(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171563
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65D47/34 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088634
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AB01
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084LB01
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】ノズル部材を噴出器本体に対して回転し、噴出状態と遮断状態とを切替えるときに、ノズル部材を摘まんだ指が滑るのを抑制する。
【解決手段】ノズル部材3は、ノズル軸O2と同軸に配設された筒状に形成されるとともに、噴出器本体にノズル軸回りに回転可能に装着され、ノズル部材の、噴出器本体に対するノズル軸回りの回転に伴って、噴出孔4と縦供給筒部内とが連通可能となる噴出状態と、噴出孔と縦供給筒部内との連通が遮断される遮断状態と、に切替えられ、ノズル部材には、ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作筒部71が設けられ、操作筒部は、ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作周壁72と、操作周壁とノズル部材とを連結する複数の連結片73と、を備え、操作周壁のうち、ノズル周方向で互いに隣り合う連結片同士の間に位置する部分は、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体に装着され、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、
前記噴出器本体は、
前記容器体内の液体を吸い上げる縦供給筒部と、
後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を備え、
前記ノズル部材は、ノズル軸と同軸に配設された筒状に形成されるとともに、前記噴出器本体にノズル軸回りに回転可能に装着され、
前記ノズル部材の、前記噴出器本体に対するノズル軸回りの回転に伴って、前記噴出孔と前記縦供給筒部内とが連通可能となる噴出状態と、前記噴出孔と前記縦供給筒部内との連通が遮断される遮断状態と、に切替えられ、
前記ノズル部材には、前記ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作筒部が設けられ、
前記操作筒部は、前記ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作周壁と、前記操作周壁と前記ノズル部材とを連結する複数の連結片と、を備え、
前記操作周壁のうち、ノズル軸回りに沿うノズル周方向で互いに隣り合う前記連結片同士の間に位置する部分は、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されている、トリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記操作周壁のうち、ノズル周方向で互いに隣り合う前記連結片同士の間に位置する部分は、ノズル径方向に厚さを有して前記噴出状態を表す第1文字、若しくはノズル径方向に厚さを有して前記遮断状態を表す第2文字によって構成されている、請求項1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記ノズル部材および前記操作筒部は一体に形成され、
前記第1文字は、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「N」とからなる「ON」とされ、
前記第2文字は、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「F」と「F」とからなる「OFF」とされ、
「O」は、リング部分で囲まれた内側部分が、前記リング部分に対してノズル径方向の外側に張り出し、
「F」は、
ノズル軸に沿って延びる縦線部と、
前記縦線部におけるノズル軸方向の一端部からノズル周方向の一方側に向けて延びる横線部と、
これらの縦線部および横線部を互いに連結し、表裏面がノズル径方向を向く平板部と、により構成され、
前記縦線部および前記横線部それぞれのノズル径方向の外端面は、前記平板部のノズル径方向の外面に対してノズル径方向の外側若しくは内側に位置し、
前記平板部において、ノズル軸方向の他端部に位置してノズル軸方向を向く側面は、ノズル周方向に延びている、請求項2に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
前記操作周壁は、複数の角部分、および複数の辺部分を有する角筒状に形成され、
前記操作周壁の角部分の内周面に、前記連結片が連結され、
前記操作周壁の辺部分が、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、トリガー部の前後動によって容器体内から液体を吸い上げ、ノズル部材の噴出孔を通じて液体を噴出するトリガー式液体噴出器が知られている。
この種のトリガー式液体噴出器として、ノズル部材が、噴出器本体に軸線回りに回転可能に装着され、ノズル部材の、噴出器本体に対する軸線回りの回転に伴って、噴出孔と縦供給筒部内とが連通可能となる噴出状態と、噴出孔と縦供給筒部内との連通が遮断される遮断状態と、に切替えられる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のトリガー式液体噴出器では、ノズル部材を噴出器本体に対して回転し、噴出状態と遮断状態とを切替えるときに、ノズル部材を摘まんだ指が滑るおそれがある。
【0005】
本発明は、噴出状態と遮断状態とを切替えるときに、ノズル部材を噴出器本体に対して確実に回転させることができるトリガー式液体噴出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体に装着され、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、前記容器体内の液体を吸い上げる縦供給筒部と、後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を備え、前記ノズル部材は、ノズル軸と同軸に配設された筒状に形成されるとともに、前記噴出器本体にノズル軸回りに回転可能に装着され、前記ノズル部材の、前記噴出器本体に対するノズル軸回りの回転に伴って、前記噴出孔と前記縦供給筒部内とが連通可能となる噴出状態と、前記噴出孔と前記縦供給筒部内との連通が遮断される遮断状態と、に切替えられ、前記ノズル部材には、前記ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作筒部が設けられ、前記操作筒部は、前記ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作周壁と、前記操作周壁と前記ノズル部材とを連結する複数の連結片と、を備え、前記操作周壁のうち、ノズル軸回りに沿うノズル周方向で互いに隣り合う前記連結片同士の間に位置する部分は、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されている。
【0007】
ノズル部材に、ノズル部材をノズル径方向の外側から囲う操作筒部が設けられているので、ノズル部材を噴出器本体に対してノズル軸回りに回転し、噴出状態と遮断状態とを切替えるときに、操作周壁のうち、ノズル周方向で互いに隣り合う連結片同士の間に位置する部分(以下、弾性変形部分という)を摘まむと、弾性変形部分をノズル径方向の内側に向けて窪ませることが可能になり、操作周壁を摘まんだ指が、ノズル周方向に滑るのを抑制することができる。
【0008】
前記操作周壁のうち、ノズル周方向で互いに隣り合う前記連結片同士の間に位置する部分は、ノズル径方向に厚さを有して前記噴出状態を表す第1文字、若しくはノズル径方向に厚さを有して前記遮断状態を表す第2文字によって構成されてもよい。
【0009】
操作周壁のうちの弾性変形部分が、第1文字、若しくは第2文字によって構成されているので、この弾性変形部分を、平滑面に形成されている場合と比べて、ノズル径方向に弾性変形させやすくすることができるとともに、第1文字、および第2文字がノズル径方向に厚さを有して操作周壁の一部を構成しているので、例えば凹凸部およびスタンプ等で、前記噴出状態および前記遮断状態を表す場合と比べて、視認性を向上させることができる。
【0010】
前記ノズル部材および前記操作筒部は一体に形成され、前記第1文字は、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「N」とからなる「ON」とされ、前記第2文字は、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「F」と「F」とからなる「OFF」とされ、「O」は、リング部分で囲まれた内側部分が、前記リング部分に対してノズル径方向の外側に張り出し、「F」は、ノズル軸に沿って延びる縦線部と、前記縦線部におけるノズル軸方向の一端部からノズル周方向の一方側に向けて延びる横線部と、これらの縦線部および横線部を互いに連結し、表裏面がノズル径方向を向く平板部と、により構成され、前記縦線部および前記横線部それぞれのノズル径方向の外端面は、前記平板部のノズル径方向の外面に対してノズル径方向の外側若しくは内側に位置し、前記平板部において、ノズル軸方向の他端部に位置してノズル軸方向を向く側面は、ノズル周方向に延びてもよい。
【0011】
第1文字が、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「N」とからなる「ON」とされ、第2文字が、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「F」と「F」とからなる「OFF」とされ、「O」および「F」が前述の構成とされているので、ノズル部材および操作筒部を、成形金型からノズル軸方向に容易に脱型することができる。
【0012】
前記操作周壁は、複数の角部分、および複数の辺部分を有する角筒状に形成され、前記操作周壁の角部分の内周面に、前記連結片が連結され、前記操作周壁の辺部分が、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されてもよい。
【0013】
操作周壁の角部分の内周面に、連結片が連結され、操作周壁の辺部分が、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されているので、操作周壁の辺部分を摘まんだときに、この部分を確実にノズル径方向の内側に向けて窪ませることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、噴出状態と遮断状態とを切替えるときに、ノズル部材を噴出器本体に対して確実に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態として示したトリガー式液体噴出器の縦断面図である。
【
図2】
図1に示すノズル部材および操作筒部の前面図である。
【
図3】
図1に示すノズル部材および操作筒部の、上斜め後方から見た斜視図である(噴出状態)。
【
図4】
図1に示すノズル部材および操作筒部の、上斜め後方から見た斜視図である(遮断状態)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るトリガー式液体噴出器を説明する。
本実施形態に係るトリガー式液体噴出器1は、
図1に示されるように、液体を収容する容器体Aに装着される噴出器本体2と、液体を噴出する噴出孔4が形成され、噴出器本体2に装着されたノズル部材3と、を備えている。容器体A内に収容される液体としては、例えば、住居用や食器用の洗剤、空間や衣類等に用いる消臭・芳香剤、除菌用アルコール等が挙げられる。
なお、トリガー式液体噴出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、例えば、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、ポリアセタール(POM)、またはポリケトン(POK)等の合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0017】
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、トリガー機構20と、射出筒部30と、切替弁40と、中継部材50と、蓄圧部材31と、付勢部材5と、を主に備えている。
【0018】
以下の説明では、縦供給筒部10の中心軸線O1に沿った容器体A側を下側、その反対側を上側といい、中心軸線O1に沿う方向を上下方向という。上下方向から見て中心軸線O1に交差する方向を径方向といい、上下方向から見て中心軸線O1回りに周回する方向を周方向という。径方向のうち、噴出器本体2に対してノズル部材3が設けられている側を前側といい、その逆側を後側という。径方向のうち、前後方向に直交する方向を左右方向という。
【0019】
縦供給筒部10は、上下方向に延びる有頂筒状に形成され、容器体A内の液体を吸い上げる。縦供給筒部10は、容器体Aの口部の上端開口縁上にパッキンを介して配置されるフランジ11を備えている。フランジ11は、容器体Aの口部に装着(螺着)されるキャップ12によって上方から押え付けられる。縦供給筒部10内には、上下方向に延びるとともに容器体A内から液体を吸い上げるパイプ13の上部が嵌合している。
縦供給筒部10の前側には、シリンダ用筒部14が設けられている。シリンダ用筒部14は、縦供給筒部10から前方に向けて突出するとともに、前方に向けて開口している。
【0020】
トリガー機構20は、トリガー部21と、ピストン22と、シリンダ23と、を備えている。トリガー機構20は、トリガー部21の後方への移動によって、液体を縦供給筒部10内から噴出孔4側に向けて流通させる。
【0021】
シリンダ23は、シリンダ用筒部14内に嵌合されて固定されている。シリンダ23は、前方に開口するとともに後方が閉塞された有底筒状に形成されている。シリンダ23の後壁部には、シリンダ23内と縦供給筒部10の上端部内とを前後方向に連通する横連通路18が形成されている。
トリガー部21は、縦供給筒部10の前方に後方移動可能に配置されている。トリガー部21は、射出筒部30と中継部材50との連結部分を左右方向に挟む両側から下方に向けて延び、ピストン22およびシリンダ23の前側を上下方向に跨いでいる。トリガー部21の上端部は、左右方向に延びる軸線回りに回転可能に支持されている。
ピストン22は、シリンダ23内に前後動可能に嵌合されている。ピストン22は、トリガー部21の前後動に連動して前後方向に移動する。シリンダ23の内部は、ピストン22の前後動に伴って加圧および減圧される。ピストン22は、後方に開口するとともに前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
ピストン22の前端部は、トリガー部21の後部に連結されている。ピストン22は、トリガー部21の後方移動に伴って後退してシリンダ23内に押し込まれる。
【0022】
射出筒部30は、シリンダ用筒部14の上方に配置され、縦供給筒部10の上端部から前方に向けて延びている。射出筒部30は、縦供給筒部10の頂壁43と一体に形成されている。射出筒部30と、縦供給筒部10の頂壁43と、の連結部分には、射出筒部30内と縦供給筒部10の上端部内とを上下方向に連通する縦連通路19が形成されている。
【0023】
蓄圧部材31は、射出筒部30内に前後動可能に配設されるとともに、射出筒部30内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断する。蓄圧部材31は、前後方向に延びる棒状に形成され、射出筒部30の内周面に対して前後方向に当接することで、射出筒部30内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断する。蓄圧部材31が、射出筒部30内の圧力上昇時に後方移動することで、射出筒部30内を通して縦供給筒部10内と噴出孔4とが連通可能になる。
【0024】
付勢部材5は、後方移動したトリガー部21を前方に向けて付勢する。付勢部材5は、合成樹脂で形成されている。
付勢部材5は、噴出器本体2を左右方向に挟む両側に設けられている。付勢部材5は、トリガー部21が後方移動したときに弾性変形する。付勢部材5は、トリガー部21が後方移動する前からトリガー部21を前方に付勢している。
なお、付勢部材5は、トリガー部21が後方移動したときにはじめて弾性変形し、トリガー部21を前方に付勢してもよい。
【0025】
付勢部材5は、前後方向に延び、かつ表裏面が左右方向を向く板状に形成されている。付勢部材5の前端部は、トリガー部21にトリガー部21の後方から当接している。付勢部材5の前端部は、トリガー部21のうち、後方を向く後面における左右方向の両端部に当接している。
付勢部材5の後部は、前後方向に真直ぐ延びている。付勢部材5の前部は、前方に向かうに従い下方に向けて延びている。付勢部材5において、後部と前部との接続部分は、左右方向から見て、上方に向けて突となるように湾曲している。
トリガー部21が後方移動したときに、付勢部材5のうち、前部が、接続部分回りに後方に向けて撓み変形する。
【0026】
一対の付勢部材5の後端部同士は、閉塞部35により左右方向に連結されている。閉塞部35は、前方に開口するとともに後方が閉塞された有底筒状に形成されている。閉塞部35、および付勢部材5の後端部それぞれの上下方向の中央部は、互いに一致している。閉塞部35は、射出筒部30の後端部内に嵌合され、射出筒部30の後端開口を閉塞している。閉塞部35の後端部には、前方に向けて突出し、後方移動した蓄圧部材31を前方に向けて付勢する樹脂製の弾性体33が設けられている。弾性体33、閉塞部35および付勢部材5は、同一の材質(例えばポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリアセタール(POM)、またはポリケトン(POK))で一体に形成されている。
【0027】
弾性体33の前端部は、蓄圧部材31の後端部に当接している。射出筒部30のうち、縦連通路19が開口する後端部内の圧力が所定値を超えたときに、蓄圧部材31が、弾性体33を弾性変形させながら後方に移動することで、射出筒部30内を通して縦供給筒部10内と噴出孔4とが連通する。
【0028】
切替弁40は、縦供給筒部10の内側に設けられている。切替弁40は、シリンダ23内の加圧および減圧に応じて、縦供給筒部10内および横連通路18を通した容器体A内とシリンダ23内との連通、およびその遮断を切替える。切替弁40は、ボール弁とされ、例えば、容器体A内の液体よりも比重の重い材質で形成されている。切替弁40は、縦供給筒部10の内周面に形成された弁座41に、上方に向けて離反可能に配置されている。弁座41は、環状に形成され、中心軸線O1と同軸に配設されている。弁座41は、縦供給筒部10の内周面から径方向の内側に向かうに従い下方に向けて延びている。切替弁40および弁座41は、横連通路18より下方に位置している。
【0029】
図示の例では、縦供給筒部10の頂壁43の下面に、下方に向けて突出する複数の弾性突起44が形成されている。弾性突起44は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。切替弁40が、弁座41から上方に離反したときに、複数の弾性突起44を径方向の外側に向けて弾性変形させながら、複数の弾性突起44で囲まれた空間を拡げる。
【0030】
中継部材50は、射出筒部30とノズル部材3とを連結している。中継部材50は、前後方向に延びる筒状に形成されている。中継部材50の後部内に、射出筒部30が嵌合されている。中継部材50の前部は、射出筒部30から前方に突出している。中継部材50の前部の中心軸線(以下、ノズル軸O2という)は、中継部材50の後部および射出筒部30それぞれの中心軸線より下方に位置している。
【0031】
以下、前後方向から見てノズル軸O2に交差する方向をノズル径方向といい、前後方向から見てノズル軸O2回りに周回する方向をノズル周方向という。
【0032】
中継部材50の前部内に、射出筒部30の前端開口と前後方向に対向する対向壁部51と、対向壁部51から前方に向けて延びるガイド軸52と、が設けられている。
対向壁部51の表裏面は前後方向を向いている。対向壁部51には、射出筒部30の前端開口と、中継部材50の前部内と、を連通する連通孔53が形成されている。
ガイド軸52は、ノズル軸O2と同軸に配設されている。ガイド軸52の外周面には、前後方向に延びる第1切換溝54が形成されている。第1切換溝54は、ノズル周方向に間隔をあけて複数設けられている。第1切換溝54は、ガイド軸52の前端面に開口している。
【0033】
ノズル部材3は、中継部材50に対して、前方への抜け止めがされた状態でノズル軸O2回りに回転可能に装着されている。
ノズル部材3は、前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。ノズル部材3は、ノズル軸O2と同軸に配設されている。ノズル部材3のうちの前端部に位置する頂壁(以下、ノズル壁部という)61に、液体を前方に向けて噴出する噴出孔4が形成されている。ノズル部材3のうち、ノズル壁部61の外周縁部から後方に向けて延びる周壁(以下、外嵌筒部という)64内に、中継部材50の前部が嵌合されている。
【0034】
ノズル壁部61には、後方に向けて延びる内筒部62が形成されている。内筒部62は、ノズル軸O2と同軸に配設されている。内筒部62は、中継部材50のガイド軸52にノズル軸O2回りに回転可能に外嵌されている。内筒部62の内周面には、前後方向に延びる第2切換溝63が形成されている。第2切換溝63は、ノズル周方向に間隔をあけて複数設けられている。第2切換溝63は、内筒部62の後端開口縁に開口している。
【0035】
第2切換溝63は、噴出器本体2に対するノズル部材3のノズル軸O2回りに沿う所定の回転位置で、ガイド軸52の第1切換溝54と連通し、それ以外の回転位置で第1切換溝54との連通が遮断される。第1切換溝54と第2切換溝63とが連通することで、噴出孔4と中継部材50内とが第1切換溝54および第2切換溝63を通じて連通する。これにより、ノズル部材3の、噴出器本体2に対するノズル軸O2回りの回転に伴って、噴出孔4と縦供給筒部10内とが連通可能となる噴出状態と、噴出孔4と縦供給筒部10内との連通が遮断される遮断状態と、に切替えられる。
【0036】
そして、本実施形態では、ノズル部材3に、ノズル部材3をノズル径方向の外側から囲う操作筒部71が設けられている。操作筒部71は、ノズル部材3の前端部から後方に離れ、ノズル部材3の後部をノズル径方向の外側から囲っている。
図2に示されるように、操作筒部71は、ノズル部材3をノズル径方向の外側から囲う操作周壁72と、操作周壁72とノズル部材3とを連結する複数の連結片73と、を備えている。操作筒部71は、ノズル部材3と一体に形成されている。
【0037】
連結片73は、ノズル周方向に間隔をあけて3つ以上設けられている。連結片73は、ノズル部材3の外嵌筒部64の外周面に連結されている。図示の例では、連結片73は、ノズル周方向に等間隔をあけて4つ設けられている。なお、連結片73の個数は適宜変更してもよい。連結片73は、表裏面がノズル周方向を向き、かつ前後方向に長い長方形状の板状に形成されている。連結片73の前端縁は、操作周壁72の前端縁より後方に位置している。連結片73、操作周壁72、および外嵌筒部64それぞれの後端縁は、前後方向の同じ位置に位置している。
【0038】
操作周壁72の内周面は、外嵌筒部64の外周面からノズル径方向の外側に離れている。操作周壁72のうち、ノズル周方向で互いに隣り合う連結片73同士の間に位置する部分は、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されている。
操作周壁72は、複数の角部分、および複数の辺部分を有する角筒状に形成されている。図示の例では、操作周壁72は、4つの角部分および4つの辺部分を有する四角筒状に形成に形成されている。操作周壁72の角部分は、ノズル周方向に延びる湾曲した円弧状に形成されている。操作周壁72の角部分の内周面に、連結片73が連結されている。操作周壁72の辺部分が、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されている。
【0039】
操作周壁72の辺部分は、ノズル径方向に厚さを有して噴出状態を表す第1文字74、若しくはノズル径方向に厚さを有して遮断状態を表す第2文字75によって構成されている。第1文字74、第2文字75、および角部分それぞれのノズル径方向の厚さは、互いに同等になっている。
【0040】
図3および
図4に示されるように、第1文字74は、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「N」とからなる「ON」とされている。第1文字74は、操作筒部71の角部分にノズル周方向に連結されている。第1文字74は、操作周壁72にノズル周方向に等間隔をあけて2つ設けられている。
【0041】
「O」は、リング部分74bで囲まれた内側部分74aが、リング部分74bに対してノズル径方向の外側に張り出している。
「N」は、一対の第1縦線部74cと、傾斜線部74dと、により構成されている。一対の第1縦線部74cは、ノズル軸Oに沿って延び、かつノズル周方向に間隔をあけて設けられている。傾斜線部74dは、一対の第1縦線部74cのうち、「O」に連結された第1縦線部74cの前端部と、操作筒部71の角部分に連結された第1縦線部74cの後端部と、を連結している。第1縦線部74cおよび傾斜線部74dそれぞれのノズル径方向の外端面は、段差なく連なっている。
【0042】
第2文字75は、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「F」と「F」とからなる「OFF」とされている。第2文字75は、操作筒部71の角部分にノズル周方向に連結されている。第2文字75は、操作周壁72にノズル周方向に等間隔をあけて2つ設けられている。第2文字75は、前後方向から見て第1文字74からノズル軸O2を中心に90°離れている。
【0043】
「O」は、第1文字74の「O」と同じ構成となっている。
「F」は、第2縦線部(縦線部)75aと、横線部75bと、平板部75cと、を備えている。第2縦線部75aは、ノズル軸Oに沿って延びている。横線部75bは、第2縦線部75aにおける前端部(ノズル軸方向の一端部)からノズル周方向の一方側に向けて延びている。第2縦線部75aおよび横線部75bそれぞれのノズル径方向の外端面は、段差なく連なっている。平板部75cは、表裏面がノズル径方向を向き、第2縦線部75aおよび横線部75bを互いに連結している。第2縦線部75aおよび横線部75bそれぞれのノズル径方向の外端面は、平板部75cのノズル径方向の外面に対してノズル径方向の外側若しくは内側に位置している。図示の例では、第2縦線部75aおよび横線部75bそれぞれのノズル径方向の外端面は、平板部75cのノズル径方向の外面に対してノズル径方向の外側に位置している。平板部75cにおいて、後端部(ノズル軸方向の他端部)に位置して後方を向く側面75dは、ノズル周方向に延びている。第2文字75をノズル径方向の外側から見て、側面75dは、横線部75bと平行に延びている。
【0044】
図示の例では、噴出器本体2に対するノズル部材3のノズル軸O2回りに沿う回転位置のうち、
図3に示されるように第1文字74が上方を向く回転位置で、第1切換溝54と第2切換溝63とが連通した噴出状態となり、
図4に示されるように第2文字75が上方を向く回転位置で、第1切換溝54と第2切換溝63との連通が遮断された遮断状態となる。
【0045】
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。なお、前提として、トリガー式液体噴出器1の各部内に液体が充填されているものとする。
【0046】
図4に示される遮断状態から
図3に示される噴出状態に切替えるときに、操作周壁72を摘まむと、第1文字74若しくは第2文字75がノズル径方向の内側に向けて弾性変形する。その後、噴出状態で、付勢部材5の前部を、後部との接続部分回りに後方に向けて撓ませつつ、トリガー部21を後方に牽引すると、ピストン22が後方に移動し、シリンダ23内が加圧される。この際、シリンダ23内の液体が、横連通路18を通して縦供給筒部10の上端部内に流入するとともに、この液体によって切替弁40が弁座41に押し付けられることで、横連通路18を通したシリンダ23内と容器体A内との連通が遮断される。これにより、縦供給筒部10の上端部内に流入した液体が、縦連通路19を通して射出筒部30の後端部内に供給され、この部分の内圧が上昇して所定値を超えたときに、蓄圧部材31が、弾性体33を弾性変形させながら後方に移動することで、射出筒部30内を通して縦供給筒部10内と噴出孔4とが連通し、液体が噴出孔4から噴出される。
【0047】
その後、トリガー部21が付勢部材5によって前方に復元移動すると、トリガー部21に連動して、ピストン22がシリンダ23内で前方に向けて復元移動する。この際、シリンダ23内が減圧され、容器体A内の圧力よりも低い圧力になり、切替弁40が弁座41から上方に離反する。これにより、容器体A内の液体が、縦供給筒部10内および横連通路18を通してシリンダ23内に供給される。
ここで、弁座41から上方に離反した切替弁40は、複数の弾性突起44を径方向の外側に向けて弾性変形させながら、複数の弾性突起44で囲まれた空間を拡げる。シリンダ23内の減圧が解除されると、切替弁40との接触によって弾性変形していた弾性突起44が復元変形し、切替弁40が下方に押し返される。これにより、切替弁40が、下方に向けて付勢され、縦供給筒部10の内面に張り付くことなく弁座41に着座する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によるトリガー式液体噴出器1によれば、ノズル部材3に、ノズル部材3をノズル径方向の外側から囲う操作筒部71が設けられているので、ノズル部材3を噴出器本体2に対してノズル軸O2回りに回転し、噴出状態と遮断状態とを切替えるときに、操作周壁72のうち、ノズル周方向で互いに隣り合う連結片73同士の間に位置する部分(以下、弾性変形部分という)を摘まむと、弾性変形部分をノズル径方向の内側に向けて窪ませることが可能になり、操作周壁72を摘まんだ指が、ノズル周方向に滑るのを抑制することができる。
【0049】
操作周壁72のうちの弾性変形部分が、第1文字74、若しくは第2文字75によって構成されているので、この弾性変形部分を、平滑面に形成されている場合と比べて、ノズル径方向に弾性変形させやすくすることができるとともに、第1文字74、および第2文字75がノズル径方向に厚さを有して操作周壁72の一部を構成しているので、例えば凹凸部およびスタンプ等で、噴出状態および遮断状態を表す場合と比べて、視認性を向上させることができる。
【0050】
第1文字74が、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「N」とからなる「ON」とされ、第2文字75が、ノズル周方向の一方側にこの順に横並びに連結された「O」と「F」と「F」とからなる「OFF」とされ、「O」および「F」が前述の構成とされているので、ノズル部材3および操作筒部71を、成形金型からノズル軸方向O2に容易に離型することができる。
【0051】
操作周壁72の角部分の内周面に、連結片73が連結され、操作周壁72の辺部分が、ノズル径方向に弾性変形可能に形成されているので、操作周壁72の辺部分を摘まんだときに、この部分を確実にノズル径方向の内側に向けて窪ませることができる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、蓄圧部材31、弾性体33、および弾性突起44は設けなくてもよい。
第1文字74および第2文字75は、「ON」、「OFF」に限らず適宜変更してもよい。
操作周壁72の弾性変形部分は、第1文字74および第2文字75に限らず、平滑な板状に形成されてもよい。
操作周壁72は、例えば三角筒状、および五角筒状等の他の角筒状に形成されてもよいし、円筒状に形成されてもよい。
【0054】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 トリガー式液体噴出器
2 噴出器本体
3 ノズル部材
4 噴出孔
10 縦供給筒部
20 トリガー機構
21 トリガー部
71 操作筒部
72 操作周壁
73 連結片
74 第1文字
74a 内側部分
74b リング部分
75 第2文字
75a 第2縦線部(縦線部)
75b 横線部
75c 平板部
75d 側面
A 容器体
O2 ノズル軸