(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171514
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】超熱伝導性アルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
C22C 21/02 20060101AFI20241205BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20241205BHJP
B22D 21/04 20060101ALI20241205BHJP
C22B 21/00 20060101ALI20241205BHJP
C22B 9/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C22C21/02
C22C1/02 503J
B22D21/04 A
C22B21/00
C22B9/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088560
(22)【出願日】2023-05-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】523202510
【氏名又は名称】常▲き▼▲りょ▼業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳聖義
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA19
4K001BA23
4K001FA14
4K001GA19
(57)【要約】
【課題】高い熱伝導率を有する超熱伝導性アルミニウム合金及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる超熱伝導性アルミニウム合金の製造方法は下記工程を含む。るつぼ炉を500℃以上まで予熱する工程。純アルミインゴットを投入して溶錬を行う工程。溶湯の温度が720℃になったら、精錬とスラグ除去を行う工程。完成後に温度を750℃まで上昇させ、ニッケルを加え、温度を750~810℃に制御する工程。充分に掻き混ぜた後、ニッケルの溶解完成を確認する工程。サンプリングして成分を分析し、ニッケル成分に誤りがないかを確認する。アルミニウムチタン炭素を添加し、掻き混ぜてからアルミニウムチタン炭素の溶解完成を確認する工程。換気設備を回し、脱気を行う工程。脱気過程は約5~10分間である。完成後に約10分間静置する工程。サンプリングして成分判定を行う工程。アルミインゴットの鋳造を行う工程。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分がアルミニウム、ニッケル、アルミニウムチタン炭素からなり、
アルミニウムの重量パーセントは94%を超えており、
アルミニウム以外の構成成分の重量パーセントは、
ニッケルが2~5%、アルミニウムチタン炭素の炭素が0.1%~0.5%、アルミニウムチタン炭素のチタンが0.01~0.2%、鉄が0.1%以下、ケイ素が0.1%以下であり、
銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム、クロム、鉛、錫の含有量は各0.01%以下であり、
その他の元素の含有量は各0.005%以下に制限されていることを特徴とする超熱伝導性アルミニウム合金。
【請求項2】
るつぼ炉を500℃以上まで予熱する工程と、
純アルミインゴットを投入し、溶錬を行う工程と、
溶湯の温度が720℃になったら、精錬とスラグ除去を行う工程と、
精錬とスラグ除去を行った後、温度を750℃まで上昇させ、溶錬温度を750~810℃に制御し、ニッケルを添加し掻き混ぜる工程と、
ニッケルの溶解完成を確認する工程であって、サンプリングして成分を分析し、ニッケル成分に誤りがないかを確認する工程と、
アルミニウムチタン炭素を添加し、掻き混ぜると同時にアルミニウムチタン炭素の溶解完成を確認する工程と、
換気設備を回し、5~10分間の脱気を行う工程と、
完成後に10分間静置する工程と、
サンプリングして成分判定を行い、最終的に所定の条件に合うことを確認する工程と、
アルミインゴットの鋳造を行う工程と、
を含む、
超熱伝導性アルミニウム合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超熱伝導性アルミニウム合金及びその製造方法に関する。特に、工業用アルミニウム合金の製造領域に属する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金インゴットは純アルミニウムとリサイクルされたアルミニウムを原料とする。国際標準または特殊規定に従ってケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)などの他の元素を添加することによって、純アルミニウムの鋳造性、化学性及び物理性の不足を改善し、配合された合金である。一般的に鋳造業界に応用される。
【0003】
科学技術が急速に発展するにつれ、設備に対する性能要求と精密度もますます高まっていく。精密設備は厳しい運行環境のリクエストを伴っている。温度コントロールは設備運行を保障する肝心な一環である。ほとんどの設備の温度コントロールはラジエータから離れられない。しかしながら、ラジエータの放熱性能を高めるためには、構造を変更するほか、最も根本的なのはラジエータを制作する材料の放熱性能を向上することである。従って、より合理的な製作方法を開発し、成形及び加工可能で良質な放熱材料を製作することで、高放熱設備の条件を満たし、様々な設備の集成程度を高めることと体積縮小を保障することができる。しかし、実際の生産において、現在使われるアルミニウム合金材料は放熱性があまり良くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、超高熱伝導性アルミニウム合金及びその製造方法を提供することである。超高熱伝導性アルミニウム合金は、超高熱伝導下で部材を制作するアルミニウム合金製品に使用され、特殊業界でアルミニウム合金材料の放熱性についてのリクエストに応えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における超熱伝導性アルミニウム合金は、主成分がアルミニウム、ニッケル、アルミニウムチタン炭素からなる。
アルミニウム以外の構成成分の重量パーセントは以下のとおりである。
ニッケルは2~5%、アルミニウムチタン炭素の炭素は0.1%~0.5%、アルミニウムチタン炭素のチタンは0.01~0.2%、鉄は0.1%以下、ケイ素は0.1%以下であり、
銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム、クロム、鉛、錫の含有量は各0.01%以下である。
その他の元素の含有量は各0.005%以下に制限されている。
【0006】
本発明における超熱伝導性アルミニウム合金の構成成分のうち、アルミニウムの重量パーセントは94%を超えている。
【0007】
本発明の超熱伝導性アルミニウム合金の製造方法は、以下の工程を含む。
るつぼ炉を500℃以上まで予熱する工程。
純アルミインゴットを投入し溶錬を行う工程。
溶湯の温度が720℃になったら、精錬とスラグ除去を行う工程。
精錬とスラグ除去を行った後、温度を750℃まで上昇させ、溶錬温度を750~810℃に制御し、ニッケルを添加し掻き混ぜる工程。
、ニッケルの溶解完成を確認する工程。サンプリングして成分を分析し、ニッケル成分に誤りがないかを確認する。
アルミニウムチタン炭素を添加し、掻き混ぜると同時にアルミニウムチタン炭素の溶解完成を確認する工程。
換気設備を回し、脱気を行う工程。脱気過程は5~10分間である。
完成後に10分間静置する工程。
サンプリングして成分判定を行い、最終的に所定の条件に合うことを確認する工程。
アルミインゴットの鋳造を行う工程。
【0008】
本発明の超高熱伝導性アルミニウム合金とその製造方法のメリットは、以下のとおりである。本発明における超高熱伝導性アルミニウム合金は高温強度と導電性を有しており、成形加工もしやすく創作されている。かつ未加熱のアルミニウム合金も熱伝導率(thermal conductivity)が純アルミニウムに近く、230W/mK以上に達することができ、非常に良い放熱効果があり、アルミニウム合金のダイカストやアルミニウム合金の鋳造などの生産方法に適用される。その産物は3C電子パーツ、5G通信設備、車用電子パーツ、エンジンロータ、航空宇宙/衛星通信などの高放熱、高熱伝導が必要なパーツに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明に係る2.5%ニッケルを添加したアルミニウム合金の金属組織のマイクロ構成図である。
【
図3】本発明に係る2.5%のニッケルとアルミニウムチタン炭素を添加したアルミニウム合金の金属組織のマイクロ構成図である。
【
図4】本発明に係る3.3%ニッケルとアルミニウムチタン炭素を添加したアルミニウム合金の金属組織のマイクロ構成図である。
【
図5】本発明に係る3.5%ニッケルとアルミニウムチタン炭素を添加したアルミニウム合金の金属組織のマイクロ構成図である。
【
図6】本発明に係る5%ニッケルを添加したアルミニウム合金の金属組織のマイクロ構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の使用目的と効果を果たすために使われた技術手段について、以下に実行可能な望ましい例を挙げ、図面に合わせて詳述する。
【0011】
本発明の超高熱伝導性アルミニウム合金の製造方法は、
図1を参照されたい。製造方法は以下のとおりである。るつぼ炉を500℃以上まで予熱する。純アルミインゴットを投入して溶錬を行う。溶湯の温度が720℃になったら、精錬とスラグの除去を行う。完成後に温度を750℃まで上昇させる。主な元素であるニッケル(Ni)を加え、温度を750~810℃に制御し、充分に掻き混ぜた後、ニッケルの溶解完成を確認する。サンプリングして成分を分析し、ニッケル成分に誤りがないかを確認した後、アルミニウムチタン炭素(AlTiC)を添加し、掻き混ぜてからアルミニウムチタン炭素の溶解完成を確認する。その後、換気設備を用い、脱気を行う。脱気過程は約5~10分間であり、完成後に約10分間静置する。次に、サンプリングして成分判定を行う。最終的な成分判定は必ず所定の条件に合う必要がある(表1に示すとおりである)。その後、アルミインゴットの鋳造を行う。
【表1】
【0012】
本発明における超高熱伝導性アルミニウム合金の構成成分は、主にアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、アルミニウムチタン炭素(AlTiC)からなる。その構成成分の重量パーセントは以下のとおりである。ニッケルは2~5%、アルミニウムチタン炭素の炭素(C)は0.1~0.5%、チタン(Ti)は0.01~0.2%、鉄(Fe)は0.1%以下、ケイ素(Si)は0.1%以下である。また、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mn)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)など各元素の含有量は0.01%以下である。その他の元素の含有量は各0.005%以下に制限されている。その他はアルミニウムであリ、94%を超えている。
【0013】
本発明はアルミニウム合金に添加するニッケルとアルミニウムチタン炭素の比率により、形成された金属組織が異なっている。
図2は、本発明の2.5%ニッケルを添加した後、顕微鏡により観視された金属組織のマイクロ構成図である。
図3は、本発明の2.5%ニッケルとアルミニウムチタン炭素を添加し、顕微鏡により観視された金属組織のマイクロ構成図である。
図4は、本発明の3.3%ニッケルとアルミニウムチタン炭素を添加した後、顕微鏡により観視された金属組織のマイクロ構成図である。
図5は、本発明の3.5%ニッケルとアルミニウムチタン炭素を添加した後、顕微鏡により観視された金属組織のマイクロ構成図である。
図6は、本発明の5%ニッケルを添加した後、顕微鏡により観視された金属組織のマイクロ構成図である。
【0014】
本発明はニッケル(Ni)の異なる添加量によりアルミニウム合金を制作した。その熱伝導係数および引張実験の結果は、以下の表2に示す。
【表2】
【0015】
本発明における超高熱伝導性アルミニウム合金は導電性を有し、かつ純アルミインゴットに近い熱伝導性を有する。よって、アルミニウム合金のダイカスト/アルミニウム合金鋳造成形に有利であり、鋳造された製品が加工しやすいなどの特性を有する。
【0016】
上述のように、本発明は予期の使用目的と効果を達成し、当業者よりも理想的かつ実用的である。但し、上述の実施例は、本発明の望ましい実施例について詳細に説明しただけで、それによって、本発明の特許請求の範囲が制限されることはない。本発明の特許請求の範囲に基づく均等変化及び修飾は、すべてが本発明の特許請求の範囲内に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分がアルミニウム、ニッケル、アルミニウムチタン炭素からなり、
アルミニウムの重量パーセントは94%を超えており、
アルミニウム以外の構成成分の重量パーセントは、
ニッケルが2~5%、アルミニウムチタン炭素の炭素が0.1%~0.5%、アルミニウムチタン炭素のチタンが0.01~0.2%、鉄が0.1%以下、ケイ素が0.1%以下であり、
銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム、クロム、鉛、錫の含有量は各0.01%以下であり、
その他の元素の含有量は各0.005%以下に制限されていることを特徴とする超熱伝導性アルミニウム合金。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は超熱伝導性アルミニウム合金に関する。特に、工業用アルミニウム合金の製造領域に属する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
本発明の主な目的は、超高熱伝導性アルミニウム合金を提供することである。超高熱伝導性アルミニウム合金は、超高熱伝導下で部材を制作するアルミニウム合金製品に使用され、特殊業界でアルミニウム合金材料の放熱性についてのリクエストに応えることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
参考態様の超熱伝導性アルミニウム合金の製造方法は、以下の工程を含む。
るつぼ炉を500℃以上まで予熱する工程。
純アルミインゴットを投入し溶錬を行う工程。
溶湯の温度が720℃になったら、精錬とスラグ除去を行う工程。
精錬とスラグ除去を行った後、温度を750℃まで上昇させ、溶錬温度を750~810℃に制御し、ニッケルを添加し掻き混ぜる工程。
、ニッケルの溶解完成を確認する工程。サンプリングして成分を分析し、ニッケル成分に誤りがないかを確認する。
アルミニウムチタン炭素を添加し、掻き混ぜると同時にアルミニウムチタン炭素の溶解完成を確認する工程。
換気設備を回し、脱気を行う工程。脱気過程は5~10分間である。
完成後に10分間静置する工程。
サンプリングして成分判定を行い、最終的に所定の条件に合うことを確認する工程。
アルミインゴットの鋳造を行う工程。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の超高熱伝導性アルミニウム合金のメリットは、以下のとおりである。本発明における超高熱伝導性アルミニウム合金は高温強度と導電性を有しており、成形加工もしやすく創作されている。かつ未加熱のアルミニウム合金も熱伝導率(thermal conductivity)が純アルミニウムに近く、230W/mK以上に達することができ、非常に良い放熱効果があり、アルミニウム合金のダイカストやアルミニウム合金の鋳造などの生産方法に適用される。その産物は3C電子パーツ、5G通信設備、車用電子パーツ、エンジンロータ、航空宇宙/衛星通信などの高放熱、高熱伝導が必要なパーツに応用することができる。