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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171525
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光モジュールおよび送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20241205BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088581
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 敬広
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB06
2H137BA03
2H137BB03
2H137BC02
2H137BC10
2H137BC51
2H137FA06
(57)【要約】
【課題】光レセプタクルおよび光伝送体がいずれの方向に位置ずれした場合であっても光結合効率が低下しにくい光モジュールを提供すること。
【解決手段】光モジュールは、発光素子と、光レセプタクルと、を有する。光レセプタクルは、凸面である入射面と、凹面である出射面とを含む。発光素子から出射され、光伝送体の端面へ向かうた光は、第1光線と、第2光線とを含む。第1光線のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束は、出射面から出射された後に第1光束の中心光線上で集光される。光軸を含む平面において、第2光線のうち平面上における一方の発光面端部である出射点から光軸に対して±10°で出射される第2光束は、出射面から出射された後に第1光束の中心光線に対して出射点が存在する側とは反対側へ位置するように制御される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された発光素子と、
光伝送体が接続された場合に、前記発光素子および前記光伝送体の端面を光学的に結合するための光レセプタクルと、を有し、
前記光レセプタクルは、
前記発光素子から出射される光を入射させるための凸面である入射面と、
前記入射面で入射された光を前記光伝送体の端面に向けて出射させるための凹面である出射面と、
を含み、
前記発光素子から出射され、前記光伝送体の端面へ向かう光は、前記発光素子の発光面の中心から出射される第1光線と、前記発光面の外縁から出射される第2光線とを含み、
前記第1光線のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束は、前記出射面から出射された後に前記第1光束の中心光線の光路上で集光され、
前記第1光束の中心光線の光路を含み、基板に垂直な平面において、前記平面上における前記発光面の外縁である2つの出射点のうちの一方の出射点から前記光軸に対して±10°で出射される第2光束は、前記出射面から出射された後に前記第1光束の中心光線の光路に対して前記一方の出射点が存在する側とは反対側へ位置するように制御される、
光モジュール。
【請求項2】
半径が3μm、長さが30μmの仮想円柱を、前記仮想円柱の中心軸が前記光伝送体と平行になり、かつ前記第1光束が最も細くなる位置における前記第1光束の中心光線の光路上に位置するように前記仮想円柱の重心を配置したとき、
前記第1光束の中心光線の光路および前記出射点を含む平面において、前記第2光束は、前記仮想円柱内かつ前記出射面から出射された後に前記第1光束の中心光線の光路に対して前記出射点が存在する側とは反対側へ位置するように制御される、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光伝送体のコアの端面の中心は、前記仮想円柱内に配置される、請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1光束が最も細くなる位置と、前記第2光束が最も細くなる位置は、異なる位置である、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記入射面の中心の曲率半径をR1とし、前記出射面の中心の曲率半径をR2としたとき、以下の式(1)を満たす、請求項1に記載の光モジュール。
式(1) R1>R2
【請求項6】
前記発光素子から出射された光のうち、前記入射面に入射される光の前記入射面上の径をE1とし、前記発光素子から出射された光のうち、前記出射面から出射される光の前記出射面上の径をE2としたとき、以下の式(2)を満たす、請求項1に記載の光モジュール。
式(2) E1/E2>7
【請求項7】
前記入射面で入射した光を前記出射面に向けて反射させるための反射面をさらに有する、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光モジュールと、
前記光レセプタクルから出射した光が入射する光伝送体と、を有し、
前記発光素子から出射された光のうち、前記出射面から出射される光の前記出射面上の径をE2とし、前記発光素子から出射された光のうち、前記光伝送体の端面上の径をXとしたとき、以下の式(3)を満たす、送信装置。
式(3) 2X<E2<4X
【請求項9】
前記発光素子の発光面の中心および前記入射面の中心の間の距離をD1とし、前記出射面の中心および前記光伝送体の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たす、請求項8に記載の送信装置。
式(4) 1<D1/D2<2.5
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールおよび送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、光ファイバーや光導波路などの光伝送体を用いた光通信には、面発光レーザ(例えば、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser))などの発光素子を備えた光モジュールが使用されている。光モジュールは、発光素子と、光レセプタクルとを有する。光レセプタクルとしては、球面収差を少なくする観点から、メニスカスレンズの機能を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、光ファイバーを介して光信号を送信するための光学モジュールデバイス(光モジュール)が記載されている。光学モジュールデバイスは、発光素子と、光ファイバーと、光学ベンチと、カバーとを有する。カバーは、発光素子から出射された光の配光を制御するためのレンズアッセンブリを有する。レンズアッセンブリは、凸レンズ面である入射面と、凹レンズ面である出射面とを有する。発光素子から出射された光は、凸レンズである入射面で入射し、凹レンズ面である出射面から出射することで、光ファイバーの端面に集光するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-526838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような光学モジュールデバイスでは、カバー(レンズアッセンブリ)と光ファイバーとの組み立て精度によって、発光素子から出射された光の光ファイバーに対する光結合効率が低下してしまう。光結合効率の低下は、光ファイバーの軸に沿った前後方向と、前後方向に垂直な左右方向と、前後方向および左右方向に垂直な上下方向とのいずれかの方向において、カバーと、光ファイバーとが位置ずれした場合に生じうる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、光レセプタクルおよび光伝送体がいずれの方向に位置ずれした場合であっても光結合効率が低下しにくい光モジュールおよび送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]基板上に配置された発光素子と、光伝送体が接続された場合に、前記発光素子および前記光伝送体の端面を光学的に結合するための光レセプタクルと、を有し、前記光レセプタクルは、前記発光素子から出射される光を入射させるための凸面である入射面と、前記入射面で入射された光を前記光伝送体の端面に向けて出射させるための凹面である出射面と、を含み、前記発光素子から出射され、前記光伝送体の端面へ向かう光は、前記発光素子の発光面の中心から出射される第1光線と、前記発光面の外縁から出射される第2光線とを含み、前記第1光線のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束は、前記出射面から出射された後に前記第1光束の中心光線の光路上で集光され、前記第1光束の中心光線の光路を含み、基板に垂直な平面において、前記平面上における前記発光面の外縁である2つの出射点のうちの一方の出射点から前記光軸に対して±10°で出射される第2光束は、前記出射面から出射された後に前記第1光束の中心光線の光路に対して前記一方の出射点が存在する側とは反対側へ位置するように制御される、光モジュール。
[2]半径が3μm、長さが30μmの仮想円柱を、前記仮想円柱の中心軸が前記光伝送体と平行になり、かつ前記第1光束が最も細くなる位置における前記第1光束の中心光線の光路上に位置するように前記仮想円柱の重心を配置したとき、前記第1光束の中心光線の光路および前記出射点を含む平面において、前記第2光束は、前記仮想円柱内かつ前記出射面から出射された後に前記第1光束の中心光線の光路に対して前記出射点が存在する側とは反対側へ位置するように制御される、[1]に記載の光モジュール。
[3]前記光伝送体のコアの端面の中心は、前記仮想円柱内に配置される、[1]または[2]に記載の光モジュール。
[4]前記第1光束が最も細くなる位置と、前記第2光束が最も細くなる位置は、異なる位置である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光モジュール。
[5]前記入射面の中心の曲率半径をR1とし、前記出射面の中心の曲率半径をR2としたとき、以下の式(1)を満たす、[1]~[4]のいずれか一項に記載の光モジュール。
式(1) R1>R2
[6]前記発光素子から出射された光のうち、前記入射面に入射される光の前記入射面上の径をE1とし、前記発光素子から出射された光のうち、前記出射面から出射される光の前記出射面上の径をE2としたとき、以下の式(2)を満たす、[1]~[5]のいずれか一項に記載の光モジュール。
式(2) E1/E2>7
[7]前記入射面で入射した光を前記出射面に向けて反射させるための反射面をさらに有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の光モジュール。
[8][1]~[7]のいずれか一項に記載の光モジュールと、前記光レセプタクルから出射した光が入射する光伝送体と、を有し、前記発光素子から出射された光のうち、前記出射面から出射される光の前記出射面上の径をE2とし、前記発光素子から出射された光のうち、前記光伝送体の端面上の径をXとしたとき、以下の式(3)を満たす、送信装置。
式(3) 2X<E2<4X
[9]前記発光素子の発光面の中心および前記入射面の中心の間の距離をD1とし、前記出射面の中心および前記光伝送体の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たす、[8]に記載の送信装置。
式(4) 1<D1/D2<2.5
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光レセプタクルおよび光伝送体がいずれの方向に位置ずれした場合であっても光結合効率が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1の送信装置の構成を示す図である。
図2図2A~Cは、実施の形態1の送信装置における光路図である。
図3図3A~Cは、比較例の送信装置における光路図である。
図4図4A~Cは、No.1の実施例1のシミュレーション結果を示すグラフである。
図5図5A~Cは、No.9の比較例1のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6図6は、実施の形態2の送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る光モジュールおよび送信装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[実施の形態1]
(送信装置の構成)
図1は、送信装置の構成を示す図である。
【0012】
図1に示されるように、送信装置100は、光モジュール110と、光伝送体120とを有する。光モジュール110は、発光素子130および光レセプタクル140を有する。
【0013】
発光素子130は、所定の波長の光を出射する。発光素子130は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である。本実施の形態では、発光素子130は、図外の基板に固定されている。発光素子130の数は、特に限定されない。発光素子130の数は、1個でもよいし、複数個でもよい。本実施の形態では、発光素子130の数は1個である。なお、発光素子130が複数個の場合、発光素子130の数は、後述する光レセプタクル140の入射面141の数、出射面142の数、光伝送体120の数とそれぞれ同じ数である。また、以下の説明では、発光素子130における発光面の中心から出射される光を第1光線L1と称し、発光素子130における発光面の端部から出射される光を第2光線L2と称することがある。また、発光素子130の発光面から出射されるすべての光線を単に光Lと称することもある。
【0014】
光レセプタクル140は、光伝送体120が接続された場合に、発光素子130および光伝送体120の端面を光学的に結合するための樹脂製のメニスカスレンズである。光レセプタクル140は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置されている。光レセプタクル140は、光通信に用いられる波長の光に対して透光性を有する材料を用いて形成される。光レセプタクル140の材料の例には、ウルテム(登録商標)などのポリエーテルイミド(PEI)や環状オレフィン樹脂などの透明な樹脂が含まれる。また、光レセプタクル140は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル140は、入射面141と、出射面142とを有する。
【0015】
入射面141の中心軸と、出射面142の中心軸とは、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。本実施の形態では、入射面141の中心軸CA1と、出射面142の中心軸CA2とは、一致している。入射面141の中心および出射面142の中心の間の光路長Tは、1.2~1.8cmの範囲内が好ましい。
【0016】
入射面141は、発光素子130から出射された光を光レセプタクル140の内部に入射させるための凸面である。入射面141は、発光素子130から出射した光のうち、少なくとも一部の光L(第1光線L1および第2光線L2)を発光素子130の光軸に向かって進行するように屈折させる。入射面141は、発光素子130の発光面に対向するように配置されている。入射面141の数は、発光素子130の数と同じ数である。すなわち、本実施の形態では、入射面141の数は、1個である。
【0017】
本実施の形態では、入射面141の平面視形状は、円形である。入射面141の中心軸CA1は、発光素子130の発光面に対して垂直でもよいし、発光素子130の発光面に対して垂直でなくてもよい。本実施の形態では、入射面141の中心軸は、発光素子130の発光面に対して垂直である。また、入射面141の中心軸CA1は、発光素子130から出射された光の光軸(発光素子130の発光面の中心軸)と一致してもよいし、発光素子130から出射された光の光軸と一致していなくてもよい。発光素子130の光軸に沿う方向に光レセプタクル140を見たときに、発光素子130の発光面と、光レセプタクル140の入射面141の中心とは、重なることが好ましい。本実施の形態では、入射面141の中心軸は、発光素子130から出射された光の光軸(発光素子130の発光面の中心軸)と一致している。
【0018】
入射面141の中心の曲率半径R1は特に限定されない。射面141の中心の曲率半径R1は、0.278~0.336mmの範囲内が好ましい。発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141上の径E1は、特に限定されない。発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141上の径E1は、0.410~0.520mmの範囲内が好ましい。ここで、発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141上の径E1とは、発光素子130の発光面から出射された光Lによる入射面141における照射スポットの直径を意味する。また、発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1は、特に限定されない。発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1は、1.0~1.2mmの範囲内が好ましい。
【0019】
出射面142は、入射面141で入射し、光レセプタクル140の内部を進行した光を光伝送体120の端面に向けて出射させるための凹面である。出射面142は、第1光線L1のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束を出射面142から出射された後に発光素子130の光軸上で集光させる。また、出射面142は、光軸を含む平面において、第2光線L2のうち当該平面上における一方の発光面の端部である出射点Aから光軸に対して±10°で出射される第2光束を出射面142から出射された後に光軸に対して出射点Aが存在する側とは反対側へ位置するように制御する。このように、出射面142は、第1光線L1を焦点位置Pに向けて集光させ、第2光線L2をコリメート化させる。ここで、「コリメート化」とは、出射面142から出射された光の中心光線に対して第2光線L2を平行にすることだけでなく、出射面142から出射された光の中心光線に対する第2光線L2の傾斜角度を±2°以内にすることも含む。出射面142から出射された光の中心光線に対する第2光線L2の傾斜角度は、直径20μmの均一照度を光伝送体120の軸方向に15μm移動させても光結合効率の変化が0.5dBに収まるための角度である。出射面142は、光伝送体120の端面と対向して配置されている。出射面142の数は、入射面141の数と同じである。すなわち、本実施の形態では、出射面142の数は、1個である。
【0020】
本実施の形態では、出射面142の平面視形状は、円形である。出射面142の中心軸CA2は、光伝送体120の端面に対して垂直でもよいし、光伝送体120の端面に対して垂直でなくてもよい。本実施の形態では、出射面142の中心軸CA2は、光伝送体120の端面に対して垂直である。また、光伝送体120の端面が出射面142の中心軸CA2に対して傾斜している場合、出射面142の中心軸CA2は、光伝送体120の端面に対して傾斜している。また、出射面142の中心軸CA2は、出射された光が入射する光伝送体120の端面の中心軸と一致してもよいし、出射された光が入射する光伝送体120の端面の中心軸と一致していなくてもよい。本実施の形態では、出射面142の中心軸CA2は、出射された光が入射する光伝送体120の端面の中心軸と一致している。
【0021】
出射面142の中心の曲率半径R2は、特に限定されない。出射面142の中心の曲率半径R2は、0.144~0.251mmの範囲内が好ましい。出射面142の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離は、0.4~0.8mmの範囲内が好ましい。
【0022】
光伝送体120の種類は、特に限定されない。光伝送体120の種類の例には、光ファイバーや光導波路などが含まれる。本実施の形態では、光伝送体120は、光ファイバーである。また、光ファイバーは、シングルモード方式でもよいし、マルチモード方式でもよい。本実施の形態では、光伝送体120は、シングルモード方式の光ファイバーであり、コア120aおよびクラッド120bを有する。コア120aの端面の中心は、仮想円柱内に配置されることが好ましい。仮想円柱は、半径が3μm、長さが30μmの仮想空間が好ましい。仮想円柱の半径が3μm未満の場合、組み立て誤差を考慮した場合に製造が困難である。仮想円柱の長さ30μm超の場合、温度変化に伴う屈折率などの変化により、光結合効率が悪くなってしまう傾向にある。また、仮想円柱は、半径が5μm、長さが60μmの仮想空間がより好ましい。仮想円柱が半径が5μm、長さが60μmの仮想空間であれば、組み立て誤差、屈折率温度変化、曲率温度変化、線膨張が複合的に発生したとしても結合効率が変化しにくい。仮想円柱は、その中心軸が光伝送体120と平行になり、かつ第1光束が最も細くなる位置における光軸上に位置するように仮想円柱の重心を配置されることが好ましい。ここで、仮想円柱は、本実施の形態において、光線密度がほぼ均一な領域を意味する。なお、本実施の形態では、第1光束が最も細くなる位置(集光位置)Pに光伝送体120の端面が配置されている。
【0023】
本実施の形態では、発光素子130から出射された光Lのうち、一部の光は、仮想円柱を通るように制御される。よって、第2出射面142に対して光伝送体120が位置ずれした場合でも、光結合効率の低下を抑制できる。
【0024】
本実施の形態の送電装置100は、さらに以下に示す要件を満たすことにより、光結合効率の低下をさらに抑制できる。
【0025】
送信装置100では、入射面141の中心の曲率半径をR1とし、出射面142の中心の曲率半径をR2としたとき、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
式(1) R1>R2
入射面141の中心の曲率半径R1と、出射面142の中心の曲率半径R2とが上記の関係を満たすことにより、出射面142における屈折力を強くできるため、出射面142から出射された光の中心光線に対する第2光線L2の傾斜角度が小さくなるように制御できる。これにより、光伝送体120の端面がZ方向に位置ずれした場合でも光の結合効率の低下を抑制できる。
【0026】
発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141上の径をE1とし、発光素子130から出射された光のうち、出射面142から出射される光の出射面142上の径をE2としたとき、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
式(2) E1/E2>7
発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光Lの入射面141における径E1と、発光素子130から出射された光Lのうち、出射面142から出射される光Lの出射面142における径E2とが上記の関係を満たすことにより、発光素子130と入射面141との間にカバーガラスを配置した場合にも、出射点Aから光軸に対して±10°で出射される第2光束全てを制御できる。さらに出射面142の曲率半径を小さくできる。
【0027】
発光素子130から出射された光のうち、出射面142から出射される光の径をE2とし、光伝送体120の端面における発光素子130から出射された光Lの径をXとしたとき、以下の式(3)を満たすことが好ましい。
式(3) 2X<E2<4X
発光素子130から出射された光のうち、出射面142から出射される光の径E2と、光伝送体120の端面における発光素子130から出射された光Lの径Xとが、上記の関係を満たすことにより、出射面142の曲率半径を小さくできる。また仮想円柱を通過する光線の量を増加できる。
【0028】
発光素子130の発光面および入射面141の間の距離をD1とし、出射面142および光伝送体120の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たすことが好ましい。
式(4) 1<D1/D2<2.5
発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1と、出射面142の中心および光伝送体120の端面の間の距離D2が上記の関係を満たすことにより、発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1の位置ずれに対する出射面142の中心および光伝送体120の端面の間の距離D2の位置ずれの影響を抑えることができる。
【0029】
ここで、本実施の形態に係る送信装置100における発光素子130から出射された光の光路について説明する。また、比較のため、従来のメニスカスレンズを有する送信装置における発光素子130から出射された光の光路についても説明する。
【0030】
図2Aは、本実施の形態に係る送信装置100における光路図を示しており、図2Bは、図2Aに示される領域r1の拡大図であり、図2Cは、図2Aに示される領域r2の拡大図である。0における光路図である。図3Aは、比較例に係る送信装置100における光路図を示しており、図3Bは、図3Aに示される領域r1の拡大図であり、図3Cは、図3Aに示される領域r2の拡大図である。図3Aでは、半径が5μm、長さが60μmの仮想円柱を、仮想円柱の中心軸が光伝送体120と平行になり、かつ第1光束が最も細くなる位置における光軸上に位置するように仮想円柱の重心を配置したとする。ここでは、第1光線L1のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束のうち出射角度の最も大きい光線(第1光束の最外光)L1a、L1bと、第2光線21のうち光軸に対して±10°で出射される第2光束のうち出射角度の最も大きい光線(第2光線の最外光)L2a、L2bのみを示している。
【0031】
図2A~Cに示されるように、本実施の形態に係る送信装置100では、発光素子130の発光面の中心から出射された第1光束は、入射面141で入射し、出射面142から出射される。出射面142から出射された第1光束は、第1光束の中心線上光軸上の焦点位置P(光伝送体120の端面)に向けて集光する。
【0032】
また、図2A~Cに示されるように、発光素子130の発光面の端部から出射された第2光束も、入射面141で入射し、出射面142から出射される。出射面142から出射される第2光束は、出射面142から出射された後に光軸に対して出射点が存在する側とは反対側へ向かうように制御される。本実施の形態では、図2Bに示されるように、光軸に対して図示上側の出射点Aから出射された第2光束は、光軸に対して出射点Aが存在する側とは反対側へ位置するように制御される。より具体的には、光軸および出射点Aを含む平面において、第2光束は、仮想円柱内かつ出射面142から出射された後に光軸に対して出射点Aが存在する側とは反対側へ位置するように制御される。このように、発光素子130から出射された光Lのうち、第2光線L2は、コリメート化される。また、仮想円柱内における光線密度がほぼ均一になるため、出射面142および光伝送体120が位置ずれした場合であっても、光結合効率が低下しにくい。このとき、光伝送体120に到達する第2光線L2によるスポット径と、出射面142に入射する直前のスポット径とは、ほぼ同じ大きさである。
【0033】
出射面142から出射された第1光束と、第2光束とは、焦点位置Pにおいて離間している。
【0034】
(シミュレーション1)
ここで、送信装置100における各パラメーターを変更させたときのずらし量と、光の結合効率の変化とについてシミュレーションした。ここでは、光伝送体120の軸に沿う方向をZ方向とし、Z方向に垂直な方向をX方向とし、Z方向およびX方向に垂直な方向をY方向とした。シミュレーションには、9種類の光レセプタクルを使用した。No.9の光レセプタクルは、平凸型の光レセプタクルを示している。使用した光レセプタクルの各パラメーターを表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
本シミュレーションでは、光レセプタクルに対して光伝送体120の端面をX方向、Y方向およびZ方向にずらした場合でも光の結合効率が0.5dB以内の変化であるか否かについて調べた。X方向のずらし量は、±5μmとし、Z方向のずらし量は、±30μmとした。
【0037】
表1に示されるNo.1~8の実施例1~8の光レセプタクルでは、光伝送体120の端面の位置をX方向に±5μmずらした場合でも、Z方向に±30μmずらした場合でも、光の結合効率の変化は0.5dB以内であった。特に図示していないが、No.1~7の実施例1~8の光レセプタクルでは、第1光線L1のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束は、出射面142から出射された後に第1光束の中心光線上で集光され、光軸を含む平面において、第2光線L2のうち当該平面上における一方の発光面の端部である出射点から光軸に対して±10°で出射される第2光束は、出射面142から出射された後に第1光束の中心光線に対して出射点が存在する側とは反対側へ位置するように制御される。
【0038】
一方、No.9の比較例1の光レセプタクルでは、光伝送体120の端面の位置をZ方向に±30μmにずらした場合には、光の結合効率の変化が0.5dBよりも小さかったが、光伝送体120の端面の位置をX方向に±5μmズラした場合に光の結合効率の変化が0.5dBよりも顕著に大きくなった。
【0039】
(シミュレーション2)
上記No.1の実施例1の光レセプタクルと、上記No.9の比較例の光レセプタクルとのそれぞれについて、発光素子の位置をY方向にずらした場合と、光伝送体の端面の位置をZ方向にずらした場合と、光レセプタクルの屈折率を変化させた場合と、についてシミュレーションした。
【0040】
図4A~Cは、No.1の実施例1の光レセプタクルの場合の結果を示すグラフであり、図5A~Cは、No.9の比較例1の光レセプタクルの場合の結果を示すグラフである。図4Aは、発光素子の位置をY方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、図4Bは、光伝送体の端面の位置をZ方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、図4Cは、光レセプタクルの屈折率を変化させた場合の結果を示すグラフである。図5Aは、発光素子の位置をY方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、図5Bは、光伝送体の端面の位置をZ方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、図5Cは、光レセプタクルの屈折率を変化させた場合の結果を示すグラフである。図4A~Cおよび図5A~Cの黒丸は、結合効率(左側の第1軸)を示しており、白丸は、結合効率差(右側の第1軸)を示している。
【0041】
No.1の実施例1の光レセプタクルを用いた場合の発光素子のずれに対する、結合効率と、結合効率差とを座標にプロットしたものを図4Aに示す。なお、結合効率とは、発光素子と光伝送体との間における光結合効率を意味する。また、結合効率差とは、発光素子のずれが0mmのときの結合効率との差を意味する。すなわち、結合効率差は、シミュレーション1における光の結合効率の変化と同義である。
【0042】
No.1の実施例1の光レセプタクルを用いた場合の光伝送体のずれに対する、結合効率と、結合効率差とを座標にプロットしたものを図4Bに示す。No.1の実施例1の光レセプタクルを用いた場合の屈折率の違いに対する、結合効率と、結合効率差とを座標にプロットしたものを図4Cに示す。No.9の比較例1の光レセプタクルを用いた場合の発光素子のずれに対する、結合効率と、結合効率差とを座標にプロットしたものを図5Aに示す。No.9の比較例1の光レセプタクルを用いた場合の光伝送体のずれに対する、結合効率と、結合効率差とを座標にプロットしたものを図5Bに示す。No.9の比較例1の光レセプタクルを用いた場合の屈折率の違いに対する、結合効率と、結合効率差とを座標にプロットしたものを図5Cに示す。
【0043】
図4A図5Aに示されるように、実施例1の光レセプタクルを使用した場合は、比較例1の光レセプタクルを使用した場合と比較して、発光素子側が位置ずれした場合であっても光結合効率が低下しにくい。
【0044】
図4B図4C図5B図5Cに示されるように、実施例1の光レセプタクルを使用した場合は、比較例1の光レセプタクルを使用した場合と比較して、光伝送体のZ方向にずれた場合でも結合効率を維持できるとともに、屈折率の変化により結合効率の低下を抑制できる。
【0045】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置100は、第1光束が光軸上の焦点位置に向けて集光され、第2光束線光が光軸に対して発光面端部である出射点とは反対側へ向かうように制御されるため、光レセプタクルおよび光伝送体がいずれの方向に位置ずれした場合であっても光結合効率が低下しにくい。
【0046】
[実施の形態2]
(送信装置の構成)
次に、実施の形態2の送信装置200について説明する。本実施の形態の送信装置200は、光レセプタクル140の構成のみが実施の形態1の送電装置100と異なる。そこで、主として光レセプタクル140について説明し、同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図6は、実施の形態2の送電装置200の構成を示す図である。
【0048】
図6に示されるように、本実施の形態の送電装置200は光モジュール210と、お光り伝送体120とを有する。光モジュール210は、発光素子130と、光レセプタクル240とを有する。
【0049】
光レセプタクル240は、入射面141と、出射面142と、反射面243とを有する。
【0050】
反射面243は、入射面141で入射した光を出射面142に向けて反射させる。本実施の形態では、反射面243は、平面でもよいし、凸面でもよいし、平面でもよい。本実施の形態では、反射面243は、平面である。
【0051】
本実施の形態においても、発光素子130から出射され、光伝送体120の端面へ向かう光は、発光素子130の発光面の中心から出射される第1光線L1と、発光面の端部から出射される第2光線L2とを含む。また、第1光線L1のうち光軸に対して±10°で出射される第1光束は、出射面142から出射された後に第1光束の中心光線上で集光される。さらに、光軸を含む平面において、第2光線L2のうち当該平面上における一方の発光面の端部である出射点Aから光軸に対して±10°で出射される第2光束は、出射面142から出射された後に第1光束の中心光線に対して出射点Aが存在する側とは反対側へ位置するように制御される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る光モジュールは、例えば、光伝送体を用いた光通信に有用である。
【符号の説明】
【0053】
100、200 送信装置
110、210 光モジュール
120 光伝送体
130 発光素子
140、240 光レセプタクル
141 入射面
142 出射面
243 反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6