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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171553
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体注入装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088621
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】福島 大貴
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB04
2G058CB09
2G058EA02
2G058EA08
2G058ED02
2G058GB10
(57)【要約】
【課題】載置部にバイアルが載置されているか否かを安価な構成で精度よく検知することができる液体注入装置を提供する。
【解決手段】センサ6は、発光部61及び受光部62を有し、載置部4に載置されるバイアル100に設けられた円筒状のキャップ101の少なくとも一部を通過するように発光部61から光を照射して、受光部62における光の受光量を検知する。発光部61から受光部62への光の光軸Aがキャップ101の中心軸線Lに垂直な面内で当該中心軸線Lを通る位置P1に対して、光がキャップ101を通過する距離が増える方向に、光軸Aがシフト又は傾斜している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアル内の液体をシリンジで吸引し、当該液体を前記シリンジから注入先に吐出する液体注入装置であって、
前記バイアルが載置される載置部と、
発光部及び受光部を有し、前記載置部に載置される前記バイアルに設けられた円筒状のキャップの少なくとも一部を通過するように前記発光部から光を照射して、前記受光部における当該光の受光量を検知するセンサとを備え、
前記発光部から前記受光部への光の光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面内で当該中心軸線を通る位置に対して、前記光が前記キャップを通過する距離が増える方向に、前記光軸がシフト又は傾斜している、液体注入装置。
【請求項2】
前記キャップの中心軸線に垂直な面内で、前記光軸がシフトしている、請求項1に記載の液体注入装置。
【請求項3】
前記光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面内で当該中心軸線を通る位置と、前記光軸が前記キャップを1回だけ通過可能な位置との間に、前記光軸がシフトしている、請求項2に記載の液体注入装置。
【請求項4】
前記光軸が前記キャップを2回通過可能な角度で、前記光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面に対して傾斜している、請求項1に記載の液体注入装置。
【請求項5】
前記バイアルを移動させる移動機構と、
前記移動機構により前記バイアルを移動させた後、当該バイアルを停止させたときの振動中に、当該バイアルに対して前記発光部から光を照射し、前記受光部における当該光の受光量の変化に基づいて前記バイアルの有無を判定する制御部とをさらに備える、請求項1に記載の液体注入装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記受光部における光の受光量の最小値を閾値と比較することにより、前記バイアルの有無を判定する、請求項5に記載の液体注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアル内の液体をシリンジで吸引し、当該液体を前記シリンジから注入先に吐出する液体注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような自動試料注入装置には、載置部に載置されたバイアルを検知するためのセンサが備えられている。センサとしては、発光部及び受光部を有する透過型フォトセンサが用いられ、シリンジの近傍の所定位置に配置された載置部にバイアルが載置されているか否かを光学的に検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-69780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような透過型フォトセンサを用いた検知方式では、安価な構成で多数のバイアルを検知することができる。しかしながら、バイアルに設けられたキャップに対して光を照射するような構成の場合、キャップの材質によっては誤検知のリスクが高まるという問題がある。
【0005】
例えば、キャップの材質が、発光部から照射される光の波長域に対して透過率が高い材質である場合や、キャップの厚みが薄い場合などには、バイアルが載置されているにもかかわらず、バイアルが載置されていないと誤検知される可能性がある。使用するキャップはユーザが適宜選択するため、安価なキャップが使用された場合には、その厚みなどの品質のばらつきが、上記透過率のばらつきの原因にもなる。
【0006】
一方で、載置部に載置されたバイアルの重みによって機械部品を動作させ、その動作を磁気センサで検知することにより、載置部にバイアルが載置されているか否かを磁気的に検知するような技術も提案されている。しかしながら、磁気センサを用いた検知方式では、製造コストが高く、バイアルの数が多い場合には製造コストが特に高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、載置部にバイアルが載置されているか否かを安価な構成で精度よく検知することができる液体注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、バイアル内の液体をシリンジで吸引し、当該液体を前記シリンジから注入先に吐出する液体注入装置であって、載置部と、センサとを備える。前記載置部には、前記バイアルが載置される。前記センサは、発光部及び受光部を有し、前記載置部に載置される前記バイアルに設けられた円筒状のキャップの少なくとも一部を通過するように前記発光部から光を照射して、前記受光部における当該光の受光量を検知する。前記発光部から前記受光部への光の光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面内で当該中心軸線を通る位置に対して、前記光が前記キャップを通過する距離が増える方向に、前記光軸がシフト又は傾斜している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、載置部にバイアルが載置されているか否かを安価な構成で精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体注入装置の一実施形態を示す概略図である。
図2図1の液体注入装置を用いて液体を注入する際の態様について説明するための斜視図である。
図3】センサの配置の一例を示した概略断面図であり、水平方向に沿った断面を示している。
図4】センサの配置の他の例を示した概略断面図であり、鉛直方向に沿った断面を示している。
図5】液体注入装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図6】制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.液体注入装置の概略構成
図1は、液体注入装置1の一実施形態を示す概略図である。図2は、図1の液体注入装置1を用いて液体を注入する際の態様について説明するための斜視図である。この液体注入装置1は、インジェクタ2を備えており、当該インジェクタ2を構成するシリンジ3でバイアル100内の液体を吸引し、当該液体をシリンジ3から吐出先に吐出するための装置である。
【0012】
液体注入装置1には、バイアル100を載置するための載置部4が備えられている。載置部4は、例えば載置台5に設けられた凹部により構成されており、当該載置部4内にバイアル100の下部が挿入されることによりバイアル100を鉛直方向に立てた状態で保持することができる。なお、図1では、載置台5を上方から見た図を示している。
【0013】
この例では、複数の載置部4が載置台5に設けられている。具体的には、載置台5は回転軸51を中心に水平面内で回転可能な円形状のテーブルからなり、回転軸51を中心とする円弧状に複数の載置部4が並べて配置されている。隣接する載置部4間の間隔は、一定であってもよいが、これに限られるものではない。
【0014】
図2に示すように、シリンジ3は、筒部31、プランジャ32及びニードル33などを備えている。筒部31は、鉛直方向に延びるように配置され、その下端から下方に向かってニードル33が突出している。ニードル33は、先端が尖った細い管状の部材であり、筒部31内に連通している。プランジャ32は、筒部31内に挿入され、筒部31内を軸線方向に沿ってスライド可能に設けられている。
【0015】
シリンジ3で液体を吸引する際には、ニードル33の先端が液体中に挿入された状態で、筒部31内のプランジャ32が一方向(ニードル33から遠ざかる方向)にスライドされることにより、圧力差によってニードル33の先端から筒部31内に液体が吸引される。また、筒部31内に吸引された液体は、プランジャ32が逆方向(ニードル33に近づく方向)にスライドされることにより、ニードル33の先端から吐出される。
【0016】
バイアル100は、有底筒状の細長い容器であり、その上端に形成された開口が着脱可能なキャップ101により閉塞されている。キャップ101は、ゴム又はシリコンなどの弾性を有する材料により形成されている。したがって、シリンジ3のニードル33をキャップ101に上方から突き刺して貫通させることにより、ニードル33の先端を密閉されたバイアル100内の液体中に挿入させることができる。
【0017】
図1に示すように、シリンジ3は、載置台5の上方において、回転軸51を中心とする複数の載置部4の軌道上に配置されている。したがって、シリンジ3の下方に載置部4が位置している状態で、シリンジ3を下方に移動させることにより、載置部4に載置されているバイアル100に設けられたキャップ101に、上方からニードル33を突き刺して貫通させることができる。これにより、載置台5を回転させて任意の載置部4をシリンジ3の下方に移動させ、当該載置部4に載置されているバイアル100内の液体をシリンジ3で吸引することができる。ただし、シリンジ3が下方に移動されるのではなく、載置台5が上方に移動されることにより、シリンジ3と載置部4との鉛直方向への相対的な移動が行われるような構成であってもよい。
【0018】
バイアル100内に収容される液体の種類は特に限定されるものではないが、この例では、分析対象となる液体試料がバイアル100内に収容されている。この場合、バイアル100内に収容されている液体試料をシリンジ3で吸引し、分析装置の注入ポート(図示せず)などの注入先に吐出するような構成とすれば、液体注入装置1を試料注入装置として機能させることができる。
【0019】
ただし、バイアル100内には、例えば溶媒などの他の液体が収容され、当該液体がシリンジ3で吸引されるような構成であってもよい。また、液体の注入先についても、特に限定されるものではない。
【0020】
載置台5の近傍には、各載置部4におけるバイアル100の有無を検知するためのセンサ6が設けられている。センサ6は、互いに離間して対向するように配置された発光部61及び受光部62を有する透過型フォトセンサである。この例では、載置台5の上方において、回転軸51を中心とする複数の載置部4の軌道を挟むように、発光部61と受光部62とが対向している。より具体的には、当該軌道上を移動するバイアル100のキャップ101によって、発光部61から受光部62に向かう光が遮られるように、発光部61及び受光部62が配置されている。
【0021】
バイアル100は、透明な材料により形成されている。そのため、バイアル100は光を透過可能であり、バイアル100内に障害物がなければ、バイアル100の側面から入射する光は、バイアル100内を通って反対側の側面から出射される。一方、キャップ101は、不透明な材料により形成されており、発光部61からキャップ101に入射する光は、キャップ101を通過する過程で、その一部又は全部が吸収される。キャップ101による光の吸収量は、キャップ101の材質又は厚みなどに依存する。
【0022】
回転軸51を中心とする載置台5の回転、及び、シリンジ3と載置部4との鉛直方向への相対的な移動は、それぞれ移動機構7を用いて行われる。移動機構7は、モータなどの駆動源と、当該駆動源からの駆動力を伝達するためのギアなど(いずれも図示せず)を備えている。
【0023】
移動機構7は、載置部4にバイアル100が載置された状態で載置台5を回転させることにより、回転軸51を中心とする周方向にバイアル100を移動させ、任意のバイアル100をシリンジ3の下方に位置合わせすることができる。そして、図2のようにシリンジ3の下方にバイアル100を位置合わせした後、シリンジ3を下方に移動させることにより、シリンジ3のニードル33をバイアル100のキャップ101に上方から突き刺して貫通させ、バイアル100内に挿入させることができる。
【0024】
なお、バイアル100の移動方向は、回転軸51を中心とする周方向に限らず、例えば一直線上の軌道で移動するような構成であってもよいし、別の軌道で移動するような構成であってもよい。
【0025】
2.センサの配置
図3は、センサ6の配置の一例を示した概略断面図であり、水平方向に沿った断面を示している。図4は、センサ6の配置の他の例を示した概略断面図であり、鉛直方向に沿った断面を示している。
【0026】
図3及び図4に示すように、キャップ101は、鉛直方向に中心軸線Lが延びる円筒状の周面部111と、周面部111の上端を塞ぐ上面部112とが一体的に形成された構成を有している。図2の状態でシリンジ3を下方に移動させたときには、シリンジ3のニードル33が、中心軸線Lに沿って上方からキャップ101の上面部112に突き刺さり、当該上面部112を貫通してバイアル100内に挿入される。
【0027】
図3の例では、センサ6の発光部61及び受光部62が、水平方向に対向している。すなわち、キャップ101の中心軸線Lに垂直な面内に、発光部61及び受光部62が配置されている。発光部61から受光部62への光の光軸Aが、キャップ101の中心軸線Lに垂直な面内で当該中心軸線Lを通る位置P1では、発光部61からの光がキャップ101(周面部111)を通過する距離が最も短い。これは、周面部111に対して法線方向に光が入射するため、周面部111の厚みが最も小さい部分を光が通過することによるものである。
【0028】
図3の例において、発光部61から受光部62への光の光軸Aは、位置P1に対して、キャップ101の中心軸線Lに垂直な面内でシフトしている。具体的には、発光部61からの光がキャップ101(周面部111)を通過する範囲R1内で、光軸Aが位置P1に対して水平面内で平行移動した位置にずれている。
【0029】
発光部61からの光がキャップ101(周面部111)を1回だけ通過可能な範囲R2まで光軸Aをシフトさせた場合には、キャップ101の寸法誤差や装置の機差などに起因して、光軸Aがキャップ101を通過しない位置にずれてしまう危険性がある。そこで、図3の例では、光軸Aがキャップ101の中心軸線Lに垂直な面内で当該中心軸線Lを通る位置P1と、光軸Aがキャップ101を1回だけ通過可能な位置P2との間の範囲R3に、光軸Aをシフトさせている。
【0030】
この場合、周面部111の法線方向に対して水平面内で傾斜した方向に光が入射するため、光が通過する部分の周面部111の厚みが、位置P1の場合よりも増加する。すなわち、発光部61から受光部62への光の光軸Aがキャップ101の中心軸線Lに垂直な面内で当該中心軸線Lを通る位置P1に対して、光がキャップ101を通過する距離が増える方向に、光軸Aがシフトしている。
【0031】
これにより、キャップの厚みにばらつきがある場合でも、バイアル100が載置部4に載置されていないと誤検知されることを防止できる。したがって、透過型フォトセンサ(センサ6)を用いた安価な構成で、載置部4にバイアル100が載置されているか否かを精度よく検知することができる。
【0032】
図4の例では、センサ6の発光部61及び受光部62が、水平方向に対して傾斜する方向に対向している。すなわち、キャップ101の中心軸線Lに垂直な面に対して傾斜する面内に、発光部61及び受光部62が配置されている。上述の通り、発光部61から受光部62への光の光軸Aが、キャップ101の中心軸線Lに垂直な面内で当該中心軸線Lを通る位置P1では、発光部61からの光がキャップ101(周面部111)を通過する距離が最も短い。
【0033】
図4の例において、発光部61から受光部62への光の光軸Aは、位置P1に対して、上下方向に傾斜している。具体的には、受光部62が発光部61よりも下方に配置されることにより、発光部61からの光がキャップ101(周面部111)を2回通過可能な範囲R4内で、光軸Aが位置P1に対して傾斜している。ただし、受光部62が発光部61よりも上方に配置された構成であってもよい。
【0034】
発光部61からの光がキャップ101(周面部111)を1回だけ通過可能な位置P3まで光軸Aを傾斜させた場合には、キャップ101を通過する光の光量が増加し、誤検知の原因となる危険性がある。そこで、図4の例では、位置P1と位置P3との間で光軸Aを傾斜させている。
【0035】
この場合、周面部111の法線方向に対して鉛直方向に傾斜した方向に光が入射するため、光が通過する部分の周面部111の厚みが、位置P1の場合よりも増加する。すなわち、発光部61から受光部62への光の光軸Aがキャップ101の中心軸線Lに垂直な面内で当該中心軸線Lを通る位置P1に対して、光がキャップ101を通過する距離が増える方向に、光軸Aが傾斜している。
【0036】
これにより、キャップの厚みにばらつきがある場合でも、バイアル100が載置部4に載置されていないと誤検知されることを防止できる。したがって、透過型フォトセンサ(センサ6)を用いた安価な構成で、載置部4にバイアル100が載置されているか否かを精度よく検知することができる。
【0037】
3.液体注入装置の電気的構成
図5は、液体注入装置1の電気的構成の一例を示すブロック図である。液体注入装置1は、上述したセンサ6及び移動機構7の他に、制御部8、記憶部9及び表示部10などを備えている。制御部8は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサを備えている。記憶部9は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びハードディスクの少なくとも1つを含む構成であるが、これに限られるものではない。表示部10は、例えば液晶表示器を含む構成であるが、これに限られるものではない。
【0038】
液体注入装置1の動作は、制御部8により制御される。制御部8は、プロセッサが記憶部9に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、移動処理部81、検知処理部82及び比較処理部83などとして機能する。
【0039】
移動処理部81は、移動機構7の動作を制御する。具体的には、移動処理部81の処理により載置台5を回転させ、任意のバイアル100をシリンジ3の下方に移動させることができる。また、移動処理部81の処理によりシリンジ3を下方に移動させ、シリンジ3のニードル33をバイアル100のキャップ101に上方から突き刺して貫通させ、バイアル100内に挿入させることができる。
【0040】
検知処理部82は、センサ6の動作を制御する。具体的には、検知処理部82の処理により、発光部61からの発光が制御されるとともに、受光部62からの検知信号に基づく処理が行われる。上述の通り、発光部61から照射される光は、バイアル100に設けられたキャップ101の少なくとも一部を通過し、受光部62で受光される。このときの受光部62における光の受光量がセンサ6で検知され、その検知信号に基づく処理が検知処理部82により行われる。なお、発光部61から照射される光の波長は、キャップ101の材質などに応じて、適切な値に設定される。
【0041】
本実施形態では、移動処理部81の処理によりバイアル100を移動させた後、検知処理部82によりバイアル100を検知する処理が行われる。比較処理部83は、検知処理部82の処理により検知された受光部62における光の受光量を、記憶部9に記憶されている閾値と比較する処理を行う。その結果に基づいて、比較処理部83は、センサ6の位置におけるバイアル100の有無を判定し、判定結果を表示部10に表示させるなどの処理を必要に応じて行う。
【0042】
4.制御部による処理
図6は、制御部8による処理の一例を示すフローチャートである。図6では、センサ6の位置におけるバイアル100の有無を判定する処理の一例について説明するが、この処理に限定されるものではない。
【0043】
まず、検知処理部82が発光部61からの光の照射を開始させた後(ステップS1)、移動処理部81が載置台5を回転させることにより、バイアルの移動を開始させる(ステップS2)。このバイアル100の移動中は、検知処理部82によるバイアル100の検知は行われず、その後にバイアル100の移動を停止させたときに(ステップS3)、検知処理部82によるバイアル100の検知が行われる(ステップS4)。
【0044】
バイアル100の移動が停止したときには、バイアル100に作用する慣性力により、バイアル100が水平方向に一定時間振動する。この一定時間が経過するまで(ステップS5でYesとなるまで)、検知処理部82により受光部62における光の受光量が検知される。そして、比較処理部83により、上記一定時間における光の受光量の最小値が閾値と比較される(ステップS6)。なお、上記一定時間は、少なくともバイアル100の振動がなくなるまでの時間であることが好ましい。
【0045】
このように、本実施形態では、移動機構7によりバイアル100を移動させた後、バイアル100を停止させたときの振動中に、バイアル100に対して発光部61から光を照射し、受光部62における光の受光量の最小値が閾値と比較される。その結果、受光部62における光の受光量の最小値が閾値より小さければ(ステップS7でYes)、センサ6の位置にバイアル100があると判定される(ステップS8)。一方、受光部62における光の受光量の最小値が閾値以上であれば(ステップS7でNo)、センサ6の位置にバイアル100がないと判定される(ステップS9)。
【0046】
ただし、受光部62における光の受光量の変化に基づいてバイアル100の有無を判定するような構成であれば、受光量の最小値を閾値と比較するような構成に限らず、受光量の変化量を閾値と比較するなどの他の構成であってもよい。
【0047】
5.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0048】
(第1項)一態様に係る液体注入装置は、バイアル内の液体をシリンジで吸引し、当該液体を前記シリンジから注入先に吐出する液体注入装置であって、
前記バイアルが載置される載置部と、
発光部及び受光部を有し、前記載置部に載置される前記バイアルに設けられた円筒状のキャップの少なくとも一部を通過するように前記発光部から光を照射して、前記受光部における当該光の受光量を検知するセンサとを備え、
前記発光部から前記受光部への光の光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面内で当該中心軸線を通る位置に対して、前記光が前記キャップを通過する距離が増える方向に、前記光軸がシフト又は傾斜していてもよい。
【0049】
第1項に記載の液体注入装置によれば、光軸をシフト又は傾斜させることにより、光がキャップを通過する距離が増加するため、キャップの厚みにばらつきがある場合でも、バイアルが載置部に載置されていないと誤検知されることを防止できる。したがって、発光部及び受光部を有するセンサを用いた安価な構成で、載置部にバイアルが載置されているか否かを精度よく検知することができる。
【0050】
(第2項)第1項に記載の液体注入装置において、
前記キャップの中心軸線に垂直な面内で、前記光軸がシフトしていてもよい。
【0051】
第2項に記載の液体注入装置によれば、キャップの中心軸線に垂直な面内で、光軸をシフトさせるだけで、光がキャップを通過する距離を容易に増加させることができる。
【0052】
(第3項)第2項に記載の液体注入装置において、
前記光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面内で当該中心軸線を通る位置と、前記光軸が前記キャップを1回だけ通過可能な位置との間に、前記光軸がシフトしていてもよい。
【0053】
第3項に記載の液体注入装置によれば、キャップの寸法誤差や装置の機差などに起因して、光軸がキャップを通過しない位置にずれてしまう危険性を回避することができるため、載置部にバイアルが載置されているか否かをさらに精度よく検知することができる。
【0054】
(第4項)第1項に記載の液体注入装置において、
前記光軸が前記キャップを2回通過可能な角度で、前記光軸が前記キャップの中心軸線に垂直な面に対して傾斜していてもよい。
【0055】
第4項に記載の液体注入装置によれば、光軸がキャップを2回通過可能な角度で、光軸をキャップの中心軸線に垂直な面に対して傾斜させるだけで、光がキャップを通過する距離を容易に増加させることができる。
【0056】
(第5項)第1項に記載の液体注入装置において、
前記バイアルを移動させる移動機構と、
前記移動機構により前記バイアルを移動させた後、当該バイアルを停止させたときの振動中に、当該バイアルに対して前記発光部から光を照射し、前記受光部における当該光の受光量の変化に基づいて前記バイアルの有無を判定する制御部とをさらに備えていてもよい。
【0057】
第5項に記載の液体注入装置によれば、バイアルを移動させた後、バイアルを停止させたときの振動を利用することで、光軸がキャップを通過しない位置に常にずれた状態を回避することができるため、載置部にバイアルが載置されているか否かをさらに精度よく検知することができる。
【0058】
(第6項)第5項に記載の液体注入装置において、
前記制御部は、前記受光部における光の受光量の最小値を閾値と比較することにより、前記バイアルの有無を判定してもよい。
【0059】
第6項に記載の液体注入装置によれば、バイアルを停止させたときの振動に伴い変化する受光部における光の受光量の最小値を閾値と比較することにより、載置部にバイアルが載置されているか否かをさらに精度よく検知することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 液体注入装置
2 インジェクタ
3 シリンジ
4 載置部
5 載置台
6 センサ
7 移動機構
8 制御部
31 筒部
32 プランジャ
33 ニードル
61 発光部
62 受光部
100 バイアル
101 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6