(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171580
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】上下搬送機
(51)【国際特許分類】
B66B 5/16 20060101AFI20241205BHJP
B66B 9/00 20060101ALI20241205BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B66B5/16 Z
B66B9/00 D
F16D63/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088662
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】392024909
【氏名又は名称】ホクショー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新橋 徹也
(72)【発明者】
【氏名】山岸 真大
【テーマコード(参考)】
3F301
3F304
3J058
【Fターム(参考)】
3F301AA12
3F301BC01
3F304AA07
3F304DA43
3F304DA47
3J058AA41
3J058BA40
3J058CC02
3J058CD03
3J058FA35
(57)【要約】
【課題】ディスクブレーキの周辺に結露や着氷を生じさせることを防止できる上下搬送機を提供する。
【解決手段】上下搬送機10は、上下方向に延びる本体フレーム12と、本体フレーム12に沿って搬送台15を移動させる駆動機構(13)と、本体フレーム12に対する搬送台15の移動を制止させるディスクブレーキ41と、制動力の制御のための流体をディスクブレーキ41に送る流体通路42と、流体通路42を温める加温部(46b)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる本体フレームと、
前記本体フレームに沿って搬送台を移動させる駆動機構と、
前記本体フレームに対する前記搬送台の移動を制止させるディスクブレーキと、
制動力の制御のための流体を前記ディスクブレーキに送る流体通路と、
前記流体通路を温める加温部と、を備えることを特徴とする上下搬送機。
【請求項2】
前記流体通路は、前記ディスクブレーキに接続される給排路と、前記流体を加圧する圧力供給源に接続される導入路と、前記給排路に対して前記導入路への接続と前記流体を排出する排出口への接続とを切り替える切替部と、を有し、
前記加温部は、前記導入路であることを特徴とする請求項1に記載の上下搬送機。
【請求項3】
前記導入路は、少なくとも一部が前記給排路と接した状態で並列されて前記加温部とされることを特徴とする請求項2に記載の上下搬送機。
【請求項4】
前記給排路と前記導入路とは、並列された箇所が熱伝導性テープの巻き付けにより固定されていることを特徴とする請求項3に記載の上下搬送機。
【請求項5】
前記本体フレームは、前記駆動機構および前記搬送台とともに箱体に覆われて設けられ、
前記箱体には、前記搬送台への搬送物の積み降ろしを行う搬送口が少なくとも2つ設けられ、
前記搬送口には、前記箱体の内部と外部とを遮断しつつ前記搬送口を開閉する搬送扉が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の上下搬送機。
【請求項6】
前記搬送台には、前記搬送物を収容可能であってファンフィルターユニットが取り付けられた搬送筐体が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の上下搬送機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送物を上下方向に搬送する上下搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送物を上下方向に搬送する上下搬送機が考えられている(例えば、特許文献1参照)。その上下搬送機では、搬送台を上下方向に移動可能とし、その搬送台を設定された搬送口に合わせた位置で適切に停止させて、搬送台に搬送物を載せたり搬送台から搬送物を降ろしたりすることで、搬送物を上下方向に搬送する。この上下搬送機では、ディスクブレーキを用いることにより、搬送台を適切な位置で停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の上下搬送機では、ディスクブレーキにおいて、空気等の流体の圧力を流体通路から導入することで制動力を得る構成とすることが考えられる。そのような構成のディスクブレーキでは、利用する流体の圧力を高めることにより制動力を高めることができ、搬送台の適切な位置での停止をより確実なものにできる。
【0005】
しかしながら、従来の上下搬送機では、ディスクブレーキで高い圧力の流体を用いると、ディスクブレーキの制動力を解除した際の流体の圧力変動が大きくなり、その流体を通す流体通路等を過度に冷却してしまい、流体通路等の周辺に結露や着氷を生じさせる虞がある。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、ディスクブレーキの周辺に結露や着氷を生じさせることを防止できる上下搬送機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示の上下搬送機は、上下方向に延びる本体フレームと、前記本体フレームに沿って搬送台を移動させる駆動機構と、前記本体フレームに対する前記搬送台の移動を制止させるディスクブレーキと、制動力の制御のための流体を前記ディスクブレーキに送る流体通路と、前記流体通路を温める加温部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本開示の上下搬送機は、ディスクブレーキの周辺に結露や着氷を生じさせることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る上下搬送機を用いた上下搬送システムの構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】上下搬送機における搬送台の周辺の構成を示す説明図である。
【
図3】流体通路に設けられた電磁弁の構成を示す説明図である。
【
図4】電磁弁における切り替えの様子を示す説明図である。
【
図6】流体通路において、導入分岐路と給排分岐路とにアルミテープが巻き付けられた様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る上下搬送機の一例としての実施例1の上下搬送システム1に用いられた上下搬送機10について、
図1から
図6を参照しつつ説明する。
【実施例0011】
図1に示す上下搬送システム1は、上下方向の異なる位置へと搬送物2(
図2参照)を搬送するもので、実施例1ではクリーンルームに設けられて、クリーンルーム内の上下方向の異なる位置へと搬送物2を搬送する。この上下搬送システム1は、上下方向に搬送物2を搬送する上下搬送機10を備える。上下搬送機10は、上下方向で異なる位置に複数の搬送位置11が設定されており(実施例1では2つ)、以下では、個別に示す際には、上側を上側搬送位置11Uとし、下側を下側搬送位置11Dとする。
【0012】
また、上下搬送システム1は、上側搬送位置11Uに対応して設けられた上側移載機3と、下側搬送位置11Dに対応して設けられた下側移載機4と、を備える。実施例1の上下搬送システム1は、上側移載機3と下側移載機4とが上下搬送機10を挟んで反対側に位置された所謂Z型とされている。この上下搬送システム1は、いずれかの搬送位置11から搬入された搬送物2を移動させて他の搬送位置11から搬出させる。なお、上下搬送システム1は、上側移載機3と下側移載機4とが上下搬送機10に対して一方の側に位置された所謂C型とされていてもよく、3つ以上の搬送位置と移載機とが設けられていてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0013】
実施例1の上下搬送システム1では、全体を収容する箱体30が設けられている。箱体30は、上下搬送システム1で塵埃等が生じた場合であっても、その塵埃等がクリーンルームに漏れることを防ぐ。その箱体30は、箱体本体部31と上側箱体水平部32と下側箱体水平部33とを有する。箱体本体部31は、上下方向に長尺な略直方体形状とされており、上下搬送機10を全体に亘って覆うものとされている。この箱体本体部31では、上側搬送口34Uと下側搬送口34Dとが設けられている。
【0014】
上側搬送口34Uは、上下搬送機10の上側搬送位置11Uに合わせて箱体本体部31を部分的に開口している。この上側搬送口34Uは、上下搬送機10と上側移載機3との間での搬送物2の移動を可能とする。実施例1の上側搬送口34Uでは、開閉可能な上側搬送扉35Uが設けられている。上側搬送扉35Uは、開けられることで上側搬送口34Uを介した搬送物2の移動を許すとともに、閉められることで上側搬送口34Uを封止する。
【0015】
下側搬送口34Dは、上下搬送機10の下側搬送位置11Dに合わせて箱体本体部31を部分的に開口している。この下側搬送口34Dは、上下搬送機10と下側移載機4との間での搬送物2の移動を可能とする。実施例1の下側搬送口34Dでは、開閉可能な下側搬送扉35Dが設けられている。下側搬送扉35Dは、開けられることで下側搬送口34Dを介した搬送物2の移動を許すとともに、閉められることで下側搬送口34Dを封止する。
【0016】
上側箱体水平部32は、上側搬送口34Uと、上側移載機3における上側搬送口34Uの近傍と、を覆うもので、上側搬送口34Uを取り囲むように上下搬送機10に接続されている。この上側箱体水平部32は、上側搬送口34Uの近傍において、上下搬送機10と上側移載機3との間で移動される際の搬送物2に触れることを防止する。下側箱体水平部33は、下側搬送口34Dと、下側移載機4における下側搬送口34Dの近傍と、を覆うもので、下側搬送口34Dを取り囲むように上下搬送機10に接続されている。この下側箱体水平部33は、下側搬送口34Dの近傍において、上下搬送機10と下側移載機4との間で移動される際の搬送物2に触れることを防止する。
【0017】
上下搬送機10は、本体フレーム12とモータ13と主索タイミングベルト14と搬送台15とカウンターウエイト16とを有する。本体フレーム12は、上下方向に延びる略直方体形の枠状とされ、内側に搬送物2を上下方向に搬送する搬送空間17を形成する。実施例1の本体フレーム12(搬送空間17)では、下部が下側搬送位置11Dとされており、上部が上側搬送位置11Uとされている。また、本体フレーム12では、一対のガイドレール18が設けられている。両ガイドレール18は、本体フレーム12の内側で上下方向に延びて設けられており、本体フレーム12内での搬送台15の移動を案内する。
【0018】
モータ13は、上下搬送機10における駆動源となるもので、本体フレーム12の最上部に設置されている。このモータ13は、回転軸19等を介して伝達プーリ20を回転駆動させることで、搬送台15の上下方向に移動(昇降)のための駆動力を付与する。そのモータ13は、例えばギヤードモータやパルスモータ等を用いることができ、実施例1ではエンコーダからの信号に基づいて回転位置や回転速度等を細かく制御できるサーボモータを用いている。このモータ13は、制御部の制御下で操作部への操作等に合わせて適宜回転駆動される。
【0019】
伝達プーリ20には、複数(実施例1では4本)の主索タイミングベルト14が掛けられている。実施例1の各主索タイミングベルト14は、ベルト歯付きのベルトとされており、伝達プーリ20は、プーリ歯付きのプーリとされている。各主索タイミングベルト14は、プーリ歯にベルト歯が噛み合わされた状態で対応する伝達プーリ20にかけられることにより、モータ13の回転駆動力が伝達される。その各主索タイミングベルト14は、一端側が搬送空間17内で互いに異なる位置を通されて、搬送台15に接続されている。また、各主索タイミングベルト14は、他端側が搬送空間17内の端を通されて、カウンターウエイト16に接続されている。このため、モータ13は、伝達プーリ20等を介して各主索タイミングベルト14に回転駆動力を伝達することにより、物品を搬送する搬送台15を搬送空間17内で上下方向に移動させることができるとともに、その搬送空間17内の任意の位置で停止させることができる。
【0020】
搬送台15は、水平な状態で搬送物2を載せることができるもので、搬送空間17内で上下方向に移動可能とされている。実施例1の搬送台15は、搬送空間17内に収まる箱状の搬送筐体21が設けられ、その中に搬送物2を収容可能とされている。搬送台15は、最上部に各主索タイミングベルト14が接続されており、本体フレーム12に設けられた一対のガイドレール18に案内された状態で搬送空間17内に吊るされている。これにより、搬送台15は、姿勢を安定させたままで、搬送空間17内を上下方向に移動することができる。
【0021】
搬送筐体21は、搬送台15上において、閉ざされた空間を形成するもので、開閉可能とされた2つの開閉扉22が設けられている。両開閉扉22は、開けられることで搬送筐体21内とその外側との間で搬送物2の移動を可能とし、閉められることで搬送筐体21を閉ざされた空間とする。
【0022】
この搬送筐体21には、FFU(ファンフィルターユニット)23が設けられている。FFU23は、搬送筐体21の周辺すなわち搬送空間17内の空気を吸入し、各種のフィルタを通してから搬送筐体21内に送り出す。FFU23では、送り出す空気がクリーンルームに求められる基準を満たすものとされている。このため、搬送筐体21は、例え箱体本体部31に囲まれた上下搬送機10の搬送空間17内の空気がクリーンルームに求められる基準を満たしていない場合であっても、搬送物2に塵埃等が付着することを避けることができる。
【0023】
この搬送筐体21の内方には、機内搬送機24が設けられている。この機内搬送機24は、搬送物2を載せることができるとともに、後述する上側移載機3や下側移載機4と協働して搬送物2の搬送筐体21への受け入れや搬送筐体21からの運び出しを可能とする。実施例1の機内搬送機24は、移送方向に延びつつそれに直交する方向で対向する一対のフレーム部材24aと、その両フレーム部材24aに回転可能に設けられた複数のコロ部24bと、を有する。そのコロ部24bは、両フレーム部材24aにおいて、移送方向に並列されて設けられ、搬送物2を載せる箇所を構成する(
図2参照)。なお、機内搬送機24は、搬送物2を載せるとともに、その受け入れや運び出しを可能とするものであれば、複数のローラを移送方向に並べて設けたローラコンベヤや、環状のベルトを移送方向に回転可能に設けたベルトコンベヤを用いてもよく、他の構成のものを用いてもよい。
【0024】
上側移載機3および下側移載機4は、それぞれが対応する下側搬送口34Dまたは上側搬送口34Uに搬入する搬送物2またはそこから搬出される搬送物2を移送する。上側移載機3および下側移載機4は、機内搬送機24と同様に、移送方向に延びつつそれに直交する方向で対向する一対のフレーム部材3a、4aと、その両フレーム部材3a、4aに回転可能に設けられた複数のコロ部3b、4bと、を有する。上側移載機3および下側移載機4は、制御部の制御下で、移送のための駆動およびその停止が可能とされており、載せられた搬送物2の移送およびその停止が可能とされている。なお、上側移載機3および下側移載機4は、搬送物2を移送するものであれば、複数のローラを移送方向に並べて設けたローラコンベヤや、環状のベルトを移送方向に回転可能に設けたベルトコンベヤを用いてもよく、他の構成のものを用いてもよい。
【0025】
この上下搬送システム1は、上側移載機3または下側移載機4の一方に載せられて搬送物2が対応する搬送位置11まで移送され、上下搬送機10で上下方向に他方の搬送位置11まで搬送し、上側移載機3または下側移載機4の他方が対応する搬送位置11から搬出される搬送物2を移送する。ここで、上側移載機3または下側移載機4と、上下搬送機10の搬送台15の搬送筐体21の機内搬送機24と、の間での搬送物2の移送は、各移載機3、4や機内搬送機24による移動で行なってもよく、ロボットアーム等を用いてもよい。上下搬送機10は、モータ13の回転方向により設定された搬送方向へと搬送台15を移動させることで、搬送物2を上下方向に搬送する。このことから、実施例1のモータ13は、主索タイミングベルト14、モータ13、伝達プーリ20等と協働して、本体フレーム12に沿って搬送台15を移動させる駆動機構として機能する。
【0026】
なお、実施例1の駆動機構は、モータ13とプーリ歯付きの伝達プーリ20とベルト歯付きの主索タイミングベルト14とを用いているが、搬送空間17内で搬送台15を上下方向に移動(昇降)させるものであればよく、他の構成を用いてもよい。また、実施例1では、ベルト歯付きの主索タイミングベルト14を用いているが、モータ13の回転駆動力を上下方向への移動力として伝えるものであれば、ワイヤロープやチェーンや他の構成のものを用いてもよい。
【0027】
この上下搬送システム1では、上下搬送機10と上側移載機3または下側移載機4との間で搬送物2を移動させる際、箱体本体部31において対応する搬送口34に設けられた搬送扉35を開け、搬送物2の移動が終了するとその搬送扉35を再び閉じる。これにより、上下搬送システム1では、上下搬送機10で塵埃等を発生した場合であっても、その塵埃等が箱体本体部31から排出される虞を大幅に低減できる。特に、実施例1の上下搬送システム1では、箱体本体部31の各搬送口34の近傍を覆うように上側箱体水平部32、下側箱体水平部33を設けていることから、塵埃等が箱体本体部31から排出される虞を最小限とすることができる。
【0028】
また、実施例1の上下搬送システム1では、搬送台15に搬送筐体21を設けており、搬送扉35が開けられると対応する開閉扉22が開けられて、上側移載機3または下側移載機4と搬送筐体21(搬送台15)との間での搬送物2の移動を可能とする。そして、上下搬送システム1では、搬送筐体21に収容された状態で搬送物2が搬送台15に載せられて上下搬送機10により上下方向に移動される。その搬送筐体21には、FFU23が設けられている。これらのことから、上下搬送システム1では、搬送物2がクリーンルームの基準を満たす搬送筐体21内に収容されて上下方向に搬送されることとなり、上下搬送機10で塵埃等を発生した場合であっても、その塵埃等の搬送物2への付着を防止できる。
【0029】
加えて、実施例1の上下搬送システム1では、駆動機構として、モータ13とプーリ歯付きの伝達プーリ20とベルト歯付きの主索タイミングベルト14とを用いているため、ワイヤロープやチェーンとは異なり潤滑油を使用しなくてよいので、潤滑油による汚染を防止できる。また、実施例1の上下搬送システム1では、上記の駆動機構としているので、ワイヤロープやチェーンを用いる場合と比較して、静かな動作音とすることができる。
【0030】
次に、上下搬送機10における搬送台15(搬送筐体21)の移動を停止させる構成について説明する。上下搬送機10では、上記のように、搬送台15が、本体フレーム12の内方(搬送空間17)で一対のガイドレール18に沿って上下方向に移動可能とされている。この上下搬送機10では、
図2に示すように、本体フレーム12の内方(搬送空間17)において、任意の位置で適切に停止するために、ブレーキ機構40が設けられている。実施例1のブレーキ機構40は、搬送台15(搬送筐体21)の上部に設けられている。このブレーキ機構40は、一対のガイドレール18に個別に対応して対を為して設けられたディスクブレーキ41と、その各ディスクブレーキ41に制動力の制御のための流体を送る流体通路42と、を有する。
【0031】
各ディスクブレーキ41は、対応するガイドレール18を挟み込むように対を為すブレーキパッド部43と、その一対のブレーキパッド部43を接近させてガイドレール18を挟み込ませたり間隔を広げたりするように駆動する駆動部44と、有する。その駆動部44は、流体通路42から高い圧力の流体が導入されると、その圧力に応じた力で両ブレーキパッド部43を接近させてガイドレール18を挟み込ませる。また、駆動部44は、流体通路42を経て圧力が開放されると、両ブレーキパッド部43を離れさせてガイドレール18の挟み込みを解除する。その流体通路42は、各駆動部44と、高い圧力の流体を生成(加圧)する圧力供給源45と、を結ぶ可撓性を有する管であり、圧力供給源45からの流体を各駆動部44に導入したり、その各駆動部44から流体を逃がして圧力を開放したりする。
【0032】
実施例1の流体通路42は、圧力供給源45に接続された導入路46と、各ディスクブレーキ41の駆動部44に接続される給排路47と、給排路47と導入路46との間に設けられた電磁弁48と、を有する。導入路46は、圧力供給源45で高い圧力とされた流体を導き入れる。給排路47は、圧力供給源45からの高い圧力の流体を両駆動部44に供給するとともに、その両駆動部44からの流体を電磁弁48へと逃がす。実施例1の給排路47は、分岐箇所47aで2つの給排分岐路47bに分岐されており、それぞれの給排分岐路47bが対応する駆動部44に向けて延びるものとされている。
【0033】
電磁弁48は、
図3に示すように、導入口51と給排口52と排出口53と切替動作部54とを有する。導入口51は、導入路46が接続される箇所であり、圧力供給源45からの流体を電磁弁48内へと導くことができる。給排口52は、給排路47が接続される箇所であり、電磁弁48内に導かれた流体を他の箇所へと供給できるとともに、他の箇所からの流体を電磁弁48内へと導くことができる。排出口53は、電磁弁48内に導かれた流体を周辺に排出することができる。切替動作部54は、制御に応じて電磁弁48内での通路を切り替える。詳細には、切替動作部54は、
図4に示すように、導入口51と給排口52とが通じた状態(矢印A1参照)と、給排口52と排出口53とが通じた状態(矢印A2参照)と、を切り替えることができる。
【0034】
このブレーキ機構40は、電磁弁48において、切替動作部54が導入口51と給排口52とを通じた状態(
図4の矢印A1参照)とされることで、圧力供給源45からの高い圧力の流体が各駆動部44に供給される。これにより、ブレーキ機構40は、各駆動部44が一対のディスクブレーキ41を接近させて対応するガイドレール18を挟み込み、搬送台15(搬送筐体21)の移動を停止させることができる。また、ブレーキ機構40は、電磁弁48において、切替動作部54が給排口52と排出口53とを通じた状態(
図4の矢印A2参照)とされることで、各駆動部44が排出口53を経て外部に通じることとなり、供給された高い圧力の流体を周辺に排出できる。これにより、ブレーキ機構40は、各駆動部44の圧力を解放でき、一対のディスクブレーキ41を対応するガイドレール18から離れさせることができ、搬送台15(搬送筐体21)の制動力を解除できる。ブレーキ機構40は、利用する流体の圧力を高めることにより制動力を高めることができ、搬送台15(搬送筐体21)の適切な位置での停止をより確実なものにできる。このため、電磁弁48は、給排路47に対して導入路46への接続と排出口53への接続とを切り替える切替部として機能する。
【0035】
このブレーキ機構40では、流体通路42が以下のように設けられている。先ず、圧力供給源45は、
図2に示すように、上下搬送機10やその周辺において、固定されて設置されている。このため、流体通路42の導入路46は、固定された圧力供給源45と、上下搬送機10の本体フレーム12の内方(搬送空間17)で移動される搬送台15と、を繋ぐものとされている。その導入路46は、本体フレーム12に沿って配置された後に、本体フレーム12の内方(搬送空間17)で搬送台15へと延びるものとされて、ブレーキ機構40が設けられた搬送台15の上部に向けて延びている。そして、導入路46では、
図5に示すように、搬送台15の上部において、電磁弁48側へと直接延びるのではなく、分岐箇所46aで2つの導入分岐路46bに分岐させて、その各導入分岐路46bを対応する駆動部44へ向けて個別に延びている。その各導入分岐路46bは、同じく駆動部44へと延びる給排路47の給排分岐路47bに接触した状態で並列されている。実施例1の各導入分岐路46bは、
図6に示すように、並列する給排分岐路47bとともに熱伝導性テープの一例としてのアルミテープ49が巻き付けられることより、互いに密接した状態とされている。この各導入分岐路46bは、対応する駆動部44の近傍を通した後に、電磁弁48の導入口51の近傍へと延ばされて合流箇所46cで合流されてから、導入口51に接続されている。なお、
図6では、導入分岐路46bと給排分岐路47bとの一部をアルミテープ49で巻き付けた様子を示しているが、各給排分岐路47bの略全域に亘って各導入分岐路46bとともに巻き付けるようにアルミテープ49を設けることができる。また、実施例1では、アルミテープ49で巻き付けているが、熱伝導性を有するテープであって導入分岐路46bと給排分岐路47bとを巻き付けることができるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0036】
ブレーキ機構40は、上記のような構成とされていることから、給排路47や電磁弁48(特にその排出口53)に結露(水滴の付着)や着氷(外表面の凍結)が生じることを防止できる。これは、以下のことによる。先ず、ブレーキ機構40は、上記のように、制動力を解除する際には、切替動作部54の切り替えによって、駆動部44から給排路47を経て電磁弁48の排出口53へと通じた状態とされることで、供給された高い圧力の流体を周辺に排出する。すると、ブレーキ機構40は、駆動部44から給排路47を経て電磁弁48の排出口53に至る経路の圧力が急激に減少するので、その経路の周辺の空気を急激に冷却させる。このため、ブレーキ機構40は、上記の経路において、空気中に露出する箇所となる給排路47や排出口53に結露や着氷が生じる虞がある。
【0037】
これに対して、ブレーキ機構40は、給排路47における両給排分岐路47bに、導入路46の各導入分岐路46bを接触させている。ここで、導入路46は、上記のように圧力供給源45から高い圧力の流体を電磁弁48へと導入することから、高い温度とされている。このため、ブレーキ機構40は、両給排分岐路47bに導入路46の各導入分岐路46bを接触させることにより、両給排分岐路47bを温めることができる。これにより、ブレーキ機構40は、制動力を解除する際に、駆動部44から給排路47を経て電磁弁48の排出口53に至る経路から高い圧力の流体を周辺に排出しても、その経路が過度に冷却されることを防止でき、結露や着氷の発生を防ぐことができる。これにより、上下搬送システム1は、結露や着氷に起因する水滴等がクリーンルーム内に浮遊することを防止でき、クリーンルームを汚染することを防止できる。
【0038】
特に、実施例1のブレーキ機構40は、各導入分岐路46bと各給排分岐路47bとをアルミテープ49で巻き付けて密着させているので、各導入分岐路46bの熱を各給排分岐路47bへと効率よく伝えることができ、より効果的に結露や着氷の発生を防ぐことができる。このため、導入路46(各導入分岐路46b)は、給排路47(両給排分岐路47b)を温める加温部として機能する。ここで、温める観点からは、各給排分岐路47bを断熱材で覆うことも考えられるが、断熱材は塵埃を発生させるものが多いことから、本開示のようにアルミテープ49を用いることで、クリーンルームの汚染の可能性を低減できる。
【0039】
本開示に係る上下搬送機の一実施例の上下搬送機10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0040】
上下搬送機10は、上下方向に延びる本体フレーム12と、それに沿って搬送台15を移動させる駆動機構としてのモータ13と、本体フレーム12に対する搬送台15の移動を制止させるディスクブレーキ41と、を備える。また、上下搬送機10は、制動力の制御のための流体をディスクブレーキ41に送る流体通路42と、その流体通路42を温める加温部(実施例1では導入路46の各導入分岐路46b)と、を備える。このため、上下搬送機10は、ディスクブレーキ41の制動力を解除する際に流体通路42から高い圧力の流体を周辺に排出しても、流体通路42が過度に冷却されることを防止でき、結露や着氷の発生を防ぐことができる。
【0041】
また、上下搬送機10は、流体通路42が、ディスクブレーキ41に接続される給排路47と、流体を加圧する圧力供給源45に接続される導入路46と、給排路47に対して導入路46への接続と流体を排出する排出口53への接続とを切り替える切替部(電磁弁48)と、を有する。そして、上下搬送機10は、導入路46を加温部としている。このため、上下搬送機10は、流体通路42を温めるためだけに別途加温部を設ける必要がなく、簡易な構成にできるとともに製造コストを抑制できる。
【0042】
さらに、上下搬送機10は、導入路46が、少なくとも一部が給排路47と接した状態で並列されて加温部とされる。この上下搬送機10は、導入路46が、圧力供給源45から高い圧力の流体を切替部まで送るものであるので、切替部での切り替え状態に拘わらず、常に高い圧力の流体が通っており高い温度とされている。また、上下搬送機10は、制動力を解除する際に、ディスクブレーキ41から給排路47を経て電磁弁48の排出口53に至る経路から高い圧力の流体を周辺に排出するので、その経路の圧力が減少して周辺の空気を冷却させる。このため、上下搬送機10は、温度変化する給排路47を、常に高い温度の導入路46で温めることができ、結露や着氷の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0043】
上下搬送機10は、給排路47と導入路46との並列された箇所を熱伝導性テープとしてのアルミテープ49の巻き付けにより固定している。このため、上下搬送機10は、導入路46の熱を給排路47へと効率よく伝えることができ、より効果的に結露や着氷の発生を防ぐことができる。
【0044】
上下搬送機10は、本体フレーム12を、駆動機構としてのモータ13および搬送台15とともに箱体30で覆って設け、箱体30には、搬送台15への搬送物2の積み降ろしを行う搬送口34を少なくとも2つ設けている。そして、上下搬送機10は、搬送口34に、箱体30の内部と外部とを遮断しつつ搬送口34を開閉する搬送扉35を設けている。このため、上下搬送機10は、塵埃等を発生させた場合であっても、その塵埃等が箱体本体部31から排出される虞を大幅に低減できる。
【0045】
上下搬送機10は、搬送台15に搬送物2を収容可能であってファンフィルターユニット23を取り付けた搬送筐体21を設けている。このため、上下搬送機10は、塵埃等を発生させた場合であっても、その塵埃等の搬送物2への付着を防止でき、搬送物2をクリーンルームの基準を満たす搬送筐体21内に収容させて上下方向に搬送することができる。
【0046】
したがって、本開示に係る上下搬送機としての実施例1の上下搬送機10は、ディスクブレーキ41の周辺に結露や着氷を生じさせることを防止できる。
【0047】
以上、本開示の上下搬送機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0048】
例えば、実施例1では、導入路46の各導入分岐路46bを加温部としている。しかしながら、加温部は、流体通路42、好適には給排路47(両給排分岐路47b)を温めるものであれば、他の熱源を用いてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0049】
また、実施例1では、上下搬送機10を箱体30の箱体本体部31に収容する構成としていたが、設置される環境や求められる仕様に応じて箱体30(箱体本体部31)を適宜設ければよく、実施例1の構成に限定されない。すなわち、上下搬送機10(上下搬送システム1)は、設置されたクリーンルームに求められる基準に応じて、箱体30(箱体本体部31)の構造を適宜設定、例えば、搬送口の位置や搬送扉の有無や構造等を適宜設定したりすることができる。加えて、上下搬送機10(上下搬送システム1)は、クリーンルーム以外の場所でも設置することができ、その場合には箱体30(箱体本体部31)に内部と外部とを遮断しつつ搬送口を開閉する搬送扉を設けないものとすることができる。この場合であっても、上下搬送機10(上下搬送システム1)1は、結露や着氷に起因する水滴等が周辺に浮遊することを防止でき、周辺を汚染することを防止できる。
【0050】
さらに、実施例1では、搬送台15の搬送筐体21にFFU23を設けている。しかしながら、上下搬送機10では、設置される環境や求められる仕様に応じてFFUを設ける、例えば、FFUを箱体本体部31に設けるものとしてもよく、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。加えて、上下搬送機10では、搬送台15に搬送筐体21や機内搬送機24を設けていたが、搬送台15が搬送物2の積み降ろしを可能とするとともにその搬送物2を載せた状態で上下方向に移動可能とされていれば、搬送筐体21や機内搬送機24は適宜設けても設けなくてもよく、他の構成としてもよい。
10 上下搬送機 2 搬送物 12 本体フレーム 13 (一例としての駆動機構を構成する)モータ 15 搬送台 21 搬送筐体 23 ファンフィルターユニット 30 箱体 34 搬送口 35 搬送扉 41 ディスクブレーキ 42 流体通路 45 圧力供給源 46 導入路 46b (加温部の一例としての)導入分岐路 47 給排路 53 排出口 48 (切替部の一例としての)電磁弁 49 (熱伝導性テープの一例としての)アルミテープ