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特開2024-171567糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171567
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20241205BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088641
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】茶木 香保里
(72)【発明者】
【氏名】有田 麻美
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】後味の苦味が低減された、糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料の提供。
【解決手段】糖類、ナトリウムおよびグリシンを含有するアルコール飲料であって、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8であり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50である、アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類、ナトリウムおよびグリシンを含有するアルコール飲料であって、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8であり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50である、アルコール飲料。
【請求項2】
糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.024~0.44である、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が2.3~17である、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記アルコール飲料のアルコール濃度が3~15v/v%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料を製造する方法であって、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる、方法。
【請求項6】
糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料における後味の苦味を低減する方法であって、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる、方法。
【請求項7】
糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料における後味のぬめりを低減する方法であって、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料においては、これらの成分の相互作用により、さまざまな香味が生じる。そのような香味には、飲料として好ましいものもあるが、逆に好ましくない香味も存在する。よって、飲料の生産者は、飲料の香味を好ましいものとするため、様々な工夫を試みている。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料、特にナトリウム含量が多いアルコール飲料において、後味の苦味や後味のぬめり(ぬるっとした食感として、舌の上に残る後味)が感じられるという問題を見出した。
【0004】
今般、本発明者らは、糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料に、アミノ酸の一種であるグリシンを所定の濃度で含有させることにより、後味の苦味が低減されることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0005】
従って、本発明は、後味の苦味が低減された、糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料およびその製造方法を提供する。
【0006】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)糖類、ナトリウムおよびグリシンを含有するアルコール飲料であって、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8であり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50である、アルコール飲料。
(2)糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.024~0.44である、前記(1)に記載のアルコール飲料。
(3)ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が2.3~17である、前記(1)に記載のアルコール飲料。
(4)前記アルコール飲料のアルコール濃度が3~15v/v%である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(5)糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料を製造する方法であって、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる、方法。
(6)糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料における後味の苦味を低減する方法であって、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる、方法。
(7)糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料における後味のぬめりを低減する方法であって、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる、方法。
【0007】
本発明によれば、糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料において、後味の苦味を低減することができる。また、本発明によれば、糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料において、後味のぬめりを低減することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0009】
本発明において「後味の苦味」とは、その飲料を飲用した後に残る持続的な苦み・辛味、およびえぐみをいう。また、本発明において「後味のぬめり」とは、ぬるっとした食感として、舌の上に残る後味をいう。
【0010】
本発明のアルコール飲料は、ナトリウムを含有する。このような飲料は、飲料中のナトリウムの濃度を調整することにより製造することができる。ナトリウムの濃度調整は、ナトリウムを添加することにより行ってもよいし、あるいは、ナトリウムを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0011】
本発明のアルコール飲料中のナトリウムは、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等のいずれの形態であってもよい。本発明のアルコール飲料中のナトリウムの濃度は特に制限されるものではないが、ナトリウムとして(ナトリウムの形態の重量に換算して)、好ましくは0.02w/v%以上とされ、より好ましくは0.03w/v%以上、さらに好ましくは0.035w/v%以上とされる。本発明のアルコール飲料中のナトリウム濃度の上限は特に限定されるものではない。しかしながら、あえて設定するとすれば、本発明のアルコール飲料中のナトリウム濃度は、例えば、0.07w/v%以下、好ましくは0.05w/v%未満、より好ましくは0.045w/v%以下とされる。
【0012】
飲料中のナトリウムの濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、ICP発光分光分析装置(Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer; ICP-OES)を用いたナトリウム分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0013】
本発明のアルコール飲料の製造に用いられるナトリウムとしては、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等の様々な形態の物質、およびこれらを含有する原材料など、いかなる形態の材料を用いてもよい。前記ナトリウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0014】
本発明のアルコール飲料は、糖類を含有する。このような飲料は、飲料中の糖類の濃度を調整することにより製造することができる。糖類の濃度調整は、糖類を添加することにより行ってもよいし、あるいは、糖類を含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0015】
本発明において「糖類」とは、糖質のうち、砂糖やブドウ糖などの単糖類および二糖類をいう。また、「糖質」とは、炭水化物から食物繊維を除いたものをいう。本発明のアルコール飲料中の糖類は、単糖類もしくは二糖類、またはこれらの組合せであってもよい。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料中の糖類は単糖とされ、より好ましくは果糖もしくはブドウ糖またはこれらの組合せとされる。
【0016】
本発明のアルコール飲料中の糖類の濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは1.5w/v%以上とされ、より好ましくは2.3w/v%以上とされる。本発明のアルコール飲料中の糖類濃度の上限は特に限定されるものではない。しかしながら、あえて設定するとすれば、本発明のアルコール飲料中の糖類濃度は、例えば、10w/v%以下、好ましくは6.8w/v%未満、より好ましくは6.2w/v%以下とされる。
【0017】
飲料中の糖類の濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料中の糖類濃度(w/v%)に対するナトリウム濃度(w/v%)の比は、0.0047以上、より好ましくは0.0065以上、さらに好ましくは0.0067以上とされる。
【0019】
本発明のアルコール飲料は、アミノ酸の一種であるグリシンを含有する。このような飲料は、飲料中のグリシンの濃度を調整することにより製造することができる。グリシンの濃度調整は、グリシンを添加することにより行ってもよいし、あるいは、グリシンを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0020】
本発明は、糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料における香味調整に関するものである。よって、本発明のアルコール飲料中のグリシンの濃度は、糖類濃度およびナトリウム濃度に対する比率として規定することができる。本発明のアルコール飲料における糖類濃度(w/v%)に対するグリシン濃度(w/v%)の比(グリシン濃度/糖類濃度)は0.015~0.8とされ、好ましくは0.024~0.44とされる。また、本発明のアルコール飲料におけるナトリウム濃度(w/v%)に対するグリシン濃度(w/v%)の比(グリシン濃度/ナトリウム濃度)は1.8~50とされ、好ましくは2.3~17とされる。さらに、本発明のアルコール飲料中のグリシンの濃度そのものは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.08w/v%以上、より好ましくは0.09w/v%以上とされる。本発明のアルコール飲料中のグリシンの濃度そのものの上限は特に限定されるものではない。しかしながら、あえて設定するとすれば、本発明のアルコール飲料中のグリシンの濃度は、例えば、3w/v%以下、好ましくは1.5w/v%未満、より好ましくは1.2w/v%以下とされる。
【0021】
飲料中のグリシンの濃度は、陽イオン交換樹脂でアミノ酸を分離した後、ニンヒドリン反応液を加えて135℃で反応させ、UV-VIS検出器で定量することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0022】
本発明のアルコール飲料のアルコール(エタノール)濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは1~20v/v%、より好ましくは3~15v/v%、さらに好ましくは3~9v/v%とされる。本発明の一つの実施態様では、本発明のアルコール飲料のアルコール濃度は、4.3v/v%以上とされる。アルコール濃度の調整は、食品としての安全性が確認されたエタノール含有材料の添加によって行うことができる。エタノール含有材料としては、原料用アルコールや蒸留酒(スピリッツ)を用いることができ、好ましい蒸留酒の例としては、ウオッカ、焼酎、テキーラ、ラム、ジン、ウイスキー等が挙げられる。
【0023】
本発明のアルコール飲料は、いかなる種類のアルコール飲料であってもよく、例えば、柑橘風味アルコール飲料、ソフトフルーツ(柑橘以外の果実)風味アルコール飲料、ドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料等であってよい。ここで、ドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料とは、果実の風味を有さないアルコール飲料を意味し、好ましくは果汁および香料(フレーバー)のいずれをも含有しないアルコール飲料である。本発明の一つの好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は柑橘風味アルコール飲料とされ、より好ましくはグレープフルーツ風味アルコール飲料またはレモン風味アルコール飲料とされ、さらに好ましくはグレープフルーツ風味アルコール飲料とされる。また、柑橘風味アルコール飲料(グレープフルーツ風味アルコール飲料およびレモン風味アルコール飲料を含む)およびソフトフルーツ風味アルコール飲料は、目的とする柑橘またはソフトフルーツの果汁および/または香料を含むものとすることができる。
【0024】
本発明のアルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0025】
本発明のアルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0026】
本発明のアルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.5~4.5、より好ましくは3.0~4.2に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0027】
本発明のアルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のアルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0028】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、上記成分の濃度調整以外は、通常のアルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。例えば、まず、タンク中において、アルコールを含有した水溶液に、糖または甘味料、および酸味料を加えて香味を調整する。次いで、香味を整えた水溶液に炭酸ガスを加えて、炭酸ガス含有飲料を製造することができる。本発明のアルコール飲料は、このような製造過程のいずれかの段階で、上記成分または上記成分を含む材料を適宜加えることによって製造することができる。
【0029】
本発明の他の態様によれば、糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料における後味の苦味を低減する方法が提供される。この方法は、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、糖類およびナトリウムを含有するアルコール飲料における後味のぬめりを低減する方法が提供される。この方法は、グリシン濃度を、糖類濃度に対するグリシン濃度の比が0.015~0.8となり、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比が1.8~50となるように調整する工程を含んでなる。
【実施例0031】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
試飲サンプル
以下の実施例において、試飲サンプルは、果糖ブドウ糖液糖、クエン酸ナトリウムおよびアルコールを所定の濃度で水に混合することにより作製した。グリシンを含有する試飲サンプルは、上記の材料に加えて、グリシンを所定の濃度で水に混合することにより作製した。これにより、糖類、ナトリウム、アルコールおよびグリシンを様々な濃度で含有する試飲サンプルを作製した。
【0033】
官能評価
官能評価は、十分に訓練された5名のパネラーによって行った。評価項目は、突出した後味のぬめり(ぬるっとした食感として、舌の上に残る後味)、および後味の苦味の2項目とした。官能評価は、1(ぬめりや苦味が弱い)~7(ぬめりや苦味が強い)の7段階のスコアで、1刻みで行った。ここで、糖類濃度1.50w/v%、ナトリウム濃度0.08w/v%、アルコール濃度7.3v/v%のサンプル(試験区1。グリシンなし)の評価スコアを2項目とも7とし、糖類濃度3.0w/v%、ナトリウム濃度0.040w/v%、アルコール濃度5.3v/v%、グリシン濃度0.15w/v%のサンプル(試験区8)の評価スコアを2項目とも1とした。評価結果は、5名のスコアの平均値および標準偏差として示した。
【0034】
実施例1:糖類とナトリウムを含有するアルコール飲料における香味調整の検討
(1)課題の確認
課題の発生を確認するため、糖類、ナトリウムおよびアルコールを様々な濃度で含有する水溶液(グリシンなし)を作製し、官能評価を行った。官能評価結果を以下の表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から、糖類の濃度に対してナトリウムを多く含むサンプルは、そのナトリウム濃度/糖類濃度の比に比例して、後味のぬめりや後味の苦味が強く感じられることが分かった。
【0037】
(2)グリシンの添加による香味調整の検討
後味のぬめりと後味の苦味について、グリシン添加による抑制効果を、様々な濃度でグリシンを含有する試飲サンプルを用いて調べた。まず、糖類濃度に対するグリシン濃度の比率という観点で試験した結果を以下の表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
次に、ナトリウム濃度に対するグリシン濃度の比率という観点で試験した結果を以下の表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
表2および表3から、グリシン濃度/糖類濃度の比が0.015~0.8であり、かつ、グリシン濃度/ナトリウム濃度の比が1.8~50である場合に、後味の苦味が抑制されることが分かった。また、表2から、グリシン濃度/糖類濃度の比は0.024~0.44であることが好ましいと考えられた。また、表3から、グリシン濃度/ナトリウム濃度の比は、2.3~17であることが好ましいと考えられた。さらに、これらの数値範囲において、後味のぬめりの抑制効果も見られることが分かった。
【0042】
(3)グレープフルーツ風味アルコール飲料における効果の確認
本節では、市販されているアルコール飲料における効果を確認するため、例としてグレープフルーツ風味アルコール飲料の試飲サンプルを作製し、その官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
表4から、市販されているアルコール飲料においても、上記(2)において特定されるグリシン濃度/糖類濃度比およびグリシン濃度/ナトリウム濃度比に調整することにより、同様の効果が見られることが分かった。この試飲サンプルは、後味のぬめりや苦味が目立たず、嗜好性が高いものであった。