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特開2024-171560破面解析方法、破面解析装置、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171560
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】破面解析方法、破面解析装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088630
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中原 瞬
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢二
(72)【発明者】
【氏名】川畠 竜
(72)【発明者】
【氏名】金子 秀明
(72)【発明者】
【氏名】古結 義浩
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051BA02
2G051CB01
2G051EA08
2G051EA11
2G051EA12
2G051EA16
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】観察者の技量に依存することなく、破面上のビーチマークを安定して識別する。
【解決手段】破面解析方法は、構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得するステップと、取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定するステップと、前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得するステップと、
取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、
前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、
前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定するステップと、
前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するステップと、を含む破面解析方法。
【請求項2】
前記破面画像の情報を取得するステップでは、光源の位置の異なる複数の前記破面画像の情報をさらに取得し、
前記差分を算出するステップでは、前記差分を、複数の前記破面画像の情報において、同じ位置を含むように算出する請求項1に記載の破面解析方法。
【請求項3】
前記ビーチマークの位置情報を取得するステップは、
前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置を合格位置とし、複数の前記破面画像の情報ごとに、前記合格位置の位置情報を取得するステップと、
取得された前記合格位置の中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた基準回数を満たした前記合格位置の位置情報を前記ビーチマークの位置情報として取得するステップとをさらに有する請求項1又は2に記載の破面解析方法。
【請求項4】
前記進展方向輝度分布情報を取得するステップでは、前記き裂進展方向に対して直交する直交方向に所定幅を有する領域で、前記進展方向輝度分布情報を取得する請求項1又は2に記載の破面解析方法。
【請求項5】
前記破面画像の情報から、予め定めた楕円線状模様を検出し、前記楕円線状模様が検出された模様検出位置の位置情報を取得するステップと、をさらに含み、
前記ビーチマークの位置情報を取得するステップは、前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置と前記模様検出位置とが一致している位置の位置情報を前記ビーチマークの位置情報として取得する請求項1又は2に破面解析方法。
【請求項6】
構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得する画像取得部と、
取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得する輝度分布取得部と、
前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得する差分取得部と、
前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定する判定部と、
前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するビーチマーク取得部と、を備える破面解析装置。
【請求項7】
コンピュータに、
構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得するステップと、
取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、
前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、
前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定するステップと、
前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するステップと、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、破面解析方法、破面解析装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料や複合材の損傷度合いを計測するために、疲労破壊後の材料の破面を検査する方法がある。疲労破壊後の材料の破面には、材料が使用されていた環境下での負荷変動等に対応した貝殻模様状のビーチマークが形成される。このようなビーチマークの観察は、外観画像やSEM画像上での目視観察により行われている。外観画像やSEM画像上での目視観察は、観察者の技量によって検出結果に差が生じやすいため、様々な現場で、目視観察に寄らない表面性状の検査方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の表面性状検査装置では、機械加工鋼材の表面検査を行う表面性状検査装置が記載されている。この表面性状検査装置では、線状のレーザ光が照射された被検査体の表面を撮像し、撮像した画像に対して画像処理を行っている。具体的には、複数の画像における線状のレーザ光の照射部分に対応する線分である光切断線を配列させた縞画像フレームに基づいて、被検査体の表面の凹凸状態を表す深さ画像と、表面における線状のレーザ光の輝度分布を表す輝度画像等とを利用している。そして、これらの画像のデータから、地肌残存部又は錆が、被検査体の表面に存在しているか否かを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-48979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、破面に形成されるビーチマークは、貝殻模様状に形成されるが、単純な画像処理だけでは、破面自身の凹凸と区別がしづらい場合がある。具体的には、ビーチマークによる凹凸も破面上の凹凸であるため、破面自身の微小な凹凸と区別して、ビーチマークの凹凸だけを識別することが難しい。そのため、ビーチマークの識別には、まだ観察者の技量に依存する側面が大きく、観察者の技量によっては、識別作業に多くの時間や手間を費やす恐れや客観性を欠いた結論を導く可能性がある。そのため、破面上のビーチマークを安定して識別することが求められている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、観察者の技量に依存することなく、破面上のビーチマークを安定して識別可能な破面解析方法、破面解析装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る破面解析方法は、構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得するステップと、取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定するステップと、前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するステップと、を含む。
【0008】
また、本開示に係る破面解析装置は、構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得する画像取得部と、取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得する輝度分布取得部と、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得する差分取得部と、前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定する判定部と、前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するビーチマーク取得部と、を備える。
【0009】
また、本開示に係るプログラムは、コンピュータに、構造物の破面を撮影した少なくとも一つの破面画像の情報を取得するステップと、取得した前記破面画像の情報に基づいて、前記破面画像における前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、前記差分の絶対値が予め定めた基準値を満たしているか否かを判定するステップと、前記基準値を満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像におけるビーチマークの位置情報を取得するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の破面解析方法、破面解析装置、及びプログラムによれば、観察者の技量に依存することなく、破面上のビーチマークを安定して識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る解析対象物を示す模式図である。
図2】第一実施形態に係る破面解析方法の構成を示すフロー図である。
図3】本実施形態に係る破面画像を示す模式図である。
図4A】本実施形態に係る第一の破面画像を示す写真である。
図4B】本実施形態に係る第一の破面画像に対応する検出位置と輝度や差分の絶対値との関係をまとめたグラフである。
図5A】本実施形態に係る第二の破面画像を示す写真である。
図5B】本実施形態に係る第二の破面画像に対応する検出位置と輝度や差分の絶対値との関係をまとめたグラフである。
図6A】本実施形態に係る第三の破面画像を示す写真である。
図6B】本実施形態に係る第三の破面画像に対応する検出位置と輝度や差分の絶対値との関係をまとめたグラフである。
図7A】本実施形態に係る第四の破面画像を示す写真である。
図7B】本実施形態に係る第四の破面画像に対応する検出位置と輝度や差分の絶対値との関係をまとめたグラフである。
図8】第一実施形態に係る破面解析装置の構成を示す模式図である。
図9】第二実施形態に係る破面解析方法の構成を示すフロー図である。
図10】第二実施形態に係る検出位置及び輝度の関係をまとめたグラフと、楕円線状模様と、破面画像との関係を表す図である。
図11】第二実施形態に係る破面解析装置の構成を示す模式図である。
図12】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示による破面解析方法、破面解析装置、及びプログラムを実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
<第一実施形態>
(解析対象物)
破面解析方法S1は、構造物の破面FSの画像の情報から破面FS上のビーチマークBMの情報を取得する方法である。破面解析方法S1は、例えば、図1に示すような解析対象物AOを構造物として、実施される。解析対象物AOは、蒸気タービンやガスタービン等の回転機械で一定の時間使用された部品を模している。解析対象物AOは、回転機械で所定時間経過後の部品に疲労破壊が生じた状態を再現した構造物である。解析対象物AOの破面FSには、疲労破壊によって生じる複数のビーチマークBMが形成されている。ビーチマークBMとは、疲労破壊した部品の破面FSに生じる貝殻状の模様である。ビーチマークBMは、実機の疲労破壊で繰り返し荷重の大きさが変化することで、荷重が変化した時点でのき裂前縁の位置が破面FS上に縞模様として残されたものである。ビーチマークBMは、一つの破面FSに対して狭い間隔で数百本形成される。
【0014】
なお、構造物は、本実施形態のように回転機械で使用される部品を模した解析対象物AOであることに限定されるものではない。構造物は、例えば、実際に、回転機械で使用されて破損した部品の一部であってもよい。
【0015】
(破面解析方法)
図2を参照して、第一実施形態の破面解析方法S1について説明する。本実施形態の破面解析方法S1は、破面解析装置1(図8参照)を用いて実施される。破面解析方法S1は、解析対象物AOの破面FSを撮影した少なくとも一つの破面画像FGの情報を用いてビーチマークBMの位置情報を取得する。第一実施形態の破面解析方法S1は、図2に示すように、画像取得ステップS2と、輝度分布取得ステップS3と、差分取得ステップS4と、判定ステップS5と、ビーチマーク取得ステップS6とを含んでいる。
【0016】
画像取得ステップS2では、解析対象物(構造物)AOの破面FSを撮影した少なくとも一つの破面画像FGの情報が取得される。画像取得ステップS2では、例えば、図3に模式化して示すように、デジタルマイクロスコープによって撮影された破面FSの破面画像FGの情報が取得される。第一実施形態では、図1に示しように、光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGの情報が取得される。つまり、異なる位置に配置された光源LSから同じ破面FSを照らした場合の破面画像FGの情報が取得される。本実施形態では、均等に離れた四か所の位置に配置された光源LS1、LS2,LS3,及びLS4によって一つの破面FSがそれぞれ照らされた四つのパターンの破面画像FGの情報が取得される。したがって、本実施形態では、図4Aに示す第一の光源LS1で照らした第一の破面画像FGと、図5Aに示す第二の光源LS2で照らした第二の破面画像FGと、図6Aに示す第三の光源LS3で照らした第三の破面画像FGと、図7Aに示す第四の光源LS4で照らした第四の破面画像FGとの情報がそれぞれ取得される。
【0017】
図2に示すように、輝度分布取得ステップS3では、画像取得ステップS2で取得した破面画像FGの情報に基づいて輝度の分布情報が取得される。具体的には、破面画像FGにおける解析対象物AOに生じたき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報が取得される。本実施形態では、図1及び図3におけるX方向をき裂進展方向としている。また、進展方向輝度分布情報は、き裂進展方向に対して直交する直交方向(図1及び図3のY方向)に所定幅を有する領域で取得される。つまり、図3に示すように、進展方向輝度分布情報は、破面画像FG中の一部の矩形状の所定の領域である輝度取得領域LAでの輝度の分布情報として取得される。その際、直交方向については、例えば、平均化した輝度の情報値が取得される。
【0018】
なお、直交方向の所定幅は、き裂進展方向の破面画像FGの長さに対して短い長さが設定されることが好ましい。直交方向の所定幅は、ビーチマークBMの曲線の影響を受けずに、直線に近似可能な範囲に設定されることが好ましい。直交方向の所定幅は、例えば、50ピクセル~300ピクセルの範囲内が好ましい。本実施形態の直交方向の所定幅は、200ピクセルとされている。
【0019】
また、輝度分布取得ステップS3では、輝度取得領域LAでの輝度とき裂進展方向での検出位置との関係として、進展方向輝度分布情報が取得される。また、取得された輝度取得領域LAでの進展方向輝度分布情報は、図4B図5B図6B及び図7Bの上部のグラフのように、縦軸が輝度値で、横軸がき裂進展方向での検出位置のグラフとして取得される。
【0020】
さらに、輝度分布取得ステップS3では、画像取得ステップS2で取得された複数の破面画像FGに対して進展方向輝度分布情報がそれぞれ取得される。つまり、一つの破面画像FGに対して対応する一つの進展方向輝度分布情報が取得され、破面画像FGの数と同数の進展方向輝度分布情報が取得される。その際、複数の破面画像FGに対して、き裂進展方向において同じ検出位置で輝度の情報が取得される。
【0021】
図2に示すように、差分取得ステップS4では、輝度分布取得ステップS3で取得した進展方向輝度分布情報に基づいて、き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分が算出されて取得される。具体的には、差分取得ステップS4では、き裂進展方向での任意の検出位置(X1)と、き裂進展方向において任意の検出位置に対して所定の間隔(α)だけ離れた検出位置(X1+α)の差分の絶対値が算出される。この差分の絶対値をき裂進展方向に連続して取得することで、輝度取得領域LAの全域での輝度の差分の情報が取得される。差分取得ステップS4では、進展方向輝度分布情報から、差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報を取得する。また、取得された差分の情報は、図4B図5B図6B及び図7Bの下部のグラフのように、縦軸が差分絶対値で、横軸がき裂進展方向の検出位置のグラフとして取得される。
【0022】
さらに、差分取得ステップS4では、輝度分布取得ステップS3で取得された複数の進展方向輝度分布情報に対して、輝度取得領域LAの全域での差分の絶対値の情報がそれぞれ取得される。つまり、一つの進展方向輝度分布情報に対して対応する一つの差分の情報が取得され、進展方向輝度分布情報の数と同数の輝度取得領域LAでの差分の情報が取得される。その際、複数の進展方向輝度分布情報に対して、き裂進展方向に連続した差分の絶対値の情報が算出される。これにより、差分取得ステップS4では、差分の絶対値が、複数の破面画像FGの情報において、き裂進展方向において同じ検出位置を含むように算出される。
【0023】
図2に示すように、判定ステップS5では、差分取得ステップS4で取得された差分の絶対値が予め定めた基準値BV(例えば、図4B参照)を満たしているか否かが判定される。具体的には、判定ステップS5では、輝度の差分の絶対値が基準値BVを満たして超えているか否かが、輝度取得領域LAの全域にわたって、判定される。基準値BVは、輝度の差がビーチマークBMとみなせると値であって、事前に設定される。つまり、輝度の差が小さく基準値BVを下回っている値となっている箇所では、ビーチマークBMではなく単純な破面FS自身の微小な凹凸Zである可能性が高くなっている。判定結果の情報は、図4B図5B図6B及び図7Bの下部のグラフに示すように、差分取得ステップS4で取得した縦軸が差分の絶対値で横軸がき裂進展方向の距離のグラフに対して、基準値BVを超えた山として取得される。
【0024】
さらに、判定ステップS5では、差分取得ステップS4で取得された複数の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報に対してそれぞれ判定が実施される。つまり、輝度取得領域LAでの差分の情報の数と同数の判定結果の情報が取得される。これにより、判定ステップS5では、判定結果が、複数の破面画像FGの情報においてそれぞれ取得される。
【0025】
図2に示すように、ビーチマーク取得ステップS6では、判定ステップS5で取得され、基準値BVを満たしていると判定された検出位置の位置情報から破面画像FGにおけるビーチマークBMの位置情報が取得される。具体的には、ビーチマーク取得ステップS6では、基準値BVを超えた差分の絶対値を有する検出位置がビーチマークBMの位置として取得される。より具体的には、本実施形態のビーチマーク取得ステップS6は、合格位置取得ステップS61と、真ビーチマーク取得ステップS62、S620とを含んでいる。
【0026】
合格位置取得ステップS61では、複数の破面画像FGの情報ごとに、合格位置Pの位置情報が取得される。合格位置Pとは、図4B図5B図6B及び図7Bに示すように、判定結果の情報に含まれ、基準値BVを満たしていると判定された検出位置である。したがって、合格位置取得ステップS61では、判定ステップS5で取得された判定結果において、基準値BVを超えた検出位置が合格位置Pとして取得される。加えて、複数の判定結果に対して、それぞれ合格位置Pが取得される。つまり、ある判定結果で合格位置Pとされた検出位置と同じ位置であっても、別の判定結果では、基準値BVを超えずに合格位置Pとにみなせない場合がある。
【0027】
図2に示すように、真ビーチマーク取得ステップS62では、合格位置取得ステップS61で取得された合格位置Pの中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた基準回数(例えば二回)を満たした合格位置Pの位置情報が、ビーチマークBMの位置情報として取得される。予め定めた基準回数とは、異なる位置の複数の光源LSから破面FSをそれぞれ照らした場合に、どの位置から照らしてもビーチマークBMとみなせると判断可能な回数である。本実施形態の真ビーチマーク取得ステップS62では、複数の判定結果で取得された複数の合格位置Pの中で複数回にわたって同じ検出位置(き裂進展方向で同じ位置)となっている合格位置Pの登場頻度の情報が取得される。図4B図5B図6B及び図7Bに示すように、同じ検出位置での登場頻度が基準回数を超えている検出位置の情報を合格位置Pの中でも真合格位置TPとして取得する。その後、真合格位置TPがビーチマークBMの位置として取得される。
【0028】
(破面解析装置)
次に、破面解析方法S1を適用した破面解析装置1について説明する。図8に示すように、破面解析装置1は、画像撮影部2と、制御部5と、画像表示部3とを備える。
【0029】
画像撮影部2は、解析対象物AOの破面FSを撮影して取得可能とされている。画像撮影部2は、撮影した破面画像FGの情報を制御部5に送る。本実施形態の画像撮影部2は、例えば、破面画像FGを取得可能なデジタルマイクロスコープである。
【0030】
制御部5は、取得した破面画像FGの情報から破面FS上のビーチマークBMの情報を取得する。制御部5は、画像取得部51と、輝度分布取得部52と、差分取得部53と、判定部54と、ビーチマーク取得部55と、出力部58とを有している。
【0031】
画像取得部51は、解析対象物AOの破面FSを撮影した少なくとも一つの破面画像FGの情報を取得可能とされている。本実施形態の画像取得部51は、画像撮影部2で撮影された破面画像FGの情報を取得する。画像取得部51は、光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGの情報を取得する。その際、画像取得部51は、画像撮影部2で光源LSの位置を変更して撮影した複数の破面画像FGの情報を取得してもよく、画像撮影部2で一つの光源LSの位置で撮影した一つの破面画像FGの情報に画像処理を行って異なる位置に配置された光源LSを模した複数の破面画像FGの情報を取得してもよい。本実施形態の画像取得部51は、画像撮影部2とともに、画像取得ステップS2を実行する。したがって、画像取得部51は、第一の破面画像FGと、第二の破面画像FGと、第三の破面画像FGと、第四の破面画像FGとの情報を取得する。また、画像取得部51は、取得した複数の破面画像FGの情報を輝度分布取得部52及び出力部58に送る。
【0032】
なお、画像取得部51は、画像撮影部2のように外部のカメラからの破面画像FGの情報を取得して取り込むインターフェースであってもよく、外部のカメラではなく、自ら破面画像FGを撮影して画像データを取り込む装置であってもよい。
【0033】
輝度分布取得部52は、取得した破面画像FGの情報に基づいて、破面画像FGにおけるき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得する。輝度分布取得部52は、画像取得部51から少なくとも一つの破面画像FGの情報を取得する。本実施形態の輝度分布取得部52は、輝度分布取得ステップS3を実行する。したがって、輝度分布取得部52は、第一の破面画像FGと、第二の破面画像FGと、第三の破面画像FGと、第四の破面画像FGとから、輝度取得領域LAでの進展方向輝度分布情報をそれぞれ取得する。また、輝度分布取得部52は、取得した複数の進展方向輝度分布情報の情報を差分取得部53及び出力部58に送る。
【0034】
差分取得部53は、進展方向輝度分布情報に基づいて、き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得する。差分取得部53は、輝度分布取得部52から進展方向輝度分布情報を取得する。差分取得部53は、差分の絶対値をき裂進展方向に連続して取得することで、輝度取得領域LAの全域での輝度の差分の情報を取得する。本実施形態の差分取得部53は、差分取得ステップS4を実行する。したがって、差分取得部53は、四つの破面画像FGにそれぞれ対応する四つの進展方向輝度分布情報から、差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報を取得する。また、差分取得部53は、取得した複数の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報を判定部54及び出力部58に送る。
【0035】
判定部54は、差分の絶対値が予め定めた基準値BVを満たしているか否かを判定する。差分配転部は、差分取得部53から差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報を取得する。判定部54は、輝度取得領域LAの全域で、差分の絶対値が基準値BVを満たしているか否かを判定する。本実施形態の判定部54は、判定ステップS5を実行する。したがって、判定部54は、差分取得部53から取得された複数の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報に対して、それぞれ判定を実施する。また、判定部54は、取得した複数の判定結果の情報をビーチマーク取得部55及び出力部58に送る。
【0036】
ビーチマーク取得部55は、基準値BVを満たしていると判定された検出位置の位置情報から破面画像FGにおけるビーチマークBMの位置情報を取得する。ビーチマーク取得部55は、基準値BVを超えた差分の絶対値を有する検出位置をビーチマークBMの位置として取得する。ビーチマーク取得部55は、ビーチマーク取得ステップS6を実行する。本実施形態のビーチマーク取得部55は、合格位置取得部56と、真ビーチマーク取得部57とを有している。
【0037】
合格位置取得部56は、基準値BVを満たしていると判定された検出位置を合格位置Pとして取得する。合格位置取得部56は、判定部54から判定結果の情報を取得する。合格位置取得部56は、複数の破面画像FGの情報ごとに、合格位置Pの位置情報を取得する。本実施形態の合格位置取得部56は、合格位置取得ステップS61を実行する。合格位置取得部56は、複数の判定結果に対して、それぞれ合格位置Pを取得する。また、合格位置取得部56は、取得した複数の合格位置Pの情報を真ビーチマーク取得部57及び出力部58に送る。
【0038】
真ビーチマーク取得部57は、取得された合格位置Pの中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた基準回数を満たした合格位置Pの位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得する。具体的には、真ビーチマーク取得部57は、合格位置取得部56から合格位置Pの情報を取得する。本実施形態の真ビーチマーク取得部57は、真ビーチマーク取得ステップS62を実行する。真ビーチマーク取得部57は、合格位置取得部56で取得された複数の合格位置Pの中で複数回にわたって同じ検出位置となっている合格位置Pの回数が登場頻度の情報として取得される。真ビーチマーク取得部57は、登場頻度が基準回数を超えている検出位置の情報を、合格位置Pの中でも真合格位置TPとして取得する。その後、真ビーチマーク取得部57は、真合格位置TPをビーチマークBMの位置として取得する。また、真ビーチマーク取得部57は、取得した複数のビーチマークBMの位置の情報を出力部58に送る。
【0039】
出力部58は、取得した各種情報を外部の表示部に出力する。出力部58は、画像取得部51で取得した複数の破面画像FGの情報を取得する。出力部58は、輝度分布取得部52で取得した複数の進展方向輝度分布情報の情報を取得する。出力部58は、差分取得部53で取得した複数の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報を取得する。出力部58は、判定部54で取得した複数の判定結果の情報を取得する。出力部58は、合格位置取得部56で取得した複数の合格位置Pの情報を取得する。出力部58は、真ビーチマーク取得部57で取得された真合格位置TPに基づくビーチマークBMの位置の情報を取得する。
【0040】
画像表示部3は、出力部58から取得した各種情報を表示する。画像表示部3は、例えば、モニタやプリンタ等が挙げられる。
【0041】
次に、第一実施形態に係る破面解析装置1を利用した破面解析方法S1の手順について説明する。まず、図1に示すような解析対象物AOが準備される。その後、画像取得ステップS2が実施される。具体的には、まず、画面撮影部によって、一つの光源LSの位置で、解析対象物AOの破面FSが撮影される。これにより、一つの破面画像FGが取得される。取得した破面画像FGは制御部5の画像取得部51に取り込まれる。画像取得部51では、取得した一つの破面画像FGの情報に画像処理を行って異なる位置に配置された光源LSを模した複数の破面画像FGの情報を取得する。これにより、第一の破面画像FG(図4A参照)と、第二の破面画像FG(図5A参照)と、第三の破面画像FG(図6A参照)と、第四の破面画像FG(図7A参照)との情報が取得される。
【0042】
複数の破面画像FGが取得された後に、輝度分布取得ステップS3が実施される。具体的には、輝度分布取得部52によって、第一の破面画像FGと、第二の破面画像FGと、第三の破面画像FGと、第四の破面画像FGとから、輝度取得領域LAでの進展方向輝度分布情報がそれぞれ取得される(図4B図5B図6B及び図7B参照)。例えば、図4Aに示す第一の破面画像FGを例に挙げて説明すると、第一の破面画像FGに対応する輝度取得領域LAでの進展方向輝度分布情報は、図4Bの上部のグラフのように、縦軸が輝度値で、横軸がき裂進展方向での検出位置のグラフとして取得される。
【0043】
複数の進展方向輝度分布情報が取得された後に、差分取得ステップS4が実施される。具体的には、差分取得部53によって、差分の絶対値をき裂進展方向に連続して取得することで、輝度取得領域LAの全域での輝度の差分の情報が取得される。また、四つの破面画像FGにそれぞれ対応する四つの進展方向輝度分布情報から、輝度の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報が取得される。例えば、図4Aに示す第一の破面画像FGを例に挙げて説明すると、第一の破面画像FGに対応する差分の絶対値が、図4Bの下部のグラフのように、縦軸が差分絶対値で、横軸がき裂進展方向での検出位置のグラフとして取得される。さらに、差分の絶対値がき裂進展方向に連続して取得されることで、例えば、検出位置a~hのように、異なる複数の進展方向輝度分布情報の全てに対して、き裂進展方向において同じ検出位置a~hを含むように差分の絶対値の情報が取得される。
【0044】
複数の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報が取得された後に、判定ステップS5が実施される。具体的には、判定部54によって、差分の絶対値が基準値BVを満たして超えているか否かを輝度取得領域LAの全域にわたって判定する。判定は、取得された複数の差分の絶対値とき裂進展方向の検出位置との関係の情報に対して、それぞれで実施される。例えば、図4Aに示す第一の破面画像FGを例に挙げて説明すると、検出位置a~hの中で、基準値BVを超えている検出位置は、検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hとなっている。したがって、判定ステップS5では、検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hが基準値BVを満たし、検出位置d、検出位置e、及び、検出位置fが基準値BVを満たしていないとの判定結果が取得される。同様に、他の破面画像FG(第二の破面画像FGから第四の破面画像FG)に対して、同様に判定がなされて判定結果が取得される。
【0045】
複数の判定結果が取得された後にビーチマーク取得ステップS6がビーチマーク取得部55によって実施される。本実施形態では、ビーチマーク取得ステップS6では、合格位置取得ステップS61と、真ビーチマーク取得ステップS62とが実施される。具体的には、まず、合格位置取得部56によって、判定結果において、基準値BVを超えた検出位置が合格位置Pとして取得される。つまり、図4Bに示すように、第一の破面画像FGを例に挙げて説明すると、検出位置a~hの中で、検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hが合格位置Pとなる。
【0046】
合格位置Pが取得された後に、真ビーチマーク取得ステップS62が実施される。具体的には、真ビーチマーク取得部57によって、取得された合格位置Pである検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hの中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた回数を満たした合格位置Pの位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得する。本実施形態では、図4B図5B図6B及び図7Bに示すように、検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hの全てが常に、合格位置Pとなっている。したがって、検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hの全てが、四回登場し、予め定めた二回という基準回数を超えている。そのため、検出位置a、検出位置b、検出位置c、検出位置g、及び、検出位置hの全てを真合格位置TPとして取得する。その後、真ビーチマーク取得部57は、真合格位置TPをビーチマークBMの位置として取得する。このようにして、ビーチマークBMの位置が得られる。得られたビーチマークBMの位置の情報から破面FSにおけるビーチマークBMの本数や間隔に関する情報が得られる。その結果、ビーチマークBMの本数や間隔が得られることで、構造物におけるき裂の進展状況が把握できる。これにより、き裂の進展状況と、回転機械の運転時間や荷重の関係を組み合わせることで、回転機械における構造物の破壊の原因等を解析することができる。
【0047】
(作用効果)
上記構成の破面解析方法S1及び破面解析装置1では、解析対象物AOの破面FSの画像である破面画像FGに対して進展方向輝度分布情報が取得されている。これにより、破面画像FGにおけるき裂進展方向の輝度の分布情報が取得できる。さらに、進展方向輝度分布情報に基づいて、き裂進展方向での輝度の差分の絶対値を取得している。この差分の絶対値を、輝度の差がビーチマークBMとみなせる基準値BVに基づいて判定することで、ビーチマークBMの位置情報を取得している。そのため、破面FSを観察者が直接目視で確認することなく、破面画像FG中のデジタルデータである輝度の情報を利用して、定量的にビーチマークBMを検出できる。したがって、観察者の技量に依存することなく、破面FS上のビーチマークBMを安定して識別できる。
【0048】
また、一つ破面FSに対して、一つのみではなく、複数の異なる位置の光源LSで照らされた複数の破面画像FGが取得されている。具体的には、第一の光源LS1で照らした第一の破面画像FGと、第二の光源LS2で照らした第二の破面画像FGと、第三の光源LS3で照らした第三の破面画像FGと、第四の光源LS4で照らした第四の破面画像FGとの情報がそれぞれ取得される。つまり、一つの破面FSが異なる方向から見た複数の破面画像FGを得られる。さらに、複数の破面画像FGに対して、き裂進展方向での輝度の差分が同じ位置を含むように算出されている。破面FS上のビーチマークBMは、光の当たり方で見え方が変わるため、一つの光源LSで照らした場合に輝度差が小さく見にくいが、別の位置に配置された光源LSで照らした場合には輝度差が大きく見やすくなっていることがある。本実施形態のように、光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGに対して、同じ位置を含むように輝度の差分の情報を取得すること、光源LSの照射方向を変えて見づらいビーチマークBMも見逃しづらくなる。
【0049】
さらに、基準値BVを満たしていると判定された検出位置を合格位置Pとし、光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGごとに、合格位置Pの位置情報が取得されている。そして、複数の合格位置Pの中で同じ位置での登場頻度が基準回数を満たした合格位置Pの位置情報が、ビーチマークBMの位置情報として取得されている。そのため、複数の破面画像FGにおいて、長めの傷やごみ等が映り込んでしまって誤ってビーチマークBMと判断されそうになっても、登場頻度を判定することで高い精度でビーチマークBMを識別することができる。
【0050】
また、進展方向輝度分布情報は、き裂進展方向に延びる一本の直線状ではなく、き裂進展方向に対して直交方向に所定幅を有する輝度取得領域LAで取得されている。つまり、き裂進展方向だけでなく直交方向にも広がる領域で輝度の分布情報を取得できる。このような輝度取得領域LAでの進展方向輝度分布情報を利用することで、線状になっていない傷等の破面FS自身の微小な凹凸Zが誤ってビーチマークBMと判断されてしまうことを抑制できる。したがって、より高い精度でビーチマークBMを識別することができる。
【0051】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る第二実施形態の破面解析方法S10及び破面解析装置10について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、ビーチマークBMの形状を検出する点で第一実施形態と異なっている。
【0052】
第二実施形態の破面解析方法S10は、ビーチマークBMに近しい形状を破面画像FGから検出して、ビーチマークBMの取得に利用する。図9に示すように、第二実施形態の破面解析方法S10は、模様検出位置取得ステップS70をさらに含んでいる。
【0053】
図10に示すように、模様検出位置取得ステップS70では、画像取得ステップS2で取得した破面画像FGの情報から、予め定めた楕円線状模様EMが検出される。その後、楕円線状模様EMが検出された模様検出位置の位置情報が取得される。具体的には、破面画像FG上で特定のパターンとしてビーチマークBMの形状特徴である楕円線状模様EMを検出する。楕円線状模様EMは、例えば、直交方向に延びており、き裂進展方向に突出するように湾曲した模様である。これにより、ビーチマークBMが形成されていることが明確に目視できる箇所が楕円線状模様EMとして検出される。一方で、破面FS上の傷のようなビーチマークBMと異なる破面FS自身の微小な凹凸Zについては、楕円線状模様EMとして検出されない。検出手法としては、画像の中から直線や円の要素を持つオブジェクトを検出するハフ変換のような画像処理や、機械学習が適用される。また、検出対象域は、破面画像FGにおける輝度取得領域LAと同じ範囲が設定されることが好ましい。
【0054】
また、第二実施形態の真ビーチマーク取得ステップS620では、基準値BVを満たしていると判定された検出位置と、模様検出位置とが一致しているか否かが判定される。具体的には、真ビーチマーク取得ステップS620では、合格位置取得ステップS61で取得された合格位置Pの情報が取得される。これにより、基準値BVを満たしていると判定された検出位置の情報である合格位置Pの情報が取得される。また、真ビーチマーク取得ステップS620では、模様検出位置取得ステップS70で取得された模様検出位置の情報が取得される。取得された合格位置Pの情報と、模様検出位置の情報とを比較し、重複する位置の位置情報が、ビーチマークBMの位置情報として取得される。
【0055】
また、合格位置Pは、全ての合格位置Pの情報と、模様検出位置の情報とを比較することに限定されるものではない。例えば、第一実施形態のように、合格位置取得ステップS61で取得された合格位置Pの中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた回数を満たした真合格位置TPの位置情報と模様検出位置の情報とを比較してもよい。
【0056】
(破面解析装置10)
次に、第二実施形態の破面解析方法S10を適用した破面解析装置10について説明する。図11に示すように、第二実施形態の破面解析装置10は、制御部50の構成が第一実施形態と異なる。
【0057】
第二実施形態の制御部50は、模様検出部70をさらに有している。模様検出部70は、破面画像FGの情報から、予め定めた楕円線状模様EMを検出する。模様検出部70は、画像取得部51から少なくとも一つの破面画像FGの情報を取得する。本実施形態の模様検出部70は、模様検出位置取得ステップS70を実行する。したがって、模様検出部70は、第一の破面画像FGと、第二の破面画像FGと、第三の破面画像FGと、第四の破面画像FGとから、楕円線状模様EMを検出する。模様検出部70は、検出された楕円線状模様EMの位置である模様検出位置の位置情報を取得する。また、模様検出部70は、取得した複数の模様検出位置の位置情報をビーチマーク取得部55及び出力部58に送る。
【0058】
また、第二実施形態の真ビーチマーク取得部570は、基準値BVを満たしていると判定された検出位置と、模様検出位置とが一致しているか否かを判定する。本実施形態の真ビーチマーク取得部570は、真ビーチマーク取得ステップS620を実行する。具体的には、真ビーチマーク取得部570は、合格位置取得部56から合格位置Pの情報を取得する。また、真ビーチマーク取得部570は、模様検出位置取得部で取得された模様検出位置の情報を取得する。真ビーチマーク取得部570は、取得された合格位置Pの情報と、模様検出位置の情報とを比較し、重複する位置の位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得する。
【0059】
また、真ビーチマーク取得部570において、合格位置Pは、全ての合格位置Pの情報と、模様検出位置の情報とを比較することに限定されるものではない。例えば、第一実施形態のように、合格位置取得ステップS61で取得された合格位置Pの中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた回数を満たした真合格位置TPの位置情報と模様検出位置の情報とを比較してもよい。
【0060】
次に、第二実施形態に係る破面解析装置10を利用した破面解析方法S10について説明する。第二実施形態では、複数の破面画像FGが取得された後に、輝度分布取得ステップS3だけでなく、模様検出位置取得ステップS70も実施される。具体的には、模様検出位置取得部によって、第一の破面画像FGと、第二の破面画像FGと、第三の破面画像FGと、第四の破面画像FGとから、図10(b)のように、予め定めた楕円線状模様EMが検出される。その後、楕円線状模様EMが検出された模様検出位置の位置情報が取得される。
【0061】
その後、合格位置取得ステップS61を経て、真ビーチマーク取得ステップS620が実施される。第二実施形態の真ビーチマーク取得ステップS620では、真ビーチマーク取得部570によって、合格位置Pと模様検出位置とが一致しているか否かが判定される。真ビーチマーク取得部57,570は、合格位置Pの情報(図10(a))と、模様検出位置の情報(図10(b))とを比較し、重複する位置の位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得する。このようにして、楕円線状模様EMと重なった位置が、ビーチマークBMの位置として得られる。
【0062】
(作用効果)
第二実施形態の破面解析方法S10及び破面解析装置10では、破面画像FGを利用して、進展方向輝度分布情報だけでなく楕円線状模様EMが検出される。さらに、基準値BVを満たしていると判定された検出位置の情報である合格位置Pの情報と、模様検出位置の情報とを比較し、重複する位置の位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得している。そのため、破面FS上のビーチマークBMに近しい形状である楕円線状模様EMが形成されていて、輝度の差分が大きい箇所を把握することが出来る。したがって、ビーチマークBMと異なる汚れや破面FS自身の微小な凹凸Zの誤検出を抑制でき、より高い精度でビーチマークBMを識別することができる。
【0063】
なお、第二実施形態では、ビーチマークBMの取得に楕円線状模様EMが検出された模様検出位置の位置情報を利用したが、その際、第一実施形態と同様に合格位置Pの登場頻度の情報を合わせて利用してもよい。したがって、第二実施形態では、合格位置取得ステップS61(合格位置取得部56)では、登場頻度が基準回数を超えている検出位置の情報を、合格位置Pの中でも真合格位置TPとして取得してもよい。つまり、合格位置取得ステップS61(合格位置取得部56)では、真合格位置TPの情報と、模様検出位置の情報とを比較し、重複する位置の位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得してもよい。
【0064】
本開示の各実施形態について説明したが、上述の破面解析装置1、10は内部に、コンピュータ9を有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ9に読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ9が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ9の具体例を以下に示す。
【0065】
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータ9の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ9は、CPU(Central Processing Unit)91、メインメモリ92、ストレージ93、インターフェース94を備える。
【0066】
例えば、上述の破面解析装置1、10の制御部5、50のそれぞれは、コンピュータ9に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。CPU91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0067】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ9のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース94または通信回線を介してコンピュータ9に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ9に配信される場合、配信を受けたコンピュータ9が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0068】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ9にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0070】
ビーチマーク取得ステップS6(ビーチマーク取得部55)は、合格位置取得ステップS61(合格位置取得部56)と、真ビーチマーク取得ステップS62、S620(真ビーチマーク取得部57,570)とを含んでいることに限定されるものではない。ビーチマークBMの位置情報を取得する際には、判定結果に基づいて、基準値BVを満たしていると判定された検出位置の位置情報から破面画像FGにおけるビーチマークBMの位置情報が取得できればよい。したがって、ビーチマーク取得ステップS6(ビーチマーク取得部55)は、判定ステップS5の(判定部54)結果に基づいてビーチマークBMの位置情報を直接取得してもよい。
【0071】
また、破面解析方法S1,S10及び破面解析装置1、10は、光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGの情報を利用する構成に限定されるものではない。したがって、破面解析方法S1,S10及び破面解析装置1、10は、一つの光源LSで照らされた一つ破面画像FGの情報のみを利用する構成であってもよい。
【0072】
また、差分の判定時に利用される予め定める基準値BVは、常に一定の値であることに限定されるものではない。したがって、基準値BVは、複数回にわたって繰り返して、ビーチマークBMの位置情報を取得する際には、過去のデータを蓄積し、蓄積したデータに基づいて改定されてもよい。
【0073】
同様に、真合格位置TPを選択する際に利用される登場頻度に対して予め定める基準回数は、常に一定の値であることに限定されるものではない。したがって、基準回数は、複数回にわたって繰り返して、ビーチマークBMの位置情報を取得する際には、過去のデータを蓄積し、蓄積したデータに基づいて改定されてもよい。
【0074】
同様に、予め定める楕円線状模様EMは、常に一定の形状であることに限定されるものではない。したがって、楕円線状模様EMは、複数回にわたって繰り返して、ビーチマークBMの位置情報を取得する際には、過去のデータを蓄積し、蓄積したデータに基づいて改定されてもよい。
【0075】
<付記>
各実施形態に記載の破面解析方法S1,S10、破面解析装置1、10、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0076】
(1)第1の態様に係る破面解析方法S1,S10は、構造物の破面FSを撮影した少なくとも一つの破面画像FGの情報を取得するステップと、取得した前記破面画像FGの情報に基づいて、前記破面画像FGにおける前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、前記差分の絶対値が予め定めた基準値BVを満たしているか否かを判定するステップと、前記基準値BVを満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像FGにおけるビーチマークBMの位置情報を取得するステップと、を含む。
【0077】
このような構成によれば、構造物の破面FSの画像である破面画像FGに対して進展方向輝度分布情報が取得されている。これにより、破面画像FGにおけるき裂進展方向の輝度の分布情報が取得できる。さらに、進展方向輝度分布情報に基づいて、き裂進展方向での輝度の差分を取得している。この差分の絶対値を、基準値BVに基づいて判定することで、ビーチマークBMの位置情報を取得している。そのため、破面FSを観察者が直接目視で確認することなく、破面画像FG中のデジタルデータである輝度の情報を利用して、定量的にビーチマークBMを検出できる。したがって、観察者の技量に依存することなく、破面FS上のビーチマークBMを安定して識別できる。
【0078】
(2)第2の態様に係る破面解析方法S1,S10は、(1)の破面解析方法S1,S10であって、前記破面画像FGの情報を取得するステップでは、光源LSの位置の異なる複数の前記破面画像FGの情報をさらに取得し、前記差分を算出するステップでは、前記差分を、複数の前記破面画像FGの情報において、同じ位置を含むように算出する。
【0079】
このような構成によれば、異なる位置の光源LSで照らされた複数の破面画像FGが取得されている。さらに、複数の破面画像FGに対して、き裂進展方向での輝度の差分が同じ位置を含むように算出されている。破面FS上のビーチマークBMは、光の当たり方で見え方が変わるため、一つの光源LSで照らした場合に輝度差が小さく見にくいが、別の位置に配置された光源LSで照らした場合には輝度差が大きく見やすくなっていることがある。光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGに対して、同じ位置を含むように輝度の差分の情報を取得すること、光源LSの照射方向を変えて見づらいビーチマークBMも見逃しづらくなる。
【0080】
(3)第3の態様に係る破面解析方法S1,S10は、(1)又は(2)の破面解析方法S1,S10であって、前記ビーチマークBMの位置情報を取得するステップは、前記基準値BVを満たしていると判定された前記検出位置を合格位置Pとし、複数の前記破面画像FGの情報ごとに、前記合格位置Pの位置情報を取得するステップと、取得された前記合格位置Pの中で、同じ位置での登場頻度が予め定めた基準回数を満たした前記合格位置Pの位置情報を前記ビーチマークBMの位置情報として取得するステップとをさらに有する。
【0081】
このような構成によれば、基準値BVを満たしていると判定された検出位置を合格位置Pとし、光源LSの位置の異なる複数の破面画像FGごとに、合格位置Pの位置情報が取得されている。そして、複数の合格位置Pの中で同じ位置での登場頻度が基準回数を満たした合格位置Pの位置情報が、ビーチマークBMの位置情報として取得されている。そのため、複数の破面画像FGにおいて、長めの傷やごみ等が映り込んでしまって誤ってビーチマークBMと判断されそうになっても、登場頻度を判定することで高い精度でビーチマークBMを識別することができる。
【0082】
(4)第4の態様に係る破面解析方法S1,S10は、(1)から(3)のいずれか一つの破面解析方法S1,S10であって、前記進展方向輝度分布情報を取得するステップでは、前記き裂進展方向に対して直交する直交方向に所定幅を有する領域で、前記進展方向輝度分布情報を取得する。
【0083】
このような構成によれば、進展方向輝度分布情報は、き裂進展方向に延びる直線状ではなく、き裂進展方向に対して直交方向に所定幅を有する輝度取得領域LAで取得されている。つまり、き裂進展方向だけでなく直交方向にも広がる領域で輝度の分布情報を取得できる。このような輝度取得領域LAでの進展方向輝度分布情報を利用することで、線状になっていない傷等の破面自身の微小な凹凸Zが誤ってビーチマークBMと判断されてしまうことを抑制できる。したがって、より高い精度でビーチマークBMを識別することができる。
【0084】
(5)第5の態様に係る破面解析方法S1,S10は、(1)から(4)のいずれか一つの破面解析方法S1,S10であって、前記破面画像FGの情報から、予め定めた楕円線状模様EMを検出し、前記楕円線状模様EMが検出された模様検出位置の位置情報を取得するステップと、をさらに含み、前記ビーチマークBMの位置情報を取得するステップは、前記基準値BVを満たしていると判定された前記検出位置と前記模様検出位置とが一致している位置の位置情報を前記ビーチマークBMの位置情報として取得する。
【0085】
このような構成によれば、破面画像FGを利用して、進展方向輝度分布情報だけでなく楕円線状模様EMが検出される。さらに、基準値BVを満たしていると判定された検出位置の情報と、模様検出位置の情報とを比較し、重複する位置の位置情報を、ビーチマークBMの位置情報として取得している。そのため、破面FS上のビーチマークBMに近しい形状である楕円線状模様EMが形成されていて、輝度の差分が大きい箇所を把握することが出来る。したがって、ビーチマークBMと異なる汚れや破面自身の微小な凹凸Zの誤検出を抑制でき、より高い精度でビーチマークBMを識別することができる。
【0086】
(6)第6の態様に係る破面解析装置1、10は、構造物の破面FSを撮影した少なくとも一つの破面画像FGの情報を取得する画像取得部51と、取得した前記破面画像FGの情報に基づいて、前記破面画像FGにおける前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得する輝度分布取得部52と、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得する差分取得部53と、前記差分の絶対値が予め定めた基準値BVを満たしているか否かを判定する判定部54と、前記基準値BVを満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像FGにおけるビーチマークBMの位置情報を取得するビーチマーク取得部55と、を備える。
【0087】
このような構成によれば、破面画像FGにおけるき裂進展方向の輝度の分布情報が取得できる。さらに、進展方向輝度分布情報に基づいて、き裂進展方向での輝度の差分を取得している。この差分の絶対値を、基準値BVに基づいて判定することで、ビーチマークBMの位置情報を取得している。そのため、破面FSを観察者が直接目視で確認することなく、破面画像FG中のデジタルデータである輝度の情報を利用して、定量的にビーチマークBMを検出できる。したがって、観察者の技量に依存することなく、破面FS上のビーチマークBMを安定して識別できる。
【0088】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータ9に、構造物の破面FSを撮影した少なくとも一つの破面画像FGの情報を取得するステップと、取得した前記破面画像FGの情報に基づいて、前記破面画像FGにおける前記構造物に生じるき裂の進展するき裂進展方向の画素の輝度の分布情報である進展方向輝度分布情報を取得するステップと、前記進展方向輝度分布情報に基づいて、前記き裂進展方向で隣り合う複数の検出位置での画素の輝度の差分を算出して取得するステップと、前記差分の絶対値が予め定めた基準値BVを満たしているか否かを判定するステップと、前記基準値BVを満たしていると判定された前記検出位置の位置情報から前記破面画像FGにおけるビーチマークBMの位置情報を取得するステップと、を実行させる。
【0089】
このような構成によれば、破面画像FGにおけるき裂進展方向の輝度の分布情報が取得できる。さらに、進展方向輝度分布情報に基づいて、き裂進展方向での輝度の差分を取得している。この差分の絶対値を、基準値BVに基づいて判定することで、ビーチマークBMの位置情報を取得している。そのため、破面FSを観察者が直接目視で確認することなく、破面画像FG中のデジタルデータである輝度の情報を利用して、定量的にビーチマークBMを検出できる。したがって、観察者の技量に依存することなく、破面FS上のビーチマークBMを安定して識別できる。
【符号の説明】
【0090】
S1、S10…破面解析方法
AO…解析対象物
FS…破面
LS…光源
BM…ビーチマーク
S2…画像取得ステップ
FG…破面画像
S3…輝度分布取得ステップ
LA…輝度取得領域
S4…差分取得ステップ
S5…判定ステップ
BV…基準値
S6…ビーチマーク取得ステップ
S61…合格位置取得ステップ
P…合格位置
S62、S620…真ビーチマーク取得ステップ
TP…真合格位置
S70…模様検出位置取得ステップ
EM…楕円線状模様
Z…凹凸
1、10…破面解析装置
2…画像撮影部
5、50…制御部
51…画像取得部
52…輝度分布取得部
53…差分取得部
54…判定部
55…ビーチマーク取得部
56…合格位置取得部
57、570…真ビーチマーク取得部
58…出力部
3…画像表示部
70…模様検出部
9…コンピュータ
91…CPU
92…メインメモリ
93…ストレージ
94…インターフェース
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12