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特開2024-171571印刷装置、印刷方法および印刷プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171571
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法および印刷プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241205BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/015 101
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088647
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大桑 裕哉
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB49
2C056EC07
2C056EC08
2C056EC16
2C056EC20
2C056EC21
2C056EC29
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC71
2C056EC72
2C056EC73
2C056EC79
2C056ED03
2C056EE18
2C056FB03
2C056HA42
2C057AF21
2C057AG44
2C057AM15
2C057AM17
2C057AM18
2C057AM21
2C057AM22
2C057AM28
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】吐出安定性を得ることが可能な印刷装置、印刷方法、および印刷プログラムを提供する。
【解決手段】印刷装置は、被印刷媒体に第1下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第1ノズルおよび前記被印刷媒体に第1下地とは異なる第2下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第2ノズルを有する吐出ヘッドと、制御装置とを備え、制御装置は、第1下地を形成するための第1画像データに基づき印刷を行う第1印刷処理と、第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が第1画像データよりも低い第2画像データに基づき印刷を行う第2印刷処理とを実行し、第2印刷処理では第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように第2ノズルに印刷を行わせるインク量増加処理を実行する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に第1下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第1ノズルおよび前記被印刷媒体に前記第1下地とは異なる第2下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第2ノズルを有する吐出ヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1下地を形成するための第1画像データに基づき印刷を行う第1印刷処理と、
前記第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が前記第1画像データよりも低い第2画像データに基づき印刷を行う第2印刷処理と、を実行し、
前記第2印刷処理では、前記第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように前記第2ノズルに印刷を行わせるインク量増加処理を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記被印刷媒体の被印刷領域中の不規則な位置において前記1パス当たりのドット密度が前記第1画像データの前記ドット密度よりも低くなるように前記第2ノズルに印刷を行わせる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記ノズルにより先に吐出されたインク滴の着弾位置に重なるように後のインク滴を別の前記ノズルに吐出させる重ね吐出を行う重ね吐出処理を実行し、
前記インク量増加処理において前記複数の第2ノズルによる全吐出数に対する前記重ね吐出の数の比率は、前記第1画像データに基づき印刷を行う場合に前記複数の第1ノズルによる全吐出数に対する前記重ね吐出の数の比率よりも高い、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ノズルからインクを吐出させる吐出圧力をインクに付与するアクチュエータをさらに備え、
前記制御装置は、前記インク量増加処理において、前記第2ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形を、前記第1ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形とは異ならせる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形に含まれるパルス数を、前記第1ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形に含まれるパルス数よりも増加させる、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形のパルスの周期を前記アクチュエータの固有振動の周期又は半周期と一致させる、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形における吐出電圧を、前記第1ノズルに対応する前記アクチュエータを駆動する吐出波形における吐出電圧よりも上昇させる、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記インク量増加処理において、前記第2ノズルから吐出させるべきインクの温度を前記第1ノズルから吐出させるべきインクの温度よりも上昇させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御装置は前記第2ノズルから吐出させるべきインクを前記吐出ヘッドにより加熱する、請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第2ノズルから吐出させるべきインクを前記第2ノズルに供給する供給源をさらに備え、
前記制御装置は前記供給源において前記インクを加熱する、請求項8に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記供給源と前記第2ノズルとを連通するインク流路と、
前記インク流路を加熱するヒータと、をさらに備え、
前記制御装置は前記ヒータにより前記インク流路を加熱する、請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第2画像データに基づき前記第2ノズルが1パス当たりに吐出するインク滴のドット密度が所定の基準ドット密度を超える場合に前記インク量増加処理を実行する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御装置は、1パス当たりのドット密度が前記第1画像データよりも低くなるよう前記第2画像データに基づき印刷を行う際には、前記複数の第2ノズルのうち一部の第2ノズルを不使用ノズルとして使用しない、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記第2ノズルは複数あり、
前記吐出ヘッドを保持しつつ移動方向に移動させるキャリッジをさらに備え、
前記複数の第2ノズルは前記移動方向に交差する交差方向に並設されてノズル列を成し、かつ、前記ノズル列は前記移動方向に並設されており、
前記制御装置は、前記インク量増加処理において、前記第2ノズルにより先に吐出されたインク滴の着弾位置に重なるように後のインク滴を前記第2ノズルに吐出させる重ね吐出の処理を実行し、かつ、前記移動方向に並ぶ複数の前記ノズル列の各々における前記第2ノズルのうち前記交差方向における位置が同じである1又は複数の前記第2ノズルを前記不使用ノズルとして前記重ね吐出の処理を実行する、請求項13に記載の印刷装置。
【請求項15】
被印刷媒体に第1下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第1ノズルを有する第1吐出ヘッドと、
前記被印刷媒体に前記第1下地とは異なる第2下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第2ノズルを有する第2吐出ヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1下地を形成するための第1画像データに基づき前記第1吐出ヘッドを用いて印刷を行う第1印刷処理と、
前記第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が前記第1画像データよりも低い第2画像データに基づき前記第2吐出ヘッドを用いて印刷を行う第2印刷処理と、を実行し、
前記第2印刷処理では、前記第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように前記第2ノズルに印刷を行わせるインク量増加処理を実行する、印刷装置。
【請求項16】
被印刷媒体に第1下地を形成するインクを吐出する複数の第1ノズルおよび前記被印刷媒体に前記第1下地とは異なる第2下地を形成するインクを吐出する複数の第2ノズルを有する吐出ヘッドを備える印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記第1下地を形成するための第1画像データに基づき印刷を行う第1印刷処理と、
前記第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が前記第1画像データよりも低い第2画像データに基づき印刷を行う第2印刷処理と、を実行し、
前記第2印刷処理では、前記第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように前記第2ノズルに印刷を行わせる、印刷方法。
【請求項17】
被印刷媒体に第1下地を形成するインクを吐出する複数の第1ノズルおよび前記被印刷媒体に前記第1下地とは異なる第2下地を形成するインクを吐出する複数の第2ノズルを有する吐出ヘッドを備える印刷装置におけるコンピュータに実行させる印刷プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記第1下地を形成するための第1画像データに基づき印刷を行う第1印刷処理実行手段、
前記第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が前記第1画像データよりも低い第2画像データに基づき印刷を行う第2印刷処理実行手段、および
前記第2印刷処理において、前記第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように前記第2ノズルに印刷を行わせるインク量増加制御手段、として機能させる、印刷プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の印刷装置、当該印刷装置を用いた印刷方法、および印刷装置におけるコンピュータに実行させる印刷プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット式の印刷を布帛に適用したDTG(Direct to Garment)プリンタが開発されている。DTGプリンタによれば、生地に直接印刷することが可能である。布帛に対する印刷においては、下地を形成するべく白インクを吐出することがある。そのため、下地を布帛の広範囲に形成する必要があることから、多量の白インクが高密度で吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-070880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多量の白インクを吐出することに起因して、当該吐出により生じる自己気流の影響が強くなってしまう。そのため、印刷中に発生するインクの微小液滴(ミスト)が吐出ヘッドのノズル面に付着する。その結果、ノズルのメニスカスブレイクが起こり、不吐出を引き起こしてしまう可能性がある。このため、吐出安定性を得ることが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、吐出安定性を得ることが可能な印刷装置、印刷方法、および印刷プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、被印刷媒体に第1下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第1ノズルおよび前記被印刷媒体に前記第1下地とは異なる第2下地を形成するインクを吐出するノズルである複数の第2ノズルを有する吐出ヘッドと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1下地を形成するための第1画像データに基づき印刷を行う第1印刷処理と、前記第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が前記第1画像データよりも低い第2画像データのうち前記第2画像データに基づき印刷を行う第2印刷処理と、を実行し、前記第2印刷処理では、前記第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように前記第2ノズルに印刷を行わせるインク量増加処理を実行するものである。
【0007】
本発明に従えば、第2画像データに基づき印刷を行う場合、1パス当たりのドット密度が第1画像データよりも低いため、第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも吐出数を減らすことができる。これにより、吐出により生じる自己気流の影響を抑制でき、もって印刷中に発生するインクの微小液滴が吐出ヘッドのノズル面に付着することを抑制することができる。したがって、ノズルのメニスカスブレイクが起こることを抑制でき、もって吐出安定性を得ることができる。また、上記のようにドット密度は低くなるものの、インク量増加処理によって1ドット当たりのインク量が増加される。これにより、印刷画像が低精細になることを防止又は抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出安定性を得ることが可能な印刷装置、印刷方法、および印刷プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷装置に備わる吐出ヘッドを含む構成を示す平面図である。
図2】印刷装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
図3】吐出ヘッドにおけるノズルの配置例を示す図である。
図4】(a)は基本色のインクにより形成された第1下地の画像の一例を示す図であり、(b)はホワイトのインクにより形成された第2下地の画像の一例を示す図である。
図5】ドット密度低下処理の一例を説明するための図である。(a)はドットデータの一例を示す説明図であり、(b)はマスクデータの一例を示す説明図であり、(c)は(a)のドットデータに(b)のマスクデータを適用したドットデータを示す説明図である。
図6】インク量増加処理の一例を説明するための図である。
図7】インク量増加処理の別例を説明するための図である。
図8】インク量増加処理の別例を説明するための図である。
図9】インク量増加処理の別例を説明するための図である。
図10】インク量増加処理の別例を説明するための図である。
図11】制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図12】ドット密度低下処理の別例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る印刷装置について図面を参照して説明する。以下に説明する印刷装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。図2は印刷装置1の制御系統の構成を示すブロック図である。以下、互いに直交する方向を第1方向Dsおよび第2方向Dfとする。例えば、第1方向Dsは後述のキャリッジ41の移動方向であり、第2方向Dfは後述の被印刷媒体Wの搬送方向である。以下の説明では、Dsを移動方向と記載し、Dfを搬送方向と記載する。
【0012】
印刷装置1は印刷用紙等への印刷のみならず、例えば布帛等の被印刷媒体Wへの印刷も可能であるインクジェットプリンタである。印刷装置1は図1に示すようにシリアルヘッド方式であって、複数の吐出ヘッド20、プラテン11、複数のタンク12、搬送装置30および走査装置40を備える。なお、印刷装置1はラインヘッド方式であってもよい。この場合、印刷装置1は走査装置40を備えず、吐出ヘッド20は移動せずに移動方向Dsにおいて被印刷媒体Wの印刷領域の長さよりも長い寸法を有する。
【0013】
吐出ヘッド20は、画像データに基づいて所定のインクにより被印刷媒体Wに画像を印刷する。吐出ヘッド20は、例えば2つの吐出ヘッド21および2つの吐出ヘッド22を含む。本実施形態において、吐出ヘッド21が第1吐出ヘッドに相当し、吐出ヘッド22が第2吐出ヘッドに相当する。吐出ヘッド21は後述の基本色のインクにより被印刷媒体Wに印刷を行う。吐出ヘッド22はホワイトのインクにより被印刷媒体Wに印刷を行う。プラテン11は平坦な上面を有し、その上面上に配置された被印刷媒体Wと、これに対向して設けられる吐出ヘッド20の下面との間の距離を規定する。
【0014】
タンク12にはインクが貯留されている。タンク12は吐出ヘッド20にインクを供給すべく流路を介して吐出ヘッド20に接続される。タンク12は、インクを貯留する容器であって、その数はインクの種類と同数以上である。例えば、タンク12は4種類の基本色のインクをそれぞれ貯留する4種類の第1タンク12a、および、ホワイトのインクを貯留する1又は複数の第2タンク12bを有する。基本色のインクとしては、シアンのインク、イエローのインク、マゼンタのインク、ブラックのインクが例示される。
【0015】
第1タンク12aは、基本色のインクを貯留し、第1流路13aにより吐出ヘッド21に連通されている。基本色のインクは、第1タンク12aから第1流路13aを介して吐出ヘッド21に供給される。第2タンク12bは、第2流路13bにより吐出ヘッド22に連通されている。第2タンク12bにホワイトのインクが貯留されると、当該インクは第2タンク12bから第2流路13bに流入して充填され、吐出ヘッド22に供給される。第1流路13aおよび第2流路13bとしては、例えばゴムチューブ又はプラスチックチューブからなる屈曲に強いものが好ましい。
【0016】
搬送装置30は、例えば、2組の搬送ローラ31、および搬送モータ32(図2)を有する。2組の搬送ローラ31は、搬送方向Dfにおいて互いの間にプラテン11を挟んで配置されている。本実施形態において搬送方向Dfが交差方向に相当する。搬送ローラ31は移動方向Dsに延びる軸を有する。各組の搬送ローラ31は、互いの間に被印刷媒体Wを挟むように上下方向Dzに並んでいる。各組の搬送ローラ31のうちの一方の搬送ローラ31は、搬送モータ32に連結されている。搬送ローラ31は、搬送モータ32の駆動によって軸を中心に回転し、被印刷媒体Wをプラテン11上において搬送方向Dfに搬送する。
【0017】
走査装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、走査モータ43、および、無端ベルト44を有する。2本のガイドレール42は搬送方向Dfにおいて吐出ヘッド20を互いの間に挟むようにプラテン11の上方において移動方向Dsに延びている。キャリッジ41は、複数の吐出ヘッド20を保持し、移動方向Dsに移動可能に2本のガイドレール42に支持されている。無端ベルト44は、移動方向Dsに延びて、キャリッジ41に取り付けられ、走査モータ43にプーリー45を介して取り付けられている。走査モータ43が駆動すると、無端ベルト44が動作し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って移動方向Dsに往復移動する。これにより、キャリッジ41は移動方向Dsに吐出ヘッド20を移動させる。
【0018】
図2に示すように、吐出ヘッド20は複数の駆動素子25を有する。駆動素子25は、圧電素子等を含み、吐出ヘッド20の各ノズル23(後述の図3)に対応して設けられ、ノズル23からインクを吐出する圧力を当該インクに付与する。なお、駆動素子25がアクチュエータに相当する。
【0019】
印刷装置1は、さらに表示装置14、入力装置15および制御装置50を備える。制御装置50はコンピュータに相当し、インターフェース51、演算部52および記憶部53を有する。制御装置50はインク量増加処理を実行する。インク量増加処理については後で詳述する。また、インターフェース51は、コンピュータ、カメラ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイおよびプリンタ等の外部装置200から画像データなどの各種データを受信する。画像データは被印刷媒体Wに印刷される画像を示すラスタデータ等であり、所定の印刷条件の情報が含まれる。なお、制御装置50は単独の装置により構成されていてもよく、或いは複数の装置が分散配置されていてそれらが協働して印刷装置1の動作を行うよう構成されてもよい。
【0020】
記憶部53は、演算部52からアクセス可能なメモリであって、RAMおよびROMを含む。RAMは、画像データなどの外部装置200から受信したデータおよび演算部52により変換されたデータなどの各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うための印刷プログラムおよび各種データ等を記憶する。なお、印刷プログラムは、記憶部53とは異なる外部の記憶媒体であって且つ演算部52からアクセス可能な記憶媒体、例えばUSBフラッシュメモリ又はCD-ROM等に記憶されてもよい。
【0021】
演算部52は、例えばCPUなどのプロセッサおよびASICなどの集積回路などの少なくとも1つの回路を含む。演算部52は、印刷プログラムを実行することにより各部を制御し、印刷動作などの各種動作を実行する。本実施形態において、演算部52が第1印刷処理実行手段、第2印刷処理実行手段、およびインク量増加制御手段に相当する。
【0022】
表示装置14は、例えばディスプレイなどであって、制御装置50の指示に従って画像データに係る画像を表示する。入力装置15は、例えばボタンなどであって、ユーザにより操作される。なお、表示装置14は、吐出ヘッド20により被印刷媒体Wに印刷された画像と完全同一の画像を表示し得ない場合があるが、完全同一でなくとも均等の範囲内に包含されるものとする。また、入力装置15は表示装置14と一体化されたタッチパネルであってもよい。
【0023】
制御装置50は、搬送駆動回路33を介して搬送装置30の搬送モータ32に電気的に接続され、搬送モータ32の駆動を制御する。これにより、搬送装置30による被印刷媒体Wの搬送が制御される。また、制御装置50は、走査駆動回路46を介して走査装置40の走査モータ43に電気的に接続され、走査モータ43の駆動を制御する。これにより、走査装置40による吐出ヘッド20の移動が制御される。さらに、制御装置50は、吐出ヘッド駆動回路26を介して駆動素子25に電気的に接続されている。制御装置50は、駆動素子25の制御信号を吐出ヘッド駆動回路26に出力し、ヘッド駆動回路26が制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子25に出力する。駆動素子25は駆動信号に応じて駆動し、これによりノズル23からインクが吐出される。
【0024】
以上の構成を有する印刷装置1において、制御装置50は画像データを取得し、当該画像データに基づいて印刷動作を実行する。この場合、制御装置50は、印刷パスにおいて吐出ヘッド20を移動方向Dsに移動させながら、吐出ヘッド20からインクを被印刷媒体Wに吐出させる。そして、制御装置50は被印刷媒体Wを前方へ搬送させる。このように、印刷装置1は印刷パスと搬送動作とを交互に繰り返す。これにより、画像データに係る画像が被印刷媒体Wに印刷される。
【0025】
図3は吐出ヘッド20におけるノズル23の配置例を示す図である。図3では、図1の2つの吐出ヘッド21および2つの吐出ヘッド22のうち、1つの吐出ヘッド21および1つの吐出ヘッド22のみ図示している。
【0026】
吐出ヘッド21と吐出ヘッド22とは搬送方向Dfに並んで配置される。吐出ヘッド21には複数の第1ノズル23aが設けられている。吐出ヘッド22には複数の第2ノズル23bが設けられている。なお、変形例として、複数の第1ノズル23aおよび複数の第2ノズル23bを1つの吐出ヘッドに設ける構成を採用してもよい。
【0027】
吐出ヘッド21には複数(図3では4つ)のノズル列群NLGが設けられている。一のノズル列群NLGは複数(図3では3つ)のノズル列NLを含む。一のノズル列NLは搬送方向Dfにほぼ等間隔で配置された複数のノズル23により構成されている。一のノズル列群NLGに含まれる一のノズル列NLを構成する各ノズル23は、当該一のノズル列NLと移動方向Dsに隣り合う他のノズル列NLを構成する各ノズル23に対して搬送方向Dfに所定量ずれて配置されている。つまり、一のノズル列NLを構成する各ノズル23は、移動方向Dsに隣り合う他のノズル列NLを構成する各ノズル23の搬送方向Dfにおける位置とは異なる位置に配置されている。また、吐出ヘッド21における各ノズル列群NLGは移動方向Dsにほぼ等間隔で配置されている。移動方向Dsの一端側(図3では左側)から順に、ブラックのインクを吐出するノズル列群NLG、シアンのインクを吐出するノズル列群NLG、マゼンタのインクを吐出するノズル列群NLG、および、イエローのインクを吐出するノズル列群NLGが配置されている。吐出ヘッド21におけるノズル23である第1ノズル23aは、被印刷媒体Wに第1下地を形成するべく基本色のインクを吐出して被印刷媒体Wに印刷を行う。
【0028】
吐出ヘッド22の構成は吐出ヘッド21の構成と基本的に同じである。吐出ヘッド22には複数(図3では4つ)のノズル列群NLGが設けられている。吐出ヘッド22における各ノズル列群NLGは移動方向Dsにほぼ等間隔で配置されている。吐出ヘッド22における各ノズル列群NLGはホワイトのインクを吐出する。吐出ヘッド22におけるノズル23である第2ノズル23bは、被印刷媒体Wに第1下地とは異なる第2下地を形成するべくホワイトのインクを吐出して被印刷媒体Wに印刷を行う。複数の第2ノズル23bは搬送方向Dfに並設されてノズル列NLを成し、かつ、ノズル列NLは移動方向Dsに並設されている。
【0029】
図4(a)は第1画像データに基づき基本色のインクにより形成された第1下地の画像Ga1の一例を示す図であり、図4(b)は第2画像データに基づきホワイトのインクにより形成された第2下地の画像Ga2の一例を示す図である。
【0030】
制御装置50は第1下地を形成するための第1画像データに基づき印刷を行う第1印刷処理を実行する。図4(a)に示す画像Ga1は第1下地に係る画像であって第1画像データに基づき形成される。また、制御装置50は第2下地を形成するための画像データであって1パス当たりのドット密度が第1画像データよりも低い第2画像データに基づき印刷を行う第2印刷処理を実行する。図4(b)に示す画像Ga2は第2下地に係る画像であって第2画像データに基づき形成される。
【0031】
図4(a)および図4(b)において、黒色の部分はインクによりドットが形成された部分であり、白色の部分はドットが形成されていない部分である。第2画像データは、1パス当たりのドット密度が第1画像データよりも低い画像データである。このため、図4(b)の画像Ga2は、図4(a)の画像Ga1よりも白色の部分が多くなっている。なお、ドット密度とは、形成されるドットの1インチ当たりの数を表す。例えば、基本色のインクにより第1下地を印刷する場合、ドット密度は1200dpiである。従って、移動方向Dsにおける寸法が1インチで且つ搬送方向Dfにおける寸法が1インチである領域に形成し得るドットの総数は144万ドットとなる。また、ホワイトのインクにより第2下地を印刷する場合には、上記領域に形成し得るドットの総数が例えば144万×(100-Y(Yは所定値))/100となるようにドット密度を決定することができる。
【0032】
次いで、第2印刷処理において行われる処理であって、第2画像データに基づき印刷を行う際に1パス当たりのドット密度を第1画像データよりも低くするための処理(以下、ドット密度低下処理と呼ぶ)について、一例を挙げて説明する。図5はドット密度低下処理の一例を説明するための図である。図5(a)はドットデータの一例を示す説明図であり、同図(b)はマスクデータの一例を示す説明図であり、同図(c)は(a)のドットデータに(b)のマスクデータを適用したドットデータを示す説明図である。
【0033】
図5(a)に示すように、ドットデータDd1は移動方向Dsに並ぶ複数の画素pxの何れかに例えば4つの吐出ドット情報I1~I4が配置されている。吐出ドット情報I1~I4はそれぞれインク滴を吐出すべきことを示す情報である。また、ドットデータDd1における空白部分は吐出ドット無情報Imである。吐出ドット無情報Imはインク滴を吐出すべきでないことを示す情報である。
【0034】
制御装置50は、図5(a)のドットデータDd1に対して、図5(b)のマスクデータDmを適用する。マスクデータDmは複数の画素pxの何れかに非吐出ドット情報Ihを有する。このようなマスクデータDmをドットデータDd1に適用すると、ドットデータDd1における吐出ドット情報I1~I4のうち、マスクデータDmにおける非吐出ドット情報Ihと移動方向Dsにおける位置が同じである吐出ドット情報I2,I4がマスクされて非吐出ドット情報Ihに変換される。これにより、ドットデータDd1よりもドット密度が低下された新たなドットデータDd2が生成される。以上のようにして、1パス当たりのドット密度を低くし得るドット密度低下処理が行われる。
【0035】
制御装置50は、ドット密度低下処理において、被印刷媒体Wの被印刷領域Wh(図1)中の不規則な位置において1パス当たりのドット密度が第1画像データのドット密度よりも低くなるように第2ノズル23bに印刷を行わせる。この場合、制御装置50は1パスごとに乱数を使用して上述のマスクデータDmにおける非吐出ドット情報Ihの位置をランダムにすることができる。非吐出ドット情報Ihの位置が1パスごとにランダムにされたマスクデータDmをドットデータDd1に適用することによって、被印刷媒体Wの被印刷領域Wh中の不規則な位置においてドット密度を低下させることが可能となる。
【0036】
制御装置50は、第2画像データに基づき第2ノズル23bにより吐出されるインク滴のドット密度が所定の基準ドット密度を超える場合に上記のドット密度低下処理および後記のインク量増加処理を実行する。例えば、基準ドット密度は、9.5×10(dot/inch)としてもよい。基準ドット密度は記憶部53に記憶される。
【0037】
ここで、制御装置50は第2印刷処理において第1画像データに基づき印刷を行う場合よりも1ドット当たりのインク量が増加するように第2ノズル23bに印刷を行わせるインク量増加処理を実行する。以下、制御装置50によるインク量増加処理について、複数の例を挙げて説明する。
【0038】
制御装置50は、インク量増加処理の一例として、第2ノズル23bにより先に吐出されたインク滴の着弾位置に重なるように後のインク滴を別の第2ノズル23bに吐出させる重ね吐出を行う重ね吐出処理を実行してもよい。この場合、インク量増加処理において複数の第2ノズル23bによる全吐出数に対する重ね吐出の数の比率は、第1画像データに基づき印刷を行う場合に複数の第1ノズル23aによる全吐出数に対する重ね吐出の数の比率よりも高い。これによって、第1画像データに基づき印刷を行う場合よりもインク量増加処理における1ドット当たりのインク量を増加させることが可能となる。
【0039】
或いは、制御装置50はインク量増加処理において第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形を、第1ノズル23aに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形とは異ならせてもよい。以下、具体的に説明する。
【0040】
図6はインク量増加処理の一例を説明するための図である。図7乃至図10はインク量増加処理の別例を説明するための図である。
【0041】
図6に示すように、制御装置50は、第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形Wd2に含まれる吐出周期CdにおけるパルスPaの数を、第1ノズル23aに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形Wd1に含まれる吐出周期CdにおけるパルスPaの数よりも増加させる。これにより、1ドット当たりのインク量を増加させることができる。
【0042】
インク量増加処理は、増加後のインク量が以下の式により算出される値になるよう行われることが望ましい。
増加後のインク量=(通常のインク量)×{(ドット密度低下処理前のドット密度)/(ドット密度低下処理後のドット密度)}
【0043】
また、以下のようにしてもよい。図7に示すように、制御装置50は、第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形Wd4におけるパルスPaの吐出電圧(信号強度レベル)を、第1ノズル23aに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形Wd3における吐出電圧よりも上昇させる。これによっても、1ドット当たりのインク量を増加させることができる。
【0044】
また、以下のようにしてもよい。図8に示すように、制御装置50は第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形Wd5のパルスPaの周期Ptを当該駆動素子25の固有振動の周期Fhと略一致させるように吐出波形Wd5を生成する。このとき、制御装置50は隣り合う一方のパルスPaと他方のパルスPaとの間隔の周期Piを駆動素子25の固有振動の周期Fhに略一致させるように吐出波形Wd5を生成する。これにより、第2ノズル23bから吐出されるインク滴の液滴サイズを大きくすることができ、もって1ドット当たりのインク量を増加させることができる。或いは、制御装置50は第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形Wd5のパルスPaの周期Ptを当該駆動素子25の固有振動の周期Fhの1/2の周期(つまり半周期)と略一致させるように吐出波形Wd5を生成してもよい。これによっても、第2ノズル23bから吐出されるインク滴の液滴サイズを大きくすることができ、1ドット当たりのインク量を増加させることができる。
【0045】
さらに、制御装置50は、インク量増加処理において、第2ノズル23bから吐出させるべきインクの温度を第1ノズル23aから吐出させるべきインクの温度よりも上昇させてもよい。図9に示すように、吐出ヘッド20の外周にフィルム状のヒータ110を巻き付ける。これにより、ヒータ110により吐出ヘッド20が加熱され、当該吐出ヘッド20により吐出ヘッド20内の流路内のインクを加熱して当該インクに熱膨張を生じさせることができる。よって、第2ノズル23bから吐出されるインク滴の体積を増加させることができ、1ドット当たりのインク量を増加させることができる。或いは、インクの温度を上昇させる構成として次の構成を採用してもよい。
【0046】
図10に示すように、吐出ヘッド22に繋がる4本の第2流路13bを固定具120に固定する。第2流路13bがインク流路に相当する。固定具120は、各第2流路13bの外周の半周を覆う4つの窪みが形成された一方のプレートと当該一方のプレートと同形状の他方のプレートとを面接触により組み合わせて成る。固定具120には各第2流路13bを加熱するフィルム状のヒータ121が設けられる。制御装置50はヒータ121により各第2流路13bを加熱する処理を実行する。これにより、第2流路13b内のインクが加熱され、第2ノズル23bから吐出されるインク滴の体積を増加させることができる。
【0047】
さらに、各第2流路13bのうちヒータ121よりも下流側で吐出ヘッド22よりも上流側の部分に、第2ノズル23bから吐出させるべきインクを当該第2ノズル23bに供給するサブタンク18を設けてもよい。第2流路13bによりサブタンク18と第2ノズル23bとが連通される。本実施形態においてサブタンク18が供給源に相当する。サブタンク18の外周にフィルム状のヒータ122を巻き付ける。制御装置50はヒータ122により各サブタンク18を加熱し、もってサブタンク18において当該サブタンク18内のインクを加熱する処理を実行する。これにより、サブタンク18内のインクが加熱されて当該インクに熱膨張を生じさせることができる。よって、第2ノズル23bから吐出されるインク滴の体積を増加させることができる。なお、ヒータ121およびヒータ122については何れか一方のみ設けてもよいし、両方を設けてもよい。
【0048】
次いで、制御装置50による処理の流れについて説明する。図11は制御装置50による処理の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、制御装置50は外部装置200から画像データの一例として第2画像データを取得する(ステップS1)。制御装置50は、第2画像データに基づき第2ノズル23bにより吐出されるインク滴のドット密度が閾値としての基準ドット密度を超えるか否かを判別する。
【0049】
第2画像データに基づき第2ノズル23bにより吐出されるインク滴のドット密度が基準ドット密度を超える場合(ステップS2でYes)、制御装置50は上述したドット密度低下処理を実行する(ステップS3)。ドット密度低下処理によって、1パス当たりのドット密度を第1画像データよりも低下させることができる。
【0050】
次いで、制御装置50は第2画像データを基にインク量増加処理の対象が被印刷媒体Wの被印刷領域Whの全体であるか否かを判別する(ステップS4)。例えば、制御装置50は被印刷領域Whの全体に下地を形成する場合にはインク量増加処理の対象が被印刷領域Whの全体であると判別でき、被印刷領域Whの例えば文字部分の背景に下地を形成する場合にはインク量増加処理の対象が被印刷領域Whの一部であると判別できる。
【0051】
インク量増加処理の対象が被印刷媒体Wの被印刷領域Whの全体である場合(ステップS4でYes)、制御装置50は被印刷領域Whの全体に対して上述したインク量増加処理を実行する(ステップS5)。一方、インク量増加処理の対象が被印刷媒体Wの被印刷領域Whの一部である場合(ステップS4でNo)、制御装置50は被印刷領域Whの一部に対してインク量増加処理を実行する(ステップS6)。
【0052】
第2画像データに基づき第2ノズル23bにより吐出されるインク滴のドット密度が基準ドット密度を超えない場合(ステップS2でNo)、および、ステップS5,S6の処理の後、制御装置50は第2画像データに基づく印刷データを生成する(ステップS7)。そして、制御装置50は印刷データに基づき被印刷媒体Wに対する印刷処理を実行する(ステップS8)。
【0053】
以上説明したように、印刷装置1によれば、第2画像データに基づき印刷を行う場合、1パス当たりのドット密度が第1画像データよりも低いため、第1画像データに基づき印刷を行う場合よりもインク滴の吐出数を減らすことができる。これにより、吐出により生じる自己気流の影響を抑制でき、もって印刷中に発生するインクの微小液滴が吐出ヘッド20のノズル面に付着することを抑制することができる。したがって、ノズル23のメニスカスブレイクが起こることを抑制でき、もって吐出安定性を得ることができる。また、上記のようにドット密度は低くなるものの、インク量増加処理によって1ドット当たりのインク量が増加される。これにより、印刷画像が低精細になることを防止又は抑制できる。以上によって、自己気流の影響を抑制すべくインク滴の吐出数を減らすことで吐出安定性を確保しつつも、1ドット当たりのインク量を増加させることで印刷画像の低精細化を防止等することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、制御装置50はインク量増加処理において被印刷媒体Wの被印刷領域Wh中の不規則な位置において1パス当たりのドット密度が第1画像データのドット密度よりも低くなるように第2ノズル23bに印刷を行わせる。このように不規則な位置においてドット密度を低下させることで、当該ドット密度が偏った領域が生じるのを防ぐことができる。したがって、インクの吐出数が多く偏る領域が生じるのを防ぐことができ、もって自己気流の影響を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、インク量増加処理において複数の第2ノズル23bによる全吐出数に対する重ね吐出の数の比率は、第1画像データに基づき印刷を行う場合に複数の第1ノズル23aによる全吐出数に対する重ね吐出の数の比率よりも高い。これにより、第2ノズル23bによる全吐出数を増加させることなく、1ドット当たりのインク量を増加させることができる。したがって、自己気流の影響を抑制しつつ印刷画像が低精細になることを防止又は抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、制御装置50はインク量増加処理において第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形を、第1ノズル23aに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形とは異ならせる。具体的には、制御装置50は第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形に含まれるパルス数を、第1ノズル23aに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形に含まれるパルス数よりも増加させてもよい。これにより、第2画像データに基づく印刷を行う際に1ドット当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、制御装置50はインク量増加処理において第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形を重畳させてもよい。これにより、第2画像データに基づく印刷を行う際に1ドット当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、制御装置50はインク量増加処理において第2ノズル23bに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形における吐出電圧を、第1ノズル23aに対応する駆動素子25を駆動する吐出波形における吐出電圧よりも上昇させてもよい。これにより、第2画像データに基づく印刷を行う際に1ドット当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、制御装置50はインク量増加処理において第2ノズル23bから吐出させるべきインクの温度を第1ノズル23aから吐出させるべきインクの温度よりも上昇させてもよい。具体的には、制御装置50は第2ノズル23bから吐出させるべきインクを吐出ヘッド20により加熱してもよい。これにより、インクに熱膨張を生じさせることができ、第2ノズル23bから吐出されるインク滴の体積を増加させることができる。よって、1ドット当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、制御装置50はサブタンク18によりインクを加熱してもよい。これによっても、1ドット当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、制御装置50はヒータ121によりインク流路である第2流路13bを加熱してもよい。これによっても、1ドット当たりのインク量を容易に増加させることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、制御装置50は第2画像データに基づき第2ノズル23bが1パス当たりに吐出するインク滴のドット密度が所定の基準ドット密度を超える場合にインク量増加処理を実行する。この場合、インク量増加処理を実行の要否を決定するための基準が明確になる。
【0063】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形例を採用することが可能である。例えば以下の通りである。
【0064】
上記実施形態では、ドットデータDd1にマスクデータDmを適用することでドット密度低下処理を行ったが、ドット密度低下処理はこれに限定されるものではなく、以下のようにしてもよい。図12はドット密度低下処理の別例を説明するための図である。
【0065】
制御装置50は、1パス当たりのドット密度が第1画像データよりも低くなるよう第2画像データに基づき印刷を行う際に、複数の第2ノズル23bのうち一部の第2ノズル23bを不使用ノズル23cとして使用しなくてもよい。図12には一例として一部の不使用ノズル23cを示している。制御装置50は、インク量増加処理において、第2ノズル23bにより先に吐出されたインク滴の着弾位置に重なるように後のインク滴を第2ノズル23bに吐出させる重ね吐出の処理を実行する。重ね吐出の処理では、制御装置50は移動方向Dsに並ぶ複数のノズル列NLの各々における第2ノズル23bのうち、搬送方向Dfにおける第2ノズル23bの位置がそれぞれ同じである複数の第2ノズル23bで構成されるノズル群NFGに含まれる何れかの第2ノズル23bを不使用ノズル23cとする。これにより、移動方向Dsにおける位置が同じである複数の第2ノズル23bのうち何れかを不使用ノズル23cとするときの解像度の低下を回避しつつ容易にドット密度低下処理を実行することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、増加後のインク量が上述の所定の式により算出される値になるようインク量増加処理が行われることを述べたが、増加後のインク量が下記式により算出される値になるようインク量増加処理が行われてもよい。上述の所定の式により算出される値に0.8~1.2の係数を乗じて得た値を増加後のインク量とすることで、環境温度の唐突な変化など不測の事態も考慮に入れつつインク量の制御を行うことができる。
増加後のインク量=(通常のインク量)×{(ドット密度低下処理前のドット密度)/(ドット密度低下処理後のドット密度)}×(0.8~1.2)
【0067】
また、上記実施形態では、第1ノズル23aと第2ノズル23bとを互いに別個独立したノズル23として設けることとしたが、これに限定されるものではない。第1ノズル23aと第2ノズル23bとを同一のノズル23としてもよい。この場合、第2画像データに係るドット密度が基準ドット密度を超える場合にインク量増加処理を実行して下地を形成するインクを吐出するノズル23を第2ノズル23bと位置付け、上記ドット密度が基準ドット密度を超えない場合にインク量増加処理を実行することなく下地を形成するインクを吐出するノズル23を第1ノズル23aと位置付けることができる。
【0068】
また、上記実施形態において、基本色のインクおよびホワイトのインクの他に、レッドのインク、グリーンのインクおよびブルーのインク等の特色のインクを貯留するタンクおよびこれらのインクを吐出する吐出ヘッドを別途設けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、第2流路13bにヒータ121を設け、当該第2流路13bに連通されるサブタンク18にヒータ122を設けたが、これに限らず、何れか一方のヒータのみを設ける構成としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ホワイトのインクを吐出する第2ノズル23bについてインク量増加処理を行うようにしたが、これに限らず、ホワイトのインク以外のインクを吐出するノズルについてインク量増加処理を行ってもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態では、基準ドット密度を、9.5×10(dot/inch)としたが、当該基準ドット密度は適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 印刷装置
13b 第2流路
18 サブタンク
20 吐出ヘッド
23 ノズル
23a 第1ノズル
23b 第2ノズル
23c 不使用ノズル
25 駆動素子
41 キャリッジ
50 制御装置
110,122 ヒータ
Ds 移動方向
Df 搬送方向
NL ノズル列
W 被印刷媒体
Wh 被印刷領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12