(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171540
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力変換装置、その制御方法、及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088605
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】早川 峰洋
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 敏祐
(72)【発明者】
【氏名】荒井 拓実
(72)【発明者】
【氏名】ロビソン ジョルジョ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB83
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE08
5H730EE59
5H730EE61
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】電力変換装置10を小型化する。
【解決手段】電力変換装置10は、第1回路11と、トランス12と、リアクトル15と、第2回路13と、第3回路14とを備える。トランス12は、第1回路11から電力が入力され、第2コイル122及び第3コイル123へ変換後の電圧を出力する。リアクトル15は、第1回路11とトランス12の間に接続されている。第2回路13は、トランス12から出力される電力を整流する。第3回路14は、トランス12から出力される電力を整流する第2整流器141と、整流された電力を変換するDCAC変換部143と、第2整流器141とDCAC変換部143の間に接続されたコンデンサ142とを有する。リアクトル15は、そのインダクタンス値が調整可能な可変リアクトルである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される電力を変換する第1スイッチを有する第1回路と、
前記第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有するトランスと、
前記第1回路と前記第1コイルの間に接続されたリアクトルと、
前記第2コイルから出力される電力を整流する第1整流器を有する第2回路と、
前記第3コイルから出力される電力を整流する第2整流器と、前記第2整流器により整流された電力を変換するDCAC変換部と、前記第2整流器と前記DCAC変換部の間に接続されたコンデンサと、を有する第3回路と、を備え、
前記リアクトルは、そのインダクタンス値が調整可能な可変リアクトルである
電力変換装置。
【請求項2】
制御部が請求項1に記載の電力変換装置を制御する方法であって、
前記制御部は、
前記第3回路から出力される電力を消費する負荷が前記第3回路に接続されていない場合、前記インダクタンス値を第1規定値に設定し、
前記負荷が前記第3回路に接続されている場合、前記インダクタンス値を前記第1規定値以下の第2規定値に設定する
電力変換装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記負荷が前記第3回路に接続されている場合、前記第1回路に入力される第1電圧と、前記負荷の消費電力の少なくともいずれかに応じて、前記インダクタンス値を変化させる
電力変換装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記負荷が前記第3回路に接続されている場合、前記第1電圧の低下に応じて、前記インダクタンス値を低下させる
電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載の電力変換装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記負荷が前記第3回路に接続されている場合、前記第1電圧が第1閾値以下になった場合に、前記インダクタンス値を低下させる
電力変換装置の制御方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の電力変換装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記負荷が接続されている場合、前記負荷の消費電力の増加に応じて、前記インダクタンス値を低下させる
電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか一項に記載の電力変換装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記負荷が接続されている場合、前記負荷の消費電力が第2閾値以上になった場合に、前記インダクタンス値を低下させる
電力変換装置の制御方法。
【請求項8】
入力される電力を変換する第1スイッチを有する第1回路と、
前記第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有するトランスと、
前記第1回路と前記第1コイルの間に接続されたリアクトルと、
前記第2コイルから出力される電力を変換する第1整流器を有する第2回路と、
前記第3コイルから出力される電力を変換する第2整流器と、前記第2整流器により変換された電力を変換するDCAC変換部と、前記第2整流器と前記DCAC変換部の間に接続されたコンデンサと、を有する第3回路と、
制御部と、を備え、
前記リアクトルは、そのインダクタンス値が調整可能な可変リアクトルである
電力変換システムであって、
前記制御部は、
前記第3回路から出力される電力を消費する負荷が前記第3回路に接続されていない場合、前記インダクタンス値を第1規定値に設定し、
前記負荷が前記第3回路に接続されている場合、前記インダクタンス値を前記第1規定値以下の第2規定値に設定する、
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、その制御方法、及び電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気自動車に搭載されるDC/DCコンバータとDC/ACインバータとを統合することで、電源装置全体の設置スペースを小さくするスイッチング電源装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のDC/ACインバータは、整流回路により整流された電圧を平滑化するためのコンデンサを備えている。DC/DCコンバータとDC/ACインバータとを統合することにより、コンデンサの静電容量が統合前と比べて大きくなることで、電源装置の小型化を妨げることになる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、電力変換装置を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電力変換装置である。電力変換装置は、第1回路と、トランスと、リアクトルと、第2回路と、第3回路と、を備える。第1回路は、入力される電力を変換する。トランスは、第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有する。リアクトルは、第1回路と第1コイルの間に接続されている。第2回路は、第2コイルから出力される電力を整流する。第3回路は、第3コイルから出力される電力を整流する第2整流器と、第2整流器により整流された電力を変換するDCAC変換部と、第2整流器とDCAC変換部の間に接続されたコンデンサと、を有する。リアクトルは、そのインダクタンス値が調整可能な可変リアクトルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力変換装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の一例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合及び接続されていない場合における、可変リアクトル15のインダクタンス値の制御の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第2負荷4が第3回路14に接続され、且つ可変リアクトル15のインダクタンス値を小さな値(1μH)に設定した時の第3電圧V3の時間変化(実線)と、第2負荷4が第3回路14に接続され、且つ可変リアクトル15のインダクタンス値を大きな値(10μH)に設定した時の第3電圧V3の時間変化(破線)とを示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2負荷4の接続の有無、及び第1電圧V1の時間変化に応じた、可変リアクトル15のインダクタンス値の制御の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、直流電圧源2の一例であるリチウムイオン電池の充電状態(SoC)と第3電圧V3との関係、及び第3電圧V3の時間変化(6A、6B)を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を説明する。電力変換システム1は、1つの入力と2つの出力を有する電力変換装置10と、電力変換装置10を制御する制御部20とを備える。周辺機器2~4は、直流電圧源2と、第1負荷3と、第2負荷4である。電力変換装置10は、第1回路11と、トランス12と、リアクトル15と、第2回路13と、第3回路14と、を備える。第1回路11は、入力される電力を変換する第1スイッチSSを有する。トランス12は、第1回路11により変換された電力が入力される第1コイル121と、第1コイル121に入力される電圧を変換して出力する第2コイル122と、第1コイル121に入力される電圧を変換して出力する第3コイル123とを有する。リアクトル15は、第1回路11と第1コイル121の間に接続されている。第2回路13は、第2コイル122から出力される電力を整流する第1整流器131を有する。第3回路14は、第3コイル123から出力される電力を整流する第2整流器141と、第2整流器141により整流された電力を変換するDCAC変換部143と、第2整流器141とDCAC変換部143の間に接続されたコンデンサ142と、を有する。コンデンサ142は、DCリンク142と呼ぶ場合がある。リアクトル15は、そのインダクタンス値が調整可能な可変リアクトルである。以後、実施形態において、可変リアクトル15と呼ぶ。
【0011】
電力変換装置10によれば、第1回路11、トランス12及び第2回路13を経由して電力を変換するDCDCコンバータと、第1回路11、トランス12及び第3回路14を経由して電力を変換するDCACインバータとを1つの回路に統合することが出来る。
【0012】
DCDCコンバータは、効率向上のために、トランス12の一次側にリアクトルを備えている。一方、第3回路14は、第2整流器141により整流された電力を平滑化するためのDCリンク142を備えている。DCDCコンバータとDCACインバータとを統合することにより、第1回路11に電力を入力する直流電圧源2とDCリンク142との間にリアクトルが挿入されることになる。これにより、リアクトルの慣性が働きDCリンク142への即時充電が難しくなり、DCリンク142の電圧が大きく振動してしまう。よって、電圧安定化のために大容量のDCリンク142が必要となってしまう。
【0013】
そこで、実施形態では、上記したリアクトルとして、そのインダクタンス値が調整可能な可変リアクトル15を用いる。これにより、DCACインバータの使用状況に応じて、可変リアクトル15のインダクタンス値を変化させることができるので、DCリンク142の静電容量を増加することなくDCリンク142の電圧振動を抑えることが可能となる。
【0014】
電力変換装置10によれば、第2整流器141とDCAC変換部143の間に接続されたDCリンク142の静電容量を増加させることなく、DCACインバータとDCDCコンバータを統合することが出来る。よって、電力変換装置10を小型化することが出来る。DCACインバータ使用時、リアクトル15のインダクタンス値を小さくすれば、第2整流器141の出力を安定化することが出来る。
【0015】
第1実施形態において、第1回路11は、第1スイッチSSを動作させることにより、直流電圧源2から出力された直流電力を交流電力に変換して第1コイル121へ出力する。トランス12は、第1コイル121と第2コイル122の巻線比に応じて、第1コイル121への入力電圧を第2コイル122の出力電圧へ変換する。トランス12は、第1コイル121と第3コイル123の巻線比に応じて、第1コイル121への入力電圧を第3コイル123の出力電圧へ変換する。第2回路13は、第2コイル122から出力された交流電力を直流電力へ変換して第1負荷3へ出力する。DCAC変換部143は、第2整流器141により整流されDCリンク142により平滑化された直流電力を交流電力に変換する。第3回路14は、第3コイル123から出力された交流電力を周波数などが異なる他の交流電力へ変換して第2負荷4へ出力する。第1整流器131及び第2整流器141の回路構成は、特に問わず、ダイオードを用いた整流回路であってもよいし、第2スイッチを用いた整流回路でも構わない。ダイオードを用いた整流回路は、
図2を参照して説明し、第2スイッチを用いた整流回路は、
図7を参照して説明する。
【0016】
制御部20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを制御部20として機能させるためのコンピュータプログラム(制御プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、制御部20が備える複数の情報処理部として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって制御部20を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、制御部20を構成することも可能である。制御部20は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0017】
図2を参照して、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の一例を説明する。第1回路11は、第1スイッチSSの一例として、第1スイッチ素子S1~S4を有する。第2回路13は、第1整流器131の一例として、2つのダイオードU1、U2を用いた第1整流回路1311を有する。第3回路14は、第2整流器141の一例として、4つのダイオードU3~U6を用いた第2整流回路1411を有する。第1コイル121、第2コイル122及び第3コイル123は、コア(鉄心)124により磁気的に結合されている。
【0018】
第1回路11は、4つの第1スイッチ素子S1~S4を備えるHブリッジ回路を有する。つまり、高電圧側ラインと低電圧側ラインの間には、第1レグと第2レグが並列に接続されている。Hブリッジ回路を構成する第1スイッチ素子S1~S4は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)を含む半導体デバイスで構成することが出来る。MOSFETのゲート電極にオン信号又はオフ信号を与えることにより、スイッチの導通状態(オン)及び遮断状態(オフ)を制御できる。
【0019】
第1回路11の第1レグ上に第1スイッチ素子S1及びS2が直列に接続され、第1回路11の第2レグ上に第1スイッチ素子S3及びS4が直列に接続されている。可変リアクトル15の一方の端子は、第1スイッチ素子S1及びS2の間に接続され、第1コイル121の一方の端子は、第1スイッチ素子S3及びS4の間に接続されている。可変リアクトル15の他方の端子と第1コイル121の他方の端子は接続されている。第1回路11は、第1レグ及び第2レグに並列接続された平滑コンデンサ111を有していてもよい。第1回路11は、直流電圧源2と第1スイッチ素子S1~S4の間に配置された電圧検出部112を有していてもよい。電圧検出部112は、第1回路11に入力される第1電圧V1を検出して第1電圧V1を示す信号を制御部20へ送信する。電圧検出部112の回路構成は問わず、既知の技術を用いればよい。制御部20は、第1スイッチ素子S1~S4のオン/オフを制御することにより、第1回路11に入力される電力を制御する。
【0020】
第1整流回路1311は、2つのダイオードU1、U2を有するセンタータップ方式の整流回路を形成している。ダイオードU1、U2のアノードが共通し、ダイオードU1、U2のカソードが、第2コイル122の両端子に接続されている。第1整流回路1311は、ダイオードU1、U2のアノードの電位及び第2コイル122の途中の電位を出力する。第2回路13は、第1整流回路1311の出力側に、インダクタンス1341及びキャパシタ1342からなる平滑回路134を有していてもよい。第2回路13は、平滑回路134と第1負荷3との間に配置された電圧検出部135を有していてもよい。電圧検出部135は、第1整流回路1311で整流され平滑回路134で平滑された電圧V2を検出し、検出した第2電圧V2を示す信号を制御部20へ送信する。電圧検出部135の回路構成は問わず、既知の技術を用いればよい。
【0021】
第2整流回路1411は、4つのダイオードU3~U6を有する全波整流回路(ダイオードブリッジ回路)を形成している。第3回路14の高電圧側ラインと低電圧側ラインの間に、2つのダイオードU3、U4が直列に接続され、2つのダイオードU5、U6が直列に接続されている。ダイオードU3のアノード及びダイオードU4のカソードには第3コイル123の一方の端子が接続され、ダイオードU5のアノード及びダイオードU6のカソードには第3コイル123の他方の端子が接続されている。DCリンク142は、第2整流回路1411の後段において、高電圧側ラインと低電圧側ラインの間に接続されている。第3回路14は、4つのダイオードU3~U6で整流され且つDCリンク142で平滑化された第3電圧V3を検出する電圧検出部144を有していてもよい。電圧検出部144は、検出した第3電圧V3を検示す信号を制御部20へ送信する。電圧検出部144の回路構成は問わず、既知の技術を用いればよい。
【0022】
DCAC変換部143は、4つのスイッチ素子Y1~Y4を備えるHブリッジ回路を形成している。つまり、高電圧側ラインと低電圧側ラインの間には、第1レグと第2レグが並列に接続されている。Hブリッジ回路を構成するスイッチ素子Y1~Y4は、例えば、IGBT及びMOSFETを含む半導体デバイスで構成することが出来る。DCAC変換部143は、直流電圧を交流電圧に変換して、第2負荷4に出力する。DCAC変換部143は、例えば、日本国内の商用電源電圧(AC100V)に変換して出力してもよい。制御部20は、スイッチ素子Y1~Y4のオン/オフを制御することにより、DCAC変換部143が変換する電力を制御する。第3回路14は、DCAC変換部143の出力側に、インダクタンス1451及びキャパシタ1452からなる平滑回路145を備えていてもよい。
【0023】
可変リアクトル15は、その一例として、インダクタンス値が異なる複数のリアクトルと、各リアクトルと対を成すリレーとを有する。対を成すリアクトルとリレーはそれぞれ直列に列属され、リアクトルとリレーの対は並列に接続されている。
図2の例では、可変リアクトル15は、複数のリアクトルの一例として、インダクタンス値が10μH、5μH、1μHの3つのリアクトルと、4つのリレーとを有している。4つ目のリレーは、リアクトルと対を形成せずに、複数のリアクトルをバイパスして、第1回路11と第1コイル121を接続するためのリレーである。制御部20は、4つのリレーのオン(導通状態)/オフ(遮断状態)をそれぞれ切り替えることにより、可変リアクトル15のインダクタンス値を制御する。
【0024】
図2に示す電力変換装置10は、電動車両に搭載してもよい。直流電圧源2は、電動車両を駆動するための高電圧(360V)の駆動電力源又は強電バッテリとすることができる。例えば、制御部20は、電力変換装置10と車路間通信を行うことにより、電動車両の外部に配置することが出来る。制御部20は、当該電動車両に搭載され、CAN(Controller Area Network)配線などの有線を介して電力変換装置10と通信を行っても構わない。第1負荷3には、ナビゲーション、パワーウインドウ、ブレーキ、ワイパー、ヘッドランプ、ドアロックなどの車載補機が含まれる。第1負荷3は、車載補機の代わりに、車載補機へ電力を供給するための補機用バッテリ(14Vバッテリ)であってもよい。電力変換装置10は、高電圧(360V)を低電圧(14V)へ降圧して車載補機などに出力する。
【0025】
第3回路14の出力側端子として電動車両の車室内にコンセントを設けてもよい。コンセントに、第2負荷の一例としての電化製品を接続することにより、第2回路13が車載補機へ直流電力(14V)を供給しつつ、第3回路14が車室内外で電化製品へ交流電力(AC100V)を供給することが出来る。電動車両に個別に搭載されていた、車載補機用のDCDCコンバータと、コンセント用のDCACインバータとを統合することが出来る。換言すれば、入力側回路(第1回路11)及びトランス12を統合して、2つの出力側回路(第2回路13、第3回路14)からそれぞれ電力を出力することが出来る。
【0026】
図3を参照して、第2負荷が第3回路14に接続されている場合及び接続されていない場合における、可変リアクトル15のインダクタンス値の制御方法の一例を説明する。制御部20は、第3回路14から出力される電力を消費する負荷、すなわち第2負荷4が第3回路14に接続されていない場合、可変リアクトル15のインダクタンス値を第1規定値に設定する。制御部20は、第1規定値の一例として、可変リアクトル15のインダクタンス値を10μHに設定する。その後、時刻t1において、第2負荷4が第3回路14に接続される。制御部20は、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合、可変リアクトル15のインダクタンス値を第1規定値(10μH)以下の第2規定値に設定する。制御部20は、第2規定値の一例として、可変リアクトル15のインダクタンス値を1μHに設定する。制御部20は、時刻t1において、第2負荷4が第3回路14に接続されていない状態から接続された状態に変化したことに応じて、
図2の可変リアクトル15のリレーのオン/オフを切り替えることにより、可変リアクトル15のインダクタンス値を、第1規定値から第2規定値へ減少させる。逆に、制御部20は、時刻t2において、第2負荷4が第3回路14に接続されている状態から接続されていない状態に変化したことに応じて、
図2の可変リアクトル15のリレーのオン/オフを切り替えることにより、可変リアクトル15のインダクタンス値を、第2規定値から第1規定値へ増大させる。なお、
図3の例では、第2規定値の例として、ゼロでない有限の値(1μH)を示したが、これに限定されない。例えば、制御部20は、第2負荷が第3回路14に接続されている場合、可変リアクトル15が備える全てのリアクトルをバイパスして、インダクタンス値をゼロに設定しても構わない。第2負荷4の接続の有無は、例えば、第2負荷4へ流れる負荷電流の有無によって判断すればよい。
【0027】
第2負荷4が第3回路14に接続されていない場合、第3回路14から電力は出力されない。よって、DCDCコンバータのソフトスイッチングを担保して効率向上のために可変リアクトル15のインダクタンス値を大きな値(第1規定値)に設定することが出来る。一方、大きなインダクタンス値は、DCACインバータの使用時にDCリンク142の電圧V3が大きく振動してしまう要因となる。なぜなら、例えば50Hzの交流電流がDCリンク142から第2負荷4へ供給される一方、コイル(可変リアクトル15)の慣性により直流電圧源2から十分な電流がDCリンク142に供給されないためである。そこで、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合、可変リアクトル15のインダクタンス値を小さな値(第2規定値)に設定する。これにより、直流電圧源2から即座に電流が補充されDCリンク142が充電される。よって、
図4に示すように、DCリンク142の電圧、即ち第3電圧V3の振動を抑えることができる。
図4は、第2負荷4が第3回路14に接続され、且つ可変リアクトル15のインダクタンス値を小さな値(1μH)に設定した時の第3電圧V3の時間変化と、第2負荷4が第3回路14に接続され、且つ可変リアクトル15のインダクタンス値を大きな値(10μH)に設定した時の第3電圧V3の時間変化とを示す。可変リアクトル15のインダクタンス値を小さな値(1μH)に設定することにより、DCリンク142の電圧、即ち第3電圧V3の振動を抑えることができる。
【0028】
また、可変リアクトル15のインダクタンス低減によって、DCリンク142の小型化に加えて、DCACインバータ使用時のDCDCコンバータの出力を維持する効果も生じる。第2負荷4へ電流が流れる場合、可変リアクトル15での電圧降下が増大する。したがって、DCACインバータの使用時は、可変リアクトル15での電圧降下に、DCACインバータの負荷に由来した電圧降下が重畳することで、DCDCコンバータから取り出せる最大電圧(電力)が低下してしまう。そこで、DCACインバータ使用時に可変リアクトル15のインダクタンス値を低減することで、可変リアクトル15での電圧降下を低減することができるので、DCDCコンバータの出力を維持することができる。
【0029】
可変リアクトル15は、DCDCコンバータの効率向上の観点で備えられている。電力変換装置10が電動車両に搭載された場合、車両が起動している間、DCDCコンバータは、車載補機(第1負荷3)へ常時、電力を供給している。一方、DCACインバータはユーザが車室内外で電化製品(第2負荷4)を使用する時だけ稼働する。DCDCコンバータが単体として動作する頻度は、DCDCコンバータとDCACインバータとが同時に使用される頻度よりも十分に高い。したがって、DCACインバータの使用時のみ、インダクタンス値を低減することで、インダクタンス値が小さいことによるDCDCコンバータの効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0030】
制御部20は、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合に、第1回路11に入力される第1電圧V1と、第2負荷4の消費電力の少なくともいずれかに応じて、可変リアクトル15のインダクタンス値を変化させてもよい。DCリンク142の静電容量を増加することなくDCリンク142の電圧振動を抑えることが可能となる。
【0031】
第2負荷4の接続の有無、及び第1電圧V1の時間変化に応じた、可変リアクトル15のインダクタンス値の制御の一例を説明する。第1電圧V1の増減に応じて第3電圧V3も変化する。そこで、制御部20は、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合、第1電圧V1の低下に応じて、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させる。第1電圧V1の低下に応じて、第3電圧V3も低下して第3電圧V3の振動又はリップルが大きくなる。そこで、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させることにより、第3電圧V3の振動又はリップルを抑制する。DCリンク142の静電容量が低下してDCリンク142を小型化しつつ、可変リアクトル15のインダクタンス値の低下を最小限に抑えることができる。
【0032】
図5及び
図6を参照して、第2負荷4の接続の有無、及び第1電圧V1の時間変化に応じた、可変リアクトル15のインダクタンス値の制御の一例を説明する。
図5は、第1電圧V1、すなわち直流電圧源2の電圧が一定の変化幅(240V~360V)を有する場合の切り替えシーケンスの例を示す。
図6は、直流電圧源2の一例であるリチウムイオン電池の充電状態(SoC)と第3電圧V3との関係、及び第3電圧V3の時間変化を示す。
図6において、リチウムイオン電池の満充電状態を100%とし、完全放電状態を0%とする。リチウムイオン電池の充電状態に応じて、第1電圧V1は、240V~360Vで変化する。直流電圧源2の電圧の変化幅(240V~360V)に応じて、第3電圧V3は、
図6に示すように、240V~410Vの範囲で変化する。
【0033】
例えば、第3電圧V3が340Vである時(R1)の電圧振動を抑制するためのDCリンク142の静電容量は、第3電圧V3が240Vである時の電圧振動を抑制するためのDCリンク142の静電容量よりも大幅に小さくすることが出来る。
【0034】
図6に示すように、第3電圧V3が340Vを下回る領域(R2)は、リチウムイオン電池の充電状態が低下した、極わずかな領域に限られる。そこで、DCリンク142の静電容量を、第3電圧V3が340Vである時の第3電圧V3の振動又はリップルを抑制することができる静電容量に設計する。これにより、第3電圧V3が340V以上である時に、
図6の6Aに示すように、可変リアクトル15のインダクタンス値を低減しなくても、第3電圧V3の振動又はリップルを抑制することが出来る。0%~100%の充電状態(SoC)の範囲のうち、領域(R2)を除いた広い領域において、可変リアクトル15のインダクタンス値を低減しなくても、第3電圧V3の振動又はリップルを抑制することが出来る。
【0035】
図6の6Bに示すように、第3電圧V3が340V未満(例えばV3=240V)の時、可変リアクトル15のインダクタンス値が第1規定値のままでは第3電圧V3が振動してしまう。そこで、
図5に示すように、制御部20は、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合、第1電圧V1が第1閾値(
図5の340V)以下になった場合に、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させる。DCリンク142の静電容量が低下してDCリンク142を小型化しつつ、可変リアクトル15のインダクタンス値の低下を最小限に抑えることができる。
図5の時刻t3に、第1電圧V1が360Vから低下し始めても、第3電圧V3が340V以上であれば、制御部20は、インダクタンス値が第1規定値(10μH)のままに制御する。時刻t4に、第1電圧V1が340V未満になった時点で、制御部20は、インダクタンス値を第1規定値(10μH)から第2規定値(1μH)へ切り替える。
【0036】
なお、
図5の例は、第1電圧V1と第1閾値(
図5の340V)とを比較して、可変リアクトル15のインダクタンス値を制御した。本発明はこれに限定されない。例えば、第1回路11に入力される第1電圧V1の代わりに、第2負荷4の消費電力に応じて可変リアクトル15のインダクタンス値を制御してもよい。すなわち、制御部20は、第2負荷4が接続されている場合、第2負荷4の消費電力の増加に応じて、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させても構わない。第2負荷4の消費電力の増加に応じて、第3電圧V3も低下して第3電圧V3の振動又はリップルが大きくなる。そこで、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させることにより、第3電圧V3の振動又はリップルを抑制する。DCリンク142の静電容量が低下してDCリンク142を小型化しつつ、可変リアクトル15のインダクタンス値の低下を最小限に抑えることができる。
【0037】
制御部20は、第2負荷4が第3回路14に接続されている場合、第2負荷4の消費電力が第2閾値以上になった場合に、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させる。DCリンク142の静電容量が低下してDCリンク142を小型化しつつ、可変リアクトル15のインダクタンス値の低下を最小限に抑えることができる。第2閾値は、想定される第2負荷4の消費電力の範囲及びその頻度、及び第3電圧V3の振動又はリップルを抑制することができるDCリンク142の静電容量に基づいて設計すればよい。
【0038】
また、制御部20は、第1電圧V1と第2負荷4の消費電力の双方に基づいて、インダクタンス値を制御してもよい。具体的には、制御部20は、第1電圧V1が第1閾値(
図5の340V)以下になり、且つ第2負荷4の消費電力が第2閾値以上になった場合に、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させてもよい。或いは、制御部20は、第1電圧V1が第1閾値(
図5の340V)以下になるか、若しくは、第2負荷4の消費電力が第2閾値以上になった場合に、可変リアクトル15のインダクタンス値を低下させてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
図7を参照して、第2実施形態に係わる電力変換装置10及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を説明する。
図7は、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の例に相当する。
図7に示す例は、
図2の例に比べて、第3回路14が、第2整流器141の他の例として、4つの第2スイッチ素子Q1~Q4を用いた第2整流回路1412を有し、第2スイッチ素子Q1~Q4の動作を制御して整流を行うアクティブブリッジ整流器とする点で異なっている。
【0040】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0041】
1 電力変換システム
2 直流電圧源
3 第1負荷
4 第2負荷
10 電力変換装置
11 第1回路
12 トランス
13 第2回路
14 第3回路
15 可変リアクトル(リアクトル)
20 制御部
111 平滑コンデンサ
112 電圧検出部
121 第1コイル
122 第2コイル
123 第3コイル
131 第1整流器
141 第2整流器
142 DCリンク(コンデンサ)
143 DCAC変換部
Q1~Q4 第2スイッチ素子
S1~S4 第1スイッチ素子
SS 第1スイッチ
U1~U6 ダイオード
V1 第1電圧
V2 第2電圧
V3 第3電圧
Y1~Y4 スイッチ素子