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特開2024-171519ワーク把持装置及びロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171519
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ワーク把持装置及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088570
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 康夫
(72)【発明者】
【氏名】湊 輝行
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707BT19
3C707DS02
3C707EU07
3C707FS01
3C707FS04
3C707FT11
3C707HS27
3C707MT10
(57)【要約】
【課題】様々なサイズのワークに対応して把持することができるワーク把持装置を提供する。
【解決手段】ロボットに取り付けられるハンド3であって、リンク機構22と、リンク機構22に接続され、リンク機構22により第1方向において互いに反対方向に移動するリンク23A~23Bと、リンク23A~23Bに対して第1方向と異なる方向の第2方向に移動するブラケット26A~26Dと、ブラケット26A~26Dに設けられ、ブラケット26A~26Dと共に第2方向に移動し、ワークを把持する吸着パッド27C~27Fとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに取り付けられるワーク把持装置であって、
リンク機構と、
前記リンク機構に接続され、前記リンク機構により第1方向において互いに反対方向に移動する第1移動部材と、
前記第1移動部材に対して前記第1方向と異なる方向の第2方向に移動する第2移動部材と、
前記第2移動部材に設けられ、前記第2移動部材と共に前記第2方向に移動し、ワークを把持する把持部材と、
を備えることを特徴とするワーク把持装置。
【請求項2】
前記第2方向は、前記第1方向と略直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載のワーク把持装置。
【請求項3】
前記第2移動部材は、前記第2方向における前記第1移動部材の両端にそれぞれ設けられており、前記第1移動部材に対してそれぞれ個別で移動することを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク把持装置。
【請求項4】
前記第1移動部材の移動をガイドするスライド部材と、
前記スライド部材をロックするロック部材と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク把持装置。
【請求項5】
前記第1方向における2つの前記第1移動部材の間の位置に設けられ、非接触で前記ワークを把持する非接触把持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク把持装置。
【請求項6】
前記リンク機構に接続され、2つの前記第1移動部材が互いに近づく方向に移動させるシリンダをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク把持装置。
【請求項7】
ロボットと、
前記ロボットに取り付けられた請求項1又は2に記載のワーク把持装置と、
前記ロボットに対して位置が固定され、前記ロボットの動作により前記ワーク把持装置と接触して前記第1移動部材と前記第2移動部材との少なくとも一方の移動を補助する基準部材と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに取り付けられるワーク把持装置及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばワークを搬送するため、ロボットによりワークを把持してワーク搬送を行う手法が周知である。このようなワーク搬送に用いるロボットにおいては、ワークを把持するため、吸着パッドや把持チャック等の把持具が先端に用いられる。
【0003】
ここで、サイズの異なるワークに対応するために、把持具の間の距離であるピッチを可変とする構成が考案されている。例えば特許文献1においては、モータ等の駆動源を使用してピッチ変更することが記載されている。例えば特許文献2においては、自重を利用してピッチ変更することが記載されている。例えば特許文献3においては、ロボットの動作を利用してピッチ変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-25392号公報
【特許文献2】特開2005-14185号公報
【特許文献3】特開平1-295779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記これらの文献の開示された構成ではピッチを1次元において変化させるものであることから、ワークのサイズによっては適切な位置で把持することができない可能性がある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、様々なサイズのワークに対応して把持することができるワーク把持装置及びロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るワーク把持装置は、ロボットに取り付けられるワーク把持装置であって、リンク機構と、前記リンク機構に接続され、前記リンク機構により第1方向において互いに反対方向に移動する第1移動部材と、前記第1移動部材に対して前記第1方向と異なる方向の第2軸方向に移動する第2移動部材と、前記第2移動部材に設けられ、前記第2移動部材と共に前記第2方向に移動し、ワークを把持する把持部材と、を備える。
【0008】
また、前記第2方向は、前記第1方向と略直交する方向である。
【0009】
また、前記第2移動部材は、前記第2方向における前記第1移動部材の両端にそれぞれ設けられており、前記第1移動部材に対してそれぞれ個別で移動する。
【0010】
また、前記ワーク把持装置は、前記第1移動部材の移動をガイドするスライド部材と、前記スライド部材をロックするロック部材と、をさらに備える。
【0011】
また、前記ワーク把持装置は、前記第1方向における2つの前記第1移動部材の間の位置に設けられ、非接触で前記ワークを把持する非接触把持部材をさらに備える。
【0012】
また、前記ワーク把持装置は、前記リンク機構に接続され、2つの前記第1移動部材が互いに近づく方向に移動させるシリンダをさらに備える。
【0013】
また、ロボットシステムは、ロボットと、前記ロボットに取り付けられた前記ワーク把持装置と、前記ロボットに対して位置が固定され、前記ロボットの動作により前記ワーク把持装置と接触して前記第1移動部材と前記第2移動部材とのいずれか一方の移動を補助する基準部材と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワーク把持装置及びロボットシステムによれば、様々なサイズのワークに対応して把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るワーク把持装置を具備するロボットシステムの全体構成の一例を概略的に示す図である。
図2図1のハンドの正面図である。
図3図2のハンドの側面図である。
図4図2のハンドを変形させた場合の例を示す正面図である。
図5図4のハンドの側面図である。
図6図1のロボットシステムを用いて変形方法の例を示す図である。
図7図2のハンドの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては極力同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0017】
===実施形態===
≪全体構成≫
図1は、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と記載)に係るワーク把持装置を具備するロボットシステムの全体構成の一例を概略的に示す図である。図1に示すように、ロボットシステム1は、ロボット2及びハンド3を含む。図1では、ロボット2の先端にハンド3が設けられており、このハンド3によりワーク4が把持されている状態の一例を示している。ロボットシステム1に、ワーク4を配置する台5が配置されている。台5は、ワーク4が載置される台であり、例えばこの台5から他の位置へワーク4が搬送される。台5に、フック6が設けられている。
【0018】
ワーク4とは、ロボット2を用いて処理を行う対象物品である。本実施形態では、ワーク4を、ある地点から異なる地点へ移動させる搬送を行う場合を例として説明する。ワーク4は、例えば薄板である。本実施形態では、薄板としてプリント基板(PCB)を例として説明する。
【0019】
ロボット2は、例えば垂直多関節ロボットである。複数のアーム及び当該アーム間を連結する関節を有する。各関節に不図示の駆動モータが設けられている。ロボット2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び通信装置等を備える情報処理装置であるロボット制御装置によって動作が制御されている。ロボット制御装置は予めメモリ等に記憶された制御プログラムに基づいて、ワーク4の搬送等の動作を制御する。具体的には、ロボット制御装置が、ロボット2の各関節に設けられた駆動モータの回転及び停止を制御し、アームの動作が制御される。
【0020】
尚、図1はロボット2の構成を例示しているが、シリアルリンク型やパラレルリンク型等、ハンド3によりワーク4の搬送が可能であればロボット2の構成は図1の構成に限定されない。
【0021】
≪ハンド3の構成≫
ハンド3は、ロボット2に取り付け可能となっており、ワーク4を把持するワーク把持装置である。特にハンド3は、搬送用ハンドである。
【0022】
図2は、図1のハンド3の正面図を示している。なお、ワーク4を把持する面からみた平面図を正面図として示している。図3は、ハンド3の側面図を示している。なお、図3図2のIII方向から見た側面図である。図4は、図2のハンド3を変形させた例を示す図である。図5は、図4のV方向から見た側面図である。すなわち、図2及び図3はハンド3が閉じた状態の図、図4及び図5はハンド3が開いた状態の図を、それぞれ正面図と側面図により示している。図2に示すように、以下の説明では、紙面上下方向を、第1方向としてのx軸方向とし、x軸に直交する方向を、第2方向としてのy軸方向として説明する。
【0023】
ハンド3は、基台21と、リンク機構22と、リンク23と、ロッド24と、ロック機構25と、ブラケット26と、吸着パッド27とを含んで主要部が構成される。以下の説明では、リンク23のそれぞれを区別する場合にリンク23A~23Bと符号を付し、区別しない場合にリンク23と示す。ロッド24のそれぞれを区別する場合にロッド24A~24Dと符号を付し、区別しない場合にロッド24と示す。ブラケット26のそれぞれを区別する場合にブラケット26A~26Dと符号を付し、区別しない場合にブラケット26と示す。吸着パッド27を区別する場合に吸着パッド27A~27Fと符号を付し、区別しない場合に吸着パッド27と示す。本実施形態では、リンク23がx軸方向へ移動する第1移動部材であり、ブラケット26がy軸方向へ移動する第2移動部材である。
【0024】
基台21は、板状部材であり、ロボット2のマニピュレータとしてのアームと接続される部材である。例えば、基台21にブラケット(不図示)が設けられ、このブラケットが、ロボット2に取り付けられたフランジプレート(不図示)と接続される。
【0025】
リンク機構22は、吸着パッド27の位置を可変とする機構である。具体的には、リンク機構22は、リンク31と、リンク32Aと、リンク32Bとで構成されている。リンク31と、リンク32Aと、リンク32Bは、棒状部材である。特に、リンク32Aと、リンク32Bは、x軸方向に延在している。リンク31は、中心が基台21に対して中心点33周りに回転可能となっており、リンク31の両端にリンク32Aとリンク32Bとがそれぞれ接続されている。リンク31が中心点33周りに回転することによってリンク32Aと、リンク32Bをそれぞれの短手方向であるx軸方向に摺動させることができる。なお、リンク31の回転により、リンク32Aとリンク32Bとは連動して互いに反対方向に摺動する。
【0026】
リンク23は、y軸方向に延在した長形の部材である。リンク23は、リンク機構22のリンク32A及びリンク32Bの端部にそれぞれ接続されている。具体的には、リンク23Aは、リンク32Aの端部に接続され、リンク23Bは、リンク32Bの端部に接続されている。リンク23Aとリンク23Bとは、リンク機構22によって、それぞれx軸方向において、互いに反対方向に移動可能となっている。なお、リンク31と、リンク32Aと、リンク32Bと、リンク32Aと、リンク32Bとでオープンループ型5節リンクとも言える。
【0027】
ロッド24は、円筒形状の部材であり、リンク23の移動をガイドするスライド部材である。具体的には、ロッド24は、基台21に固定されたブロック34に支持されており、ロッド24の端部はリンク23に接続されている。なお、ロッド24の端部はブロック35等の部材を介してリンク23に接続されていることとしてもよい。以下の説明では、ブロック34のそれぞれを区別する場合にブロック34A~34Dと符号を付し、区別しない場合にブロック34と示す。本実施形態では、ブロック34A~34Dのそれぞれにロッド24A~24Dが支持されている。リンク23Aに、ブロック34Aに支持されたロッド24Aと、ブロック34Bに支持されたロッド24Bとが接続されている。リンク23Bに、ブロック34Cに支持されたロッド24Cと、ブロック34Dに支持されたロッド24Dとが接続されている。これによって、リンク23がx軸方向への移動することを、ロッド24がガイドしている。なお、ロッド24に変えてレール等を用いることも可能である。
【0028】
ロック機構25は、ロッド24の位置を固定するロック部材である。図2に示すように、例えば、ロッド24Cに対してロック機構25が設けられている。ロック機構25は、例えばロッド24Cを挟み込むことによってロッド24Cのスライド位置を保持する。ロッド24は、リンク機構22のx軸方向への移動の動作と連動しているため、いずれか1つのロッド24に対してロック機構25を設けることで、ロック機構25は、リンク23A及びリンク23Bのx軸方向の移動をロックする。すなわち、ロック機構25によってリンク23A及びリンク23Bの両方の位置が保持される。また、リンク23A及びリンク23Bは対となっているため、搬送移動時のワーク4の慣性や重力等の力を受ける際に力が相殺される方向に働き、ロック機構25への負荷が抑制される。
【0029】
ブラケット26は、Z字形状の部材であり、リンク23の両端に設けられている。具体的には、リンク23Aの両端に、ブラケット26A及びブラケット26Bが設けられ、リンク23Bの両端に、ブラケット26C及び26Dが設けられている。
【0030】
ブラケット26は、リンク23に対してy軸方向に移動可能となっている。具体的には、ブラケット26は、リンク23に対して移動機構を有している。
【0031】
図4図5に示すように、移動機構は、ブロック35と、平滑ロッド36と、溝ロッド37とを含んで主要部が構成される。ブロック35は、リンク23において固定されている。そして、ブロック35は、平滑ロッド36と溝ロッド37とを支持しており、ブロック35に対して平滑ロッド36と溝ロッド37とが摺動可能となっている。そして、平滑ロッド36と溝ロッド37の端部にブラケット26が接続されている。すなわち、ブロック35に支持されつつ摺動することで、平滑ロッド36と溝ロッド37とブラケット26とが一体的に移動する。
【0032】
平滑ロッド36は、円柱形状であり、ブロック35に対して滑らかに摺動する。溝ロッド37は、円柱形状であり、複数の溝を備えている。ブロック35にボールプランジャ38が設けられており、溝ロッド37の溝に嵌ることで位置が保持される。溝ロッド37に複数の溝が設けられており、溝ロッド37の位置、すなわち、ブラケット26の位置が調整可能となっている。なお、ブラケット26のそれぞれに対して移動機構が設けられているため、ブラケット26は、それぞれ個別にリンク23に対して移動することができる。なお、ボールプランジャ38に替えて機械的なラッチ機構を設けることとしてもよい。
【0033】
吸着パッド27は、ワーク4を把持する把持部材である。吸着パッド27は、ワーク4と接触することによってワーク4を吸着する。例えば、吸着パッド27をワーク4へ接触後、パッド内を負圧にして、ワーク4を吸着する。本実施形態では、ワーク4の端を把持するため、長円型のパッドを用いている。本実施形態では、把持部材として吸着パッド27を例として説明するが、ワーク4を把持することができれば例えば把持チャックなど、吸着パッド27以外の部品を用いることも可能である。
【0034】
図2に戻って、吸着パッド27は、リンク23と、ブラケット26にそれぞれ設けられている。例えば、リンク23Aに吸着パッド27Aが4つ設けられており、リンク23Bに吸着パッド27Bが6つ設けられている。そして、ブラケット26Aに吸着パッド27Cが1つ設けられており、ブラケット26Bに吸着パッド27Dが1つ設けられており、ブラケット26Cに吸着パッド27Eが1つ設けられており、ブラケット26Dに吸着パッド27Fが1つ設けられている。
【0035】
このように、リンク23Aとリンク23B及びそれに付随するブラケット26Aからブラケット26Dに吸着パッド27が設けられることで、リンク23A及びリンク23Bの移動と共に、x軸方向へ吸着パッド27を移動させることができる。さらに、ブラケット26Aからブラケット26Dに吸着パッド27Cから吸着パッド27Fが設けられることで、ブラケット26Aからブラケット26Dのそれぞれの移動と共に、y軸方向へ吸着パッド27Cから吸着パッド27Fを移動させることができる。これにより、ワーク4のサイズや把持要望位置に応じて、適切な位置でワーク4を把持することが可能となる。なお、本実施形態における吸着パッド27の配置は一例であり、少なくともブラケット26に設けられることで、吸着パッド27をx軸及びy軸の2方向に移動させることができる。
【0036】
≪ハンド3の変形≫
図2に示すように、リンク機構22がN字となっている場合にリンク23が最も閉じている状態である。閉じている状態とは、リンク23Aとリンク23Bとが互いに最も近づいている状態である。また、ブラケット26もリンク23に対して閉じている状態である。この場合の閉じている状態とは、リンク23とブラケット26とが最も近づいている状態である。図3についてもブラケット26が閉じている状態を示している。
【0037】
図4は、ハンド3が最も開いた状態を示している。リンク機構22によりリンク23Aとリンク23Bとが互いに最も遠い状態となっている。そして、ブラケット26についても、リンク23から最も遠い状態となっている。図5は、図4と対比して、ブラケット26が開いている状態を示している。
【0038】
このように、ハンド3は、x軸方向だけでなく、y軸方向に吸着パッド27を移動させることができるため、吸着パッド27の可変ストロークが大きい。すなわち、吸着パッド27の間の距離であるピッチの可変ストロークが大きい。また、リンク機構22でx軸方向へ移動させ、リンク23内に設けた平滑ロッド36等の移動機構でy軸方向への移動を行っているため、機構の複雑化を抑制し、コンパクト化や軽量化を図ることも可能である。
【0039】
図6は、ハンド3を変形させる場合の一例を示している。ハンド3の変形には、台5に設けたフック6を用いる。フック6は、ロボット2に対して位置が固定されている。すなわち、ロボット2の動作と共に動かず、位置が固定されている。このフック6は、ハンド3の変形を補助する基準部材となる。ハンド3を変形させる場合に、ロボット2の動作によりフック6にハンド3のリンク23やブラケット26を接触させて、リンク23やブラケット26を移動させる。
【0040】
さらに図6は、x軸方向にリンク23Bを移動させる場合の例を示している。なお、y軸方向についても同様である。ハンド3をx軸方向に開くように変形させる場合に、ロボット2は、例えばハンド3のリンク23Bの内側の面にフック6が接触するように、ハンド3を移動させる。内側とは、リンク23Bにおける他のリンク23Aに近い面である。そして、ロボット2は、リンク23Bの内側にハンド3を接触させながら、x軸方向であってリンク23Bが開く方向へハンド3ごと移動させることで、リンク23Bをx軸方向に移動させる。なお、このハンド3の移動量を制御することによって、リンク23Bのx軸方向への移動量を調整可能である。一方のリンク23Bをフック6により移動させることで、リンク機構22により連動して他方のリンク23Aも移動する。図6はx軸方向にリンク23Bを開く場合を示しているが、閉じる場合には後述のシリンダ40が使用される。なお、閉じる場合について、リンク23Bの外側の面にフック6を接触させることで同様にロボット2の動作で閉じることとしてもよい。また、y軸方向においても、ブラケット26の側面とフック6を接触させることで、閉じる方向と開く方向にそれぞれ移動させることが可能である。なお、フック6と接触させる部材の面については移動ができれば上記に限定されない。
【0041】
上記のようにフック6によりハンド3をx軸方向に開くように変形させることができる。そして、閉じる場合には、シリンダ40が使用される。シリンダ40は例えばエア駆動である。具体的には、リンク機構22に接続して、ロボット2の操作としてリンク23Aとリンク23Bとが互いに近づく方向にリンク機構22を動かすようにシリンダ40は動作される。図1に示すような閉じた状態である原点位置への移動(原点戻し)を、シリンダ40を用いて行うことで、複雑な機構を用いることなく原点戻しを行うことができる。
【0042】
≪作用効果≫
x軸方向だけでなく、y軸方向へ吸着パッド27を移動させることができるため、様々なサイズのワーク4に対応することが可能となる。また、例えば回路基板等のワーク4では、ワーク4の端の指定された距離の幅の範囲のみで吸着パッド27を接触させて把持したいといような、接触可能位置を指定される場合がある。しかし、このような場合であっても2方向に柔軟に吸着パッド27を移動させて適切な位置でワーク4を把持することが可能となる。
【0043】
移動可能な2方向がx軸方向とy軸方向のように互いに直交していることで、吸着パッド27の移動範囲を効率的に広げることができる。
【0044】
ブラケット26がリンク23の両端に設けられており、それぞれのブラケット26が個別に移動できることで、ブラケット26に設けた吸着パッド27の位置を柔軟に変更することが可能となる。
【0045】
リンク23の移動をガイドするロッド24にロック機構25が設けられることで、リンク機構22で移動が連動するリンク23とリンク23を両方ロックすることができる。また、ロックするための機構をいくつも設ける必要がなくなる。
【0046】
ロボット2に対して位置が固定されたフック6を用いることで、ロボット2の動作によってハンド3を変形させることが可能となる。このようにロボット2の動作でハンド3の開閉変形ができるため、ハンド3にモータ等の駆動装置を装備しなくてもよい。
【0047】
===変形例===
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、上述した具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び下記変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0048】
上記実施形態では、2方向をx軸方向とy軸方向として互いに直交する場合を例としたが、この2方向は互いに直交する場合に限定されず、一方の方向に対して他方の方向が0度よりも大きな角度を有することとしてもよい。すなわち2方向が互いに平行でなければ、直行に限定されず2方向を設定可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、吸着パッド27によりワーク4を把持する場合を説明したが、非接触把持部材として非吸着パッド39を追加することとしてもよい。非吸着パッド39は、非接触でワーク4を把持する。例えば非吸着パッド39は、非接触型であれば、ベルヌーイタイプやサイクロンタイプを用いることができる。図7に示すように、非吸着パッド39は、x軸方向におけるリンク23Aとリンク23Bとの間の位置に設けられることが好ましい。特に、x軸方向におけるリンク23Aとリンク23Bとの間であって、中心点33を挟んで両側に設けることが好ましい。また、吸着パッド27の間の部分を把持するため、非吸着パッド39は、吸着パッド27よりも広い面積を把持する構成となっている。このように、リンク23とリンク23との間の位置に非接触の非吸着パッド39が設けられることで、例えば端の把持だけでは中心部分が撓んでしまうような薄板等のワーク4であっても、安定して把持することが可能となる。薄板とは、例えば薄くて剛性が小さい板である。また、非接触とすることで、中心付近を接触把持したくないようなワーク4であっても対応することができる。また、ワーク4としては、重量の大きいものや厚いもの、例えば3kg程度の重くて厚いものも対応可能である。なお、ワーク4の把持要求を満たせれば、非吸着パッド39に替えて接触型の吸着パッド27等を配置してもよい。
【0050】
上記実施形態において、把持クランプを設けることとしてもよい。把持クランプは、例えばリンク23に設けられた爪把持部材であり、シリンダ40の開閉でワーク4を物理的に挟んでクランプする。これによってワーク4の移動時の横ずれ防止や、縦持ち時の落下防止に有効である。図7では、把持クランプは例えば41の2点鎖線で示す位置に設けられる。
【符号の説明】
【0051】
1:ロボットシステム、2:ロボット、3:ハンド(ワーク把持装置)、4:ワーク、6:フック(基準部材)、22:リンク機構、23,23A~23B:リンク(第1移動部材)、24,24A~24D:ロッド(スライド部材)、25:ロック機構(ロック部材)、26,26A~26D:ブラケット(第2移動部材)、27,27A~27F:吸着パッド(把持部材)、32A~32B:リンク、34,34A~34D:ブロック、39:非吸着パッド(非接触把持部材)、40:シリンダ、41:把持クランプ、x:x軸方向(第1方向)、y:y軸方向(第2方向)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7