(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171526
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光レセプタクル、光モジュールおよび送信装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20241205BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088582
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 共啓
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB06
2H137BA03
2H137BB03
2H137BC02
2H137BC10
2H137BC51
2H137FA06
(57)【要約】
【課題】使用温度が変化した場合であっても、光レセプタクルから出射される光の集光位置のずれを抑制できる光レセプタクルを提供すること。
【解決手段】光レセプタクルは、入射面と、出射面とを有する。入射面の中心の曲率半径をR1とし、出射面の中心の曲率半径をR2とし、入射面の中心および出射面の中心の間の光路長をTとしたとき、以下の式(1)および式(2)を満たす。
式(1) R1/|R2|>1.5
式(2) T/(R1+|R2|)>1.5
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子および光伝送体の間に配置された場合に、前記発光素子および前記光伝送体の端面を光学的に結合するための樹脂製の光レセプタクルであって、
前記発光素子から出射される光を入射させるための凸面である入射面と、
前記入射面で入射された光を前記光伝送体の端面に向けて出射させるための凸面である出射面と、
を有し、
前記入射面の中心の曲率半径をR1とし、前記出射面の中心の曲率半径をR2とし、前記入射面の中心および前記出射面の中心の間の光路長をTとしたとき、以下の式(1)および式(2)を満たす、
光レセプタクル。
式(1) R1/|R2|>1.5
式(2) T/(R1+|R2|)>1.5
【請求項2】
前記光レセプタクルの焦点距離は、負の数である、請求項1に記載の光レセプタクル。
【請求項3】
発光素子と、
前記発光素子から出射した光が入射する請求項1に記載の光レセプタクルと、を有し、
前記発光素子から出射された光のうち、前記入射面に入射される光の前記入射面における径をE1とし、前記発光素子から出射された光のうち、前記出射面から出射される光の前記出射面における径をE2としたとき、以下の式(3)を満たす、
請求項1に記載の光モジュール。
式(3) E1/E2>1.2
【請求項4】
前記発光素子の光軸、前記入射面の中心および前記出射面の中心を含む断面において、前記発光素子の発光面の中心で出射された光は、前記入射面および前記出射面の間で前記光軸と交差する光を含む、請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記入射面から入射した光を前記出射面に向けて反射させるための反射面をさらに有する、請求項3に記載の光モジュール。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の光モジュールと、
前記光レセプタクルから出射した光が入射する光伝送体と、を有し、
前記発光素子の発光面の中心および前記入射面の中心の間の距離をD1とし、前記出射面の中心および前記光伝送体の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たす、
送信装置。
式(4) D1/D2>5
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光レセプタクル、光モジュールおよび送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、光ファイバや光導波路などの光伝送体を用いた光通信には、面発光レーザ(例えば、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser))および光伝送体を光学的に接続するか、または光伝送体同士を光学的に接続するための光レセプタクルが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、レーザダイオードから出射された信号光が送信ファイバ、光コネクタ(光レセプタクル)、受信ファイバを経て光レセプタクルに送信される光信号伝送システムが記載されている。特許文献1に記載の光コネクタは、ガラス製であり、互いに凸面が対向して配置される2つの平凸レンズを有する。送信ファイバから出射された光は、一方の平凸レンズで平行光に制御され、他方の平凸レンズに入射する。他方の平凸レンズに入射した光は、集光するように制御される。他方の平凸レンズで制御された光は、受信ファイバに入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光コネクタは、ガラス製であるが、樹脂で一体成形することも考えられる。特許文献1に記載されたような光コネクタを樹脂で一体成形した場合、その光コネクタは、使用環境に応じて使用波長における屈折率が変化する場合がある。例えば、光コネクタに用いられる材料がポリエーテルイミド(PEI)の場合、環境温度が0℃から80℃に変化した場合、屈折率は約0.007程度変動する。通常は常温(25℃)や環境温度の中間状態の温度で特性が最適となるよう製品設計が行われる。しかしながら、このように、使用環境に応じて光コネクタに用いられる材料の屈折率が変化すると、光コネクタから出射される光の集光位置が、設計時の最適な位置からずれてしまい、結合効率が低下してしまう。結果として、実使用する際に問題が発生する場合があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、使用される材料の屈折率が変化した場合であっても、光レセプタクルから出射される光の集光点の位置ずれを抑制できる光レセプタクルを提供することである。また、本発明の別の目的は、光レセプタクルを有する光モジュールおよび送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]発光素子および光伝送体の間に配置された場合に、前記発光素子および前記光伝送体の端面を光学的に結合するための樹脂製の光レセプタクルであって、前記発光素子から出射される光を入射させるための凸面である入射面と、前記入射面で入射された光を前記光伝送体の端面に向けて出射させるための凸面である出射面と、を有し、前記入射面の中心の曲率半径をR1とし、前記出射面の中心の曲率半径をR2とし、前記入射面の中心および前記出射面の中心の間の光路長をTとしたとき、以下の式(1)および式(2)を満たす、光レセプタクル。
式(1) R1/|R2|>1.5
式(2) T/(R1+|R2|)>1.5
[2]前記光レセプタクルの焦点距離は、負の数である、[1]に記載の光レセプタクル。
[3]発光素子と、前記発光素子から出射した光が入射する[1]に記載の光レセプタクルと、を有し、前記発光素子から出射された光のうち、前記入射面に入射される光の前記入射面における径をE1とし、前記発光素子から出射された光のうち、前記出射面から出射される光の前記出射面における径をE2としたとき、以下の式(3)を満たす、[1]または[2]に記載の光モジュール。
式(3) E1/E2>1.2
[4]前記発光素子の光軸、前記入射面の中心および前記出射面の中心を含む断面において、前記発光素子の発光面の中心で出射された光は、前記入射面および前記出射面の間で前記光軸と交差する光を含む、[3]に記載の光モジュール。
[5]前記入射面から入射した光を前記出射面に向けて反射させるための反射面をさらに有する、[3]または[4]に記載の光モジュール。
[6][3]~[5]に記載の光モジュールと、前記光レセプタクルから出射した光が入射する光伝送体と、を有し、前記発光素子の発光面の中心および前記入射面の中心の間の距離をD1とし、前記出射面の中心および前記光伝送体の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たす、送信装置。
式(4) D1/D2>5
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屈折率が変化した場合であっても、光レセプタクルから出射される光の集光点の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A、Bは、実施の形態1の送信装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2A~Dは、実施の形態1の送信装置における光路を説明するための図である。
【
図3】
図3A~Cは、比較例の送信装置における光路図である。
【
図4】
図4A~Cは、実施の形態1の他の実施例(1)の送信装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5A~Cは、実施の形態1の他の実施例(2)の送信装置の構成を示す図である。
【
図6】
図6A~Cは、実施の形態1の他の実施例(3)の送信装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7A~Cは、実施の形態1の他の実施例(3)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】
図8A~Cは、比較例のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】
図9A~Cは、実施の形態2の送信装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10A~Cは、実施の形態3の送信装置の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態4の送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態の光レセプタクル、光モジュールおよび送信装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[実施の形態1]
(送信装置の構成)
図1は、送信装置の構成を示す図である。
【0012】
図1に示されるように、送信装置100は、光モジュール110と、光伝送体120とを有する。光モジュール100は、発光素子130および光レセプタクル140を有する。
【0013】
発光素子130は、所定の波長の光を出射する。発光素子130は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である。本実施の形態では、発光素子130は、図外の基板に固定されている。発光素子130の数は、特に限定されない。発光素子130の数は、1個でもよいし、複数個でもよい。本実施の形態では、発光素子130の数は1個である。なお、発光素子130が複数個の場合、発光素子130の数は、後述する光レセプタクル140の入射面141の数、出射面142の数、光伝送体120の数と、それぞれ同じ数である。また、以下の説明では、発光素子130の発光面の中心から出射され、入射面141へ入射して光レセプタクル140内を伝播し、出射面142から出射された、光軸OAに沿った光線を除いた光を第1光線L1と称し、発光素子130の発光面の中心から出射され、第1光線L1よりも入射面141の外側に向けて出射され、入射面141から入射し、出射面142で出射された光を第2光線L2と称することがある。また、発光素子130の発光面から出射されるすべての光線を単に光Lと称することもある。
【0014】
光レセプタクル140は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される。光レセプタクル140は、発光素子130の発光面と、光伝送体120の端面とを光学的に結合させる両凸レンズである。本実施の形態の光レセプタクル140の焦点距離は負の数である。具体的には、本実施の形態では、基準状態(常温)時における光レセプタクル140の焦点距離は、-0.04mmである。本明細書において、基準状態とは、常温で設計通りに作製した状態を意味する。光レセプタクル140は、光通信に用いられる波長の光に対して透光性を有する樹脂を用いて形成される。光レセプタクル140の材料の例には、ウルテム(登録商標)などのポリエーテルイミド(PEI)や環状オレフィン樹脂などの透明な樹脂が含まれる。また、光レセプタクル140は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル140は、入射面141と、出射面142とを有する。
【0015】
入射面141の中心軸と、出射面142の中心軸とは、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。本実施の形態では、入射面141の中心軸と、出射面142の中心軸とは、一致している。
【0016】
入射面141は、発光素子130から出射された光Lを光レセプタクル140の内部に入射させるための光学面である。入射面141は、発光素子130から出射された光Lを光軸OAに向かって進行するように屈折させる。入射面141は、発光素子130に対向するように配置されている。入射面141の数は、発光素子130の数と同じ数である。すなわち、本実施の形態では、入射面141の数は、1個である。
【0017】
入射面141の形状は、発光素子130に向かって凸状の凸レンズ面である。また、本実施の形態では、入射面141の平面視形状は、円形である。入射面14の中心軸は、発光素子130の発光面に対して垂直(発光素子130の光軸と平行)でもよいし、発光素子130の発光面に対して垂直でなくてもよい。本実施の形態では、入射面14の中心軸は、発光素子130の発光面に対して垂直である。また、入射面141の中心軸は、発光素子130から出射された光の光軸(発光素子130の発光面の中心軸)と一致してもよいし、発光素子130から出射された光の光軸と一致していなくてもよい。本実施の形態では、入射面141の中心軸は、発光素子130から出射された光の光軸(発光素子130の発光面の中心軸)と一致している。
【0018】
入射面141で入射した光Lは、出射面142に向かって進行する。詳細は、後述するが、入射面141で入射した光Lは、入射面141および出射面142の間(光レセプタクル140の内部)で光軸OAと交差してもよいし、光軸OAと交差しなくてもよい。言い換えると、発光素子130の光軸OA、入射面141の中心および出射面142の中心を含む断面において、発光素子130の発光面の中心以外から出射された光Lが入射面141に入射する位置と、光Lの出射面142に入射する位置とは、光軸OAに対して反対側の位置でもよいし、同じ側の位置でもよい。本実施の形態では、入射面141で入射した光Lは、入射面141および出射面142の間(光レセプタクル140の内部)で光軸OAと交差する。
【0019】
出射面142は、入射面141で入射し、光レセプタクル140の内部を進行した光Lを光伝送体120の端面に向けて出射させるための光学面である。出射面142は、光伝送体120の端面と対向して配置されている。出射面142の数は、入射面141の数と同じである。すなわち、本実施の形態では、出射面142の数は、1個である。
【0020】
出射面142の形状は、光伝送体120の端面に向かって凸状の凸レンズ面である。また、出射面142の平面視形状は、円形である。出射面142の中心軸は、光伝送体120の端面に対して垂直でもよいし、光伝送体120の端面に対して垂直でなくてもよい。また、出射面142の中心軸は、光伝送体120の中心軸と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。本実施の形態では、出射面142の中心軸は、光伝送体120の端面に対して垂直であり、かつ出射面142の中心軸は、光伝送体120の中心軸と一致している。また、出射面142の中心軸は、出射された光が入射する光伝送体120の端面の中心軸と一致してもよいし、出射された光が入射する光伝送体120の端面の中心軸と一致していなくてもよい。本実施の形態では、出射面142の中心軸は、出射された光が入射する光伝送体120の端面の中心軸と一致している。
【0021】
光伝送体120の種類は、特に限定されない。光伝送体120の種類の例には、光ファイバや光導波路などが含まれる。本実施の形態では、光伝送体120は、光ファイバである。また、光ファイバは、シングルモード方式でもよいし、マルチモード方式でもよい。本実施の形態では、光伝送体120は、シングルモード方式の光ファイバである。
【0022】
送信装置100では、入射面141の中心の曲率半径R1とし、出射面142の中心の曲率半径R2としたとき、以下の式(1)を満たし、式(1A)を満たすことがより好ましい。
式(1) R1/|R2|>1.5
式(1A) R1/|R2|>3.5
このように、入射面141の中心の曲率半径R1と、出射面142の中心の曲率半径R2との差が大きいことが好ましい。入射面141の中心の曲率半径R1と、出射面142の中心の曲率半径R2とが上記の関係を満たすことにより、出射面142における屈折力を強くできるため、出射面142と光伝送体120の端面との間の距離D2を短くできる。これにより、D1の変化や出射面に入射する光(線)の変化によるD2の変化の影響を小さくできる。光レセプタクル140から出射される光の集光点の位置ずれを抑制できる。本実施の形態では、R1/|R2|は12.5である。なお、|R2|/R1は、0.080である。
【0023】
また、送信装置100では、入射面141の中心の曲率半径をR1とし、出射面142の中心の曲率半径をR2とし、入射面141の中心および出射面142の中心の間の光路長をTとしたとき、以下の式(2)を満たし、式(2A)を満たすことがより好ましい。
式(2) T/(R1+R2)>1.5
式(2A) T/(R1+R2)>4
このように、入射面141の中心の曲率半径R1と、出射面142の中心の曲率半径R2との合計値に対して、入射面14の中心および出射面142の中心の間の光路長Tが大きい。すなわち、本実施の形態の光レセプタクル140は、ボールレンズとは異なる。入射面141の中心の曲率半径R1と、出射面142の中心の曲率半径R2と、入射面14の中心および出射面142の中心の間の光路長Tとが上記の関係を満たすことにより、入射面141の中心および出射面142の中心の間の光路長Tを長くできる。これにより、出射面142を通過する光線をより光軸OAに近付けることができ、結果として出射面142の光学面の形状に小さな曲率半径を選択できる。本実施の形態では、T/(R1+R2)は、4.815である。また、本実施の形態では、入射面141の中心および出射面142の中心の間の光路長Tは、1.3mmである。
【0024】
入射面141の中心の曲率半径R1は、上記の条件を満たせば特に限定されない。入射面141の中心の曲率半径R1は、0.1~0.5mmの範囲内が好ましく、0.1818~0.25mmの範囲内がより好ましい。本実施の形態では、入射面141の中心の曲率半径R1は、0.25mmである。
【0025】
発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141における径E1は、特に限定されない。本実施の形態では、発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141における径E1は、0.202mmである。ここで、発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光の入射面141における径E1とは、発光素子130の発光面から出射された光のうち、入射面141に到達した光による照射スポットの直径を意味する。
【0026】
また、発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1は、特に限定されない。発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1は、0.1~2mmの範囲内が好ましく、0.745~1.0mmの範囲内がより好ましい。本実施の形態では、発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離は、1.0mmである。
【0027】
出射面142の中心の曲率半径R2は、上記の条件を満たせば特に限定されない。出射面142の中心の曲率半径R2は、-0.1~-0.5mmの範囲内が好ましく、-0.02~-0.235mmの範囲内がより好ましい。本実施の形態では、出射面142の中心の曲率半径R2は、-0.02mmである。なお、本実施の形態では、出射面142の中心から外側に向かうにつれて、曲率半径が小さくなるように形成されている。
【0028】
出射面142の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離D2は、特に限定されない。出射面142の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離D2は、0.01~0.3mmの範囲内が好ましく、0.042~0.180mmの範囲内がより好ましい。本実施の形態では、出射面142の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離D2は、0.042mmである。
【0029】
発光素子130から出射された光Lのうち、出射面142から出射される光の出射面142における径E2は、特に限定されない。本実施の形態では、発光素子130から出射された光Lのうち、出射面142から出射される光Lの出射面142における径E2は、0.040mmである。ここで、発光素子130から出射された光Lのうち、出射面142から出射される光Lの出射面142における径E2とは、発光素子130の発光面のうち、出射面142に到達した光による照射スポットの直径を意味する。
【0030】
発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光Lの入射面141における径をE1とし、発光素子130から出射された光Lのうち、出射面142から出射される光Lの出射面142における径をE2としたとき、以下の式(3)を満たすことが好ましく、式(3A)を満たすことがより好ましい。
式(3) E1/E2>1.2
式(3A) E1/E2>4.0
発光素子130から出射された光のうち、入射面141に入射される光Lの入射面141における径をE1とし、発光素子130から出射された光Lのうち、出射面142から出射される光Lの出射面142における径をE2が上記の関係を満たすことにより、出射面142の光学面の形状に小さな曲率半径を選択できる。結果として、出射面142と伝送体120の端面との間の距離を短くできる。本実施の形態では、E1/E2は、5.080である。
【0031】
発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離をD1とし、出射面142の中心および光伝送体120の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たすことが好ましく、式(4A)を満たすことがより好ましい。
式(4) D1/D2>5
式(4A) D1/D2>9
発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の距離D1と、出射面142の中心および光伝送体120の端面の間の距離D2が上記の関係を満たすことにより、発光素子130の発光面および入射面141の中心の間の位置ずれに対する出射面142の中心および光伝送体120の端面の間の集光点の位置ずれの影響を抑えることができる。また、D1の変化や出射面に入射する光(線)の変化によるD2の変化の影響を小さくできる。本実施の形態では、D1/D2は、23.669である。なお、D2/D1は、0.042である。
【0032】
ここで、本実施の形態の送信装置100における発光素子130から出射された光の光路についてシミュレーションした。また、比較のため、従来の平凸レンズを有する送信装置における発光素子130から出射された光の光路についてもシミュレーションした。
【0033】
図2Aは、本実施の形態の送信装置100の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図2Bは、屈折率が高い状態となった場合の集光点の近傍の光路図を示しており、
図2Cは、屈折率が低い状態となった場合の集光点の近傍の光路図を示しており、
図2Dは、本発明の効果を説明するための模式図である。
図3Aは、比較例の送信装置の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図3Bは、屈折率が高い状態となった場合の集光点の近傍の光路図を示しており、
図3Cは、屈折率が低い状態となった場合の集光点の近傍の光路図を示している。なお、
図2B、Cおよび
図3B、Cでは、集光点の位置を示すため、光伝送体120を省略している。
【0034】
図2A~Cに示されるように、本実施の形態の送信装置100では、発光素子130の光軸OA、入射面141の中心および出射面142の中心を含む断面において、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル140における集光点の位置の変化は抑制できることがわかる。より具体的には、発光素子130から出射された光Lのうち、一部の光は、入射面141で光レセプタクル140の内部に入射する。光レセプタクル140に入射した光Lは、入射面141および出射面142の間(光レセプタクル140の内部)で光軸OAと交差する。本実施の形態では、光軸OAを含む断面(
図2Aに示される例)において、光軸OAを境に一方の側(例えば上側)から入射面141に入射した光Lは、光軸OAを境に他方側(例えば下側)において、出射面142に到達する。出射面142に到達した光Lは、集光位置に向かって集光される。
図2Bおよび
図2Cに示されるように、本実施の形態では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、集光位置はあまり変化ないことがわかる。本実施の形態では、屈折率が低い場合の集光点の位置と、屈折率が高い場合の集光点の位置との差は、0.00142mmである。
【0035】
図2Dに示されるように、樹脂製の光レセプタクル140は、環境温度の変化などに応じて屈折率が変化する。例えば、基準状態(常温)の場合、発光素子130から出射された光A1は、入射面141から入射して、出射面142から出射される。
【0036】
環境温度が低温となった場合、基準状態(常温)と比較して屈折率が高く変化する。この場合、発光素子130から出射した光A2は、スネルの法則に基づいて、基準状態(常温)の場合と比較して、入射面141で大きく屈折する。入射面141で入射した光A2は、光軸OAに向かって光レセプタクル140の内部を進行する。光レセプタクル140を進行した光A2は、光軸OAと交差した後、スネルの法則に基づいて、基準状態(常温)の場合と比較して、出射面142で大きく屈折する。屈折率が高く変化した場合、光レセプタクル140を進行した光A2は、基準状態(常温)の場合に光レセプタクル140を進行した光A1が出射面142で出射する位置よりも光軸OAに対して外側から出射する。よって、光レセプタクル140を進行した光A2は、基準状態(常温)の場合と比較して、出射面142で大きく屈折する。出射面142から出射された光A2は、常温における光A1とほぼ同じ位置で光軸OAと交差する。したがって、屈折率が変化した場合でも基準状態(常温)の場合でも、ほぼ同じ位置で光軸OAと交わる。
【0037】
一方、環境温度が高温となった場合、基準状態(常温)と比較して屈折率が低く変化する。この場合、発光素子130から出射した光A3は、スネルの法則に基づいて、基準状態(常温)の場合と比較して、入射面141で小さく屈折する。入射面141で入射した光A3は、光軸OAに向かって光レセプタクル140の内部を進行する。光レセプタクル140を進行した光A3は、スネルの法則に基づいて、基準状態(常温)の場合と比較して、出射面142で小さく屈折する。屈折率が低く変化した場合、光レセプタクル140を進行した光A2は、基準状態(常温)の場合に光レセプタクル140を進行した光A1が出射面142で出射する位置よりも光軸OAに対して内側から出射する。本実施の形態では、出射面142における曲率は、出射面142の外側に向かうにつれて大きくなる。よって、光レセプタクル140を進行した光A3は、基準状態(常温)の場合と比較して、出射面142で小さく屈折する。出射面142から出射された光A3は、基準状態(常温)の場合における光A1とほぼ同じ位置で光軸OAと交差する。したがって、屈折率が変化した場合でも基準状態(常温)の場合でも、ほぼ同じ位置で光軸OAと交わる。
【0038】
よって、屈折率が変化しても集光点の位置のずれを抑制できる。
【0039】
一方、
図3A~Cに示されるように、平凸レンズ940を有する比較例の送信装置900では、使用する温度に応じて、集光位置が変化してしまうことがわかる。本実施の形態では、低温時における集光点の位置と、高温時における集光点の位置との差は、0.035mmである。なお、基準状態(常温)常温時における焦点距離は、0.58mmである。
【0040】
(効果)
以上のように、本実施の形態1の送信装置100によれば、入射面141の中心の曲率半径をR1とし、出射面142の中心の曲率半径をR2とし、入射面141の中心および出射面142の中心の間の光路長をTとしたとき、R1/|R2|>1.5およびT/(R1+R2)>1.2を満たすため、使用環境に関わらず集光点の位置のずれを抑制できる。
【0041】
[実施の形態1の他の実施例(1)]
次に、実施の形態1の他の実施例(1)の送信装置200について説明する。実施の形態1の他の実施例(1)の送信装置200は、入射面241で入射した光Lが実施の形態1よりも入射面241側で光軸OAと交差するように構成されていることが実施の形態1の送信装置100と異なる。そこで、ここでは、主として光レセプタクル240について説明する。
【0042】
(送信装置の構成)
図4Aは、実施の形態1の他の実施例(1)の送信装置200の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図4Bは、屈折率が高い状態となった場合の集光点の近傍の光路図を示しており、
図4Cは、屈折率が低い状態となった場合の集光点の近傍の光路図を示している。なお、
図4Bおよび
図4Cでは、集光点の位置を示すため、光伝送体120を省略している。
【0043】
図4Aに示されるように、送信装置200は、光モジュール210と、光伝送体120とを有する。光モジュール210は、発光素子130および光レセプタクル240を有する。発光素子130および光伝送体120は、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0044】
光レセプタクル240は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される樹脂製の両凸レンズである。光レセプタクル240は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル240は、入射面241と、出射面242とを有する。入射面241の中心軸と、出射面242の中心軸とは、一致している。
【0045】
実施の形態1の他の実施例(1)では、入射面241の中心の曲率半径R1は、0.2mmである。また、発光素子130から出射された光のうち、入射面241に入射される光Lの入射面241における径E1は、0.205mmである。また、発光素子130の発光面および入射面241の中心の間の距離は、1.0mmである。
【0046】
入射面241で入射した光Lは、出射面242に向かって進行する。実施の形態1の他の実施例(1)でも、発光素子130の光軸OA、入射面241の中心および出射面242の中心を含む断面において、発光素子130の発光面の中心で出射された光Lは、入射面241および出射面242の間で光軸OAと交差する光を含む。
【0047】
実施の形態1の他の実施例(1)では、出射面242の中心の曲率半径R2は、-0.05mmである。出射面242の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離は、0.106mmである。発光素子130から出射された光のうち、出射面242から出射される光の出射面242における径E2は、0.065mmである。
【0048】
R1/|R2|は4.00である。なお、|R2|/R1は、0.25である。T/(R1+R2)は、5.200である。入射面241の中心および出射面242の中心の間の光路長Tは、1.3mmである。E1/E2は、1.58である。D1/D2は、9.447である。なお、D2/D1は、0.106である。
【0049】
ここで、実施の形態1の他の実施例(1)の送信装置200における発光素子130から出射された光の光路について説明する。
【0050】
図4A~Cに示されるように、実施の形態1の他の実施例(1)の送信装置200では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル200における集光位置のずれを抑制できることがわかる。より具体的には、発光素子130から出射された光Lは、入射面241で光レセプタクル240の内部に入射する。光レセプタクル240に入射した光Lは、入射面141および出射面242の間(光レセプタクル240の内部)で光軸OAと交差する。本実施の形態では、光軸OAを含む断面(
図4Aに示される例)において、光軸OAを境に一方の側から入射面241に入射した光Lは、光軸OAを境に他方側において、出射面242に到達する。出射面242に到達した光は、集光位置に向かって集光する。なお、射面241の中心の曲率半径R1は、実施の形態1における入射面241の中心の曲率半径R1よりも大きいため、入射面241で入射した光Lは、実施の形態1よりも入射面241側で光軸OAと交差する。
図4Bおよび
図4Cに示されるように、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、集光点の位置があまり変化しないことがわかる。屈折率が低い状態となった場合における集光の位置と、屈折率が高い状態となった場合における集光点の位置との差は、0.00197mmである。なお、基準状態(常温)における焦点距離は、-0.06mmである。
【0051】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置200は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0052】
[実施の形態1の他の実施例(2)]
次に、実施の形態1の他の実施例(2)の送信装置300について説明する。実施の形態1の他の実施例(2)の送信装置300は、入射面341で入射した光Lが実施の形態1よりも入射面341側で光軸OAと交差するように構成されていることが実施の形態1の送信装置100と異なる。そこで、ここでは、主として光レセプタクル340について説明する。
【0053】
(送信装置の構成)
図5Aは、実施の形態1の他の実施例(2)の送信装置300の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図5Bは、屈折率が高い状態となった場合における集光点の近傍の光路図を示しており、
図5Cは、屈折率が低い状態となった場合における集光点の近傍の光路図を示している。なお、
図5Bおよび
図5Cでは、集光点の位置を示すため、光伝送体120を省略している。
【0054】
図5Aに示されるように、送信装置300は、光モジュール310と、光伝送体120とを有する。光モジュール310は、発光素子130および光レセプタクル340を有する。発光素子130および光伝送体120については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0055】
光レセプタクル340は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される樹脂製の両凸レンズである。光レセプタクル340は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル340は、入射面341と、出射面342とを有する。入射面341の中心軸と、出射面342の中心軸とは、一致している。
【0056】
本実施の形態では、本実施の形態では、入射面341の中心の曲率半径R1は、0.2mmである。発光素子130から出射された光のうち、入射面341に入射される光の入射面341における径E1は、0.205mmである。発光素子130の発光面および入射面341の中心の間の距離は、1.0mmである。
【0057】
入射面341で入射した光Lは、出射面342に向かって進行する。本実施の形態でも、発光素子130の光軸OA、入射面341の中心および出射面342の中心を含む断面において、発光素子130の発光面の中心で出射された光Lは、入射面341および出射面342の間で光軸OAと交差する光を含む。
【0058】
実施の形態1の他の実施例(2)では、入射面341の中心の曲率半径R2は、-0.04mmである。出射面342の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離は、0.080mmである。発光素子130から出射された光のうち、出射面342から出射される光Lの出射面342における径E2は、0.129mmである。R1/|R2|は5.00である。なお、|R2|/R1は、0.200である。T/(R1+R2)は、5.417である。また、入射面341の中心および出射面342の中心の間の光路長Tは、1.3mmである。E1/E2は、1.588である。D1/D2は、12.569である。なお、D2/D1は、0.080である。
【0059】
ここで、実施の形態1の他の実施例(2)の送信装置300における発光素子130から出射された光の光路について説明する。
【0060】
図5A~Cに示されるように、実施の形態1の他の実施例(2)の送信装置300では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル340における集光位置のずれを抑制できることがわかる。より具体的には、発光素子130から出射された光は、入射面341で光レセプタクル340の内部に入射する。光レセプタクル340に入射した光Lは、光レセプタクル340の内部で光軸OAと交差する。実施の形態1の他の実施例(2)では、光軸OAを含む断面(
図5Aに示される例)において、光軸OAを境に一方の側から入射面342に入射した光Lは、光軸OAを境に他方側において、出射面342に到達する。出射面342に到達した光Lは、集光位置に向かって集光する。
図5Bおよび5Cに示されるように、実施の形態1の他の実施例(2)では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、集光点の位置があまり変化しないことがわかる。実施の形態1の他の実施例(2)では、屈折率が低い状態となった場合における集光の位置と、屈折率が高い状態となった場合における集光点の位置との差は、0.00133mmである。なお、基準状態(常温)における焦点距離は、-0.05mmである。
【0061】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置300は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0062】
[実施の形態1の他の実施例(3)]
次に、実施の形態1の他の実施例(3)の送信装置400について説明する。実施の形態1の他の実施例(3)の送信装置400は、入射面241で入射した光Lが実施の形態1よりも入射面441側で光軸OAと交差するように構成されていることが実施の形態1の送信装置100と異なる。そこで、ここでは、主として光レセプタクル440について説明する。
【0063】
(送信装置の構成)
図6Aは、実施の形態1の他の実施例(3)の送信装置400の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図6Bは、屈折率が高い状態となった場合における集光点の近傍の光路図を示しており、
図6Cは、屈折率が低い状態となった場合における集光点の置近傍の光路図を示している。なお、
図6Bおよび
図6Cでは、集光点の位置を示すため、光伝送体120を省略している。
【0064】
図6Aに示されるように、送信装置400は、光モジュール410と、光伝送体120とを有する。光モジュール410は、発光素子130および光レセプタクル440を有する。発光素子130および光伝送体120については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
光レセプタクル440は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される樹脂製の両凸レンズである。光レセプタクル440は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル440は、入射面441と、出射面442とを有する。入射面441の中心軸と、出射面442の中心軸とは、一致している。
【0066】
実施の形態1の他の実施例(3)では、入射面441の中心の曲率半径R1は、0.182mmである。発光素子130から出射された光Lのうち、入射面441に入射される光Lの入射面541における径E1は、0.103mmである。発光素子130の発光面および入射面441の中心の間の距離は、1.0mmである。
【0067】
入射面441で入射した光は、出射面442に向かって進行する。実施の形態1の他の実施例(3)では、発光素子130の光軸OA、入射面441の中心および出射面442の中心を含む断面において、発光素子130の発光面の中心で出射された光Lは、入射面441および出射面442の間で光軸OAと交差する光Lを含む。
【0068】
実施の形態1の他の実施例(3)では、出射面442の中心の曲率半径R2は、-0.077mmである。出射面442の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離は、0.180mmである。発光素子130から出射された光Lのうち、出射面442から出射される光Lの出射面442における径E2は、0.152mmである。R1/|R2|は2.364である。なお、|R2|/R1は、0.423である。T/(R1+R2)は、5.024である。また、入射面441の中心および出射面442の中心の間の光路長Tは、1.3mmである。E1/E2は、1.356である。D1/D2は、5.549である。なお、D2/D1は、0.180である。
【0069】
ここで、実施の形態1の他の実施例(3)の送信装置400における発光素子130から出射された光の光路について説明する。
【0070】
図6A~Cに示されるように、実施の形態1の他の実施例(3)の送信装置400では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル440における集光位置のずれを抑制できることがわかる。より具体的には、発光素子130から出射された光は、入射面441で光レセプタクル440の内部に入射する。光レセプタクル440に入射した光は、光レセプタクル440の内部で光軸と交差する。実施の形態1の他の実施例(3)では、光軸OAを含む断面(
図6Aに示される例)において、光軸OAを境に一方の側から入射面541に入射した光は、光軸OAを境に他方側において、出射面442に到達する。出射面542に到達した光Lは、集光位置に向かって集光する。
図6Bおよび
図6Cに示されるように、実施の形態1の他の実施例(3)では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、集光点の位置があまり変化ないことがわかる。実施の形態1の他の実施例(3)では、屈折率が低い状態となった場合における集光の位置と、屈折率が高い状態となった場合における集光点の位置との差は、0.00352mmである。なお、基準状態(常温)における焦点距離は、-0.09mmである。
【0071】
(シミュレーション)
次に、上記実施の形態1の他の実施例(3)の光レセプタクルと、比較例の光レセプタクルとのそれぞれについて、発光素子の位置をY方向にずらした場合と、光伝送体の端面の位置をZ方向にずらした場合と、光レセプタクルの屈折率を変化させた場合と、についてシミュレーションした。
【0072】
図7A~Cは、実施の形態1の他の実施例(3)の光レセプタクルを使用した場合の結果を示すグラフであり、
図8A~Cは、比較例の光レセプタクル(
図3に記載の平凸レンズ)を使用した場合の結果を示すグラフである。
図7Aは、発光素子の位置をY方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、
図7Bは、光伝送体の端面の位置をZ方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、
図7Cは、光レセプタクルの屈折率を変化させた場合の結果を示すグラフである。
図8Aは、発光素子の位置をY方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、
図8Bは、光伝送体の端面の位置をZ方向にずらした場合の結果を示すグラフであり、
図8Cは、光レセプタクルの屈折率を変化させた場合の結果を示すグラフである。
図7A~Cおよび
図8A~Cの黒丸は、結合効率(左側の第1軸)を示しており、白丸は、結合効率差(右側の第1軸)を示している。なお、結合効率とは、発光素子と光伝送体との間における光結合効率を意味する。また、結合効率差とは、発光素子または光結合効率のずれが0mmのときの結合効率との差を意味する。
【0073】
図7A~
図7Cおよび
図8A~Cに示されるように、実施の形態1の他の実施例(3)の光レセプタクルを使用した場合は、比較例の光レセプタクルを使用した場合と比較して、発光素子が位置ずれした場合であっても光結合効率が低下しにくい。実施の形態1の他の実施例(3)の光レセプタクルを使用した場合では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクルにおける集光位置のずれを抑制できることがわかる。また、光伝送体をY方向にずらした場合でも結合効率の低下を抑制できることがわかる。
【0074】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置400は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0075】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2の送信装置500について説明する。本実施の形態の送信装置500は、入射面541と出射面542との間で光軸OAと交差しない点において、実施の形態1の送信装置100と異なる。そこで、ここでは、主として光レセプタクル540について説明する。
【0076】
(送信装置の構成)
図9Aは、実施の形態2の送信装置500の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図9Bは、屈折率が高い状態となった場合における集光点の近傍の光路図を示しており、
図9Cは、屈折率が低い状態となった場合における集光点の近傍の光路図を示している。なお、
図9Bおよび
図9Cでは、集光点の位置を示すため、光伝送体120を省略している。
【0077】
図9Aに示されるように、送信装置500は、光モジュール510と、光伝送体120とを有する。光モジュール510は、発光素子130および光レセプタクル540を有する。発光素子130および光伝送体120については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0078】
光レセプタクル540は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される樹脂製の両凸レンズである。光レセプタクル540は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル540は、入射面541と、出射面542とを有する。入射面541の中心軸と、出射面542の中心軸とは、一致している。
【0079】
本実施の形態では、入射面541の中心の曲率半径R1は、0.375mmである。入射面541における発光素子130から出射される光の径E1は、0.202mmである。発光素子130の発光面および入射面541の中心の間の距離は、1.125mmである。
【0080】
入射面541で入射した光は、出射面542に向かって進行する。本実施の形態では、発光素子130の光軸OAを含む断面において、入射面541の曲率半径が小さいため、発光素子130の発光面の中心から出射された光Lが入射面541に入射する位置と、光Lの出射面542に入射する位置とは、光軸OAを境に同じ側の位置である。すなわち、本実施の形態では、入射面541で入射した光Lは、光レセプタクル540の内部で光軸OAと交差しない。
【0081】
本実施の形態では、出射面542の中心の曲率半径R2は、-0.235mmである。出射面542の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離は、0.091mmである。出射面542における発光素子130から出射される光Lの径E2は、0.021mmである。
【0082】
送信装置500では、入射面541の中心の曲率半径をR1とし、出射面542の中心の曲率半径をR2としたとき、以下の式(1)を満たし、式(1A)を満たすことがより好ましい。
式(1)R1/|R2|>1.5
式(1A)R1/|R2|>3.5
本実施の形態では、R1/|R2|は1.595である。なお、|R2|/R1は、0.627である。
【0083】
また、送信装置500では、入射面541の中心の曲率半径をR1とし、出射面542の中心の曲率半径をR2とし、入射面541の中心および出射面542の中心の間の光路長をTとしたとき、以下の式(2)を満たし、式(2A)を満たすことがより好ましい。
式(2) T/(R1+R2)>1.5
式(2) T/(R1+R2)>4
本実施の形態では、T/(R1+R2)は、3.112である。また、本実施の形態では、入射面541の中心および出射面542の中心の間の光路長Tは、1.9mmである。
【0084】
発光素子130から出射された光Lのうち、入射面541に入射される光の入射面541における径をE1とし、発光素子130から出射された光Lのうち、出射面542から出射される光Lの出射面542における径をE2としたとき、以下の式(3)を満たすことが好ましく、式(3A)を満たすことがより好ましい。
式(3) E1/E2>1.2
式(3A) E1/E2>4.0
本実施の形態では、E1/E2は、9.73である。
【0085】
発光素子130の発光面および入射面541の間の距離をD1とし、出射面542および光伝送体120の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たすことが好ましく、式(4A)を満たすことがより好ましい。
式(4) D1/D2>5
式(4A) D1/D2>9
本実施の形態では、D1/D2は、12.310である。なお、D2/D1は、0.081である。
【0086】
ここで、本実施の形態の送信装置500における発光素子130から出射された光の光路について説明する。
【0087】
図9A~Cに示されるように、本実施の形態の送信装置500では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル540における集光点の位置のずれを抑制できることがわかる。より具体的には、発光素子130から出射された光Lは、入射面541で光レセプタクル540の内部に入射する。光レセプタクル540に入射した光Lは、光レセプタクル540の内部で光軸OAと交差しない。本実施の形態では、光軸OAを含む断面(
図8Aに示される例)において、光軸OAを境に一方の側から入射面に入射した光Lは、同じ側において、出射面542に到達する。出射面542に到達した光Lは、集光位置に向かって集光する。
図8Bおよび
図8Cに示されるように、本実施の形態では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、集光点の位置があまり変化しないことがわかる。本実施の形態では、屈折率が高い状態となった場合における集光点の位置と、屈折率が高い状態となった場合における集光点の位置との差は、0.01555mmである。なお、基準状態(常温)における焦点距離は、-1.181mmである。
【0088】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置500は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0089】
[実施の形態3]
次に、実施の形態3の送信装置600について説明する。本実施の形態の送信装置600は、入射面641と出射面642との間で光軸OAと交差しない点において、実施の形態1の送信装置100と異なる。そこで、ここでは、主として光レセプタクル640について説明する。
【0090】
(送信装置の構成)
図10Aは、実施の形態3の送信装置600の基準状態(常温)における光路図を示しており、
図10Bは、屈折率が高い状態となった場合の集光における集光点の近傍の光路図を示しており、
図10Cは、屈折率が低い状態となった場合における集光点の近傍の光路図を示している。なお、
図10Bおよび
図10Cでは、集光点の位置を示すため、光伝送体120を省略している。
【0091】
図10Aに示されるように、送信装置600は、光モジュール610と、光伝送体120とを有する。光モジュール610は、発光素子130および光レセプタクル640を有する。発光素子130および光伝送体120については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0092】
光レセプタクル640は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される樹脂製の両凸レンズである。光レセプタクル640は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル640は、入射面641と、出射面642とを有する。入射面641の中心軸と、出射面642の中心軸とは、一致している。
【0093】
本実施の形態では、本実施の形態では、入射面641の中心の曲率半径R1は、0.25mmである。本実施の形態では、発光素子130から出射された光Lのうち、入射面641に入射される光Lの入射面641における径E1は、0.204mmである。本実施の形態では、発光素子130の発光面および入射面641の中心の間の距離は、1.35mmである。
【0094】
入射面641で入射した光は、出射面642に向かって進行する。本実施の形態では、発光素子130の光軸OA、入射面641の中心および出射面642の中心を含む断面において、発光素子130の発光面の中心で出射された光Lは、入射面641および出射面642の間で光軸OAと交差しない。
【0095】
本実施の形態では、出射面642の中心の曲率半径R2は、-0.667mmである。本実施の形態では、出射面642の中心と、光伝送体120の端面の中心との間の距離は、0.026mmである。本実施の形態では、発光素子130から出射された光のうち、出射面642から出射される光の出射面642における径E2は、0.004mmである。
【0096】
なお、本実施の形態では、入射面641の曲率半径と、出射面642の曲率半径との関係により、出射面642から出射された第1光線L1が発光素子130の光軸OAと交差する第1位置と、第1光線L1よりも入射面641の外側に向けて出射され、入射面641から入射し、出射面642で出射された第2光線L2が光軸OAと交差する第2位置とを比較した時、第1位置よりも第2位置の方が出射面642に近くなるように構成されている。
【0097】
送信装置600では、入射面641の中心の曲率半径をR1とし、出射面642の中心の曲率半径をR2としたとき、以下の式(1)を満たし、式(1A)を満たすことがより好ましい。
式(1) R1/|R2|>1.5
式(1A) R1/|R2|>3.5
本実施の形態では、R1/|R2|は3.750である。なお、|R2|/R1は、0.267である。
【0098】
また、送信装置600では、入射面641の中心の曲率半径をR1とし、出射面642の中心の曲率半径をR2とし、入射面641の中心および出射面642の中心の間の光路長をTとしたとき、以下の式(2)を満たし、式(2A)を満たすことがより好ましい。
式(2) T/(R1+R2)>1.5
式(2) T/(R1+R2)>4
本実施の形態では、T/(R1+R2)は、4.263である。また、本実施の形態では、入射面641の中心および出射面642の中心の間の光路長Tは、1.35mmである。
【0099】
発光素子130から出射された光のうち、入射面641に入射される光の入射面641における径をE1とし、発光素子130から出射された光のうち、出射面642から出射される光の出射面642における径をE2としたとき、以下の式(3)を満たすことが好ましく、式(3A)を満たすことがより好ましい。
式(3) E1/E2>1.2
式(3A) E1/E2>4.0
本実施の形態では、E1/E2は、46.455である。
【0100】
発光素子130の発光面および入射面641の間の距離をD1とし、出射面642および光伝送体120の端面の間の距離をD2としたとき、以下の式(4)を満たすことが好ましく、式(4A)を満たすことがより好ましい。
式(4) D1/D2>5
式(4A) D1/D2>9
本実施の形態では、D1/D2は、28.654である。なお、D2/D1は、0.035である。
【0101】
ここで、本実施の形態の送信装置600における発光素子130から出射された光の光路について説明する。
【0102】
図10A~Cに示されるように、本実施の形態の送信装置600では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル640における集光点の位置のずれを抑制できることがわかる。より具体的には、発光素子130から出射された光は、入射面641で光レセプタクル640の内部に入射する。光レセプタクル640に入射した光は、光レセプタクル640の内部で光軸と交差しない。
図10Cに示されるように、発光素子130の発光面の中心から出射され、入射面641へ入射して光レセプタクル640内を伝播し、出射面642から出射された第1光線L1が発光素子130の光軸OAと交差する第1位置と、発光素子130の発光面の中心で出射され、第1光線L1よりも入射面641の外側に向けて出射され、入射面641から入射し、出射面642で出射された第2光線L2が光軸OAと交差する第2位置とを比較した時、第1位置よりも第2位置の方が出射面642に近い。本実施の形態では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、集光点の位置があまり変化しないことがわかる。本実施の形態では、屈折率が低い状態となった場合における集光の位置と、屈折率が高い状態となった場合における集光点の位置との差は、0.011mmである。なお、屈折率の変化がない場合における焦点距離は、-0.13mmである。
【0103】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置600は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0104】
[実施の形態4]
(送信装置の構成)
次に、実施の形態4の送信装置700について説明する。本実施の形態の送信装置700は、光レセプタクル740の構成のみが実施の形態1の送電装置100と異なる。そこで、主として光レセプタクル740について説明し、同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0105】
図11は、実施の形態4の送電装置700の構成を示す図である。
【0106】
図11に示されるように、本実施の形態の送電装置700は光モジュール710と、光伝送体120とを有する。光モジュール710は、発光素子130と、光レセプタクル740とを有する。発光素子130および光伝送体120については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0107】
光レセプタクル740は、発光素子130と、光伝送体120との間に配置される樹脂製の両凸レンズである。光レセプタクル740は、例えば射出成形により一体成形されて製造されうる。光レセプタクル740は、入射面741と、出射面742と、反射面743とを有する。
【0108】
反射面243は、入射面741で入射した光を出射面742に向けて反射させる。本実施の形態では、反射面743は、平面でもよいし、凸面でもよいし、平面でもよい。本実施の形態では、反射面743は、平面である。
【0109】
特に図示しないが、本実施の形態の送信装置700では、屈折率が高い状態となった場合でも屈折率が低い状態となった場合でも、光レセプタクル740における集光点の位置のずれを抑制できる。より具体的には、発光素子130から出射された光は、入射面741で光レセプタクル740の内部に入射する。光レセプタクル740に入射した光は、光レセプタクル740の内部で光軸OAと交差する。本実施の形態では、光軸OAを含む断面(
図11に示される例)において、光軸OAを境に一方の側から入射面741に入射した光は、反射面743で反射した光の中心光線を境に他方側において、出射面742に到達する。出射面742に到達した光は、集光点に向かって集光する。
【0110】
(効果)
以上のように、本実施の形態の送電装置700は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の光レセプタクルおよび光モジュールは、例えば、光伝送体を用いた光通信に有用である。
【符号の説明】
【0112】
100、200、300、400、500、600、700、900 送信装置
110、210、310、410、510、610、710 光モジュール
120 光伝送体
130 発光素子
140、240、340、440、540、640、740、940 光レセプタクル
141、241、341、441、541、641、741 入射面
142、242、342、424、544、642、742 出射面