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特開2024-171554測定システム、処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171554
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】測定システム、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/08 20060101AFI20241205BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
H01Q3/08
G01S19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088622
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】石井 義之
(72)【発明者】
【氏名】大筆 想
【テーマコード(参考)】
5J021
5J062
【Fターム(参考)】
5J021AA01
5J021BA01
5J021DA02
5J021DA04
5J021DA05
5J021DA07
5J021FA13
5J021FA30
5J021GA02
5J021HA03
5J021HA07
5J021JA10
5J062AA09
5J062CC07
(57)【要約】
【課題】アンテナ装置が設置された後であっても、AZ(AZimuth)軸とEL(ELevation)軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を精度よく推定するための情報を取得することのできる測定システムを提供する。
【解決手段】測定システムは、アンテナの向きをAZ軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行う制御装置と、前記アンテナに設けられ、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定するGNSSと、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する処理部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行う制御装置と、
前記アンテナに設けられ、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定するGNSS(Global Navigation Satellite System)と、
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する処理部と、
を備える測定システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記ARPの位置に求められる精度に応じて、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を変更する、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記処理部は、
前記アンテナの近地で電離層および対流圏の影響がほぼ同一と見なせる基準点を基準とした基線解析により前記ARPの位置を特定する、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
前記処理部は、
前記GNSSが測定した前記緯度および経度に基づく閉曲線に近い円を求め、求めた円の中心を前記AZ軸とし、前記比高に相当する前記AZ軸の高さ方向の位置を前記ARPと特定する、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項5】
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と、前記アンテナにおけるEL軸の中心の高さに一致する位置との比高を特定する測定装置、
を備える請求項1から請求項4の何れか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行うことと、
前記アンテナに設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)により、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定することと、
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することと、
を含む処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
アンテナに設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)により、前記アンテナがAZ(AZimuth)軸回りに回転する際に緯度および経度を測定する場合に、前記アンテナの向きを前記AZ軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行うことと、
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定システム、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星を追尾しながら通信するアンテナ装置は、方位角(AZ(AZimuth)角)および仰角(EL(ELevation)角)をそれぞれ調整する軸(以下、「AZ軸」、「EL軸」と記載)を持つアンテナを備え、AZ軸、EL軸を中心とする角度を調整しながら人工衛星を追尾する。特許文献1には、関連する技術として、GPS受信機から得られる複数の位置の情報からアンテナ装置の位置の情報または方位の情報を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-243655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工衛星を追尾しながら通信するとともに、衛星とアンテナとの間の距離及び距離の変化率を測定するアンテナ装置では、アンテナ指向方向と測定した距離及び距離の変化率から衛星の位置と軌道を計算するために、アンテナ装置の正確な位置を把握している必要がある。アンテナ装置の位置は、一般的に、AZ(AZimuth)軸とEL(ELevation)軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)によって定義される。しかしながら、アンテナ装置を設置した後では、AZ軸とEL軸との交点の位置にARPの位置を測定するための装置を物理的に存在させることが困難である。そこで、ARPの位置を直接測定するのではなく、アンテナ装置が設置された後であっても、ARPの位置を精度よく推定するための情報を取得することのできる技術が求められている。
【0005】
本開示の各態様は、上記の課題を解決することのできる測定システム、処理方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様によれば、測定システムは、アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行う制御装置と、前記アンテナに設けられ、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定するGNSS(Global Navigation Satellite System)と、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する処理部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の別の態様によれば、処理方法は、アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行うことと、前記アンテナに設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)により、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定することと、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することと、を含む。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の別の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、アンテナに設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)により、前記アンテナがAZ(AZimuth)軸回りに回転する際に緯度および経度を測定する場合に、前記アンテナの向きを前記AZ軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行うことと、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の各態様によれば、アンテナ装置が設置された後であっても、AZ(AZimuth)軸とEL(ELevation)軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を精度よく推定するための情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による測定システムの構成の一例を示す図である。
図2】本開示の一実施形態によるアンテナ装置の構成の一例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態による処理装置の構成の一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態によるGNSSの移動の一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態によるGNSSが測定した緯度および経度の測定結果の一例を示す図である。
図6】本開示の別の実施形態によるGNSSの設置の一例を示す図である。
図7】本開示の一実施形態による測定システムの処理フローの一例を示す図である。
図8】本開示の実施形態による測定システムの最小構成を示す図である。
図9】本開示の実施形態による最小構成の測定システムの処理フローの一例を示す図である。
図10】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
<実施形態>
(測定システムの構成)
本開示の一実施形態による測定システム1について図面を参照して説明する。測定システム1は、人工衛星を追尾しながら通信するアンテナ装置の位置(すなわち、地上局の位置)として定義されるARP(Antenna Reference Point)を、アンテナ装置の設置後に精度よく推定することのできるシステムである。ARPは、後述するAZ(AZimuth)軸とEL(ELevation)軸との交点である。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態による測定システム1の構成の一例を示す図である。測定システム1は、図1に示すように、アンテナ装置10、GNSS(Global Navigation Satellite System)20、測定装置30、アンテナ制御装置40、およびアンテナ駆動電力増幅装置50を備える。
【0013】
アンテナ制御装置40は、アンテナ駆動電力増幅装置50に速度指令を出力することにより、方位角(AZ角)および仰角(EL角)をそれぞれ調整する軸(以下、「AZ軸」、「EL軸」と記載)を中心とする回転を制御する。これにより、アンテナ制御装置40は、アンテナ101を、所望の方向(例えば、追尾対象である人工衛星の方向、AZ軸の高さ方向(天頂であるEL角90度方向)など)に向けさせることができる。
【0014】
アンテナ制御装置40は、AZ軸回りの回転およびEL軸回りの回転を制御することにより、アンテナ101の方位角および仰角を制御する。具体的には、ARPを精度よく推定する場合、アンテナ制御装置40は、EL軸回りの回転を制御することにより、アンテナ101をAZ軸の高さ方向に向かせる。そして、アンテナ制御装置40は、AZ軸回りの回転を制御することにより、後述するようにアンテナ101に設置されたGNSS20を、AZ軸を中心とする円に沿って移動させることができる。
【0015】
アンテナ駆動電力増幅装置50は、アンテナ制御装置40が出力する速度指令に応じて、AZ軸、EL軸を駆動するためのモーター(不図示)のトルク制御を行い、減速機(不図示)を介してアンテナ101を回転させるギア(不図示)にトルクを伝達させる。これにより、アンテナ101を所望の方向へ駆動させることができる。
【0016】
図2は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置10の構成の一例を示す図である。アンテナ装置10は、図2に示すように、アンテナ101、基台102、処理装置103、および背面小室104を備える。また、アンテナ装置10は、図2に示すように、後述するEL軸の中心の高さに一致する位置にマーカーM1が設けられる。
【0017】
アンテナ101は、追尾対象である人工衛星などと信号を送受信することができる。アンテナ101は、パラボラアンテナ、カセグレンアンテナ、グレゴリアンアンテナ、リングフォーカスアンテナなど、曲面を持つ1つ以上の反射器を用いて焦点位置に受信信号を集める、または送信信号を焦点位置から反射器へ送出する機能を有する。基台102は、アンテナ101および処理装置103を回転自在に支持する。背面小室104は、アンテナ101の主反射鏡の背面部にある箱部分である。
【0018】
図3は、本開示の一実施形態による処理装置103の構成の一例を示す図である。処理装置103は、図3に示すように、通信部1031、処理部1033、および記憶部1034を備える。処理装置103は、EL軸を中心に回転させる駆動に伴って動く背面小室104の中に設置される。
【0019】
通信部1031は、GNSS20と通信を行う。処理部1033は、通信部1031を介して、AZ軸を中心とする円に沿ってGNSS20を移動させた場合のGNSS20の緯度および経度の情報を、GNSS20から取得する。また、処理部1033は、通信部1031を介して、測定装置30による後述する測定結果を、測定装置30から取得する。そして、処理部1033は、取得したGNSS20の緯度および経度の情報と、取得した測定装置30による測定結果とに基づいて、ARPの位置を特定する。なお、処理部1033がARPの位置を特定する処理の詳細については後述する。
【0020】
記憶部1034は、処理装置103が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。例えば、記憶部1034は、処理部1033が取得したGNSS20の緯度および経度の情報を記憶する。また、記憶部1034は、測定装置30で測定したEL軸の高さを記憶する。
【0021】
GNSS20は、アンテナ101に設置される。GNSS20は、AZ軸を中心とする円に沿って移動した所定の位置で、緯度および経度を測定する。図4は、本開示の一実施形態によるGNSS20の移動の一例を示す図である。なお、図4は、AZ軸の高さ方向からGNSS20が設置されたアンテナ101を俯瞰した図である。例えば、図4に示すように、アンテナ101がAZ角0度の時にGNSS20がアンテナ101外周の東の位置に設置されたとする。そして、アンテナ制御装置40が、アンテナ101をAZ軸の高さ方向に向けた状態で、AZ軸の高さ方向から見て時計回りに、AZ軸を中心にアンテナ101を90度ずつ回転させる制御を行ったとする。この場合、GNSS20は、アンテナ101外周の東の位置(すなわち、AZ角=0度)、アンテナ101外周の南の位置(すなわち、AZ角=90度)、アンテナ101外周の西の位置(すなわち、AZ角=180度)、アンテナ101外周の北の位置(すなわち、AZ角=270度)それぞれにおいて、緯度および経度を測定する。そして、GNSS20は、アンテナ装置10と通信することにより、測定した緯度および経度の情報をアンテナ装置10に送信する。
【0022】
測定装置30は、アンテナ装置10が設置される基礎上のマーカーM2の位置と、マーカーM1の位置との比高を特定する。例えば、マーカーM2の位置を基準点とする。測定装置30をマーカーM2の位置に設置する。測定装置30における測定位置の高さが図1に示すようにh1であるものとする。そして、測定装置30は、図1に示すマーカーM1までの距離Lと、角度θとを測定する。この場合、測定装置30は、マーカーM2の位置を基準とするマーカーM1の高さHを、H=h1+Lsinθと求める。測定装置30は、アンテナ装置10と通信することにより、特定した高さHの情報をアンテナ装置10に送信する。なお、アンテナ装置10が設置される基礎上のマーカーM2の位置は、一級水準測量などを行い別途求めた既知の位置である。
【0023】
ここで、処理部1033がARPの位置を特定する処理の詳細について説明する。GNSS20は、緯度および経度を、AZ角0度から上方から見て時計回りに360度の範囲を45度ごとに測定したとする。図5は、本開示の一実施形態によるGNSS20が測定した緯度および経度の測定結果の一例を示す図である。GNSS20による緯度および経度の測定結果は、電離層遅延や対流圏遅延などの影響により誤差(例えば、数十センチメートル程度)が含まれていることがある。そのため、GNSS20による緯度および経度の測定結果に誤差が含まれて、処理部1033が取得する緯度および経度の情報が、図5に示すように、同一円上の点とならないことがある。そのため、処理部1033は、取得したGNSS20の緯度および経度の情報をAZ角の増加に応じてつなげた閉曲線に対して統計的手法(例えば、最小二乗法など)などを使用して、その閉曲線に近い円を近似的に求める。そして、処理部1033は、求めた円の中心を、AZ軸と特定する。そして、処理部1033は、特定したAZ軸の高さ方向の測定装置30による測定結果に相当する位置を、ARPの位置と特定する。なお、処理部1033が円を求める方法は、統計的手法を用いるものに限定されるものではない。
【0024】
なお、処理部1033がARPの位置を特定する処理における緯度および経度の情報に含まれる誤差の影響を低減するためには、アンテナ101をAZ軸回りに回転させる際に、GNSS20がより多くの位置で緯度および経度を測定することが望ましい。GNSS20がより多くの位置で緯度および経度を測定するためには、AZ角の変化を小さくしてそれぞれのAZ角でGNSS20が緯度および経度を測定すればよい。また、GNSS20がより多くの位置で緯度および経度を測定する方法として、アンテナ101に設置するGNSS20の数を増やすことが考えられる。図6は、本開示の別の実施形態によるGNSS20の設置の一例を示す図である。例えば、図6に示すように、アンテナ101に設置するGNSS20の数を複数にして、GNSS20がより多くの位置で緯度および経度を測定するものであってもよい。また、処理部1033がARPの位置を特定する処理における緯度および経度の情報に含まれる誤差の影響を低減する方法として、処理部1033は、アンテナ101の近地で電離層および対流圏の影響がほぼ同一と見なせる基準点(例えば、日本の場合、国土地理院が定めている電子基準点)を基準とした基線解析によりARPの位置を特定することも考えられる。
【0025】
なお、測定システム1が行う上述した処理は一例であって、測定システム1が行う処理は上述した処理に限定されるものではない。例えば、測定システム1は、以下で説明する処理を行うものであってもよい。
【0026】
(測定システムが行う処理)
図7は、本開示の一実施形態による測定システム1の処理フローの一例を示す図である。次に、測定システム1が行うARPの位置を特定する処理について、図7を参照して説明する。
【0027】
アンテナ制御装置40は、アンテナ駆動電力増幅装置50を介して、AZ軸回りの回転およびEL軸回りの回転を制御することにより、アンテナ101の方位角および仰角を制御する(ステップS1)。具体的には、アンテナ制御装置40は、EL軸回りの回転を制御する。これにより、アンテナ101をAZ軸の高さ方向に向かせることができる。そして、アンテナ制御装置40は、AZ軸回りの回転を制御する。これにより、アンテナ101に設置されたGNSS20を、AZ軸を中心とする円に沿って移動させることができる。
【0028】
GNSS20は、AZ軸を中心とする円に沿って移動した所定の位置で、緯度および経度を測定する(ステップS2)。測定装置30は、アンテナ装置10が設置される基礎上のマーカーM2の位置と、マーカーM1の位置との比高を特定する(ステップS3)。
【0029】
処理部1033は、通信部1031を介して、GNSS20が測定した緯度および経度の情報を、GNSS20から取得する。また、処理部1033は、通信部1031を介して、測定装置30による測定結果を、測定装置30から取得する。そして、処理部1033は、取得したGNSS20の緯度および経度の情報と、取得した測定装置30による測定結果とに基づいて、ARPの位置を特定する(ステップS4)。例えば、処理部1033は、取得したGNSS20の緯度および経度の情報をAZ角の増加に応じてつなげた閉曲線に対して統計的手法(例えば、最小二乗法など)などを使用して、その閉曲線に近い円を近似的に求める。そして、処理部1033は、求めた円の中心を、AZ軸と特定する。そして、処理部1033は、特定したAZ軸の高さ方向の測定装置30による測定結果に相当する位置を、ARPの位置と特定する。
【0030】
(利点)
以上、本開示の一実施形態による測定システム1について説明した。測定システム1において、アンテナ制御装置40(制御装置の一例)は、アンテナ101の向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナ101を前記AZ軸回りに回転させる制御を行う。GNSS(Global Navigation Satellite System)20は、前記アンテナ101に設けられ、前記アンテナ101が前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定する。処理部1033は、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する。この測定システム1により、アンテナ装置10が設置された後であっても、AZ(AZimuth)軸を示す情報と、EL(ELevation)軸を示す情報とを取得することができる。つまり、アンテナ装置10が設置された後であっても、AZ(AZimuth)軸とEL(ELevation)軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を精度よく推定するための情報を取得することができる。その結果、アンテナ装置が設置された後であっても、AZ軸とEL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することができる。
【0031】
図8は、本開示の実施形態による測定システム1の最小構成を示す図である。測定システム1は、図8に示すように、GNSS(Global Navigation Satellite System)20、処理部1033、および制御装置400を備える。
【0032】
制御装置400は、アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行う。GNSS20は、前記アンテナに設けられ、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定する。処理部1033は、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する。
【0033】
制御装置400は、例えば、図1に例示されているアンテナ制御装置40が有する機能を用いて実現することができる。GNSS20は、例えば、図1に例示されているGNSS20が有する機能を用いて実現することができる。処理部1033は、例えば、図3図8に例示されている処理部1033が有する機能を用いて実現することができる。
【0034】
図9は、本開示の実施形態による最小構成の測定システム1の処理フローの一例を示す図である。次に、本開示の実施形態による最小構成の測定システム1の処理について図9を参照して説明する。
【0035】
制御装置400は、アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行う(ステップS101)。GNSS20は、前記アンテナに設けられ、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定する(ステップS102)。処理部1033は、前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する(ステップS103)。
【0036】
以上、本開示の実施形態による最小構成の測定システム1について説明した。この測定システム1により、アンテナ装置10が設置された後であっても、AZ(AZimuth)軸を示す情報と、EL(ELevation)軸を示す情報とを取得することができる。つまり、アンテナ装置が設置された後であっても、AZ(AZimuth)軸とEL(ELevation)軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を精度よく推定するための情報を取得することができる。その結果、アンテナ装置が設置された後であっても、AZ軸とEL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することができる。
【0037】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。例えば、図7に示すステップS1~ステップS2の処理と、ステップS3の処理は、順番が入れ替わってもよい。また、図7に示すステップS1~ステップS2の処理と、ステップS3の処理は、並行して行われるものであってもよい。
【0038】
なお、本開示の別の実施形態では、測定装置30が行う測定などの処理の代わりに人が測定装置などを用いて同等の処理を行うものであってもよい。
【0039】
本開示の実施形態について説明したが、上述の測定システム1、アンテナ装置10、GNSS20、測定装置30、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
【0040】
図10は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ5は、図10に示すように、CPU(Central Processing Unit)6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
【0041】
例えば、上述の測定システム1、アンテナ装置10、GNSS20、測定装置30、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0042】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0043】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、開示の範囲を限定しない。これらの実施形態は、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【0045】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0046】
(付記1)
アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行う制御装置と、
前記アンテナに設けられ、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定するGNSS(Global Navigation Satellite System)と、
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定する処理部と、
を備える測定システム。
【0047】
(付記2)
前記制御装置は、
前記ARPの位置に求められる精度に応じて、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を変更する、
付記1に記載の測定システム。
【0048】
(付記3)
前記処理部は、
前記アンテナの近地で電離層および対流圏の影響がほぼ同一と見なせる基準点を基準とした基線解析により前記ARPの位置を特定する、
付記1または付記2に記載の測定システム。
【0049】
(付記4)
前記処理部は、
前記GNSSが測定した前記緯度および経度に基づく閉曲線に近い円を求め、求めた円の中心を前記AZ軸とし、前記比高に相当する前記AZ軸の高さ方向の位置を前記ARPと特定する、
付記1から付記3の何れか1つに記載の測定システム。
【0050】
(付記5)
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と、前記アンテナにおけるEL軸の中心の高さに一致する位置との比高を特定する測定装置、
を備える付記1から付記4の何れか1つに記載の測定システム。
【0051】
(付記6)
アンテナの向きをAZ(AZimuth)軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行うことと、
前記アンテナに設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)により、前記アンテナが前記AZ軸回りに回転する際に緯度および経度を測定することと、
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することと、
を含む処理方法。
【0052】
(付記7)
コンピュータに、
アンテナに設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)により、前記アンテナがAZ(AZimuth)軸回りに回転する際に緯度および経度を測定する場合に、前記アンテナの向きを前記AZ軸の高さ方向に向けさせ、前記アンテナを前記AZ軸回りに回転させる制御を行うことと、
前記アンテナが設置される基礎上のマーカーの位置と前記アンテナにおけるEL(ELevation)軸の中心の高さに一致する位置との比高と、前記GNSSが測定した前記緯度および経度とに基づいて、前記AZ軸と前記EL軸との交点であるARP(Antenna Reference Point)の位置を特定することと、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0053】
1・・・測定システム
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・アンテナ装置
20・・・GNSS
30・・・測定装置
40・・・アンテナ制御装置
50・・・アンテナ駆動電力増幅装置
101・・・アンテナ
102・・・基台
103・・・処理装置
400・・・制御装置
1031・・・通信部
1033・・・処理部
1034・・・記憶部
M1、M2・・・マーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10