユニット24の数は3つ以下であっても5つ以上であってもよい。また、単一のインクジェットヘッド24aがヘッドユニット24を構成してもよい。
【0035】
ヘッドユニット24は、例えば紫外線硬化型インクを吐出する。紫外線硬化型インクは、照射部25から紫外線が照射されない状態では、温度に応じてゲル状態と液体(ゾル)状態との間で相変化する。紫外線硬化型インクは、例えば40~100℃程度の相変化温度を有し、相変化温度以上に加熱上昇されることで一様に液化(ゾル化)する。一方で、紫外線硬化型インクは、通常の室温程度(0~30℃程度)である場合はゲル化する。
【0036】
{照射部}
照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を備える。照射部25は、当該蛍光管の発光により、紫外線等のエネルギー線を照射する。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍に設けられる。また、照射部25は、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の下流側に位置するよう設けられる。照射部25は、インクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射する。記録媒体P上のインクは、当該エネルギー線の作用により硬化する。
【0037】
なお、紫外線を発する蛍光管は低圧水銀ランプに限られない。蛍光管は、例えば数百Pa~1MPa程度の動作圧力を備える水銀ランプであってよい。また、蛍光管は、殺菌灯として利用可能な光源、例えば、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプあるいは発光ダイオード等であってよい。蛍光管は、紫外線をより高照度で照射可能であって省電力な光源であることが望ましい。蛍光管は、例えば、発光ダイオード等である。なお、エネルギー線は紫外線に限られず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であれば良い。そして、光源もエネルギー線に応じて置換される。
【0038】
上記においてはヘッドユニット24が紫外線硬化型のインクを吐出する場合を例示したが、これに限定されない。ヘッドユニット24は、水性インクやその他の物性を有するインクを吐出してもよい。
【0039】
{デリバリー部}
デリバリー部26は、記録媒体Pを搬送する搬送機構を備える。搬送機構は、具体的には、複数のローラー261、262と輪状のベルト263とを備える。ベルト263は、その内側がローラー261、262に担持される。搬送機構は、ベルト263を駆動させて記録媒体Pを搬送する。また、デリバリー部26は、円筒状の受け渡しローラー264を備える。受け渡しローラー264は、記録媒体Pを画像形成ドラム21から当該搬送機構に受け渡す。デリバリー部26は、ベルト263上の記録媒体Pを搬送して排紙部30に送り出す。
【0040】
(排紙部)
排紙部30は、画像形成部20で画像形成された記録媒体Pが排紙される。排紙部30は、板状の排紙トレー31等を備える。デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Pは、排紙トレー31に載置される。排紙部30は、ユーザーが記録媒体Pを取り出すまで格納する。
【0041】
(送液部)
図3に送液部40の概略構成図を示す。送液部40と制御部50は、本発明に係る送液システムを構成する。送液部40は、各色のインクを各ヘッドユニット24へ供給し、当該各色のインクを吐出可能とする。送液部40は、メインタンク41、第1タンク42及び第2タンク43等を備える。
【0042】
<メインタンク>
メインタンク41は、送液部40の各部に供給されるインクが収容される。メインタンク41は、例えば金属製の剛体密閉タンクである。メインタンク41は、供給管44を介して第1タンク42と連通する。供給管44には、供給ポンプ441及び供給弁442が設けられている。
【0043】
〈供給ポンプ、供給弁〉
供給ポンプ441及び供給弁442は、制御部50の制御下で動作する。制御部50は、メインタンク41内のインクを第1タンク42に供給する際、供給弁442を開放して、供給ポンプ441を駆動させる。メインタンク41は、その全体を交換可能となっており、供給ポンプ441の稼働状況に拘わらず、供給管44と着脱可能に形成されている。
【0044】
<第1タンク>
第1タンク42は、1又は複数のインク室である。第1タンク42の容積は、メインタンク41よりも小さい。第1タンク42は、メインタンク41から供給されたインクを加熱して貯留する。第1タンク42には、第1上限センサー421、第1下限センサー422、第1圧力計423及び第1大気開放弁424等が設けられている。
【0045】
〈第1上限センサー、第1下限センサー〉
第1上限センサー421及び第1下限センサー422は、例えばレベルスイッチであり、インクの有無に応じて制御部50に信号を送信する。
【0046】
第1上限センサー421は、第1サブタンク内42内のインク液面の上限となる位置に設置される。第1上限センサー421は、インクを検知すると、制御部50に信号を送信する。すると、制御部50は、エラーを報知させる。
【0047】
また、第1下限センサー422は、第1タンク42内のインク液面の下限となる位置に設置される。第1下限センサー422は、インクを検知しなくなると、制御部50に信号を送信する。当該信号を受信した制御部50は、供給ポンプ441を駆動させて、送液方向上流側のメインタンク41のインクを供給させる。
【0048】
第1上限センサー421、第1下限センサー422及び制御部50の上記制御により、第1タンク42には常に下限値以上かつ上限値以下の所定範囲の量のインクが貯留される。
【0049】
〈第1圧力計〉
第1圧力計423は、第1タンク42内の圧力値を取得して当該データを制御部50に送信する。
【0050】
〈第1大気開放弁〉
第1大気開放弁424は、制御部50に制御される電磁弁である。第1大気開放弁424は、制御部50の制御下で、第1タンク42を大気に対して選択的に開放又は閉鎖する。
【0051】
〈インク加熱部〉
また、第1タンク42には、内部のインクを適温に加熱する不図示のインク加熱部が設けられる。インク加熱部は、ヒーターやヒーターからの熱を伝える伝熱部材等により構成される。インク加熱部を構成するヒーターとしては、例えば、通電されることによりジュール熱を生じる電熱線が用いられる。インク加熱部を構成する伝熱部材としては、熱伝導率の高い部材、例えば、各種金属(合金)で形成された熱伝導板が用いられる。
【0052】
また、第1タンク42は、回収路47、47を介してインクジェットヘッド24aのアウトレットと連通している。インクジェットヘッド24aから吐出されなかったインクは、回収路47、47を通過して第1タンク42に回収される。当該構成により、例えば、インクジェットヘッド24aのメンテナンスでインクを抜く必要がある場合でも、インクを無駄なく回収できる。
【0053】
第1タンク42は、送液管45を介して第2タンク43と連通する。送液管45には、送液ポンプ451及び送液制御弁452等が設けられる。また、送液管45には、循環流路453が設けられる。
【0054】
〈送液ポンプ〉
送液ポンプ451は、第1タンク42内のインクを第2タンク43に送出する。本発明において、送液ポンプ451は、例えば逆止弁及びダイアフラムを備えるダイアフラムポンプである。送液ポンプ451がダイアフラムポンプであると、インク中に異物が混入するおそれや、液漏れが発生するおそれが低減する。
【0055】
〈送液制御弁〉
送液制御弁452は、制御部50に制御される電磁弁である。送液制御弁452は、送液管45のうち、送液ポンプ451よりも送液方向下流側に設けられる。送液制御弁452は、制御部50の制御下で、送液管45を選択的に開閉する。
【0056】
〈循環流路〉
循環流路453は、送液ポンプ451よりも送液方向下流側であって、送液制御弁452よりも送液方向上流側から分岐して第1タンク42と連通する。循環流路453は、逆止弁453aを備え、循環流路453から送液管45へのインクの流出を防ぐ。当該構成により、制御部50が、送液制御弁452を閉鎖させて送液ポンプ451を駆動させることで、第1タンク42から送液されたインクが第1タンク42内へ戻る。送液部40がこのような循環構造を備えることで、インク供給が停止した際の温度ムラを解消できる。
【0057】
なお、送液管45のうち、送液ポンプ451よりも送液方向上流側には、インク中の異物を除去できる、フィルターや脱気モジュール等の公知の除去部材を設けてもよい。送液ポンプ451の送液方向上流側に除去部材を設けることで、送液ポンプ451の劣化を抑制できる。
【0058】
<第2タンク>
第2タンク43は、第1タンク42の送液方向下流側に設けられる小型のタンク室である。第2タンク43の容量は、特には限定されないが、例えば第1タンク42と略同一程度の容量である。第2タンク43は、第1タンク42から送液されたインクが一時的に貯留される。第2タンク43は、供給路46を介して各インクジェットヘッド24aのインレットと連通している。各インクジェットヘッド24aは、その吐出するインクの量に応じて、第2タンク43からインクが供給される。第2タンク43には、液量センサー431、第2上限センサー432、第2下限センサー433、第2圧力計434、背圧弁435及び背圧ポンプ436等が設けられる。
【0059】
〈液量センサー〉
液量センサー431は、インク量の情報を計測する。具体的には、液量センサー431は、第2タンク43内の液面位置を計測して当該データを制御部50に送信する。制御部50は、当該データに基づいて、第2タンク43内のインク量を取得する。
【0060】
本実施形態における液量センサー431の詳細な構成を
図4に示す。
図4に示すように、例えば液量センサー431は、フロート431aと、磁性センサー431b及び磁性体431cを備える。
【0061】
フロート431aは、第2タンク43内に設けられる。フロート431aには、磁石が内蔵されており、第2タンク43内のインクの増減に応じて昇降して磁界を発する。磁性センサー431bは、第2タンク43の上部に設けられる。磁性センサー431bは、フロート431aの昇降に応じて変化する磁界の磁束密度を計測することで、第2タンク43内の液面高さを計測する。磁性体431cは、磁性センサー431bの近傍に設けられる。磁性体431cは、磁束を磁性センサー431bに集中させることで、その感度を向上させる。このように、本実施形態に係る液量センサー431は、磁気によってインク量の情報を計測する磁気センサーである。
【0062】
なお、磁性センサー431bは、第2タンク43の側面部に設けてもよい。ただし、第2タンク43の上部に磁性センサー431bを設けると、その感度が向上するため、好ましい。
【0063】
また、第2タンク43における液面高さを計測する液量センサーとしては、フロート431a及び磁性センサー431bを備える磁気センサーに限られない。例えば電界を利用した静電容量センサーにより、第2タンク43における液面高さを計測してもよい。
【0064】
〈第2上限センサー、第2下限センサー〉
図3に戻って、第2上限センサー432及び第2下限センサー433は、第1上限センサー421及び第1下限センサー422と略同様の構成である。すなわち、第2下限センサー433は、第2タンク43内のインク液面が下限値を下回った場合に制御部50に信号を送信する。当該信号を受信した制御部50は、送液ポンプ451を駆動させて、送液方向上流側の第1タンク42のインクを送液させる。また、第2上限センサー432は、第2タンク43内のインク液面が上限値を超えた場合に制御部50に信号を送信する。当該信号を受信した制御部50は、エラーを報知させる。
【0065】
〈第2圧力計〉
第2圧力計434は、第2タンク43内の圧力値を取得して制御部50に当該データを送信する。
【0066】
〈背圧弁、背圧ポンプ〉
背圧弁435及び背圧ポンプ436は、制御部50の制御下で第2タンク43内の圧力値を調整して、インクジェットヘッド24aに適切な負圧を加える。当該負圧により、インクジェットヘッド24aのインクは、画像形成時や各種のメンテナンスを除くタイミングで漏れ出すのを抑制される。
【0067】
なお、制御部50は、第2タンク43の水平方向の断面積をいずれの高さにおいても取得している。当該構成であると、制御部50は、後述するキャリブレーション処理において、送液ポンプ451の送液量を算出できる。ただし、第2タンク43の水平方向の断面積が、いずれの高さにおいても同一である場合はこれに限られない。
【0068】
<送気管>
また、第1タンク42と第2タンク43は送気管48によって連通している。送気管48には、第2大気開放弁481、圧力調整弁482及び空圧ポンプ483等が設けられる。空圧ポンプ483は、第1タンク42内の空気を吸気することで、第1タンク42内を減圧する。第2大気開放弁481のみが開放状態の場合、当該空気は、第2タンク43内に送気されて、第2タンク43内が加圧される。また、圧力調整弁482が開放状態の場合、当該空気は、大気中に放出される。あるいは、空圧ポンプ483は、第2大気開放弁481が閉鎖状態の時に、第1タンク42内に大気を送気する。この場合、第1タンク42内が加圧される。
【0069】
(制御部)
図2に戻って、制御部50は、インクジェット記録装置1を構成する各部を制御する。制御部50は、上記インクジェット記録装置1を構成する各部と接続される。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52及びROM(Read Only Memory)53等を備える。
【0070】
CPU51は、ROM53等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行する。また、CPU51は、実行された処理内容に応じてインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。RAM52は、CPU51により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM53は、CPU51等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
【0071】
[キャリブレーション処理]
上記のように構成されたインクジェット記録装置1における、キャリブレーション処理について説明する。キャリブレーション処理は、液量センサー431による第2タンク43の液面高さの検出値を校正する処理である。
図5は、一実施例に係るキャリブレーション処理のフローチャートである。また、
図6Aから
図6Dは、キャリブレーション処理の所定のステップにおける第1タンク42及び第2タンク43の概略断面図である。
【0072】
図6Aは、キャリブレーション処理の実行前の、第1タンク42及び第2タンク43の概略断面図である。
図6Aに示すように、第1上限センサー421、第1下限センサー422及び制御部50により、第1タンク42内には、下限値以上かつ上限値以下のインクが貯留されている。同様に、第2上限センサー432、第2下限センサー433及び制御部50により、第2タンク43内には、下限値以上かつ上限値以下のインクが貯留されている。
【0073】
初めに、制御部50は、第1タンク42内のインク量を下限値に調整する(ステップS101)。また、制御部50は、第2タンク43内のインク量を下限値に調整する(ステップS102)。
【0074】
具体的には、
図6Bに示すように、初めに制御部50は、送液制御弁452を開放する。これにより、第1タンク42内のインクが第2タンク43に送液される。あるいは、制御部50は、送液制御弁452を開放した上で送液ポンプ451を駆動させることで、第1タンク42内のインクを第2タンク43に送液する。第1タンク42内のインクの送液後、制御部50は、送液制御弁452を閉鎖する。
【0075】
次いで、制御部50は、背圧弁435及び圧力調整弁482を閉鎖して、第2大気開放弁481を開放する。そして、制御部50は、空圧ポンプ483を駆動させることで、第2タンク43内を加圧する。これにより、第2タンク43内のインクがインクジェットヘッド24aに送液される。
【0076】
第1タンク42及び第2タンク43内のインク量の調整後、
図6Cに示すように、制御部50は、第1大気開放弁424を閉鎖して、第1タンク42を密閉させる(ステップS103)。
【0077】
次いで、制御部50は、送液制御弁452を開放する(ステップS104)。そして、
図6Dに示すように、制御部50は、送液ポンプ451を駆動させることで、第1タンク42内のインクを第2タンク43内に送液する(ステップS105)。ステップS103において、第1タンク42は密閉されている。そのため、本ステップで第2タンク43内に送液した分だけ、第1タンク42内の空気は膨張する。結果、第1タンク42内は減圧する。また、第2タンク43内の液面高さは、第1タンク42から送液された分上昇する。
【0078】
制御部50は、第2タンク43内のインク量が上限値となるまで送液ポンプ451を駆動させる(ステップS106)。第2タンク43内のインク量が上限値となったら(ステップS106;Yes)、制御部50は、送液ポンプ451の駆動を停止する。また、制御部50は、送液制御弁452を閉鎖する(ステップS107)。
【0079】
送液ポンプ451の停止後、制御部50は、第1圧力計423から取得した第1タンク42内の圧力値に基づいて、第2タンク43内の液面高さを算出する(ステップS108)。
【0080】
詳細には、
図7Aに示すように、ステップS103の時点での第1タンク42内の初期空気体積V
0は、ステップS105での送液の結果、第2タンク43への送液量Vだけ増加する。また、ステップS103で第1タンク42は密閉されているため、PV(Pは圧力推移)は一定となる。よって、P(V
0+V)=P
0V
0(P
0は第1タンク42内の初期圧力(大気圧))が成立する。これを展開すると、下記数式1の通り、送液量Vは圧力推移の関数で表せられる。
【0081】
【0082】
そして、
図7Bに示すように、第1タンク42からの送液後の第2タンク43内の液面高さLは、送液量Vを含む下記数式2の通りに表せられる。なお、数式2において、Aは第2タンク43の底面積、L
0はステップS103の時点での第2タンク43の液面高さを示す。
【0083】
【0084】
上記数式1及び2より、第1圧力計423により第1タンク42内の圧力値Pが取得できており、かつ、第2タンク43の底面積Aが既知であれば、第2タンク43の正確な液面高さが算出できる。
【0085】
第2タンク43の液面高さの算出後、制御部50は、液量センサー431に第2タンク43の液面高さを計測させる(ステップS109)。なお、ステップS108とステップS109の順番は逆でもよい。
【0086】
そして、制御部50は、ステップS108の算出値と、ステップS109の計測値とを対応させる(ステップS110)。当該制御により、制御部50は液量センサー431のキャリブレーションをする。
【0087】
なお、上記においては、ステップS108及びステップS109をステップS107の後に実行する場合を例示したが、これに限られない。すなわち、第1圧力計423及び液量センサー431による第2タンク43内の液面高さの算出及び計測は、ステップS105からステップS107の間(すなわち、第1タンク42から第2タンク43への送液中)に実行してもよい。この場合、複数の測定点に基づいてキャリブレーションが可能になるため、キャリブレーションの精度をより高めることができる。
【0088】
なお、ステップS108及びステップS109をステップS105からステップS107の間に実行する場合でも、測定点は1点でもよい。また、測定点の数(すなわちキャリブレーションの精度)は、インクジェット記録装置1に設けられた所定の設定部をユーザーが操作することで適宜任意に設定可能であってもよい。当該設定部は、例えばボタンやタッチパネル等である。
【0089】
[実施形態の効果]
以上に示すように、制御部50は、圧力計423の計測値と第2タンク43内の液量に関する情報との関係に基づいて、液量センサー431の計測値をキャリブレーションする。当該構成によれば、第1タンク42内の圧力値に基づいて第2タンク43の実際の液面高さが算出可能である。そして、第2タンク43内の正確な液面高さを計測できるように、容易に液量センサー431をキャリブレーションできる。また、通常の送液システム40が備える構成によって液量センサー431をキャリブレーションできる。
【0090】
また、液量センサー431は、磁性センサー431bを備える磁気センサーである。そして、磁性センサー431bは、第2タンク43の上面に取り付けられている。当該構成によれば、液量センサー431の感度が向上する。また、液量センサー431が磁気センサーであると、インクで汚損しても、正確に第2タンクの液面高さを計測できる。
【0091】
以上、本発明に係る実施の形態に基づいて具体的に説明を行ったが、本発明が上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明が、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む様々な変更が可能であるのはもちろんである。
【0092】
例えば、上記においては、ステップS108で第1タンク42内の圧力値に基づいて第2タンク43内の液面高さを算出するとしたが、これに限られない。すなわち、予め作成されてROM53に記憶された、第1タンク42内の圧力値と第2タンク43内の液面高さの対応関係のテーブルに基づいて、第2タンク43内の液面高さを算出してもよい。
【0093】
また、
図6A等においては、第1タンク42と第2タンク43におけるインクの上限高さ及び下限高さが同一である場合を例示しているが、これに限られない。
【0094】
また、上記においては、液量センサー431により、第2タンク43内の液量の情報を計測する構成を例示したが、これに限られない。例えば、第2タンク43の重量を取得可能な重量センサーにより、第2タンク43内の液量の情報を計測する構成であってもよい。当該構成の場合、第2タンク43内の液体の密度が既知であれば、制御部50は、当該重量センサーが計測した第2タンク43の重量に基づいて、第2タンク43内の液量を取得できる。
【0095】
また、上記においては、液滴吐出装置の一実施形態として、インクを吐出するインクジェット記録装置1を例示したが、これに限られない。すなわち、本発明に係る液滴吐出装置が吐出する液体は、インクに限られない。液滴吐出装置は、例えば前処理剤、血液あるいは水等を吐出する装置であってもよい。また、上記においては、送液システムが液滴吐出装置に適用される場合を例示したが、送液システムが適用される装置は、液滴吐出装置に限られない。
【符号の説明】
【0096】
1 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
24a インクジェットヘッド(液滴吐出部)
40 送液部(送液システム)
41 メインタンク
42 第1タンク
423 第1圧力計(圧力計)
43 第2タンク
431 液量センサー
431b 磁性センサー
451 送液ポンプ
50 制御部