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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171511
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】アイウエア及びモダン芯
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/20 20060101AFI20241205BHJP
   G02C 5/16 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
G02C5/20
G02C5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088556
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】506159699
【氏名又は名称】株式会社ジンズホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】二見 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】浅田 敬一
(57)【要約】
【課題】形状記憶樹脂を用いるアイウエアにおいて、モダン部分のフィッティングを使用者が行うことを容易にしつつ、製造コストを削減したアイウエアを提供する。
【解決手段】フロントと、フロントの両端に配置される一対のヨロイと、一対のヨロイそれぞれに連結される一対のテンプルと、一対のテンプルの長手方向に延伸して連結される直線状の一対のモダンであって、形状記憶樹脂で形成される長手方向に沿う直線状のモダン芯を含む、一対のモダンと、を含むアイウエア。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントと、
前記フロントの両端に配置される一対のヨロイと、
前記一対のヨロイそれぞれに連結される一対のテンプルと、
前記一対のテンプルの長手方向に延伸して連結される直線状の一対のモダンであって、形状記憶樹脂で形成される前記長手方向に沿う直線状のモダン芯を含む、前記一対のモダンと、
を含むアイウエア。
【請求項2】
前記モダン芯のガラス転移温度は、人肌の温度より高い温度に基づき設定される第1温度と、前記第1温度よりも高い第2温度との範囲内に含まれる、請求項1に記載のアイウエア。
【請求項3】
前記第1温度は約55度であり、前記第2温度は約100度である、請求項2に記載のアイウエア。
【請求項4】
前記第1温度は約65度であり、前記第2温度は約75度である、請求項3に記載のアイウエア。
【請求項5】
前記モダン芯のガラス転移温度は約75度である、請求項4に記載のアイウエア。
【請求項6】
前記モダン芯は、押出成形により製造される、請求項1から5のいずれか一項に記載のアイウエア。
【請求項7】
前記モダン芯は、第1の温度範囲内のガラス転移温度を有する第1の部位と、第2の温度範囲内のガラス転移温度を有する第2の部位とを含む、請求項1に記載のアイウエア。
【請求項8】
前記モダンを湯に浸す際の位置を示す指標が前記テンプル又はモダンに付与される、請求項1から5のいずれか一項に記載のアイウエア。
【請求項9】
前記モダンは、前記モダン芯が閾値以上の温度になったことを識別可能に構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のアイウエア。
【請求項10】
アイウエアに含まれるテンプルの長手方向に延伸して連結されるモダンに含まれる、形状記憶樹脂で形成される直線状のモダン芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイウエア及びモダン芯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形状記憶樹脂をテンプルに用いるアイウエア(例えば特許文献1)、形状記憶樹脂を使用した耳当て部を有するアイウエア(例えば特許文献2)、芯金部を有する金属製テンプルを挿入する先セルに形状記憶樹脂を用いるアイウエア(例えば特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1-157316号公報
【特許文献2】特開平8-15654号公報
【特許文献3】特開2003-43426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1乃至3における形状記憶樹脂を用いるアイウエアでは、比較的高価な形状記憶樹脂を用いて所定の形状のモダン部分を含むテンプル全体を製造したり、モダン部分を覆う部材を製造したりしているため、アイウエアの製造コストが増加してしまっていた。また、特許文献1では眼鏡店等で調整することなく一般の使用者(アイウエアの装用者)が自らフィッティングできるアイウエアを開示しているが、形状記憶の初期状態でテンプルの先のモダン部分が所定角度に折り曲げられている。一般に販売される眼鏡も、モダン部分が所定角度に折り曲げられているケースが多いため、顔の大きさ、形状、耳形状などが異なる各使用者にとって、既に所定角度に折り曲げられているモダン部分を自らの手で自身にフィッティングさせることは必ずしも容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、形状記憶樹脂を用いるアイウエアにおいて、モダン部分のフィッティングを使用者が行うことを容易にしつつ、製造コストを削減したアイウエアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様におけるアイウエアは、フロントと、前記フロントの両端に配置される一対のヨロイと、前記一対のヨロイそれぞれに連結される一対のテンプルと、前記一対のテンプルの長手方向に延伸して連結される直線状の一対のモダンであって、形状記憶樹脂で形成される前記長手方向に沿う直線状のモダン芯を含む、前記一対のモダンと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モダン部分のフィッティングを使用者が行うことを容易にしつつ、製造コストを削減したアイウエアを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るメガネ100の前方からの一例を示す斜視図である。
図2】押出成形によるモダン芯Aの一例を示す図である。
図3】射出成形によるモダン芯Bの一例を示す図である。
図4】ガラス転移温度65℃のモダン芯A、Bに対し、初期状態、90℃5分保管後、90℃15分保管後の変形状態を確認するための図である。
図5】ガラス転移温度75℃のモダン芯A、Bに対し、初期状態、90℃5分保管後、90℃15分保管後の変形状態を確認するための図である。
図6】30度に折り曲げられたモダン芯の一例を示す図である。
図7】実験Aにおける各モダン芯の曲げ戻りの角度確認の結果を示す図である。
図8】実験Aにおける曲げ戻りの目視確認をした各モダン芯を示す図である。
図9】実験Bにおける各モダン芯の曲げ戻りの角度確認の結果を示す図である。
図10】実験Bにおける曲げ戻りの目視確認をした各モダン芯を示す図である。
図11】実験Cにおける各モダン芯の曲げ戻りの角度確認の結果を示す図である。
図12】実験Cにおける曲げ戻りの目視確認をした各モダン芯を示す図である。
図13】ガラス転移温度75℃のモダン芯A、Bに対し、70℃24時間の熱負荷を与えた実験結果を示す図である。
図14】メガネのモダン部分の変形前後の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0010】
[実施形態]
<アイウエア>
図1は、実施形態に係るメガネ100の前方からの一例を示す斜視図である。図1に示すように、メガネ100は、アイウエアの一例であり、一対の視力矯正用のレンズ110と、フレーム120とを備えている。なお、本実施形態では、レンズ110を一対のものとして説明するが、必ずしも一対である必要はない。また、本実施形態では、レンズ110をメガネ100の構成として説明するが、レンズ110自体は、必ずしもメガネ100に必要な構成ではない。また、本発明のアイウエアとしては、視力矯正メガネ以外にサングラスや防護メガネなどがある。
【0011】
フレーム120は、例えば、フロント140と、フロント140の左右側の両端に回転可能に連結されている一対のテンプル180と、一対のテンプル180の後方側に取り付けられている一対のモダン160とを備えている。一対のモダン160それぞれには、モダン芯170が含まれる。また、フレーム120は、一対のレンズ110を保持するとともに、使用者の目および頭部に対してレンズ110およびフロント140を適切な姿勢に保持する。
【0012】
フロント140は、一対のレンズ110を支持する。テンプル180は、モダン160とともに使用者の側頭部を押圧して、この部位を挟持する。モダン160内部に含まれるモダン芯170は、形状記憶樹脂で形成されており、製造時点において、テンプル180の長手方向に沿う直線状に形成される。
【0013】
また、本開示技術のモダン160部分の折り曲げ方法として、例えば、モダン160が湯に浸された後に、形状記憶樹脂のモダン芯170が、使用者の顔や耳の形状にフィッティングするように使用者等により折り曲げられる。これにより、使用者の耳の上部および後方にフィットして接触するため、メガネ100の落下を適切に防止する。
【0014】
以下の説明では、便宜上のために、図1に示すフロント140の長手方向を「左右方向」とする。また、メガネ100が着用される際に、使用者から見た左側を「左側」とし、使用者から見た右側を「右側」とする。さらに、フロント140の短手方向を「上下方向」とし、頭の上方向を「上方」とし、頭の下方向を「下方」とする。また、フロント140の厚み方向を「前後方向」とし、フロント140側を「前方」とし、モダン160側を「後方」する。
【0015】
なお、本実施形態が適用されるメガネ100は、眉間部(ブリッジ)142を中心として左右対称に形成されている。このため、以下の説明では、左右対称の構成について左右を区別せず、図面の何れかの一方側にある構成にのみ符号を付して説明する。
【0016】
フロント140は、例えば、左右方向に沿って伸びる板状構成であり、使用者の顔面に沿うように前方に突出するように湾曲している。また、フロント140は、中央にある眉間部142と、眉間部142の裏面の左右両側に取り付けられている一対のノーズパッド144と、眉間部142の左右両端に形成されている一対のリム146と、一対のリム146の各端部に形成、配置されている一対のヨロイ147と、一対のヨロイ147の裏面に取り付けられている一対の第1丁番部分(不図示)とを有している。
【0017】
眉間部142は、フロント140(メガネ100)の左部分および右部分を繋ぐ。また、眉間部142は、例えば、湾曲した板状部材であり、樹脂等によって形成されてもよい。
【0018】
ノーズパッド144は、使用者の鼻を両脇から挟むことでフロント140を支持し、このフロント140の使用者の目に対する高さ等を維持する。また、ノーズパッド144は、例えば、樹脂のパッド部および金属の支持部を有するクリングスタイプである。なお、パッド部および支持部の変形によって、フロント140が使用者の鼻および目に対する姿勢(例えば、角膜頂点間距離)を微調整することが可能になる。
【0019】
リム146は、レンズ110を保持する。また、リム146は、例えば、レンズ110の形状を沿うように形成されているリング状部材であり、樹脂等によって形成されている。
【0020】
ヨロイ147には、第1丁番部分(不図示)が形成されている。また、ヨロイ147は、例えば、湾曲した板状部材であり、樹脂等によって形成されている。
【0021】
第1丁番部分は、連結部の一例として機能し、テンプル180側に形成されている板状形状を有する第2丁番部分(不図示)と組み合わせることで、テンプル180をフロント140に対して回転可能に連結している。すなわち、第1丁番部分と第2丁番部分とは、丁番を構成している。
【0022】
テンプル180は、略直線状かもしくは側頭部にフィットするようにやや湾曲している部材である。また、テンプル180は、フロント140と挟む角度が最も小さい折畳位置からこのフロント140と挟む角度が最も大きい開き位置までの範囲において回転可能に連結されている。
【0023】
モダン160は、テンプル180の長手方向に延伸して連結される直線状の形状をしている。モダン160は、形状記憶樹脂で形成される前記長手方向に沿う直線状のモダン芯170をその内部に含む。モダン160は、円筒状の弾性部材、例えばエラストマーで形成され、耐水性及び耐熱性を有するとよい。モダン芯170はモダン160内部の筒状の空洞に挿入されてもよく、モダン160の弾性部材がモダン芯170を被覆してもよい。
【0024】
モダン芯170は、例えば、熱可塑性ポリウレタンを主成分とする形状記憶樹脂で、ガラス転移温度(Tg)以上の熱をかけてゴム状態で変形させた後(例、湯に所定時間浸して取り出して変形させた後)、冷却することで変形後の形状を維持するものであり、再度熱をかけると元の形状に戻る性質を持つ。
【0025】
ところで樹脂製品では、一般に成形加工時に成形品内部に残るひずみ、いわゆる残留応力に起因した経時的な変形(劣化)が知られている。また、形状記憶樹脂には様々なガラス転移温度のものが存在するが、メガネ100を使用するうちにモダン芯170の曲げ戻りが生じて掛け心地が悪くならないよう、モダン160がフィッティングされた状態を維持するために適切なガラス転移温度の範囲を探索する必要がある。
【0026】
そこで、本開示技術のモダン芯170に関し、発明者らは以下の実験を行った。まず、モダン芯170の製造方法について、押出成形によるモダン芯と、射出成形によるモダン芯とについて様々な比較を行った。
【0027】
図2は、押出成形によるモダン芯Aの一例を示す図である。図2に示すモダン芯Aは、例えば、横2mm×縦3mm×長さ65mmの四角柱形状を目標形状として製造される。
【0028】
図3は、射出成形によるモダン芯Bの一例を示す図である。図3に示すモダン芯Bは、例えば、一端が横2mm×縦3mm、他端が横1.6mm×縦2.6mmの長さ65mmの四角柱形状として製造される。
【0029】
なお、図2に示す押出成形によるモダン芯A、及び図3に示す射出成形によるモダン芯Bは、目標形状としては同じものが製造されるようにするが、それぞれの実測値は若干の誤差を含み得る。モダン芯Bの両端の形状が相違するのは、射出成形において金型からモダン芯Bを抜く際の勾配によるものであり、可能な限りモダン芯Aと近似した形状とすることが望ましい。モダン芯A及びBの材料として、本実験では、株式会社SMPテクノロジーズの「SMP」(Shape Memory Polymer)が使用された。
【0030】
(熱負荷実験)
本実験では、製品使用時にモダン芯170が所定時間温められた後に曲げられる作業が複数回行われることを想定し、疑似的に経時変化を観察するため、熱負荷をかけた際の、成形品それ自体の変形の有無の確認が行われた。具体的には、ガラス転移温度65℃、75℃それぞれのモダン芯A及びBに対し、90℃の恒温機に一定時間保管し、変化が目視確認された。90℃は、モダン160(モダン芯170)を湯につけて変形させることを前提として、家庭用電気ポットによって温められた湯の一般的な温度を想定したものである。
【0031】
図4は、ガラス転移温度65℃のモダン芯A、Bに対し、初期状態、90℃5分保管後、90℃15分保管後の変形状態を確認するための図である。5分、15分の各保管時間は、製品の使用状況として、90℃の温度に15秒~45秒モダン部分を浸してフィッティングする(折り曲げる)作業を20回程度繰り返すことを想定し、15秒×20回÷60秒=5分と、45秒×20回÷60秒=15分との計算から設定した。
【0032】
図4に示す例において、ガラス転移温度65℃のモダン芯A(押出成形品)は、製造後の初期状態と比較して、90℃5分保管後、90℃15分保管後であってもほぼ変形していない。保管時間が長くなるにつれて、モダン芯Aの長さが若干短くなるが、実用化のレベルでは問題ない。
【0033】
図4に示す例において、ガラス転移温度65℃のモダン芯B(射出成形品)は、製造後の状態と比較して、90℃5分後、90℃15分後では、その長さが収縮し、約半分になってしまう。また、熱負荷を与えたモダン芯Bは、形状においても、直線状のものから、端部が若干反り返るなどの変形が見られる。
【0034】
ガラス転移温度65℃のモダン芯Bが、収縮したり、変形したりする理由として、射出成形では残留応力が残りやすいからであると考えられる。射出成形では、金型に形状記憶樹脂の材料を流し込み、冷却・固化させる過程で樹脂に不均一な圧力がかかるため、成形後のモダン芯Bに残留応力が残っていると考えられる。したがって、射出成形のモダン芯Bは、この残留応力により、熱負荷後に、収縮したり変形したりしたものと考えられる。
【0035】
他方、モダン芯Aがほとんど変形しない理由は、押出成形は射出成形のように金型内部の樹脂に圧力をかけて冷却・固化させる工程が無いため、成形された時点で樹脂内部に残留応力が残りにくいからであると考えられる。
【0036】
図5は、ガラス転移温度75℃のモダン芯A及びBに対し、初期状態、90℃5分保管後、90℃15分保管後の変形状態を確認するための図である。図5に示す例において、ガラス転移温度75℃のモダン芯A(押出成形品)は、製造後の初期状態と比較して、90℃5分保管後、90℃15分保管後であってもほぼ変形していない。保管時間が長くなるにつれて、モダン芯Aの長さが若干短くなるが、ガラス転移温度65℃のモダン芯Aよりも収縮幅は小さい。
【0037】
図5に示す例において、ガラス転移温度75℃のモダン芯B(射出成形品)は、製造後の状態と比較して、90℃5分後、90℃15分後では、ガラス転移温度65℃のモダン芯Bと同様に、その長さが収縮し、端部が若干反り返るなどの変形が見られる。
【0038】
以上の熱負荷実験の結果から、射出成形品のモダン芯Bは、ガラス転移温度65℃及び75℃のいずれのモダン芯であっても、熱負荷の条件によっては初期状態から収縮したり変形したりするため、必ずしも実用化には適していない可能性がある。他方、押出成形品のモダン芯Aは、ガラス転移温度65℃及び75℃のいずれにおいても、射出成形品のモダン芯Bよりも耐変形性能に優れており、熱負荷後においても多少収縮する程度であり実用化において問題はない。なお、ガラス転移温度75℃のモダン芯Aの方が、ガラス転移温度65℃のモダン芯Aよりも収縮幅が小さいため、より実用化に適していると言える。
【0039】
(30度折り曲げ戻り実験)
本実験では、適切なガラス転移温度の範囲を探索するため、熱をかけた状態で折り曲げられた後に冷却されて、折り曲げられた状態が維持されたモダン芯170について、想定温度の熱負荷(体温や真夏の気温など)によって、元の形状に戻ろうとする曲げ戻りが生じるか否かを確認する実験を行った。実験に使用されるモダン芯は押出成形により製造されたものであり、熱処理後に所定器具を用いてモダン芯の約中心位置から30度折り曲げられる。30度折り曲げる理由は、一般的に販売されているアイウエアのモダンは、テンプルの長手方向を基準に約30~35度折り曲げられるからである。
【0040】
図6は、30度に折り曲げられたモダン芯の一例を示す図である。実験に使用されたモダン芯は、図6に示すように30度に折り曲げられ、そのガラス転移温度が、45℃、55℃、65℃、及び75℃のものである。
【0041】
上述した各ガラス転移温度について、それぞれ2つのモダン芯を用意し、各モダン芯に対して、以下の実験条件で曲げ戻り実験が行われた。
実験A:各モダン芯に対して40℃8時間の恒温機による保管前後で、目視、角度計測による曲げ戻り確認
実験B:各モダン芯に対して40℃24時間の恒温機による保管前後で、目視、角度計測による曲げ戻り確認
実験C:各モダン芯に対して36℃8時間の恒温機による保管後、一度恒温機から取り出し、目視、角度計測による曲げ戻り確認をした後に恒温機に戻し、さらに16時間の恒温機による保管をした後(すなわち合計24時間保管後)、目視、角度計測による曲げ戻り確認
なお、保管時間のうち8時間は1日の一般的な使用時間に対応し、24時間は1日中使用した場合の使用時間に対応する。また、保管温度のうち36℃は人肌、40℃は真夏の気温に対応する。なお、実験A乃至Cで使用した各モダン芯は、それぞれの実験ごとに用意した異なる成形品である。
【0042】
図7は、実験Aにおける各モダン芯の曲げ戻りの角度確認の結果を示す図である。図7に示す例によれば、ガラス転移温度45℃の2つのモダン芯(Tg45℃品i及びii)において、恒温機による保管後はそれぞれ13度、14度であり、曲げ戻りが生じている。恒温機の40℃に対してガラス転移温度が45℃であり、その差が5℃しかないため、曲げ戻りが生じてしまったと言える。
【0043】
また、ガラス転移温度55℃の2つのモダン芯(Tg55℃品i及びii)において、恒温機による保管後はそれぞれ23度、25度であり、若干の曲げ戻りが生じている。恒温機の40℃に対してガラス転移温度は55℃であり、その差が15℃あるが、若干の曲げ戻りが生じてしまっている。
【0044】
図7に示す例によれば、ガラス転移温度65℃及び75℃それぞれの2つのモダン芯(Tg65℃品i及びii、Tg75℃品i及びii)において、恒温機による保管後はそれぞれ30度であり、曲げ戻りは生じていない。これは、実験温度の40℃に対して、ガラス転移温度65℃及び75℃は十分に高いため(その差が25℃以上)、曲げ戻りが生じなかったと言える。
【0045】
図8は、実験Aにおいて曲げ戻りの目視確認をした各モダン芯を示す図である。図8に示すガラス転移温度45℃の2つのモダン芯は、いずれも初期状態(直線状)に近い状態に曲げ戻りが生じている。保管後の各モダン芯の曲げ角度は、図7に示す結果によれば13度及び14度である。
【0046】
図8に示すガラス転移温度55℃の2つのモダン芯は、いずれも若干の曲げ戻りが生じている。保管後の各モダン芯の曲げ角度は、図7に示す結果によれば23度及び25度である。図8に示すように、目視においても若干の曲げ戻りが確認される。
【0047】
図8に示すガラス転移温度65℃及び75℃それぞれの2つのモダン芯は、目視においても曲げ戻りが生じていない。したがって、この実験により、熱負荷の想定温度とガラス転移温度との差が15℃であれば曲げ戻りが生じ、その差が25℃であれば曲げ戻りが生じていないことから、その差が20℃程度あれば、曲げ戻りは生じない可能性が高い。上記考察により、想定温度よりも20℃以上高いガラス転移温度を有するモダン芯は、本開示の技術のモダン芯に適している。なお、想定温度は、アイウエアの通常使用時に、アイウエアに対する熱負荷として想定される温度をいう。
【0048】
図9は、実験Bにおける各モダン芯の曲げ戻りの角度確認の結果を示す図である。図9に示す例によれば、ガラス転移温度45℃の2つのモダン芯において、恒温機による保管後はそれぞれ5度、9度であり、曲げ戻りが生じている。図7に示す結果と図9に示す結果を比較すると、保管時間が長くなれば、線形的に曲げ戻りが生じるのではないことが分かる。図7に示す結果によれば8時間で16.5度(曲げ戻り角(17+16)/2)、すなわち50%強戻り、図9に示す結果によれば24時間で23度(曲げ戻り角(25+21)/2)、すなわち約77%戻っている。
【0049】
また、図9に示す例によれば、ガラス転移温度55℃の2つのモダン芯において、恒温機による保管後はそれぞれ22度、20度であり、図7に示す結果と比べてさらに曲げ戻りが生じている。しかし、ガラス転移温度45℃のモダン芯と同様に、保管時間が長くなれば、線形的に曲げ戻りが生じるのではない。図7に示す結果によれば8時間で6度(曲げ戻り角(7+5)/2)、すなわち20%戻り、図9に示す結果によれば24時間で9度(曲げ戻り角(8+10)/2)、すなわち30%戻っている。以上のことから、熱負荷による曲げ戻りは、熱負荷をかけた時間のうち初期の時間帯で大きく戻り、その後は少しずつ戻っていく、といった傾向を示すことが分かる。
【0050】
また、図9に示す例によれば、ガラス転移温度65℃及び75℃それぞれの2つのモダン芯において、恒温機による保管後はそれぞれ30度であり、曲げ戻りは全く生じていない。これは、保管時間が長くなったとしても、実験温度の40℃に対して、ガラス転移温度65℃及び75℃は十分に高いため(その差が25℃以上)、曲げ戻りが生じなかったと言える。
【0051】
図10は、実験Bにおいて曲げ戻りの目視確認をした各モダン芯を示す図である。図10に示すガラス転移温度45℃の2つのモダン芯は、いずれもほぼ初期状態(直線状)に近い状態に曲げ戻りが生じている。保管後の各モダン芯の曲げ角度は、図9に示す結果によれば5度及び9度である。
【0052】
図10に示すガラス転移温度55℃の2つのモダン芯は、いずれも曲げ戻りが生じている。保管後の各モダン芯の曲げ角度は、図9に示す結果によれば22度及び20度である。図10に示すように、目視においても曲げ戻りが確認される。
【0053】
図10に示すガラス転移温度65℃及び75℃それぞれの2つのモダン芯は、目視においても曲げ戻りが生じていない。実験A及びBを踏まえると、上記考察のとおり、想定温度より少なくとも20℃以上のガラス転移温度を有するモダン芯であれば、保管時間に関係なく曲げ戻りは生じないと言え、本開示の技術のモダン芯に適している。
【0054】
図11は、実験Cにおける各モダン芯の曲げ戻りの角度確認の結果を示す図である。図11に示す例によれば、ガラス転移温度45℃の2つのモダン芯において、恒温機による8時間、24時間の保管後はそれぞれ17度、14度、及び14度、11度であり、曲げ戻りが生じている。恒温機の36℃に対してガラス転移温度が45℃であり、その差が約10℃であるため、曲げ戻りが生じてしまったと言える。
【0055】
また、図11に示す例によれば、ガラス転移温度55℃の2つのモダン芯において、恒温機による8時間、24時間の保管後はそれぞれ30度及び29度であり、ほとんど曲げ戻りが生じていない。これは、恒温機の36℃に対してガラス転移温度は55℃であり、その差が約20℃あるため、曲げ戻りが生じていないと考えられる。この点、上記考察とも整合する。
【0056】
図11に示す例によれば、ガラス転移温度65℃及び75℃それぞれの2つのモダン芯において、恒温機による8時間、24時間の保管後はそれぞれ30度であり、曲げ戻りは生じていない。これは、実験温度の36℃に対して、ガラス転移温度65℃及び75℃は十分に高いため(その差が約30℃以上)、曲げ戻りが生じなかったと言える。
【0057】
図12は、実験Cにおいて曲げ戻りの目視確認をした各モダン芯を示す図である。図12に示すガラス転移温度45℃の2つのモダン芯は、熱負荷が36℃であっても、いずれも曲げ戻りが生じている。
【0058】
図12に示すガラス転移温度55℃の2つのモダン芯は、いずれもほぼ曲げ戻りが生じていない。アイウエアの通常使用において最も恒常的に与えられる熱負荷は人肌の36℃であると考えられるので、36℃を想定温度とした場合、ガラス転移温度55℃のモダン芯は、本開示技術のモダン芯に適している。
【0059】
図12に示すガラス転移温度65℃及び75℃それぞれの2つのモダン芯は、目視においても曲げ戻りが生じていない。この実験により、想定温度36℃に対し、ガラス転移温度55℃、65℃、75℃のモダン芯は曲げ戻りが生じていないことから、少なくとも約20℃以上のガラス転移温度を有するモダン芯が、本開示技術のモダン芯に適している。
【0060】
<実施例>
上記熱負荷実験及び30度折り曲げ戻り実験の結果によれば、以下のモダン芯170が本開示技術に好適であると言える。まず、熱負荷試験により、射出成形のモダン芯Bよりも押出成形のモダン芯Aの方が、耐変形性能が高いため、本開示のモダン芯は押出成形により製造されるとよい。
【0061】
また、30度折り曲げ戻り実験の実験A乃至Cの結果によれば、熱負荷の想定温度に応じてモダン芯170のガラス転移温度が決定されればよい。例えば、モダン芯170のガラス転移温度は、人肌の温度より高い温度に基づき設定される第1温度と、第1温度よりも高い第2温度との範囲内に含まれるとよい。これにより、モダン芯170のガラス転移温度について明確な基準を持って、実装品のガラス転移温度を決定することが可能となる。
【0062】
また、モダン芯170の第1温度は約55℃であり、第2温度は約100℃であってもよい。例えば、図11に示す実験Cのガラス転移温度55℃のモダン芯では、想定温度36℃において、曲げ戻りがほぼ生じていない。したがって、ガラス転移温度の下限値としての55℃は、熱負荷の想定温度によっては採用してもよい温度である。また、上限値の100℃は、一般家庭でモダン160(モダン芯170)を湯につけて変形させることを想定した場合に、湯として利用し得る温度の上限値である。
【0063】
また、モダン芯170の第1温度は約65℃であり、第2温度は約75℃であってもよい。例えば、図7及び図9に示す実験A及びBの結果により、熱負荷の想定温度が40℃であっても、ガラス転移温度が少なくとも65℃以上であれば曲げ戻りは生じない。また、モダン芯170のガラス転移温度が75℃以下とすることで、不必要な高温のお湯などを準備する必要がない。
【0064】
また、モダン芯170のガラス転移温度は約75℃としてもよい。近年の気温上昇等を考慮して熱負荷の想定温度を50℃にした場合、ガラス転移温度が65℃であるとその差が15℃となり、図7及び図9に示す実験A及びB(想定温度40℃、ガラス転移温度55℃品の差が15℃)の結果によれば、曲げ戻りが生じてしまう可能性がある。しかし、ガラス転移温度が75℃であれば、その差は25℃となり、図7及び図9に示す実験A及びB(想定温度40℃、ガラス転移温度65℃品の差が25℃)の結果によれば、曲げ戻りは生じない。また、想定温度とガラス転移温度との差は少なくとも20℃以上あればよいため、想定温度が50℃の場合、ガラス転移温度が70℃の形状記憶樹脂が用いられてもよい。
【0065】
また、モダン芯170のガラス転移温度の上限値は約90℃であってもよい。約90℃は、例えば家庭用の電気ポットや電気ケトルで準備可能な湯の温度である。したがって、ガラス転移温度の各下限値に対して上限値が約90℃を有する形状記憶樹脂が用いられてもよい。
【0066】
また、モダン芯170のガラス転移温度は、例えば、約80℃、約85℃などでもよい。熱負荷の想定温度に応じて、モダン芯170のガラス転移温度が設定されればよい。
【0067】
また、実験Cの想定温度36℃とガラス転移温度55℃との関係から、想定温度とガラス転移温度との差が20℃程度あれば、曲げ戻りは生じにくいと考えられる。してみると、実験A及びBのように想定温度が40℃の場合、ガラス転移温度が約60℃の形状記憶樹脂が用いられてもよい。例えば、ガラス転移温度の下限値が約60℃であり、上限値が約75、80、85、90℃又は100℃である温度範囲内の形状記憶樹脂が用いられてもよい。
【0068】
図13は、ガラス転移温度75℃のモダン芯A及びBに対する70℃、24時間の熱負荷を与える実験の結果を示す図である。図13に示す例では、押出成形のモダン芯Aと、射出成形のモダン芯Bとにおいて、この熱負荷処理前後のモダン芯が示される。図13に示すように、射出成形のモダン芯Bは残留応力による反りが見られるが、押出成形のモダン芯Aは、大きな変形は見られない。
【0069】
ここで、アニール処理(アニーリング)とは、熱を加えることによって樹脂製品(樹脂成形品や樹脂材料)の残留応力を取り除き、寸法精度を安定させたり、樹脂の歪みなどの変形や割れを防いだりする熱処理のことを表す。アニール処理では、高温(本開示技術の形状記憶樹脂を含む結晶性樹脂ではガラス転移温度より10℃~30℃高いのが一般的)で所定時間(例えば8時間)の熱負荷により残留応力を取り除くため、図13に示す条件とアニール処理の条件とは異なるが、残留応力を取り除くという意味においては同様である。図13に示すガラス転移温度未満の熱負荷条件においても、射出成形のモダン芯Bは長時間の熱負荷がかかることにより大きく変形しており、製品化に際して残留応力を取り除くことが困難であると考えられる。これに対し、熱負荷処理後のモダン芯Aについては大きな変形は見られず、前述の図4及び5の結果も踏まえれば、モダン芯Aは一般的なアニール処理により残留応力を取り除くことができると考えられ、アニール処理後のモダン芯Aは、本開示技術のモダン芯により適していると言える。
【0070】
また、モダン芯170は、第1の温度範囲内のガラス転移温度を有する第1の部位と、第2の温度範囲内のガラス転移温度を有する第2の部位とを含んでもよい。例えば、モダン芯170の長さ方向に対して、耳当てとして曲げられる中央を含む所定部位を、第1の温度範囲内の第1のガラス転移温度の形状記憶樹脂で形成し、所定部位以外の部位を第2の温度範囲内の第2のガラス転移温度の形状記憶樹脂で形成するとよい。また、第1の温度範囲の平均温度は、第2の温度範囲の平均温度よりも低く、第1のガラス転移温度<第2のガラス転移温度の関係が満たされてもよい。
【0071】
これにより、モダン芯170に対し、曲げたい場所と曲げたくない場所とを設けるなどのアレンジが可能になる。例えば、耳に掛ける部位のみを曲げたい場合は、第1のガラス転移温度以上第2のガラス転移温度未満の温度の湯にモダン160部分を浸し、モダン芯170全体を曲げて耳にフィットさせたい場合は、第2のガラス転移温度以上の湯にモダン160を浸してモダン芯170を自由に曲げることなどができる。なお、モダン芯170内の異なるガラス転移温度は2つではなく、3つ以上でもよい。
【0072】
また、モダン160を湯に浸す際の位置を示す指標がテンプル180又はモダン160に付与されてもよい。例えば、テンプル180又はモダン160の外皮に、モダン160の先端(フロント140の反対側の端部)から湯に浸す場合に、どこまで浸せばよいかの指標をつける。指標は、例えば、線、マーク、色、模様など、使用者が識別できるものであればいずれの指標でもよい。これにより、使用者はどこまで湯に浸すのかを容易に把握することができるようになる。
【0073】
また、モダン160は、モダン芯170が閾値以上の温度になったことを識別可能に構成されてもよい。例えば、モダン160の外皮に対し、モダン芯170のガラス転移温度以上で色が変わるサーモクロミック塗料を塗布したり、ガラス転移温度以上で色が変わるサーモテープを貼ったりすればよい。これにより、使用者は湯に浸した後、どのタイミングでモダン160部分を曲げ始めればよいかを把握することができる。
【0074】
また、モダン芯170について、アイウエアに含まれるテンプル180の長手方向に延伸して連結されるモダン160に含まれる、形状記憶樹脂で形成される直線状のモダン芯として1つの部品が構成されてもよい。これにより、モダン芯170単体で製造、販売が可能になる。
【0075】
図14は、メガネ100のモダン160部分の変形前後の一例を示す図である。図14の上部は、変形前のメガネ100を示す。モダン芯170が含まれたモダン160は、テンプルの長手方向にそのまま延伸して連結されている。
【0076】
図14の下部は、変形後のメガネ100を示す。モダン芯170が含まれたモダン160は、使用者の耳にフィットするように曲げられている。例えば、使用者は、モダン160部分を湯に浸し、モダン芯170が所定温度以上になったと思うタイミングでメガネ100を装用し、モダン160部分を自分の耳にフィットするように変形させる。
【0077】
また、メガネ100のモダン160部分について、製造時の直線状にしたまま販売することにより、特別な技術を持たない一般の使用者が、最初の折り曲げ時から、顔の大きさ(どの位置で曲げるか)、耳の形状(どの程度曲げるか)に合わせて容易にフィッティングすることが可能になる。例えば、従来技術のように最初からモダン部が曲がった状態からフィッティングする場合に比べ、直線状のモダン160であれば、メガネ100を装用した状態でモダン160を上下方向に曲げて耳の掛かり具合を調整し、左右方向に曲げて頭部へのフィット感を調整することが容易である。なお、本開示技術において、モダン160を折り曲げた状態でメガネ100を販売することは排除されない。製造時点において直線状のモダン芯170が、そのままの形状で、又は折り曲げられた状態でメガネ100に備えられていれば、本開示技術の範囲に含まれる。すなわち、熱負荷をかけた場合にモダン芯170が直線状の初期状態に戻るのであれば、販売時の形状を問わず本開示技術の範囲に含まれる。
【0078】
また、本開示技術はモダン芯170のみを形状記憶樹脂で構成すればよいので、テンプルとモダンを一体的に形状記憶樹脂とした従来技術などに比べて製造コストを抑えられる。また、モダン芯170だけを独立して取り引きできるので、部分的な修理・交換が可能となり、返品等のコストも削減できる。さらに、モダン芯170は直線状であることが望ましく、押出成形による製造が可能となるため、残留応力が少ない押出成形品の特性を生かし、変形による不良品率を低減することができる。なお、押出成形とは、初めから直線状に成形する場合のほか、例えば板状に成形した形状記憶樹脂を型抜きや切削等で直線状に加工する場合なども含む。また、直線状とは、概ね直線様の形状であればよく、例えば長手方向の一端から他端にかけて溝部があるもの(長手方向に直交する断面が凹字状)や、押出成形後に樹脂の一部にモダン160に係合する凸部を設ける加工を施したものなどであっても、本発明の趣旨を逸脱しない限り直線状である。
【0079】
また、モダン160の材料とモダン芯170のガラス転移温度との関係において、適切な組み合わせが存在し得る。例えば、モダン芯170のガラス転移温度が所定温度よりも高い(例えば80℃など)場合、モダン160の材料は耐熱性が高いエラストマーを選択するなど、モダン芯170のガラス転移温度に応じて適切なモダン160の材料が選択されてもよい。
【0080】
なお、本発明は射出成形により製造されたモダン芯170を排除するものではない。例えば、射出圧縮成形などによって残留応力を均一にすることで熱負荷による変形が抑えられることが知られている。さらに、モダン160の材料との組み合わせによっても、射出成形モダン芯Bの経時変形を抑制できると考えられる。なお、モダン芯160のテンプル側端部と、テンプル180のモダン芯側端部とは、取り外し可能であるが、熱負荷により外れないように固定して取り付けられるとよい。
【0081】
以上、本発明について各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0082】
100 アイウエア(メガネ)
120 フレーム
140 フロント
142 ブリッジ
144 ノーズパッド
146 アンダーリム
147 ヨロイ
160 モダン
170 モダン芯
180 テンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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