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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171561
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20241205BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C70/32
B29C70/16
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088631
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松井 利裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木野 義浩
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水辺 大
(72)【発明者】
【氏名】林 政貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 吉典
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AD16
4F205AJ08
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HB01
4F205HC02
4F205HF23
4F205HK23
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】フィラメントワインディング装置において、ライナーの重みによってライナーを支持する軸がたわんでしまうのを抑える。
【解決手段】ライナーLの軸方向の前端部に固定された支持軸33aを軸周りに回転可能に支持する第1支持ユニット31において、軸方向に延びる内軸部材62と、軸方向に延び内軸部材62の外周面62dを取り囲む外軸部材63とが、軸方向延び外軸部材63の外周面63bを取り込む外筒部材64によって、軸周りに一体的に回転可能に支持されている。第1チャック65は、支持軸33aを連結可能であり、連結された支持軸33aを、内軸部材62と一体的に軸周りに回転可能、且つ、内軸部材62と一体的に軸方向に移動可能に支持する。第2チャック66は、支持軸33aを連結可能であり、連結された支持軸33aを、外軸部材63と一体的に軸周りに回転可能に支持する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の両端部にそれぞれ前記軸方向に延びる支持軸が固定されたライナーの外周面に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置であって、
前記ライナーを軸周りに回転可能に支持する支持ユニット、を備え、
前記支持ユニットは、
前記軸方向に延び、軸周りに回転可能な内軸部材と、
前記軸方向に延びているとともに前記内軸部材の外周面を取り囲み、前記内軸部材と一体的に軸周りに回転可能な外軸部材と、
前記軸方向に延びているとともに前記外軸部材の外周面を取り囲み、前記内軸部材及び前記外軸部材を軸周りに回転可能に支持する外筒部材と、
前記支持軸を連結可能であり、連結された前記支持軸を、前記内軸部材と一体的に軸周りに回転可能且つ前記内軸部材と一体的に前記軸方向に移動可能に支持する第1チャックと、
前記支持軸と軸周り方向の位相が合っている状態で前記支持軸と連結可能であり、連結された前記支持軸を、前記外軸部材と一体的に軸周りに回転可能に支持する第2チャックと、を備えていることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記支持ユニットが、
前記内軸部材、前記外軸部材、前記外筒部材、前記第1チャック及び前記第2チャックを一体的に前記軸方向に移動させる移動装置と、
前記第2チャックを軸周りに回転させることによって、前記第2チャックの軸周り方向の位相を調整する位相調整装置と、を備え、
前記移動装置及び前記位相調整装置を制御する制御装置、を備え、
前記制御装置は、
前記位相調整装置を制御して前記第2チャックを軸周りに回転させることによって、前記第2チャックの軸周り方向の位相を前記支持軸の軸周り方向の位相に合わせてから、
前記移動装置を制御して前記内軸部材、前記外軸部材、前記外筒部材、前記第1チャック及び前記第2チャックを一体的に前記軸方向に移動させることによって、前記支持軸を前記第1チャック及び前記第2チャックに連結させることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記支持軸は、前記軸方向から見て回転中心が前記支持軸の回転中心と重なる正多角形の嵌合部を有するものであって、
前記第2チャックは、前記軸方向から見て回転中心が前記第2チャックの回転中心と重なる前記正多角形で前記嵌合部と嵌合可能な嵌合孔を有し、前記嵌合孔に前記嵌合部が嵌合することによって前記支持軸が連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のフィラメントワインディング装置は、ライナーの軸方向の両端部にそれぞれ設けられた支持軸(被駆動軸)を支持するための2つのライナー支持部を備えている。各ライナー支持部は、上記軸方向に延びたチャック軸と、チャック軸の軸方向の先端部に設けられたチャックとを有する。チャックには、支持軸が挿通される貫通孔が形成され、貫通孔の内周面に上記軸方向に延びたキーが形成されている。支持軸の外周面には、キーと係合可能なキー溝が形成されている。
【0003】
そして、チャックを回転させて、キーの軸周り方向の位相と、キー溝の軸周り方向の位相とを合わせてから、チャックと支持軸とを上記軸方向に近づけることにより、キーをキー溝に係合させ、支持軸を貫通孔に挿通させる。これにより、チャックと支持軸とが一体回転可能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-129938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載のフィラメントワインディング装置では、2つのライナー支持部のチャックにライナーの支持軸が連結されたときに、各ライナー支持部において、ライナーの重みでチャック軸がたわんでしまう虞がある。チャック軸が大きくたわんでしまうと、ライナーに精度よく繊維束を巻き付けることができない虞がある。
【0006】
本発明の目的は、ライナーの重みによってライナーを支持する軸がたわんでしまうのを抑えることが可能なフィラメントワインディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィラメントワインディング装置は、軸方向の両端部にそれぞれ前記軸方向に延びる支持軸が固定されたライナーの外周面に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置であって、前記ライナーを軸周りに回転可能に支持する支持ユニット、を備え、前記支持ユニットは、前記軸方向に延び、軸周りに回転可能な内軸部材と、前記軸方向に延びているとともに前記内軸部材の外周面を取り囲み、前記内軸部材と一体的に軸周りに回転可能な外軸部材と、前記軸方向に延びているとともに前記外軸部材の外周面を取り囲み、前記内軸部材及び前記外軸部材を軸周りに回転可能に支持する外筒部材と、前記支持軸を連結可能であり、連結された前記支持軸を、前記内軸部材と一体的に軸周りに回転可能且つ前記内軸部材と一体的に前記軸方向に移動可能に支持する第1チャックと、前記支持軸と軸周り方向の位相が合っている状態で前記支持軸と連結可能であり、連結された前記支持軸を、前記外軸部材と一体的に軸周りに回転可能に支持する第2チャックと、を備えている。
【0008】
本発明によると、支持軸は、第1チャックに連結されることによって、内軸部材と一体的に軸周りに回転可能、且つ、内軸部材と一体的に軸方向に移動可能に支持される。また、支持軸は、第2チャックに連結されることによって、外軸部材と一体的に軸周りに回転可能に支持される。これにより、支持軸が固定されたライナーを回転可能に支持することができる。また、本発明では、内軸部材と、内軸部材の外周面を取り囲む外軸部材とが一体的に軸周りに回転可能であり、外軸部材の外周面を取り囲む外筒部材によって内軸部材及び外軸部材が軸周りに回転可能に支持されている。これにより、支持ユニットによってライナーが支持されているときに、ライナーの重みによって内軸部材及び外軸部材がたわんでしまうのを抑えることができる。
【0009】
本発明のフィラメントワインディング装置は、支持ユニットが、前記内軸部材、前記外軸部材、前記外筒部材、前記第1チャック及び前記第2チャックを一体的に前記軸方向に移動させる移動装置と、前記第2チャックを軸周りに回転させることによって、前記第2チャックの軸周り方向の位相を調整する位相調整装置と、を備え、前記移動装置及び前記位相調整装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記位相調整装置を制御して前記第2チャックを軸周りに回転させることによって、前記第2チャックの軸周り方向の位相を前記支持軸の軸周り方向の位相に合わせてから、前記移動装置を制御して前記内軸部材、前記外軸部材、前記外筒部材、前記第1チャック及び前記第2チャックを一体的に前記軸方向に移動させることによって、前記支持軸を前記第1チャック及び前記第2チャックに連結させてもよい。
【0010】
本発明によると、位相調整装置により第2チャックを軸周りに回転させて、第2チャックの軸周り方向の位相と支持軸の軸周り方向の位相とを合わせたうえで、移動装置により内軸部材及び外軸部材を軸方向に移動させて支持軸を第1チャック及び第2チャックに連結させることにより、支持軸を支持ユニットに支持させることができる。
【0011】
本発明のフィラメントワインディング装置は、前記支持軸は、前記軸方向から見て回転中心が前記支持軸の回転中心と重なる正多角形の嵌合部を有するものであって、前記第2チャックは、前記軸方向から見て回転中心が前記第2チャックの回転中心と重なる前記正多角形であり前記嵌合部と嵌合可能な嵌合孔を有し、前記嵌合孔に前記嵌合部が嵌合することによって前記支持軸が連結されてもよい。
【0012】
本発明によると、支持軸に設けられた正多角形の嵌合部と、第2チャックに設けられた正多角形の嵌合孔とが嵌合することによって、支持軸を第2チャックと一体的に軸周りに回転可能に連結することができる。また、軸方向から見て、嵌合部は、回転中心が支持軸の回転中心と重なる正多角形である。また、軸方向から見て、嵌合孔は、回転中心が第2チャックの回転中心と重なる正多角形である。そのため、嵌合部と嵌合孔とが嵌合可能となる第2チャックの軸周り方向の位相が複数存在する。具体的には、Nを3以上の自然数として、嵌合部及び嵌合孔が軸方向から見て正N角形である場合、第2チャックの(360/N)°毎の軸周り方向の位相が、嵌合部と嵌合孔とが嵌合可能となる軸周り方向の位相である。したがって、支持軸の軸周り方向の位相と合う第2チャックの軸周り方向の位相が1つしかない場合と比較して、第2チャックの軸周り方向の位相と支持軸の軸周り方向に位相とを合わせるときの第2チャックの回転角度を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ライナーの重みによって内軸部材及び外軸部材がたわんでしまうのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
図2】フィラメントワインディング装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】(a)、(b)は、ヘリカル巻ユニットの正面図である。
図4】第1支持ユニット及び第1支持ユニットに支持される支持軸を示す斜視図である。
図5】第1支持ユニット及び前側の支持軸を、回転中心を通り、且つ、前後方向及び上下方向と平行な平面で切った断面図である。
図6】(a)は、第1支持ユニットを図5の矢印Aの方向から見た図であり、(b)は、前側の支持軸を図5の矢印Bの方向から見た図である。
図7】前側の支持軸が第1チャック及び第2チャックに連結された状態を示す図4に対応する図である。
図8】前側の支持軸が第1支持ユニットの第1チャック及び第2チャックに連結された状態を示す図5に対応する図である。
図9】第2支持ユニット及び後側の支持軸を、回転中心を通り、且つ、前後方向及び上下方向と平行な平面で切った断面図である。
図10】後側の支持軸が第2支持ユニットの第1チャック及び第2チャックに連結された状態を示す図9に対応する図である。
図11】支持ユニットにライナーを連結するときの制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0016】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を示す斜視図である。図2は、フィラメントワインディング装置1の電気的構成を示すブロック図である。説明の便宜上、図1に示す方向(前後方向及び左右方向)を定義する。前後方向及び左右方向は、水平方向と平行な方向である。前後方向と左右方向は互いに直交する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。
【0017】
フィラメントワインディング装置1は、ライナーLに複数の繊維束(図1では図示省略)を同時に巻き付ける多給糸型のものである。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、複数のクリールスタンド3と、複数の前処理部4とを備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。巻付装置2は、円筒状のライナーLに繊維束を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば、炭素繊維などの繊維材料に熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。ライナーLの形状は、最終製品に応じて異なりうる。例えば最終製品が圧力タンクである場合、図1に示すように、円筒部の両側にドーム部を有するライナーLが使用される。ライナーLの材料としては、高強度アルミニウム、金属、樹脂などが用いられる。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成などの熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力タンクなどの最終製品を得ることができる。
【0018】
複数のクリールスタンド3は、例えば、巻付装置2の左右方向における両側に配置されている。複数のクリールスタンド3は、例えば、前後方向において巻付装置2の後端部の近傍に配置されている。各クリールスタンド3は、例えば、前後方向に延びる略直方体状のフレーム11を有する。フレーム11には、例えば、1以上のボビンホルダ群12が設けられている。ボビンホルダ群12は、例えば、後述するヘリカル巻ユニット50の複数のノズルユニット53の各々に対応して設けられている。各ボビンホルダ群12は、例えば前後方向に並んだ複数の(本実施形態では5つの)ボビンホルダ13を有する。各ボビンホルダ13は、例えば、左右方向に延びる軸を有する。各ボビンホルダ13は、繊維束が巻かれたボビン14を回転可能に支持する。本実施形態では、例えば9つのボビンホルダ群12が設けられ、その各々に5つのボビン14が装着されている(すなわち、計45個のボビン14が配置されている)。各ボビンホルダ群12に属する5つのボビン14から、5本の繊維束がまとめてノズルユニット53に供給される。クリールスタンド3から供給される複数の繊維束は、ヘリカル巻ユニット50によってライナーLに巻き付けられる。なお、図1においては2つのクリールスタンド3が図示されているが、クリールスタンド3の数はこれに限られない。また、図面の煩雑化を避けるため、図1においては、複数のボビンホルダ群12のうち1つのみが図示されている。
【0019】
複数の前処理部4は、複数の繊維束に所定の前処理(例えば張力付与等)を施すように構成されている。複数の前処理部4は、例えば、繊維束の走行方向において、対応するクリールスタンド3と、ヘリカル巻ユニット50(後述)との間に配置されている。
【0020】
(巻付装置)
巻付装置2のより具体的な構成について説明する。巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻ユニット40と、ヘリカル巻ユニット50と、を備える。
【0021】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻ユニット40、及び、ヘリカル巻ユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が設置されている。支持ユニット30及びフープ巻ユニット40は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット50は、例えば、基台20に対する位置が固定されている。第1支持ユニット31、フープ巻ユニット40、ヘリカル巻ユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0022】
支持ユニット30は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を有する。第1支持ユニット31は、フープ巻ユニット40よりも前側に配置されている。第2支持ユニット32は、ヘリカル巻ユニット50よりも後側に配置されている。ここで、ライナーLの軸方向(前後方向)の前端部及び後端部には、それぞれ、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33a、33bが固定されている。支持ユニット30は、第1支持ユニット31により前側の支持軸33aを軸周りに回転可能に支持し、第2支持ユニット32により後側の支持軸33bを軸周りに回転可能に支持することによって、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。また、支持ユニット30は、支持したライナーLを軸周りに回転させる。支持ユニット30の構造及び動作については後ほど詳細に説明する。
【0023】
フープ巻ユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット40は、例えば、本体部41と、回転部材42と、複数(本実施形態では5個)のボビンホルダ43と、を有する。本体部41は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。回転部材42は、ライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状の部材である。回転部材42は、ライナーLの軸周りに回転可能な状態で、本体部41に支持されている。複数のボビンホルダ43は、周方向に等間隔で回転部材42に取り付けられている。各ボビンホルダ43は、前後方向に延びる回転軸を有しており、繊維束が巻かれたボビン(図示省略)を回転可能に支持する。
【0024】
フープ巻ユニット40は、移動用モータ46及び回転用モータ47を有する(図2参照)。移動用モータ46は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ47は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ46及び回転用モータ47の動作は、制御装置5によって制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置5は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビンから繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に同時にフープ巻きされる。
【0025】
ヘリカル巻ユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット50は、例えば、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、例えば基台20に固設されている。フレーム部材52は、ライナーLが通過可能な通過穴54が形成された円環状の部材である。フレーム部材52は、本体部51に支持されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心に放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に取り付けられている。
【0026】
図3(a)及び図3(b)は、ヘリカル巻ユニット50の正面図である。詳細には、図3(a)は、ライナーLの円筒部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。図3(b)は、ライナーLのドーム部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体55を有する。ガイド体55は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。各ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ56が配置されている。クリールスタンド3の各ボビンホルダ群12から引き出された5本の繊維束Fは、ガイドローラ56を経由して何れかのガイド体55に導入され、ガイド体55の先端からライナーLに供給される。
【0027】
ヘリカル巻ユニット50は、ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58を有する(図2参照)。ガイド移動用モータ57は、各ガイド体55を一斉に径方向に移動させる。ガイド回転用モータ58は、各ガイド体55を一斉に回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58の動作は、制御装置5によって制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置5は、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。これとともに、制御装置5は、各ノズルユニット53のガイド体55を、径方向に適宜移動させつつ回転軸周りに適宜回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体55の先端から5本の繊維束Fが適切に引き出され、合計で45本の繊維束FがライナーLの周面に同時にヘリカル巻きされる。
【0028】
(支持ユニット)
次に、支持ユニット30を構成する第1支持ユニット31及び第2支持ユニットの構造及び動作について詳細に説明する。
【0029】
図4は、第1支持ユニット31及び前側の支持軸33aを示す斜視図である。図5は、第1支持ユニット31及び前側の支持軸33aを、これらの回転中心を通り、且つ、前後方向及び上下方向と平行な平面で切った断面図である。図6(a)は、第1支持ユニット31を図5の矢印Aの方向から見た図である。図6(b)は、前側の支持軸33aを図5の矢印Bの方向から見た図である。
【0030】
図4図5図6(a)、(b)に示すように、第1支持ユニット31は、支持フレーム61と、内軸部材62と、外軸部材63と、外筒部材64と、第1チャック65と、第2チャック66と、移動用モータ67(本発明の「移動装置」、図2参照)と、回転用モータ68(図2参照)と、位相調整用アクチュエータ69(本発明の「位相調整装置」、図2参照)と、を備えている。
【0031】
支持フレーム61は、基台20の上面に配置されている。支持フレーム61は、レール21に沿って前後方向に移動可能となっている。支持フレーム61の上端部には、支持フレーム61を前後方向に貫通する、前後方向から見て円形の貫通孔61aが形成されている。
【0032】
内軸部材62は、軸方向が前後方向と平行な略円柱状の部材である。内軸部材62は、貫通孔61aに挿通されているとともに、支持フレーム61から後側に延びている。内軸部材62の後端部には、他の部分よりも径が大きいチャック係合部62aが設けられている。チャック係合部62aは、第1チャック65の後述する内側部材71を係合させるための部分である。また、内軸部材62には、チャック係合部62aから後方に突出した突出部62bが設けられている。また、内軸部材62の径方向の中央部には、突出部62bを含む内軸部材62の前後方向の全長にわたって延びた流路62cが形成されている。流路62cの後端部は開口している。流路62cの前端部は図示しないポンプに接続されている。
【0033】
外軸部材63は、軸方向が前後方向と平行な略円筒状の部材である。外軸部材63は、貫通孔61aに挿通されているとともに、支持フレーム61から後側に延びている。略円筒状の外軸部材63の内部空間63aには、内軸部材62が挿通されている。これにより、内軸部材62の外周面62dが外軸部材63に取り囲まれている。内部空間63aは、後端を含む一部分に他の部分よりも径の大きい拡径部63a1が設けられており、チャック係合部62a及び突出部62bは、拡径部63a1内に位置している。外軸部材63は内軸部材62に固定されている。
【0034】
外筒部材64は、軸方向が前後方向と平行な略円筒状の部材である。外筒部材64は、前端部が貫通孔61aの内壁面61a1に固定されているとともに、支持フレーム61から後方に延びている。略円筒状の外筒部材64の内部空間64aには、内軸部材62及び外軸部材63が挿通されている。これにより、外軸部材63の外周面63bが、外筒部材64によって取り囲まれている。また、外軸部材63の外周面63bの前後方向における両端部と、外筒部材64の内部空間64aの内壁面64a1の前後方向における両端部とが、それぞれ、ベアリング70を介して連結されている。これにより、内軸部材62及び外軸部材63が、外筒部材64に、軸周りに一体的に回転可能に支持されている。
【0035】
第1チャック65は、公知のコレットチャックであり、内側部材71と外側部材72とを有する。内側部材71は軸方向が前後方向と平行な略円筒状の部材である。内側部材71の前端部は、内軸部材62のチャック係合部62aと係合している。これにより、内側部材71が内軸部材62に固定されている。また、略円筒状の内側部材71の内部空間71a内に、内軸部材62の突出部62bが位置している。外側部材72は、軸方向が前後方向と平行な略円筒状の部材である。外側部材72は、外軸部材63の後端部に固定されている。また、略円筒状の外側部材72の内部空間72aに内側部材71が挿通されている。また、内側部材71は、外側部材72に対して前後方向にわずかに相対移動可能となっている。そして、内側部材71が前方に押し込まれることによって外側部材72に対して前方に相対移動すると、内側部材71の内部空間71aの後端部の径が小さくなる。なお、上記の通り、第1チャック65は公知のコレットチャックであるであるため、第1チャック65の構造についてのこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0036】
第2チャック66は、軸方向が前後方向と平行な略筒状の部材である。第2チャック66は、第1チャック65の外側部材72の後端面に固定されることにより、外側部材72を介して外軸部材63に固定されている。略円筒状の第2チャック66の内部空間66aは、第1チャック65の内側部材71の内部空間71aと連通している。内部空間66aの後端部は、前後方向から見て、回転中心が第2チャック66の回転中心と重なる正六角形の嵌合孔66a1である。これに対応して、前側の支持軸33aには、前後方向から見て、回転中心が支持軸33aの回転中心と重なり、嵌合孔66a1に嵌合可能な大きさの正六角形の嵌合部34が設けられている。また、内部空間66aの嵌合孔66a1よりも前方に位置する部分は、前後方向から見た形状が、嵌合孔66a1内に収まる円形である。
【0037】
そして、本実施形態では、第2チャック66の内部空間66aを通して、前側の支持軸33aを第1チャック65の内側部材71の内部空間71aに挿入することにより、図7図8に示すように、前側の支持軸33aを、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66と連結することができる。
【0038】
より詳細に説明すると、嵌合孔66a1と嵌合部34との軸周り方向の位相が合っている状態、すなわち、嵌合孔66a1と嵌合部34とが嵌合可能な状態で、第2チャック66の内部空間66aを通して、支持軸33aを第1チャック65の内側部材71の内部空間71aに挿入すると、嵌合部34が嵌合孔66a1と嵌合する。これにより、支持軸33aは、第2チャック66に連結される。嵌合部34と嵌合孔66a1とが嵌合していることにより、支持軸33aは、第2チャック66と一体的に軸周りに回転可能に第2チャック66に連結される。これにより、第2チャック66に連結された支持軸33aと、第2チャック66が固定された外軸部材63とは、一体的に軸周りに回転可能である。
【0039】
このとき、支持軸33aが、内側部材71の内部空間71a内に挿通されるとともに、内側部材71を前方に押し込む。これにより、上述したように内側部材71の内部空間71aの径が小さくなり、内側部材71と支持軸33aとが径方向に密着する。その結果、支持軸33aは、第1チャック65と一体的に軸周りに回転可能、且つ、第1チャック65と一体的に前後方向に移動可能に第1チャック65に連結される。これにより、第1チャック65に連結された支持軸33aと、第1チャック65が固定された内軸部材62とは、一体的に軸周りに回転可能、且つ、一体的に軸方向に移動可能である。なお、上記の通り、第1チャック65は、公知のコレットチャックであるため、第1チャック65と支持軸33aとの連結についてのこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0040】
なお、嵌合孔66a1と嵌合部34との軸周り方向の位相が合っていない状態で、前側の支持軸33aを、第2チャック66の内部空間66aを通して第1チャック65の内側部材71の内部空間71aに挿入しようとすると、嵌合部34が第2チャック66の嵌合孔66a1の周囲に位置する部分に接触し、支持軸33aがそれ以上挿入されない。その結果、支持軸33aは、第1チャック65及び第2チャック66と連結されない。
【0041】
また、前側の支持軸33aの径方向の中央部には、前後方向の全長にわたって延びた流路35が形成されている。流路35の後端部は、ライナーLの図示しない内部空間に接続されている。また、支持軸33aの前端部には、バルブ36が設けられている。バルブ36は、流路35の前端部の開閉を行うためのものである。バルブ36の前端部には、被押圧部36aが設けられている。支持軸33aが第1チャック65と連結されていない状態では、バルブ36が閉じている。上記のように支持軸33aが第1チャック65に連結されると、被押圧部36aが、内軸部材62の突出部62bに押圧されることによってバルブ36が開くとともに、内軸部材62の流路62cがバルブ36に接続される。これにより、図中矢印Cに示すように、支持軸33aの流路35と、内軸部材62の流路62cとが、バルブ36を介して連通する。その結果、ライナーLの図示しない内部空間が、支持軸33aの流路35、バルブ36、及び、内軸部材62の流路62cを介して図示しないポンプと接続される。そして、このポンプにより、ライナーLの内部空間に空気等を供給することができる。なお、バルブ36は公知のものであるため、バルブ36の構造、および、バルブ36の開閉の詳細な動作については、説明を省略する。
【0042】
移動用モータ67は、制御装置5によって制御される。制御装置5の制御により移動用モータ67を駆動させることによって、支持フレーム61をレール21に沿って前後方向に移動させることができる。支持フレーム61が前後方向に移動するときには、内軸部材62、外軸部材63、外筒部材64、第1チャック65及び第2チャック66が、支持フレーム61と一体的に前後方向に移動する。すなわち、第1支持ユニット31全体が前後方向に移動する。
【0043】
回転用モータ68は、制御装置5によって制御される。制御装置5の制御により回転用モータ68を駆動させることによって、内軸部材62、外軸部材63、第1チャック65及び第2チャック66を一体的に軸周りに回転させることができる。このとき、支持軸33aが第1チャック65及び第2チャック66と連結されている場合には、支持軸33aが、内軸部材62、外軸部材63、第1チャック65及び第2チャック66と一体的に軸周りに回転する。
【0044】
位相調整用アクチュエータ69は、制御装置5によって制御される。制御装置5の制御により位相調整用アクチュエータ69を駆動させることによって、第2チャック66を軸周りに回転させて、第2チャック66の軸周りの方向の位相(正六角形の嵌合孔66a1の向き)を調整することができる。このとき、内軸部材62、外軸部材63及び第1チャック65も、第2チャック66と一体的に回転する。
【0045】
図9に示すように、第2支持ユニット32は、支持フレーム81と、内軸部材82と、外軸部材83と、外筒部材84と、第1チャック85と、第2チャック86と、移動用モータ87(本発明の「移動装置」、図2参照)と、位相調整用アクチュエータ89(本発明の「位相調整装置」、図2参照)とを有する。なお、第2支持ユニット32は回転用モータを有していない。
【0046】
支持フレーム81、内軸部材82、外軸部材83、外筒部材84、第2チャック86、移動用モータ87及び位相調整用アクチュエータ89は、それぞれ、支持フレーム61、内軸部材62、外軸部材63、外筒部材64、第1チャック65、第2チャック66、移動用モータ67及び位相調整用アクチュエータ69と同様の構造を有する。
【0047】
ただし、支持フレーム81、内軸部材82、外軸部材83、外筒部材84、第1チャック85及び第2チャック86は、それぞれ、支持フレーム61、内軸部材62、外軸部材63、外筒部材64、第1チャック65及び第2チャック66と、前後方向の向きが逆である。また、内軸部材82は、内軸部材62と異なり、前端部に突出部を有していない。また、内軸部材82には、内軸部材62と異なり、内部に流路が形成されていない。
【0048】
そして、第2支持ユニット32において、第2チャック86の内部空間86aを通して後側の支持軸33bを第1チャック85の内側部材71の内部空間71aに挿入することにより、上述したのと同様、図10に示すように、後側の支持軸33bを第1チャック85及び第2チャック86と連結することができる。そして、後側の支持軸33bが第2支持ユニット32の第2チャック86と連結されると、上述したのと同様、後側の支持軸33bと第2支持ユニット32の外軸部材83とが一体的に軸周りに回転可能となる。また、後側の支持軸33bが第2支持ユニット32の第1チャック85と連結されると、上述したのと同様、後側の支持軸33bと内軸部材82とが、一体的に軸周りに回転可能、且つ、一体的に前後方向に移動可能となる。
【0049】
また、第2支持ユニット32は回転用モータを有していないが、前側の支持軸33aが第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に連結され、後側の支持軸33bが第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に連結された状態で、制御装置5の制御により第1支持ユニット31の回転用モータ68を駆動させると、第1支持ユニット31の内軸部材62及び外軸部材63と、第2支持ユニット32の内軸部材82及び外軸部材83と、2つの支持軸33a、33bと、ライナーLとが一体的に軸周りに回転する。
【0050】
次に、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に支持軸33aを連結させ、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に支持軸33bを連結させるときの、制御装置5による処理の流れについて説明する。図11は、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に支持軸33aを連結させ、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に支持軸33bを連結させるときの制御装置5による処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に支持軸33aを連結させ、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に支持軸33bを連結させる前の状態では、ライナーLを搬送するための図示しない搬送装置によって、ライナーLは、前後方向から見て、2つの支持軸33a、33bの回転中心が、第1支持ユニット31の内軸部材62及び外軸部材63の回転中心、並びに、第2支持ユニット32の内軸部材82及び外軸部材83の回転中心と重なるように配置されている。また、このとき、第1支持ユニット31がライナーLよりも前方にライナーLから離れており、第2支持ユニット32がライナーLよりも後方にライナーLから離れている。
【0052】
第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に支持軸33aを連結させ、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に支持軸33bを連結させるときに、制御装置5は、図11に示すように、まず、位相調整処理を実行する(S101)。位相調整処理において、制御装置5は、第1支持ユニット31の位相調整用アクチュエータ69を駆動させて第1支持ユニット31の第2チャック66を回転させることによって、第1支持ユニット31の第2チャック66と支持軸33aとの軸周り方向の位相を合わせる。また、位相調整処理において、制御装置5は、第2支持ユニット32の位相調整用アクチュエータ89を駆動させて第2支持ユニット32の第2チャック86を回転させることによって、第2支持ユニット32の第2チャック86と支持軸33bとの軸周り方向の位相を合わせる。
【0053】
支持軸33aの嵌合部34及び第2チャック66の嵌合孔66a1が前後方向から見て正六角形である。したがって、位相調整処理の前の状態での、前側の支持軸33aの嵌合部34の軸周り方向の位相、第1支持ユニット31における嵌合孔66a1の軸周り方向の位相、及び、第1支持ユニット31における位相調整用アクチュエータ69による第2チャック66の回転方向によらず、位相調整処理での、第1支持ユニット31の第2チャック66の回転角度を60°以下とすることができる。同様に、位相調整処理の前の状態での、後側の支持軸33bの嵌合部34の軸周り方向の位相、第2支持ユニット32における嵌合孔86a1の軸周り方向の位相、及び、第2支持ユニット32における位相調整用アクチュエータ89による第2チャック86の回転方向によらず、位相調整処理での、第2支持ユニット32の第2チャック86の回転角度を60°以下とすることができる。
【0054】
また、位相調整処理においては、第1支持ユニット31の第2チャック66の軸周り方向の位相の調整と、第2支持ユニット32の第2チャック86の軸周り方向の位相の調整とを並行して行ってもよいし、片方ずつ順に行ってもよい。第1支持ユニット31の第2チャック66の軸周り方向の位相の調整と、第2支持ユニット32の第2チャック86の軸周り方向の位相の調整とを、片方ずつ順に行う場合、第1支持ユニット31の第2チャック66の軸周り方向の位相の調整と、第2支持ユニット32の第2チャック86の軸周り方向の位相の調整のどちらを先に行ってもよい。
【0055】
位相調整処理に続いて、制御装置5は、移動処理を実行する(S102)。移動処理において、制御装置5は、第1支持ユニット31の移動用モータ67を制御して、第1支持ユニット31の支持フレーム61を後方に移動させる。これにより、前側の支持軸33aが、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に連結される。また、移動処理において、制御装置5は、第2支持ユニット32の移動用モータ87を制御して、第2支持ユニット32の支持フレーム81を前方に移動させる。これにより、後側の支持軸33bが、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に連結される。
【0056】
また、移動処理においては、第1支持ユニット31の支持フレーム61の移動と、第2支持ユニット32の支持フレーム81の移動とを並行して行ってもよいし、片方ずつ順に行ってもよい。第1支持ユニット31の支持フレーム61の移動と、第2支持ユニット32の支持フレーム81の移動とを、片方ずつ順に行う場合、第1支持ユニット31の支持フレーム61の移動と、第2支持ユニット32の支持フレーム81の移動のどちらを先に行ってもよい。
【0057】
なお、第1支持ユニット31における第1チャック65及び第2チャック66の支持軸33aとの連結を解除するときには、制御装置5は、ライナーLが図示しない搬送装置により支持された状態で、第1支持ユニット31の移動用モータ67を制御して、第1支持ユニット31の支持フレーム61を前方に移動させる。これにより、前側の支持軸33aが第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66から抜け、第1支持ユニット31における、第1チャック65及び第2チャック66の前側の支持軸33aとの連結が解除される。
【0058】
また、第2支持ユニット32における第1チャック85及び第2チャック86の支持軸33bとの連結を解除するときには、制御装置5は、ライナーLが図示しない搬送装置により支持された状態で、第2支持ユニット32の移動用モータ87を制御して、第2支持ユニット32の支持フレーム81を後方に移動させる。これにより、後側の支持軸33bが第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86から抜け、第2支持ユニット32における、第1チャック85及び第2チャック86の後側の支持軸33bとの連結が解除される。
【0059】
(効果)
本実施形態では、支持軸33aは、第1チャック65に連結されることによって、内軸部材62と一体的に軸周りに回転可能、且つ、内軸部材62と一体的に軸方向に移動可能に支持される。また、支持軸33aは、第2チャック66に連結されることによって、外軸部材63と一体的に軸周りに回転可能に支持される。同様に、支持軸33bは、第1チャック85に連結されることによって、内軸部材82と一体的に軸周りに回転可能、且つ、内軸部材82と一体的に軸方向に移動可能に支持される。また、支持軸33bは、第2チャック86に連結されることによって、外軸部材83と一体的に軸周りに回転可能に支持される。これにより、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32によって、支持軸33a、33bが固定されたライナーLを回転可能に支持することができる。
【0060】
また、本実施形態では、内軸部材62と、内軸部材62の外周面62dを取り囲む外軸部材63とが一体的に軸周りに回転可能である。また、外軸部材63の外周面63bを取り囲む外筒部材64によって内軸部材62及び外軸部材63が軸周りに回転可能に支持されている。これにより、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32によってライナーLが支持されているときに、ライナーLの重みによって内軸部材62及び外軸部材63がたわんでしまうのを抑えることができる。同様に、内軸部材82と、内軸部材82の外周面82cを取り囲む外軸部材83とが一体的に軸周りに回転可能である。また、外軸部材83の外周面83bを取り囲む外筒部材84によって内軸部材82及び外軸部材83が軸周りに回転可能に支持されている。これにより、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32によってライナーLが支持されているときに、ライナーLの重みによって内軸部材82及び外軸部材83がたわんでしまうのを抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態では、位相調整用アクチュエータ69、89を駆動させて第2チャック66、86を軸周りに回転させることによって第2チャック66、86の軸周り方向の位相を調整する位相調整処理と、その後、移動用モータ67、87を駆動させて第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を軸方向に移動させることによって、支持軸33a、33bを第1チャック65、85及び第2チャック66、86に連結させる移動処理とにより、支持軸33a、33bを第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32に軸周り方向に回転可能に支持させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、支持軸33a、33bに設けられた正六角形の嵌合部34と、第2チャック66、86に設けられた正六角形の嵌合孔66a1、86a1とが嵌合することによって、支持軸33a、33bを第2チャック66、86と一体的に軸周りに回転可能に連結することができる。また、嵌合部34及び嵌合孔66a1、86a1が、軸方向から見て回転中心が支持軸33a、33bの中心と重なる正六角形であるため、嵌合部34と嵌合孔66a1、86a1とが嵌合可能となる第2チャック66、86の軸周り方向の位相が複数存在する。具体的には、第2チャック66、86の軸周り方向における60°(=[360/6]°)毎の位相が、嵌合部34と嵌合孔66a1、86a1とが嵌合可能となる位相である。したがって、支持軸33a、33bの軸周り方向の位相と合う第2チャック66、86の軸周り方向の位相が1つしかない場合と比較して、第2チャック66、86の軸周り方向の位相と支持軸33a、33bの軸周り方向に位相とを合わせるときの第2チャック66、86の回転角度を小さくすることができる。
【0063】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0064】
上述の実施形態では、位相調整処理において、第1支持ユニット31の第2チャック66の軸周り方向の位相の調整と、第2支持ユニット32の第2チャック86の軸周り方向の位相の調整とを行った後に、移動処理において、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を軸方向に移動させ、軸方向前側の支持軸33aに、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66を連結させ、軸方向後側の支持軸33bに、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86を連結させたが、これには限られない。
【0065】
例えば、第1支持ユニット31の第2チャック66の軸周り方向の位相の調整を行ったうえで、第1支持ユニット31を軸方向に移動させることによって、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66を前側の支持軸33aと連結させ、その後に、第2支持ユニット32の第2チャック86の軸周り方向の位相の調整を行ったうえで、第2支持ユニット32を軸方向に移動させることによって、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86を後側の支持軸33bと連結させてもよい。
【0066】
あるいは、第2支持ユニット32の第2チャック86の軸周り方向の位相の調整を行ったうえで、第2支持ユニット32を軸方向に移動させることによって、第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86を後側の支持軸33bと連結させ、その後に、第1支持ユニット31の第2チャック66の軸周り方向の位相の調整を行ったうえで、第1支持ユニット31を軸方向に移動させることによって、第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66を前側の支持軸33aと連結させてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、支持軸33aを第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に連結するときの、第1支持ユニット31における第2チャック66の軸周り方向の位相の調整を、制御装置5による位相調整用アクチュエータ69の制御によって行った。同様に、上述の実施形態では、支持軸33bを第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に連結するときの、第2支持ユニット32における第2チャック86の軸周り方向の位相の調整を、制御装置5による位相調整用アクチュエータ89の制御によって行った。しかしながら、これには限られない。例えば、第1支持ユニット31の第2チャック66及び第2支持ユニット32の第2チャック86のうち少なくとも片方における軸周り方向の位相の調整を作業者が手動で行ってもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、支持軸33aを第1支持ユニット31の第1チャック65及び第2チャック66に連結するときの、第1支持ユニット31の軸方向への移動を、制御装置5による移動用モータ67の制御によって行った。同様に、上述の実施形態では、支持軸33bを第2支持ユニット32の第1チャック85及び第2チャック86に連結するときの、第2支持ユニット32の軸方向への移動を、制御装置5による移動用モータ87の制御によって行った。しかしながら、これには限られない。第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32の少なくとも片方について、作業者が手動で軸方向への移動を行ってもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、第1支持ユニット31が回転用モータ68を備えているが、第1支持ユニット31が回転用モータ68を備える代わりに第2支持ユニット32が回転用モータを備えていてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、支持軸33a、33bに設けられた軸方向から見て正六角形の嵌合部34と、第2チャック66、86に設けられた軸方向から見て正六角形の嵌合孔66a1、86a1とが嵌合することによって、第2チャック66、86に連結された支持軸33a、33bが、外軸部材63、83と一体的に軸周りに回転可能となっていたが、これには限られない。
【0071】
例えば、支持軸33a、33bに設けられる嵌合部及び第2チャック66、86に設けられる嵌合孔は、軸方向から見て回転中心が支持軸33a、33b及び第2チャック66、86の回転中心と重なる正六角形以外の正多角形、軸方向から見て回転中心が支持軸33a、33b及び第2チャック66、86の回転中心と重なる楕円等であってもよい。あるいは、例えば、支持軸33a、33bに設けられる嵌合部及び第2チャック66、86に設けられる嵌合孔は、軸方向から見て回転中心が支持軸33a、33b及び第2チャック66、86の回転中心と重なる円形であり、嵌合部の外周面及び嵌合孔の内壁面の一方に凸部が設けられ、他方にこの凸部と嵌合可能な凹部が設けられていてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、第1チャック65、85をコレットチャックとしたが、これには限られない。第1チャック65、85は、連結された支持軸33a、33bを内軸部材62、82と一体的に軸周りに回転可能且つ内軸部材62、82と一体的に軸方向に移動可能に支持できるものであれば、コレットチャックとは別の構造を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1:フィラメントワインディング装置
5:制御装置
30:支持ユニット
31:第1支持ユニット
32:第2支持ユニット
33a、33b:支持軸
34:嵌合部
62、82:内軸部材
62c:外周面
63、83:外軸部材
63b:外周面
64、84:外筒部材
65、85:第1チャック
66、86:第2チャック
66a1、86a1:嵌合孔
67、87:移動用モータ
69、89:位相調整用アクチュエータ
L:ライナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11