(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171548
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御方法及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088614
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】荒井 拓実
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 敏祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 峰洋
(72)【発明者】
【氏名】ロビソン ジョルジョ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730EE73
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】入力電圧の変動時における応答性を向上させることのできる電力変換装置の制御方法を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、第1スイッチSSを有する第1回路11と、第1コイル121と第2コイル122と第3コイル123とを有するトランス12と、第2回路13と、第2スイッチQQを有する第3回路14とを備え、第1回路11に入力される入力電圧Vの増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定され、制御部20は、入力電圧Vが変動したときには、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを予め設定されている変位方向に変位させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部が電力変換装置を制御する方法であって、
前記電力変換装置は、
入力される電力を変換する第1スイッチを有する第1回路と、
前記第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有するトランスと、
前記第2コイルから出力される電力を変換する第2回路と、
前記第3コイルから出力される電力を変換する第3回路と、を備え、
前記第2回路及び前記第3回路の一方は、第2スイッチを有し、
前記第1回路に入力される入力電圧の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定され、
前記制御部は、
前記入力電圧が変動したときには、前記第1スイッチの位相と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差とを予め設定されている変位方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記第3回路が前記第2スイッチを有する場合に、
前記制御部は、
前記入力電圧が増加するほど、前記第1スイッチの位相を大きくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を小さくする方向に変位させ、
前記入力電圧が減少するほど、前記第1スイッチの位相を小さくし、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差を大きくする方向に変位させる、
電力変換装置の制御方法。
【請求項3】
入力される電力を変換する第1スイッチを有する第1回路と、
前記第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、前記第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有するトランスと、
前記第2コイルから出力される電力を変換する第2回路と、
前記第3コイルから出力される電力を変換する第3回路と、
制御部と、を備え、
前記第2回路及び前記第3回路の一方は、第2スイッチを有する
電力変換システムであって、
前記第1回路に入力される入力電圧の増減に応じて、前記第1スイッチの位相の変位方向と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定され、
前記制御部は、
前記入力電圧が変動したときには、前記第1スイッチの位相と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの位相差とを予め設定されている変位方向に変位させる、
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御方法及び電力変換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの入力と2つの出力を有するトリプルアクティブブリッジ(TAB)電力コンバータが知られている(特許文献1参照)。電力コンバータは、3つの巻線を備えた変圧器を有する。3つの巻線には、第1のブリッジ回路乃至第3のブリッジ回路がそれぞれ接続され、第1乃至第3の交流電圧が入出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-543271号公報
【特許文献2】特開2008-109754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、入力電圧が変動したときに、出力電圧を目標電圧へ収束させるための制御が考慮されていなかった。そのため、特許文献1では、入力電圧の変動時における応答性が悪化する場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、入力電圧の変動時における応答性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、制御部が電力変換装置を制御する方法である。電力変換装置は、第1回路と、トランスと、第2回路と、第3回路と、を備える。第1回路は、入力される電力を変換する第1スイッチを有する。トランスは、第1回路により変換された電力が入力される第1コイルと、第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第2コイルと、第1コイルに入力される電圧を変換して出力する第3コイルとを有する。第2回路は、第2コイルから出力される電力を変換する。第3回路は、第3コイルから出力される電力を変換する。第2回路及び第3回路の一方は、第2スイッチを有する。第1回路に入力される入力電圧の増減に応じて、第1スイッチの位相の変位方向と、第1スイッチと第2スイッチとの位相差の変位方向とが予め設定されている。制御部は、入力電圧が変動したときには、第1スイッチの位相と、第1スイッチと第2スイッチとの位相差とを予め設定されている変位方向に変位させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入力電圧の変動時における応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係わる電力変換システム1に接続された電圧検出部31、33a、33bと電流検出部35a、35bを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示す回路図である。
【
図4】
図4は、
図3の第1スイッチ素子S1~S4、第2スイッチ素子Q1~Q4のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係わる電力変換システム1の制御部20による出力電圧制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係わる電力変換システム1の入力電圧Vと位相θ1及び位相差θ31との間の関係の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して、実施形態に係わる電力変換装置10を含む電力変換システム1、及び電力変換装置10に接続された周辺機器2~4を説明する。電力変換システム1は、1つの入力と2つの出力を有する電力変換装置10と、電力変換装置10を制御する制御部20とを備える。電力変換装置10は、第1回路11と、トランス12と、第2回路13と、第3回路14と、を備える。周辺機器2~4は、直流電圧源2と、第1負荷3と、第2負荷4である。第1回路11は、入力される電力を変換する第1スイッチSSを有する。トランス12は、第1回路11により変換された電力が入力される第1コイル121と、第1コイル121に入力される電圧を変換して出力する第2コイル122と、第1コイル121に入力される電圧を変換して出力する第3コイル123とを有する。第2回路13は、第2コイル122から出力される電力を変換する。第3回路14は、第3コイル123から出力される電力を変換する。第2回路13及び第3回路14の一方は、第2スイッチQQを有する。
図1に示す一例では、第3回路14が第2スイッチQQを有するが、第2回路13が第2スイッチQQを有していてもよい。
【0011】
第1回路11は、直流電圧源2から出力された直流電力を交流電力に変換して第1コイル121へ出力する。トランス12は、第1コイル121と第2コイル122の巻線比に応じて、第1コイル121への入力電圧を第2コイル122の出力電圧へ変換する。トランス12は、第1コイル121と第3コイル123の巻線比に応じて、第1コイル121への入力電圧を第3コイル123の出力電圧へ変換する。第2回路13は第2コイル122から出力された交流電力を直流電力へ変換して第1負荷3へ出力する。第3回路14は第3コイル123から出力された交流電力を直流電力へ変換して第2負荷4へ出力する。
【0012】
第1回路11は、第1スイッチSSを動作させることにより、直流電力を交流電力に変換する。第2スイッチQQを有する第3回路14は、第2スイッチQQを動作させることにより、交流電力を直流電力に変換する。第1回路11及び第2スイッチQQを有する第3回路14は、スイッチ型の電力変換回路であれば、どのような回路構成であっても構わない。第2回路13は、ダイオードなどを用いた整流回路であればよい。
【0013】
入出力電力情報30は、電力変換装置10を制御するために必要な情報が含まれており、入力電圧や負荷電流の情報が含まれている。
図2に示すように、電力変換装置10には、直流電圧源2から入力される入力電圧Vを検出する電圧検出部31と、第1負荷3にかかる負荷電圧V1を検出する電圧検出部33aと、第2負荷4にかかる負荷電圧V2を検出する電圧検出部33bが接続されている。また、電力変換装置10には、第1負荷3に流れる負荷電流I1を検出する電流検出部35aと、第2負荷4に流れる負荷電流I2を検出する電流検出部35bが接続されている。したがって、入出力電力情報30は、入力電圧Vと、負荷電圧V1、V2と、負荷電流I1、I2を含んでいる。
【0014】
尚、第1負荷3と第2負荷4は、電力変換装置10或いは電力変換システム1が電動車両に搭載される場合には、車載補器や補器電源、車内のAC100V電源などである。この場合に直流電圧源2は、電動車両を駆動するための駆動電力源である。
【0015】
制御部20は、入出力電力情報30に含まれる入力電圧Vと、負荷電圧V1、V2と、負荷電流I1、I2に基づいて、第1回路11の第1スイッチSSと第3回路14の第2スイッチQQを制御する。具体的に、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を、制御変数として制御する。
【0016】
制御部20には、入力電圧Vの増減に応じて、第1スイッチSSの位相θ1の変位方向と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31の変位方向とが予め設定されている。この設定は、制御部20の図示しないメモリ等に記憶されている。
【0017】
したがって、制御部20は、入力電圧Vが変動したときには、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを予め設定されている変位方向に変位させる。これにより、入力電圧Vが変動したときには、位相θ1と位相差θ31を予め設定されている変位方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができる。したがって、入力電圧の変動時における応答性を向上させることができる。
【0018】
従来では、力行や回生駆動によって入力電圧が変動したときに、制御変数であるスイッチの位相やスイッチ間の位相差を変位させる方向が設定されていなかった。そのため、制御変数を微小変化させて、検出値と目標値との差が小さくなる方向に制御変数を変位させていた。しかし、制御変数を微小変化させても検出値と目標値との差が小さくなるとは限らず、検出値と目標値との差が大きくなってしまう場合には、その方向とは逆方向に変位させなければならないので、応答性が悪化していた。これに対して、本実施形態に係わる電力変換装置10では、制御変数である位相θ1と位相差θ31を変位させる方向が予め設定されているので、応答性が悪化する方向に変位させることがなくなり、入力電圧の変動時における応答性を向上させることができる。
【0019】
制御部20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを制御部20として機能させるためのコンピュータプログラム(制御プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、制御部20が備える複数の情報処理部として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって制御部20を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、制御部20を構成することも可能である。制御部20は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0020】
図3を参照して、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の一例を説明する。
図3では、第3回路14が第2スイッチQQを有する場合を例示する。第1回路11は、第1スイッチSSとして、第1スイッチ素子S1~S4を有し、第3回路14は、第2スイッチQQとして、第2スイッチ素子Q1~Q4を有する。また、第2回路13は、ダイオードU1~U4を有する整流回路132である。すなわち、第3回路14がスイッチを有し、スイッチを動作させることにより交流電力を直流電力へ変換する。第1コイル121、第2コイル122及び第3コイル123は、コア(鉄心)124により磁気的に結合されている。
【0021】
第1回路11と第3回路14は、4つのスイッチ素子を備えるHブリッジ回路を有する。つまり、高電圧側ラインと低電圧側ラインの間には、第1レグと第2レグが並列に接続されている。Hブリッジ回路を構成するスイッチ素子は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)を含む半導体デバイスで構成することが出来る。MOSFETのゲート電極にオン信号又はオフ信号を与えることにより、スイッチの導通状態(オン)及び遮断状態(オフ)を制御できる。
【0022】
第1回路11の第1レグ上に第1スイッチ素子S1及びS2が直列に接続され、第1回路11の第2レグ上に第1スイッチ素子S3及びS4が直列に接続されている。第1コイル121の一方の端子は、第1スイッチ素子S1及びS2の間に接続され、第1コイル121の他方の端子は、第1スイッチ素子S3及びS4の間に接続されている。第1回路11は、第1レグ及び第2レグに並列接続された平滑コンデンサ111を有していてもよい。
【0023】
第2回路13は、整流回路132を構成するダイオードU1~U4を有する。ダイオードU1及びU2が直列に接続され、ダイオードU3及びU4が直列に接続されている。第2コイル122の一方の端子は、ダイオードU1及びU2の間に接続され、第2コイル122の他方の端子は、ダイオードU3及びU4の間に接続されている。第2回路13は、ダイオードU1、U2及びダイオードU3、U4に並列接続された平滑コンデンサ131を有していてもよい。
【0024】
第3回路14の第1レグ上に第2スイッチ素子Q1及びQ2が直列に接続され、第3回路14の第2レグ上に第2スイッチ素子Q3及びQ4が直列に接続されている。第3コイル123の一方の端子は、第2スイッチ素子Q1及びQ2の間に接続され、第3コイル123の他方の端子は、第2スイッチ素子Q3及びQ4の間に接続されている。第3回路14は、第1レグ及び第2レグに並列接続された平滑コンデンサ141を有していてもよい。
【0025】
図4を参照して、
図3の第1スイッチ素子S1~S4、第2スイッチ素子Q1~Q4のスイッチングパターンの一例を説明する。なお、スイッチングパターンは、図示しないドライバ回路により各スイッチのオン/オフ信号を生成し、MOSFETのゲート電極に入力する波形である。スイッチングパターンは、制御部20により制御される。
【0026】
第1レグ上の第1スイッチ素子S1及び第1スイッチ素子S2は、交互にオン/オフを繰り返す。第1スイッチ素子S1がオンの時、第1スイッチ素子S2はオフであり、第1スイッチ素子S1がオフの時、第1スイッチ素子S2はオンである。同様に、第2レグ上の第1スイッチ素子S3及び第1スイッチ素子S4は、交互にオン/オフを繰り返す。第1スイッチ素子S1~S4は、全て同じ周期でオン/オフを繰り返し、1周期におけるオンの割合、即ち時比率(デューティ)は50%である。
【0027】
同様にして、第1レグ上の第2スイッチ素子Q1及び第2スイッチ素子Q2は、交互にオン/オフを繰り返す。第2スイッチ素子Q1がオンの時、第2スイッチ素子Q2はオフであり、第2スイッチ素子Q1がオフの時、第2スイッチ素子Q2はオンである。同様に、第2レグ上の第2スイッチ素子Q3及び第2スイッチ素子Q4は、交互にオン/オフを繰り返す。第2スイッチ素子Q1~Q4は、全て同じ周期でオン/オフを繰り返し、1周期におけるオンの割合、即ち時比率は50%である。第2スイッチ素子Q1~Q4の周期は、第1スイッチ素子S1~S4の周期と同じである。
【0028】
図1の制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを制御する。
図4に示すように、「第1スイッチSSの位相θ1」とは、第1レグ上の第1スイッチ素子S1及び第1スイッチ素子S2のオン/オフ切替の位相と第2レグ上の第1スイッチ素子S3及び第1スイッチ素子S4のオン/オフ切替の位相との位相差である。つまり、「第1スイッチSSの位相θ1」とは、第1回路11の第1レグと第2レグとの間の位相差である。なお、
図4は、第1スイッチ素子S1の立ち上がり(オフ→オン)及び第1スイッチ素子S2の立ち下がり(オン→オフ)の位相に対する第1スイッチ素子S4の立ち上がり(オフ→オン)及び第1スイッチ素子S3の立ち下がり(オン→オフ)の位相の位相差を「位相θ1」と示した。これに限らず、第1スイッチ素子S1の立ち下がり(オン→オフ)及び第1スイッチ素子S2の立ち上がり(オフ→オン)の位相に対する第1スイッチ素子S4の立ち下がり(オン→オフ)及び第1スイッチ素子S3の立ち上がり(オフ→オン)の位相の位相差も、同じ「位相θ1」である。
【0029】
一方、「第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31」とは、第1スイッチ素子S1のオン/オフ切替の位相と第2スイッチ素子Q1のオン/オフ切替の位相との位相差である。第1スイッチ素子S1~S4と第2スイッチ素子Q1~Q4の周期及び時比率は共通している。よって、第1スイッチ素子S2~S4のオン/オフ切替の位相と第2スイッチ素子Q2~Q4のオン/オフ切替の位相の位相差も、同じ「位相差θ31」である。
【0030】
図1の制御部20は、
図4に示したように、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31とを制御することにより、第2回路13及び第3回路14により変換される各電力をそれぞれ所望の値に制御することが出来る。
【0031】
なお、本実施形態では、第3回路14が第2スイッチQQを備える場合を示した。しかし、これに限らず、第2回路13が「第2スイッチ」を備えていてもよい。
【0032】
(出力電圧制御処理)
図5を参照して、制御部20による位相θ1と位相差θ31を用いた出力電圧制御の一例を説明する。
図5に示すように、ステップS101において、制御部20は、電圧検出部31で検出された入力電圧Vを取得する。
【0033】
ステップS103において、制御部20は、前回の制御サイクルにおける入力電圧Vn-1と、今回の制御サイクルにおける入力電圧Vnを比較して、入力電圧Vが増加しているか否かを判断する。入力電圧Vが増加している場合にはステップS105へ進み、入力電圧Vが増加していない場合、すなわち入力電圧が減少している場合にはステップS107へ進む。
【0034】
ステップS105において、制御部20は、入力電圧Vが増加するほど、第1スイッチSSの位相θ1を大きくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を小さくする方向に変位させる。
【0035】
図6は、入力電圧Vが変動した場合に、出力電圧を目標電圧に制御するための位相θ1と位相差θ31の変化を示す図である。
図6に示すように、入力電圧Vが増加する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、入力電圧Vが増加する場合には、位相θ1を大きくし、位相差θ31を小さくする方向に変位させている。これにより、入力電圧Vが増加したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、入力電圧の変動時における応答性を向上させることができる。
【0036】
ステップS107において、制御部20は、入力電圧Vが減少するほど、第1スイッチSSの位相θ1を小さくし、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ31を大きくする方向に変位させる。
【0037】
図6に示すように、入力電圧Vが減少する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させれば、出力電圧を目標電圧に制御できることが分かる。そこで、制御部20は、入力電圧Vが減少する場合には、位相θ1を小さくし、位相差θ31を大きくする方向に変位させている。これにより、入力電圧Vが減少したときに、出力電圧を目標電圧へ素早く収束させることができるので、入力電圧の変動時における応答性を向上させることができる。
【0038】
ステップS109において、制御部20は、ステップS105、S107のいずれかの処理で設定された変位方向に位相θ1と位相差θ31を変位させ、出力電圧が目標電圧になるように制御して本実施形態に係わる出力電圧制御を終了する。
【0039】
なお、第1実施形態では、第3回路14が第2スイッチQQを備える場合を示した。しかし、これに限らず、第2回路13が「第2スイッチ」を備えていてもよい。すなわち、制御部20は、第1スイッチSSの位相θ1と、第1スイッチSSと第2スイッチQQとの位相差θ21とを制御することにより、出力電圧が目標電圧になるように制御してもよい。
【0040】
(第2実施形態)
図7を参照して、第2実施形態に係わる電力変換装置10を説明する。
図7は、
図1の電力変換装置10の詳細な回路構成の他の例に相当する。
図7に示す例は、
図3の例に比べて、第2回路13が2つのダイオードを用いたセンタータップ方式の整流回路133を備えている点が相違する。センタータップ方式の整流回路133は、ブリッジ型と同様に全波整流回路を構成するが、ダイオードの数を減らすことが出来る。第2回路13は、整流回路133の出力側に、インダクタンス1341及びキャパシタ1342からなる平滑回路134を備えていてもよい。その他の構成は、
図3と同じであり再度の説明を省略する。
【0041】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0042】
1 電力変換システム
2 直流電圧源
3 第1負荷
4 第2負荷
10 電力変換装置
11 第1回路
12 トランス
13 第2回路
14 第3回路
20 制御部
30 入出力電力情報
121 第1コイル
122 第2コイル
123 第3コイル
124 コア
131、141 平滑コンデンサ
132、133 整流回路
134 平滑回路
1341 インダクタンス
1342 キャパシタ
QQ 第2スイッチ
SS 第1スイッチ
θ1 位相
θ31 位相差
Q1~Q4 第2スイッチ素子
S1~S4 第1スイッチ素子
U1~U6 ダイオード