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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171533
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088591
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】門川 裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(72)【発明者】
【氏名】塩井 伸一
【テーマコード(参考)】
5F136
5J097
【Fターム(参考)】
5F136BB13
5F136DA11
5J097AA24
5J097BB02
5J097BB11
5J097DD19
5J097DD28
5J097EE08
5J097FF04
5J097HA04
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】WLP構造の弾性波デバイスにおいて、これを構成するデバイスチップ2の放熱性を合理的に向上可能な新しい構造を提供する。
【解決手段】デバイスチップ2の一面2a上に形成された第1メタルパターン3と、第1メタルパターン3よりも大きい厚みを持った第2メタルパターン4と、第2メタルパターン4上に形成されてデバイスチップ2の一面2a及び第2メタルパターン4と共働して共振器11の封止空間10を形成させる樹脂製の第1ルーフ部分5と、第1ルーフ部分5上に形成されたルーフ内金属層7と、ルーフ内金属層7を第1ルーフ部分5との間に位置させるようにして第1ルーフ部分5上に形成された樹脂製の第2ルーフ部分6と、第2ルーフ部分6を貫通する放熱用通過穴6cを利用して形成されると共に、ルーフ内金属層7に接合させた内端部9aと第2ルーフ部分6から突き出す外端部9bとを備えた放熱用半田バンプ9とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスチップと、
前記デバイスチップの一面上に形成されると共に、共振器となるパターンを含む第1メタルパターンと、
前記デバイスチップの前記一面上に形成されると共に、いずれの位置でも前記第1メタルパターンよりも大きい所定の厚みを持つように形成され、かつ、信号入出力用端子、前記信号入出力端子と前記共振器を接続する配線、前記複数の共振器同士を接続する配線およびグランド配線となるパターンを含む第2メタルパターンと、
前記第2メタルパターン上に形成されて、前記デバイスチップの前記一面及び前記第2メタルパターンと共働して前記共振器の封止空間を形成させる樹脂製の第1ルーフ部分と、
前記第1ルーフ部分上に形成されたルーフ内金属層と、
前記ルーフ内金属層を前記第1ルーフ部分との間に位置させるようにして前記第1ルーフ部分上に形成された樹脂製の第2ルーフ部分と、
前記第2ルーフ部分を貫通する放熱用通過穴を利用して形成されると共に、前記ルーフ内金属層に接合させた内端部と前記第2ルーフ部分から突き出す外端部とを備えた二以上の放熱用半田バンプとを備えてなる、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第1ルーフ部分を、非感光性で、かつ、前記第2ルーフ部分を構成する樹脂よりも熱伝導率が高い樹脂から構成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第1ルーフ部分の厚みを、前記第2ルーフ部分の厚みよりも小さくさせてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記グランド配線を、前記第1メタルパターン、前記信号入出力用端子、前記信号入出力端子と前記共振器を接続する配線、および、前記複数の共振器同士を接続する配線を囲うように配置させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記ルーフ内金属層の一部は、前記信号入出力用端子に対し前記第1ルーフ部分を貫通するビアを通じて電気的に接続されており、
前記第2ルーフ部分を貫通する接続用通過穴を利用して形成されると共に、前記ルーフ内金属層の前記一部に接合させた内端部と前記第2ルーフ部分から突き出す外端部とを備えた外部接続用半田バンプを備えてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記第1ルーフ部分及び前記第2ルーフ部分を貫通する接続用通過穴を利用して形成されると共に、前記信号入出力用端子に接合させた内端部と前記第2ルーフ部分から突き出す外端部とを備えた外部接続用半田バンプを備えてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記ルーフ内金属層を、複数の貫通穴を持つように形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記ルーフ内金属層を、メッシュ状をなすように形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適した弾性波デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
WLP(Wafer Level Package)構造を有する弾性波(Surface Acoustic Wave/SAW)デバイスは、特許文献1に示される構造を持つ。
この特許文献1のものは、デバイスチップの一面上にカバーを設けると共に、このカバーにより形成された内部空間内に前記一面に形成させたIDT電極が位置されるようになっている。
ここで、弾性波デバイスへの信号の入力によりデバイスチップには熱が生じるが、デバイスチップを構成する圧電体は熱伝導率が低く放熱性が悪い。圧電体として利用されるタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムの熱伝導率は約4から6W/mK程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-217673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のWLP構造の弾性波デバイスにおいて、これを構成するデバイスチップの放熱性を合理的に向上可能な新しい構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、弾性波デバイスを、
デバイスチップと、
前記デバイスチップの一面上に形成されると共に、共振器となるパターンを含む第1メタルパターンと、
前記デバイスチップの前記一面上に形成されると共に、いずれの位置でも前記第1メタルパターンよりも大きい所定の厚みを持つように形成され、かつ、信号入出力用端子、前記信号入出力端子と前記共振器を接続する配線、前記複数の共振器同士を接続する配線およびグランド配線となるパターンを含む第2メタルパターンと、
前記第2メタルパターン上に形成されて、前記デバイスチップの前記一面及び前記第2メタルパターンと共働して前記共振器の封止空間を形成させる樹脂製の第1ルーフ部分と、
前記第1ルーフ部分上に形成されたルーフ内金属層と、
前記ルーフ内金属層を前記第1ルーフ部分との間に位置させるようにして前記第1ルーフ部分上に形成された樹脂製の第2ルーフ部分と、
前記第2ルーフ部分を貫通する放熱用通過穴を利用して形成されると共に、前記ルーフ内金属層に接合させた内端部と前記第2ルーフ部分から突き出す外端部とを備えた二以上の放熱用半田バンプとを備えてなる、ものとした。
【0006】
前記第1ルーフ部分を、非感光性で、かつ、前記第2ルーフ部分を構成する樹脂よりも熱伝導率が高い樹脂から構成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0007】
また、前記第1ルーフ部分の厚みを、前記第2ルーフ部分の厚みよりも小さくさせることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記グランド配線を、前記第1メタルパターン、前記信号入出力用端子、前記信号入出力端子と前記共振器を接続する配線、および、前記複数の共振器同士を接続する配線を囲うように配置させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記ルーフ内金属層の一部は、前記信号入出力用端子に対し前記第1ルーフ部分を貫通するビアを通じて電気的に接続されており、
前記第2ルーフ部分を貫通する接続用通過穴を利用して形成されると共に、前記ルーフ内金属層の前記一部に接合させた内端部と前記第2ルーフ部分から突き出す外端部とを備えた外部接続用半田バンプを備えさせるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記第1ルーフ部分及び前記第2ルーフ部分を貫通する接続用通過穴を利用して形成されると共に、前記信号入出力用端子に接合させた内端部と前記第2ルーフ部分から突き出す外端部とを備えた外部接続用半田バンプを備えさせるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記ルーフ内金属層を、複数の貫通穴を持つように形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記ルーフ内金属層を、メッシュ状をなすように形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明にあっては、前記放熱用半田バンプを利用して、前記デバイスチップの放熱性を合理的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第一例)の断面構成図であり、図2におけるB-B線位置で第一例を断面にして示している。
図2図2は、図1におけるA-A線位置での断面構成図である。
図3図3は、図2におけるC-C線位置での断面構成図である。
図4図4は、前記第一例を構成するデバイスチップ上に形成される共振器の一例を示した構成図である。
図5図5は、前記第一例のデバイスチップ上に形成される回路の一例を示した構成図である。
図6図6は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図7図7は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図8図8は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図9図9は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図10図10は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図11図11は、前記第一例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図12図12は、前記第一例と構成の一部を異ならせる弾性波デバイスの第二例の断面構成図である。
図13図13は、前記第二例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図14図14は、前記第二例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図15図15は、前記第二例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図16図16は、前記第二例の製造工程の要部を示した断面構成図である。
図17図17は、前記第一例と構成の一部を異ならせる弾性波デバイスの第三例の断面構成図であり、図18におけるE-E線位置で第二例を断面にして示している。
図18図18は、図17におけるD-D線位置での断面構成図である。
図19図19は、前記第一例と構成の一部を異ならせる弾性波デバイスの第四例の断面構成図であり、図3と同じ向きから第四例を見て示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図19に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。
【0016】
かかる弾性波デバイス1は、デバイスチップ2と、 第1メタルパターン3と、第2メタルパターン4と、第1ルーフ部分5と、ルーフ内金属層7と、第2ルーフ部分6と、外部接続用半田バンプ8と、放熱用半田バンプ9とを備えたものとなっている。
デバイスチップ2の一面2a上に、 第1メタルパターン3が形成されている。また、デバイスチップ2の一面2a上には、第1メタルパターン3以上の厚みの第2メタルパターン4が形成されている。
第2メタルパターン4は、デバイスチップ2の一面2aと側面2bとが接し合うデバイスチップ2の外縁部2cに形成されてデバイスチップ2の一面2aにおけるこの外縁部2cの内方をデバイスチップ2の主要面部2d(弾性波デバイス1としての機能を発揮する面部)として囲繞する外側部分4a(図1及び図2参照)と、主要面部2dにおける第1メタルパターン3の形成領域以外の領域に形成されて主として配線13として機能する仕切り壁状の内側部分4bとを備えている。
第2メタルパターン4の内側部分4bの一部は第1メタルパターン3の一部に重ね合わされるように形成されて、第1メタルパターン3に接続されるようにする場合もある。
第1ルーフ部分5は、その内面5aを、第2メタルパターン4におけるデバイスチップ2の一面2aに固着された第一端4cと反対の第二端4dに固着させて、第2メタルパターン4上に支持されている。
デバイスチップ2の一面2a上には、前記主要面部2dと、第2メタルパターン4の外側部分4aと、第1ルーフ部分5とによって、封止空間10(キャビティ、中空構造部)が形成され、この封止空間10内に第1メタルパターン3によって形成される後述の共振器11が配される。
【0017】
典型的には、前記デバイスチップ2は、一辺を0.5ないし1mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形(図示の例では長方形)の板状をなすように構成される。
また、典型的には、第1メタルパターン3は、前記デバイスチップ2の一面2aに直交する向きの厚さ(デバイスチップ2の一面2aを基準とした第1メタルパターン3の高さ)を0.1ないし0.5μmとするように構成される。
また、典型的には、第2メタルパターン4は、前記デバイスチップ2の一面2aに直交する向きの厚さを3ないし5μmとするように構成される。
また、典型的には、第1ルーフ部分5は、厚さを15ないし35μmとするように構成される。
また、この第1ルーフ部分5上に後述のルーフ内金属層7を挟んで形成される後述の第2ルーフ部分6は、厚さを15ないし35μmとするように構成される。
これらから構成される弾性波デバイス1は、典型的には、厚さを0.25ないし0.35mm程度とする。
【0018】
かかる弾性波デバイス1は、前記デバイスチップ2の前記一面2aに直交する向きから見た状態において正方形又は長方形の四角形状の輪郭を持つようなっている。
すなわち、かかる弾性波デバイス1は、前記四角形状の二つの面1aと、この二つの面1a間に亘る四つの側面1bとを備えた扁平の六面体状を呈する。
なお、各図においては、弾性波デバイス1の構成を理解しやすいように、その構成要素の厚さは誇張して表している。
【0019】
デバイスチップ2は、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ2には、典型的には、圧電体としてタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムが用いられ、また、デバイスチップ2は、これらにサファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどを積層させて、構成される場合もある。
【0020】
第1メタルパターン3は、前記デバイスチップ2の一面2a上に形成されると共に、いずれの位置でも所定の厚みを持つように形成され、かつ、共振器11となるパターンを含む。
図4に共振器11の構成の一例を示す。共振器11はIDT電極11cと、IDT電極11cを挟むようにして形成される反射器11dとを有する。IDT電極11cは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指11e同士をこれらの一端側においてバスバー11fで接続させてなる。反射器11dは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指11gの端部間をバスバー11hで接続させてなる。
第1メタルパターン3は、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0021】
第2メタルパターン4は、図1および図2に示されるように、前記デバイスチップ2の前記一面2a上に形成されると共に、いずれの位置でも前記第1メタルパターン3よりも大きい所定の厚みを持つように形成され、かつ、信号入出力用端子12、前記信号入出力用端子12と前記共振器11とを接続する配線13a、前記複数の共振器11同士を接続する配線13bおよびグランド配線13cとなるパターンを含む。
図示の例では、第2メタルパターン4の外側部分4aは、デバイスチップ2の外縁部2cのやや内側にあって、この外縁部2cに実質的に平行をなす外壁面4eを有している。この外壁面4eより内側が前記主要面部2dとなる。
図示の例では、デバイスチップ2の四隅においてそれぞれ、第2メタルパターン4によって前記信号入出力用端子12として機能する第一部分4fが形成されている。
また、この第一部分4fと共振器11との間に前記配線13aとして機能する第二部分4gが形成されている。
また、隣り合う共振器11間に前記配線13bとして機能する第三部分4hが形成されている。
かかる第2メタルパターン4も、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0022】
図5に、前記第1メタルパターン3及び第2メタルパターン4によって一つのデバイスチップ2上に備えられる回路の一例の概念を示す。符号11aは信号入出力用端子12間に直列に接続された共振器11、符号11bは信号入出力用端子12間に並列に接続された共振器11、符号14はインダクタ、符号15はグランドを示す。共振器11の数や配置は必要に応じて変更される。すなわち、図5の回路によってラダー型フィルタが構成されるようになっている。
【0023】
図示の例では、前記のような回路におけるグランド15に接続されるグランド配線13cを、前記第1メタルパターン3、前記信号入出力用端子12、前記信号入出力用端子12と前記共振器11を接続する配線13a、および、前記複数の共振器11同士を接続する配線13bを囲うように配置させている。
前記グランド配線13cは、前記のような回路における共振器11とグランド15とを間に他の共振器11を介在させることなく結ぶ配線13である。
図示の例では、図1に示されるように、第2メタルパターン4の外側部分4aをグランド配線13cとして機能させるようにしている。
【0024】
また、後述のルーフ内金属層7の少なくとも一部を前記インダクタ14として機能させるようにしておくこともある。この場合、前記インダクタ14の一端は、共振器11とインダクタ14とを結ぶ配線に対し前記第1ルーフ部分5を貫通するビア5cおよび配線体17を通じて電気的に接続され、前記インダクタ14の他端は前記付随部7bのうちのグランド15と接続される部分(図示は省略する。)に接続されるようにする。
【0025】
前記第1ルーフ部分5は、絶縁性の樹脂から構成される。前記第1ルーフ部分5は、前記第2メタルパターン4上に形成されて、前記デバイスチップ2の前記一面2a及び前記第2メタルパターン4と共働して前記共振器11の封止空間10を形成させる。
前記第1ルーフ部分5は、非感光性で、かつ、前記第2ルーフ部分6を構成する樹脂よりも熱伝導率が高い樹脂から構成することが好ましい。このような樹脂としては、熱伝導率の高い物質からなるフィラーを、基材となる樹脂に対して70wt%ないし90wt%の範囲で含ませるようにしたものが用いられる。かかるフィラーは典型的には直径10μm前後の粒状体として構成される。
具体的には、前記第1ルーフ部分5を構成する樹脂としては、フィラーを含有するエポキシ系樹脂や、フィラーを含有するフェノール系樹脂を用いることができる。フィラーとしては、典型的には、アルミナ、窒化アルミ、粉末ダイヤモンドを用いることができる。
前記第1ルーフ部分5は、デバイスチップ2の一面2aに実質的に平行な内面5a及びこれに対向する外面5bを有する。図示の例では、第1ルーフ部分5はデバイスチップ2と実質的に同じ形状と大きさを持った板状をなしている。第1ルーフ部分5の内面5aとデバイスチップ2の一面2aとの間には前記第2メタルパターン4の厚さ分のギャップが形成され、このギャップは第2メタルパターン4の外側部分4aによって気密封止されて前記封止空間10が形成される。
【0026】
前記ルーフ内金属層7は、前記第1ルーフ部分5の外面5b上に形成されている。
図3に示されるように、ルーフ内金属層7は、前記共振器11の形成領域上に形成されてこの形成領域の全体を実質的に覆う大きさの主要部7aと、前記信号入出力用端子12上に形成された付随部7bとを備える。
図示の例では、主要部7aと付随部7bとは分断されている。図5に示されるような回路においては付随部7bの一部をインダクタ14とすることとなる。また、ルーフ内金属層7は第1ルーフ部分5及び第2ルーフ部分6より薄く膜状をなしている。
ルーフ内金属層7は、典型的には、リフトオフによって形成される。
【0027】
前記第2ルーフ部分6は、前記ルーフ内金属層7を前記第1ルーフ部分5との間に位置させるようにして前記第1ルーフ部分5上に形成されている。第2ルーフ部分6は絶縁性の樹脂から構成される。
また、第2ルーフ部分6は感光性樹脂から構成することが好ましい。
第2ルーフ部分6は、第1ルーフ部分5の外面5bに固着された内面6aとこれに対向する外面6bとを有し、ルーフ内金属層7を覆い隠し、かつ、第1ルーフ部分5の外面5bの全体を被覆するように形成されている。
【0028】
前記第1ルーフ部分5、ルーフ内金属層7、および、第2ルーフ部分6の三者から、ルーフ16が形成される。
なお、前記第1ルーフ部分5の厚みは、前記第2ルーフ部分6の厚みよりも小さくさせておくことが好ましい。このようにしておけば、第2ルーフ部分6によってルーフ16の厚さを大きくさせてその剛性を確保しつつ、デバイスチップの一面とルーフ内金属層7との間の距離を最小化して後述の第1経路L1及び第2経路L2を通じた放熱効率を向上させることができる。
【0029】
図1ないし図5に示される第一例にあっては、前記ルーフ内金属層7の一部としての前記付随部7bは、前記信号入出力用端子12に対し前記第1ルーフ部分5を貫通するビア5cを通じて電気的に接続されている。
第一例では、第1ルーフ部分5に信号入出力用端子12を穴底に位置させるビア5cが形成されており、このビア5c内に形成される配線体17がこのビア5c上に位置される付随部7bに接続されている。
第一例にあっては、外部接続用半田バンプ8は、前記第2ルーフ部分6を貫通する接続用通過穴6cを利用して形成されると共に、前記ルーフ内金属層7の前記一部としての付随部7bに接合させた内端部8aと前記第2ルーフ部分6から突き出す外端部8bとを備えている。
前記接続用通過穴6cは、ルーフ内金属層7の付随部7bの直上において、前記第2ルーフ部分6に形成されており、接続用通過穴6cの穴底は前記付随部7bとなっている。
図示の例では、接続用通過穴6cは、第2ルーフ部分6の内面6a側に向かうにつれて穴径を漸減させるように構成されており、穴壁を傾斜させている。
外部接続用半田バンプ8は、接続用通過穴6c内に位置されて接続用通過穴6cと相補となる形状を持った軸部8cと、第2ルーフ部分6の外面6b上に位置される頭部8dとを有し、両者の間には第2ルーフ部分6の外面6bに固着する周回顎部8eが形成されている。頭部8dは半球状を呈し、頭部8dによって前記外端部8bが形成されている。
【0030】
図12に示される第二例にあっては、外部接続用半田バンプ8は、前記第1ルーフ部分5及び前記第2ルーフ部分6を貫通する接続用通過穴18を利用して形成されると共に、前記信号入出力用端子12に接合させた内端部8aと前記第2ルーフ部分6から突き出す外端部8bとを備えた構成となっている。
この第二例にあっては、ルーフ内金属層7を介さずにデバイスチップ2に形成された回路と外部とを外部接続用半田バンプ8によって接続できるようにしている。
【0031】
前記放熱用半田バンプ9は、前記第2ルーフ部分6を貫通する放熱用通過穴6dを利用して形成されると共に、前記ルーフ内金属層7に接合させた内端部9aと前記第2ルーフ部分6から突き出す外端部9bとを備えている。
前記放熱用通過穴6dは、前記第2ルーフ部分6の外面6b側に穴口を有し、穴底にルーフ内金属層7を位置させた有底穴状を呈している。
図示の例では、放熱用通過穴6dは、第2ルーフ部分6の内面6a側に向かうにつれて穴径を漸減させるように構成されており、穴壁を傾斜させている。
放熱用半田バンプ9は、放熱用通過穴6d内に位置されて放熱用通過穴6dと相補となる形状を持った軸部9cと、第2ルーフ部分6の外面6b上に位置される頭部9dとを有し、両者の間には第2ルーフ部分6の外面6bに固着する周回顎部9eが形成されている。頭部9dは半球状を呈し、頭部9dによって前記外端部9bが形成されている。
【0032】
弾性波デバイスは、二以上の放熱用半田バンプ9を備えている。
また、図3に示されるように、放熱用半田バンプ9は、前記デバイスチップ2の前記一面2aに直交する向きから見た状態において、前記共振器11の形成領域上となる箇所に形成されている。図示の例では、二以上の放熱用半田バンプ9の全てが共振器11の形成領域上に少なくともその一部を位置させるように形成されている。
【0033】
この実施の形態にかかる弾性波デバイス1によれば、第一に、共振器11の封止空間10を前記第2メタルパターン4と前記第1ルーフ部分5とによって形成することから、弾性波デバイス1の厚さを最小化することができ、この種のデバイスの低背化の要請に資する。
また、第二に、デバイスチップ2に生じた熱を、第2メタルパターン4と第1ルーフ部分5とルーフ内金属層7と放熱用半田バンプ9とを通じた直線的な第一経路L1(図2参照)を通じて外部に効率的に逃がすことができる。第1ルーフ部分5を熱伝導率が高い樹脂から構成させることで、この第一経路L1を通じた放熱効率は向上される。
また、第三に、第2メタルパターン4を通じて第1ルーフ部分5に伝達した熱を、第1ルーフ部分5とルーフ内金属層7と放熱用半田バンプ9とを通じた第二経路L2(図2参照)を通じて外部に効率的に逃がすことができる。第1ルーフ部分5を熱伝導率が高い樹脂から構成させることで、この第二経路L2を通じた放熱効率は向上される。
また、第四に、デバイスチップ2に生じた熱を、第2メタルパターン4と外部接続用半田バンプ8とを通じた第三経路L3(図2参照)を通じて外部に効率的に逃がすことができる。
【0034】
典型的には、図2に示されるように、弾性波デバイス1は、前記外部接続用半田バンプ8、及び、放熱用半田バンプ9を、モジュール基板19に形成された金属製の接続部19aに超音波接合により固着させることでモジュール基板19に実装されてモジュールを構成する。デバイスチップ2に生じた熱はこのように弾性波デバイス1が実装されるモジュール基板19側に逃がされることとなる。
【0035】
前記第一例にかかる弾性波デバイス1は、以下の各ステップを含む製造方法によって、適切且つ合理的に製造することができる。
【0036】
先ず、デバイスチップ2となるウエハ20の一面に、第1メタルパターン3を形成する(第1ステップ/図示は省略する。)。
【0037】
次いで、デバイスチップ2となるウエハ20の一面に、第2メタルパターン4を形成する(第2ステップ/図示は省略する。)。
【0038】
次いで、デバイスチップ2となるウエハ20の一面に、第1ルーフ部分5を形成する(第3ステップ/図示は省略する。)。
第1ルーフ部分5は、前記ウエハ20の一面上に、樹脂製の面状体(フィルム)を積層し、両者を一体化させることで、形成させることができる。
このように第1ルーフ部分5を形成させた後、第1ルーフ部分5を加圧することによって、第1ルーフ部分5の内面5aと第2メタルパターン4とを隙間無く一体化させることで、前記第一経路L1を確実に成立させることができる。
【0039】
次いで、前記第3ステップにより形成された第1ルーフ部分5上に前記ビア5cを形成させるためのレジスト21を形成し、このレジスト21を利用して第1ルーフ部分5の一部を薬液処理によって取り除き前記ビア5cを形成させる(図6/第4ステップ)。
【0040】
次いで、第4ステップにおいて形成されたレジスト21を除去した後、ビア5c内に金属を充填するようにして配線体17を形成させる(第5ステップ/図7)。この配線体17は典型的には無電解メタルメッキによって形成させることができる。この配線体17は一端を信号入出力用端子12に固着させ、かつ、これに対向する他端を第1ルーフ部分5の外面5bと面一に位置させるように形成される。
【0041】
次いで、第1ルーフ部分5上にルーフ内金属層7としての主要部7aと付随部7bを形成する(図8/第6ステップ)。ルーフ内金属層7は、典型的にはリフトオフによって形成させることができる。
【0042】
次いで、第1ルーフ部分5上に第2ルーフ部分6を形成する。
第2ルーフ部分6は、第1ルーフ部分5上に、樹脂製の面状体(フィルム)を積層し、両者を一体化させることで、形成させることができる。あるいはまた、第2ルーフ部分6は第1ルーフ部分5上に前記樹脂を塗布することによって形成させることができる。
このように第1ルーフ部分5上に第2ルーフ部分6となる樹脂層を形成させた後、その上に接続用通過穴6cと放熱用通過穴6dを形成させるためのレジスト(図示は省略する。)を形成し、このレジストを利用して第2ルーフ部分6となる樹脂層の一部を薬液処理によって取り除き接続用通過穴6cと放熱用通過穴6dを形成させる(図9/第7ステップ)。
【0043】
次いで、接続用通過穴6cと放熱用通過穴6dとに、典型的には印刷機によりクリーム半田22を塗布・充填する(図10/第8ステップ)。
【0044】
第8ステップ後のリフロー処理により第2ルーフ部分6の外面から突き出す高さを持った外部接続用半田バンプ8及び放熱用半田バンプ9が形成される。
この後、前記ウエハ20に対しダイシングを施すことで、前記ウエハ20から複数の前記の構造を備えた弾性波デバイス1が生成される(図11)。
【0045】
また、前記第二例にかかる弾性波デバイス1は、以下の各ステップを含む製造方法によって、適切且つ合理的に製造することができる。
【0046】
先ず、デバイスチップ2となるウエハ20の一面に、第1メタルパターン3を形成する(第1ステップ/図示は省略する。)。
【0047】
次いで、デバイスチップ2となるウエハ20の一面に、第2メタルパターン4を形成する(第2ステップ/図示は省略する。)。
【0048】
次いで、デバイスチップ2となるウエハ20の一面に、第1ルーフ部分5を形成する(第3ステップ/図示は省略する。)。
第1ルーフ部分5は、前記ウエハ20の一面上に、樹脂製の面状体(フィルム)を積層し、両者を一体化させることで、形成させることができる。
このように第1ルーフ部分5を形成させた後、第1ルーフ部分5を加圧することによって、第1ルーフ部分5の内面5aと第2メタルパターン4とを隙間無く一体化させることで、前記第一経路L1を確実に成立させることができる。
【0049】
次いで、前記第3ステップにより形成された第1ルーフ部分5上にルーフ内金属層7を形成させるためのレジスト23を形成し、このレジスト23を利用してリフトオフによってルーフ内金属層7を形成させる(図13から図14/第4ステップ)。
【0050】
次いで、第4ステップにおいて形成されたレジスト23を除去する(第5ステップ/図14)。
【0051】
次いで、第1ルーフ部分5上に第2ルーフ部分6を形成する。
第2ルーフ部分6は、第1ルーフ部分5上に、樹脂製の面状体(フィルム)を積層し、両者を一体化させることで、形成させることができる。あるいはまた、第2ルーフ部分6は第1ルーフ部分5上に前記樹脂を塗布することによって形成させることができる。
このように第1ルーフ部分5上に第2ルーフ部分6となる樹脂層を形成させた後、その上に接続用通過穴18と放熱用通過穴6dを形成させるためのレジスト(図示は省略する。)を形成する。そして、このレジストを利用して接続用通過穴18の形成箇所にあっては第1ルーフ部分5及び第2ルーフ部分6となる樹脂層の一部を薬液処理によって取り除き、放熱用通過穴6dの形成箇所にあっては第2ルーフ部分6となる樹脂層の一部を薬液処理によって取り除き、接続用通過穴6cと放熱用接続用通過穴6dを形成させる(図15/第7ステップ)。
【0052】
次いで、第7ステップにおいて形成されたレジストを除去し、この後に接続用通過穴18と放熱用通過穴6dとに、典型的には印刷機によりクリーム半田22を塗布・充填する(図16/第8ステップ)。
【0053】
第8ステップ後のリフロー処理により第2ルーフ部分6の外面から突き出す高さを持った外部接続用半田バンプ8及び放熱用半田バンプ9が形成される。
この後、前記ウエハ20に対しダイシングを施すことで、前記ウエハ20から複数の前記の構造を備えた弾性波デバイス1が生成される。
【0054】
図17および図18は、前記ルーフ内金属層7に、複数の貫通穴7cを持つように形成させた構成例(第三例)を示している。
このようにした場合、前記貫通穴7cの形成箇所において、前記貫通穴7cに第2ルーフ部分6を構成する樹脂を入り込ませることで、第2ルーフ部分6を第1ルーフ部分5に固着させることができる。
【0055】
また、図19は、前記ルーフ内金属層7を、メッシュ状をなすように形成させた構成例(第四例)を示している。
このようにした場合、前記メッシュ状をなすルーフ内金属層7の目開き箇所7dにおいて、前記目開き箇所7dに第2ルーフ部分6を構成する樹脂を入り込ませることで、第2ルーフ部分6を第1ルーフ部分5に固着させることができる。
【0056】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0057】
1 弾性波デバイス
1a 面
1b 側面
2 デバイスチップ
2a 一面
2b 側面
2c 外縁部
2d 主要面部
3 第1メタルパターン
4 第2メタルパターン
4a 外側部分
4b 内側部分
4c 第一端
4d 第二端
4e 外壁面
4f 第一部分
4g 第二部分
4h 第三部分
5 第1ルーフ部分
5a 内面
5b 外面
5c ビア
6 第2ルーフ部分
6a 内面
6b 外面
6c 接続用通過穴
6d 放熱用通過穴
7 ルーフ内金属層
7a 主要部
7b 付随部
7c 貫通穴
7d 目開き箇所
8 外部接続用半田バンプ
8a 内端部
8b 外端部
8c 軸部
8d 頭部
8e 周回顎部
9 放熱用半田バンプ
9a 内端部
9b 外端部
9c 軸部
9d 頭部
9e 周回顎部
10 封止空間
11、11a、11b 共振器
11c IDT電極
11d 反射器
11e 電極指
11f バスバー
11g 電極指
11h バスバー
12 信号入出力用端子
13、13a、13b、13c 配線
14 インダクタ
15 グランド
16 ルーフ
17 配線体
18 接続用通過穴
19 モジュール基板
19a 接続部
20 ウエハ
21 レジスト
22 クリーム半田
23 レジスト
x 伝搬方向
L1 第一経路
L2 第二経路
L3 第三経路

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19