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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171521
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】連結具および連結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
F16B19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088574
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178504
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 健人
(72)【発明者】
【氏名】南部 円香
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋兵
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036AA03
3J036DA03
3J036DA06
3J036DB04
(57)【要約】
【課題】部品どうしの連結と連結解除が簡単に行え、かつ、よりコンパクトで高性能な連結具と、その連結具を用いて部材どうしを連結する連結構造を提供する。
【解決手段】第1連結本体(61、71)にプラグ部材(11,111)を取付け、第2連結本体(62、72)にソケット部材(41,141)を取付け、プラグ部材(11,111)とソケット部材(41,141)とを係合させて前記第1連結本体(61、71)と前記第2連結本体(62、72)とを連結した連結構造であって、プラグ部材(11,111)の爪部(13)は、挿入方向(Z)で係合する爪部係合側の爪面(29)と、解除スライド方向(Y)で係合する解除側傾斜面(18)とを有し、ソケット部材(41,141)の開口部(42,142)は、爪部係合側の爪面(29)と係合する第1段部(43)と、解除側傾斜面(18)と係合する第2段部(48)を有する。
【選択図】図11

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグ部材(11,111)とソケット部材(41,141)を備えた連結具(10)であって、
前記プラグ部材(11,111)は、少なくとも1対の弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)を備えており、前記1対の弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)は、それぞれの弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)が前記プラグ部材(11,111)の外側に向けて爪部(13A~13D)を有しているとともに、前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)の前記爪部(13A~13D)の存在する面の裏側になる背面(32)どうしが内側を向いて配置されており、
前記ソケット部材(41,141)は、前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)と係合する少なくとも1対の開口部(42A~42D,142A,142B)を備えており、
前記プラグ部材(11,111)を前記ソケット部材(41,141)に挿入する方向を挿入方向と定義し、前記挿入方向と直交する方向を解除スライド方向と定義した場合に、前記爪部(13A~13D)は、前記挿入方向で係合する爪部係合側の爪面(29)と、前記解除スライド方向で係合する解除側傾斜面(18A~18D)とを有し、前記開口部(42A~42D,142A,142B)は、前記爪部係合側の爪面(29)と係合する第1段部(43A~43D)と、前記解除側傾斜面(18A~18D)と係合する第2段部(48A~48D)を有しており、
前記プラグ部材(11,111)が前記ソケット部材(41,141)に係合した状態から、前記プラグ部材(11,111)をソケット部材(41,141)に対して解除スライド方向に操作することで、前記解除側傾斜面(18A~18D)と前記第2段部(48A~48D)の係合が解除され、その状態からさらに前記プラグ部材(11,111)をソケット部材(41,141)に対して前記挿入方向に動かすことにより、前記プラグ部材(11,111)がソケット部材(41,141)から離脱されるようになっていることを特徴とする連結具(10)。
【請求項2】
前記プラグ部材(11,111)が前記ソケット部材(41,141)に係合した状態において、前記爪部(13A~13D)の前記第1段部(43A~43D)と向かい合う側の面である前記爪部係合側の爪面(29)は、前記第1段部(43A~43D)の被係合面に対して傾斜した面となっていることを特徴とする請求項1に記載の連結具(10)。
【請求項3】
前記プラグ部材(11,111)は前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)が取付けられる基板部(20)を備え、前記基板部(20)の前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)が延設されている側の面と反対側の面が挿入側前面(23)となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連結具(10)。
【請求項4】
前記プラグ部材(11,111)の前記基板部(20)の両側にはそれぞれ挿入側側面部(24A,24B)を介して取付部(16A,16B)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の連結具(10)。
【請求項5】
前記ソケット部材(41,141)の内部には中仕切壁(51)が設けられており、前記中仕切壁(51)は、前記プラグ部材(11,111)を前記ソケット部材(41,141)に挿入する初期操作段階において、前記プラグ部材(11,111)の前記挿入側側面部(24B)と当接する部分であることを特徴とする請求項4に記載の連結具(10)。
【請求項6】
前記ソケット部材(41,141)の前記開口部(42A~42D,142A,142B)は逆U字状の空間となっており、その逆U字状の空間の一辺部分が前記第1段部(43A~43D)となっており、前記第1段部(43A~43D)が設けられている一辺の両側の2辺の部分が前記第2段部(48A~48D)となっており、前記第1段部(43A~43D)の設けられている辺と向かいあう辺は開放されていることを特徴とする請求項1に記載の連結具(10)。
【請求項7】
前記爪部(13A~13D)の前記解除側傾斜面(18A~18D)が設けられている一方側の反対側となる他方側は垂直面(19A~19D)となっていることを特徴とする請求項1に記載の連結具(10)。
【請求項8】
前記プラグ部材(11,111)は、2組以上の前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)を有しており、前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)のあいだには壁部(14、15)が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項6または請求項7に記載の連結具(10)。
【請求項9】
前記請求項1乃至8に記載の連結具(10)を用いた連結構造であって、第1連結本体(61、71)に座グリ穴を設けて前記座グリ穴に前記プラグ部材(11,111)を取付け、第2連結本体(62、72)に座グリ穴を設けて当該座グリ穴に前記ソケット部材(41,141)を取付け、前記プラグ部材(11,111)と前記ソケット部材(41,141)とを係合させて前記第1連結本体(61、71)と前記第2連結本体(62、72)とを連結することを特徴とする連結構造。
【請求項10】
前記第1連結本体(61、71)の前記プラグ部材(11,111)が取付けられている平面と、前記プラグ部材(11,111)の取付部の表面(31)とは略同一面となっており、前記第2連結本体(62、72)の前記ソケット部材(41,141)が取付けられている平面と、前記プラグ部材(11,111)の取付時の表面(52)とは略同一面となっていることを特徴とする請求項9に記載の連結構造。
【請求項11】
前記プラグ部材(11,111)の前記爪部(13A~13D)の前記解除側傾斜面(18A~18D)が設けられている一方側の反対側となる他方側は垂直面(19A~19D)となっており、前記第1連結本体(61、71)において、重力が作用する方向における、重力を受ける側に前記プラグ部材(11,111)の前記垂直面(19A~19D)を配置し、重力を受ける側とは逆の側に前記プラグ部材(11,111)の前記解除側傾斜面(18A~18D)を配置することを特徴とする請求項9に記載の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部品を連結する際に使用される連結具であって、一方側の部品に取り付けられるプラグ部材と他方側の部品に取付けられるソケット部材とからなる連結具と、その連結具を用いて部材どうしを連結する連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具用の棚やテーブルなどの木製の組立家具の部品を連結する場合や、自動車の内装部品のような樹脂または金属製の部品を連結する場合に、プラグ部材とソケット部材の凹凸係合による連結構造が広く行われている。例えば、特許文献1に記載のキャビネットの壁部品どうしを連結するための構造として、図16に記載するような連結具が利用されている。この従来の連結具は、プラグ側部材201を一方側の部品230に固定し、ソケット側部材202を他方側の部品240に固定し、プラグ側部材201とソケット側部材202を係合させることで2つの部品230,240を固定するものである。プラグ側部材201は係止溝203を備えており、 ソケット側部材202は弾性変形クリップ204を備えており、係止溝203を弾性変形クリップ204に係合させることで2つの部品230,240を連結させるものである。
【0003】
この特許文献1に記載の連結構造は、プラグ側部材201をソケット側部材202に対して、連結方向(図16の紙面で下から上に向かう方向)に押し込むことで両者が連結されるものである一方、プラグ側部材201をソケット側部材202に上記連結方向と直交する方向(図16の紙面の奥側から手前側に向かう方向)にスライドさせることで連結が解除できるようになっている。この特許文献1に記載のような連結構造であれば、部品を誤って組付けてしまった場合や、部品の交換をしたい場合などでも簡単に連結の解除と再組立てが行えるため利便性がよいものではあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-150027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の連結構造であると、ソケット側部材202に設けられている弾性変形クリップ204が変形するための空間206を弾性変形クリップ204とソケット格納側の壁部205とのあいだに設ける必要がある点で、接続部周辺をコンパクトに構成するためにはまだ改善されるべき余地があった。また、特許文献1に記載の連結構造は、上記連結方向と直交する方向(図16の紙面の奥側から手前側に向かう方向)における位置決めが行われていない点などにおいても、改善されるべき余地があった。
【0006】
本発明は、部品どうしの連結と連結解除が簡単に行え、かつ、よりコンパクトで高性能な連結具と、その連結具を用いて部材どうしを連結する連結構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る連結具は、プラグ部材(11,111)とソケット部材(41,141)を備えた連結具(10)であって、前記プラグ部材(11,111)は、少なくとも1対の弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)を備えており、前記1対の弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)は、それぞれの弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)が前記プラグ部材(11,111)の外側に向けて爪部(13A~13D)を有しているとともに、前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)の前記爪部(13A~13D)の存在する面の裏側になる背面(32)どうしが内側を向いて配置されており、前記ソケット部材(41,141)は、前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)と係合する少なくとも1対の開口部(42A~42D,142A,142B)を備えており、前記プラグ部材(11,111)を前記ソケット部材(41,141)に挿入する方向を挿入方向と定義し、前記挿入方向と直交する方向を解除スライド方向と定義した場合に、前記爪部(13A~13D)は、前記挿入方向で係合する爪部係合側の爪面(29)と、前記解除スライド方向で係合する解除側傾斜面(18A~18D)とを有し、前記開口部(42A~42D,142A,142B)は、前記爪部係合側の爪面(29)と係合する第1段部(43A~43D)と、前記解除側傾斜面(18A~18D)と係合する第2段部(48A~48D)を有しており、前記プラグ部材(11,111)が前記ソケット部材(41,141)に係合した状態から、前記プラグ部材(11,111)をソケット部材(41,141)に対して解除スライド方向に操作することで、前記解除側傾斜面(18A~18D)と前記第2段部(48A~48D)の係合が解除され、その状態からさらに前記プラグ部材(11,111)をソケット部材(41,141)に対して前記挿入方向に動かすことにより、前記プラグ部材(11,111)がソケット部材(41,141)から離脱されるようになっていることを特徴とするものである。
【0008】
また、幾つかの場合、前記プラグ部材(11,111)が前記ソケット部材(41,141)に係合した状態において、前記爪部(13A~13D)の前記第1段部(43A~43D)と向かい合う側の面である前記爪部係合側の爪面(29)は、前記第1段部(43A~43D)の被係合面に対して傾斜した面となっているものでもある。
また、幾つかの場合、前記プラグ部材(11,111)は前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)が取付けられる基板部(20)を備え、前記基板部(20)の前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)が延設されている側の面と反対側の面が挿入側前面(23)となっているものでもある。
また、幾つかの場合、前記プラグ部材(11,111)の前記基板部(20)の両側にはそれぞれ挿入側側面部(24A,24B)を介して取付部(16A,16B)が設けられているものでもある。
また、幾つかの場合、前記ソケット部材(41,141)の内部には中仕切壁(51)が設けられており、前記中仕切壁(51)は、前記プラグ部材(11,111)を前記ソケット部材(41,141)に挿入する初期操作段階において、前記プラグ部材(11,111)の前記挿入側側面部(24B)と当接する部分となっているものでもある。
また、幾つかの場合、前記ソケット部材(41,141)の前記開口部(42A~42D,142A,142B)は逆U字状の空間となっており、その逆U字状の空間の一辺部分が前記第1段部(43A~43D)となっており、前記第1段部(43A~43D)が設けられている一辺の両側の2辺の部分が前記第2段部(48A~48D)となっており、前記第1段部(43A~43D)の設けられている辺と向かいあう辺は開放されているものでもある。
また、幾つかの場合、前記爪部(13A~13D)の前記解除側傾斜面(18A~18D)が設けられている一方側の反対側となる他方側は垂直面(19A~19D)となっているものでもある。
また、幾つかの場合、前記プラグ部材(11,111)は、2組以上の前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)を有しており、前記弾性クリップ(12A~12D,112A,112B)のあいだには壁部(14、15)が設けられているものでもある。
【0009】
そして、本開示の一態様に係る連結構造は、前記したいずれかの連結具(10)を用いた連結構造であって、第1連結本体(61、71)に座グリ穴を設けて前記座グリ穴に前記プラグ部材(11,111)を取付け、第2連結本体(62、72)に座グリ穴を設けて当該座グリ穴に前記ソケット部材(41,141)を取付け、前記プラグ部材(11,111)と前記ソケット部材(41,141)とを係合させて前記第1連結本体(61、71)と前記第2連結本体(62、72)とを連結することを特徴とするものである。
また、幾つかの場合、前記第1連結本体(61、71)の前記プラグ部材(11,111)が取付けられている平面と、前記プラグ部材(11,111)の取付部の表面(31)とは略同一面となっており、前記第2連結本体(62、72)の前記ソケット部材(41,141)が取付けられている平面と、前記プラグ部材(11,111)の取付時の表面(52)とは略同一面となっているものでもある。
また、幾つかの場合、前記プラグ部材(11,111)の前記爪部(13A~13D)の前記解除側傾斜面(18A~18D)が設けられている一方側の反対側となる他方側は垂直面(19A~19D)となっており、前記第1連結本体(61、71)において、重力が作用する方向における、重力を受ける側に前記プラグ部材(11,111)の前記垂直面(19A~19D)を配置し、重力を受ける側とは逆の側に前記プラグ部材(11,111)の前記解除側傾斜面(18A~18D)を配置するものでもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の連結具および連結構造は、部品どうしの連結と連結解除が簡単に行え、かつ、よりコンパクトで高性能な連結具と連結構造になっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プラグ部材の斜視図である。
図2】プラグ部材の平面図である。
図3】プラグ部材の正面図である。
図4】プラグ部材の側面図である。
図5】ソケット部材の斜視図である。
図6】ソケット部材の平面図である。
図7】ソケット部材の正面図である。
図8】ソケット部材の側面図である。
図9】プラグ部材を第1連結本体に取り付けて使用する状態を説明する図である(T字接続の連結構造の例)。
図10】ソケット部材を第2連結本体に取り付けて使用する状態を説明する図である(T字接続の連結構造の例)。
図11】プラグ部材とソケット部材を組み合わせた状態を説明する図である。
図12図11のB-B断面で見た状態を説明する図である。
図13】プラグ部材を第1連結本体に取り付けて使用する状態を説明する図である(面接続の連結構造の例)。
図14】ソケット部材を第2連結本体に取り付けて使用する状態を説明する図である(面接続の連結構造の例)。
図15】連結具の別の実施形態を示した説明図である。
図16】従来の連結具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。本発明の連結具10は、プラグ部材11とソケット部材41を組み合わせることで機能するものとなっており、図1図4は、本発明の実施の形態1に関するプラグ部材11を説明する図であり、図5図8は、本発明の実施の形態1に関するソケット部材41を説明する図であり、プラグ部材11とソケット部材41を組み合わせた状態は図11に示されている。また、本発明の連結具10のプラグ部材11とソケット部材41は、それぞれ、本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)に取り付けて使用されるが、その本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)のことを「第1連結本体61」、「第2連結本体62」と表記する(図面としては、図9図10図13図14を参照)。また、本明細書の説明においては、前記プラグ部材11をソケット部材41に挿入する方向を挿入方向と定義し(図11の矢印Zを参照)、前記挿入方向と直交する方向であって係合片(爪部13)が長手方向に延設されている方向(プラグ部材11とソケット部材41の長手方向と短手方向のうちの長手方向)を解除スライド方向と定義する(図11の矢印Yを参照)。なお、各図面においては図面の見やすさと説明の便宜上、部品の角部の稜線を一部で省略して記載している。
【0013】
まず、プラグ部材11について詳細に説明する。図1は、プラグ部材11の斜視図であり、図2はプラグ部材11の平面図であり、図3はプラグ部材11の正面図であり、図4はプラグ部材11の側面図である。この第1の実施形態においては、プラグ部材11は4つの弾性クリップ12A,12B,12C,12Dを備えている。各弾性クリップ12A,12B,12C,12Dは、プラグ部材11の外側に向けて、それぞれ爪部13A,13B,13C,13Dを備えている。この弾性クリップ12A~12Dは、後述するソケット部材41の開口部42A~42D(図5図7を参照)と係合する部分となる。弾性クリップ12Aと弾性クリップ12Bは、それぞれがプラグ部材11の外側に向けて延びる爪部13Aと爪部13Bを備えており、爪部13Aと爪部13Bの存在しない背面32どうしが第1壁部14を間に挟むようにして、内側を向いた位置関係(背中合わせになるような位置関係)で配置されている。そして、そのような1組の弾性クリップ12A,12Bと、別の1組の弾性クリップ12C,12Dとが、第2壁部15を間に挟むような位置関係で並んで配置されている。第1壁部14と第2壁部15は、プラグ部材11の剛性を確保する機能を有しており、プラグ部材11の略中央位置で十字状に一体に連結されている。(なお、本明細書の説明において4つの弾性クリップ12A,12B,12C,12Dに共通する説明については、代表して1つの弾性クリップ12 についてのみ図面等で番号を付している場合もある。)
【0014】
プラグ部材11の各弾性クリップ12A~12Dの両側部には、取付部16A,16Bが設けられている。取付部16A,16Bは、図3に示すようにクリップ11の全体厚みよりも薄い板状の部材で構成されており、その板状の部材の適宜の位置に取付穴17A,17Bが設けられている。この取付穴17A,17Bにネジのような取付部品を通して、プラグ部材11は、本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)となる第1連結本体61に取り付けて使用される(後述説明の図9図10で示す「第1連結本体61」、「第2連結本体62」も参照)。なお、ネジではなく接着などでプラグ部材11を第1連結本体61に取り付けるようにしてもよく、この場合には取付穴17A,17Bを設ける必要はない。
【0015】
取付部16A,16Bは、図2に示されているように、第1壁部14と一体的に連結しており、これによりプラグ部材11の剛性はさらに向上している。また、図3図4に示されているように、取付部16A,16Bはプラグ部材11の挿入側側面部24A,24Bを介して基板部20に一体的に連結されるようになっており、基板部20は第1壁部14および第2壁部15とも一体的に連結されている。基板部20の弾性クリップ12が配置されている側と反対側の面が挿入側前面23となって、係合操作時にソケット部材41に最初に挿入されていく側の面となる。このように、構成することで、プラグ部材11の挿入側には爪部13を除き他に引っ掛かりやすい突起部分がなくなるのでスムーズに挿入操作が行え、また、係合機能を有する部品(本実施形態の弾性クリップ12に相当する部分が破損しにくくなる。基板部20は弾性クリップ12と第1壁部14の間に厚みを増した補強リブ21を有している。このような機械的な構造とすることによりで、プラグ部材11は全体的な剛性に優れたものとなっている。なお、取付部16A,16Bと挿入側側面部24A,24Bとの一体連結構造においては、図2で示すように、肉抜き凹部22を設けている。強度や剛性の観点だけからすれば肉抜き凹部22を設けずに全体的に中実な構成とすればよいとも考えられるが、プラグ部材11を合成樹脂の射出成形により製造する場合には、樹脂の冷却工程で樹脂が収縮してヒケとよばれる凹部を生じてしまう不具合があるため、本実施形態では、あえて肉抜き凹部22を設けている。
【0016】
上記のようにプラグ部材11の全体的な剛性を担保したうえで、弾性クリップ12の変形量を確保するべく、各弾性クリップ12A,12B,12C,12Dの左右両脇には切欠き25が設けられている(図3を参照)。そして弾性クリップ12は、爪部13が略中央部分に配置されており、爪部13と基板部20のあいだは弾性クリップ基部26で連結されている。この弾性クリップ基部26は爪部13から基板部20に向けて徐々に幅広で肉厚になるように設計されており、また、弾性クリップ基部26の両側部分まで上記の切欠き25が延びるように設計されている。このような弾性クリップ基部26により弾性クリップ12の機械構造的な強度と撓みによる弾性変形のバランスが担保されている。一方、弾性クリップ12の弾性クリップ基部26とは反対側には弾性クリップ先端部27が爪部13から延びるように設けられている。弾性クリップ先端部27は、プラグ部材11がソケット部材41と連結した際に、ソケット部材41の内面と接触して弾性クリップ12の弾性力を受けるようになっている部分となる。
【0017】
続いて、爪部13の細部構造を説明する。図4に示すように、爪部13はソケットへの挿入方向の前側に向かって下り傾斜となる爪部挿入側の爪面28と、逆に、ソケットへの挿入方向の後ろ側(解除方向側)に向かって下り傾斜となる爪部係合側の爪面29を備えている。この爪部13A~13Dの爪部係合側の爪面29は、後述するソケット部材41の開口部42A~42Dの第1段部43A~43D(図5図7を参照)に係合する部分となる。爪部挿入側の爪面28は弾性クリップ基部26の平面から徐々に隆起するように傾斜しており、爪部挿入側の爪面28と爪部係合側の爪面29とは曲面で滑らかに接続されており、爪部係合側の爪面29は弾性クリップ先端部27の平面に向けて徐々に下り傾斜して接続するように構成されている。爪部挿入側の爪面28は、プラグ部材11をソケット部材41に挿入操作する過程で爪部13がソケット部材41側の被係合部(後述する第1段部43A~43D)にスムーズに入り込むための機能を担っており、一方、爪部係合側の爪面29はソケット部材41側の被係合部(第1段部43A~43D)と係合する部分となる。一般的な爪による係合技術からすれば、爪部係合側の爪面29は弾性クリップ先端部27の平面に向けて徐々に下り傾斜するよりも、弾性クリップ先端部27の平面と直交する面にすることが係合強度向上の観点からすれば一般的ではある。しかしながら、本発明の実施形態においては、あえて傾斜面としている。その理由は、プラグ部材11とソケット部材41をそれぞれ、本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)である「第1連結本体61」、「第2連結本体62」に取り付ける際に生じる取付誤差を吸収する目的にあるがその詳細は後述説明する。なお、この爪部係合側の爪面29の傾斜角度α(図4を参照)は、取付誤差が発生しないような場合であれば必ずしも設ける必要はないが、もし、設ける場合には、被係合平面(この実施形態の場合は第1段部43の面。図12も参照。)に対して5度~45度の傾斜となっていることが好ましく、より好ましくは10度~30度である。なお、爪部係合側の爪面29の傾斜は部分的に曲面となっていてもよく、この場合の曲面の程度は、上記した好ましい平面の傾斜角度αに置き換えた場合に得られる係合強度と同等の係合強度となる範囲の曲面とすればよい。
【0018】
本発明の連結具10は、ソケット部材41へのプラグ部材11の挿入方向と直交する方向にスライド操作して両部材を解除操作できるようにするべく、さらに爪部13に特別な工夫がなされている。図2に示されるように爪部13A,13B,13C,13Dは、一方側の端部が解除側傾斜面18A,18B,18C,18Dとなっており、他方側の端部が垂直面19A,19B,19C,19Dとなっている。この爪部13A~13Dの解除側傾斜面18A~18Dと垂直面19A~19Dは、後述するソケット部材41の開口部42A~42Dの第2段部48A~48D(図7を参照)に係合する部分となる。解除側傾斜面18A~18Dのある方向に向けてソケット部材41がプラグ部材11に対して一定量以上の操作力でスライド操作されると、解除側傾斜面18A~18Dは開口部42A~42Dの第2段部48A~48Dを乗り越えて係合が解除される。逆に、垂直面19A~19Dのある方向に向けてソケット部材41をプラグ部材11に対してスライド操作しても、垂直面19A~19Dは開口部42A~42Dの第2段部48A~48Dを乗り越えることはない。なお、この解除側傾斜面18A~18Dの傾斜角度β(図2を参照)は被係合面(この実施形態の場合は第2段部48A~48Dの面。)に対して10度~60度の傾斜平面となっていることが好ましく、より好ましくは20度~40度である。なお、解除側傾斜面18A~18Dは部分的に曲面となっていてもよく、この場合の曲面の程度は、上記した好ましい平面の傾斜角度βに置き換えた場合に得られる係合強度と同等の係合強度となる範囲の曲面とすればよい。
【0019】
上記のように構成されたプラグ部材11は、例えば、樹脂射出による一体成形物として製造することができるが、その製造の際に使用する金型は、スライドコアを使用せずとも、上下2分割の金型のみで製造することができるように各部分の形状が工夫されている。例えば、各弾性クリップ12A~12Dの先端部27よりも上部の空間を開放空間とせずに一方の取付部16Aと他方の取付部16Bとをバー状の部材でつなぐようにすることで部品全体の剛性をさらに向上させるような設計も可能ではあるが、そのようにすると製造金型にスライドコアが必要になるため、本実施形態ではあえて、弾性クリップ12A、12Bの弾性クリップ先端部27側の上方空間には構造物を設けずに、開放された空間としている。上下2分割の金型のみで製造することができるように各部分の形状が設計されている点で製造面においても本発明の実施形態の構造には優位性がある。
【0020】
次に、連結具10のソケット部材41について説明する。図5は、ソケット部材41の斜視図であり、図6はソケット部材41の平面図であり、図7はソケット部材41の正面図であり、図8はソケット部材41の側面図である。この第1の実施形態においては、ソケット部材41は4つの開口部42A,42B,42C,42Dを備えている。この、4つの開口部42A,42B,42C,42Dは、前述したプラグ部材11の4つの弾性クリップ12A,12B,12C,12Dと係合する部分となる。開口部42Aと開口部42Bは底板50を間に挟んで向かい合うように配置されている。そして、そのような1組の開口部42Aと開口部42Bと、別の1組の開口部42Cと開口部42Dとが、中間壁部44を間に挟むような位置関係で並んで配置されている。開口部42A~42Dの中間壁部44と反対側の端部側は略平板状の端壁部45を介して、曲面形状の側面部46A,46Bにつながっている。端壁部45と側面部46A,46Bとは、1枚の板状の底板50で一体構造となっており、底板50の側面部46A,46Bの近傍には取付穴47A,47Bが設けられている。この取付穴47A,47Bにネジのような取付部品を通して、ソケット部材41は、板材などに取り付けて使用される(後述説明の図9図10で示す「第1連結本体61」、「第2連結本体62」を参照)。なお、ネジではなく接着などでソケット部材41を第2連結本体62に取り付けるようにしてもよく、この場合には取付穴47A,47Bを設ける必要はない。
【0021】
そして、ソケット部材41の内部の片方側には、板状の中仕切壁51が設けられている。中仕切壁51は、底板50と一組の端壁部45どうしを連結するように、それらと一体成形されている。この中仕切壁51は前述のプラグ部材11をソケット部材41に挿入操作する際の初期段階における位置決めの役割を担っている。すなわち、プラグ部材11をソケット部材41に挿入する初期操作段階で、挿入操作者は、まず、プラグ部材11の挿入側側面部24B(図3を参照)がソケット部材41の中仕切壁51に当接するように手探りで位置決めする。そして、挿入側側面部24Bが中仕切壁51に当接している状態を維持しつつ、プラグ部材11をソケット部材41にさらに挿入していく。このように中仕切壁51を利用して挿入操作することで、プラグ部材11の4つの弾性クリップ12A~12Dとソケット部材41の4つの開口部42A~42Dを直接目視できない操作状況であっても、手探りにて両者の位置あわせを効率的に行うことができる。
【0022】
続いて、開口部42A~42Dの細部構造を説明する。図7に示されるように、各開口部42A,42B,42C,42Dは逆U字状の空間となっており、その逆U字状の空間の一辺部分には、前述したプラグ部材11の爪部13A~13Dの爪部係合側の爪面29と係合する第1段部43A~43Dが設けられている。そして、第1段部43A~43Dが設けられている一辺の両側の2辺の部分には、前述したプラグ部材11の爪部13A~13Dの解除側傾斜面18A~18Dと垂直面19A~19Dのいずれかと係合する第2段部48A~48Dが設けられている。第1段部43A~43Dは底面50と平行な平面となっている。すなわち、図7で示される状態でソケット部材41を水平面状に載置した場合に、第1段部43A~43Dは水平面と略平行な面となる。また、第2段部48A~48Dは底面50と略直交し、かつ、中間壁部44の外表面とも略直交する平面となっている(厳密には、製造上の理由により、第1段部43A~43Dから底面50に向かう方向に幅広となるような金型の抜き勾配が設けられているが微小であるため略直交と表現する。)。また、開口部42A~42Dの第1段部43A~43Dの設けられている辺と向かいあう辺(上記説明した第1段部43A~43D及び第2段部48A~48Dがある部分とは異なる部分の辺)は、図6で示されているように、底板50の一部を切り欠くようにして開放されている。
【0023】
上記のように構成されたソケット部材41は、樹脂射出による一体成形物として製造することができるが、その製造の際に使用する金型は、スライドコアを使用せずとも、上下2分割の金型のみで製造することができるように各部分の形状が設計されている点で製造面においても優位性のある構造となっている。
【0024】
次に、連結具10を、本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)に取り付けて使用する場合について、図9図10を用いて説明する、。連結具10のプラグ部材11とソケット部材41は、それぞれ、本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)に取り付けて使用されるが、その本来の連結したい部品(家具の板や自動車の内装部品など)を図9図10において第1連結本体61と第2連結本体62として表す。この図9図10の実施形態においては、第1連結本体61と第2連結本体62は共に直方体の板状部材であり、それら2部材をT字形状に連結することで連結構造物を組み立てる場合の実施形態である。図9に示されるように、一方の第1連結本体61にプラグ部材11が取付けられている。プラグ部材11を第1連結本体61に取り付けるには、まず、第1連結本体61にプラグ部材11の取付部16A,16Bが埋設できるような座グリ穴を設ける。第1連結本体61が木製である場合には後加工で座グリ穴を削って設けることになり、樹脂製の場合には予め座グリ穴があるように成形しておくなどして座グリ穴を設ける。座グリ穴の深さは、座グリ穴の底面にプラグ部材11の取付部の裏面30(図3図4を参照)が当接するように収納した状態で、プラグ部材11の取付部の表面31(図3図4を参照)と、第1連結本体61のプラグ部材11を取付けている平面とが段差を生じないように、略同一面になるような深さとすることが重要である。プラグ部材11の取付部の表面31と第1連結本体61のなす平面とのあいだに段差があると、その段差の大きさの分だけ、プラグ部材の爪部13の位置がソケット側の開口部42の第1段部43の位置とずれてしまうことになるため、座グリ穴の深さは注意する必要がある。ただ、現実的には、座グリ穴を設ける際に加工上の誤差が生じてしまうこともあるため、本発明の実施形態では、爪部13の爪部係合側の爪面29にあえて傾斜角度αを設けて、その誤差を吸収するような工夫もなされている。
【0025】
一方、図10に示されるように、もう一方の第2連結本体62にはソケット部材41が取付けられている。ソケット部材41を第2連結本体62に取り付けるのも上述と同様にして、第2連結本体62にソケット部材41が埋設できるような座グリ穴を設ける。ソケット部材41の場合は、ソケット部材41の取付時の表面52(図7図8参照)と、第2連結本体62のソケット部材41を取付けている平面とが段差を生じない略同一な面となるように位置合わせすることが重要となるため、座グリ穴の深さはソケット部材41全体がちょうど埋設される深さとする。
【0026】
上記のように、第1連結本体61のプラグ部材11と第2連結本体62のソケット部材41を位置合わせして、挿入方向で係合する爪部係合側の爪面29と第1段部43とを係合させ、かつ、解除スライド方向で係合する解除側傾斜面18または垂直面19と第2段部48とを係合させて、第1連結本体61と第2連結本体62を連結する。また、第1連結本体61のプラグ部材11と第2連結本体62のソケット部材41の連結を解除する場合には、プラグ部材11をソケット部材41に対して、解除スライド方向における解除側傾斜面18のある向きにスライド操作することで、解除側傾斜面18と第2段部48の係合が解除され、その状態からさらにプラグ部材11をソケット部材41に対して挿入方向に抜いていくことで、前記プラグ部材11がソケット部材41から離脱される。
【0027】
続いて、プラグ部材11とソケット部材41が連結された状態の構造について、より詳しく、図11図12で説明する。図11は、プラグ部材11とソケット部材41が連結された状態を示すものであり、第1連結本体61と第2連結本体62は当接面63でほぼ完全に面接触している状態となっている。図12図11のB-B線の位置における断面図である。なお、上述した座グリ穴は図11で連結具10の全体の外形線と同じ形状として第1連結本体61と第2連結本体62に設けられているものである。また、説明を分かりやすくするため、図11では、第1連結本体61と第2連結本体62は断面を斜線で表しており、一方、プラグ部材11とソケット部材41は第1連結本体61と第2連結本体62の座グリ穴の中で係合した状態での正面図として表している。
【0028】
この図11図12の連結状態においては、プラグ部材11の爪部13の爪部係合側の爪面29の位置は、ソケット部材41の開口部42の第1段部43の位置に対して、最も理想的な位置である場合(座グリ穴の加工誤差などの悪影響が無い場合)として記載されている。図12に示されているように、プラグ部材11がソケット部材41に係合した状態において、爪部係合側の爪面29は、第1段部43の被係合面に対して傾斜角度αだけ傾斜した面となっている。現実的な加工状況として、第1連結本体61と第2連結本体62に設けるべき上述した座グリ穴に加工誤差が生じてしまうことが起こり得る。そのような場合に、本発明の実施形態における爪部係合側の爪面29の傾斜角度αを設けずに、この部分を直交係合面とした場合(角度αがほぼ0度の場合)には、第1連結本体61を第2連結本体62に強く押し込んでも係合しない状況や、逆に、第1連結本体61が第2連結本体62に係合した状態であっても第1連結本体61と第2連結本体62が当接すべき面どうしに隙間ができ、ガタツキが生じてしまう状況となる。しかしながら、本発明の実施形態であれば、図12に記載の爪部係合側の爪面29の傾斜角度αの影響が及ぶ範囲(傾斜角度αが存在する挿入方向の幅の範囲)であれば、爪部13の最頂部は第1段部43を乗り越えて係合する位置関係を取りやすくなり、また、第1連結本体61と第2連結本体62の当接面どうしに生じていた隙間を吸収できるようになるという利点がある。
【0029】
続いて、プラグ部材11とソケット部材41を解除する場合について説明する。前述のとおり、プラグ部材11の爪部13の一方側は解除側傾斜面18となっており、他方側は垂直面19となっている。この解除側傾斜面18と垂直面19が開口部42の第2段部48に係合することにより、プラグ部材11とソケット部材41は、挿入方向だけではなく、挿入方向と直交する方向(図11の矢印Aの方向)にもガタツキが生じないように位置決めできる点で優位性がある。その一方で、爪部13の一方側は傾斜面18となっていることから、プラグ部材11をソケット部材41に対して、一定量以上の操作力でスライド操作すると、解除側傾斜面18A~18Dは開口部42A~42Dの第2段部48A~48Dを乗り越えて係合が解除される。このような機能により、一度連結した第1連結本体61と第2連結本体62とを必要な場合には簡単に解除することができるものである。
【0030】
なお、本発明における連結具10は、解除スライド方向で、一方側がスライド解除可能な解除側傾斜面18となっており、他方側がスライド解除できない垂直面19となっているため、この方向の非対称性を利用して、第1連結本体61と第2連結本体62が重力で意図せずにずれてしまうことを抑制することができるという優位性をも有する。すなわち、第1連結本体61と第2連結本体62に重力が作用方向における、重力を受ける側に垂直面19を配置し、重力が作用する方向とは逆の側に解除側傾斜面18を配置することで、重力の作用により第1連結本体61と第2連結本体62がスライド解除方向に意図せずにズレてしまったり、あるいは意図せずに外れてしまったりするようなことを防ぐことができる。
【0031】
また、本発明においては、プラグ部材11とソケット部材41の係合の際に変形する弾性変形部材をソケット側ではなくプラグ側に設けており、しかも、一対の弾性クリップ12Aと弾性クリップ12Bはそれぞれが反対方向に向けて爪部13Aと爪部13Bを備えており、爪部13Aと爪部13Bの存在しない面どうしが第1壁部14を間に挟むようにして、内側を向いた位置関係(背中合わせになるような位置関係)で配置されていることから、特許文献1で示した従来技術のようにソケット側に弾性変形のための余分な空間を設ける必要がない。
【0032】
また、本発明においては、プラグ部材11とソケット部材41の係合の際に変形する弾性変形部材を受ける側の被係合部を、ソケット部材の一部をくり抜くことで形成した開口部42としているため、特許文献1で示した従来技術のように被係合部を肉盛りして形成することに比較して、肉盛りしないですむ分だけ薄くコンパクトに設計することができ、製造材料コストも少なくて済むという有利な効果がある。さらに、本発明においては、開口部42には、ソケットの挿入方向の係合だけではなく、ソケットの挿入方向と直交する方向にも係合する第2段部48が設けられているため、組立時において解除スライド方向に位置決めしながら組み立てることができるという有利な効果もある。
【0033】
次に、本発明における連結具10の連結構造物における別の実施形態を図13図14で説明する。先に示した図9図10における連結構造物の実施形態が、第1連結本体61の広幅平面と、それよりも面積と幅が小さな第2連結本体62の細幅平面とをT字状に連結した実施形態であったのに対して、図13図14で示す実施形態は、第1連結本体71の広幅平面と、それと概ね同じ面積と幅を有する第2連結本体72の広幅平面とを、面合わせで連結する実施形態となっている。図13に示されるように、一方の第1連結本体71にプラグ部材11が取付けられており、図14に示されるように、他方の第2連結本体72にソケット部材41が取付けられている。プラグ部材11とソケット部材41を第1連結本体71と第2連結本体72に取り付ける要領は前述と同じであるため説明は省略する。この場合においても、重力の作用を受ける側にプラグ部材11の爪部13の垂直面19を配置することが好ましい。
【0034】
続いて、本発明における連結具10の別の実施形態について、図15で説明する。先に説明した連結具10は、弾性クリップ12を2組(全部で4個)備える実施形態であったが、図15に示す実施形態の連結具10では、プラグ部材111の弾性クリップ112A,112Bが1組(全部で2個)となっている。ソケット部材141の開口部142A,142Bも当然に1組(2個)であり、全体としてよりコンパクトな構成となっている。小型の連結構造物の連結に有利な実施形態である。ただし、必ずしも小型の連結構造物の連結だけに用いられるというわけではなく、一つの弾性クリップ112を連結構造物の大きさに合わせたより長いものとしてもよい。この実施形態においては、図5図8の実施形態で説明したいたようなソケット部材41の中仕切壁51を設けておらず、これにより、ソケット部材141が方向対称性を有することになるため、プラグ部材111をプラグ部材141に対して任意の方向で組付けることができる。なお、弾性クリップ112A,112Bと開口部142A,142Bの係合に関する構成と機能は前述の実施形態と同様であるため、さらなる説明は省略する。
【0035】
また、さらに別の実施形態として連結構造物がさらに大きくなる(または長くなる)場合には、それに合わせて弾性クリップ12を3組以上連接した実施形態としてもよい。1つの弾性クリップ12を長く設計するとプラグ部材11全体の剛性が低くなるという傾向もあるため、1つの弾性クリップ12を長く設計するよりも、適切な剛性が担保できる長さの弾性クリップ12を多数組設け、弾性クリップ12どうしのあいだに図1の実施形態で示していたような第2壁部15を設けることが、強度の面からは好ましい。
【0036】
なお、本発明は、上記で開示された実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の実施の形態で説明した各技術事項と実質的に同一な技術または同様な効果を奏する技術として当業者に認識される技術を適宜利用したり、代替技術として使用したり、追加で付加したりすることも可能である。また、上記各実施形態の特徴構成どうしを組み替えて実施したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0037】
連結具10、 11,111プラグ部材、 12A~12D,112A,112B弾性クリップ、 13A~13D爪部、 14第一壁部、 15第2壁部、 16A~16B取付部、 17A~17B取付穴、 18 A~18D解除側傾斜面、 19 A~19D垂直面、 20基板部、 21補強リブ、 22肉抜き凹部、 23挿入側前面、 24 A~24B挿入側側面部、 25切欠き、 26弾性クリップ基部、 27弾性クリップ先端部、 28爪部挿入側の爪面、 29爪部係合側の爪面、 30取付部の裏面、 31取付部の表面、 32背面、 41,141ソケット部材、 42A~42D,142A,142B開口部、 43A~43D第1段部、 44中間壁部、 45端壁部、 46A~46B側面部、 47A~47B取付穴、 48 A~48D第2段部、 50底板、 51中仕切壁、 52取付時の表面、 61,71第1連結本体、 62,72第2連結本体、 63第1連結本体と第2連結本体の当接面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16