(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171557
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ライナー交換装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20241205BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20241205BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/16
B29C70/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088627
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松井 利裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木野 義浩
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水辺 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 吉典
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AD12
4F205AD16
4F205AG07
4F205AJ08
4F205AM14
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HK23
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】ライナーの交換時間を短縮する。
【解決手段】ライナー交換装置70は、支持ユニット30に対してライナーLを交換するように構成されている。ライナー交換装置70は、一対の把持治具83を備える。一対の把持治具83は、前後方向に並べて配置され、左右方向において支持ユニット30に対して近接及び離隔可能に構成されている。一対の把持治具83の各々は、繊維束が巻き付けられた巻付完了ライナーL1を把持するための第1クランプ92と、繊維束がまだ巻き付けられていない新しいライナーL2を把持するための第2クランプ93と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束をライナーに巻き付けるフィラメントワインディング装置において前記ライナーを支持する支持装置に対してライナーを交換するように構成されたライナー交換装置であって、
水平方向の成分を有する所定のライナー軸方向に並べて配置され、前記ライナー軸方向及び上下方向の両方と直交する所定方向において前記支持装置に対して近接及び離隔可能に構成された一対の把持治具を備え、
前記一対の把持治具の各々は、
繊維束が巻き付けられた前記ライナーである第1ライナーを把持するための第1クランプと、繊維束がまだ巻き付けられていない前記ライナーである第2ライナーを把持するための第2クランプと、を有することを特徴とするライナー交換装置。
【請求項2】
前記ライナー軸方向に延びた回動軸を中心として前記一対の把持治具を回動駆動する回動駆動部を備えることを特徴とする請求項1に記載のライナー交換装置。
【請求項3】
前記ライナー軸方向から見たときに、
前記回動軸の中心点と、前記第1ライナーが前記第1クランプに把持されていると仮定したときの前記第1ライナーの中心点と、を結ぶ第1仮想線分と、
前記回動軸の前記中心点と、前記第2ライナーが前記第2クランプに把持されていると仮定したときの前記第2ライナーの中心点と、を結ぶ第2仮想線分と、のなす角が180度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のライナー交換装置。
【請求項4】
制御部を備え、
前記制御部は、前記第1ライナーを把持している前記第1クランプを、前記第2ライナーを把持している前記第2クランプよりも常に下側に位置させるように前記回動駆動部を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載のライナー交換装置。
【請求項5】
前記一対の把持治具を前記所定方向に移動させるように構成された移動駆動部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記移動駆動部を制御して前記一対の把持治具を前記所定方向に移動させながら、前記回動駆動部を制御して前記一対の把持治具を回転させることを特徴とする請求項2に記載のライナー交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナーに繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置においてライナーを交換するライナー交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたフィラメントワインディング装置には、繊維束が巻き付けられたライナー(以下、巻付完了ライナー)を新しいライナーに交換するライナー交換装置が設けられている。より具体的には、ライナー交換装置は、搬入キャリアと搬出キャリアとを有する。搬出キャリアは、ライナーを支持する支持ユニットから取り外された巻付完了ライナーを所定の載置台まで移動させる。搬入キャリアは、巻付完了ライナーが当該載置台まで移動させられた後に、別の載置台に置かれた新しいライナーを把持して支持ユニットの近傍に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のライナー交換装置は、上述したように、巻付完了ライナーの移動が完了した後に、新しいライナーを移動させ始める。このため、ライナーの交換に時間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、ライナーの交換時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明のライナー交換装置は、繊維束をライナーに巻き付けるフィラメントワインディング装置において前記ライナーを支持する支持装置に対してライナーを交換するように構成されたライナー交換装置であって、水平方向の成分を有する所定のライナー軸方向に並べて配置され、前記ライナー軸方向及び上下方向の両方と直交する所定方向において前記支持装置に対して近接及び離隔可能に構成された一対の把持治具を備え、前記一対の把持治具の各々は、繊維束が巻き付けられた前記ライナーである第1ライナーを把持するための第1クランプと、繊維束がまだ巻き付けられていない前記ライナーである第2ライナーを把持するための第2クランプと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、一対の把持治具によって第1ライナー及び第2ライナーを同時に把持できる。これにより、第1ライナー及び第2ライナーを必要に応じて同時に移動させることができる。したがって、ライナーの交換時間を短縮できる。
【0008】
第2の発明のライナー交換装置は、前記第1の発明において、前記ライナー軸方向に延びた回動軸を中心として前記一対の把持治具を回動駆動する回動駆動部を備えることを特徴とする。
【0009】
一対の把持治具が平行移動しかできない構成では、ライナーを把持して移動させる際にライナーが近傍の部材と干渉しないように、広い移動スペースを設ける必要がある。本発明では、一対の把持治具が回動できるため、比較的狭い移動スペースにおいてもライナーを移動させることができる。
【0010】
第3の発明のライナー交換装置は、前記第2の発明において、前記ライナー軸方向から見たときに、前記回動軸の中心点と、前記第1ライナーが前記第1クランプに把持されていると仮定したときの前記第1ライナーの中心点と、を結ぶ第1仮想線分と、前記回動軸の前記中心点と、前記第2ライナーが前記第2クランプに把持されていると仮定したときの前記第2ライナーの中心点と、を結ぶ第2仮想線分と、のなす角が180度よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
本発明では、ライナー交換装置に一度に把持されている2つのライナー間の距離を極力短くすることができる。これにより、第1ライナーを支持ユニットから取り外して新しいライナーを支持装置に取り付ける際、第2ライナーの移動距離を極力短くすることができる。したがって、ライナーの交換時間を短縮できる。
【0012】
第4の発明のライナー交換装置は、前記第2又は第3の発明において、制御部を備え、前記制御部は、前記第1ライナーを把持している前記第1クランプを、前記第2ライナーを把持している前記第2クランプよりも常に下側に位置させるように前記回動駆動部を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明では、繊維束が巻き付けられて重量が増加した第1ライナーを重力に逆らって高い位置に持ち上げることを極力回避できる。したがって、回動駆動部への負荷を軽減できる。
【0014】
第5の発明のライナー交換装置は、前記第2の発明において、前記一対の把持治具を前記所定方向に移動させるように構成された移動駆動部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動駆動部を制御して前記一対の把持治具を前記所定方向に移動させながら、前記回動駆動部を制御して前記一対の把持治具を回転させることを特徴とする。
【0015】
本発明では、一対の把持治具の平行移動と回動とを別々のタイミングで行う場合と比べて、ライナーの交換時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
【
図2】フィラメントワインディング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)、(b)は、ヘリカル巻ユニットの正面図である。
【
図4】ライナー交換装置を含むフィラメントワインディング装置の平面図である。
【
図5】ライナー昇降装置及びライナー交換装置を前側から見た図である。
【
図6】フィラメントワインディング装置のより詳細な電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を示す斜視図である。
図2は、フィラメントワインディング装置1の電気的構成を示すブロック図である。説明の便宜上、
図1に示す方向(前後方向及び左右方向)を定義する。前後方向及び左右方向は、水平方向と平行な方向である。前後方向と左右方向は互いに直交する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。
【0018】
フィラメントワインディング装置1は、ライナーLに複数の繊維束(
図1では図示省略)を同時に巻き付ける多給糸型のものである。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、複数のクリールスタンド3と、複数の前処理部4とを備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。巻付装置2は、円筒状のライナーLに繊維束を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば、炭素繊維などの繊維材料に熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。ライナーLの形状は、最終製品に応じて異なりうる。例えば最終製品が圧力タンクである場合、
図1に示すように、円筒部の両側にドーム部を有するライナーLが使用される。ライナーLの材料としては、高強度アルミニウム、金属、樹脂などが用いられる。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成などの熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力タンクなどの最終製品を得ることができる。
【0019】
複数のクリールスタンド3は、例えば、巻付装置2の左右方向における両側に配置されている。複数のクリールスタンド3は、例えば、前後方向において巻付装置2の後端部の近傍に配置されている。各クリールスタンド3は、例えば、前後方向に延びる略直方体状のフレーム11を有する。フレーム11には、例えば、1以上のボビンホルダ群12が設けられている。ボビンホルダ群12は、例えば、後述するヘリカル巻ユニット50の複数のノズルユニット53の各々に対応して設けられている。各ボビンホルダ群12は、例えば前後方向に並んだ複数の(本実施形態では5つの)ボビンホルダ13を有する。各ボビンホルダ13は、例えば、左右方向に延びる軸を有する。各ボビンホルダ13は、繊維束が巻かれたボビン14を回転可能に支持する。本実施形態では、例えば9つのボビンホルダ群12が設けられ、その各々に5つのボビン14が装着されている(すなわち、計45個のボビン14が配置されている)。各ボビンホルダ群12に属する5つのボビン14から、5本の繊維束がまとめて供給される。クリールスタンド3から供給される複数の繊維束は、ヘリカル巻ユニット50によってライナーLに巻き付けられる。なお、
図1においては2つのクリールスタンド3が図示されているが、クリールスタンド3の数はこれに限られない。また、図面の煩雑化を避けるため、
図1においては、複数のボビンホルダ群12のうち1つのみが図示されている。
【0020】
複数の前処理部4は、複数の繊維束に所定の前処理(例えば張力付与等)を施すように構成されている。複数の前処理部4は、例えば、繊維束の走行方向において、対応するクリールスタンド3と、ヘリカル巻ユニット50(後述)との間に配置されている。
【0021】
(巻付装置)
巻付装置2のより具体的な構成について説明する。巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻ユニット40と、ヘリカル巻ユニット50と、を備える。
【0022】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻ユニット40、及び、ヘリカル巻ユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が設置されている。支持ユニット30及びフープ巻ユニット40は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット50は、例えば、基台20に対する位置が固定されている。第1支持ユニット31、フープ巻ユニット40、ヘリカル巻ユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0023】
支持ユニット30は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を有する。第1支持ユニット31は、フープ巻ユニット40よりも前側に配置されている。第2支持ユニット32は、ヘリカル巻ユニット50よりも後側に配置されている。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(
図2参照)。移動用モータ34は、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35の動作は、制御装置5によって制御される。
【0024】
フープ巻ユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット40は、例えば、本体部41と、回転部材42と、複数(本実施形態では5個)のボビンホルダ43と、を有する。本体部41は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。回転部材42は、ライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状の部材である。回転部材42は、ライナーLの軸周りに回転可能な状態で、本体部41に支持されている。複数のボビンホルダ43は、周方向に等間隔で回転部材42に取り付けられている。各ボビンホルダ43は、前後方向に延びる回転軸を有しており、繊維束が巻かれたボビン(図示省略)を回転可能に支持する。
【0025】
フープ巻ユニット40は、移動用モータ46及び回転用モータ47を有する(
図2参照)。移動用モータ46は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ47は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ46及び回転用モータ47の動作は、制御装置5によって制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置5は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビンから繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に同時にフープ巻きされる。
【0026】
ヘリカル巻ユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット50は、例えば、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、例えば基台20に固設されている。フレーム部材52は、ライナーLが通過可能な通過穴54が形成された円環状の部材である。フレーム部材52は、本体部51に支持されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心に放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に取り付けられている。
【0027】
図3(a)及び
図3(b)は、ヘリカル巻ユニット50の正面図である。詳細には、
図3(a)は、ライナーLの円筒部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。
図3(b)は、ライナーLのドーム部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体55を有する。ガイド体55は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。各ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ56が配置されている。クリールスタンド3の各ボビンホルダ群12から引き出された5本の繊維束Fは、ガイドローラ56を経由して何れかのガイド体55に導入され、ガイド体55の先端からライナーLに供給される。
【0028】
ヘリカル巻ユニット50は、ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58を有する(
図2参照)。ガイド移動用モータ57は、各ガイド体55を一斉に径方向に移動させる。ガイド回転用モータ58は、各ガイド体55を一斉に回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58の動作は、制御装置5によって制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置5は、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。これとともに、制御装置5は、各ノズルユニット53のガイド体55を、径方向に適宜移動させつつ回転軸周りに適宜回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体55の先端から5本の繊維束Fが適切に引き出され、合計で45本の繊維束FがライナーLの周面に同時にヘリカル巻きされる。
【0029】
(さらなる構成)
フィラメントワインディング装置1のさらなる構成について、
図2及び
図4を参照しつつ説明する。
図4は、ライナー交換装置70(後述)を含むフィラメントワインディング装置1の平面図である。
図2及び
図4に示すように、フィラメントワインディング装置1は、例えば、ライナー昇降装置60と、ライナー交換装置70とを備える。ライナー昇降装置60及びライナー交換装置70は、支持ユニット30に支持されているライナーLを別のライナーLに交換するためのものである。
【0030】
ライナー昇降装置60は、例えば1つのライナーLを一時的に載置するためのものである。ライナー昇降装置60は、繊維束Fが既に巻き付けられたライナーL(以下、巻付完了ライナーL1)及び繊維束Fがまだ巻き付けられていないライナーL(以下、新しいライナーL2)のいずれが載置されることも可能である。巻付完了ライナーL1は、本発明の第1ライナーに相当する。新しいライナーL2は、本発明の第2ライナーに相当する。新しいライナーL2は、例えば作業者によってライナー昇降装置60に載置される。巻付完了ライナーL1は、ライナー交換装置70によってライナー昇降装置60に載置される。
【0031】
ライナー交換装置70は、支持ユニット30に支持されている巻付完了ライナーL1を新しいライナーL2に交換するためのものである。ライナー交換装置70は、例えば、土台部71と、前後移動部72と、一対のアーム部73(アーム部73F及び73R)とを有する。土台部71は、ライナー交換装置70の設置位置を固定させるための部分である。前後移動部72は、土台部71上を例えば前後方向に移動可能に構成されている。一対のアーム部73は、前後移動部72に取り付けられており、ライナーLを把持可能に構成されている。一対のアーム部73は、ライナー昇降装置60から新しいライナーL2を受け取り、支持ユニット30(本発明の支持装置)のすぐ近傍まで移動させることが可能である。また、一対のアーム部73は、支持ユニット30から取り外される巻付完了ライナーL1を把持し、ライナー昇降装置60に載置することが可能である。
【0032】
また、ライナーLのさらなる詳細の例について、
図4を参照しつつ説明する。ライナーLは、軸方向における両端部に形成された一対の軸Laを有する。例えば、巻付完了ライナーL1は一対の軸L1aを有し、新しいライナーL2は一対の軸L2aを有する。ライナーLの軸方向が前後方向(本発明のライナー軸方向)に沿って延びるように配置されているとき、前側の軸Laが第1支持ユニット31によって支持され、後側の軸Laが第2支持ユニット32によって支持される。
【0033】
また、支持ユニット30のさらなる詳細の例について、
図4を参照しつつ説明する。第1支持ユニット31は、例えば、前後方向に延びた支持軸36と、支持軸36の後端部に設けられたチャック部37とを有する(
図4参照)。チャック部37は、ライナーLの前端部に設けられた軸Laを保持可能に構成されている。第2支持ユニット32は、例えば、前後方向に延びた支持軸38と、支持軸38の前端部に設けられたチャック部39とを有する。チャック部39は、ライナーLの後端部に設けられた軸Laを保持可能に構成されている。チャック部37及びチャック部39によるライナーLの一対の軸Laの保持が解除されたとき、ライナー交換装置70が当該ライナーLを移動させることが可能である。また、ライナー交換装置70によって把持されているライナーLの一対の軸Laがチャック部37及びチャック部39によって保持されたとき、ライナー交換装置70は当該ライナーLの把持を解除することが可能である。
【0034】
ここで、ライナー交換装置70が、巻付完了ライナーL1の移動完了後に新しいライナーL2を移動させ始めるという従来の手順では、ライナーLの交換に時間がかかる。そこで、ライナーLの交換時間を短縮するため、フィラメントワインディング装置1は、例えば以下のように構成されている。
【0035】
(ライナー昇降装置)
ライナー昇降装置60のさらなる詳細な構成の例について、
図4~
図6を参照しつつ説明する。
図5は、ライナー昇降装置60及びライナー交換装置70を前側から見た図である。
図6は、フィラメントワインディング装置1のより詳細な電気的構成を示すブロック図である。
図5には、ライナー昇降装置60及びライナー交換装置70の他に、支持ユニット30に支持されているライナーL(ここでは巻付完了ライナーL1)が図示されている。但し、
図5において、支持ユニット30の図示は省略されている。後述する
図9~
図12においても同様である。
【0036】
ライナー昇降装置60は、例えば土台部61と昇降部62とを有する(
図4及び
図5参照)。土台部61は、例えば上下方向における位置が固定されている。昇降部62は、例えば不図示のボールねじ機構によって、土台部61に対して上下方向に移動可能(すなわち、昇降可能)に構成されている。ボールねじ機構の駆動源は、例えば昇降用モータ101(
図6参照)である。昇降部62を昇降させるための機構及び駆動源は、上述したものに限られない。昇降部62には、ライナーLの一対の軸Laを支持可能に構成された一対の支持部63が設けられている。一対の支持部63の各々は、例えば昇降部62の上端部に設けられた板状の部材である。各支持部63の上端部が、例えば前後方向から見たときに略Y字状に形成されている。一対の支持部63は、例えば前後方向に並べて配置され、上下方向に延びている。これにより、一対の軸Laが支持部63に載置されることが可能である。昇降部62は、例えば、所定の基準位置(
図5参照)と、基準位置よりも上側の持上げ位置(
図9、
図12参照)との間で昇降可能である。
【0037】
(ライナー交換装置)
ライナー交換装置70のさらなる詳細な構成の例について、
図4~
図8を参照しつつ説明する。
図7及び
図8は、ライナー交換装置70の平面図である。
【0038】
上述したように、ライナー交換装置70は、例えば、土台部71と、前後移動部72と、一対のアーム部73とを有する(
図4及び
図5参照)。土台部71は、例えば前後方向に延びたガイドレール71gを有する。前後移動部72は、一対のアーム部73全体の前後方向における位置を変更するためのものである。前後移動部72は、ガイドレール71gに沿って前後方向に移動可能に構成されている。前後移動部72は、例えば不図示のボールねじ機構によって移動駆動される。ボールねじ機構の駆動源は、例えば前後移動モータ103(
図4及び
図6参照)である。前後移動モータ103は、例えば公知のステッピングモータである。前後移動モータ103は、制御装置5によって制御される。但し、前後移動部72の駆動機構及び駆動源は、上述したものに限られない。前後移動部72は、一対のアーム部73を支持する支持部材74を有する。支持部材74は、例えば前後方向に延びたガイドレール74g(
図4及び
図5参照)を有する。ガイドレール74gは、一対のアーム部73を前後方向に案内可能に構成されている。
【0039】
一対のアーム部73(アーム部73F、73R)は、後述するように、2つのライナーLを把持して当該2つのライナーLを移動させることが可能に構成されている。一対のアーム部73の各々は、より具体的な動作として、前後方向における移動動作と、伸縮動作と、把持治具83(後述)の回動と、複数のクランプ(後述。ここでは符号省略)の開閉動作と、を実行可能に構成されている。一対のアーム部73の各々は、例えば左右方向(本発明の所定方向)に延びている。一対のアーム部73は、例えば前後方向に並べて配置されている。前側にアーム部73Fが配置され、後側にアーム部73Rが配置されている。
【0040】
図7及び
図8に示すように、一対のアーム部73は、一対の距離調節部81と、一対の伸縮部82と、一対の把持治具83とを有する。各アーム部73が、距離調節部81と伸縮部82と把持治具83とを1つずつ有している。アーム部73Fとアーム部73Rは、例えば前後方向において略対称に構成されている。以下、必要に応じて、アーム部73Fに含まれる構成要素の符号の末尾に「F」を付する。また、必要に応じて、アーム部73Rに含まれる構成要素の符号の末尾に「R」を付する。
【0041】
一対の距離調節部81(距離調節部81F、81R)は、ライナーLの前後方向における長さに応じて、一対の把持治具83の前後方向(
図7及び
図8における紙面上下方向)における距離を調節可能に構成されている。一対の距離調節部81は、ガイドレール74g上に配置され、ガイドレール74gに沿って前後方向に移動可能に構成されている。各距離調節部81の左右方向における位置は固定されている。各距離調節部81は、伸縮部82及び把持治具83と一体的に前後方向に移動する(
図7の実線及び二点鎖線参照)。一対の距離調節部81は、例えば不図示のラックアンドピニオン機構によって移動駆動される。ラックアンドピニオン機構の駆動源は、例えば距離調節モータ104(
図6参照)である。距離調節モータ104は、例えば公知のステッピングモータである。距離調節モータ104は、制御装置5によって制御される。一対の距離調節部81は、前後方向において互いに近づき又は遠ざかるように移動駆動される(
図7の実線及び二点鎖線参照)。本実施形態では、1つの距離調節モータ104によって距離調節部81F及び81Rの両方が同時に移動駆動されるように構成されている。しかし、これには限られない。距離調節部81F及び81Rの各々を個別に移動駆動する駆動源(不図示)が設けられていても良い。或いは、距離調節部81F及び81Rのうちいずれか一方のみが前後方向に移動可能であっても良い。なお、一対の距離調節部81の駆動機構及び駆動源は、上述したものに限られない。
【0042】
各距離調節部81は、例えば左右方向に延びており、伸縮部82及び把持治具83を左右方向に移動可能に支持している。各距離調節部81は、例えばガイドレール81gを有する。ガイドレール81gは、例えば左右方向に延びており、伸縮部82を案内可能に構成されている。
【0043】
一対の伸縮部82(伸縮部82F、82R)は、一対のアーム部73を例えば左右方向(
図7及び
図8の紙面左右方向)に伸縮させるためのものである。伸縮部82Fは、距離調節部81Fよりも前側に配置されている。伸縮部82Rは、距離調節部81Rよりも後側に配置されている。つまり、一対の伸縮部82は、前後方向において一対の距離調節部81の外側に配置されている。一対の伸縮部82は、一対の距離調節部81にそれぞれ移動可能に支持されている。伸縮部82は、ガイドレール81gに沿って左右方向に案内される。各伸縮部82の先端部(本実施形態では左端部)には、例えば把持治具83が取り付けられている。各伸縮部82は、後述の回動駆動部95を介して、把持治具83を回動可能に支持している。
【0044】
各伸縮部82は、例えばボールねじ機構84(本発明の移動駆動部。
図7及び
図8参照)によって移動駆動される。ボールねじ機構84の駆動源は、例えば伸縮モータ105(
図6参照)である。伸縮モータ105は、例えば公知のステッピングモータである。伸縮モータ105は、制御装置5によって制御される。
図6には伸縮モータ105が1つのみ図示されているが、本実施形態では、例えば、各伸縮部82に対応して伸縮モータ105が1つずつ設けられている。これにより、一対の把持治具83が支持ユニット30に対して左右方向に平行移動する。各伸縮部82は、把持治具83と一体的に左右方向に移動可能である。各伸縮部82は、所定の待機位置と、待機位置と比べて左右方向において支持ユニット30に近い伸長位置との間で移動可能である(
図8の実線及び二点鎖線参照)。なお、伸縮部82の駆動機構及び駆動源は、上述したものに限られない。
【0045】
一対の把持治具83(把持治具83F、83R)は、2つのライナーLを把持するためのものである。
図7及び
図8に示すように、把持治具83Fは、伸縮部82Fよりも前側に配置されている。把持治具83Rは、伸縮部82Rよりも後側に配置されている。つまり、一対の把持治具83は、前後方向において一対の伸縮部82の外側に配置されている。把持治具83Fと把持治具83Rは、例えば、前後方向において互いに略対称に構成されている。一対の把持治具83は、一対の距離調節部81及び一対の伸縮部82によって位置調節される。一対の把持治具83は、一対の伸縮部82によって、支持ユニット30に支持されているライナーLに対して左右方向に近接及び離隔可能である。
図5に示すように、各把持治具83は、回動部材91と、第1クランプ92と、第2クランプ93とを有する。なお、
図5においては、前側の把持治具83(把持治具83F)に設けられた回動部材91、第1クランプ92及び第2クランプ93のみを図示している。図示は省略するが、後側の把持治具83(把持治具83R)も、前側の把持治具83と同様に回動部材91、第1クランプ92及び第2クランプ93を有する。
【0046】
回動部材91は、例えば略L字状の板部材である。言い換えると、回動部材91は、例えば、1つの基端部と2つの先端部とを有する。回動部材91は、回動軸94を介して伸縮部82の先端部(本実施形態では左端部)に回動可能に取り付けられている。回動軸94は、例えば回動部材91の基端部に固定されている。回動軸94は、例えば前後方向に延びている。説明の便宜上、一対の把持治具83を前後方向から見たときの回動軸94の中心点を点PCと呼ぶ(
図5参照)。回動部材91は、例えば回動駆動部95によって回動駆動される。回動駆動部95は、伸縮部82に取り付けられている。回動駆動部95の駆動源は、例えば回動モータ106である。回動モータ106は、例えば公知のステッピングモータである。回動モータ106は、制御装置5によって制御される。
【0047】
第1クランプ92は、ライナーLを把持可能な公知のクランプ装置である。より具体的には、第1クランプ92は、巻付完了ライナーL1を把持するために設けられている。第1クランプ92は、例えば圧縮空気によって作動する公知のエアクランプである。第1クランプ92は、圧縮空気の供給及び排出を制御するための電磁弁(不図示)を含む。電磁弁は、制御装置5によって制御される。第1クランプ92は、例えば回動部材91の2つの先端部のうち一方に取り付けられている。第1クランプ92は、回動部材91と一体的に回動可能である。説明の便宜上、一対の把持治具83を前後方向から見たときに、巻付完了ライナーL1の軸L1aが第1クランプ92に把持されていると仮定したときの巻付完了ライナーL1の中心点を点P1と呼ぶ(
図5参照)。説明の便宜上、点PCと点P1とを結ぶ仮想的な線分を第1仮想線分VL1と呼ぶ(
図5参照)。
【0048】
第2クランプ93は、ライナーLを把持可能な公知のクランプ装置である。より具体的には、第2クランプ93は、新しいライナーL2を把持するために設けられている。第2クランプ93は、例えば圧縮空気によって作動する公知のエアクランプである。第2クランプ93は、圧縮空気の供給及び排出を制御するための電磁弁(不図示)を含む。電磁弁は、制御装置5によって制御される。第2クランプ93は、例えば回動部材91の2つの先端部のうち他方に取り付けられている。第2クランプ93は、回動部材91と一体的に回動可能である。説明の便宜上、一対の把持治具83を前後方向から見たときに、新しいライナーL2の軸L2aが第2クランプ93に把持されていると仮定したときの新しいライナーL2の中心点を点P2と呼ぶ(
図5参照)。説明の便宜上、点PCと点P2とを結ぶ仮想的な線分を第2仮想線分VL2と呼ぶ(
図5参照)。第1仮想線分VL1の長さと第2仮想線分VL2の長さは、例えば略等しい。第1仮想線分VL1と第2仮想線分VL2とのなす角度を角度θ1としたとき、角度θ1は例えば180°よりも小さい。
【0049】
第1クランプ92と第2クランプ93とのより具体的な位置関係について、
図5を参照しつつ説明する。説明の便宜上、前側から見たときに、支持ユニット30にライナーLが支持されていると仮定したときの当該ライナーLの中心点を点P3と呼ぶ。説明の便宜上、点PCと点P3とを結ぶ仮想的な線分を第3仮想線分VL3と呼ぶ。説明の便宜上、前後方向から見たときに、ライナー昇降装置60にライナーLが支持されていると仮定したときの当該ライナーLの中心点を点P4と呼ぶ。説明の便宜上、点PCと点P4とを結ぶ仮想的な線分を第4仮想線分VL4と呼ぶ。本実施形態では、前側から見たときに、点PCを中心として第4仮想線分VL4を時計回りに180°未満の所定角度θ2回転させることにより、第4仮想線分VL4が第3仮想線分VL3と重なる。このとき、本実施形態では、前側から見たときに、点PCを中心として第1仮想線分VL1を時計回りに角度θ1回転させることにより、第1仮想線分VL1が第2仮想線分VL2と重なる。第1クランプ92と第2クランプ93との位置関係は、以上のようになっている。
【0050】
(ライナー交換装置の動作制御)
次に、ライナー交換装置70がライナーLを交換する手順について、
図5、
図9~
図12を参照しつつ説明する。
図9~
図12は、ライナー交換装置70の動作を示す図である。
図9~
図12は、
図5と同様に、ライナー昇降装置60及びライナー交換装置70を前側から見た図である。制御装置5(本発明の制御部)がライナー昇降装置60及びライナー交換装置70を制御する。説明の簡略化のため、ライナー交換装置70の前後移動部72の前後方向における位置は、ライナー昇降装置60の昇降部62の前後方向における位置と略等しい位置に移動させられたものとする。また、一対の距離調節部81の前後方向における位置は、ライナーLの前後方向における位置に対応して適切に調整されたものとする。以下では、前後移動部72及び一対の距離調節部81の前後方向における移動に関する説明は省略し、ライナー交換装置70等を前側から見たときの動作についてのみ説明する。また、一対のアーム部73(アーム部73F、73R)は、制御装置5によって略同時に制御されるものとして説明を進める。また、
図5、
図9~
図12において巻付完了ライナーL1と新しいライナーL2とを容易に見分けられるようにするため、
図5、
図9~
図12に示された巻付完了ライナーL1にハッチングが施されている。
【0051】
ライナー昇降装置60及びライナー交換装置70の初期状態は、例えば
図5に示すとおりである。初期状態において、第1クランプ92は、例えば回動軸94よりも上側に位置している。第2クランプ93は、例えば回動軸94よりも右側に位置している。このような回動部材91の位置を初期位置と呼ぶ。また、初期状態において、巻付完了ライナーL1が支持ユニット30に支持されている。新しいライナーL2がライナー昇降装置60の支持部63に支持されている。ライナー昇降装置60の昇降部62は、基準位置に位置している。ライナー交換装置70の伸縮部82は、待機位置に位置している。
【0052】
制御装置5は、まず、回動モータ106(
図6参照)を制御して、初期位置に位置している回動部材91を回転させる。これにより、制御装置5は、第2クランプ93を新しいライナーL2の軸L2aの真上に移動させる(
図9参照)。すなわち、制御装置5は、第2クランプ93を上下方向において軸L2aと対向させる。本実施形態では、制御装置5は、前側から見たときに回動部材91を例えば時計回りに回転させる(
図9の矢印A1を参照)。次に、制御装置5は、昇降用モータ101(
図6参照)を制御して、昇降部62を基準位置から持上げ位置に移動させる(
図9の矢印A2を参照)。次に、制御装置5は、第2クランプ93に軸L2aを把持させる。
【0053】
次に、制御装置5は、昇降用モータ101(
図6参照)を制御して、昇降部62を持上げ位置から基準位置に移動させる(
図10の矢印A3を参照)。このとき、第2クランプ93に軸L2aが把持された状態が維持される。次に、制御装置5は、伸縮モータ105(
図6参照)を制御して伸縮部82を左側へ移動させつつ(
図10の矢印A4を参照)、回動モータ106(
図6参照)を制御して回動部材91を時計回りに約180°回転させる(
図10の矢印A5を参照)。より具体的には、制御装置5は、新しいライナーL2が距離調節部81、伸縮部82及び巻付完了ライナーL1のいずれとも干渉せずに巻付完了ライナーL1よりも上側に移動するように、伸縮モータ105及び回動モータ106を同時に制御する。制御装置5は、新しいライナーL2を巻付完了ライナーL1よりも上側に移動させ、且つ、第1クランプ92を巻付完了ライナーL1の軸L1aの真横に移動させる。さらに、制御装置5は、伸縮モータ105を制御して、第1クランプ92が軸L1aを把持可能な位置(上述した伸長位置)に移動させる。次に、制御装置5は、第1クランプ92に軸L1aを把持させる。
【0054】
次に、制御装置5は、支持ユニット30(
図4参照)を制御して、巻付完了ライナーL1の一対の軸L1aをチャック部37及びチャック部39から解放させる。そして、制御装置5は、支持ユニット30を前後方向において一対の軸L1aから離隔させる。このとき、第1クランプ92に軸L1aが把持された状態が維持される。また、第2クランプ93に軸L2aが把持された状態も維持される。このように、一対の把持治具83によって巻付完了ライナーL1及び新しいライナーL2が同時に把持される。
【0055】
次に、制御装置5は、回動モータ106(
図6参照)を制御して、回動部材91を反時計回りに回転させる(
図11の矢印A6を参照)。回転角度は、例えば上述した角度θ1(
図5参照)である。これにより、巻付完了ライナーL1が支持ユニット30から遠ざかるとともに、新しいライナーL2が支持ユニット30に近接する。つまり、巻付完了ライナーL1及び新しいライナーL2が同時に移動させられる。この間、制御装置5は、巻付完了ライナーL1を新しいライナーL2よりも下側に常に位置させるように回動モータ106を制御する。つまり、繊維束Fが巻き付けられて重量が増加した巻付完了ライナーL1を重力に逆らって高い位置に持ち上げる必要はない。次に、制御装置5は、支持ユニット30(
図4参照)に新しいライナーL2の一対の軸L2aを支持させる。これにより、第2クランプ93が軸L2aを解放可能になる。制御装置5は、第2クランプ93に軸L2aを解放させる。
【0056】
次に、制御装置5は、伸縮モータ105(
図6参照)を制御して伸縮部82を伸長位置から待機位置へ移動させる(
図12の矢印A7参照)。伸縮部82が移動しているときに、巻付装置2によって新しいライナーL2への繊維束の巻き付けが開始されても良い。次に、制御装置5は、昇降用モータ101(
図6参照)を制御して、昇降部62を基準位置から持上げ位置に移動させる(
図12の矢印A8を参照)。次に、制御装置5は、第1クランプ92に軸L1aを解放させる。最後に、制御装置5は、回動部材91を初期位置に戻し、且つ、昇降部62を持上げ位置から基準位置に戻す。以上の動作により、巻付完了ライナーL1と新しいライナーL2との交換が完了する。
【0057】
以上より、一対の把持治具83によって巻付完了ライナーL1及び新しいライナーL2を同時に把持できる。これにより、巻付完了ライナーL1及び新しいライナーL2を必要に応じて同時に移動させることができる。したがって、ライナーLの交換時間を短縮できる。
【0058】
また、ライナー交換装置70は回動駆動部95を備える。これにより、一対の把持治具83が平行移動しかできない構成と比べて、狭い移動スペースにおいてもライナーLを移動させることができる。
【0059】
また、第1仮想線分VL1と第2仮想線分VL2とのなす角(角度θ1)は、180°よりも小さい。このため、ライナー交換装置70に一度に把持されている2つのライナーL間の距離を極力短くすることができる。これにより、巻付完了ライナーL1を支持ユニット30から取り外して新しいライナーL2を支持ユニット30に取り付ける際、新しいライナーL2の移動距離を極力短くすることができる。したがって、ライナーLの交換時間を短縮できる。
【0060】
また、制御装置5は、巻付完了ライナーL1を把持している第1クランプ92を、新しいライナーL2を把持している第2クランプ93よりも常に下側に位置させるように回動駆動部95を制御する。これにより、繊維束Fが巻き付けられて重量が増加した巻付完了ライナーL1を重力に逆らって高い位置に持ち上げることを極力回避できる。したがって、回動駆動部95への負荷を軽減できる。
【0061】
また、制御装置5は、ボールねじ機構84を制御して一対の把持治具83を移動させながら、回動駆動部95を制御して一対の把持治具83を回動させる。したがって、一対の把持治具83の平行移動と回動とを別々のタイミングで行う場合と比べて、ライナーLの交換時間を短縮できる。
【0062】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0063】
(1)前記実施形態において、制御装置5は、ボールねじ機構84を制御して一対の把持治具83を移動させながら、回動駆動部95を制御して一対の把持治具83を回動させるものとした。しかしながら、これには限られない。制御装置5は、ボールねじ機構84及び回動駆動部95を別々のタイミングで制御しても良い。
【0064】
(2)前記までの実施形態において、制御装置5は、巻付完了ライナーL1を把持している第1クランプ92を、新しいライナーL2を把持している第2クランプ93よりも常に下側に位置させるように回動駆動部95を制御するものとした。しかしながら、これには限られない。制御装置5は、巻付完了ライナーL1を把持している第1クランプ92を、新しいライナーL2を把持している第2クランプ93よりも上側に移動させても良い。
【0065】
(3)前記までの実施形態において、第1仮想線分VL1と第2仮想線分VL2とのなす角は、180°よりも小さいものとした。しかしながら、これには限られない。当該角度は180°であっても良い。但し、この場合、ライナーLが一対のアーム部73と干渉しないように、制御等を工夫することが求められる。
【0066】
(4)前記までの実施形態において、把持治具83の回動部材91は略L字形であるものとした。しかしながら、回動部材91の形状はこれには限られない。回動部材91は、例えば略棒状又は略円板状等の形状を有していても良い。
【0067】
(5)前記までの実施形態において、ライナー交換装置70は回動駆動部95を備えるものとした。しかしながら、これには限られない。ライナー交換装置70は、一対の把持治具83を平行移動のみさせるように構成されていても良い。
【0068】
(6)前記までの実施形態において、一対の把持治具83は、前後方向において一対の伸縮部82及び一対の距離調節部81よりも外側に配置されているものとした。しかしながら、これには限られない。一対の把持治具83は、前後方向において一対の伸縮部82及び一対の距離調節部81よりも内側に配置されていても良い。
【0069】
(7)前記までの実施形態において、一対のアーム部73は、前後方向に相対移動可能な一対の距離調節部81を有するものとした。しかしながら、これには限られない。前後方向において、一対のアーム部73間の距離は固定されていても良い。
【0070】
(8)前記までの実施形態において、ライナー交換装置70は、左右方向に伸縮可能な一対のアーム部73を有するものとした。しかしながら、これには限られない。ライナー交換装置70全体が、例えば、左右方向に走行可能に構成されていても良い。この場合でも、一対の把持治具83を左右方向に移動させることが可能である。
【0071】
(9)前記までの実施形態において、ライナー昇降装置60がライナーLを昇降させるものとした。しかし、これには限られない。ライナー昇降装置60の代わりに、単にライナーLが載置される載置部(不図示)が設けられていても良い。この場合、例えば、ライナー交換装置70が一対の把持治具83を載置部に対して昇降させるように構成されていても良い。
【0072】
(10)前記までの実施形態において、前後方向が本発明のライナー軸方向に相当するものとした。しかしながら、これには限られない。ライナー軸方向は、水平方向の成分を有していれば、前後方向に対して傾きを有していても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 フィラメントワインディング装置
5 制御装置(制御部)
30 支持ユニット(支持装置)
83 把持治具
84 ボールねじ機構(移動駆動部)
92 第1クランプ
93 第2クランプ
94 回動軸
95 回動駆動部
F 繊維束
L ライナー
L1 巻付完了ライナー(第1ライナー)
L2 新しいライナー(第2ライナー)
PC 点
P1 点
P2 点
VL1 第1仮想線分
VL2 第2仮想線分
θ1 角度