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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171506
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】圧縮成形装置及び圧縮成形方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20241205BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C43/18
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088548
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小口 達司
【テーマコード(参考)】
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AD19
4F204AG03
4F204AH37
4F204AJ09
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF23
4F204FG02
4F204FN11
4F204FN17
5F061AA01
5F061BA03
5F061CA22
5F061DE02
5F061DE06
(57)【要約】
【課題】圧縮成形装置のコンパクト化が可能で、また、封止金型のメンテナンス性の向上が可能で、また、マシンタイムの短縮及び生産性の向上が可能な圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供する。
【解決手段】キャビティ208を有する上型204とワーク保持部205を有する下型206とを備える封止金型202を用いて、ワークWを封止樹脂Rにより封止して成形品Wpに加工する圧縮成形装置1であって、ワークW及び封止樹脂Rを封止金型202内へ搬送する搬送装置302を備え、搬送装置302は、ワークWを保持するワークハンド312と、封止樹脂Rを保持する樹脂ハンド322と、を備え、ワークハンド312は、樹脂ハンド322が保持する封止樹脂Rの直下の位置でワークWを保持する構成である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有する上型とワーク保持部を有する下型とを備える封止金型を用いて、ワークを封止樹脂により封止して成形品に加工する圧縮成形装置であって、
前記ワークと前記封止樹脂とを前記封止金型内へ搬送する搬送装置を備え、
前記搬送装置は、前記ワークを保持するワークハンドと、前記封止樹脂を保持する樹脂ハンドと、を備え、
前記ワークハンドは、前記樹脂ハンドが保持する前記封止樹脂の直下の位置で前記ワークを保持する構成であること
を特徴とする圧縮成形装置。
【請求項2】
前記ワークとして、基材に電子部品が搭載された構成を有するワークが用いられ、
前記封止樹脂として、全体の形状を前記ワークの形状に対応させた所定形状に形成された板状もしくはブロック状の固形樹脂が用いられること
を特徴とする請求項1記載の圧縮成形装置。
【請求項3】
前記ワークハンドは、前記ワークの下面もしくは側面を把持することにより又は上面を吸着することにより前記ワークを保持する第1保持部を有し、
前記樹脂ハンドは、前記封止樹脂の下面もしくは側面を把持することにより又は上面を吸着することにより前記ワークを保持する第2保持部を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧縮成形装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記樹脂ハンドの前記第2保持部における前記封止樹脂の保持位置を前記ワークハンドの前記第1保持部における前記ワークの保持位置に対して相対的に上方及び下方へ移動させる移動装置を有すること
を特徴とする請求項3記載の圧縮成形装置。
【請求項5】
キャビティを有する上型とワーク保持部を有する下型とを備える封止金型を用いて、ワークを封止樹脂により封止して成形品に加工する圧縮成形方法であって、
前記封止樹脂を樹脂ハンドで保持する樹脂保持工程と、
前記樹脂保持工程の後に、前記封止樹脂の直下の位置で前記ワークをワークハンドで保持するワーク保持工程と、
前記ワーク保持工程の後に、前記下型に設けられた前記ワーク保持部に前記ワークを載置するワーク載置工程と、
前記ワーク載置工程の後に、前記ワークの上に前記封止樹脂を載置する樹脂載置工程と、
を備えること
を特徴とする圧縮成形方法。
【請求項6】
前記ワークとして、基材に電子部品が搭載された構成を有するワークが用いられ、
前記封止樹脂として、全体の形状を前記ワークの形状に対応させた所定形状に形成された板状もしくはブロック状の固形樹脂が用いられること
を特徴とする請求項5記載の圧縮成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形装置及び圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に電子部品が搭載されたワークを封止樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置及び樹脂封止方法の例として、圧縮成形方式によるものが知られている。
【0003】
圧縮成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる封止領域(キャビティ)に所定量の封止樹脂を供給すると共に当該封止領域にワークを配置して、上型と下型とでクランプする操作によって樹脂封止する技術である(特許文献1:特開2013-42017号公報、特許文献2:特開2019-145550号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-42017号公報
【特許文献2】特開2019-145550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮成形方式の場合に、封止金型のキャビティ内に封止樹脂を供給し、キャビティが厚さ方向に可動することで封止樹脂が硬化してワークに樹脂封止がなされるため、金型開時はワークと封止樹脂に垂直方向に空間があっても重なっている必要がある。
【0006】
一例として、上型にキャビティが設けられた上型キャビティ可動の圧縮成形金型の封止金型内へワーク及び封止樹脂を搬送する方法として、一般的にはワークの上に封止樹脂を載せてワークごと圧縮成形金型に搬入セットする方法が特許文献1に記載されている。
【0007】
他の例として、下型にキャビティが設けられた下型キャビティ可動の圧縮成形金型の封止金型内へワーク及び封止樹脂を搬送する方法として、主に顆粒樹脂を使用するタイプでは、顆粒樹脂から発生する粉塵による成形不良を減らす目的で、封止金型を挟んで左側より成形前ワークを搬送すると共に成形後のワークを取出し、封止樹脂は封止金型を挟んで右側より供給することが特許文献2に記載されている。この場合、成形前ワークと成形後ワークを速やかに搬送、取出しするには、一つのローダの前端二箇所に第1ハンド(成形前ワークを搬送するハンド)と第2ハンド(成形後ワークを搬送するハンド)を前後に配置させて搬送する方法が特許文献2に記載されている。しかしながら、このような供給方法においては、第1ハンドと第2ハンドとが前後方向に並んで配置されているため、搬送装置が前後方向に大型化してしまうという課題があった。また、封止金型に対して装置の前面側まで搬送装置を進入させるためのスペースを設ける必要があり、圧縮成形装置全体が大型化してしまうという課題があった。また、圧縮成形装置の前面から封止金型までの距離が長くなってしまい、封止金型のメンテナンス性が悪いという課題があった。また、搬送装置の移動距離が増加するため、マシンタイムが延長するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、圧縮成形装置のコンパクト化が可能で、また、封止金型のメンテナンス性の向上が可能で、また、マシンタイムの短縮及び生産性の向上が可能な圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
一実施形態に係る圧縮成形装置は、キャビティを有する上型とワーク保持部を有する下型とを備える封止金型を用いて、ワークを封止樹脂により封止して成形品に加工する圧縮成形装置であって、前記ワーク及び前記封止樹脂を前記封止金型内へ搬送する搬送装置を備え、前記搬送装置は、前記ワークを保持するワークハンドと、前記封止樹脂を保持する樹脂ハンドと、を備え、前記ワークハンドは、前記樹脂ハンドが保持する前記封止樹脂の直下の位置で前記ワークを保持する構成であることを要件とする。
【0011】
上記の実施形態によれば、搬送装置においてワーク及び封止樹脂が上下方向に階層状に保持されるため、搬送装置の前後方向の寸法を抑えることができる。従って、圧縮成形装置をコンパクト化することができる。また、圧縮成形装置の前面から封止金型までの距離が短縮されるため、封止金型のメンテナンス性を向上することができる。また、ワークをワーク保持部に載置した後、搬送装置を移動することなく連続的に封止樹脂をワーク上へ載置できるため、マシンタイムが短縮され、生産性を向上することができる。
【0012】
また、前記ワークとして、基材に電子部品が搭載された構成を有するワークが用いられ、前記封止樹脂として、全体の形状を前記ワークの形状に対応させた所定形状に形成された板状もしくはブロック状の固形樹脂が用いられることが好ましい。
【0013】
また、前記ワークハンドは、前記ワークの下面もしくは側面を把持することにより又は上面を吸着することにより前記ワークを保持する第1保持部を有し、前記樹脂ハンドは、前記封止樹脂の下面もしくは側面を把持することにより又は上面を吸着することにより前記ワークを保持する第2保持部を有することが好ましい。
【0014】
また、前記搬送装置は、前記樹脂ハンドの前記第2保持部における前記封止樹脂の保持位置を前記ワークハンドの前記第1保持部における前記ワークの保持位置に対して相対的に上方及び下方へ移動させる移動装置を有することが好ましい。
【0015】
また、一実施形態に係る圧縮成形方法は、キャビティを有する上型とワーク保持部を有する下型とを備える封止金型を用いて、ワークを封止樹脂により封止して成形品に加工する圧縮成形方法であって、前記封止樹脂を樹脂ハンドで保持する樹脂保持工程と、前記樹脂保持工程の後に、前記封止樹脂の直下の位置で前記ワークをワークハンドで保持するワーク保持工程と、前記ワーク保持工程の後に、前記下型に設けられた前記ワーク保持部に前記ワークを載置するワーク載置工程と、前記ワーク載置工程の後に、前記ワークの上に前記封止樹脂を載置する樹脂載置工程と、を備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧縮成形装置のコンパクト化が可能で、また、封止金型のメンテナンス性の向上が可能で、また、マシンタイムの短縮及び生産性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置の例を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置のプレス装置の例を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置の封止金型の例を示す正面断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る圧縮成形方法の説明図である。
図5図4に続く説明図である。
図6図5に続く説明図である。
図7図6に続く説明図である。
図8図7に続く説明図である。
図9図8に続く説明図である。
図10図9に続く説明図である。
図11図10に続く説明図である。
図12図11に続く説明図である。
図13図12に続く説明図である。
図14図14Aは、図13におけるXIV部の拡大図である。図14Bは、図14Aに続く説明図である。
図15図14Bに続く説明図である。
図16図15に続く説明図である。
図17】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置及び圧縮成形方法において用いられる封止樹脂の例を示す斜視図である。
図18】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置及び圧縮成形方法において用いられる封止樹脂の他の例を示す斜視図である。
図19】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置及び圧縮成形方法において用いられる封止樹脂の他の例を示す斜視図である。
図20】本発明の実施形態に係る圧縮成形装置及び圧縮成形方法において用いられる封止樹脂の他の例を示す斜視図である。
図21】比較例に係る圧縮成形装置の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る圧縮成形装置1の例を示す平面図(概略図)である。尚、説明の便宜上、図中において矢印により圧縮成形装置1における左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)を示す。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0019】
本実施形態に係る圧縮成形装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、ワーク(被成形品)Wの樹脂封止(圧縮成形)を行う装置である。下型206に、ワークWを保持する一又は複数のワーク保持部205が設けられる。上型204に、ワークWの形状や個数に応じて一又は複数のキャビティ208が設けられる。このキャビティ208内にリリースフィルム(以下、単に「フィルム」と称する場合がある)Fが吸着保持される。但し、この構成に限定されるものではない。
【0020】
先ず、封止対象であるワークWは、基材Waに電子部品Wbが搭載された構成を備えている。より具体的には、基材Waの例として、樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状の部材が挙げられる。また、電子部品Wbの例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ等が挙げられる。尚、基材Waの形状は、長方形状(短冊状)、正方形状、円形状等である。また、一つの基材Waに搭載される電子部品Wbの個数は、一つもしくは複数個(例えば、マトリクス状等)に設定される。
【0021】
基材Waに電子部品Wbを搭載する方法の例として、ワイヤーボンディング実装、フリップチップ実装等による方法が挙げられる。あるいは、樹脂封止後に成形品Wpから基材(ガラス製や金属製のキャリアプレート)Waを剥離する構成の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品Wbを貼付ける方法もある。
【0022】
本実施形態においては、封止樹脂Rとして、熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂等であるが、これに限定されない)であって、全体の形状がワークWの形状に対応させた所定形状(詳細は後述)を有する固形樹脂が用いられる。通常は、一個で封止必要量(ワークW一個当たりの一回分)の「全体」をなすが、数個(例えば二、三個程度)の分割状態で封止必要量の「全体」をなすように構成してもよい。
【0023】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。
【0024】
続いて、本実施形態に係る圧縮成形装置1の概要について説明する。図1に示すように、圧縮成形装置1は、ワークWの供給等を行うワーク供給ユニット100A、封止樹脂Rの搬送等を行う樹脂供給ユニット100B、ワークWを樹脂封止して成形品Wpへの加工等を行うプレスユニット100C、成形品Wpの収納等を行う収納ユニット100Dを主要構成として備えている。一例として、図1中のX方向に沿って、ワーク供給ユニット100A、樹脂供給ユニット100B、プレスユニット100C、プレスユニット100C、収納ユニット100Dの順に配置されている。但し、上記の構成に限定されるものではなく、ユニット内の機器構成やユニット数(特に、プレスユニット数)、ユニットの配置順等を変更することができる。また、上記以外のユニットを備える構成とすることもできる(いずれも不図示)。
【0025】
また、圧縮成形装置1は、各ユニットにおける各機構の作動制御等を行う制御部150がワーク供給ユニット100Aに配置されている(他のユニットに配置される構成としてもよい)。
【0026】
また、圧縮成形装置1は、各ユニット間を跨いでガイドレール300が直線状に設けられており、ワークW及び封止樹脂Rを搬送する搬送装置(第1ローダ)302、並びに、成形品Wpを搬送する搬送装置(第2ローダ)304が、ガイドレール300に沿って所定のユニット間を移動可能に設けられている。但し、上記の構成に限定されるものではなく、ワークW、封止樹脂R、及び成形品Wpを搬送する共通の(一つの)搬送装置(ローダ)を備える構成としてもよい(不図示)。尚、本実施形態においては、ワークWをX方向に二枚並べて封止金型202内へ搬送するが、図の簡素化等のため、以下、一枚分で説明する。尚、枚数は二枚に限定されない。
【0027】
ここで、本願発明者は、ワークW及び封止樹脂Rを搬送する搬送装置の検討を行うべく、比較例に係る圧縮成形装置400を案出した(図21参照)。具体的に、圧縮成形装置400は、第1ハンド(ワークWを搬送するワークハンド)412と第2ハンド(封止樹脂Rを搬送する樹脂ハンド)422とが前後方向に並んで配置されている搬送装置402によって、ワークW及び封止樹脂Rを封止金型401内へ搬送するという構成を備えている。
【0028】
しかしながら、比較例に係る圧縮成形装置400は、特許文献2記載の従来の圧縮成形装置と同様に、第1ハンドと第2ハンドとが前後方向に並んで配置されているため、搬送装置が前後方向に大型化してしまうという課題が生じる。また、封止金型に対して圧縮成形装置の前面側まで搬送装置を進入させるための装置前面にスペースを設ける必要があり、圧縮成形装置全体が大型化してしまうという課題が生じる。また、圧縮成形装置の前面から封止金型までの距離が長くなってしまい、封止金型のメンテナンス性が悪いという課題が生じる。
【0029】
上記の課題を解決すべく、本実施形態に係る搬送装置(第1ローダ)302は、以下の構成を備えている。具体的に、第1ローダ302は、図1に示すように、圧縮成形装置1内をX方向に移動可能なローダ本体部302Aと、当該ローダ本体部302Aに取付けられて圧縮成形装置1内をY及びZ方向に移動可能なローダヘッド302Bと、を備えている。また、ローダヘッド302Bは、ワークWを保持するワークハンド312と、封止樹脂Rを保持する樹脂ハンド322と、を有しており、ワークハンド312及び樹脂ハンド322は、ローダヘッド302B(具体的には、支持部310)に取付けられている。本実施形態において、ワークハンド312は、樹脂ハンド322が保持する封止樹脂Rの直下の位置でワークWを保持するように配置されている。
【0030】
これにより、本実施形態に係る圧縮成形装置1は、上記の課題を解決することができる。具体的に、本実施形態に係る圧縮成形装置1は、ローダヘッド302BにおいてワークW及び封止樹脂Rを上下方向に階層状に保持することができる。この構成によれば、搬送装置(第1ローダ)302の前後方向の寸法を抑えることができる。従って、圧縮成形装置1をコンパクト化することができる。また、圧縮成形装置1の前面から封止金型202までの距離が短縮されるため、封止金型202のメンテナンス性を向上することができる。
【0031】
本実施形態において、ワークハンド312は、ワークWを把持する第1保持部(一例として、先端部に保持爪を有するチャック)314と、当該チャック314をX方向に開閉移動させる駆動を行う第1移動装置316と、を有している(図4参照)。第1移動装置316は、チャック314を支持するチャック支持部318に設けられている。この構成により、ワークハンド312は、ワークWの下面もしくは側面を把持してワークWを保持することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、チャック314を回転移動させる回動軸を備える構成、あるいは水平移動と回転移動とを組合せて移動させる構成等としてもよい(いずれも不図示)。
【0032】
また、樹脂ハンド322は、封止樹脂Rの上面を吸着することにより封止樹脂Rを保持する第2保持部(吸着機構(吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成))324と、当該吸着機構324を上下(Z方向)に移動させる駆動を行う第2移動装置326と、を有している。第2移動装置326は、シリンダ機構を備えて構成され、ロッド先端に取付けられるアーム支持部327及び当該アーム支持部327に支持されるアーム328を介して吸着機構324と接続されている。この構成により、樹脂ハンド322は、吸着機構324における封止樹脂Rの保持位置をワークハンド312のチャック314におけるワークWの保持位置に対して相対的に上方及び下方へ移動することができる。これによれば、吸着機構324によって保持された封止樹脂Rをワーク保持部205に載置されたワークW(基材Wa)に当接させた状態で載置することができるため、封止樹脂Rの位置ずれを防止することができる。但し、第2移動装置326は、この構成に限定されるものではなく、サーボモータとリニアガイド等の組み合わせで吸着機構324を上下移動させる構成等としてもよい(不図示)。
【0033】
尚、ワークハンド312の第1保持部を吸着機構とし、樹脂ハンド322の第2保持部をチャックとしてもよい。また、共にチャックもしくは吸着機構としてもよい。また、本実施形態においては、樹脂ハンド322の第2保持部324を、アーム328を用いて第1保持部314の外側に配置して、さらに第2移動装置326で上下動する構成としているが、チャック支持部318の中央部に貫通孔を設けて第2保持部324に直接第2移動装置326を設けてもよい。また、他の公知の保持機構を採用してもよい(いずれも不図示)。
【0034】
また、ローダヘッド302Bを上下(Z方向)に移動してワークW及び封止樹脂Rを搬送する圧縮成形装置1を例に上げたが、チャック314を上下(Z方向)に移動してワークW及び封止樹脂Rを搬送する構成としてもよく、あるいは、その両方を備える構成としてもよい。
【0035】
(ワーク供給ユニット)
続いて、圧縮成形装置1が備えるワーク供給ユニット100Aについて詳しく説明する。
【0036】
ワーク供給ユニット100Aは、複数のワークWが収納されるワーク供給マガジン102を備えている。ここで、ワーク供給マガジン102には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。また、ワーク供給ユニット100Aは、ワーク供給マガジン102からワークWを第1ローダ302に受け渡すワークテーブル103を備えている。
【0037】
尚、ワーク供給ユニット100Aは、ワーク供給マガジン102から取出されたワークWが載置されるワークステージ等(不図示)を備える構成としてもよい。
【0038】
ワークWは、事前に樹脂供給ユニット100B(後述)において封止樹脂Rを樹脂ハンド322に保持した状態の第1ローダ302のワークハンド312に保持され、プレスユニット100Cへ搬送されて封止金型202の所定位置にセットされる。本実施形態においては、ワークWは、下型206のワーク保持部205に載置され、封止樹脂Rは、ワーク保持部205に載置されたワークWの上に載置される(工程の詳細については後述する)。
【0039】
(樹脂供給ユニット)
続いて、圧縮成形装置1が備える樹脂供給ユニット100Bについて詳しく説明する。
【0040】
樹脂供給ユニット100Bは、封止樹脂Rの供給を行う樹脂供給マガジン120を備えている。ここで、樹脂供給マガジン120には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。また、樹脂供給ユニット100Bは、樹脂供給マガジン120から封止樹脂Rを第1ローダ302に受け渡す樹脂テーブル121を備えている。
【0041】
尚、樹脂供給ユニット100Bは、樹脂供給マガジン120から取出された封止樹脂Rが載置される樹脂ステージ等(不図示)を備える構成としてもよい。
【0042】
封止樹脂Rは、第1ローダ302の樹脂ハンド322に保持され、ワーク供給ユニット100Aを経由してプレスユニット100Cへ搬送される。本実施形態においては、左端からワーク供給ユニット100A、樹脂供給ユニット100Bの順に配置しているが、必ずしもこの順に配置する必要はなく、左端から樹脂供給ユニット100B、ワーク供給ユニット100Aの順でもよい。
【0043】
(プレスユニット)
続いて、圧縮成形装置1が備えるプレスユニット100Cについて詳しく説明する。
【0044】
プレスユニット100Cは、開閉される一対の金型(例えば、合金工具鋼からなる複数の金型ブロック、金型プレート、金型ピラー等やその他の部材が組み付けられたもの)を有する封止金型202を備えている。また、封止金型202を開閉駆動してワークWを樹脂封止するプレス装置250を備えている。一例として、プレス装置250を一台備える構成としているが、複数台備える構成としてもよい(不図示)。プレスユニット100Cに設けられるプレス装置250の側面図(概略図)を図2に示し、封止金型202の正面断面図(概略図)を図3に示す。
【0045】
ここで、プレス装置250は、図2に示すように、一対のプラテン254、256と、一対のプラテン254、256が架設される複数のタイバー252と、プラテン256を可動(昇降)させる駆動装置等を備えて構成されている。具体的に、当該駆動装置は、駆動源(例えば、電動モータ)260及び駆動伝達機構(例えば、ボールねじやトグルリンク機構)262等を備えて構成されている(但し、これに限定されるものではない)。本実施形態では、鉛直方向において上方側のプラテン254を固定プラテン(タイバー252に固定されるプラテン)とし、下方側のプラテン256を可動プラテン(タイバー252に摺動可能に保持されて昇降するプラテン)として設定している。但し、これに限定されるものではなく、上下逆に、すなわち上方側を可動プラテン、下方側を固定プラテンに設定してもよく、あるいは、上方側、下方側共に可動プラテンとして設定してもよい(いずれも不図示)。
【0046】
一方、封止金型202は、図3に示すように、プレス装置250における上記一対のプラテン254、256間に配設される一対の金型として、鉛直方向における上方側の上型204と、下方側の下型206とを備えている。すなわち、上型204が上方側のプラテン(本実施形態では、固定プラテン254)に組み付けられ、下型206が下方側のプラテン(本実施形態では、可動プラテン256)に組み付けられている。この上型204と下型206とが相互に接近・離反することで型閉じ・型開きが行われる(鉛直方向(上下方向)が型開閉方向となる)。
【0047】
また、本実施形態においては、一例として、ロール状のフィルムFを封止金型202の内部へ搬送(供給)するフィルム供給機構211が設けられている。尚、フィルムFは、ワークWの構成に応じ、ロール状に代えて短冊状のものが用いられる場合がある。
【0048】
次に、封止金型202の上型204について詳しく説明する。図3に示すように、上型204は、上型チェイス210と、これに保持されるキャビティ駒226、クランパ228等を備えている。上型チェイス210は、サポートピラー212を介してサポートプレート214の下面に対して固定されている。上型204の下面(下型206側の面)にキャビティ208が設けられている。
【0049】
クランパ228は、キャビティ駒226を囲うように環状に構成されると共に、押動ピン222及びクランパバネ(例えば、コイルバネに例示される付勢部材)224を介して、サポートプレート214の下面に対して離間(フローティング)して上下動可能に組み付けられる(但し、この組み付け構造に限定されるものではない)。このキャビティ駒226がキャビティ208の奥部(底部)を構成し、クランパ228がキャビティ208の側部を構成する。尚、一つの上型204に設けられるキャビティ208の形状や個数は、ワークWの形状や個数に応じて適宜設定される(一つもしくは複数個)。
【0050】
また、クランパ228下面やクランパ228とキャビティ駒226との境界部等に、吸引装置に連通する吸引路(孔や溝等)が設けられている(不図示)。これにより、フィルム供給機構211から供給されたフィルムFを、キャビティ208の内面を含む金型面204aに吸着させて保持することができる。また、型閉じをして樹脂封止を行う際にキャビティ208内の脱気を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態においては、上型204を所定温度に加熱する上型加熱機構(不図示)が設けられている。この上型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、電源等を備えており、制御部150によって加熱の制御が行われる。一例として、ヒータは、上型チェイス210に内蔵され、上型204全体及びキャビティ208内に収容される封止樹脂Rに熱を加える構成となっている。当該ヒータによって、上型204が所定温度(例えば、100℃~300℃)となるように加熱される。
【0052】
次に、封止金型202の下型206について詳しく説明する。図3に示すように、下型206は、下型チェイス240と、これに保持される下プレート242等を備えている。
【0053】
また、本実施形態においては、ワークWを下プレート242の上面における所定位置に保持するワーク保持部205が設けられている。このワーク保持部205は、一例として、ワークガイドピン(不図示)、及び下プレート242を貫通して配設され、吸引装置に連通する吸引路(孔や溝等)を有している(不図示)。具体的には、吸引路の一端が下型206の金型面206aに通じ、他端が下型206外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路からワークWを吸引し、金型面206a(ここでは、下プレート242の上面)にワークWを吸着させて保持することが可能となる。上記の吸着保持機構に代えて、もしくは吸着保持機構と共に、ワークWの外周を挟持する保持爪を備える構成としてもよい(不図示)。尚、一つの下型206に設けられるワーク保持部205の形状や個数は、ワークWの形状や個数に応じて適宜設定される(一つもしくは複数個)。
【0054】
また、本実施形態においては、下型206を所定温度に加熱する下型加熱機構(不図示)が設けられている。この下型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、電源等を備えており、制御部150によって加熱の制御が行われる。一例として、ヒータは、下型チェイス240に内蔵され、下型206全体及びワーク保持部205に保持されるワークWに熱を加える構成となっている。当該ヒータによって、下型206が所定温度(例えば、100℃~300℃)となるように加熱される。
【0055】
(収納ユニット)
続いて、圧縮成形装置1が備える収納ユニット100Dについて詳しく説明する。
【0056】
成形品Wpは、第2ローダ304に保持されて封止金型202から搬出され、収納ユニット100Dへ搬送される。尚、第2ローダ304における成形品Wpの保持機構には、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0057】
上記搬送装置の変形例として、X及びY方向に移動する第2ローダ304に代えて、X方向に移動してユニット間の搬送を行う搬送装置(ローダ)と、Y方向に移動して封止金型202からの搬出を行う搬送装置(ローダ)とを別個に備える構成としてもよい(不図示)。
【0058】
収納ユニット100Dは、複数の成形品Wpが収納される収納マガジン104を備えている。ここで、収納マガジン104には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。尚、第2ローダ304によって搬送された成形品Wpを一旦載置する成形品テーブル105(整列部)を備えているが、省略した構成とすることもできる。
【0059】
尚、収納ユニット100Dは、プレスユニット100Cから搬送された成形品Wpが載置される成形品ステージ等(不図示)を備える構成としてもよい。
【0060】
(樹脂封止動作)
続いて、上記圧縮成形装置1を用いて実施される本実施形態に係る圧縮成形方法の工程について説明する。ここで、図4図16は、各工程の説明図であって、図3と同方向の正面断面図として図示する。
【0061】
先ず、準備工程として、上型加熱機構により上型204を所定温度(例えば、100℃~300℃)に調整して加熱する加熱工程(上型加熱工程)を実施する。また、下型加熱機構により下型206を所定温度(例えば、100℃~300℃)に調整して加熱する加熱工程(下型加熱工程)を実施する。また、フィルム供給機構211を作動させて新しいフィルムFを供給して、上型204におけるキャビティ208の内面を含む金型面204aの所定領域を覆うように吸着させるフィルム供給工程(上型フィルム供給工程)を実施する。
【0062】
次いで、第1ローダ302の樹脂ハンド322に封止樹脂Rを保持する樹脂保持工程を実施する。具体的には、第1ローダ302を樹脂供給ユニット100Bへ移動し、ローダヘッド302Bを樹脂供給マガジン120から供給された封止樹脂Rが載置された樹脂テーブル121の上方へ移動する(図4参照)。次いで、ローダヘッド302Bを下降し、第2移動装置326を作動(下動)させて吸着機構324を封止樹脂Rの上面に当接するまで下降し、封止樹脂Rを保持(吸着)する(図5参照)。次いで、第2移動装置326を作動(上動)させて吸着機構324を上昇し、ローダヘッド302Bを上昇する(図6参照)。
【0063】
樹脂保持工程の後に、第1ローダ302のワークハンド312にワークWを保持するワーク保持工程を実施する。具体的には、封止樹脂Rを樹脂ハンド322に保持した状態の第1ローダ302をワーク供給ユニット100Aへ移動し、ローダヘッド302Bをワーク供給マガジン102から供給されたワークWが載置されたワークテーブル103の上方へ移動する(図7参照)。次いで、ローダヘッド302Bを下降し、第1移動装置316を作動させてチャック314をワークWに接近させ、ワークWを封止樹脂Rの直下の位置で保持(把持)する(図8参照)。次いで、ローダヘッド302Bを上昇する(図9参照)。
【0064】
ワーク保持工程の後に、下型206のワーク保持部205にワークWを載置するワーク載置工程を実施する。具体的には、ワークW及び封止樹脂Rを保持した状態の第1ローダ302をプレスユニット100Cへ移動し、ローダヘッド302Bを下型206のワーク保持部205の上方へ移動する(図10参照)。次いで、ローダヘッド302Bを下降し、第1移動装置316を作動させてチャック314をワークWから離反させ、ワーク保持部205にワークWを載置(保持)する(図11参照)。
【0065】
ワーク載置工程の後に、ワーク保持部205に載置したワークWの上に封止樹脂Rを載置する樹脂載置工程を実施する。具体的には、第2移動装置326を作動させて吸着機構324を下降し、封止樹脂Rの吸着を解除して、ワーク保持部205に載置されたワークWの上に封止樹脂Rを載置する(図12参照)。次いで、第2移動装置326を作動させて吸着機構324を上昇し、ローダヘッド302Bを上昇し、その後ローダヘッド302Bを封止金型202外へ移動する(図13参照)。
【0066】
前述の通り、従来の圧縮成形方法においては、第1ハンドと第2ハンドとが前後方向に並んで配置されているため、ワークを載置する工程で封止金型に対して装置の前面側まで搬送装置を進入させる必要があった。これに対して、本実施形態においては、ワーク載置工程でワーク保持部205までローダヘッド302Bを進入させればよく、ローダヘッド302Bの移動距離を短縮することができる。従って、マシンタイムの短縮及び生産性の向上が可能となる。
【0067】
樹脂載置工程の後に、ワークWを封止樹脂Rにより封止して成形品Wpに加工する樹脂封止工程を実施する。具体的に、封止金型202の型閉じを行い、キャビティ208内でキャビティ駒226を相対的に下降させて、ワークWに対して封止樹脂Rを加熱加圧する型閉じ工程を実施する。これにより、封止樹脂Rが熱硬化して樹脂封止(圧縮成形)が完了する(図15参照)。
【0068】
ここで、例えば、ストリップタイプのワイヤー接続された電子部品(半導体チップ)Wbが搭載されたワークW等に対して、上型にキャビティが設けられる従来の圧縮成形装置では、型閉じ工程の実施時に、下型に保持されるワークのワイヤー部分が予めキャビティに搬送した封止樹脂又はワーク上に搬送した封止樹脂と接触して変形してしまうため、樹脂封止が困難であるという課題があった。
【0069】
上記の課題に対して、本実施形態に係る圧縮成形装置1は、封止樹脂RとしてワークWの形状に対応させた所定形状に形成された固形樹脂を用いる構成を採用することにより、その解決を可能としている。
【0070】
具体的に、上記「所定形状」は、ワークWの基材Wa上に載置されたときに電子部品Wb(ワイヤーを有する電子部品Wbは、ワイヤーを含む)に当接しない形状である。一例として、図14に示すように、板状もしくはブロック状の本体部Raと、本体部Raの一方の面(ワークWの電子部品Wbと対向する側の面)に断続的(もしくは連続的)に立設された脚部Rbと、が設けられた形状の封止樹脂Rが好適である(但し、この形状に限定されるものではない)。本体部Raは、平面視でキャビティ208内に入る大きさであり、樹脂流動を考慮すると、キャビティ208の形状(特に、キャビティ駒226)より少し小さい大きさが好適である。また、脚部Rbは、電子部品Wbに当接しない高さH(図14A参照)が必要ではあるが、ワイヤーが塑性変形しない程度の接触を除外するものではない。また、脚部Rbは、本体部Raの平面視で電子部品Wbに当接しない位置で、ワークWの基材Wa上に載置されたときに本体部Raが傾かない位置に配置されている。さらに、成形時にワークWの配線(特に、ワイヤー)を少しでも損傷させないように電子部品Wb間又は電子部品Wbの外周位置に配置される構成が好適である。尚、板状もしくはブロック状の本体部Raと、脚部Rbの合計樹脂量は、一回の圧縮成形に不足しない程度に、過不足の無い樹脂量であってもよいし、多くの樹脂量であってもよい。封止樹脂Rの具体的な構成例(図17図20)の詳細については後述する。
【0071】
上記の構成によれば、型閉じ工程の実施過程において、図14Aから図14Bに移行するように、封止樹脂Rの軟化及び溶融が進む(尚、図14A図14B図13におけるXIV部の拡大図として示す)。このとき、全てのワイヤーに均一に樹脂(具体的には、本体部Ra)が当接する状態となる(図14B参照)。その結果、ワイヤー流れが抑制される効果が得られる。
【0072】
本願発明者が、実際に本実施形態に係る圧縮成形装置1を用いて実験を行ったところ、上型にワークが保持され、下型にキャビティが設けられ、当該キャビティに封止樹脂(具体的には、顆粒樹脂)が供給される方式の従来の圧縮成形装置と比較して、ワイヤー流れが抑制され、成形品質が向上する結果が確認できた。
【0073】
さらに、封止樹脂Rが固形樹脂であることによって、従来のように、顆粒樹脂に起因する巻きムラ、残留気体、成形時の粉塵が発生するという課題や、ハンドリングが難しいという課題の解決を図ることもできる。また、厚さ寸法が1mmを超えるような厚い成形品を形成する場合にも、成形品WpへのフィルムFの噛み込みを防止することができる。
【0074】
尚、上記の型閉じ工程に続く後の工程は、従来の圧縮成形方法と同様である。概略として、封止金型202の型開きを行い、成形品Wpと使用済みのフィルムFとを分離する型開き工程を実施する(図16参照)。次いで、第2ローダ304によって、成形品Wpを封止金型202内から搬出し、収納ユニット100Dへ搬出する成形品搬出工程を実施する。さらに、成形品搬出工程の後に、もしく並行して、フィルム供給機構211を作動させて、使用済みのフィルムFを封止金型202内から送り出し、新しいフィルムFを封止金型202内へ送り込んでセットするフィルム供給工程を実施する。
【0075】
以上が圧縮成形装置1を用いて行う圧縮成形方法の主要工程である。但し、上記の工程順は一例であって、支障がない限り先後順の変更や並行実施が可能である。
【0076】
(封止樹脂)
続いて、上記の圧縮成形装置1による圧縮成形方法に用いられる封止樹脂Rの具体的な構成例を図17図20に示すと共に、それぞれの特徴について説明する。
【0077】
先ず、図17図20に示す各例に共通する構成として、本体部Raは、板状に形成されている(尚、板状以外の形状、例えば、凹部や凸部等を有するブロック状等としてもよい)。また、脚部Rbは、当該封止樹脂Rが、ワークWの基材Wa上の所定位置(設計上の設定位置)に載置されたときに、ワークWの電子部品Wbに当接しない位置となるように本体部Raに立設され、本体部Raが電子部品Wbに当接しない距離が確保できる高さH(図14A参照)に形成されている。
【0078】
図17に示す封止樹脂Rの例では、脚部Rbは、全部(もしくは一部としてもよい)が点状に配置される先細の凸状体Rb1として形成されている。凸状体Rb1の例として、複数の位置に配設され、平面視で幅W1に対する長さL1の比tが、一例として0.5≦t≦2となる形状に形成されている。これによれば、脚部Rbが点状に配設される柱状である構成によって、ワークW上に載置される封止樹脂Rが圧縮成形時に流動することを抑制できる。従って、ワイヤー流れ等を防止でき、成形品質を向上させることができる。
【0079】
図18に示す封止樹脂Rの例では、脚部Rbは、一部(もしくは全部としてもよい)が線状に配置される凸状体Rb2として形成されている。凸状体Rb2の例として、一つの位置(もしくは複数の位置としてもよい)に配設され、平面視で幅W2に対する長さL2の比tが、一例としてt<0.5又は2<tとなる形状に形成されている。これによれば、所定長さの堤状の構成を有する脚部Rb(この場合、凸状体Rb2)から樹脂流動を意図的に発生させて、ワークWにおける狭隘部(例えば、フリップチップ接続された基材Waと電子部品Wbとの間等)への封止樹脂Rの充填を促進することができる。従って、成形品Wpに気体が残留することを防止でき、成形品質を向上させることができる。
【0080】
図19に示す封止樹脂Rの例では、脚部Rbは、本体部Raの外周(外縁領域を指す)全域(全周)にわたって断続的(もしくは連続的としてもよい)に囲うように配置される凸状体Rb3として形成されている。凸状体Rb3の例として、上記Rb2と同様構成の凸状体が、所定間隔で隙間L3を設けつつ、周状をなすように連なって形成されている。一般的に、成形品Wpにおける封止樹脂Rの外周位置は、個片化される際にダイサー等によって切断される位置であり、電子部品Wbが存在しないため、中央位置と比較して封止するための樹脂量を多く必要とする。そのため、この構成のように、外周全域にわたって囲うように配置される脚部Rb(この場合、凸状体Rb3)を設けておくことによって、圧縮成形時の樹脂流動を抑制しつつ、外周位置に多くの樹脂を供給することが可能となる。さらに、隙間L3が設けられることによって、内部(中央部)から外部への空気等の気体成分の排出が促進される。
【0081】
一方、図20に示す封止樹脂Rの例は、本体部Raの他方の面(脚部Rbが設けられない側の面、すなわちワークWの電子部品Wbと対向しない側の面)に関する構成例である。具体的に、本体部Raは、他方の面において、個片化するためのダイシングが行われる位置に、線状の溝部Rgが形成されている。これによれば、ダイシング刃の摩耗の低減と、ダイシング時に発生する粉塵の低減とを図ることができる。一例として、溝部Rgはダイシング位置に一致させて格子状に設けられているが、これに限定されるものではない。
【0082】
以上、説明した通り、本発明によれば、圧縮成形装置のコンパクト化が可能で、また、封止金型のメンテナンス性の向上が可能で、また、マシンタイムの短縮及び生産性の向上が可能である。
【0083】
また、図17図19に例示される脚部Rbを有する形状の封止樹脂Rを用いた圧縮成形を行うことが可能となるため、以下の効果を得ることができる。具体的に、封止樹脂の流動、巻きムラ、残留気体に起因する成形不良の発生を防止することができる。また、封止樹脂のハンドリングを容易化することができると共に、成形時の封止樹脂による粉塵の発生を防止することができる。また、薄い成形品(厚さ寸法が1mm未満)はもちろん、厚い成形品(厚さ寸法が1mm以上)を形成することができる。尚、厚さ寸法の上限は、各種設定条件によるものの、10mm程度まで十分形成可能であると考えられる。また、上型にキャビティが設けられる構成に適用することによって、下型にキャビティが設けられる構成において、ワークが薄い場合や大型の場合に上型での保持が難しく落下が生じ易いという課題の解決を図ることができる。
【0084】
尚、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 圧縮成形装置
202 封止金型
204 上型
205 ワーク保持部
206 下型
208 キャビティ
250 プレス装置
302 搬送装置(第1ローダ)
302A ローダ本体部
302B ローダヘッド
304 搬送装置(第2ローダ)
312 ワークハンド
314 第1保持部(チャック)
322 樹脂ハンド
324 第2保持部(吸着機構)
F リリースフィルム
R 封止樹脂
W ワーク
Wa 基材
Wb 電子部品
Wp 成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21