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特開2024-171562突出部の形成方法、成形体の製造方法、成形体の製造装置、成形体、及び成形型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171562
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】突出部の形成方法、成形体の製造方法、成形体の製造装置、成形体、及び成形型
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/06 20060101AFI20241205BHJP
   B21K 1/76 20060101ALI20241205BHJP
   B23K 20/12 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B21J5/06 B
B21K1/76 Z
B23K20/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088632
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】朴 玉丹
【テーマコード(参考)】
4E087
4E167
【Fターム(参考)】
4E087AA10
4E087CA22
4E087EC17
4E087HA93
4E167AA06
4E167BG06
4E167BG12
4E167BG13
4E167BG15
4E167BG29
4E167DB00
(57)【要約】
【課題】突出部のサイズ、ピッチ、高さ等を揃えたり、あるいは部分的に変更したりすることができる突出部の形成方法を提供する。
【解決手段】基体、及び基体から立設される突出部を備える金属製の成形体について、成形型11を用いて突出部を形成する。成形型11は、表面に開口する開口部と、開口部に連通して成形型の内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部21を備える。成形型11の開口部上に金属材料101の一方の面102を当接させた状態で配置する。金属材料101の一方の面102とは異なる他方の面103に回転する回転ツール41を押し当てながら回転ツール41を移動させることで、内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、形成孔内に突出部を形成する。突出部の形成後に、突出部を形成孔から離脱させる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体において、成形型を用いて前記突出部を形成する突出部の形成方法であって、
前記成形型は、前記成形型の表面に開口する開口部と、前記開口部に連通して前記成形型の内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部を備え、
前記成形型の前記開口部上に金属材料の一方の面を当接させた状態で配置する配置工程と、
前記金属材料の前記一方の面とは異なる他方の面に回転する回転ツールを押し当てながら前記回転ツールを移動させることで、前記内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、前記形成孔内に前記突出部を形成する形成工程と、
前記突出部の形成後に、前記突出部を前記形成孔から離脱させる離脱工程と、を備える、
ことを特徴とする突出部の形成方法。
【請求項2】
前記形成孔は、前記開口部から前記成形型の内部に向けて真っ直ぐに伸びており、
前記形成孔の高さは前記開口部の径よりも大きい、
請求項1に記載の突出部の形成方法。
【請求項3】
前記形成孔は、前記開口部よりも奥側の断面形状が、前記開口部側の断面形状よりも大きい、
請求項1に記載の突出部の形成方法。
【請求項4】
前記形成孔は、前記開口部よりも奥側の断面形状が、前記開口部の断面形状の外接円形状と同じ形状か、前記開口部の断面形状の外接円形状よりも大きい形状となっている、
請求項1に記載の突出部の形成方法。
【請求項5】
前記回転ツールは、基部、及び前記基部に連続する円錐形状の先端部を備え、
前記先端部の表面に螺旋溝が設けられており、
前記形成工程において、前記先端部を前記金属材料に接触させる、
請求項1に記載の突出部の形成方法。
【請求項6】
前記先端部は、前記回転ツールの回転軸を中心とするテーパー状の側面部を側面に有するとともに、前記回転ツールの回転軸と直交する先端面部を先端に有する円錐台形状である、
請求項5に記載の突出部の形成方法。
【請求項7】
前記螺旋溝は、前記回転ツールの回転軸と略平行な方向に延びる段差側面と、前記回転軸と略垂直な方向に向いた段差底面とからなる段差部を有し、
前記段差部が螺旋状に周回しながら、前記段差部の前記段差底面が、前記先端部の外周側に位置する前記段差部の前記段差側面と隣接し、前記段差部の前記段差側面が、前記先端部の内周側に位置する前記段差部の前記段差底面と隣接して、繰り返し形成されており、
前記段差底面には、前記回転軸の方向に凹んだ凹部が設けられている、
請求項5に記載の突出部の形成方法。
【請求項8】
前記螺旋溝の深さが、0.1~1.0mmである、
請求項5に記載の突出部の形成方法。
【請求項9】
前記先端部のテーパー角度が、100~175°である、
請求項5に記載の突出部の形成方法。
【請求項10】
前記突出部が、ピンフィンであり、
前記成形体が、前記突出部として前記ピンフィンを備えるヒートシンクである、
請求項1に記載の突出部の形成方法。
【請求項11】
請求項1に記載の突出部の形成方法によって前記突出部を形成して、前記成形体を得る、
ことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項12】
前記成形体が、前記突出部としてピンフィンを有するヒートシンクである、
請求項11に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体において、成形型を用いて前記突出部を形成して前記成形体を得る、成形体の製造装置であって、
前記製造装置は、
前記成形型の表面に開口する開口部と、前記開口部に連通して前記成形型の内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部を備える成形型、及び
前記成形型の前記開口部上に一方の面を当接させた状態で配置された金属材料の前記一方の面とは異なる他方の面に回転して押し当てられる回転ツールを備え、
前記回転ツールを前記金属材料に押し当てながら前記回転ツールを移動させることで、前記内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、前記形成孔内に前記突出部を形成する、
ことを特徴とする成形体の製造装置。
【請求項14】
基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体であって、
前記基体及び前記突出部は、同一の金属材料によって一体形成されており、
前記突出部は、前記金属材料の塑性化領域のみからなるとともに、前記基体から漸次的に変形しながら形成されており、さらに、前記基体からまっすぐに伸びている、
ことを特徴とする成形体。
【請求項15】
基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体において、前記突出部を形成する成形型であって、
表面に開口する開口部と、前記開口部に連通して内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部を備え、
前記開口部上に金属材料の一方の面を当接させた状態で配置し、前記金属材料の前記一方の面とは異なる他方の面に回転する回転ツールを押し当てながら前記回転ツールを移動させることで、前記内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、前記形成孔内に前記突出部を形成した後は、ノックピンを前記形成孔側から前記金属材料の一方の面に押し当てて前記突出部を前記形成孔内から型抜きする、
ことを特徴とする成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出部の形成方法、成形体の製造方法、成形体の製造装置、成形体、及び成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
環境対応車で使用されているインバータ、コンバータ等を冷却する冷却部品にはヒートシンクが多く使用されている。これらのヒートシンクとしては、鍛造によって塑性変形を受けた金属材料を金型に設けられたフィン成形孔内に流入させることでピンフィンを形成する、鍛造工法によって製造されているものが知られている。この鍛造工法では、ピンフィンの高さが不揃いとなることが課題であった。
このような鍛造工法の課題に対して、特許文献1においては、フィン成形孔内に背圧付与ピンをセットして、背圧付与ピンによって背圧を付与することでピンフィンの高さを揃える、背圧鍛造法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5941037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、複数のフィン成形孔上に配置された金属材料を全体的に加圧するため、部分的にピンフィンのサイズを変化させたり、部分的にピンフィンのピッチを変えたり、部分的にピンフィンの高さを変えたり、等の変化を与えることが困難であった。
このような観点から、本発明は、突出部のサイズ、ピッチ、高さ等を揃えたり、あるいは部分的に変更したりすることができる突出部の形成方法、成形体の製造方法、成形体の製造装置、及び成形型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために第一の発明は、基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体において、成形型を用いて前記突出部を形成する突出部の形成方法であって、前記成形型は、前記成形型の表面に開口する開口部と、前記開口部に連通して前記成形型の内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部を備え、前記成形型の前記開口部上に金属材料の一方の面を当接させた状態で配置する配置工程と、前記金属材料の前記一方の面とは異なる他方の面に回転する回転ツールを押し当てながら前記回転ツールを移動させることで、前記内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、前記形成孔内に前記突出部を形成する形成工程と、前記突出部の形成後に、前記突出部を前記形成孔から離脱させる離脱工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0006】
前記形成孔は、前記開口部から前記成形型の内部に向けて真っ直ぐに伸びており、前記形成孔の高さは前記開口部の径よりも大きい、ことが好ましい。
【0007】
前記形成孔は、前記開口部よりも奥側の断面形状が、前記開口部側の断面形状よりも大きい、ことが好ましい。
【0008】
ことが好ましい。
【0009】
前記回転ツールは、基部、及び前記基部に連続する円錐形状の先端部を備え、前記先端部の表面に螺旋溝が設けられており、前記形成工程において、前記先端部を前記金属材料に接触させる、ことが好ましい。
【0010】
前記先端部は、前記回転ツールの回転軸を中心とするテーパー状の側面部を側面に有するとともに、前記回転ツールの回転軸と直交する先端面部を先端に有する円錐台形状である、ことが好ましい。
【0011】
前記螺旋溝は、前記回転ツールの回転軸と略平行な方向に延びる段差側面と、前記回転軸と略垂直な方向に向いた段差底面とからなる段差部を有し、前記段差部が螺旋状に周回しながら、前記段差部の前記段差底面が、前記先端部の外周側に位置する前記段差部の前記段差側面と隣接し、前記段差部の前記段差側面が、前記先端部の内周側に位置する前記段差部の前記段差底面と隣接して、繰り返し形成されており、前記段差底面には、前記回転軸の方向に凹んだ凹部が設けられている、ことが好ましい。
【0012】
前記螺旋溝の深さが、0.1~1.0mmである、ことが好ましい。
【0013】
前記先端部のテーパー角度が、100~175°である、ことが好ましい。
【0014】
前記突出部が、ピンフィンであり、前記成形体が、前記突出部として前記ピンフィンを備えるヒートシンクである、ことが好ましい。
【0015】
第二の発明は、前記の突出部の形成方法によって前記突出部を形成して、前記成形体を得る、ことを特徴とする。
【0016】
前記成形体が、前記突出部としてピンフィンを有するヒートシンクである、ことが好ましい。
【0017】
第三の発明は、基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体において、成形型を用いて前記突出部を形成して前記成形体を得る、成形体の製造装置であって、前記製造装置は、前記成形型の表面に開口する開口部と、前記開口部に連通して前記成形型の内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部を備える成形型、及び前記成形型の前記開口部上に一方の面を当接させた状態で配置された金属材料の前記一方の面とは異なる他方の面に回転して押し当てられる回転ツールを備え、前記回転ツールを前記金属材料に押し当てながら前記回転ツールを移動させることで、前記内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、前記形成孔内に前記突出部を形成する、ことを特徴とする。
【0018】
第四の発明は、基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体であって、前記基体及び前記突出部は、同一の金属材料によって一体形成されており、前記突出部は、前記金属材料の塑性化領域のみからなるとともに、前記基体から漸次的に変形しながら形成されており、さらに、前記基体からまっすぐに伸びている、ことを特徴とする。
【0019】
第五の発明は、基体、及び前記基体から立設される突出部を備える金属製の成形体において、前記突出部を形成する成形型であって、表面に開口する開口部と、前記開口部に連通して内部に存在する内部空間とからなる形成孔を有する形成部を備え、前記開口部上に金属材料の一方の面を当接させた状態で配置し、前記金属材料の前記一方の面とは異なる他方の面に回転する回転ツールを押し当てながら前記回転ツールを移動させることで、前記内部空間に流入した塑性流動材の硬化によって、前記形成孔内に前記突出部を形成した後は、ノックピンを前記形成孔側から前記金属材料の一方の面に押し当てて前記突出部を前記形成孔内から型抜きする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、突出部のサイズ、ピッチ、高さ等を揃えたり、あるいは部分的に変更したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る成形体の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る成形型を上側から視た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る成形型を下側から視た斜視図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5図4のB部分の拡大図である。
図6】本発明の実施形態に係る回転ツールの正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る回転ツールの先端部の底面図である。
図8】本発明の実施形態に係る回転ツールの螺旋溝の拡大縦断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る突出部の形成方法における配置工程を説明する縦断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る突出部の形成方法における形成工程を説明する縦断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る突出部の形成方法における形成工程を説明する平面図である。
図12】本発明の実施形態に係る突出部の形成方法における形成工程を説明する拡大縦断面図である。
図13】本発明の実施形態に係る突出部の形成方法における離脱工程(離脱前)を説明する縦断面図である。
図14】本発明の実施形態に係る突出部の形成方法における離脱工程(離脱後)を説明する縦断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る成形体における突出部の他の形状(矩形状)の例を示す平面図である。
図16】本発明の実施形態に係る成形体における突出部の他の形状(向きが異なる矩形状)の例を示す平面図である。
図17】本発明の実施形態に係る成形体における突出部の他の形状(三角形状)の例を示す平面図である。
図18】本発明の実施形態に係る成形型における開口部の形状(矩形状)の例を示す平面図である。
図19】本発明の実施形態に係る成形型における開口部の形状(水滴形状)の例を示す平面図である。
図20】本発明の実施形態に係る成形型における開口部の形状(扁平形状)の例を示す平面図である。
図21】比較例1として使用するショルダーレスタイプの摩擦攪拌接合用の回転ツールの先端部分の正面図である。
図22】比較例2に使用する摩擦攪拌接合用の回転ツールの先端部の正面図となる図面代用写真である。
図23】本発明の実施例2を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図24】本発明の実施例3を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図25】本発明の実施例4を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図26】本発明の実施例5を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図27】本発明の実施例6を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図28】本発明の実施例7を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図29】本発明の実施例8を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
図30】本発明の実施例9を説明する図であり、(a)は、回転ツールの移動軌跡と押込み量を示す平面図であり、(b)は、回転ツールを移動させた後の金属材料の平面図である図面代用写真であり、(c)は、成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。さらに、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであり、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0023】
[1.成形体]
図1は、本発明の実施形態である成形体の斜視図である。この成形体1は、例えば板形状の基体2と、基体2の一方の面から1又は複数本の突出部3が立設している金属製の部材である。本例では、基体2は平面視で矩形形状である。本例では、成形体1は、基体2から突出部3であるピンフィンが立設したヒートシンクであり、インバータ、コンバータ等を冷却する冷却部品として使用される。
【0024】
基体2及び突出部3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の同一の金属材料、本例ではアルミニウム合金によって一体形成されている。基体2は、上述した金属材料を含む展伸材によって形成することができる。突出部3は、金属の塑性化領域のみからなるとともに、基体2から漸次的に変形しながら形成されており、さらに、基体2からまっすぐに伸びている。
【0025】
各突出部3の形状は、本実施形態では、円形、三角形、四角形等の径方向断面形状を有する柱状(棒状)になっている。突出部3の断面形状は、その他にも、半円形、部分円形、楕円形、五角形以上の多角形、星形、涙滴状(水滴形状)、二つの部分円弧を合体させた形状(扁平形状)、小波型、不定形等、あるいはこれらの形状を組み合わせた形状であってもよい。さらに突出部3の形状は、板状(壁状、山脈状)、であってもよい。突出部3は、中実(軸状)であってもよく、中空(管状、枠状)であってもよい。複数の突出部3の形状は、同じであってもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、複数の突出部3のサイズ(高さ、径)は、同じであってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0026】
複数の突出部3は、本実施形態では、各突出部3が間隔を開けて六角格子状に規則配置されている。突出部3の配置は、成形体1に求められる特性に応じて適宜変更することができる。突出部3の配置は、例えば、六角格子状、正方格子状、矩形格子状、平行体格子状の規則配置であってもよく、ランダムな不規則配置であってもよい。また、複数の突出部3が配置される間隔も、一定にしてもよく、変化させるようにしてもよい。
【0027】
突出部3が円形であれば突出部3の向きは問題とはならないが、突出部3が円形以外の場合には、各突出部3が配置されている向きは、成形体1に求められる特性に応じて適宜変更することができる。各突出部3が配置されている向きは、同一の向きに揃うように配置してもよく、交互に互い違いの向きに配置してもよく、ランダムな不規則な向きに配置してもよい。
【0028】
[2.成形型]
前記した成形体1の製造には、成形体の製造装置を使用する。この成形体の製造装置は、成形型と回転ツールとを備えている。以下では、まず、成形型の構成について説明し、次に回転ツールの構成について説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る成形型11を上側から視た斜視図であり、図3は、同下側から視た斜視図であり、図4は、図2のA-A断面図である。成形型11は、成形体1を成形して製造するための金型である。成形型11は、工具鋼で形成されている。この成形型11は、外観が略直方体形状の下型12と、下型12の上に載置され、下型12の厚みよりも薄い板状の上型13とを備えている。下型12と上型13とは、上面視した形状が同一(矩形状)になっている。成形型11は、下型12の下部から出し入れ自在の補助プレート15と、上型13、下型12、補助プレート15を上下に貫通して抜き差し自在な本例で4本のノックピン16(図14参照)とを備えている。
【0030】
上型13及び下型12の上面視で中央部には、突出部3を形成する形成部21が設けられている。形成部21においては、上型13から下型12にかけて上下に貫通する形成孔22が複数本形成されている。下型12の形成部21の直下は、下型12の下面から開口した空間である補助プレート収納部23が形成されている。補助プレート収納部23は、下型12の下面側から例えば直方体形状の補助プレート15を収納することができる空間となる。補助プレート収納部23に補助プレート14を収納すると、補助プレート15の上面は、下型12側の形成部21の下面まで達する。また、このとき、補助プレート収納部23内の補助プレート15の側面は、上面視で形成部21の領域の外縁の外側にまで達している。つまり、補助プレート15の大きさは、形成部21よりも十分に大きくなっており、全ての形成孔22の下部が補助プレート15で塞がれる。補助プレート15は、突出部3を形成する際に、伸びてきた流入金属121(図12,13参照)と接触しないか、わずかに接触する位置関係になっている。
【0031】
本例で、形成部21の4隅の外側には、それぞれ上型13、下型12、補助プレート15を貫く孔が貫通している。この各孔は、上型13における上型ノックピン用孔25、下型12における下型ノックピン用孔26、補助プレート14における補助プレートノックピン用孔27である。上型13、下型12、補助プレート15を図2図4に示すように組み合わせた状態では、上型13側から、上型ノックピン用孔25、下型ノックピン用孔26、補助プレートノックピン用孔27を刺し貫くようにノックピン16(図14参照)を挿入することができる。
【0032】
図14に示すように、ノックピン16は、例えば円柱状の軸状部材であり、上端部だけ径外方向にフランジ状に張り出したフランジ部28を備えている。そして、上型13の上型ノックピン用孔25の上側部分の形状は段差形状の段差部29をなしていて、段差部29とフランジ部28とが係合することができる。そのため、上型ノックピン用孔25、下型ノックピン用孔26及び補助プレートノックピン用孔27(図4参照)を貫いてノックピン16を挿入すると、段差部29とフランジ部28とが係合する。ノックピン16は、下型12の下方に飛び出ない長さに設定されている。また、ノックピン16の上端面は、上型13の上面からはみ出さないように設定されている。
【0033】
図5は、形成部21に設けられた形成孔22の拡大縦断面図である(図4のB部分の拡大図)。形成孔22は、成形型11の上型13の表面に開口する開口部31と、開口部31に連通して成形型11(上型13,下型12)の内部(奥側)に存在する内部空間32とを備えている。内部空間32は、上型13に形成された上部孔33と、下型12に形成された下部孔34とからなる。上部孔33は上型13を貫通し、下部孔34は下型12を貫通している。このように本実施形態では、形成孔22は成形型11を上下に貫通した孔だが、必ずしも貫通孔でなくともよい。しかし、貫通孔とした方がガス、空気等が抜けやすいので好ましい。
【0034】
形成孔22は、開口部31から成形型11の内部に向けて真っ直ぐに伸びている。形成孔22は、その高さH1が、開口部31の径Φ1よりも大きい、縦長の形状となっている。形成孔22は、円柱状、角柱状等の形状である。開口部31及び上部孔33の断面形状は、長さ方向で同一になっている。形成孔22は、真っ直ぐに伸びていれば、先細りの錘形状でもよく、途中に段差があってもよい。形成孔22は、折れ曲がっていたり、カーブしていたり、螺旋形状だったりすると、後記する型抜きができなくなるので、適切ではない。ここで、「真っ直ぐ」とは「曲がらないで」の意味である。つまり、形成孔22は、成形型11の(上型13の)上面から垂直に伸びていなくてもよい。よって形成孔22は、真っ直ぐであれば、開口部31から成形型11の内部に向けて斜めに伸びていてもよい。ただし、形成孔22が成形型11の内部に斜めに伸びている場合には、形成孔22も成形型11の内部に斜めに伸びて、形成孔22とノックピン16とが平行に形成される。
【0035】
形成孔22は、開口部31よりも奥側の断面形状が、開口部31側の断面形状よりも大きい。具体的には、上型13に形成された上部孔33の断面形状よりも、下型12に形成された下部孔34の断面形状の方が大きい。
【0036】
形成孔22は、開口部31よりも奥側の下部孔34の断面形状が、開口部31及び上部孔33の断面形状の外接円形状と同じ形状か、外接円形状よりも大きい形状となっている。例えば、突出部3が三角柱状の場合、形成孔22の開口部31及び上部孔33の断面形状が三角形であり、奥側の下部孔34の断面形状が、開口部31及び上部孔33の三角形の外接円形状と同じ形状か、開口部31及び上部孔33の三角形の外接円よりも大きくなっている。つまり、奥側の下部孔34の断面形状が、開口部31及び上部孔33の断面形状の外接円と同一であるか、よりも大きくなっているのであれば、開口部31の断面形状と、下部孔34の断面形状とは異なっていてもよい。
【0037】
前記のとおり形成部21に形成孔22は複数形成されており、この複数の形成孔22は、同じ方向に同じ角度で伸びている。
形成孔22の形状、サイズ、配置、向きは、製造しようとする成形体1に設けられる突出部3の形状、サイズ、配置、向きに合わせて、適宜設定することができる。
【0038】
[3.回転ツール]
図6は、本発明の実施形態に係る回転ツールの正面図である。図7は同回転ツールの先端部の底面図である。回転ツール41は、回転しながら金属材料に押し当てることにより金属材料を軟化させる器具である。回転ツール41は、工具鋼で形成されている。この回転ツール41は、柱状又は錘台状を呈する基部42、及び基部42に連続する円錐形状の先端部43を備えている。先端部43の表面には螺旋溝47が設けられている。回転ツール41は、後記するように周方向に回転させながら金属材料に先端部43を接触させる。
【0039】
基部42は、例えば円柱形状であり、その基端部側には外周側に張り出したフランジ部44が形成され、フランジ部44のさらに基端部側には基部42よりさらに径サイズが小さい例えば円柱形状の基端部91が設けられている。回転ツール41は、基端部91を介してマシンニングセンタ等の装置に取り付けられて使用される。
【0040】
先端部43は、回転ツール41の回転軸Cを中心とするテーパー状の側面部45を側面に有するとともに、側面部45よりも先端側に連続して設けられ、回転ツール41の回転軸Cと直交する面形状の先端面部46を先端に有する円錐台形状である。先端面部46の面形状は、平面でも、曲面(凸部、凹部)でもよい。回転ツール41は、先端部43において、螺旋溝47が設けられている側面部45に連続して先端面部46が設けられており、先端部43の先端にピン状の突起部が設けられていない。
【0041】
先端部43のテーパー角度θ1は、100~175°である。テーパー角度θ1は、より好ましくは115~165°であり、さらに好ましくは130~155°であり、特に好ましくは140~145°である。
【0042】
螺旋溝47は、回転ツール41の中心側から螺旋状に周回しながら外周方向に広がるように設けられている。螺旋溝47の周回回数は、好ましくは1周以上、より好ましくは2周以上、さらに好ましくは3周以上、特に好ましくは5周以上である。螺旋溝47は、1本の螺旋溝が周回することによって形成されていてもよく、2本以上の螺旋溝が互いに並行しながら周回することによって形成されていてもよい。
【0043】
図8は、螺旋溝47の拡大縦断面図である。螺旋溝47は、回転ツール41の回転軸C(図5)と略平行な方向に延びる段差側面51と、回転軸Cと略垂直な方向に向いた段差底面52とからなる段差部53を有している。回転ツール41を回転軸を通る平面で断面視した場合、段差部53は側面部45を螺旋状に周回しながら、周回違いの段差部53の段差側面51と段差底面52とが隣接して、繰り返し形成されている。具体的には、段差部53が螺旋状に周回することで、外周側から、第一段差側面51aと第一段差底面52aとからなる第一段差部53a、第二段差側面51bと第二段差底面52bとからなる第二段差部53b、第三段差側面51cと第三段差底面52cとからなる第三段差部53cがこの順で形成されているとする。この場合、第二段差部53bの第二段差底面52bが、先端部43の外周側に位置する第一段差部53aの第一段差側面51aと隣接している。また、第二段差部53bの第二段差側面51bが、先端部43の内周側に位置する第三段差部53cの第三段差底面52cと隣接している。このように、段差部53は、側面部45において螺旋状に周回しながら隣接して繰り返し形成されており、隣接する段差部53の間には、テーパー状の先端部43のテーパー角度で形成されるテーパー面が存在しないようになっている。
【0044】
段差底面52には、回転軸Cの方向に凹んだ凹部54が設けられている。段差底面52と凹部54によって、段差底部55を構成している。すなわち、段差部53は側面部45を螺旋状に周回しながら、第二段差部53bの第二段差底部55bが外周に位置する第一段差部53aの第一段差側面51aと隣接し、第二段差部53bの第二段差側面51bが内周に位置する第三段差部53cの第三段差底部55cと隣接して繰り返し形成されている。段差底面52の外周側に位置する段差側面51と、当該段差底面52に設けられている凹部54とによって、ツールの先端側に向けて回転軸Cの方向に張り出した張出部56が形成される。このように螺旋溝47の形状は、ステップ状(段差形状)ではなく、ネジ形状でもない。
【0045】
螺旋溝47に設けられた凹部54の断面形状は、本実施形態では円弧状になっているが、楕円状、長方形状、三角形状等であってもよい。凹部54への金属材料が貯まってしまうことを抑制する観点からは、凹部54の断面形状は、円弧状であることが好ましい。
【0046】
凹部54は、段差底面52の全体に設けられていてもよく、段差底面52の内周側の端部又は外周側の端部との間隔をあけて設けられることで段差底面52の一部に設けられていてもよい。段差底面52の内周側の端部との間隔をあけて凹部54が設けられることで、内周側段差底面57が形成される。段差底面52の外周側の端部との間隔をあけて凹部54が設けられることで、外周側段差底面58が形成される。段差底面52の外周側の端部に凹部54が設けられることで、張出部56は、ツールの先端側に向けて尖った形状となる。段差底面52の外周側の端部に凹部54が設けられている場合には、張出部56が尖っていることで摩耗を受けやすくなる。このため、凹部54は、段差底面52の外周側の端部との間隔をあけて、外周側段差底面58が形成されていることが好ましい。本実施形態では、段差底面52において。凹部54が設けられているその両側には、凹部54が形成されていない平坦な部分である、内周側段差底面57及び外周側段差底面58が残っている。
【0047】
凹部54は、当該凹部54が設けられている段差底面52の外周側に位置する段差底面52の高さよりも低い(浅い)ことが好ましい。また、凹部は、当該凹部54が設けられている段差底面52の外周側に位置する段差部53に形成される張出部56の高さよりも低い(浅い)ことが好ましい。また、凹部54が設けられている段差底部55において、凹部54の深さは、段差側面51の高さよりも低い(小さい)ことが好ましい。これにより、凹部54に金属材料が溜まってしまうことを抑制することができ、先端部43によって金属材料を均一に押し出しやすくなる。
【0048】
螺旋溝47の深さH2は、0.2mm~1.5mmである。深さH2は、回転ツール41の回転軸Cの方向において、段差底面52に設けられた凹部54の最も凹んだ部分と、当該段差底面52の内周側で隣接している段差側面51の張出部56の最も張り出した部分との間の長さを意味する。深さH2は、より好ましくは0.3~1.3mmであり、さらに好ましくは0.5~1.2mmである。螺旋溝47の深さH2は、先端部43の高さの5~30%とするのが好ましく、8~27%とするのがより好ましく、11~25%とするのがさらに好ましい。
【0049】
螺旋溝47のピッチ(間隔)P1は、0.5~2.5mmである。ピッチP1は、回転ツール41の回転軸Cに垂直な面において、回転軸Cの中心側から螺旋状に周回して外側に広がりながら形成されている螺旋溝47の平均間隔を意味する。ピッチP1は、より好ましくは0.7~2.0mmであり、さらに好ましくは1.0~1.8mmである。螺旋溝47のピッチは、先端部43の直径の2~15%とするのが好ましく、4~10%とするのがより好ましく、5~9%とするのがさらに好ましい。
【0050】
[4.突出部の形成方法]
次に、成形型11及び回転ツール41を用いて成形体1を製造する突出部の形成方法(成形体の製造方法)について順を追って説明する。
【0051】
(配置工程)
図9は、本実施形態の突出部の形成方法における配置工程を説明する縦断面図である。まず、図2図4に示すような状態に成形型11を組み合わせる。すなわち、上型13を下型12の上に位置合わせして載置し、補助プレート収納部23に補助プレート15を挿入して、これらを上下に貫通するように前記のとおり4本のノックピン16を差し入れる。そして、上型13の上面14の形成部21の全域(図4)、及び全ノックピン16の範囲をカバーできるように、例えば板状の金属材料101をその一方の面102を上面14に当接させた状態で配置する。そして、この状態で各部が位置ずれしないように所定の治具(図面不図示)で固定する。金属材料101としては、前記のとおりアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などを使用できるが、本実施形態ではアルミニウム合金の展伸材を用いている。
【0052】
(形成工程)
配置工程の後、形成工程を実施する。図10は、本実施形態の突出部の形成方法における形成工程を説明する縦断面図である。金属材料101の一方の面102とは異なる他方の面103(上面)に回転軸Cを中心に回転する(黒線矢印)回転ツール41を押し当てながら、回転ツール41を金属材料101上で金属材料101の他方の面103と平行な方向に移動させる(白抜き矢印)。なお、本実施形態では、一方の面102と他方の面103とは対向する位置関係にあるが、金属材料101に後記する塑性流動を適切に生じさせることができれば、これらの面の配置関係は変更してもよい。
【0053】
図11は、本実施形態の突出部の形成方法における形成工程を説明する平面図である。回転ツール41の金属材料101上での移動始点111は、上型13の形成部21(図2図4)が形成されている領域の中央部である。そして、移動始点111から始まる回転ツール41の金属材料101上での移動軌跡112は、本例では中央部から始まる渦巻状である。回転ツール41の移動によって形成された塑性化領域を所定のピッチ(数ミリ程度)で重複させながら、徐々に外側に向けて移動させて行く。すなわち、移動軌跡112は、軌跡が交差しないように中央部の周囲を移動する曲線となっている。本実施形態では、移動軌跡112は、中央部の周囲を移動しながら中央部からの距離が漸増する円形状の渦巻曲線となっているが、長円形状、または楕円形状の渦巻曲線であってもよい。この移動軌跡112はあくまでも一例であり、様々な形状の移動軌跡を実施することができる。例えば、移動軌跡112は、直線状に設定してもよく、移動方向を変更しながら中央部の周囲を移動する直線として設定してもよい。また、移動軌跡112の移動始点を外側に設定して、移動終点を型13の形成部21が形成されている領域の中央部に設定してもよい。この移動軌跡112の終点は、例えば、少なくとも全ての形成孔22(図2図4図5)の直上又はその近傍を回転ツール41が通過した後の位置である。摩擦鍛造は、移動軌跡112の始点から終点まで連続的に行うことが好ましい。ここで回転ツール41の移動軌跡112が左回りの軌跡の場合、回転ツール41を右回転させて、回転ツール41の移動軌跡112が右回りの軌跡の場合、回転ツール41を左回転させる。図11の例では後者である。
【0054】
図12は、本実施形態の突出部の形成方法における形成工程を説明する拡大縦断面図である。回転する回転ツール41の先端部43が金属材料101に押し当てられることにより、金属材料101は回転ツール41により摩擦されて塑性流動を起こして軟化する。形成工程では、先端部43が金属材料101の他方の面103と当接するように、回転ツール41の押し込み量を設定する。このとき、先端部43の全体が金属材料101の他方の面103よりも深く挿入されずに、先端部43と基部42との境界位置が金属材料101の他方の面103と同程度の高さとなるか、または、先端部43と基部42との境界位置が金属材料101の他方の面103よりも浅く、先端部43の基部42側が露出した状態となるように押し込み量を設定することが好ましい。軟化した金属材料(塑性流動材)101は、形成孔22に流入し、この流入した流入金属121は開口部31及び上部孔33により断面形状が成形された状態で、内部空間32の奥側に伸びる。このとき、下部孔34の断面形状は開口部31及び上部孔33の断面形状よりも大きく、下部孔34の径は開口部31の径Φ1(図5)と一部同一であるかより大きくなっているので、内部空間32の奥側に伸びた流入金属121の外周面と下部孔34の内周面との間に隙間が生じる。
【0055】
このように、金属材料101を軟化させてその一部を形成孔22に流入させた後、所定時間が経過すると、軟化していた金属材料101が冷却固化する。すると、流入金属121は突出部3となり、成形型11上に残存した金属材料101は基体2となって、基体2から突出部3が突出した前記の成形体1を一体形成することができる。
【0056】
回転ツール41を金属材料101に押し当て移動するときの諸条件は目的等に応じて様々に設定することができる。このような条件としては、回転ツール41の回転速度、回転ツール41の移動速度、隣り合う塑性化領域同士のピッチ、回転ツール41の金属材料101に対する押込み量、押し込み荷重等があげられる。特に、回転ツール41の押込み量を制御することによって、複数の突出部3の高さを揃えたり、異ならせたりすることが可能となる。
【0057】
突出部3を形成する際に、伸びてきた流入金属121は、補助プレート14と接触しない程度の高さまで形成することが望ましい。言い換えれば、流入金属121は、下部孔34の全長に達しない程度の高さまで形成することが好ましい。流入金属121が補助プレート15と接触しないことで、流入金属121と補助プレート15との接触によって起こる、流入金属121及び突出部3が折れ曲がったり潰れたりといった変形を防ぐことができる。ただし、複数の突出部3の高さを揃える観点からは、流入金属121を補助プレート15にわずかに接触させるようにしてもよい。
【0058】
(離脱工程)
形成工程の後、離脱工程を実施する。図13図14は、本実施形態の突出部の形成方法における離脱工程を説明する縦断面図である。図13に示すように、まず、補助プレート収納部23から補助プレート14を除去して、補助プレート15を除去した成形型11を上下逆転して、成形型11の両側から張り出している支持部71を台座部72の上に支持させて、成形型11を上下逆転した状態で支持させる。そして、補助プレート15を除去したことでノックピン16の先端側がむき出しとなっている補助プレート収納部23内に、補助プレート15と同寸法であって、前記の補助プレートノックピン用孔27のような孔の形成されていない補助用治具73を差し込んでいく。この場合、補助用治具73を必要に応じてハンマー等で上から叩いてもよい。
【0059】
図14に示すように、補助プレート収納部23内に補助用治具73に差し込んでいくことで、補助用治具73によりノックピン16が押し込まれる。これにより、ノックピン16の先端を形成孔22側から金属材料101の一方の面102に押し当てて、金属材料101を成形型11から剥がし、突出部3を型抜きする。こうして完成した成形体1を成形型11から型抜きすることができる。
【0060】
以上のようにして成形体1を製造することができる。図1の例では、成形体1の突出部3の形状は断面が円形状のものを例示した。図15図17は、いずれも突出部の他の形状の例を示す平面図である。図15は、突出部3の形状が矩形状であり、複数の突出部3が六角格子状に配置されて、六角格子を形成する互いに交差しない三辺のうちの一辺に対して矩形の向きが平行になっている例である。図16は、突出部3の形状が図15と同じ矩形状であり、六角格子状に配置されているが、その矩形の向きが図15とは異なっており、六角格子を形成する互いに交差しない三辺のいずれとも矩形の向きが平行になっておらず傾いている例である。図17は、突出部3の形状が三角形状であり、複数の突出部3が六角格子状に配置されて、六角格子を形成する互いに交差しない三辺のうちの一辺では三角形の向きが揃っているが、平行な一辺ごとに三角形の向きが交互に入れ替わっている例である。
【0061】
これらの形状は、成形型11の開口部31の形状を所望のものとすることで制御することができる。図18~20は、開口部の形状の例を示す平面図である。図18は、矩形状の開口部31の例である。図19は、略水滴形状の開口部31の例である。図20は、両端部を鋭くした略楕円形状(扁平形状)の開口部31の例である。このように、開口部31の形状を変えることで、所望の断面形状の突出部3を形成することができる。
【0062】
[5.作用効果]
以上説明した本実施形態の突出部の形成方法(成形体の製造方法)によれば、次のような作用効果を奏することができる。
前記特許文献1の鍛造工法では加工すべき金属材料の全体を加圧していた。これに対して、本実施形態では、回転する回転ツール41を用いた摩擦鍛造により、金属材料101を部分的に加圧することができる。また、本実施形態によれば、回転ツール41の回転速度、回転ツール41の移動速度、隣り合う移動軌跡112間のピッチ、回転ツール41の金属材料101に対する押込み量等の条件の制御と、成形型11の設計によって、突出部3のサイズ、ピッチ、又は高さを部分的に変化させることができる。また、成形型11に設けられる形成孔22の個数、形状、サイズ、配置等を変化させることができる。従って、本実施形態によれば、これらの摩擦鍛造の条件と成形型11に応じて、各突出部3の高さを揃えた成形体1を製造することができる。また、本実施形態によれば、摩擦鍛造の条件と成形型11に応じて、所望の部位の突出部3の形状、サイズ、ピッチ、又は高さを部分的に他の部分と異ならせた成形体1を製造することもできる。
【0063】
前記の特許文献1の鍛造工法では、大きな鍛造機と複雑な鍛造型が必要であったのに対して、本実施形態によれば、形成孔22を有する簡単な成形型11と通常のマシニングセンタを利用して突出部3を形成することができる。従って、本実施形態によれば、突出部3を有する成形体1を低製造コストで製造することができる。
【0064】
形成孔22は、開口部31から成形型11の内部に向けて真っ直ぐに伸びている。そして、形成孔22は、その高さH1が、開口部31の径Φ1よりも大きい。そのため、金属材料101から生じた塑性流動材の形成孔22内への流動をスムーズに行わせて、開口部31の形状に合った突出部3を真っ直ぐに形成することができる。これにより、突出部3を形成孔22内から離脱させる作業をスムーズに行うことができる。
【0065】
ここで、例えば、形成孔22の内部空間の形状が、径が一定の柱状や先細りのテーパー状等であった場合は、突出部3が形成孔22の奥側の内壁面と接触するため型抜きしにくくなるという問題がある。また、形成孔が先細り形状だと、突出部3の形成時に突出部3に対する圧力が上がり、突出部3の形成が困難になるという問題がある。
これに対し本実施形態の形成孔22は、開口部31よりも奥側の断面形状が、開口部31側の断面形状よりも大きい。具体的には、上型13に形成された上部孔33の断面形状よりも、下型12に形成された下部孔34の断面形状の方が大きい。これにより、下部孔34内では突出部3との間に空間ができるので成形後の突出部3の型抜きが行い易い。また、成形段階においても塑性流動材が下部孔34に接触しないため、成形精度を高めることができる。
【0066】
形成孔22は、開口部31よりも奥側の下部孔34の断面形状が、開口部31の断面形状の外接円形状と同じ形状か、開口部31の断面形状の外接円形状よりも大きい形状となっている。よって、成形後の突出部3の型抜きが行い易い。
【0067】
成形型11は、下型12と上型13とが別体として構成されており、上型13に開口部31及び上部孔33を設け、下型12に下部孔34を設けている。これにより、例えば、突出部3の断面形状を変更したい場合は、下型12はそのままで、所望の形状の開口部31及び上部孔33を備えた上型13を取り換えるだけでよい。つまり、成形型11によれば、様々な断面形状を備えた突出部3を容易に成形することができる。
【0068】
また、例えば、下型12の下部孔34をエンドミル加工によって断面丸形状に作製して、上型13の上部孔33をワイヤーカットによって断面三角形状に作製することができる。このように、下型12と上型13とが別体として構成されていることで、下型12と上型13とが一体として構成されている場合に比して、開口部31及び上部孔33と、下部孔34とを、それぞれ加工方法を使い分けることで形状が異ならせることができる。これにより、成形型11の形状の自由度が増している。
【0069】
また、流入金属121が上部孔33に付着することを避けるためには上型13の厚さが過度に厚くならないようにする必要がある。一方、上型13が薄い場合には、形成工程において回転ツール41からの荷重を受けた上型13が撓み、突出部3が変形を受けたり、突出部3が上型13から抜けなくなったりすることがある。下型12と上型13とが別体として構成されており、回転ツール41からの荷重を上型13で受けながら、下型12で回転ツール41と反対側から荷重を支えるようにすることで、上型13の変形を抑えることができる。
【0070】
また、回転ツール41からの荷重を受ける上型13は、比較的に下型12よりも摩耗や損傷を受けやすい。下型12と上型13とが別体として構成されていることで、上型13が摩耗や損傷を受けた場合であっても、上型13のみを交換することで、成形型11の修理費を引き下げることができる。
【0071】
形成部21に形成孔22は複数形成されており、この複数の形成孔22は、同じ方向に同じ角度で伸びている。そのため、形成孔22が複数存在しても、形成孔22から突出部3を容易に型抜きすることができる。
【0072】
ここで、例えば、回転ツール41の先端部43の形状が、段差形状(ステップ形状)が螺旋状に設けられているような場合や、あるいは、ネジ形状であった場合には、塑性材料の巻き込みが不足するとともに、形成孔22側に流入させるための押圧力も小さくなるというおそれがある。これに対し、本実施形態の回転ツール41は、柱状又は錘台状を呈する基部42、及び基部42に連続する円錐形状の先端部43を備えている。そして先端部43の表面には螺旋溝47が設けられている。そのため、螺旋溝47が設けられた先端部43を金属材料101に接触させることで、螺旋溝47より塑性材料を掻き込んで形成孔22に流入させやすくすることができる。
【0073】
例えば、回転ツールの先端が、先細った形状である場合は、回転ツールの先端から回転軸Cの向きに押す金属材料の量が減ってしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、先端部43が、回転ツール41の回転軸Cを中心とするテーパー状の側面部45を側面に有するとともに、回転ツール41の回転軸Cと直交する先端面部46を先端に有する円錐台形状である。すなわち、側面部45によって導かれた塑性流動材を、回転ツール41の先端面部46で形成孔22方向に押し込むことができるため、突出部3を安定して形成することができる。また、本実施形態の回転ツール41は円錐台形状であることにより、回転ツールの先端が先細った形状である場合に比して、回転ツール41を離脱させた際の抜き穴が残りにくくなっている。これにより、成形体1の設計自由度を向上させることができる。また、抜き穴を取り除くための切削加工といった後加工を省略することで、生産性を向上させることができる。
【0074】
螺旋溝47は、回転ツール41の回転軸Cと略平行な方向に延びる段差側面51と、回転軸Cと略垂直な方向に向いた段差底面52とからなる段差部53を有している。この段差部53は側面部45を螺旋状に周回しながら、段差部53bの段差底面52bが、先端部43の外周側に位置する段差部53aの段差側面51aと隣接し、段差部53bの段差側面51bが、先端部43の内周側に位置する段差部53cの段差底面52cと隣接して、繰り返し形成されている。段差底面52には、回転軸Cの方向に凹んだ凹部54が設けられている。このような螺旋溝47の形状により、金属材料101を掻き込んで、回転ツール41の先端側に導く性能を高めることができる。
【0075】
螺旋溝47の深さH2は、0.1~1.0mmである。これにより、螺旋溝47を介して塑性材料を先端部43の先端側に導いて、突出部3を形成しやすくすることができる。
先端部43のテーパー角度θ1は、100~175°である。これにより、先端部43と金属材料101との接触面積が増加することで、塑性材料を先端部43の先端側に導いて、突出部3を形成しやすくすることができる。
【0076】
形成工程においては、回転ツール41の移動軌跡112が左回りの軌跡の場合、回転ツール41を右回転させて、回転ツール41の移動軌跡112が右回りの軌跡の場合、回転ツール41を左回転させる。これにより、回転ツール41の回転(自転)に伴って、塑性流動を引き起こしていない部分の金属材料101を、回転ツール41の移動軌跡112の内周側に引き込むことができる。
【0077】
形成工程においては、回転ツール41の押込み量を制御することによって、複数の突出部3の高さを揃えることが可能となる。当該根拠については、実施例にて説明する。
【0078】
[6.その他]
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
【0079】
上述した実施形態では、成形体1がヒートシンクである場合を例示して説明した。成形体1及び成形体1の製造方法は、基体2及び突出部3を備える物及びその製造方法として利用することができる。例えば、成形体1として、突出部3を足場として利用する支持台が上げられる、また、成形体1として、突出部3を壁状に形成した筐体(ケース)が挙げられる。
【0080】
上述した実施形態では、成形型11は、下型12と上型13とが別体として構成されている場合を例示して説明した。成形型11は、下型12と上型13とが一体として構成されていてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、回転ツール41は、基部42に円錐形状の先端部43を備えている場合を例示して説明した。回転ツール41は、塑性材料を形成孔22に流入させることができるものであれば限定されない。例えば、回転ツール41は、基部42の先端に位置する底面部に平坦面または凹曲面を有する円柱形状であってもよい。ただしこの場合、塑性材料を掻き込んで形成孔22に流入させやすくする観点から、基部42の底面部に渦巻状の溝を有することが好ましい。
【実施例0082】
以下では、本発明の実施例を中心に様々な実験データの内容について説明する。
<実験データ1>
次のような内容の実施例1と比較例1,2とで比較を行った。以下の各実施例、比較例で使用した成形型11では、断面が円形の突出部3を形成する場合は、開口部31の径が2.0mmで、下部孔34の径が2.2mmである。
【0083】
(実施例1)
図6~8を参照して説明した回転ツール41であって、テーパー角度等が異なる2種類の回転ツール41をそれぞれ用意して、前記した成形体1の製造を行った。2種類の回転ツール41はともに、基部42の径サイズが20mm、先端面部46の径サイズが3mmであり、螺旋溝47のピッチが1.5mmである。第一の回転ツール41は、先端部43のテーパー角度θ1が120°であり、先端部43の高さが5.8mmであり、螺旋溝47の深さH2が0.87mmである。第二の回転ツール41は、先端部43のテーパー角度θ1が135°であり、螺旋溝47の深さH2が0.62mmであり、先端部43の高さが4.1mmである。なお、使用する金属材料101は以下の全てのデータにおいてアルミニウム合金A1050からなる、厚さ6mmの板材である。回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が500mm/min、金属材料101への押込み量を3.6mmとした。回転ツール41の移動始点111を形成部21が形成されている領域の中央部とした。また、回転ツール41の移動軌跡112は、中央部から始まり外側に向けて回転しながら広がる、ピッチが3mmの渦巻状とした。押込み量は、金属材料101の他方の面103から先端面部46までの距離である。
【0084】
その結果、具体的な図示は省略するが、テーパー角度θ1が120°の第一の回転ツール41を用いた場合は、突出部3の平均高さが約6mmの成形体1を製造できた。
テーパー角度θ1が135°の第二の回転ツール41を用いた場合は、突出部3の平均高さが約8mmの成形体1を製造できた。
【0085】
(比較例1)
図21は、比較例1として使用するショルダーレスタイプの摩擦攪拌接合用の回転ツールの先端部分の正面図である。この回転ツール201は、回転ツール41の代わりに使用するもので、円柱状の基部202と、基部202に連続する円錐形状の先端部203を備えている。先端部203は、テーパー状の側面部204を側面に有するとともに、先端に先端面部205を有する円錐台形状である。本比較例1では、先端部203のテーパー角度θ2が105°のものと120°のものとを用意した。回転ツール201が回転ツール41の構成と大きく異なるのは、回転ツール41が前記したような螺旋溝47を形成しているのに対して、回転ツール201では、螺旋溝ではなく、回転ツール201の回転軸と略平行な方向に延びる段差側面と、回転軸と略垂直な方向に向いた段差底面とからなる、階段状の段差(図面不図示)を側面部204に形成している点である。基部202の径サイズが14mm、先端面部205の径サイズが1.5mmであり、段差のピッチが0.75mmであり、先端部203のテーパー角度θ2が105°と120°である2種類の回転ツール201をそれぞれ用意した。
【0086】
回転ツール201の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が500mm/min、金属材料101への押込み量を3.8mmとした。回転ツール201の移動始点111を形成部21が形成されている領域の中央部とした。また、回転ツール201の移動軌跡は、中央部から始まり外側に向けて回転しながら広がる、ピッチが3mmの渦巻状とした。このような条件で回転ツール41に代えて回転ツール201を用い、前記の成形型11を用いて前記実施形態と同様の工程で成形体1を製造した。
その結果、テーパー角度θ2が105°の回転ツール201を使用した場合は、製造した成形体1の突出部3の平均高さは約1mmとなった。
【0087】
テーパー角度θ2が120°の回転ツール201を使用した場合は、製造した成形体1の突出部3の平均高さは約2mmとなった。
【0088】
(比較例2)
図22は、比較例2に使用する摩擦攪拌接合用の回転ツールの先端部の正面図となる図面代用写真である。この回転ツール211は、ロート型のツールである。回転ツール211の先端部212は、テーパー状の基端部213と、基端部213に連続するテーパー状の先端部214とを備えている。基端部213のテーパー角度は150°であり、先端部214のテーパー角度は60°である。基端部213のテーパー角度は、先端部214のテーパー角度よりも大きくなっている。基端部213には階段状の段差が形成され、先端部214にはねじ状の溝が形成されている。回転ツール211は、基部の径サイズ、すなわち基端部213の根元部分の径が20mmであり、先端部214の根元部分の径が6mmであり、先端部214の先端に設けられた先端面部の径サイズが2mmである。
【0089】
回転ツール211の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が500mm/min、金属材料101への押込み量を3.8mmとした。回転ツール211の移動始点111を形成部21が形成されている領域の中央部とした。また、回転ツール211の移動軌跡は、中央部から始まり外側に向けて回転しながら広がる、ピッチが3mmの渦巻状とした。このような条件で回転ツール41に代えて回転ツール211を用い、前記の成形型11を用いて実施形態と同様の工程で成形体1を製造した。
その結果、製造した成形体1の突出部3の平均高さは約0~0.5mm程度であり、ほとんど突出部3を形成することができなかった。
【0090】
(評価)
前記の実施例1と比較例1,2の結果を比較すると、実施例1では、充分な高さの突出部3を形成できたが、比較例1,2では、十分な高さの突出部3を形成できないか、ほとんど突出部3を形成できなかった。よって、回転ツール41を用いた実施例1の方が比較例1,2よりも良好な結果を得ることができた。
【0091】
<実験データ2>
回転ツール41の押込み量を回転ツール41の移動軌跡112の途上で様々に変化させ、回転ツール41のその他の駆動条件も様々に設定して成形体1を製造する実験を行った。以下の実施例2~9では、テーパー角度θ1が135°の第二の回転ツール41を用いた。
【0092】
図23~30は各図が個別の実施例の内容を示している。各図において、(a)は、回転ツール41における中心から始まる渦巻状の移動軌跡112を示し、付記されている各数字は、回転ツール41の金属材料101への押込み量を示している。例えば、図23(a)では、押込み量を最初に2.6mmに設定し、約半周後に2.8mmに設定し、約一周後に3.2mmに設定する。さらに約半周ごとに3.0mm、3.4mm、3.6mmに設定する。回転ツール41の移動始点111を形成部21が形成されている領域の中央部とした。また、回転ツール41の移動軌跡112は、中央部から始まり外側に向けて回転しながら広がる、ピッチが3mmの渦巻状とした。
【0093】
また、各図において(b)は、回転ツール41を移動させた後の金属材料101の平面図である図面代用写真であり、(c)は、回転ツール41の駆動により成形後の突出部の平面図である図面代用写真である。
以下の各実施例では、条件を様々に設定して各突出部3の高さを10mmに揃えることを目標として実験を行った。
【0094】
(実施例2)
図23(a)(b)(c)は、実施例2の実験の内容を示す図である。実施例2では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が1000mm/min、金属材料101への押込み量は図23(a)のとおり、2.6~3.6mmである。
結果としては、突出部3の高さ目標10mmに対して全体に1~3.5mm程度短くなった。突出部3の高さにはばらつきが生じた。図23(c)において破線で示す部位では他の部位に比べて突出部3の高さが大きくなった。
【0095】
(実施例3)
図24(a)(b)(c)は、実施例3の実験の内容を示す図である。実施例3では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が1000mm/min、金属材料101への押込み量は図24(a)のとおり、3.2~3.8mmである。図24(a)を図23(a)と比較して明らかなように、実施例3では実施例2の場合よりも回転ツール41の金属材料101への押込み量を大きくした。
【0096】
結果としては、実施例2例と比較すれば、形成された突出部3の高さは大きくなったが、それでも目標としている10mmに対して1~2mm程度短い結果となった。突出部3の高さのばらつきも残った。図24(c)において破線で示す部位では他の部位に比べて突出部3の高さが大きくなった。
【0097】
(実施例4)
図25(a)(b)(c)は、実施例4の実験の内容を示す図である。実施例4では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が750mm/min、金属材料101への押込み量は図25(a)のとおり、3.4~4.0mmである。図25(a)を図24(a)と比較して明らかなように、実施例4では実施例3の場合よりも回転ツール41の金属材料101への押込み量を大きくした。
【0098】
結果としては、回転ツール41の金属材料101への押込み量を大きくしたことにより、突出部3の高さが実施例3よりも大きくなった。突出部3群の中央部では突出部3の目標高さである10mmを達成できたが、その外周部では突出部3の高さは小さく目標を達成できなかった。
【0099】
(実施例5)
図26(a)(b)(c)は、実施例5の実験の内容を示す図である。実施例5では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が500mm/min、金属材料101への押込み量は図26(a)のとおりで、実施例4と同じである。実施例5では回転ツール41の移動速度を実施例2~4よりも下げて、これにより回転ツール41から金属材料101への入熱量の増加を意図した。
【0100】
結果としては、実施例4で十分な高さにならなかった外周部の並びの突出部3の高さを大きくさせることができた。つまり、突出部3の目標高さである10mmを概ね達成できた。
【0101】
(実施例6)
図27(a)(b)(c)は、実施例6の実験の内容を示す図である。実施例6では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が750mm/min、金属材料101への押込み量は図27(a)のとおりであり実施例5と同様である。前記の各実施例では、断面が円形状の突出部3を形成していたが、本実施例6では、それよりも断面積が小さい断面形状が三角形状の突出部3を形成した。
結果としては、形成する突出部3の断面積の減少により、突出部3の高さを高めることができて、突出部3の高さは目標とする10mmをほぼ達成することができた。突出部3の高さのばらつきも少なかった。
【0102】
(実施例7)
図28(a)(b)(c)は、実施例7の実験の内容を示す図である。実施例7では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が750mm/min、金属材料101への押込み量は図28(a)のとおりであり実施例5と同様である。前記実施例4までは、断面が円形状の突出部3を形成していたが、本実施例7では、それよりも断面積が小さい断面形状が矩形状の突出部3を形成した。
【0103】
結果としては、形成する突出部3の断面積の減少により、突出部3の高さを高めることができて、突出部3の高さは目標とする10mmをほぼ達成することができた。突出部3の高さのばらつきも少なかった。
【0104】
(実施例8)
図29(a)(b)(c)は、実施例8の実験の内容を示す図である。実施例8では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が1250mm/min、金属材料101への押込み量は図29(a)のとおりであり、実施例5と同様である。本実施例8でも実施例6と同様の断面が三角形状の突出部3を形成した。回転ツール41の移動速度は前記の各実施例のどれよりも速く設定した。
【0105】
結果としては、複数本突出している突出部3の並びの中で外周部に位置する各突出部3の高さが十分に高くならないという結果になった。これは、回転ツール41の移動速度が速かったため、回転ツール41から金属材料101への熱拡散不足が生じたからではないかと推察される。
【0106】
(実施例9)
図30(a)(b)(c)は、実施例9の実験の内容を示す図である。実施例9では、回転ツール41の駆動条件は、回転数が3000rpm、移動速度が1000mm/min、金属材料101への押込み量は図29(a)のとおりであり実施例5と同様である。本実施例9でも実施例6と同様の断面が三角形状の突出部3を形成した。回転ツール41の移動速度は実施例8よりは遅く設定した。
【0107】
結果としては、複数本突出している突出部3の並びの中で外周部に位置する各突出部3の高さが十分に高くならないという結果になった。しかし、実施例8より回転ツール41の移動速度を低速にしたため、実施例8の場合よりは改善した。
【0108】
(評価)
実験データ2では、突出部3の高さを10mmに揃えた成形体1を製造するという目標を立てて、様々な条件を変更して複数の実験を行った。その目的に最も合致するという点では、実施例6,7において最も適切な結果を得られた。
実験データ2の結果からは、諸条件を変更することで、成形体1から複数本突出している突出部3の高さを部位によって変更できることが明らかになった。よって、諸条件を変更することで、突出部3の高さが部位によって異なる成形体1が製造できることも示された。例えば、本発明によれば、突出部3の並びの中央部と外周部とで突出部3の高さを変えることができる。また、本発明によれば、成形型11の設計によって、突出部3のサイズ、ピッチ等も部分的に変更することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 成形体(ヒートシンク)
2 基体
3 突出部(ピンフィン)
11 成形型(成形体の製造装置)
16 ノックピン
21 形成部
22 形成孔
31 開口部
32 内部空間
41 回転ツール(成形体の製造装置)
42 基部
43 先端部
45 側面部
46 先端面部
47 螺旋溝
51 段差側面
52 段差底面
53 段差部
54 凹部
101 金属材料
102 一方の面
103 他方の面
C 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30