(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171600
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】スラブの搬送装置及び、スラブの搬送方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20241205BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B66C13/22 M
B66C13/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088690
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 拓実
(72)【発明者】
【氏名】船津 恵介
(72)【発明者】
【氏名】山越 正悟
(72)【発明者】
【氏名】式守 崇
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA05
3F204CA03
3F204DA05
3F204DB08
3F204EA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】搬送対象となるスラブの積層態様や、スラブの形状に応じた位置で、スラブを把持して搬送することが可能なスラブの搬送装置を提供する。
【解決手段】スラブの搬送装置は、スラブを把持する爪部が一の方向において複数配列されたリフターと、リフターを搬送方向に移動させる移動部と、爪部の配列方向に沿って設けられ、リフター及び移動部を接続する複数の接続手段とを有する。スラブの搬送装置は、爪部の配列方向における複数の位置の荷重情報を取得する荷重取得部と、搬送方向におけるリフターの位置情報を取得する位置情報取得部と、搬送対象となるスラブの総重量等の仕様情報を取得する搬送情報取得部と、荷重情報、位置情報及び仕様情報に基づいてスラブの重心位置及び、リフターの前記一の方向における中心位置の位置関係を示す位置関係情報を生成する位置関係情報生成部と、位置関係情報に基づいて移動部を移動させる移動制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブを把持する爪部が一の方向において複数配列されたリフターと、前記リフターを搬送方向に移動させる移動部と、前記爪部の配列方向に沿って設けられかつ、前記リフター及び、前記移動部を接続する複数の接続手段と、を有するスラブの搬送装置であって、
前記爪部の配列方向において互いに異なる複数の位置の荷重情報を取得する荷重取得部と、
前記搬送方向における前記リフターの位置情報を取得する位置情報取得部と、
搬送対象となる前記スラブの総重量、前記爪部間の距離、前記接続手段間の距離及び、前記リフターの重さを含む仕様情報を取得する搬送情報取得部と、
前記荷重情報、前記位置情報及び、前記仕様情報に基づいて、前記スラブの重心位置及び、前記リフターの前記一の方向における中心位置の位置関係を示す位置関係情報を生成する位置関係情報生成部と、
前記位置関係情報に基づいて、前記移動部を移動させる移動制御部と、
を有する、スラブの搬送装置。
【請求項2】
前記スラブの形状情報を取得するスラブ形状取得部と、
前記形状情報に基づいて、前記スラブの重心位置を推定した推定位置情報を生成する推定位置情報生成部と、を有し、
前記推定位置情報生成部は、前記スラブの上面及び、底面のうちの少なくとも一方の面の形状である平面形状に基づいて、前記推定位置情報を生成し、
前記移動制御部は、前記推定位置情報の前記スラブの前記重心位置に前記移動部を移動させる、請求項1に記載のスラブの搬送装置。
【請求項3】
前記スラブ形状取得部は、前記スラブの側面形状を取得し、
前記側面形状に基づいて、前記移動部の移動の可否に関する判定情報を生成する判定情報生成部を有し、
前記移動制御部は、前記判定情報に応じて前記移動部を移動させる請求項2に記載のスラブの搬送装置。
【請求項4】
前記スラブ形状取得部は、前記スラブの側面の形状である側面形状を取得し、
前記推定位置情報生成部は、前記平面形状及び、前記側面形状に基づいて、前記推定位置情報を生成する、請求項2又は3に記載のスラブの搬送装置。
【請求項5】
前記スラブは上面視が矩形状に形成され、
前記推定位置情報生成部は、長手方向及び、短手方向における前記スラブの重心位置を推定して推定位置情報を生成する、請求項2又は3に記載のスラブの搬送装置。
【請求項6】
前記スラブは上面視が矩形状に形成され、
前記推定位置情報生成部は、前後方向における前記スラブの重心位置及び、幅方向における前記スラブの重心位置を推定して推定位置情報を生成する、請求項4に記載のスラブの搬送装置。
【請求項7】
スラブを把持する爪部が一の方向において複数配列されたリフターと、前記リフターを搬送方向に移動させる移動部と、前記リフター及び、前記移動部を接続する一対の接続手段と、を有するスラブの搬送装置を用いたスラブの搬送方法であって、
前記爪部の配列方向において互いに異なる複数の位置の荷重情報を取得する荷重取得工程と、
前記搬送方向における前記リフターの位置情報を取得する位置情報取得工程と、
搬送対象となる前記スラブの総重量、前記爪部間の距離、前記接続手段間の距離及び、前記リフターの重さを含む仕様情報を取得する搬送情報取得工程と、
前記荷重情報、前記位置情報及び、前記仕様情報に基づいて、前記スラブの重心位置及び、前記リフターの前記一の方向における中心位置の位置関係を示す位置関係情報を生成する位置関係情報生成工程と、
前記位置関係情報に基づいて、前記移動部を移動させる移動制御工程と、
を有する、スラブの搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブを搬送方向に搬送する、スラブの搬送装置及び、スラブの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所には、スラブを保管するスラブヤードが設けられている。スラブヤードで保管されたスラブは、その後、熱間圧延等の処理が行われる。スラブは、複数積み重ねられ、山とも称される所定の単位毎に保管されている。
【0003】
山には、保管位置ごとに番地が紐づけられている。番地には、座標が登録されている。スラブの搬送には、天井クレーンが用いられている。天井クレーンには、例えば、スラブの山の番地及び、搬送先の番地が予め定めた目標座標間において、スラブを自動で搬送する自動クレーンが用いられている。
【0004】
このような天井クレーンとしては、距離センサを使用して何段にも段積みされた鋼片のうちの最上段の1枚を掴むことができるようにした鋼片搬送用天井クレーンが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラブリフタでスラブを挟持して持ち上げる際、クレーンの重心位置とスラブの重心位置とが一致しないと、次のような不都合が生じる。
【0007】
具体的には、クレーンの重心位置とスラブの重心位置とが、スラブの長手方向にずれている場合、スラブが持ち上げられた際に回転モーメントが生じ、ねじれ方向の振れが発生する。振れが発生した状態でスラブが搬送されると、スラブが設置されるべき姿勢よりも傾いて設置されるおそれがある。このような状態のスラブに対してスラブが重ねて設置されると、スラブの積載状態が不安定となる問題がある。
【0008】
また、クレーンの重心位置とスラブの重心位置とが、スラブの幅方向にずれている場合、スラブが持ち上げられた際にスラブの幅方向に振れが発生する。振れが発生した状態でスラブが搬送されると、スラブが設置されるべき姿勢から傾いて設置されるおそれがある。このような不安定な状態でスラブが設置されると、隣接する山のスラブや、周囲の設備と接触する恐れがある。
【0009】
このような問題を防ぐため、クレーンの重心位置とスラブの重心位置とを一致させることが重要である。ところで、スラブには、寸法から導き出されるスラブの重心と、スラブの重心と、が一致しない、複雑な形状を有するものがある。
【0010】
特許文献1に記載の鋼片搬送用天井クレーンでは、長手方向と幅方向とのそれぞれ2本の走査ライン上の鋼片の寸法が計測される。当該鋼片搬送用天井クレーンでは、例えば、上記のような複雑な形状のスラブについては、計測点が不足しているため、その重心位置を計測することは困難である。このため、特許文献1に記載の鋼片搬送用天井クレーンでは、スラブの重心位置とクレーンの重心位置とを合わせることができないため、上記の問題を解決すことができない問題がある。
【0011】
また、幅及び、長さのうち少なくとも一方が互いに異なるスラブが、スラブヤードに積み重ねられて保管される場合がある。このような場合、複数のスラブを搬送対象とすると、最上段のスラブの重心位置と、搬送対象の重心位置とが一致しない状態となる。特許文献1に記載の鋼片搬送用天井クレーンでは、最上段のスラブの形状を計測する。このため、複数枚のスラブで構成される搬送対象とは、重心位置が異なるため、上記のような問題が生じる恐れがある。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、搬送対象となるスラブの積層態様や、スラブの形状に応じた位置で、スラブを把持して搬送することが可能なスラブの搬送装置及び、スラブの搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0014】
[1]
スラブを把持する爪部が一の方向において複数配列されたリフターと、前記リフターを搬送方向に移動させる移動部と、前記爪部の配列方向に沿って設けられかつ、前記リフター及び、前記移動部を接続する複数の接続手段と、を有するスラブの搬送装置であって、
前記爪部の配列方向において互いに異なる複数の位置の荷重情報を取得する荷重取得部と、
前記搬送方向における前記リフターの位置情報を取得する位置情報取得部と、
搬送対象となる前記スラブの総重量、前記爪部間の距離、前記接続手段間の距離及び、前記リフターの重さを含む仕様情報を取得する搬送情報取得部と、
前記荷重情報、前記位置情報及び、前記仕様情報に基づいて、前記スラブの重心位置及び、前記リフターの前記一の方向における中心位置の位置関係を示す位置関係情報を生成する位置関係情報生成部と、
前記位置関係情報に基づいて、前記移動部を移動させる移動制御部と、
を有する、スラブの搬送装置。
[2]
前記スラブの形状情報を取得するスラブ形状取得部と、
前記形状情報に基づいて、前記スラブの重心位置を推定した推定位置情報を生成する推定位置情報生成部と、を有し、
前記推定位置情報生成部は、前記スラブの上面及び、底面のうちの少なくとも一方の面の形状である平面形状に基づいて、前記推定位置情報を生成し、
前記移動制御部は、前記推定位置情報の前記スラブの前記重心位置に前記移動部を移動させる、[1]に記載のスラブの搬送装置。
[3]
前記スラブ形状取得部は、前記スラブの側面形状を取得し、
前記側面形状に基づいて、前記移動部の移動の可否に関する判定情報を生成する判定情報生成部を有し、
前記移動制御部は、前記判定情報に応じて前記移動部を移動させる[2]に記載のスラブの搬送装置。
[4]
前記スラブ形状取得部は、前記スラブの側面の形状である側面形状を取得し、
前記推定位置情報生成部は、前記平面形状及び、前記側面形状に基づいて、前記推定位置情報を生成する、[2]又は[3]に記載のスラブの搬送装置。
[5]
前記スラブは上面視が矩形状に形成され、
前記推定位置情報生成部は、長手方向及び、短手方向における前記スラブの重心位置を推定して推定位置情報を生成する、[2]~[4]のいずれかに記載のスラブの搬送装置。
[6]
スラブを把持する爪部が一の方向において複数配列されたリフターと、前記リフターを搬送方向に移動させる移動部と、前記リフター及び、前記移動部を接続する一対の接続手段と、を有するスラブの搬送装置を用いたスラブの搬送方法であって、
前記爪部の配列方向において互いに異なる複数の位置の荷重情報を取得する荷重取得工程と、
前記搬送方向における前記リフターの位置情報を取得する位置情報取得工程と、
搬送対象となる前記スラブの総重量、前記爪部間の距離、前記接続手段間の距離及び、前記リフターの重さを含む仕様情報を取得する搬送情報取得工程と、
前記荷重情報、前記位置情報及び、前記仕様情報に基づいて、前記スラブの重心位置及び、前記リフターの前記一の方向における中心位置の位置関係を示す位置関係情報を生成する位置関係情報生成工程と、
前記位置関係情報に基づいて、前記移動部を移動させる移動制御工程と、
を有する、スラブの搬送方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスラブの搬送装置及び、スラブの搬送方法によれば、スラブの荷重情報、位置情報及び、仕様情報に基づいて、位置関係情報を生成する。また、位置関係情報に基づいて、移動部を移動させる。このため、クレーンの重心位置であるリフターの爪部の配列方向における中心位置と、スラブの重心位置である搬送対象の重心位置とを合わせることが可能となる。言い換えれば、クレーンのリフターの中心位置と、1又は複数のスラブで構成された搬送対象の重心位置と、を合わせることが可能となる。したがって、本発明のスラブの搬送装置及び、スラブの搬送方法は、搬送対象となるスラブの積層態様や、スラブの形状に応じた位置で、スラブを把持して搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】スラブの搬送装置の概要を示す説明図である。
【
図2】スラブの搬送装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】スラブの搬送方法の処理フローを示すフロー図である。
【
図4】
図3の位置関係情報生成工程において位置関係情報が生成される態様を示す説明図である。
【
図6】
図3の位置関係情報生成工程において位置関係情報が生成される他の態様を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態に係るスラブの搬送装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態に係るスラブの搬送方法の処理フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、スラブの搬送装置の概要を示している。
図1に示すように、スラブの搬送装置100は、スラブを把持して搬送するクレーンである。スラブの搬送装置100としては、例えば、建屋に沿って設けられたランウェイを走行するクレーンである、いわゆる、天井クレーンを用いることができる。以下、スラブの搬送装置100が天井クレーンとして用いられる例について説明する。
【0018】
スラブの搬送装置100は、スラブ10を把持する爪部21a、21bが一の方向において複数配列されたリフター20と、リフター20を搬送方向D1に移動させる移動部30と、を有する。スラブの搬送装置100は、爪部21a、21bの配列方向に沿って設けられかつ、リフター20及び、移動部30を接続する複数の接続手段40を有する。
図1においては、一の方向及び、爪部21a、21bの配列方向は、搬送方向D1と同一の方向として記載されている。
【0019】
スラブの搬送装置100の搬送対象となるスラブ10は、その形状は特には限定されない。スラブ10は、
図1に示す例においては、上面視及び、側面視が矩形の板状に形成されている。
【0020】
爪部21a、21bは、
図1に示される例においては、スラブ10の長手方向に沿った方向おいて互いに異なる位置に2つ設けられている。また、
図1に示される例においては、爪部21a、21bは、その間にリフター20の一の方向における中心が位置するように設けられている。各々の爪部21a、21bは、スラブ10の短手方向の一端側と他端側とを挟み込むことが可能な一対の挟持片を有する。尚、リフター20の中心は、例えば、爪部21a,21bの配列方向においては、爪部21a,21b間の中心でありかつ、爪部21a,21bの開閉方向においては、各々の挟持片の開閉動作の中心である。
【0021】
リフター20には、爪部21a、21bの開度を調整可能な調整機構(図示せず)が設けられている。例えば、調整機構は、爪部21a、21bの挟持片が開いた状態から閉じる閉動作をさせることにより、爪部21a、21bにスラブ10を把持させる。調整機構は、爪部21a、21bのそれぞれがスラブ10を把持した状態となると、閉動作を終了させる。例えば、スラブ10の幅方向の長さが爪部21a、21bの位置で互いに異なる場合、調整機構は、一方の爪部の把持が完了した際に当該爪部の閉動作を終了させる。同様に、調整機構は、他方の爪部の把持が完了した際に当該爪部の閉動作を終了させる。このようにすることで、スラブ10の把持される位置において幅方向に差がある場合であっても、スラブ10を爪部21a,21bに把持させることが可能となる。したがって、爪部21a、21bに多様な形状のスラブ10を把持させることが可能となる。
【0022】
移動部30は、特には限定されないが、例えば、クレーントロリを用いることができる。移動部30は、適宜、一対の走行レール(図示せず)及び、一対の走行レール上を走行する一対のクラブレール(図示せず)を設けてもよい。
図1においては、搬送方向D1は、一対のクラブレールの敷設方向を指している。尚、搬送方向D1は、一対の走行レールの敷設方向であってもよい。
【0023】
接続手段40は、
図1に示す例においては、爪部21a,21bの配列方向に沿って2つ設けられている。より具体的には、各々の接続手段40は、その間にリフター20の中心が位置するように設けられている。接続手段40は、複数であれば、任意に設けることができる。接続手段40は、特には限定されないが、ワイヤ、チェーン等のロープ状のものを用いることができる。本実施形態においては、接続手段40としてワイヤが用いられている。
【0024】
移動部30には、接続手段40を巻き上げ又は、開放することが可能なワイヤリール31a,31bが設けられている。ワイヤリール31a,31bには、モータ(図示せず)が接続されている。ワイヤリール31a,31bは、モータの稼働により、接続手段40を巻き上げ又は、開放することができる。
【0025】
ワイヤリール31a,31bは、
図1に示す例においては、スラブ10の長手方向において互いに異なる位置に2つ設けられている。尚、ワイヤリール31a,31b及び、接続手段40が設けられている数は、2以上であればよく、実施の態様に応じて適宜変更することができる。
【0026】
各々のワイヤリール31a,31bには、荷重を検出する荷重センサ32a,32bが内蔵されている。荷重センサ32a,32bとしては、特には限定されないが、例えば、ロードセルを用いることができる。
【0027】
スラブの搬送装置100は、リフター20と移動部30との間隔を測定する変位センサ41を有する。変位センサ41は、出射光を出射する出射部42と、当該出射光を受光する受光部43と、を有する。
【0028】
スラブの搬送装置100は、リフター20の位置情報を検出する位置センサ44を有する。位置センサ44としては、特には限定されないが、例えば、スラブヤードの座標系を検知することができるものであればよい。このような位置センサ44としては、例えば、誘導無線や、レーザ距離計等を用いることができる。
【0029】
スラブの搬送装置100は、装置全体を制御する制御部50を有する。制御部50は、CPU,ROM,RAMからなるコンピュータにより構成することができる。
【0030】
制御部50は、スラブ10の長手方向において互いに異なる位置の複数の荷重情報を取得する荷重取得部51と、搬送方向D1におけるリフター20の位置情報を取得する位置情報取得部52と、を有する。制御部50は、スラブ10の総重量、爪部21a、21b間の距離、接続手段40間の距離、リフターの重さを含む仕様情報を取得する搬送情報取得部53を有する。制御部50は、荷重情報、位置情報及び、仕様情報に基づいて、スラブの重心位置及び、リフター20の中心と、の位置関係を示す情報である位置関係情報を生成する位置関係情報生成部54を有する。制御部50は、位置関係情報に基づいて、移動部30を移動させる移動制御部55を有する。
【0031】
図2は、スラブの搬送装置の機能ブロックを示している。
図2に示すように、スラブの搬送装置100は、荷重センサ32a,32b、位置センサ44、入力部61、報知部62及び、制御部50を有する。荷重センサ32a,32b、位置センサ44、入力部61、報知部62及び、制御部50は、互いに通信可能にバス63を介して接続されている。
【0032】
各々の荷重センサ32a,32bは、荷重を検出すると、制御部50のROMに逐次格納する。また、位置センサ44は、位置情報を取得すると時系列データとして制御部50のROMに格納する。
【0033】
入力部61は、例えば、ユーザが入力することが可能なキーボードである。入力部61は、ユーザによって入力された情報を制御部50のROMに格納する。ユーザによって入力される情報としては、例えば、スラブ10の総重量、爪部21a、21b間の距離、接続手段40間の距離、リフターの重さを含む仕様情報が挙げられる。
【0034】
報知部62は、制御部50による処理の結果をユーザに報知する装置である。報知部による報知は、例えば、音声の出力や、画像データの表示等によって行うことができる。また、報知部による報知は、これらの態様を組み合わせて行うことができる。報知部62としては、例えば、ディスプレイを用いることができる。
【0035】
荷重取得部51は、荷重センサ32a,32bによって検出された荷重の各々をROMから読み出すことによって取得する。位置情報取得部52は、位置センサ44に取得されたリフター20の位置情報をROMから読み出すことによって取得する。
【0036】
搬送情報取得部53は、ユーザによって入力された仕様情報をROMから読み出すことによって取得する。位置関係情報生成部54は、荷重取得部51によって取得された荷重情報、位置情報取得部52によって取得された位置情報及び、搬送情報取得部53によって取得された仕様情報に基づいて、位置関係情報を生成し、ROMに格納する。
【0037】
移動制御部55は、ROMに格納された位置関係情報を読み出して、移動部30及びリフター20を所望の位置に移動させる。
【0038】
図3は、スラブの搬送方法を示す処理フローである。スラブの搬送方法を示す処理フローは、例えば、スラブの搬送装置100が起動されると実行される。
図3に示すように、スラブの搬送方法を示す処理フローが開始されると、荷重取得部51は、荷重センサ32a,32bによって検出された荷重の各々をROMから読み出すことによって取得し、荷重取得工程(ステップS101)を実行する。
【0039】
次いで、位置情報取得部52は、位置センサ44に取得されたリフター20の位置情報をROMから読み出すことによって取得し、位置情報取得工程(ステップS102)を実行する。
【0040】
次いで、搬送情報取得部53は、ユーザによって入力された仕様情報をROMから読み出すことによって取得し、搬送情報取得工程(ステップS103)を実行する。尚、ステップS101の荷重取得工程、ステップS102の位置情報取得工程及び、ステップS103の搬送情報取得工程は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0041】
次いで、位置関係情報生成部54は、ステップS101で取得された荷重情報、ステップS102で取得された位置情報及び、ステップS103で取得された仕様情報に基づいて、位置関係情報を生成し、位置関係情報生成工程(ステップS104)を実行する。位置関係情報生成部54は、ステップS104で生成した位置関係情報をROMに格納する。
【0042】
移動制御部55は、ステップS104で生成された位置関係情報に基づいて、移動部30及び、リフター20を移動させる、移動制御工程を実行する(ステップS105)。その結果、スラブ10が所定の位置に搬送される。制御部50は、例えば、スラブ10の搬送結果について報知部62のディスプレイに表示させる。
【0043】
図4は、ステップS104の位置関係情報生成工程において位置関係情報が生成される態様を示している。スラブ10の重心位置及び、リフター20の中心位置の位置関係は、例えば、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δy
fとして生成することができる。
【0044】
リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δyfは、両者の力とモーメントのつり合いにより算出することができる。以下、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δyfの算出方法について説明する。
【0045】
爪部21a,21bとスラブ10間の力は、(1)式で示される。また、爪部21a,21bとスラブ10のモーメントのつり合いは(2)式で示される。
【0046】
【0047】
ここで、mは、スラブの搬送装置100によって搬送されるスラブ10の総重量(ton)である。また、
図4にも示されるように、L1は、爪部21a、21b間の距離(mm)である。F1は、爪部21aに作用する力(tf:ton force)である。F2は、爪部21bに作用する力(tf)である。
【0048】
移動部30とリフター20との間の力は、(3)式で示される。また、移動部30とリフター20との間のモーメントのつり合いは、(4)式で示される。
【0049】
【0050】
ここで、Mは、リフター20の重量(ton)である。F3は、荷重センサ32aに作用する力(tf)である。F4は、荷重センサ32bに作用する力(tf)である。L2は、荷重センサ32a、32b間の距離、すなわち、接続手段40間の距離(mm)である。
【0051】
(4)式より、下記の(4)’式が導き出される。
【数3】
【0052】
(3)式より、下記の(3)’式が導き出される。
【数4】
【0053】
(4)’を(3)’に代入すると、下記の(5)式が得られる。
【数5】
【0054】
(5)を(1)に代入すると、下記の(6)式が得られる。
【数6】
【0055】
尚、スラブ10の総重量m、リフター20の重量M、爪部21a、21b間の距離L1及び、接続手段40間の距離L2は、仕様情報を参照することで得ることができる。また、荷重センサ32aに作用する力F3及び、荷重センサ32bに作用する力F4は、それぞれの荷重センサ32a、32bが検出した値を用いることができる。
【0056】
移動制御部55は、位置関係情報生成部54によって生成された位置関係情報を、移動部30を横行方向に移動させる際の補正距離として用いるとよい。例えば、移動制御部55は、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δy
fが、正の値である場合、
図4において右側にずれるようにΔy
fの値に応じて移動部30を移動させるとよい。また、移動制御部55は、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δy
fが負の値である場合、
図4において左側にずれるようにΔy
fの値に応じて移動部30を移動させるとよい。
【0057】
このようにすることで、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2とを合わせることができる。移動制御部55は、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δyfが予め定めた閾値以下になった際に、移動部30の移動を行うとよい。
【0058】
図5は、スラブ10の形状の一例を示す説明図である。スラブ10は、前後方向D2が、幅方向D3よりも長い板状に形成されている。また、スラブ10は、前後方向D2の一端側が他端側よりも幅が広く形成されている。さらに、スラブ10は、前後方向D2の一端側において、その幅が狭まるように形成された、くびれを有している。
【0059】
本発明のスラブの搬送装置100によれば、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δy
fを、2つの荷重センサ32a,32bの荷重差を用いて求めている。したがって、
図5に示すような複雑な形状のスラブ10であっても、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2とを合わせることができる。
【0060】
ステップS104の位置関係情報生成工程においては、位置関係情報は、リフター20と移動部30との、スラブ10の幅方向における位置関係を考慮して生成されるようにしてもよい。
図6は、ステップS104の位置関係情報生成工程において位置関係情報が生成される他の態様を示している。
【0061】
図6においては、スラブ10a上にスラブ10bが積層された状態で搬送される態様が示されている。スラブ10a、10bは、直方体状に形成されている。スラブ10bは、スラブ10aよりも幅方向の長さが長く形成されている。一対の爪部21aは、スラブ10aの両側面を把持している。
【0062】
まず、上述の態様でスラブ10bの重心位置と、リフター20の中心位置と、が合わせられる。このとき、リフター20は移動するが、接続手段40が斜めに振れることによって移動部30は、元の位置に留まる。このため、爪部21aがスラブ10a把持すると、移動部30とリフター20との間には幅方向の変位ΔXwが生じる。尚、幅方向の変位ΔXwは、変位センサ41によって計測することができる。
【0063】
移動制御部55は、例えば、移動部30とリフター20との間には幅方向の変位ΔXwが予め定めた閾値以下となるように移動部30を移動させ、当該変位ΔXwが予め定めた閾値以下になった際に移動部30を搬送先に移動させるとよい。
【0064】
尚、変位ΔXwの閾値は、荷振れが生じた際のリフター20の振れ幅に応じて設定するとよい。このように、変位ΔXwの閾値を設定することで、移動部30とリフター20との間の荷振れを許容範囲内にすることができる。
【0065】
以上のように、本発明のスラブの搬送装置100及び、スラブの搬送方法によれば、スラブの荷重情報、位置情報及び、仕様情報に基づいて、位置関係情報を生成する。また、移動制御部55は、位置関係情報に基づいて、移動部30を移動させる。このため、リフター20の中心位置C1とスラブ10の重心位置C2とを合わせることが可能となる。したがって、本発明のスラブの搬送装置100及び、スラブの搬送方法は、スラブ10の積載態様に応じて複数のスラブ10を搬送することが可能となる。
【0066】
特に、荷重センサ32a、32bの荷重差からリフター20の中心位置C1とスラブの重心位置との変位差を算出することが可能となる。これにより、リフター20の中心位置C1とスラブ10の重心位置C2とを合わせた後に、スラブ10を搬送することが可能となる。
【0067】
(第2実施形態)
移動制御部55は、スラブ10の平面形状に基づいてスラブの重心位置を推定し、その重心位置に応じて移動制御を行うようにしてもよい。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図7は、第2実施形態に係るスラブの搬送装置200の機能ブロックを示している。
図7に示すように、形状計測部64は、バス63を介して制御部50aと通信可能に接続されている。
【0069】
形状計測部64は、スラブ10の形状を計測する装置である。形状計測部64は、スラブ10の上面、底面及び、側面のうち少なくとも1つの面を計測することができる装置である。
【0070】
形状計測部64としては、特には限定されないが、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ビーコン(Beacon)等を用いることができる。形状計測部64は、スラブ10の形状を計測すると、制御部50aのROMに計測データを形状情報として格納する。
【0071】
制御部50aは、スラブ形状取得部56と、推定位置情報生成部57と、判定情報生成部58と、を有する。
【0072】
スラブ形状取得部56は、形状計測部64が計測したスラブ10の形状をROMから読み出すことにより取得する。
【0073】
推定位置情報生成部57は、スラブ10の重心位置C2を推定した推定位置情報を生成する。具体的には、推定位置情報生成部57は、スラブ10の上面及び、底面のうちの少なくとも一方の面の形状である平面形状に基づいて推定位置情報を生成する。
【0074】
判定情報生成部58は、スラブ10の側面形状に基づいて、移動部30の移動の可否に関する判定情報を生成する。判定情報生成部58による判定情報の生成は、例えば、スラブ10の反り量に応じて生成することができる。例えば、判定情報生成部58は、スラブ10の側面形状から反り量を算出し、当該反り量が閾値を越えているか否かに応じて判定情報を生成するようにしてもよい。
【0075】
図8は、第2実施形態に係るスラブの製造方法に係る処理フローを示している。
図8において、ステップS201~S204までは、第1実施形態の処理フローと同一であるので説明を省略する。
【0076】
図8に示すように、スラブ形状取得部56は、形状計測部64が計測したスラブ10の形状をROMから読み出すことによりスラブ10の形状を取得し、スラブ形状取得工程を実行する(ステップS205)。
【0077】
推定位置情報生成部57は、スラブ10の上面及び、底面のうちの少なくとも一方の面の形状である平面形状に基づいて、推定位置情報を生成して推定位置情報生成工程を実行する(ステップS206)。
【0078】
推定位置情報生成部57は、例えば、スラブ10が直方体状に形成されている場合、長手方向の中間の位置をスラブ10の重心位置C2とする推定位置情報を生成する。また、推定位置情報生成部57は、スラブ10の平面形状及び、側面形状に基づいて、推定位置情報を生成してもよい。
【0079】
側面形状には、スラブ10の端部に形成されやすい、いわゆる反りに関する情報が含まれている。したがって、このように推定位置情報が生成されることにより、例えば、スラブ10の反りを考慮して重心位置を推定することが可能となる。本実施形態では、スラブ10の反りを考慮して重心位置を推定する例について説明する。
【0080】
移動制御部55は、ステップS206において生成された推定位置情報の重心位置C2に、移動部30を移動させる。位置関係情報生成部54は、第1実施形態のステップS104と同様の態様で位置関係情報を生成して位置関係情報生成工程を実行する(ステップS207)。
【0081】
尚、ステップS207の位置関係情報生成工程において、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δyfを求める際には、スラブ10の反り量を考慮して求めるとよい。
【0082】
上面視が矩形状に形成されたスラブ10の場合、その重心は、長手方向の中心に位置する。スラブ10の長手方向の端部に反りが形成されている場合、当該端部は、スラブ10の反りの影響により設計値よりも長手方向の中心側に近い位置で計測される。
【0083】
例えば、スラブ10の長手方向の片側に反りが発生している場合、スラブ10の長手方向の中心から当該片側の端部までの距離をLiDARで計測すると、中心から他方側の端部までの距離よりも短く計測される。
【0084】
そこで、スラブ10の反り量に応じてスラブ10の長手方向の両端の位置を補正するとよい。具体的には、反りを矯正した場合の長手方向の両端の位置を仮定し、当該仮定した位置に端部の位置を補正するとよい。次いで、補正後の両端位置を用いて、長手方向の中心の位置をターゲットの座標とし、位置関係情報を生成するとよい。これにより、より正確なスラブ10の重心位置を用いてリフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δyfを求めることができる。したがって、スラブ10の重心位置C2の推定精度を高めることができる。
【0085】
判定情報生成部58は、移動部30の移動の可否に関する判定情報を生成し、判定情報生成工程を実行する(ステップS208)。判定情報生成部58は、ステップS208の判定情報生成工程において、例えば、スラブ10の反り量が予め定めた閾値以下であった場合、移動部30の移動が可である判定情報を生成する。また、判定情報生成部58は、スラブ10の反り量が予め定めた閾値を越える場合、移動部30の移動が不可である判定情報を生成する。
【0086】
移動制御部55は、ステップS208で生成された判定情報に応じて移動部30を移動させる移動制御工程を実行する(ステップS209)。具体的には、移動制御部55は、移動が可である判定情報である場合、第1実施形態と同様に移動部30を移動させる。
【0087】
ステップS206において生成された推定位置情報の重心位置C2に移動部30を移動させてから、ステップS207の位置関係情報生成工程が実行されることにより、リフター20がスラブ10の重心位置を把持する確度を高めることができる。これにより、ステップS207の位置関係情報生成工程において行われる、重心位置の補正量を少なくすることができる。すなわち、リフター20の中心位置C1と、スラブ10の重心位置C2との差Δyfが予め定めた閾値以下になるまでの移動部30の移動制御を少なくすることができる。
【0088】
また、移動制御部55は、移動が不可である判定情報である場合、移動部30の移動量を「0」とする移動態様、言い換えれば、移動部30を移動させずに移動制御工程の処理を終了する。制御部50aは、例えば、移動制御工程の処理内容を報知部62に表示する。このようにすることで、反り量が多く品質として不適切なスラブ10を製造ラインから排除することを容易に行うことができる。
【0089】
以上のように、本実施形態のようにスラブの搬送装置200を構成しても、第1実施形態のスラブの搬送装置100と同様に、リフター20の中心位置C1とスラブ10の重心位置C2とを合わせることが可能となる。したがって、本発明のスラブの搬送装置200及び、スラブの搬送方法は、スラブ10の積載態様に応じて複数のスラブ10を搬送することが可能となる。
【0090】
尚、上述の実施形態においては、推定位置情報生成部57が、長手方向の重心位置をスラブ10の重心位置C2とする推定位置情報を生成する例について説明した。推定位置情報生成部57は、スラブ10の長手方向及び、短手方向におけるスラブ10の重心位置C2を推定して推定位置情報を生成するようにしてもよい。スラブ10の長手方向及び、短手方向におけるスラブ10の重心位置C2を推定することにより、リフター20とスラブ10との、振れ角が小さくなる位置でスラブ10を把持することが可能となる。これにより、荷振れが生じることを抑止することが可能となる。
【実施例0091】
使用するセンサの位置検出精度を検査した。検査に用いたスラブは、上面視が矩形である直方体である。検査では、このスラブを3枚重ねた状態で搬送することを想定した。尚、3枚のスラブの総重量(m)は55tであった。以下、3枚のスラブをテストスラブとも称する。
【0092】
また、スラブの搬送装置として、リフターに一対の爪部が設けられているものを用いた。尚、一対の爪部のうち、一方を東側に配し、他方を西側に配した。同様に、一対のワイヤリールを当該東西方向に沿って設けた。各々のワイヤリールには、荷重を検出する荷重センサが内蔵されている。リフターの重量(M)は、23.0tであった。また、爪部間の距離(L1)は、1700mmであった。接続手段40間の距離(L2)は、2500mmであった。
【0093】
検査は、まず、位置調整をせずにテストスラブを持ち上げ、荷重センサにおける荷重差を測定した。この際の東西の荷重差は、-5.0tであった。上述のモーメントの数式(6)より、リフターの中心が、スラブの重心と西に114mmずれていることが推定された。
【0094】
次いで、クレーンを東に100mm動かし、再度テストスラブを持ち上げて、荷重センサにおける荷重差を測定した。この際の東西の荷重差は、-0.5tであった。上述のモーメントの数式(6)より、リフターの中心が、スラブの重心と西に11mmずれていることが推定された。クレーンの移動量を100mmとした場合、上記のモーメントの数式(6)で算出された差荷重が103mmであった。したがって、精度は、凡そ±4mmに収まっているといえる。
【0095】
このように、本発明のスラブの搬送装置を用いてスラブを搬送した場合、リフターの中心位置と、スラブの重心位置との差を、±4mm以内にすることができた。また、本発明のスラブの搬送装置を用いてスラブを搬送した場合、リフターによりスラブを上方に移動(地切り)させた際に発生する、スラブの幅方向の荷振れを最大20mm以内にすることができた。
【0096】
スラブヤードからスラブ積載船を結ぶ貨車は、設定されている初期掴み位置に対してスラブの重心位置が長手方向に最大で300mm程度ずれている。本スラブ搬送装置を用いない場合、定格荷重64.0tonのとき、荷重小側の爪が24.2ton、荷重大側の爪が39.8ton程度で差荷重は15.6ton程度となるが、本スラブ搬送装置を用いた場合、差荷重を0.2ton程度の位置を掴み直して搬送することができるようになる。
【0097】
以上により、本発明のスラブの搬送装置は、従来と比して、スラブの形態や、積載態様によらず容易にスラブを搬送することができる。また、本発明のスラブの搬送装置は、従来と比して荷振れの発生を抑制することができる。