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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171496
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子機器、提示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088531
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 倫治
(72)【発明者】
【氏名】井手 博康
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC09
(57)【要約】
【課題】提示されるピッチ左右差の精度を向上させる。
【解決手段】電子機器の制御部は、センサ部の加速度センサ等から取得されたデータに基づいてユーザの一歩ごとのピッチを左足と右足のそれぞれで導出し、左足の直近5歩のピッチについてのレンジと、右足の直近5歩のピッチについてのレンジと、がそれぞれ所定の条件を満たしているか否かを判断する。そして、制御部は、各レンジが所定の条件を満たしている場合に、ピッチ左右差を導出し、現在提示されているピッチ左右差の値を、新たに導出されたピッチ左右差の値に更新する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから取得されたデータに基づいて、ユーザの一歩ごとのピッチを、左足及び右足それぞれで導出し、
左足の所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1右足統計値と、の差分を導出し、
導出された前記差分の値を提示部に提示させる、
制御部を備え、
前記制御部は、左足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2右足統計値と、がそれぞれ所定の条件を満たしていると判断した場合に、提示されている前記差分の値を、新たに導出された差分の値に更新して提示する、
電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、左足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての前記第2右足統計値と、がそれぞれ所定の条件を満たしていないと判断した場合に、提示されている前記差分の値を更新しないよう制御する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記所定のセンサは、少なくとも加速度センサを含み、
前記制御部は、前記加速度センサを含む所定のセンサから取得されたデータに基づいて左足と右足のそれぞれのピッチを導出する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記ピッチについての第3統計値を導出し、
導出された前記第3統計値を前記提示部に提示させる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2左足統計値及び前記第2右足統計値がそれぞれ前記所定の条件を満たしている場合に、前記第3統計値を導出し、現在提示されている前記第3統計値を、新たに導出された前記第3統計値に更新して提示する、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1左足統計値及び前記第1右足統計値は、中央値又は平均値である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第2左足統計値及び前記第2右足統計値は、最大値と最小値との差分である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2左足統計値及び前記第2右足統計値の少なくとも一つが前記所定の条件を満たしていないことにより前記提示部に提示されている前記差分の値が更新されなかった場合、前記差分の値が更新されていないことを識別可能な態様で提示する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
センサから取得されたデータに基づいて、ユーザの一歩ごとのピッチを、左足及び右足それぞれで導出し、
左足の所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1右足統計値との差分を導出し、
導出された前記差分の値を提示部に提示させるコンピュータが、
左足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2右足統計値と、がそれぞれ所定の条件を満たしていると判断した場合に、提示されている前記差分の値を、新たに導出された差分の値に更新して提示する、
提示方法。
【請求項10】
センサから取得されたデータに基づいて、ユーザの一歩ごとのピッチを、左足及び右足それぞれで導出し、
左足の所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1右足統計値との差分を導出し、
導出された前記差分の値を提示部に提示させるコンピュータに、
左足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2右足統計値と、がそれぞれ所定の条件を満たしていると判断した場合に、提示されている前記差分の値を、新たに導出された差分の値に更新して提示する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、提示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォーキングやランニングにおける運動情報を計測して表示する電子機器が知られている。例えば、特許文献1には、ランニング中における左右の各足の着地(接地)タイミング間の経過時間(ピッチ)を計測して表示する運動支援装置が記載されている。
【0003】
また、左足の接地タイミングから右足の接地タイミングまでの経過時間と右足の着地タイミングから左足の着地タイミングまでの経過時間との差(ピッチ左右差)を提示(表示)する装置も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-6371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピッチ左右差は、ウォーキングやランニング中の身体の使い方における左右のバランスを示す重要な運動指標である。しかし、例えば、水たまりを飛び越える、ガタガタの道を歩く(走る)などの動作が行われた場合などには、提示されるピッチ左右差の精度が著しく低下してしまうことがあった。
【0006】
本発明の課題は、提示されるピッチ左右差の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の電子機器は、
センサから取得されたデータに基づいて、ユーザの一歩ごとのピッチを、左足及び右足それぞれで導出し、
左足の所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第1右足統計値と、の差分を導出し、
導出された前記差分の値を提示部に提示させる、
制御部を備え、
前記制御部は、左足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2左足統計値と、右足の前記所定歩数のそれぞれで導出されたピッチについての第2右足統計値と、がそれぞれ所定の条件を満たしていると判断した場合に、提示されている前記差分の値を、新たに導出された差分の値に更新して提示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、提示されるピッチ左右差の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る電子機器がユーザに装着された様子を示す図、(b)は、電子機器の外観構成を示す図である。
図2図1の電子機器の機能的構成を示すブロック図である。
図3図1の制御部により実行される歩行解析処理の流れを示すフローチャートである。
図4】(a)は、ピッチ導出結果格納メモリのデータ格納例を示す図、(b)は、直近5歩のピッチとして(a)に示すピッチが取得された場合の直近5歩の最大値、最小値及びレンジを示す図である。
図5】(a)は、ピッチ導出結果格納メモリのデータ格納例を示す図、(b)は、直近5歩のピッチとして(a)に示すピッチが取得された場合の直近5歩の最大値、最小値及びレンジを示す図である。
図6】(a)は、計測されたピッチの信頼度が高い場合の表示部130における表示の変化を示す図、(b)は、計測されたピッチの信頼度が低い場合の表示部130における表示の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されている。そのため、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
[電子機器100の構成]
本実施形態に係る電子機器100は、歩行中におけるユーザの運動指標を計測して表示するものである。
電子機器100は、例えば図1(a)に示すように、ユーザUSが手首等に装着する。電子機器100は、図1(b)に示すように、リストウォッチ型(腕時計型)の外観を有し、大別して、ユーザUSに所定の情報を提示するための表示部130(提示部)を備えた機器本体101と、ユーザUSの手首に巻き付けることにより機器本体101を手首に装着するためのベルト部102と、を備えている。
【0012】
電子機器100は、具体的には、例えば図2に示すように、大別して、センサ部(検出部)110と、操作部120と、表示部130と、制御部141と、メモリ(記憶部)142と、動作電源143と、通信部150と、を備えている。
【0013】
センサ部110は、図2に示すように、加速度センサ111と、ジャイロセンサ(角速度センサ)112と、GPS受信回路(位置センサ)113と、を有している。
加速度センサ111は、ユーザUSの運動中の動作速度の変化の割合(加速度)を検出し、検出された加速度データを制御部141に出力する。また、ジャイロセンサ112は、ユーザUSの運動中の動作方向の変化(角速度)を検出し、検出された角速度データを制御部141に出力する。そして、制御部141が所定の制御プログラムを実行することにより、この加速度センサ111により検出された加速度データ、及び/又はジャイロセンサ112により検出された角速度データの時間変化を示す波形に基づいて、歩行時のピッチ及びピッチ左右差等の運動指標を導出(算出)する。
【0014】
ここで、本願において、ピッチとは、歩行(又は走行)における左足(右足)の接地タイミングと右足(左足)の接地タイミングの間の時間(すなわち、1歩当たりに要する時間)である。ピッチ左右差とは、左足の接地タイミングから右足の接地タイミングまでの時間(左ピッチ)と右足の着地タイミングから左足の着地タイミングまでの時間(右ピッチ)との差分である。本実施形態では、「左ピッチ-右ピッチ」をピッチ左右差とするが、「右ピッチ-左ピッチ」をピッチ左右差としてもよい。
【0015】
また、GPS受信回路113は、複数のGPS衛星からの電波を受信することにより、緯度経度からなる(地理的な)位置データを検出する。このGPS受信回路113により検出された位置データに基づいて、制御部141により、移動距離が取得される。また、GPS受信回路113は、GPS衛星からの電波のドップラーシフト効果を利用して、ユーザUSの移動速度を取得する。
【0016】
なお、センサ部110には少なくとも加速度センサ111を備えていればよく、ジャイロセンサ112及びGPS受信回路113を備えていない構成であってもよい。
【0017】
操作部120は、図2に示すように、操作スイッチ121と、タッチパネル122と、を有している。操作スイッチ121は、例えば図1(b)に示すように、ボタンスイッチを有し、動作モードの開始、終了、変更、一時停止等の操作や、各種設定等の操作に用いられる。
【0018】
また、タッチパネル122は、表示部130の前面に配置、又は、表示部130の前面に一体的に形成され、表示部130におけるタッチ操作された位置を検出して制御部141に出力する。なお、操作部120には、操作スイッチ121とタッチパネル122の双方を備えているものであってもよいし、いずれか一方のみを備えているものであってもよい。
【0019】
表示部130は、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等の表示装置を有し、少なくともユーザUSの運動中に、上述したセンサ部110により取得されたデータ(センサデータ)に基づいて導出された各種の情報を表示する。表示部130には、例えば図1(b)に示すように、ピッチ、ピッチ左右差等の数値を含む文字情報が表示される。
【0020】
制御部141は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、電子機器100の各部を制御するコンピュータである。具体的には、制御部141のCPUは、ROMに記憶されているシステムプログラムや各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0021】
メモリ142は、不揮発性メモリ等により構成される。メモリ142は、上述したセンサ部110により取得された加速度データ等のセンサデータに基づいて導出された歩行時のピッチやピッチ左右差等の運動指標の数値情報を、歩行開始からの経過時間に相互に関連付けて保存する。例えば、メモリ142は、図3(a)に示すピッチ導出結果格納メモリ142aを有する。
【0022】
動作電源143は、電子機器100内部の各構成に駆動電力を供給する。動作電源143としては、市販のコイン型電池やボタン型電池等の一次電池、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池のほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電(エナジーハーベスト)技術による電源等を適用することができる。
【0023】
通信部150は、WiFiなどの無線LAN(Local Area Network)、携帯電話通信網、又はBluetooth(登録商標)により外部機器と通信を行うための通信制御を行う。
【0024】
[電子機器100の動作]
次に、本実施形態の電子機器100の動作について説明する。
ユーザUSによる操作部120の操作により歩行解析モードへの移行が指示されると、制御部141は、歩行解析処理を開始する。
【0025】
図3は、歩行解析処理の流れを示すフローチャートである。歩行解析処理は、制御部141のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0026】
まず、制御部141は、時間計測を開始するとともにセンサ部110による計測(データ取得)を開始させ(ステップS1)、センサ部110からデータ(センサデータ)を取得して時間(timestamp:歩行開始からの経過時間)に対応付けてメモリ142に記憶させる(ステップS2)。
【0027】
次いで、制御部141は、センサ部110から取得したセンサデータを解析し、一歩を検出したか否かを判断する(ステップS3)。
例えば、制御部141は、加速度センサ111からの加速度データを解析し、衝撃が検出できた場合に、足の接地を検出した、すなわち一歩を検出したと判断する。なお、加速度データから衝撃を検出する手法は、公知のいずれの手法でもよく、特に限定されない。
【0028】
一歩を検出していないと判断した場合(ステップS3;NO)、制御部141は、ステップS2に戻る。
一歩を検出したと判断した場合(ステップS3;YES)、制御部141は、一歩のピッチを導出する(ステップS4)。
制御部141は、前回衝撃が検出された時間(すなわち、前回足が接地されたタイミングの時間)から今回衝撃が検出された時間(すなわち、今回足が接地されたタイミングの時間)の差分をピッチとして導出し、ピッチの導出結果を時間(timestamp)に対応付けてピッチ導出結果格納メモリ142a(図4(a)参照)に記憶させる。
【0029】
次いで、制御部141は、導出したピッチが右足のピッチであるか否かを判断する(ステップS5)。
ここで、電子機器100においては、ユーザUSが使用を始める前に当該電子機器100を左(左手首)に装着するか右(右手首)に装着するかを予め設定するようになっており、メモリ142には、その設定情報(左右の設定情報)が記憶されている。制御部141は、例えば、この左右の設定情報と、加速度センサ111からの加速度データ及びジャイロセンサ112からの角速度データとに基づいて、今回の衝撃検出時にどちらの腕が前に振られていたかを判断し、その判断結果に基づいて、衝撃検出時に左右のいずれの足が接地されたかを判断する。そして、左足が接地されたと判断した場合には左足のピッチ(左ピッチ)であると判断し、右足が接地されたと判断した場合には右足のピッチ(右足ピッチ)であると判断し、接地足をピッチの導出結果に対応付けて図4(a)に示すピッチ導出結果格納メモリ142aに記憶させる。
【0030】
導出したピッチが右足のピッチではないと判断した場合(ステップS5;NO)、すなわち、導出したピッチが左足のピッチであると判断した場合、制御部141は、5歩分の左足のピッチの情報がピッチ導出結果格納メモリ142aに存在するか否かを判断する(ステップS6)。ここで、本実施形態では、5歩分のピッチの情報を用いて後段のピッチの中央値(第1左足統計値、第1右足統計値)やレンジ(第2左足統計値、第2右足統計値)の導出を行うこととし、5歩分のピッチの情報が揃うまではピッチの中央値の導出やレンジの導出に進まないこととするが、後段のピッチの中央値やレンジの導出を行うために用いるデータ数は複数であればよく、特に限定されない。
【0031】
5歩分の左足のピッチの情報がピッチ導出結果格納メモリ142aに存在しないと判断した場合(ステップS6;NO)、制御部141は、変数flg_L_medをFalseに設定し(ステップS7)、ステップS2に戻る。
【0032】
一方、5歩分の左足のピッチの情報がピッチ導出結果格納メモリ142aに存在すると判断した場合(ステップS6;YES)、制御部141は、変数flg_L_medをTrueに設定する(ステップS8)。
次いで、制御部141は、左足の直近5歩のピッチの中央値を導出する(ステップS9)。
【0033】
次いで、制御部141は、左足の直近5歩のピッチの最大値と最小値の差であるレンジを導出し(ステップS10)、レンジ≦60msecであるか否かを判断する(ステップS111)。なお、導出されたレンジと比較する閾値は、ここでは60msecとしているが、これに限定されるものではない。
【0034】
レンジ≦60msecであると判断した場合(ステップS11;YES)、制御部141は、変数flg_L_rngをTrueに設定し(ステップS12)、ステップS22に移行する。
レンジ≦60msecではないと判断した場合(ステップS11;NO)、制御部141は、変数flg_L_rngをFalseに設定し(ステップS13)、ステップS22に移行する。
【0035】
一方、ステップS5において、導出したピッチが右足のピッチであると判断した場合(ステップS5;YES)、制御部141は、5歩分の右足のピッチの情報がピッチ導出結果格納メモリ142aに存在するか否かを判断する(ステップS14)。
5歩分の右足のピッチの情報がピッチ導出結果格納メモリ142aに存在しないと判断した場合(ステップS14;NO)、制御部141は、変数flg_R_medをFalseに設定し(ステップS15)、ステップS2に戻る。
【0036】
ステップS14において、5歩分の右足のピッチの情報がピッチ導出結果格納メモリ142aに存在すると判断した場合(ステップS14;YES)、制御部141は、変数flg_R_medをTrueに設定する(ステップS16)。
次いで、制御部141は、右足の直近5歩のピッチの中央値を導出する(ステップS17)。
【0037】
次いで、制御部141は、右足の直近5歩のピッチの最大値と最小値の差であるレンジを導出し(ステップS18)、レンジ≦60msecであるか否かを判断する(ステップS19)。なお、導出されたレンジと比較する閾値は、ここでは60msecとしているが、これに限定されるものではない。
【0038】
レンジ≦60msecであると判断した場合(ステップS19;YES)、制御部141は、変数flg_R_rngをTrueに設定し(ステップS20)、ステップS22に移行する。
ステップS19において、レンジ≦60msecではないと判断した場合(ステップS19;NO)、制御部141は、変数flg_R_rngをFalseに設定し(ステップS21)、ステップS22に移行する。
【0039】
ステップS22において、制御部141は、flg_L_med=Trueかつflg_R_med=Trueであるか否かを判断する(ステップS22)。
flg_L_med=Trueかつflg_R_med=Trueではないと判断した場合(ステップS22;NO)、制御部141は、ステップS2に戻る。すなわち、左足の直近5歩のピッチの中央値又は右足の直近5歩のピッチの中央値が導出されていない場合、ステップS2に戻る。
【0040】
flg_L_med=Trueかつflg_R_med=Trueであると判断した場合(ステップS22;YES)、すなわち、左足の直近5歩のピッチの中央値及び右足の直近5歩のピッチの中央値が導出されている場合、制御部141は、左足と右足の直近5歩のピッチの中央値の平均(第3統計値。左右のピッチの平均値。)を、表示するピッチとして導出し、導出したピッチを表示部130に表示させる(ステップS23)。
すでに表示部130にピッチが表示されている場合、制御部141は、現在表示されているピッチの表示を、新たに導出されたピッチの表示に更新する。
【0041】
次いで、制御部141は、flg_L_rng=Trueかつflg_R_rng=Trueであるか否かを判断する(ステップS24)。
flg_L_rng=Trueかつflg_R_rng=Trueであると判断した場合(ステップS24;YES)、制御部141は、左足と右足の直近5歩のピッチの中央値の差分をピッチ左右差として導出し、導出したピッチ左右差を表示部130に表示させ(ステップS25)、ステップS26に移行する。
すでに表示部130にピッチ左右差が表示されている場合、制御部141は、現在表示されているピッチ左右差の表示を、新たに導出されたピッチ左右差の表示に更新する。
なお、制御部141は、導出されたピッチ及びピッチ左右差を、歩行開始からの経過時間に対応付けてメモリ142に記憶する。
【0042】
flg_L_rng=Trueかつflg_R_rng=Trueではないと判断した場合(ステップS24;NO)、すなわち、flg_L_rngとflg_R_rngの少なくとも一方がFalseである場合、制御部141は、ピッチ左右差の表示を更新せずに、ステップS26に移行する。
【0043】
ステップS26において、制御部141は、操作部120の操作により歩行解析モードの終了が指示されたか否かを判断する(ステップS26)。
操作部120の操作により歩行解析モードの終了が指示されていないと判断した場合(ステップS26;NO)、制御部141は、ステップS2に戻る。
操作部120の操作により歩行解析モードの終了が指示されたと判断した場合(ステップS26;YES)、制御部141は、歩行解析処理を終了する。
【0044】
ここで具体例を挙げると、左足の直近5歩のそれぞれのピッチ及び右足の直近5歩のそれぞれのピッチが図4(a)に示す値である場合、図4(b)に示すように、左足の直近5歩のピッチの最大値は530、最小値は500であるので左足の直近5歩のピッチのレンジは30(msec)である。また、右足の直近5歩のピッチの最大値は530、最小値は490であるので、右足の直近5歩のピッチのレンジは40(msec)である。すなわち、左足の直近5歩のそれぞれのピッチ及び右足の直近5歩のそれぞれのピッチが図4(a)に示す値である場合、両足のピッチのレンジがともに60(msec)以内であるので、信頼度の高いデータであるとして、表示するピッチ(第3統計値)及びピッチ左右差が導出される。そして、図6(a)に示すように、表示部130に表示されているピッチ及びピッチ左右差が導出された値に更新される。
【0045】
また、例えば、左足の直近5歩のそれぞれのピッチ及び右足の直近5歩のそれぞれのピッチが図5(a)に示す値である場合、図5(b)に示すように、左足の直近5歩のピッチの最大値は1020、最小値は500であるので左足の直近5歩のピッチのレンジは520(msec)である。また、右足の直近5歩のピッチの最大値は1530、最小値は500であるので、右足の直近5歩のピッチのレンジは1030(msec)である。すなわち、左足の直近5歩のそれぞれのピッチ及び右足の直近5歩のそれぞれのピッチが図5(a)に示す値である場合、左足及び右足のピッチのレンジが60(msec)より大きいため、信頼度の低いデータであるとしてピッチ左右差が導出されず、表示するピッチ(第3統計値)のみが導出される。そして、図6(b)に示すように、表示部130に表示されているピッチのみが新たに導出された値に更新され、ピッチ左右差は更新されない。
【0046】
このように、上記歩行解析処理では、計測されたピッチの信頼度が低い場合、ピッチ左右差の表示は更新されず、計測されたピッチの信頼度が高い場合のみ、ピッチ左右差の表示を更新する。したがって、表示されるピッチ左右差の精度を向上させることができる。
【0047】
なお、左足と右足の少なくとも一つのレンジが60(msec)を超えており、表示部130に表示されているピッチ左右差が更新されなかった場合、制御部141は、ピッチ左右差が更新されていないことをユーザUSが識別可能な態様でピッチ左右差を表示することとしてもよい。例えば、ピッチ左右差が更新されていない場合、ピッチ左右差の色を変えて表示する。あるいは、ピッチ左右差の表示の近傍に所定のマークを付与したり、ピッチ左右差が更新されていないことを文章で表示したりしてもよい。
【0048】
また、上記歩行解析処理では、ピッチの値の表示は毎歩ごとに更新することとしたが、左足と右足の少なくとも一つのレンジが所定の条件(60(msec)以下)を満たさなかった場合、すなわち、信頼度が低いデータであった場合、ピッチの値の表示も更新しないこととしてもよい。例えば、図3のステップS23の処理をステップS24の処理の後に実行することで、信頼度が低いデータであった場合、ピッチの値の表示も更新しないこととしてもよい。
【0049】
以上説明したように、電子機器100の制御部141は、センサ部110の加速度センサ111等から取得されたデータに基づいてユーザUSの一歩ごとのピッチを左足と右足のそれぞれで導出し、左足の直近5歩のピッチについてのレンジと、右足の直近5歩のピッチについてのレンジと、がそれぞれ所定の条件を満たしているか否かを判断する。そして、制御部141は、各レンジが所定の条件を満たしている場合に、ピッチ左右差を導出し、現在表示されているピッチ左右差の値を、新たに導出されたピッチ左右差の値に更新する。
したがって、左足及び/又は右足の直近5歩のレンジが所定の条件を満たさない場合、ピッチ左右差の表示は更新されないので、例えば、水たまりを飛び越えた等により正しいピッチが導出できなかった場合に、そのピッチに基づくピッチ左右差を表示しないようにすることができる。よって、報知させるピッチ左右差の精度を向上させることができる。
【0050】
例えば、センサ部110は、少なくとも加速度センサを含み、制御部141は、加速度センサを含む所定のセンサから取得されたデータに基づいて左足と右足のそれぞれのピッチを導出する。したがって、少なくとも加速度センサを用いてピッチを導出することができる。
【0051】
また、制御部141は、さらに、左足と右足のそれぞれで導出されたピッチの中央値の平均を導出し、導出された値をピッチとして表示部130に表示させる。したがって、ユーザUSは、ピッチについても確認することができる。
【0052】
また、制御部141は、左足の直近5歩のピッチについてのレンジ及び右足の直近5歩のピッチについてのレンジが所定の条件を満たしている場合に、左足と右足のそれぞれで導出されたピッチの中央値の平均を表示するピッチとして導出し、現在表示されているピッチを、新たに導出されたピッチに更新する。したがって、左足及び/又は右足の直近5歩のレンジが所定の条件を満たさない場合、ピッチの表示は更新されないので、表示されるピッチの精度を向上させることができる。
【0053】
また、制御部141は、左足の直近5歩のピッチについてのレンジ及び右足の直近5歩のピッチについてのレンジの少なくとも一つが所定の条件を満たしていないことにより表示部130に表示されているピッチ左右差の値が更新されなかった場合、ピッチ左右差が更新されていないことをユーザUSが識別可能な態様で表示する。
したがって、ユーザUSは、ピッチ左右差の表示が更新されなかったことを認識することができる。
【0054】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明に係る電子機器、提示方法及びプログラムの好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、歩行中のピッチやピッチ左右差を導出して表示する場合を例にとり説明したが、ジョギングなどで走行中のピッチやピッチ左右差を導出して表示する際にも本発明は適用可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、左足の直近5歩のそれぞれで導出されたピッチについての中央値(第1左足統計値)と、右足の直近5歩のそれぞれで導出されたピッチについての中央値(第1右足統計値)との差分をピッチ左右差としたが、中央値の代わりに平均値を用いることとしてもよい。また、中央値や平均値を導出するための歩数は、5歩に限らない。
また、左足の直近5歩のそれぞれで導出されたピッチについての中央値と、右足の直近5歩のそれぞれで導出されたピッチについての中央値の平均を表示するピッチとしたが、中央値の代わりに平均値を用いることとしてもよい。また、中央値や平均値を導出するための歩数は、5歩に限らない。
【0057】
また、上記実施形態では、ピッチやピッチ左右差を表示する電子機器100が、加速度センサやジャイロセンサ等の、ピッチやピッチ左右差を導出するためのデータを取得するための所定のセンサを備える構成としたが、ピッチやピッチ左右差を表示する電子機器とセンサとは別体であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ピッチやピッチ左右差を導出するためのデータを取得するための所定のセンサがユーザUSの腕(手首)に装着された電子機器100の加速度センサやジャイロセンサである場合を例にとり説明したが、所定のセンサは、これらに限定されない。例えば、所定のセンサは、ユーザUSの上腕、腰、足首など、ユーザUSの他の部位に装着するものであってもよい。また、所定のセンサは、ユーザUSに装着するものでなくてもよい。例えば、所定のセンサは、画像センサ(カメラ)であってもよい。例えば、ユーザUSがトレッドミル上で歩行又は走行している様子を画像センサで撮影し、得られた撮影画像からユーザUSの一歩ごとのピッチを導出することとしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ピッチやピッチ左右差を表示部130に表示することにより提示することとしたが、これに限定されず、例えば、音声等により提示することとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてROMを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、ハードディスク、SSDや、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0061】
その他、電子機器を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0062】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載に基づいて定められる。更に、特許請求の範囲の記載から本発明の本質とは関係のない変更を加えた均等な範囲も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0063】
100 電子機器
110 センサ部
111 加速度センサ
112 ジャイロセンサ
113 GPS受信回路
120 操作部
121 操作スイッチ
122 タッチパネル
130 表示部
141 制御部
142 メモリ
143 動作電源
150 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6