(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171543
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御方法及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088608
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】荒井 拓実
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 敏祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 峰洋
(72)【発明者】
【氏名】ロビソン ジョルジョ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE59
5H730EE73
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】負荷変動時における応答性を向上させることのできる電力変換装置の制御方法を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、第1スイッチSSを有する第1回路11と、第1コイル121と第2コイル122と第3コイル123とを有するトランス12と、第2回路13と、第2スイッチQQを有する第3回路14とを備え、第1負荷3を流れる負荷電流I1と第2負荷4を流れる負荷電流I2の増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定され、制御部20は、負荷電流I1と負荷電流I2が変動したときには、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを予め設定されている変位方向に変位させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部が電力変換装置を制御する方法であって、
前記電力変換装置は、
入力される電力を変換する第1スイッチを有する第1回路と、
前記第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有するトランスと、
前記第2コイルから出力される電力を変換する第2回路と、
前記第3コイルから出力される電力を変換する第3回路と、を備え、
前記第2回路及び前記第3回路の一方は、第2スイッチを有し、
前記第2回路の出力に接続される第1負荷を流れる第1負荷電流と前記第3回路の出力に接続される第2負荷を流れる第2負荷電流の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定され、
前記制御部は、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が変動したときには、前記第1スイッチの位相と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差とを予め設定されている変位方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第3回路が前記第2スイッチを有し、前記第1負荷電流のみが増減する場合に、
前記第1負荷電流の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定されている、
電力変換装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御部は、
前記第1負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチの位相を小さくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させ、
前記第1負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチの位相を大きくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第3回路が前記第2スイッチを有し、前記第2負荷電流のみが増減する場合に、
前記第2負荷電流の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定されている、
電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差以上である場合に、
前記制御部は、
前記第2負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチの位相を大きくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させ、
前記第2負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチの位相を小さくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差以上である場合に、
前記制御部は、
前記第1スイッチの位相を所定値に設定し、
前記第2負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させ、
前記第2負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
請求項4に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差より小さい場合に、
前記制御部は、
前記第2負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチの位相を小さくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させ、
前記第2負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチの位相を大きくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が同じ方向に増減する場合に、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定されている、
電力変換装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差以上である場合に、
前記制御部は、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させ、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差より小さい場合に、
前記制御部は、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチの位相を小さくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させ、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチの位相を大きくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項11】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第3回路が前記第2スイッチを有し、前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が異なる方向に増減する場合に、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定されている、
電力変換装置の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差以上である場合に、
前記制御部は、
前記第1負荷電流が増加し、前記第2負荷電流が減少するほど、前記第1スイッチの位相を小さくする方向に変位させ、
前記第1負荷電流が減少し、前記第2負荷電流が増加するほど、前記第1スイッチの位相を大きくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第1スイッチの位相が前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差以上である場合に、
前記制御部は、
前記第1スイッチの位相を所定値に設定する、
電力変換装置の制御方法。
【請求項14】
入力される電力を変換する第1スイッチを有する第1回路と、
前記第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有するトランスと、
前記第2コイルから出力される電力を変換する第2回路と、
前記第3コイルから出力される電力を変換する第3回路と、
制御部と、を備え、
前記第2回路及び前記第3回路の一方は、第2スイッチを有する
電力変換システムであって、
前記第2回路の出力に接続される第1負荷を流れる第1負荷電流と前記第3回路の出力に接続される第2負荷を流れる第2負荷電流の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定され、
前記制御部は、
前記第1負荷電流と前記第2負荷電流が変動したときには、前記第1スイッチの位相と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差とを予め設定されている変位方向に変位させる、
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御方法及び電力変換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの入力と2つの出力を有するトリプルアクティブブリッジ(TAB)電力コンバータが知られている(特許文献1参照)。電力コンバータは、3つの巻線を備えた変圧器を有する。3つの巻線には、第1のブリッジ回路乃至第3のブリッジ回路がそれぞれ接続され、第1乃至第3の交流電圧が入出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-543271号公報
【特許文献2】特開2008-109754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、出力側の負荷に流れる負荷電流が変動したときに、出力電圧を目標電圧へ収束させるための制御が考慮されていなかった。そのため、特許文献1では、負荷変動時における応答性が悪化する場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、負荷変動時における応答性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、制御部が電力変換装置を制御する方法である。電力変換装置は、第1回路と、トランスと、第2回路と、第3回路と、を備える。第1回路は、入力される電力を変換する第1スイッチを有する。トランスは、第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有する。第2回路は、第2コイルから出力される電力を変換する。第3回路は、第3コイルから出力される電力を変換する。第2回路及び第3回路の一方は、第2スイッチを有する。第2回路の出力に接続される第1負荷を流れる第1負荷電流と第3回路の出力に接続される第2負荷を流れる第2負荷電流の増減に応じて、第1スイッチの位相の変位方向と、第1スイッチと第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定されている。制御部は、第1負荷電流と第2負荷電流が変動したときには、第1スイッチの位相と、第1スイッチと第2スイッチとの位相差とを予め設定されている変位方向に変位させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係わる電力変換システム1に接続された電圧検出部31、33a、33bと電流検出部35a、35bを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示す回路図である。
【
図4】
図4は、
図3の第1スイッチ素子S1~S4、第2スイッチ素子Q1~Q4のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係わる電力変換システム1の制御部20による出力電圧制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係わる制御部20による出力電圧制御のI1のみが増減する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係わる電力変換システム1の負荷電流I1と位相θ1及び位相差θ31との間の関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係わる制御部20による出力電圧制御のI2のみが増減する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係わる電力変換システム1の負荷電流I2と位相θ1及び位相差θ31との間の関係の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係わる制御部20による出力電圧制御のI1、I2が同じ方向に増減する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係わる制御部20による出力電圧制御のI1、I2が異なる方向に増減する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係わる制御部20による出力電圧制御のI2のみが増減する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係わる電力変換システム1の負荷電流I2と位相θ1及び位相差θ31との間の関係の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係わる制御部20による出力電圧制御のI1、I2が異なる方向に増減する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して、実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を説明する。電力変換システム1は、1つの入力と2つの出力を有する電力変換装置10と、電力変換装置10を制御する制御部20とを備える。電力変換装置10は、第1回路11と、トランス12と、第2回路13と、第3回路14と、を備える。周辺機器2~4は、直流電圧源2と、第1負荷3と、第2負荷4である。第1回路11は、入力される電力を変換する第1スイッチSSを有する。トランス12は、第1回路11により変換された電力が入力される第1コイル121と、第1コイル121に入力される電圧を変換して出力する第2コイル122と、第1コイル121に入力される電圧を変換して出力する第3コイル123とを有する。第2回路13は、第2コイル122から出力される電力を変換する。第3回路14は、第3コイル123から出力される電力を変換する。第2回路13及び第3回路14の一方は、第2スイッチQQを有する。
図1に示す一例では、第3回路14が第2スイッチQQを有するが、第2回路13が第2スイッチQQを有していてもよい。
【0011】
第1回路11は、直流電圧源2から出力された直流電力を交流電力に変換して第1コイル121へ出力する。トランス12は、第1コイル121と第2コイル122の巻線比に応じて、第1コイル121への入力電圧を第2コイル122の出力電圧へ変換する。トランス12は、第1コイル121と第3コイル123の巻線比に応じて、第1コイル121への入力電圧を第3コイル123の出力電圧へ変換する。第2回路13は第2コイル122から出力された交流電力を直流電力へ変換して第1負荷3へ出力する。第3回路14は第3コイル123から出力された交流電力を直流電力へ変換して第2負荷4へ出力する。
【0012】
第1回路11は、第1スイッチSSを動作させることにより、直流電力を交流電力に変換する。第2スイッチQQを有する第3回路14は、第2スイッチQQを動作させることにより、交流電力を直流電力に変換する。第1回路11及び第2スイッチQQを有する第3回路14は、スイッチ型の電力変換回路であれば、どのような回路構成であっても構わない。第2回路13は、ダイオードなどを用いた整流回路であればよい。
【0013】
入出力電力情報30は、電力変換装置10を制御するために必要な情報が含まれており、入力電圧や負荷電流の情報が含まれている。
図2に示すように、電力変換装置10には、直流電圧源2から入力される入力電圧Vinを検出する電圧検出部31と、第1負荷3にかかる負荷電圧V1を検出する電圧検出部33aと、第2負荷4にかかる負荷電圧V2を検出する電圧検出部33bが接続されている。また、電力変換装置10には、第1負荷3に流れる負荷電流I1(第1負荷電流)を検出する電流検出部35aと、第2負荷4に流れる負荷電流I2(第2負荷電流)を検出する電流検出部35bが接続されている。したがって、入出力電力情報30は、入力電圧Vinと、負荷電圧V1、V2と、負荷電流I1、I2を含んでいる。
【0014】
尚、第1負荷3と第2負荷4は、電力変換装置10或いは電力変換システム1が電動車両に搭載される場合には、車載補器や補器電源、車内のAC100V電源などである。この場合に直流電圧源2は、電動車両を駆動するための駆動電力源である。
【0015】
制御部20は、入出力電力情報30に含まれる入力電圧Vinと、負荷電圧V1、V2と、負荷電流I1、I2に基づいて、第1回路11の第1スイッチSSと第3回路14の第2スイッチQQを制御する。具体的に、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を、制御変数として制御する。
【0016】
制御部20には、第1負荷3を流れる負荷電流I1と第2負荷4を流れる負荷電流I2の増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定されている。この設定は、制御部20の図示しないメモリ等に記憶されている。
【0017】
したがって、制御部20は、負荷電流I1と負荷電流I2が変動したときには、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを予め設定されている変位方向に変位させる。これにより、負荷電流I1、I2が変動したときには、位相θ1と位相差θ31を予め設定されている変位方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができる。したがって、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0018】
従来では、負荷電流が変動したときに、制御変数であるスイッチの位相やスイッチ間の位相差を変位させる方向が設定されていなかった。そのため、制御変数を微小変化させて、検出値と目標値との差が小さくなる方向に制御変数を変位させていた。しかし、制御変数を微小変化させても検出値と目標値との差が小さくなるとは限らず、検出値と目標値との差が大きくなってしまう場合には、その方向とは逆方向に変位させなければならないので、応答性が悪化していた。これに対して、本実施形態に係わる電力変換装置10では、制御変数である位相θ1と位相差θ31を変位させる方向が予め設定されているので、応答性が悪化する方向に変位させることがなくなり、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0019】
制御部20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを制御部20として機能させるためのコンピュータプログラム(制御プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、制御部20が備える複数の情報処理部として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって制御部20を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、制御部20を構成することも可能である。制御部20は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0020】
図3を参照して、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の一例を説明する。
図3では、第3回路14が第2スイッチQQを有する場合を例示する。第1回路11は、第1スイッチSSとして、第1スイッチ素子S1~S4を有し、第3回路14は、第2スイッチQQとして、第2スイッチ素子Q1~Q4を有する。また、第2回路13は、ダイオードU1~U4を有する整流回路132である。すなわち、第3回路14がスイッチを有し、スイッチを動作させることにより交流電力を直流電力へ変換する。第1コイル121、第2コイル122及び第3コイル123は、コア(鉄心)124により磁気的に結合されている。
【0021】
第1回路11と第3回路14は、4つのスイッチ素子を備えるHブリッジ回路を有する。つまり、高電圧側ラインと低電圧側ラインの間には、第1レグと第2レグが並列に接続されている。Hブリッジ回路を構成するスイッチ素子は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)を含む半導体デバイスで構成することが出来る。MOSFETのゲート電極にオン信号又はオフ信号を与えることにより、スイッチの導通状態(オン)及び遮断状態(オフ)を制御できる。
【0022】
第1回路11の第1レグ上に第1スイッチ素子S1及びS2が直列に接続され、第1回路11の第2レグ上に第1スイッチ素子S3及びS4が直列に接続されている。第1コイル121の一方の端子は、第1スイッチ素子S1及びS2の間に接続され、第1コイル121の他方の端子は、第1スイッチ素子S3及びS4の間に接続されている。第1回路11は、第1レグ及び第2レグに並列接続された平滑コンデンサ111を有していてもよい。
【0023】
第2回路13は、整流回路132を構成するダイオードU1~U4を有する。ダイオードU1及びU2が直列に接続され、ダイオードU3及びU4が直列に接続されている。第2コイル122の一方の端子は、ダイオードU1及びU2の間に接続され、第2コイル122の他方の端子は、ダイオードU3及びU4の間に接続されている。第2回路13は、ダイオードU1、U2及びダイオードU3、U4に並列接続された平滑コンデンサ131を有していてもよい。
【0024】
第3回路14の第1レグ上に第2スイッチ素子Q1及びQ2が直列に接続され、第3回路14の第2レグ上に第2スイッチ素子Q3及びQ4が直列に接続されている。第3コイル123の一方の端子は、第2スイッチ素子Q1及びQ2の間に接続され、第3コイル123の他方の端子は、第2スイッチ素子Q3及びQ4の間に接続されている。第3回路14は、第1レグ及び第2レグに並列接続された平滑コンデンサ141を有していてもよい。
【0025】
図4を参照して、
図3の第1スイッチ素子S1~S4、第2スイッチ素子Q1~Q4のスイッチングパターンの一例を説明する。なお、スイッチングパターンは、図示しないドライバ回路により各スイッチのオン/オフ信号を生成し、MOSFETのゲート電極に入力する波形である。スイッチングパターンは、制御部20により制御される。
【0026】
第1レグ上の第1スイッチ素子S1及び第1スイッチ素子S2は、交互にオン/オフを繰り返す。第1スイッチ素子S1がオンの時、第1スイッチ素子S2はオフであり、第1スイッチ素子S1がオフの時、第1スイッチ素子S2はオンである。同様に、第2レグ上の第1スイッチ素子S3及び第1スイッチ素子S4は、交互にオン/オフを繰り返す。第1スイッチ素子S1~S4は、全て同じ周期でオン/オフを繰り返し、1周期におけるオンの割合、即ち時比率(デューティ)は50%である。
【0027】
同様にして、第1レグ上の第2スイッチ素子Q1及び第2スイッチ素子Q2は、交互にオン/オフを繰り返す。第2スイッチ素子Q1がオンの時、第2スイッチ素子Q2はオフであり、第2スイッチ素子Q1がオフの時、第2スイッチ素子Q2はオンである。同様に、第2レグ上の第2スイッチ素子Q3及び第2スイッチ素子Q4は、交互にオン/オフを繰り返す。第2スイッチ素子Q1~Q4は、全て同じ周期でオン/オフを繰り返し、1周期におけるオンの割合、即ち時比率は50%である。第2スイッチ素子Q1~Q4の周期は、第1スイッチ素子S1~S4の周期と同じである。
【0028】
図1の制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを制御する。
図4に示すように、「第1スイッチSSの位相θ1」とは、第1レグ上の第1スイッチ素子S1及び第1スイッチ素子S2のオン/オフ切替の位相と第2レグ上の第1スイッチ素子S3及び第1スイッチ素子S4のオン/オフ切替の位相との位相差である。つまり、「第1スイッチSSの位相θ1」とは、第1回路11の第1レグと第2レグとの間の位相差である。なお、
図4は、第1スイッチ素子S1の立ち上がり(オフ→オン)及び第1スイッチ素子S2の立ち下がり(オン→オフ)の位相に対する第1スイッチ素子S4の立ち上がり(オフ→オン)及び第1スイッチ素子S3の立ち下がり(オン→オフ)の位相の位相差を「位相θ1」と示した。これに限らず、第1スイッチ素子S1の立ち下がり(オン→オフ)及び第1スイッチ素子S2の立ち上がり(オフ→オン)の位相に対する第1スイッチ素子S4の立ち下がり(オン→オフ)及び第1スイッチ素子S3の立ち上がり(オフ→オン)の位相の位相差も、同じ「位相θ1」である。
【0029】
一方、「第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31」とは、第1スイッチ素子S1のオン/オフ切替の位相と第2スイッチ素子Q1のオン/オフ切替の位相との位相差である。第1スイッチS1~S4と第2スイッチQ1~Q4の周期及び時比率は共通している。よって、第1スイッチ素子S2~S4のオン/オフ切替の位相と第2スイッチ素子Q2~Q4のオン/オフ切替の位相の位相差も、同じ「位相差θ31」である。
【0030】
図1の制御部20は、
図4に示したように、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを制御することにより、第2回路13及び第3回路14により変換される各電力をそれぞれ所望の値に制御することが出来る。
【0031】
なお、本実施形態では、第3回路14が第2スイッチQQを備える場合を示した。しかし、これに限らず、第2回路13が「第2スイッチ」を備えていてもよい。
【0032】
(出力電圧制御処理)
図5を参照して、制御部20による位相θ1と位相差θ31を用いた出力電圧制御の一例を説明する。
図5に示すように、ステップS101において、制御部20は、電流検出部35a、35bで検出された負荷電流I1、I2を取得する。
【0033】
ステップS103において、制御部20は、前回の制御サイクルにおける負荷電流I1n-1、I2n-1と、今回の制御サイクルにおける負荷電流I1n、I2nを比較して、負荷電流I1、I2が変動しているか否かを判断する。負荷電流が変動していない場合には(ステップS103でNo)、本実施形態に係わる出力電圧制御を終了する。
【0034】
一方、負荷電流が変動している場合には(ステップS103でYes)、制御部20は、負荷電流I1、I2の変動パターンに応じて処理を進める。制御部20は、負荷電流I1のみが単独で増減している場合には、ステップS105へ進み、負荷電流I2のみが単独で増減している場合には、ステップS107へ進む。また、制御部20は、負荷電流I1、I2が同じ方向に増減している場合には、ステップS109へ進み、負荷電流I1、I2が異なる方向に増減している場合には、ステップS111へ進む。ステップS105、S107、S109、S111の各処理については後述する。
【0035】
ステップS113において、制御部20は、ステップS105、S107、S109、S111のいずれかの処理で設定された変位方向に位相θ1と位相差θ31を変位させ、出力電圧が目標電圧になるように制御して本実施形態に係わる出力電圧制御を終了する。
【0036】
(ステップS105の処理)
図6を参照して、
図5のステップS105における負荷電流I1のみが単独で増減している場合の位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理の一例を説明する。第3回路14が第2スイッチQQを有し、負荷電流I1のみが増減する場合に、制御部20には、負荷電流I1の増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定されている。これにより、負荷電流I1のみが増減した場合に、位相θ1と位相差θ31を予め設定されている変位方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができる。したがって、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0037】
図6に示すように、ステップS201において、制御部20は、前回の制御サイクルにおける負荷電流I1n-1と、今回の制御サイクルにおける負荷電流I1nを比較して、負荷電流I1が増加しているか否かを判断する。負荷電流I1が増加している場合にはステップS203へ進み、負荷電流I1が増加していない場合、すなわち負荷電流I1が減少している場合にはステップS205へ進む。
【0038】
ステップS203において、制御部20は、負荷電流I1が増加するほど、第1スイッチSSの位相θ1を小さくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。
【0039】
図7は、負荷電流I1が変動した場合に、出力電圧を目標電圧に制御するための位相θ1と位相差θ31の変化を示す図である。
図7に示すように、負荷電流I1が増加する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、負荷電流I1が増加する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、負荷電流I1のみが単独で増加したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0040】
ステップS205において、制御部20は、負荷電流I1が減少するほど、第1スイッチSSの位相θ1を大きくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。
【0041】
図7に示すように、負荷電流I1が減少する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、負荷電流I1が減少する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、負荷電流I1のみが単独で減少したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。こうしてステップS203、S205の処理が実行されると、
図6に示す位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理を終了する。
【0042】
(ステップS107の処理)
図8を参照して、
図5のステップS107における負荷電流I2のみが単独で増減している場合の位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理の一例を説明する。第3回路14が第2スイッチQQを有し、負荷電流I2のみが増減する場合に、制御部20には、負荷電流I2の増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定されている。これにより、負荷電流I2のみが増減した場合に、位相θ1と位相差θ31を予め設定されている変位方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができる。したがって、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0043】
図8に示すように、ステップS301において、制御部20は、前回の制御サイクルにおける負荷電流I2n-1と、今回の制御サイクルにおける負荷電流I2nを比較して、負荷電流I2が増加しているか否かを判断する。負荷電流I2が増加している場合にはステップS303へ進み、負荷電流I2が増加していない場合、すなわち負荷電流I2が減少している場合にはステップS309へ進む。
【0044】
ステップS303において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1が第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31以上であるか否かを判定し、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、ステップS305へ進む。一方、位相θ1が位相差θ31以上ではない場合、すなわち位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、ステップS307へ進む。
【0045】
ステップS305において、制御部20は、負荷電流I2が増加するほど、第1スイッチSSの位相θ1を大きくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。
【0046】
図9は、負荷電流I2が変動した場合に、出力電圧を目標電圧に制御するための位相θ1と位相差θ31の変化を示す図である。
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I2のみが単独で増加したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0047】
ステップS307において、制御部20は、負荷電流I2が増加するほど、第1スイッチSSの位相θ1を小さくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。
【0048】
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31より小さくて負荷電流I2のみが単独で増加したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0049】
ステップS309において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1が第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31以上であるか否かを判定し、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、ステップS311へ進む。一方、位相θ1が位相差θ31以上ではない場合、すなわち位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、ステップS313へ進む。
【0050】
ステップS311において、制御部20は、負荷電流I2が減少するほど、第1スイッチSSの位相θ1を小さくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。
【0051】
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I2のみが単独で減少したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0052】
ステップS313において、制御部20は、負荷電流I2が減少するほど、第1スイッチSSの位相θ1を大きくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。
【0053】
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31より小さくて負荷電流I2のみが単独で減少したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。こうしてステップS305、S307、S311、S313の処理が実行されると、
図8に示す位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理を終了する。
【0054】
(ステップS109の処理)
図10を参照して、
図5のステップS109における負荷電流I1、I2が両方とも同じ方向に増減する場合の位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理の一例を説明する。負荷電流I1と負荷電流I2が同じ方向に増減する場合に、制御部20には、負荷電流I1と負荷電流I2の増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定されている。これにより、負荷電流I1、I2が同じ方向に増減した場合に、位相θ1と位相差θ31を予め設定されている変位方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができる。したがって、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0055】
図10に示すように、ステップS401において、制御部20は、前回の制御サイクルにおける負荷電流I1n-1、I2n-1と、今回の制御サイクルにおける負荷電流I1n、I2nを比較して、負荷電流I1、I2が両方とも増加しているか否かを判断する。負荷電流I1、I2が増加している場合にはステップS403へ進み、負荷電流I1、I2が増加していない場合、すなわち負荷電流I1、I2が減少している場合にはステップS409へ進む。
【0056】
ステップS403において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1が第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31以上であるか否かを判定し、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、ステップS405へ進む。一方、位相θ1が位相差θ31以上ではない場合、すなわち位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、ステップS407へ進む。
【0057】
ステップS405において、制御部20は、負荷電流I1と負荷電流I2が増加するほど、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。このとき、第1スイッチSSの位相θ1を変位させる方向は設定されていない。
【0058】
図7に示すように、負荷電流I1が増加する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I1、I2が増加すると、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I1、I2が両方とも増加するときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0059】
ただし、位相θ1は、負荷電流I1が増加する場合には、
図7に示すように小さくする必要があり、負荷電流I2が増加する場合には、
図9に示すように大きくする必要がある。したがって、位相θ1は、負荷電流I1、I2が同時に増加する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相θ1の変位方向については設定されていない。
【0060】
ステップS407において、制御部20は、負荷電流I1と負荷電流I2が増加するほど、第1スイッチSSの位相θ1を小さくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。
【0061】
図7に示すように、負荷電流I1が増加する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I1、I2が増加すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31より小さくて負荷電流I1、I2が両方とも増加するときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0062】
ステップS409において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1が第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31以上であるか否かを判定し、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、ステップS411へ進む。一方、位相θ1が位相差θ31以上ではない場合、すなわち位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、ステップS413へ進む。
【0063】
ステップS411において、制御部20は、負荷電流I1と負荷電流I2が減少するほど、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。このとき、第1スイッチSSの位相θ1を変位させる方向は設定されていない。
【0064】
図7に示すように、負荷電流I1が減少する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I1、I2が減少すると、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I1、I2が両方とも減少するときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0065】
ただし、位相θ1は、負荷電流I1が減少する場合には、
図7に示すように大きくする必要があり、負荷電流I2が減少する場合には、
図9に示すように小さくする必要がある。したがって、位相θ1は、負荷電流I1、I2が同時に減少する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相θ1の変位方向については設定されていない。
【0066】
ステップS413において、制御部20は、負荷電流I1と負荷電流I2が減少するほど、第1スイッチSSの位相θ1を大きくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。
【0067】
図7に示すように、負荷電流I1が減少する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I1、I2が減少すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31より小さくて負荷電流I1、I2が両方とも減少するときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。こうしてステップS405、S407、S411、S413の処理が実行されると、
図10に示す位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理を終了する。
【0068】
(ステップS111の処理)
図11を参照して、
図5のステップS111における負荷電流I1、I2が異なる方向に増減する場合の位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理の一例を説明する。第3回路14が第2スイッチQQを有し、負荷電流I1と負荷電流I2が異なる方向に増減する場合に、制御部20には、負荷電流I1と負荷電流I2の増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定されている。これにより、負荷電流I1、I2が異なる方向に増減した場合に、位相θ1と位相差θ31を予め設定されている変位方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができる。したがって、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0069】
図11に示すように、ステップS501において、制御部20は、前回の制御サイクルにおける負荷電流I1n-1、I2n-1と、今回の制御サイクルにおける負荷電流I1n、I2nを比較して、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少しているか否かを判断する。負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少している場合にはステップS503へ進み、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少していない場合、すなわち負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加している場合にはステップS509へ進む。
【0070】
ステップS503において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1が第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31以上であるか否かを判定し、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、ステップS505へ進む。一方、位相θ1が位相差θ31以上ではない場合、すなわち位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、ステップS507へ進む。
【0071】
ステップS505において、制御部20は、負荷電流I1が増加し、負荷電流I2が減少するほど、第1スイッチSSの位相θ1を小さくする方向に変位させる。このとき、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を変位させる方向は設定されていない。
【0072】
図7に示すように、負荷電流I1が増加する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少すると、位相θ1を小さくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I1が増加し、負荷電流I2が減少するときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0073】
ただし、位相差θ31は、負荷電流I1が増加する場合には、
図7に示すように大きくする必要があり、負荷電流I2が減少する場合には、
図9に示すように小さくする必要がある。したがって、位相差θ31は、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相差θ31の変位方向については設定されていない。
【0074】
ステップS507において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向を設定しない。
【0075】
図7に示すように、負荷電流I1が増加する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が減少すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。したがって、位相θ1は、負荷電流I1が増加する場合には、
図7に示すように小さくする必要があり、負荷電流I2が減少する場合には、
図9に示すように大きくする必要がある。そのため、位相θ1は、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相θ1の変位方向については設定されていない。
【0076】
また、位相差θ31は、負荷電流I1が増加する場合には、
図7に示すように大きくする必要があり、負荷電流I2が減少する場合には、
図9に示すように小さくする必要がある。したがって、位相差θ31は、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相差θ31の変位方向については設定されていない。
【0077】
ステップS509において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1が第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31以上であるか否かを判定し、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、ステップS511へ進む。一方、位相θ1が位相差θ31以上ではない場合、すなわち位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、ステップS513へ進む。
【0078】
ステップS511において、制御部20は、負荷電流I1が減少し、負荷電流I2が増加するほど、第1スイッチSSの位相θ1を大きくする方向に変位させる。このとき、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を変位させる方向は設定されていない。
【0079】
図7に示すように、負荷電流I1が減少する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を大きくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加すると、位相θ1を大きくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加するときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0080】
ただし、位相差θ31は、負荷電流I1が減少する場合には、
図7に示すように小さくする必要があり、負荷電流I2が増加する場合には、
図9に示すように大きくする必要がある。したがって、位相差θ31は、負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相差θ31の変位方向については設定されていない。
【0081】
ステップS513において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向を設定しない。
【0082】
図7に示すように、負荷電流I1が減少する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。また、
図9に示すように、位相θ1が位相差θ31より小さい場合には、負荷電流I2が増加すると、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。したがって、位相θ1は、負荷電流I1が減少する場合には、
図7に示すように大きくする必要があり、負荷電流I2が増加する場合には、
図9に示すように小さくする必要がある。そのため、位相θ1は、負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相θ1の変位方向については設定されていない。
【0083】
また、位相差θ31は、負荷電流I1が減少する場合には、
図7に示すように小さくする必要があり、負荷電流I2が増加する場合には、
図9に示すように大きくする必要がある。したがって、位相差θ31は、負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相差θ31の変位方向については設定されていない。こうしてステップS505、S507、S511、S513の処理が実行されると、
図11に示す位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理を終了する。
【0084】
なお、第1実施形態では、第3回路14が第2スイッチQQを備える場合を示した。しかし、これに限らず、第2回路13が「第2スイッチ」を備えていてもよい。すなわち、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ21とを制御することにより、出力電圧が目標電圧になるように制御してもよい。
【0085】
(第2実施形態)
第2実施形態に係わる電力変換装置10の制御方法を説明する。本実施形態では、
図5のステップS107における負荷電流I2のみが単独で増減している場合の処理が、第1実施形態と相違している。
図12を参照して、本実施形態に係わる負荷電流I2のみが単独で増減している場合の位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理の一例を説明する。
図12では、ステップS605、S611の処理が、第1実施形態の
図8のステップS305、S311と相違している。その他のステップの処理については、
図8と同様なので詳細な説明は省略する。
【0086】
ステップS605において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1を所定値に設定し、負荷電流I2が増加するほど、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。第1実施形態のステップS305では、第1スイッチSSの位相θ1も大きくする方向に変位させていたが、本実施形態では、無効電流を抑えて高い効率を得るために位相θ1を所定値に固定している。
【0087】
図13は、負荷電流I2が変動した場合に、出力電圧を目標電圧に制御するための位相θ1と位相差θ31の変化を示す図である。
図13に示すように、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I2が増加する場合には、位相θ1を所定値に固定し、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、位相θ1を所定値に設定し、負荷電流I2が増加すると、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I2のみが単独で増加したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0088】
ステップS611において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1を所定値に設定し、負荷電流I2が減少するほど、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。第1実施形態のステップS311では、第1スイッチSSの位相θ1も小さくする方向に変位させていたが、本実施形態では、無効電流を抑えて高い効率を得るために位相θ1を所定値に固定している。
【0089】
図13に示すように、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I2が減少する場合には、位相θ1を所定値に固定し、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、位相θ1が位相差θ31以上である場合には、位相θ1を所定値に設定し、負荷電流I2が減少すると、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I2のみが単独で減少したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、負荷変動時における応答性を向上させることができる。
【0090】
(第3実施形態)
第3実施形態に係わる電力変換装置10の制御方法を説明する。本実施形態では、
図5のステップS111における負荷電流I1、I2が異なる方向に増減する場合の処理が、第1実施形態と相違している。
図14を参照して、本実施形態に係わる負荷電流I1、I2が異なる方向に増減する場合の位相θ1と位相差θ31の変位方向を設定する処理の一例を説明する。
図14では、ステップS705、S711の処理が、第1実施形態の
図11のステップS505、S511と相違している。その他のステップの処理については、
図11と同様なので詳細な説明は省略する。
【0091】
ステップS705において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1を所定値に設定する。第1実施形態のステップS505では、第1スイッチSSの位相θ1を小さくする方向に変位させていたが、本実施形態では、無効電流を抑えて高い効率を得るために位相θ1を所定値に固定している。したがって、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I1が増加し、負荷電流I2が減少するときに、無効電流を抑えて高い効率を得ることができる。
【0092】
ただし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を変位させる方向は設定されていない。位相差θ31は、負荷電流I1が増加する場合には、
図7に示すように大きくする必要があり、負荷電流I2が減少する場合には、
図13に示すように小さくする必要がある。したがって、位相差θ31は、負荷電流I1が増加して負荷電流I2が減少する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相差θ31の変位方向については設定されていない。
【0093】
ステップS711において、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1を所定値に設定する。第1実施形態のステップS511では、第1スイッチSSの位相θ1を大きくする方向に変位させていたが、本実施形態では、無効電流を抑えて高い効率を得るために位相θ1を所定値に固定している。したがって、位相θ1が位相差θ31以上で負荷電流I1が減少し、負荷電流I2が増加するときに、無効電流を抑えて高い効率を得ることができる。
【0094】
ただし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を変位させる方向は設定されていない。位相差θ31は、負荷電流I1が減少する場合には、
図7に示すように小さくする必要があり、負荷電流I2が増加する場合には、
図13に示すように大きくする必要がある。したがって、位相差θ31は、負荷電流I1が減少して負荷電流I2が増加する場合には、変位させる方向が一致しないので、位相差θ31の変位方向については設定されていない。
【0095】
(第4実施形態)
図15を参照して、第4実施形態に係わる電力変換装置10を説明する。
図15は、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の他の例に相当する。
図15に示す例は、
図3の例に比べて、第2回路13が2つのダイオードを用いたセンタータップ方式の整流回路133を備えている点が相違する。センタータップ方式の整流回路133は、ブリッジ型と同様に全波整流回路を構成するが、ダイオードの数を減らすことが出来る。第2回路13は、整流回路133の出力側に、インダクタンス1341及びキャパシタ1342からなる平滑回路134を備えていてもよい。その他の構成は、
図3と同じであり再度の説明を省略する。
【0096】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0097】
1 電力変換システム
2 直流電圧源
3 第1負荷
4 第2負荷
10 電力変換装置
11 第1回路
12 トランス
13 第2回路
14 第3回路
20 制御部
30 入出力電力情報
121 第1コイル
122 第2コイル
123 第3コイル
124 コア
131、141 平滑コンデンサ
132、133 整流回路
134 平滑回路
1341 インダクタンス
1342 キャパシタ
QQ 第2スイッチ
SS 第1スイッチ
θ1 位相
θ31 位相差
Q1~Q4 第2スイッチ素子
S1~S4 第1スイッチ素子
U1~U6 ダイオード