(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171589
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】リレー
(51)【国際特許分類】
H01H 50/16 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01H50/16 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088675
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 暁
(57)【要約】
【課題】リレーの振動を抑制し得る技術を提供すること。
【解決手段】本明細書が開示するリレーは、固定接点と、固定接点に対して進退可能に構成された可動接触子と、可動接触子の進退方向において、可動接触子を介して対向配置された第1ヨーク及び第2ヨークと、第1ヨークと第2ヨークとの間に設けられる樹脂層と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
前記固定接点に対して進退可能に構成された可動接触子と、
前記可動接触子の進退方向において、前記可動接触子を介して対向配置された第1ヨーク及び第2ヨークと、
前記第1ヨークと前記第2ヨークとの間に設けられる樹脂層と、
を備えるリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電流経路を遮断するリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、電流経路を遮断するリレーが開示されている。これらのリレーは、2つの固定接点と、2つの可動接点を有する可動接触子と、可動接触子を挟むように設けられた一対のヨークと、を備える。一対のヨークは、当該ヨークの長手方向の一端及び他端において対向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2019/181469号
【特許文献2】特開2012-199112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リレーは、様々な磁性部材(例えば、リレー開閉用のコイル、消弧用の磁石等)を備える。このような磁性部材の影響で、ヨークの一端側と他端側とに作用する磁力が異なる場合がある。このような状況でリレーがオンして可動接触子に電流が流れると、一対のヨークの間において、ヨークの一端側と他端側とで大きさの異なる電磁力が生じ得る。このような大きさの異なる電磁力が生じると、ヨークに曲げモーメントが生じる。この曲げモーメントによって、リレーに振動等が生じる。
【0005】
本明細書では、リレーの振動を抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するリレーは、固定接点と、前記固定接点に対して進退可能に構成された可動接触子と、前記可動接触子の進退方向において、前記可動接触子を介して対向配置された第1ヨーク及び第2ヨークと、前記第1ヨークと前記第2ヨークとの間に設けられる樹脂層と、を備える。
【0007】
上記のような曲げモーメントは、ヨークの一端側と他端側との電磁力の差分に起因して生じる。具体的には、このような電磁力の差分はヨークの一端側と他端側とのいずれか一方において生じる。第1ヨークと第2ヨークとの少なくとも一方は、上記の電磁力の差分によって、第1ヨークと第2ヨークとが接触する方向に移動する。この結果、第1ヨークと第2ヨークとが接触しながら上記の電磁力の差分がヨークに働き、ヨークに曲げモーメントが生じる。
【0008】
上記の構成によると、第1ヨークと第2ヨークとの間には樹脂層が設けられる。従って、電磁力の差分によって第1ヨークと第2ヨークとが接触する方向に移動すると、第1ヨークと第2ヨークとは樹脂層に接触する。第1ヨーク及び第2ヨークが樹脂層に接触した状態で上記の電磁力の差分がヨークに働くと、ヨークは、固体である樹脂層から、当該電磁力の差分に対する反力を受ける。すると、ヨークに働く電磁力の差分と、樹脂層から受ける反力と、が互いに打ち消しあうことで、ヨークに曲げモーメントが生じにくくなる。従って、リレーの振動を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3(a)は、実施例の一対のヨークと可動接触子の拡大図を示し、
図3(b)は、比較例の一対のヨークと可動接触子の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書は、リレー10を開示する。リレー10は、例えば、バッテリと、駆動用のモータと、バッテリの出力電力をモータの駆動電力に変換する電力変換装置と、を有する電動車両に搭載される。リレー10は、バッテリと電力変換装置との間に設けられる。電動車両のスイッチがオンされると、リレー10が閉じて、バッテリ、電力変換装置、及びモータが互いに電気的に導通する。電動車両のスイッチがオフされると、リレー10が開き、バッテリ、電力変換装置、及びモータが互いに電気的に分離される。
【0011】
図1に示されるように、リレー10は、接点装置100と電磁石装置200とを備える。即ち、リレー10は、いわゆる電磁リレーである。
【0012】
接点装置100は、固定端子110と、可動接触子120と、上ヨーク130と、下ヨーク140と、ばね150と、を備える。固定端子110は、その先端部に固定接点112を有する。固定接点112と、可動接触子120と、上ヨーク130と、下ヨーク140とは、ケース102内に収容されている。
【0013】
可動接触子120は、固定端子110に対して、
図1のZ軸負の方向に配置されている。可動接触子120は、固定接点112に対して進退可能に構成されている。即ち、可動接触子120は、Z軸方向(即ち上下方向)に移動可能に構成されている。可動接触子120の上面には、固定接点112に対向する位置に可動接点(図示省略)が設けられている。可動接触子120が上方向に移動して、固定接点112と可動接点とが接触することによって、リレー10が閉じる(即ち導通する)。
【0014】
可動接触子120の進退方向(即ち上下方向)には、上ヨーク130及び下ヨーク140が設けられている。具体的には、上ヨーク130は、可動接触子120の上面(即ち可動接点が設けられた面)に対向している。下ヨーク140は、可動接触子120の下面(即ち可動接点が設けられた面と反対側の面)に対向している。即ち、上ヨーク130及び下ヨーク140は、可動接触子120を介して対向配置されている。下ヨーク140の下面には、ばね150が接続されている。
【0015】
また、
図2に示されるように、下ヨーク140は、可動接触子120の幅方向(即ちY軸方向)の一方側において、上ヨーク130に対向する第1端142と、可動接触子120の幅方向(即ちY軸方向)の他方側において上ヨーク130に対向する第2端144と、を有する。即ち、第1端142及び第2端144は、上ヨーク130に向かって突出している。
【0016】
また、ケース102には、Y軸方向の両端に永久磁石160が収容されている。永久磁石160は、可動接点と固定接点112との接触の際に発生するアークを消弧するために設けられる。
図2の矢印に示されるように、永久磁石160によって、
図2の右側から左側の方に向く磁界が形成される。
【0017】
図1に示されるように、電磁石装置200は、励磁用巻線204と、固定鉄心206と、可動鉄心208と、を備える。励磁用巻線204と、固定鉄心206と、可動鉄心208とは、ケース202に収容されている。
図1では、電磁石装置200の一部の構成の記載を省略しており、その詳細な説明を省略する。
【0018】
固定鉄心206と可動鉄心208とは、励磁用巻線204により生じる磁束を通す磁路を形成する。励磁用巻線204に電流が流れると、固定鉄心206と可動鉄心208とが互いに異極性になり、可動鉄心208が上方向に移動する。
【0019】
励磁用巻線204に電流が流れると、励磁用巻線204の周りには磁界が生じる。即ち、
図2に示されるように、励磁用巻線204に電流が流れると、
図2の下側から上側の方に向く磁界が形成される。
【0020】
可動鉄心208の上側端部は、ばね150を介して下ヨーク140に対向している。励磁用巻線204に電流が流れて可動鉄心208が上方向に移動すると、ばね150が上方向に加圧される。ばね150が上方向に加圧されると、下ヨーク140が上方向に移動する。下ヨーク140が上方向に移動すると、可動接触子120の可動接点が固定接点112と接触する(即ちリレー10が閉じる)。この結果、2個の固定端子110,110の間には、可動接触子120を通って電流が流れる。即ち、バッテリから電力変換装置に電力が供給される状態になる。
【0021】
また、リレー10が閉じて可動接触子120に電流が流れると、上ヨーク130及び下ヨーク140には磁束が通る。従って、上ヨーク130及び下ヨーク140が磁化されて、上ヨーク130及び下ヨーク140が互いに引き合う力が生じる。
【0022】
一方、可動接触子120に電流が流れると、当該電流と、ヨーク130,140の周囲の磁界と、によって、上ヨーク130と下ヨーク140との間に電磁力が生じる。ばね150による加圧力と、上ヨーク130及び下ヨーク140が互いに引き合う力と、の和が、上記の電磁力よりも大きいと、可動接触子120が固定接点112から離れない。従って、ヨーク130,140が設けられていない場合と比較すると、可動接触子120と固定接点112との接触を確実にすることができる。
【0023】
また、上記の通り、本実施例のリレー10は、電力変換装置を備える電動車両に搭載される。電動車両は、リレー10が閉じているときに走行する。電動車両が走行するときには、バッテリの出力電力が電力変換装置によって変換されて、モータに供給される。電力変換装置は、スイッチング素子の動作によって、バッテリの出力電力をモータの駆動電力に変換する。スイッチング素子の動作によって、その周波数によって変動するリプル電流がリレー10(即ち可動接触子120)に流れる。この変動するリプル電流と、ヨーク130,140の周囲の磁界と、によって、上ヨーク130と下ヨーク140との間に、変動する電磁力が生じる。この電磁力は、可動接触子120を流れる電流の大きさ、及び、上ヨーク130と下ヨーク140との間の磁界の大きさに依存する。
【0024】
本実施例の構成では、永久磁石160によって形成される磁界と、励磁用巻線204に流れる電流によって生じる磁界と、の影響で、Y軸方向の一方側(即ち下ヨーク140の第1端142側)と他方側(即ち下ヨーク140の第2端144側)との磁界の大きさが異なる。従って、Y軸方向の一方側と他方側とで磁界の大きさが異なるので、例えば可動接触子120にリプル電流が流れると、Y軸方向の一方側に生じる電磁力と、Y軸方向の他方側に生じる電磁力と、が異なる。
図2の例では、右側(即ち下ヨーク140の第2端144側)の磁界の大きさは、左側(即ち下ヨーク140の第1端142側)の磁界の大きさよりも大きい。このように、左右で大きさの異なる電磁力が生じると、当該電磁力の大きさの差によってヨーク130、140に曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントに起因して、リレー10には振動が生じる。
【0025】
そこで、本実施例のリレー10では、
図3(a)に示されるように、上ヨーク130と下ヨーク140との間には樹脂層170が設けられている。
【0026】
ここで、
図3(b)に示されるように、上ヨーク130と下ヨーク140との間に樹脂層170が設けられない比較例を想定する。この比較例では、第1端142側と第2端144側のそれぞれに生じる電磁力の差分によって、上ヨーク130と下ヨーク140とが接触する方向に移動する。この結果、上ヨーク130と下ヨーク140とが接触しながら電磁力の差分がヨーク130,140に働く。この結果、ヨーク130,140に曲げモーメントが生じて、リレー10に振動が生じ得る。
【0027】
一方、上ヨーク130と下ヨーク140との間に樹脂層170が設けられる本実施例の構成によると、第1端142側と第2端144側のそれぞれに生じる電磁力の差分によって、上ヨーク130と下ヨーク140とが接触する方向に移動する。このとき、上ヨーク130と下ヨーク140とは樹脂層170に接触する。上ヨーク130及び下ヨーク140が樹脂層170に接触した状態で電磁力の差分がヨーク130,140に働くと、ヨーク130,140は、固体であり、かつ、空気よりも弾性率の高い樹脂層170から、電磁力の差分に対する反力を受ける。ヨーク130,140に働く電磁力の差分と、樹脂層170から受ける反力と、が互いに打ち消しあうことで、ヨーク130,140に曲げモーメントが生じにくくなる。従って、リレー10の振動を抑制し得る。
【0028】
なお、樹脂の透磁率は、空気の透磁率と同じである。従って、上ヨーク130と下ヨーク140との間に樹脂層170が設けられている場合と、樹脂層170が設けられていない場合と、では、上ヨーク130と下ヨーク140との間の引き合う力の大きさは変わらない。従って、上ヨーク130と下ヨーク140との間の引き合う強さを弱めることなく、リレー10の振動を抑制することができる。
【0029】
実施例の下ヨーク140、上ヨーク130が、それぞれ、本技術の「第1ヨーク」、「第2ヨーク」の一例に相当する。
【符号の説明】
【0030】
10:リレー、100:接点装置、102:ケース、110:固定端子、112:固定接点、120:可動接触子、130:第1ヨーク、140:第2ヨーク、150:ばね、160:永久磁石、170:樹脂層、200:電磁石装置、202:ケース、204:励磁用巻線、206:固定鉄心、208:可動鉄心