(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171569
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】スクイズ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20241205BHJP
B65D 47/20 20060101ALI20241205BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65D83/00 G
B65D47/20 111
B65D47/36 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088643
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祥吾
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
【Fターム(参考)】
3E014PA03
3E014PB03
3E014PC04
3E014PD30
3E014PE05
3E014PE09
3E014PE17
3E014PF09
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB06
3E084BA03
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA02
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084GB06
3E084HB02
3E084HD01
3E084KA12
3E084KB02
3E084LA01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】容器の口頚部に取り付けられる弁体の流路を広く確保できるとともに、内容物を吐出した後の弁体の閉塞状態への復元も速やかに達成することのできる弁構造を有するスクイズ容器を提供すること。
【解決手段】容器の口頚部1に装着される注出栓2の注出口2aを通して内容物を注出するスクイズ容器であって、注出栓2の注出口2aにつながる経路2d内に、容器のスクイズ時にのみ注出口2aが開放される弁体3を設け、弁体3は、経路2d内の壁面に設けられる環状体3aと、環状体3aの内側に配置され、環状体3aの中心線上に幅方向の中心が位置する連結片3bを介して環状体3aに片持ち支持される平板状の弁本体3dとを備え、弁本体3dに、連結片3bの幅方向または長手方向につながり弁本体3dの復元力増強域3c1、3c2を形成する少なくとも一本の切り込み3eを設けたこと。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口頚部に装着される注出栓を備え、該容器の胴体部分をスクイズすることにより該注出栓の注出口を通して内容物を注出するスクイズ容器であって、
前記注出栓の前記注出口につながる経路内に、容器の胴体部分のスクイズ時にのみ該注出口が開放される弁体を設け、
該弁体は、前記経路内の壁面に設けられる環状体と、該環状体の内側に配置され、該環状体の中心線上に幅方向の中心が位置する連結片を介して該環状体に片持ち支持される平板状の弁本体とを備え、
該弁本体に、前記連結片の幅方向または長手方向につながり該弁本体の復元力増強域を形成する少なくとも一本の切り込みを設けたことを特徴とするスクイズ容器。
【請求項2】
前記切り込みが、前記連結片の幅方向の中心を通る中心を有し、前記環状体の内側に位置し、該環状体の内縁形状に沿って伸延する一本の切り込みであることを特徴とする請求項1に記載したスクイズ容器。
【請求項3】
前記切り込みが、前記連結片を幅方向の両側から挟み込むとともに、一端が前記弁本体の外縁端部につながり、他端が該弁本体の中央部へ向けて平行に伸延する一対の切り込みと、前記連結片の幅方向の中心を通る中心を有し、該一対の切り込みをその一端側の近傍から他端にわたって取り囲む一本の切り込みからなることを特徴とする請求項1に記載したスクイズ容器。
【請求項4】
前記連結片は、その上面および下面の少なくとも一方に背面部が前記環状体の内壁面につながる縦リブを有することを特徴とする請求項1または2に記載したスクイズ容器。
【請求項5】
前記環状体と前記弁本体との相互間および前記切り込みには、それぞれ破断可能な薄肉弱化部を有することを特徴とする請求項1に記載したスクイズ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の胴体部分をスクイズすることにより内容物を注出するスクイズ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘稠状の内容物を収容する容器としてスクイズ容器が広く利用されている。スクイズ容器は、容器の胴体部分をスクイズ(押圧)することにより内容物を注出栓の注出口から吐出できるように構成されたものであり、内容物の不用意な注出を防止するため、注出栓には、スクイズ時にのみ開放される弁体が設けられている。この点に関する先行技術としては、特許文献1が知られている。また、従来より、容器の胴体部分をスクイズして内容物を吐出した後の内容物の液垂れの抑制や、内容物の液切れの向上を図ることのできるよう構成された弁体も数多く提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクイズ容器に用いられる注出栓の多くは、スリット弁や3点弁等が備えられており、通常、内容物を吐出した後の弁の復元を早めるため(内容物の漏出を抑制するため)に、弁の流路が狭くなっている。そのため、内容物が高粘度のものや、具材などの固形物が含まれるものの場合には、吐出に時間がかかったり、手指によるスクイズ力が大きくなる等、内容物の吐出が容易ではなく、場合によっては、具材が流路に挟まって吐出できなくなる等の問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、容器の口頚部に取り付けられる弁体の流路を広く確保できるとともに、内容物を吐出した後の弁体の閉塞状態への復元も速やかに達成することのできる弁構造を有するスクイズ容器を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を実現するために開発した本発明のスクイズ容器は、
容器の口頚部に装着される注出栓を備え、該容器の胴体部分をスクイズすることにより該注出栓の注出口を通して内容物を注出するスクイズ容器であって、
前記注出栓の前記注出口につながる経路内に、容器の胴体部分のスクイズ時にのみ該注出口が開放される弁体を設け、
該弁体は、前記経路内の壁面に設けられる環状体と、該環状体の内側に配置され、該環状体の中心線上に幅方向の中心が位置する連結片を介して該環状体に片持ち支持される平板状の弁本体とを備え、
該弁本体に、前記連結片の幅方向または長手方向につながり該弁本体の復元力増強域を形成する少なくとも一本の切り込みを設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のスクイズ容器において、前記切り込みが、前記連結片の幅方向の中心を通る中心を有し、前記環状体の内側に位置し、該環状体の内縁形状に沿って伸延する一本の切り込みであることが好ましい。
【0008】
また、本発明のスクイズ容器において、前記切り込みが、前記連結片を幅方向の両側から挟み込むとともに、一端が前記弁本体の外縁端部につながり、他端が該弁本体の中央部へ向けて平行に伸延する一対の切り込みと、前記連結片の幅方向の中心を通る中心を有し、該一対の切り込みをその一端側の近傍から他端にわたって取り囲む一本の切り込みからなることが好ましい。
【0009】
また、本発明のスクイズ容器において、前記連結片は、その上面および下面の少なくとも一方に背面部が前記環状体の内壁面につながる縦リブを有することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のスクイズ容器において、前記環状体と前記弁本体との相互間および前記切り込みには、それぞれ破断可能な薄肉弱化部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスクイズ容器によれば、容器の口頚部に装着される注出栓の注出口につながる経路内に設けられる弁体を、前記経路内の壁面に沿って位置する環状体と、該環状体の内側に配置され、連結片を介して該環状体に片持ち支持される弁本体と、により構成し、該弁本体に少なくとも一本の切り込みを設けることで、該切り込みと前記環状体との間に、容器のスクイズによって弾性変形可能な前記弁本体の復元力増強域を、前記連結片につながるように形成することができる。
【0012】
そのため、容器の胴体部分をスクイズすると、弁本体は、復元力増強域が変形(ねじれ変形、湾曲変形)しながら連結片を支点として揺動し、大きく開放する。したがって、上記スクイズ容器によれば、内容物の流路を広く確保することができるため、粘性の高い内容物や、具材などの固形物を含む内容物であっても、スムーズに効率よく注出することができる。しかも、前記弁本体は、変形した復元力増強域の復元力によって、速やかに元の位置に戻ることができるため、内容物の液垂れの発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明によれば、前記切り込みを、その中心が、前記連結片の幅方向の中心を通るように設けることで、前記復元力増強域を、前記連結片の幅方向中心に対して対称(位置および形状)に設けることができる。したがって、容器をスクイズした際に、前記連結片を介して対称な形状および位置にある復元力増強域が同様に変形するため、弁本体の不規則な傾き(開放方向に直交する方向への傾き)が防止されて弁本体の開きを安定させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、従来の一点弁に比べて、揺動時の変形領域(復元力増強域)が増えるため、単位長さあたりの変形量(応力)が減少して、連結片および復元力増強域が塑性変形するのを抑制することができ、長期にわたって高い復元力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にしたがうスクイズ容器の実施の形態を、要部について模式的に示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A位置における断面図である。
【
図2】注出栓から取り出した弁体のみを示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B位置における断面図である。
【
図3】弁体の他の例を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC-C位置における断面図である。
【0016】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがうスクイズ容器の実施の形態を、要部について模式的に示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A位置における断面図である。
図2は、注出栓から取り出した弁体のみを示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B位置における断面図である。
【0017】
図1における符号1は、胴体部分をスクイズすることによって容器内の内容物の注出を可能とするスクイズ容器の口頚部である。符号2は、内容物を注出するための注出栓であり、容器本体10の口頚部1に、注出栓2がねじ部によって螺合されている。
【0018】
注出栓2は、環状の周壁2bと、周壁2bの上端縁につながる天壁2cとを有し、該天壁2cの中央部に上端に位置する注出口2aにつながる内容物の経路2dが設けられたものである。注出栓2は、天壁2cにヒンジ5を介してカバーキャップ4が連設されている。カバーキャップ4は、天壁2cを覆うと共に、注出口2aの外周壁に沿って、カバーキャップ4の天壁4aから垂下保持されるリング部4bを嵌め入れると共に、天壁4aの下面中央部から突出する凸部4cを注出口2c内に嵌め入れることで、注出口2aを密封保持することができる。
【0019】
なお、本発明にしたがうスクイズ容器は、注出栓2を含めて合成樹脂製等の素材を用いて製造することができるが、材質についてはとくに限定されない。
【0020】
符号3は、注出栓2の上端に位置する注出口2aにつながる経路2d内に配置され、容器の胴体部分をスクイズした際にのみ、注出口2a(経路2d)を開放する弁体である。なお、弁体3の設置位置は、経路2d内であればとくに限定されない。
【0021】
弁体3は、注出栓2の経路2d内の壁面に嵌合保持される環状体3aと、環状体3aの内側に配置され、環状体3aの中心線L上に幅方向の中心が位置する連結片3bを介して、水平姿勢を保持したまま揺動可能に片持ち支持される平板状の弁本体3dと、から構成される。弁本体3dは、例えば、環状体3aの内壁面に沿う円弧状部3d1にて区画された輪郭形状を有する。なお、図中の、環状体3aの中心線Lに直交する方向を、連結片3bの“幅方向”と言うこととし、中心線Lに沿う向きを、連結片3bの長手方向と言うこととする。
【0022】
本実施形態では、環状体3aに設けられた環状リブ3a1を、注出栓2の経路2d内に、周方向に設けられた環状のリブ2gに嵌合保持させる場合を一例として示しているが、弁体3を注出栓2と一体で構成してもよい。また、弁体3は、注出栓2の経路2d内にリブ2gを設けず、嵌合保持してもよく、弁体3の注出栓2への嵌合方法は限定されない。さらに、弁体3は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料により構成してもよい。
【0023】
弁本体3dには、連結片3bの近傍位置に、弁本体3dの円弧状部3d1の内側に位置し、該円弧状部3d1の内縁形状に沿って伸延する一本の切り込み3eが設けられている。なお、切り込み3eは、連結片3bの幅方向または長手方向につながるように設けられ、また、その伸延方向の中心が、連結片3bの幅方向の中心を通るように設けられる。
【0024】
なお、切り込み3eは、その伸延方向の中心が連結片3bの幅方向の中心を通り、連結片3bの幅方向の中心線に対して対称の形状を有することが好ましく、図示の円弧状の他、C字形状、V字形状、コの字形状等とすることができる。
【0025】
弁本体3dには、切り込み3eと環状体3aとの間の、連結片3bを挟んだそれぞれの位置に、復元力増強域3c1、3c2が形成される。この復元力増強域3c1、3c2は、容器本体10の胴体部分をスクイズすると、ねじれ変形しながら、連結片3bを支点として弁本体3dを上向きに揺動させ、注出栓2の経路2dを大きく開放する一方、スクイズを停止した際には、復元力増強域3c1、3c2の復元力により、弁本体3dを速やかに初期姿勢に復帰させて経路2dを閉塞することができる。
【0026】
これにより、経路2d内に弁体3が配置されていても経路2dが大きく開放するため、注出口2aから粘性の高い内容物や、固形物を含んだ内容物を効率よく注出させることが可能となる。また、スクイズを停止した際には、弁本体3dを速やかに初期姿勢へと復帰させることができるため、内容物の液垂れの発生を抑制することができる。
【0027】
上記したように、弁体3は、容器本体10のスクイズによって復元力増強域3c1、3c2がねじれ変形することで、弁本体3dを上向きに揺動させることができる。そのため、従来の一点弁(ヒンジを支点として揺動)よりも変形範囲が増えて、単位長さあたりの変形量(応力)が減少し、連結片3bおよび復元力増強域3c1、3c2が塑性変形するのを抑制することができ、長期にわたって高い復元力を維持することができる。
【0028】
また、本実施形態では、復元力増強域3c1と復元力増強域3c2とが連結片3bの幅方向の中心線に対して対称な形状および位置に設けられているため、容器本体10をスクイズした際に、復元力増強域3c1と復元力増強域3c2とが同様にねじれ変形し、弁本体3dの不規則な傾き(開放方向に直交する方向への傾き)が防止されて、弁本体3dの開きを安定させることができる。
【0029】
連結片3bは、その上面および下面の少なくとも一方(
図2では上面)に背面部が環状体3aにつながる縦リブ3hを有する。縦リブ3hによって、連結片3bが補強され、連結片3bが塑性変形するのを抑制することができる。
【0030】
環状体3aと弁本体3dとの相互間、および切り込み3eにそれぞれ、破断可能な薄肉弱化部を設けておくことも可能であり、使用開始にあたって、該薄肉弱化部を破断することで、スクイズ容器の開封前における内容物の酸化を防止して高い品質を保持することができると共に、液漏れの発生を防止することができる。なお、使用開始前(成形後など)に薄肉弱化部を破断しておいてもよい。
【0031】
図3は、弁体の他の例を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC-C位置における断面図である。弁本体3dは、例えば、環状体3aの内壁面に沿う円弧状部3d1にて区画された輪郭形状を有する。
【0032】
弁本体3dには、連結片3bを幅方向の両側から挟み込むとともに、一端が円弧状部3d1の端部につながり、他端が弁本体3dの中央部に向けて平行に伸延する一対の切り込み3fと、連結片3bの幅方向の中心を通る中心を有し、一対の切り込み3fを一端側の近傍から他端にわたって取り囲む一本の切り込み3gと、が設けられている。なお、切り込み3gは、連結片3bの幅方向の中心線に対して対称の形状を有することが好ましく、図示の逆コの字形状の他、円弧状やC字形状、V字形状等とすることができる。
【0033】
弁本体3dには、切り込み3fにおよび切り込み3gによって、一対の切り込み3fの相互間に直線状の復元力増強域3c1が形成されると共に、切り込み3fと切り込み3gの相互間に逆コの字形状の復元力増強域3c2が形成される。容器本体10の胴体部分をスクイズすると、この復元力増強域3c1、3c2が、連結片3bを支点として上向きに湾曲しながら変形して、弁本体3dを揺動させ、注出栓2の経路2dを大きく開放する一方、スクイズを停止した際には、復元力増強域3c1、3c2の復元力により、弁本体3dを速やかに初期姿勢に復帰させて経路2dを閉塞することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のスクイズ容器は、液状やクリーム状、粘稠状等の飲食品や薬剤、化学品、化粧料等の内容物を充填する容器として利用することができ、とくに粘性の高い内容物や、固形物を含む内容物を充填する容器として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 口頚部
2 注出栓
2a 注出口
2b 周壁
2c 天壁
2d 経路
3 弁体
3a 環状体
3b 連結片
3c1、3c2 復元力増強域
3d 弁本体
3d1 円弧状部
3e、3f、3g 切り込み
3h 縦リブ
4 カバーキャップ
4a 天壁
4b リング部
4c 凸部
5 ヒンジ
10 容器本体