(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171536
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 5/00 20240101AFI20241205BHJP
G06T 5/70 20240101ALI20241205BHJP
G06T 5/73 20240101ALI20241205BHJP
【FI】
G06T5/00 700
G06T5/00 705
G06T5/00 710
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088594
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武志
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057BA23
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057CE03
5B057CE05
5B057CE06
5B057CE08
5B057CE18
5B057CH09
5B057CH16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC16
(57)【要約】
【課題】画像データに平滑化と先鋭化を施す処理を、装置に内蔵された汎用SOCなどの安価なデバイスで実行すると処理に必要な時間が顕著に増加してしまう。
【解決手段】画像処理装置100は、読み取った画像データに対して、ユーザ入力により設定された平滑化の加工度合い基づく平滑化フィルタと、先鋭化の加工度合い基づく先鋭化フィルタとを合成した合成フィルタを用いたフィルタ処理を行う。この合成フィルタに合成されている平滑化フィルタは、平滑化の加工度合いに応じてフィルタサイズが変更される。また、ネットワークを介して画像データを送信する場合にはフィルタ処理と圧縮処理を行い、USBケーブルを介して送信する場合にはフィルタ処理と圧縮処理を行わないことを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して複数種類の加工を行う画像処理装置であって、
前記加工の種類ごとに加工度合いをそれぞれ設定するための入力を受け付ける入力手段と、
前記画像データに対して、前記入力手段による入力に基づき設定された前記加工の種類ごとの加工度合いにそれぞれ基づく加工を施すための各フィルタを合成した合成フィルタを用いたフィルタ処理を行うフィルタ処理手段と、を有し、
前記合成フィルタに合成されている少なくともいずれかのフィルタは、該フィルタに関する加工度合いに応じてフィルタサイズが異なることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記複数種類の加工は、画像の濃淡の変化を滑らかにする平滑化処理と、画像の輪郭を強調する先鋭化処理とを含み、
前記合成フィルタには、前記平滑化処理を施すための平滑化フィルタと、前記先鋭化処理を施すための先鋭化フィルタとが合成されており、
前記合成フィルタに合成されている平滑化フィルタは、前記平滑化処理に関する加工度合いに応じてフィルタサイズが変わることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成フィルタに合成されている先鋭化フィルタは、前記先鋭化処理に関する加工度合いに応じてフィルタサイズが変わることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
光の3原色に基づくカラー空間で表現された画像データを、輝度と色差に基づくカラー空間で表現された画像データへ変換する変換手段を有し、
前記フィルタ処理手段は、前記変換された画像データに対して前記フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記輝度と色差とで、フィルタ、及び/又は、フィルタサイズが変わる加工度合いが異なることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記合成フィルタは、前記各フィルタを合成した後にフィルタサイズを縮小化したものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複数の加工の種類の各加工度合いに対応したそれぞれのフィルタを、それぞれ合成した複数の合成フィルタを予め記憶している記憶手段を有し、
前記フィルタ処理手段は、前記記憶されている複数の合成フィルタから、前記入力手段による入力に基づき設定された前記加工の種類ごとの加工度合いに応じて選択された合成フィルタを用いて前記フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記フィルタ処理を施された画像データを圧縮処理する圧縮手段と、
第1通信経路又は第2通信経路を介して画像データを送信する通信手段と、
前記第1通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行い、前記第2通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行わないよう制御する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1通信経路はネットワークを介した通信経路であり、前記第2通信経路はネットワーク以外の通信経路である、ことを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理手段と、
前記フィルタ処理を施された画像データを圧縮処理する圧縮手段と、
第1通信経路又は第2通信経路を介して画像データを送信する通信手段と、
前記第1通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行い、前記第2通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行わないよう制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
前記第1通信経路はネットワークを介した通信経路であり、前記第2通信経路はネットワーク以外の通信経路である、ことを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記フィルタ処理に含まれる複数種類の加工の種類ごとに加工度合いをそれぞれ設定するための入力を受け付ける入力手段を有し、
フィルタ処理手段は、前記画像データに対して、前記入力手段による入力に基づき設定された前記加工の種類ごとの加工度合いにそれぞれ基づく加工を施すための各フィルタを合成した合成フィルタを用いたフィルタ処理を行い、
前記合成フィルタに合成されている少なくともいずれかのフィルタは、該フィルタに関する加工度合いに応じてフィルタサイズが異なることを特徴とする請求項10又は11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記複数種類の加工は、画像の濃淡の変化を滑らかにする平滑化処理と、画像の輪郭を強調する先鋭化処理とを含み、
前記合成フィルタには、前記平滑化処理を施すための平滑化フィルタと、前記先鋭化処理を施すための先鋭化フィルタとが合成されており、
前記合成フィルタに合成されている平滑化フィルタは、前記平滑化処理に関する加工度合いに応じてフィルタサイズが変わることを特徴とする請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記合成フィルタに合成されている先鋭化フィルタは、前記先鋭化処理に関する加工度合いに応じてフィルタサイズが変わることを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
光の3原色に基づくカラー空間で表現された画像データを、輝度と色差に基づくカラー空間で表現された画像データへ変換する変換手段を有し、
前記フィルタ処理手段は、前記変換された画像データに対して前記フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記輝度と色差とで、フィルタ、及び/又は、フィルタサイズが変わる加工度合いが異なることを特徴とする請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記合成フィルタは、前記各フィルタを合成した後にフィルタサイズを縮小化したものであることを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記複数の加工の種類の各加工度合いに対応したそれぞれのフィルタを、それぞれ合成した複数の合成フィルタを予め記憶している記憶手段を有し、
前記フィルタ処理手段は、前記記憶されている複数の合成フィルタから、前記入力手段による入力に基づき設定された前記加工の種類ごとの加工度合いに応じて選択された合成フィルタを用いて前記フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項19】
画像データに対して複数種類の加工を行う画像処理装置の制御方法であって、
前記加工の種類ごとに加工度合いをそれぞれ設定するための入力を受け付ける入力工程と、
前記画像データに対して、前記入力工程での入力に基づき設定された前記加工の種類ごとの加工度合いにそれぞれ基づく加工を施すための各フィルタを合成した合成フィルタを用いたフィルタ処理を行うフィルタ処理工程と、を有し、
前記合成フィルタに合成されている少なくともいずれかのフィルタは、該フィルタに関する加工度合いに応じてフィルタサイズが異なることを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項20】
画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理手段と、前記フィルタ処理を施された画像データを圧縮処理する圧縮手段と、第1通信経路又は第2通信経路を介して画像データを送信する通信手段と、を有する画像処理装置の制御方法であって、
前記第1通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行い、前記第2通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行わないよう制御する工程を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項21】
コンピュータを、請求項10~18のいずれか1項に記載の制御手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対してフィルタ処理を行う画像処理装置、画像処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等の画像処理装置では、原稿等から読み込まれた画像データに対して、好適な画像を出力するために入力画像の注目する画素とその周辺にある画素を利用して出力画素の画素値を計算する「フィルタ処理」が行われている。
フィルタ処理の具体例として、読み込まれた画像に含まれたノイズを軽減するための平滑化処理や、文字や顔の輪郭などのエッジ部分の特徴を強調するための強調処理が挙げられる。
【0003】
なお、フィルタ処理は、画像の特性に応じて最適な画像を得られるように工夫が必要である。例えば、文字や顔の輪郭などのエッジ部分の特徴を強調するために前述した強調処理のみを行ってしまうと、エッジだけでなくノイズも強調してしまう可能性がある。
【0004】
ノイズを抑えつつも、エッジ部分の特徴を強調させる工夫として、非線形(データ依存型)フィルタである「エッジ保存型フィルタ」を用いる構成が知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、線形フィルタにおいて、平滑化用のフィルタ処理と強調用のフィルタ処理をそれぞれ行う構成が知られている(例えば特許文献2)。
【0006】
また、異なる目的のフィルタ処理を個別に行うのではなく、各フィルタ(カーネル)の係数を合成した合成フィルタを生成し、合成フィルタを用いることで、まとめてフィルタ処理を行う方法もある。この方法においては、ユーザの指示を反映した合成フィルタを生成することにより、多様なフィルタ処理を行うことが可能となっている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-98861号公報
【特許文献2】特開2004-112728号公報
【特許文献3】特開2001-319228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のような非線形(データ依存型)フィルタで処理を行う場合、処理対象画素と周辺の画素との差分値(以下「差分信号」という)を算出し、その値に応じてフィルタの係数を変化させるなどの処理が必要となる。このため、アルゴリズムが複雑となり、処理に必要な計算量が増えてしまう。
【0009】
また、各フィルタ(カーネル)の係数を固定にして、一様に平滑化させる処理を行った場合でも、特許文献2のように画像データに対してフィルタ処理を複数回行うと、フィルタ処理に時間がかかってしまう。
【0010】
また、特許文献3のように、違う目的のフィルタ処理を個別に行うのではなく、各フィルタ(カーネル)の係数を合成した合成フィルタを生成し、該生成した合成フィルタを用いる場合、合成フィルタ生成のための時間が必要になる。特許文献3では、合成フィルタの合成化の簡素化のために、各フィルタ係数の各サイズよりサイズが大きい、全ての係数がゼロからなるゼロ係数を用いるようにしているが、必要なフィルタサイズが大きくなってしまう。そのため、汎用SOC(System-on-a-chip)などの安価なデバイスに内蔵されたハード処理ではサポートできなくなる可能性がある。なお、このような処理をソフトウェアにより行う場合、合成処理に時間が必要になってしまう。
【0011】
上述した特許文献1~3のようなフィルタ処理を、画像処理装置に内蔵された汎用SOCなどの安価なデバイスで実行する場合、処理に必要な時間が顕著に増加してしまい、装置全体の処理速度を低下させてしまうといった課題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、ユーザの指示を反映した上で、異なる目的の複数のフィルタ処理が反映された画像(例えばノイズを抑えつつもエッジ部分の特徴を強調させた画像)を汎用SOCなどの安価なデバイスで無理なく得ることを可能にする仕組みを提供すること、また、このようなフィルタ処理の実行の有無を自動で切り替え可能にする仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、画像データに対して複数種類の加工を行う画像処理装置であって、前記加工の種類ごとに加工度合いをそれぞれ設定するための入力を受け付ける入力手段と、前記画像データに対して、前記入力手段による入力に基づき設定された前記加工の種類ごとの加工度合いにそれぞれ基づく加工を施すための各フィルタを合成した合成フィルタを用いたフィルタ処理を行うフィルタ処理手段と、を有し、前記合成フィルタに合成されている少なくともいずれかのフィルタは、該フィルタに関する加工度合いに応じてフィルタサイズが異なることを特徴とする。
また、本発明は、画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理手段と、前記フィルタ処理を施された画像データを圧縮処理する圧縮手段と、第1通信経路又は第2通信経路を介して画像データを送信する通信手段と、前記第1通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行い、前記第2通信経路を介して画像データを送信する場合には、前記フィルタ処理と前記圧縮処理を行わないよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザの指示を反映した上で、異なる目的の複数のフィルタ処理が反映された画像(例えばノイズを抑えつつもエッジ部分の特徴を強調させた画像)を汎用SOCなどの安価なデバイスで無理なく得ることができる。また、このようなフィルタ処理の実行の有無を自動で切り替え、ユーザの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る画像処理装置の一例を示す図。
【
図2】本実施形態に係る画像処理装置の内部構成の一例を示す断面図。
【
図3】本実施形態に係る画像処理装置の制御構成一例を示すブロック図。
【
図4】本実施形態に係る画像処理装置の画像処理部におけるカラー画像の処理の流れを示すブロック図。
【
図5】本実施形態に係る画像処理装置の画像処理部におけるグレー画像の処理の流れを示すブロック図。
【
図6】本実施形態に係る画像処理装置にてユーザが先鋭度と画像ムラ軽減度の設定を入力する画面の一例を示す図。
【
図7】本実施形態に係る画像処理装置におけるユーザ設定に基づく画像ムラ軽減および先鋭化のフィルタ係数の一例を示す図。
【
図8】本実施形態に係る画像処理装置におけるユーザ設定に基づく合成フィルタ係数の合成方法の一例を示す図。
【
図9】本実施形態に係る画像処理装置におけるユーザ設定に基づく合成フィルタ係数の合成方法の他の例を示す図。
【
図10】本実施形態に係る画像処理装置において合成フィルタ処理部に合成フィルタ係数がどのように適用されるかを説明する図。
【
図11】本実施形態に係る画像処理装置にける処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態に記載されている構成はあくまで実施形態に過ぎず、本発明の範囲は実施の形態に記載されている構成によって限定されることはない。
【0017】
<画像処理装置の構成説明>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置100の一例を示す図である。なお、
図1は、画像処理装置100の正面側に傾斜して設けられた正面パネル90に対して垂直な方向から見た図であり、画像処理装置100を載置した状態における正面よりもやや上方から見た状態の図である。
【0018】
正面上部の正面パネル90には、タッチパネル93が設けられている。タッチパネル93は略透明であり、タッチパネル93を透過して、画像処理装置100の内部に設けられた表示部94を目視できるようになっている。
【0019】
正面天面部より奥側に複数の搬送媒体Sを積載可能な載置台1が設けられ、正面底部に排出トレイ2が設けられている。
正面下部の下部パネル91には、排出開口92が設けられている。載置台1に積載された搬送媒体Sは、装置内部に搬送されて、排出開口92より排出トレイ2に排出される構成となっている。
【0020】
<画像処理装置の内部構成説明>
図2は、画像処理装置100の内部構成の一例を示す断面図である。
画像処理装置100は、載置台1に積載された一又は複数の搬送媒体Sを1つずつ装置内に経路RTにて搬送して排出トレイ2に排出する。排出トレイ2は、画像処理装置100に対して回動可能となるように、画像読取装置100の下方に設けられたヒンジ101を介して軸支されている。排出トレイ2は、第1排出トレイ2a、第1排出トレイ2aから引き出される延長トレイ2b等で構成される。
【0021】
ここで、搬送媒体Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。また、パスポートなどの冊子も含まれる。なお、冊子を対象とする場合は透明なホルダに見開き状態の冊子を収容して載置台1に載置することで、冊子がホルダと共に搬送される。
また、画像処理装置100は、経路RT内を搬送している搬送媒体Sの画像読取を行い、その画像について画像処理を行う。
【0022】
<給紙>
経路RTに沿って搬送媒体Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は、送りローラ11と送りローラ11に対向配置される分離ローラ12とを備え、載置台1上の搬送媒体Sを搬送方向D1に一つずつ順次搬送する。
送りローラ11には、給紙駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(経路RTに沿って搬送媒体Sを搬送させる正方向)に回転駆動される。なお、給紙駆動部3は例えばモータであり、伝達部5は例えば電磁クラッチである。
【0023】
<駆動部>
給紙駆動部3と送りローラ11とを接続する伝達部5は、通常時において駆動力が伝達される状態とし、搬送媒体Sを逆送または停止する場合には駆動力を遮断する。送りローラ11は、伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、伝達部5は、送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
【0024】
<分離構造>
送りローラ11に対向配置される分離ローラ12は、搬送媒体Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けると共に送りローラ11へ付勢されるように構成される。
分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して給紙駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラ11の正方向とは逆方向)に回転駆動される。
【0025】
分離ローラ12は、送りローラ11と当接している際はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、送りローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の搬送媒体Sが送りローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、一つを残して2つ以上の搬送媒体Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
なお、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、経路RTに搬送媒体Sを1つずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離ローラ12のような構成の代わりに、搬送媒体Sに摩擦力を付与する分離パッドを送りローラ11に圧接させて、同様の分離作用を持たせるようにしてもよい。
【0026】
<搬送構造>
第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備える。また、第1搬送部10の搬送方向下流側にあり、第1搬送部10から搬送されてきた搬送媒体Sをその下流側へ搬送する。
駆動ローラ21にはモータ等の搬送駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。
【0027】
第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備える。また、第2搬送部20よりも搬送方向下流側にあり、第2搬送部20から搬送されてきた搬送媒体Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。
駆動ローラ31にはモータ等の搬送駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れ回る。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
【0028】
<重送検出>
第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される重送検出センサ40は、静電気等で紙などの搬送媒体S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。重送検出センサ40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサであり、超音波の発信部41とその受信部42とを備え、紙等の搬送媒体Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、搬送媒体Sを通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送を検出する。
【0029】
<画像読取位置検知構造>
画像読取位置検知センサ50は、第1搬送部10により搬送される搬送媒体Sの位置、詳細には、画像読取位置検知センサ50の検知位置に搬送媒体Sの端部が到達又は通過したか否かを検知する。
画像読取位置検知センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。
なお、この画像読取位置検知センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、搬送媒体Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、第2搬送部20の搬送方向上流側に画像読取位置検知センサ50を配置したが、搬送方向下流側に画像読取位置検知センサ60を配置しても良い。加えて、画像読取位置検知センサ50、60を両方配置しても良い。
【0031】
<画像読取構造>
第2搬送部20と第3搬送部30との間には、画像読取センサ70が経路RTの両側に一つずつ配置される。画像読取センサ70は、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。
なお、本実施形態では搬送媒体Sの表裏面を読み取るために、画像読取センサ70を経路RTの両側に一つずつ配置したが、経路RTの片側にのみ一つ配置して、搬送媒体Sの片面のみを読み取る構成としてもよい。
また、本実施形態では、画像読取センサ70を経路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、経路RTの方向に間隔をあけて配置してもよい。
【0032】
<画像処理装置のブロック図>
図3は、画像処理装置100の制御構成一例を示すブロック図である。
画像処理装置100の制御部200には、給紙駆動部3、搬送駆動部4、伝達部5、画像読取位置検知センサ50、60、画像読取センサ70、AD変換部301、タッチパネル93、表示部94、ROM302、RAM303等が接続されている。
制御部200は、CPU、マイクロコンピュータ等で構成され、装置全体の制御、演算、情報転送を司る。
【0033】
制御部200が行う制御として、画像読取制御(画像読取センサ70の制御)、モータ駆動制御(給紙駆動部3、搬送駆動部4の制御)、駆動伝達制御(伝達部5の制御)、発光光量制御(画像読取位置検知センサ50、60の制御)などがある。
また、制御部200内には、通信部202と画像処理部207を備えている。
【0034】
通信部202は、不図示の外部機器と情報通信を行う。通信規格としては有線接続してUSBやSCSI、LANなど、無線接続としては無線LAN、Bluetooth(登録商標)などを挙げることができる。
【0035】
画像処理部207は、AD変換部301から出力されたデジタル式の画像データの画像処理を行い、画像処理を行った画像データをRAM303に出力する。なお、詳細は後述する。
A/D(アナログ/デジタル)変換部301は、微小なアナログ信号の増幅・オフセット調整を行った後、デジタル式の画像データに変換する変換器である。なお、本実施形態では画像読取センサ70と別構成となっている。
【0036】
ROM302は、制御部200のプログラムデータ、画素処理部207の補正データなど、データを保管するための不揮発性の記憶デバイスである。
RAM303は、制御部200のプログラムデータの一部や、画像読取センサ70より取得した画像データなど、データを一次格納しておくための高速アクセス可能な記憶デバイスである。
【0037】
<画像読取の基本動作>
以下、画像処理装置100における画像読取の基本的な動作について説明する。
制御部200は、ユーザがタッチパネル93上や、不図示の外部機器の操作部などからの入力を介して、画像読み取りの開始指示を受信すると、第1搬送部10、第2搬送部20、第3搬送部30の駆動を開始する。載置台1に積載された搬送媒体Sは、その最も下に位置する搬送媒体Sから1つずつ搬送される。
【0038】
また、画像読取センサ70による画像の読み取りを行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は搬送媒体Sを定速で搬送する。加えて、先行搬送媒体Sに後続搬送媒体Sが追いついてしまう事態を確実に回避するため、搬送速度は常に第1搬送部10の搬送速度以上となるよう制御する。
なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度と、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度とを同一条件とした場合でも、駆動部3を制御して後続搬送媒体Sの給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより先行搬送媒体Sと後続搬送媒体Sとの間に最低限の間隔を形成することも可能である。
【0039】
搬送媒体Sの先端が画像読取位置検知センサ50または60に到達すると、画像読取位置検知センサ50または60より検知信号が出力され、制御部200は読み取りのタイミングを計って画像読取センサ70による画像の読み取りが開始される。
画像読取センサ70によって読み取られた画像データは、制御部200内にある画像処理部207にて画像処理が行われたのち、RAM303へ一次的に保管され、最終的には通信部202を介して不図示の外部機器へ出力される。
【0040】
<画像処理の基本動作>
図4は、画像処理装置100の画像処理部207におけるカラー画像の処理の流れを示すブロック図である。
なお、画像読取センサ70は、画像読取センサ70上の赤(Red、以下「R」),緑(Green、以下「G」),青(Blue、以下「B」)色の肉眼の3原色説に基づいた色を発光できるLEDを順次個別に発光させ、色ごとに搬送媒体Sからの反射光を読み取ることで、RGBの各アナログ信号をA/D変換部301に出力する。A/D変換部301は、RGBの各アナログ信号を、RGBのデジタル式の画像データに変換する。画像処理部207には、A/D変換部301により変換されたRGBの各画像データが入力される。
【0041】
画像処理部207では、シェーディング補正部401が、入力されたRGBの各画像データに対して、画像読取センサ70の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を行う。
その後、入力画像階調補正部402が、RGBの各反射率信号である各画像データのカラーバランス・表裏両面のバランス・画像読取センサの直線性を整える処理を施す。
次に、表色系変換部403が、RGBの各反射率信号である各画像データから、輝度(Y)と色差(CbおよびCr)で表現されるYCC画像データへの色変換処理を行う。すなわち、光の3原色に基づくカラー空間で表現された画像データを、輝度と色差に基づくカラー空間で表現された画像データへ変換する。これにより、その後の画像処理(JPEG圧縮処理など)を行うための画像データへ変換される。
【0042】
次に、合成フィルタ処理部404が、YCCの各画像データに対して、デジタルフィルタ処理を行う。これにより、出力画像は読み込まれた画像に含まれたノイズを軽減し、かつ、文字や顔の輪郭などのエッジ部分の特徴を強調がなされた状態で出力される。
【0043】
次に、色補正部405が、輝度(Y)と色差(CbおよびCr)の個別のYCC画像データそれぞれについて、予め設定されたルックアップテーブルを用いて画像の補正を行う。これにより、画像の色味が調整される。
次に、出力画像階調補正部406が、YCC画像データへ予め設定されたγ係数を掛ける処理を行う。これにより、対象機器のガンマ値に応じた色の補正が行われ、出力画像の明暗が出力機器で正しく表示される。
【0044】
次に、画像圧縮部407が、色差(CbおよびCr)の間引き処理、離散コサイン変換を用いた高周波情報の削減、符号化処理など画像を圧縮するための処理を行う。画像処理部207から出力された画像は、RAM303に保管される。
なお、以上に例示した画像処理の手順はあくまで一例であり、必要に応じて各処理手順を入れ替えてもよい。ただし、表色系変換処理は、人の目に敏感な輝度(Y)のフィルタ係数と鈍感な色差(CbおよびCr)に分解され、ノイズを抑えつつもエッジ部分の特徴を強調させた画像を得るためには、合成フィルタ処理より前段階で実施されることが望ましい。
【0045】
図5は、画像処理装置100の画像処理部207におけるグレー画像の処理の流れを示すブロック図である。以下、上述したカラー画像の処理との差異について説明する。
グレー画像取得には、画像読取センサ70は、画像読取センサ70上の赤(R),緑(G),青(B)色のLED(光源)を単体で1つまたは、同時に2つまたは3つ発光させ、搬送媒体Sからの反射光を読み取る。これにより、画像読取センサ70は単色分の画像データを出力する。本実施形態では、Rを単色データとして使用し、B、GのデータがA/D変換部301に入力されない状態とする。なお、Rの代わりに、BまたはGを単色のデータとして使用しても構わない。また、同時に複数色のLEDを点灯させる場合でも、赤(R),緑(G),青(B)の出力を均一にしていない場合は、最も単色で出力される色を画像データとして使用するのが望ましい。
【0046】
画像処理部207には、A/D変換部301から出力された単色のデジタル式の画像データが入力される。その際、B,Gのデータはすべて0として処理する。
続いて、シェーディング補正401、入力画像階調補正部402の単色の画像データ処理を行い、その後、表色系変換部403により、単色の画像データから、輝度(Y)と色差(CbおよびCr)で表現されるYCC画像データへの色変換処理が行われる。
【0047】
次に、YCC画像データの処理として、色補正部405の処理を除いた、合成フィルタ処理部404、出力画像階調補正部406、画像圧縮部407の処理が行われ、画像処理部207から出力された画像はRAM303に保管される。
【0048】
<先鋭度と画像ムラ軽減度の設定画面>
図6は、画像処理装置100にてユーザが先鋭度と画像ムラ軽減度の設定を入力する画面の一例を示す図である。
画像処理装置100の画像処理部207は、画像データに対して複数種類の加工(例えば、画像の濃淡の変化を滑らかにする平滑化処理と、画像の輪郭を強調する先鋭化処理など)を行うことができる。複数種類の加工の加工度合い(レベル)の設定について、以下に説明する。
【0049】
例えば、
図6に示すように、ユーザは、表示部94上に表示される画面501に、タッチパネル93や不図示の外部機器の操作部などからの入力を行うことで設定を変更することができる。
【0050】
設定の変更は、スライドバー上にある矢印502a、502bを移動させる、又は、右側にある矢印503a、503bを押下することで、設定の強弱を変更することができる。設定の強弱によりボックス504a、504bの数値が変更される。
また、ボックス504a、504bへ直接数値を入力した場合にも設定の強弱を変更することができる。なお、ボックス504a、504bへは、レベル1~5の範囲で入力が可能である。ボックス504a、504bへ直接数値を入力した際、スライドスライドバー上にある矢印502a、502bが連動して動くようになっている。
このようなユーザインターフェース(UI)により、ユーザが、エッジ強調を行う先鋭化(画像の輪郭を強調する加工)の度合いや、画像ムラ軽減(地色除去)を行う平滑化(画像の濃淡の変化を滑らかにする加工)の度合いの設定のための入力を行うことができる。
【0051】
さらに、チェックボックス505a、505bによって、ユーザが任意で先鋭化(エッジ強調)、画像ムラ軽減(地色除去)を行うか否かを選択が可能となっている。
【0052】
なお、
図6では、ユーザが先鋭化の度合いや平滑化の度合い(すなわち各加工の加工度合い)をそれぞれ設定する構成であった。しかし、読み取りモード(例えば文書モード、写真モードなど)をUIからユーザに設定させ、該設定された読み取りモードに最適な先鋭化の度合いや平滑化の度合いを、制御部200等が設定する構成であってもよい。
【0053】
<設定に基づく画像ムラ軽減と先鋭化のフィルタ係数>
図7は、画像処理装置100におけるユーザ設定に基づく画像ムラ軽減および先鋭化のフィルタ係数の一例を示す図である。
【0054】
フィルタ係数611~615、621~625は、画像ムラ軽減(地色除去)を行うための平滑化フィルタのフィルタ係数である。本実施形態では、輝度(Y)と色差(CbおよびCr)に分かれたフィルタ係数となっている。フィルタ係数611~615が輝度(Y)用のフィルタ係数に対応する。フィルタ係数621~625が色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数に対応する。
また、本実施形態の画像ムラ軽減のフィルタ係数としては、ガウス分布に従って、平滑化フィルタ係数の重み付けを行うガウシアンフィルタの構成となっている。
【0055】
さらに、フィルタ係数611から615になるにつれて、また、フィルタ係数621から625になるにつれて、平滑化の効果がより強くなるような係数となっている。
特に、輝度(Y)用のフィルタ係数については、611~613は3×3のフィルタサイズ、614~615は5×5のフィルタサイズとなっており、614以降は特に平滑化の効果がより強くなるような係数となっている。
【0056】
また、輝度(Y)用のフィルタ係数に比べると、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数は同じ地色除去レベルにおける平滑化の効果がより強くなるような構成となっている。
例えば、地色除去レベルLv2での輝度(Y)用のフィルタ係数612と、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数622のフィルタ係数を比較すると、フィルタサイズは同じであるものの、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数622のほうが、注目(中心)画素に対して周辺画素の係数が高くなっている。
【0057】
また、地色除去レベルLv3での輝度(Y)用のフィルタ係数613と、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数623のフィルタを比較すると、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数623のほうが、注目(中心)画素に対して周辺画素の係数が高くなり、かつ、フィルタサイズも大きくなっている。
【0058】
なお、本実施形態ではガウシアンフィルタの構成としたが、ガウシアンフィルタに限定されるものではなく、周辺画素との平均値をとる平均値フィルタなど、平滑化を行うフィルタ係数を使用する。
【0059】
フィルタ係数601~605は、先鋭化(エッジ強調)を行うための先鋭化フィルタのフィルタ係数である。本実施形態の先鋭化のフィルタ係数としては、2次微分で濃度値の変化量の差分をとるラプラシアンフィルタの構成となっている。また、フィルタ係数601から605になるにつれて、先鋭化の効果がより強くなるような係数となっている。
【0060】
なお、本実施形態ではラプラシアンフィルタの構成としたが、ラプラシアンフィルタに限定されるものではなく、横方向、縦方向でそれぞれ微分を取り、両方の結果を合成するソーベルフィルタなど先鋭化を行うフィルタ係数を使用してもよい。
【0061】
さらに、本実施形態では先鋭化フィルタのフィルタサイズはすべて均一の3×3としているが、先鋭度によりフィルタサイズを大きくしても良い。すなわち、地色除去の加工度合い(レベル)の設定に基づき平滑化フィルタのフィルタサイズが変わるのみでなく、先鋭化の加工度合いの設定に基づき先鋭化フィルタのフィルタサイズも変わる構成であってもよい。この場合、平滑化フィルタのフィルタサイズが変わる加工度合いと、先鋭化フィルタのフィルタサイズが変わる加工度合いが異なっていてもよい。例えばエッジ強調LV1~2のフィルタサイズを3×3とし、エッジ強調LV3~5のフィルタサイズを5×5のようにしてもよい。
【0062】
また、フィルタサイズは3×3、5×5に限定されるものではない。例えば7×7のフィルタサイズ、さらに大きなフィルタサイズを用いてもよい。
【0063】
なお、
図4で示したカラー画像の処理と、
図5で示したグレー画像の処理とで、フィルタサイズが変わる加工度合い(レベル)が異なっていてもよい。
【0064】
<合成フィルタ係数の作成方法>
図8は、画像処理装置100におけるユーザ設定に基づく合成フィルタ係数の合成方法の一例を示す図である。この例は、ユーザが指定した設定が、先鋭度(エッジ強調度)3かつ画像ムラ軽減度(地色除去)3の場合の合成フィルタ係数の合成方法に対応する。ここでは、合成フィルタ係数711として、画像ムラ軽減(地色除去)のフィルタ係数613に、エッジ強調のフィルタ係数603の畳み込み演算を行ったものを使用する。
【0065】
図8(a)に、畳み込み演算の一例として、画像ムラ軽減(地色除去)の輝度(Y)用のフィルタ係数613の1行3列目の係数(=46)に着目して計算している様子を示す。
さらに、
図8(b)に、完成した合成フィルタ係数711を示す。
画像ムラ軽減(地色除去)の輝度(Y)用のフィルタ係数613の1行3列目に先鋭度(エッジ強調度)フィルタ係数603の中心である2行2列目を重ね、その積をとる。さらに、同様の積をエッジ強調のフィルタサイズだけ実施し、最終的に計算した積の総和によって、フィルタ係数613の1行3列目にフィルタ係数603を合成したフィルタ係数711の2行4列目の係数(=-63)が完成する。
すなわち、以下のように計算する。
46×(4/8)+343×(-1/8)+2536×0+343×(-1/8)
=46/2-343/8-343/8
このような計算結果に基づき合成したフィルタ係数711の2行4列目の係数(この例では「-63」)を決定する。本実施形態では小数点以下を四捨五入しているがこれに限定されるものではない。
【0066】
上記の処理を、画像ムラ軽減(地色除去)フィルタ係数613のすべての行列において実施する。なお、一部分でも重なる部分があれば実施するため、合成フィルタのフィルタサイズは、合成前のフィルタサイズよりも大きくなる。さらに、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数にも同様の処理を行うことで合成フィルタ係数は完成する。
【0067】
<合成フィルタ係数の作成方法の他の例>
図9は、画像処理装置100におけるユーザ設定に基づく合成フィルタ係数の合成方法の他の例を示す図である。この例は、ユーザが指定した設定が、先鋭度(エッジ強調度)3かつ画像ムラ軽減度(地色除去)4の場合の合成フィルタ係数の合成方法に対応する。ここでは、合成フィルタ係数として、画像ムラ軽減(地色除去)のフィルタ係数614に、エッジ強調603の畳み込み演算を行った後、フィルタサイズを縮小化したものを使用する。
【0068】
また、
図9(a)に、畳み込み演算の一例として、画像ムラ軽減(地色除去)の輝度(Y)用のフィルタ係数614の2行4列目(=244)に着目して計算したものを示す。詳細の説明は
図8と同様であるため、省略する。
また、
図9(b)に、畳み込み演算が行われた合成フィルタ係数811を示す。
【0069】
さらに、
図9(b)のような7×7サイズの合成フィルタ係数811を、5×5サイズの合成フィルタ係数812(
図9(c)詳細は省略)に縮小する。
本実施形態でのフィルタサイズの縮小は、例えば、周囲の4つの画素を用いた補間法であるバイリニア補間により行われる。フィルタの縮小方法は公知の技術であり、縮小方法の詳細や縮小されたフィルタ係数の詳細については省略する。さらに、色差(CbおよびCr)用のフィルタ係数にも同様の処理を行うことで合成フィルタ係数は完成する。
なお、本実施形態ではフィルタサイズの縮小にバイリニア補間処理を行う例を示したが、バイリニア補間処理に限定されるものではなく、間引き処理やニアレストネイバー法など、フィルタサイズを縮小させる他の方法を用いてもよい。
【0070】
<合成フィルタ係数の適用>
図10は、画像処理部207内の合成フィルタ処理部404に合成フィルタ係数がどのように適用されるかを説明する図である。
本実施形態では、
図8、
図9に示したような処理により予め作成しROM302等に保管してある合成フィルタのフィルタ係数を、合成フィルタ処理部404に適用する。
図7の例では、5つの先鋭化フィルタと5つの平滑化フィルタの全ての組み合わせで25の合成フィルタを予め作成しておき、ROM302等に保管しておくものとする。
【0071】
なお、予め作成した合成フィルタ係数をROM302等に保管する構成でなくてもよい。例えば、スキャン指示に応じて、地色除去レベルの設定とエッジ強調の度合いの設定とに基づく合成フィルタのフィルタ係数を、制御部200で計算してRAM303に一時的に保管し、合成フィルタ処理部404に適用しても良い。また、不図示の外部機器の記憶部に保管された合成フィルタ係数を、通信部202を介して取得し、RAM303に一時的に保管し合成フィルタ処理部404に適用しても良い。
【0072】
図10では、チェックボックス505aによる先鋭化(エッジ強調)、チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)の実施の選択(チェック)をユーザが行っているか否かの各場合で、合成フィルタ処理部404にどのフィルタ係数を適用するかを表形式で示している。
【0073】
なお、チェックボックス505aによる先鋭化(エッジ強調)、チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)がチェックされていない場合を「×」で示し(921)、チェックされている場合を「〇」で示す(922)。
また、チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)がチェックされていない場合を「×」で示し(931)、チェックされている場合を「〇」で示す(932)。
【0074】
まず、チェックボックス505aによる先鋭化(エッジ強調)、チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)が両方ともチェックされていない場合(921且つ931の場合)、制御部200は、合成フィルタ係数は設定されることなく、画像処理部207内の合成フィルタ処理部404をスルーして画像処理が行われる。(フィルタなし900)
【0075】
チェックボックス505aによる先鋭化(エッジ強調)がチェックされ、チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)がチェックされていない場合(922且つ931の場合)、制御部200は、先鋭化(エッジ強調度)を行うためのフィルタ係数601~605を合成フィルタ処理部404のフィルタ係数として設定する。(先鋭化フィルタ901)
【0076】
チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)がチェックされ、チェックボックス505aによる先鋭化(エッジ強調)がチェックされていない場合(921且つ932の場合)、制御部200は、画像ムラ軽減(地色除去)を行うためのフィルタ係数611~615、621~625を合成フィルタ処理部404のフィルタ係数として設定する。(ムラ軽減フィルタ910)
【0077】
チェックボックス505aによる先鋭化(エッジ強調)、チェックボックス505bによる画像ムラ軽減(地色除去)の両方がチェックされている場合(922且つ932の場合)、制御部200は、
図8で示した合成フィルタ係数711や、他の例として
図9を用いて説明したような合成フィルタ係数を設定し、設定されたフィルタ係数で画像処理部207内の合成フィルタ処理部404によるフィルタ処理を実施する(合成フィルタ911)。
【0078】
以上のように、本実施形態では、ユーザが設定した画像ムラ軽減度(地色除去)の設定段階が上がるにつれ、画像ムラ軽減用のフィルタ係数のサイズを大きくし、また、先鋭化度(エッジ強調)のフィルタ係数と合成した合成フィルタ係数で画像処理を行う構成となっている。
【0079】
これにより、画像ムラ軽減度(地色除去)の設定が弱い場合は、文字などの輪郭をはっきりと認識しながらも、画像ムラなどのノイズをある程度抑えることができる。なお、画像ムラを抑えることで、画像圧縮処理による画像ファイルサイズも小さくすることができる。また、画像ムラ軽減度(地色除去)の設定が強い場合は、文字の見読ができつつ、画像ムラなどのノイズをしっかりと抑えることができる。かつ、この2つの効果を得られる画像処理装置、画像処理システムを安価なデバイスで構成することができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、画像読取で得られたRGBの各反射率信号である各画像データから、輝度(Y)と色差(CbおよびCr)で表現されるYCC画像データへの色変換処理が行われ、輝度(Y)と色差(CbおよびCr)でフィルタ係数を異なる構成としている。これにより、人の目に敏感な輝度(Y)のフィルタ係数と鈍感な色差(CbおよびCr)で合成フィルタ係数、及び/又は、フィルタサイズが変わる加工度合いを変えることができるため、よりユーザの指示を反映した上で、ノイズを抑えつつも、エッジ部分の特徴を強調させた画像を得ることができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、合成フィルタのフィルタサイズが大きくなるものについては、フィルタサイズを縮小化した合成フィルタを用いて画像処理を行う。これにより、小さいフィルタサイズで処理を行うことができるため、より安価なデバイスを得ることができる。
【0082】
さらに、本実施形態では、予め生成されて記憶部に保管された合成フィルタ係数を用いて画像処理を行う。これにより、合成フィルタ生成の時間を省くことができ処理時間を短縮でき、より安価なデバイスを得ることができる。
【0083】
以上のように、画像ムラ軽減度(地色除去)の設定が弱い場合は、文字などの輪郭をはっきりと認識しながらも、画像ムラなどのノイズをある程度抑えられる。また、画像ムラ軽減度(地色除去)の設定が強い場合は、文字の見読ができつつ、画像ムラなどのノイズをしっかりと抑えられる。さらに、この2つの効果を得られる画像処理装置を安価なデバイスで得ることができる。
【0084】
なお、スキャナ等の画像処理装置により読み込まれた画像データは、ネットワークやUSB等を介して所定の保存先に送信される。例えば画像処理装置の操作部から読み込み指示を受けた場合や、スマートフォン等からネットワークを介して読み込み指示を受けた場合、読み込まれた画像データはネットワークを介して送信される。一方、USB等により接続されたPC(パーソナルコンピュータ)から読み込み指示を受けた場合、読み込まれた画像データはUSB等を介してPCに送信される。
【0085】
ネットワークを介して送信する場合、読み込まれた画像データに対して上述のフィルタ処理による平滑化処理を行うことで圧縮処理による圧縮効果を大きくし送信データ量を小さくすることで、ネットワークトラフィックへの影響を抑えることが可能となる。
一方、USB等を介して送信する場合、読み込まれた画像データに対してフィルタ処理を行うことなく送信し、送信先のPC等でフィルタ処理を行うことで、画像処理装置の負荷を抑えることが可能となる。
このようにフィルタ処理を行うか否かを切り替えたい場合、従来の技術ではユーザがその都度手動で設定を行う必要があり、非常に煩雑であった。
以下、この課題を解決する構成について説明する。
【0086】
〔スキャン指示を受けた際の処理〕
図11は、画像処理装置100における処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えばROM302に記憶されたプログラムを制御部200が読み出して実行することにより実現される。制御部200は、スキャン指示を受けると、本フローチャートの処理を開始する。
【0087】
S101において、制御部200は、受け付けたスキャン指示(画像読取指示)に基づき読み取った画像データを、ネットワークを介して送信するか否かを判定する。例えばタッチパネル93、ネットワーク又はBluetoothなどからスキャン指示を受けた場合、制御部200は、該スキャン指示で読み取った画像データをネットワーク経由で送信すると判定する。一方、上記以外で(例えばUSBインターフェース)から受けたスキャン指示である場合、制御部200は、該スキャン指示で読み取った画像データをネットワーク以外の通信経路(例えばUSBインターフェースを介した経路)で送信すると判定する。
【0088】
該スキャン指示で読み取った画像データをネットワーク経由で送信する場合(S101でYesの場合)、制御部200は、S102に処理を進める。
S102において、制御部200は、合成フィルタ処理部404でのフィルタ処理と画像圧縮部407での画像圧縮処理を実行するように画像処理部207に設定する。この際、制御部200は、上述のスキャン指示で指定されたエッジ強調度と地色除去レベルを、画像処理部207に通知する。S102の処理の後、制御部200は、S104に処理を進める。
【0089】
一方、該スキャン指示で読み取った画像データをネットワーク以外で送信する場合(S101でN0の場合)、制御部200は、S103に処理を進める。
S103において、制御部200は、合成フィルタ処理部404でのフィルタ処理と画像圧縮部407での画像圧縮処理を実行しない(スキップする)ように画像処理部207に設定し、S104に処理を進める。
S104において、制御部200は、画像読み取りを開始する。
【0090】
以上の処理により、ネットワーク経由で画像データを送信するスキャン処理の場合には、フィルタ処理と画像圧縮処理を実行して画像データのサイズを低減することができ、ネットワークトラフィックへの影響を抑えることが可能となる。一方、USB等で画像データを送信するスキャン処理の場合には、フィルタ処理と画像圧縮処理をスキップして、送信先のPC等でフィルタ処理を行うようにすることで、装置の負荷を抑えることが可能となる。このように、ユーザの負荷を軽減しつつ(ユーザが手動で設定を行う必要がなく)、最適な処理を行うことができる。
【0091】
以上、本実施形態によれば、ユーザの指示を反映した上で、異なる目的の複数のフィルタ処理が反映された画像(例えばノイズを抑えつつもエッジ部分の特徴を強調させた画像)を汎用SOCなどの安価なデバイスで無理なく得ることができる。また、このようなフィルタ処理の実行の有無を自動で切り替え、ユーザの負荷を軽減することができる。
【0092】
なお、上述した各種データの構成及びその内容はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、上記各実施形態を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。即ち、上述した各実施形態及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
100 画像処理装置
200 制御部
202 通信部
207 画像処理部
302 ROM
404 合成フィルタ処理部
407 画像圧縮部