(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171602
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】高いバイオマス度を有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/02 20060101AFI20241205BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20241205BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L77/02
C08K7/14
C08K3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088696
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】593075418
【氏名又は名称】株式会社アオイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊三
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002DE087
4J002DE237
4J002DL006
4J002FA046
4J002FB017
4J002FD016
4J002FD017
4J002GB00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】高いバイオマス度を有し、かつ、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド11(A)25~90質量部、ガラス繊維(B)1~65質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)1~65質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含む樹脂組成物;及び前記樹脂組成物を成形して得られる成形体、特に、管継手。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド11(A)25~90質量部、ガラス繊維(B)1~65質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)1~65質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含む樹脂組成物。
【請求項2】
射出成形に用いられる請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項4】
管継手である請求項3記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いバイオマス度を有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の給水、給湯又は空調機器用の配管を接続するために管継手が用いられている。
【0003】
従来、管継手の材料としては、ポリアミド樹脂等の樹脂が用いられており、ポリアミド6やポリアミド66が性能やコスト面で有利であることから多く用いられている。しかしながら、近年の環境配慮意識の高まりを受けて、バイオマス原料を一部又は全部に用いたポリアミド樹脂として、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド11などのニーズも高まっている。中でも、ポリアミド11はバイオマス度が高く、また耐寒性や耐疲労性、耐溶剤性などに優れるためエンジン部材などで利用されている。
【0004】
特許文献1には、ポリアミド11単体原料を用いた継手が記載されている。特許文献2にも、継手の材料としてポリアミド11が記載されているが、ポリアミド11を用いた継手は、具体的には記載されていない。
【0005】
しかしながら、ポリアミド11単体原料を用いた成形体は、一般的に機械的強度が低く、機械的強度を必要とする成形体、例えば継手の機能を果たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-50463号公報(実施例1、3、5及び7)
【特許文献2】特開2005-193614号公報(例えば、請求項24)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高いバイオマス度を有し、かつ、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、ポリアミド11の欠点である機械的強度を改善しうる材料を種々検討したところ、ポリアミド11にガラス繊維を配合すれば、機械的強度は改善されるが、充分とはいえず、またバイオマス度も低下し、満足するバイオマス度を有し、かつ、機械的強度に優れた製品が得られないことが分かった。そこで、機械的強度を更に改善しうる100%天然材料を求めて鋭意検討したところ、卵殻、貝殻、方解石、石灰岩、大理石等の天然材料の粉末を配合することにより、前記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)ポリアミド11(A)25~90質量部、ガラス繊維(B)1~65質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)1~65質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含む樹脂組成物。
(2)射出成形に用いられる前記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記(1)に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
(4)管継手である前記(3)に記載の成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高いバイオマス度を有し、かつ、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は実施例及び比較例で用いた管継手及び接続治具の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いるポリアミド11は、バイオマス(生物資源)の植物油であるヒマシ油だけを原料として得られる11-アミノウンデカン酸の縮重合によって得られる脂肪族ポリアミドである。
【0013】
本発明に用いるガラス繊維としては、繊維径が通常0.01~20μm、好ましくは0.03~15μmであり、繊維カット長は通常0.5~10mm、好ましくは0.7~5mmである。
【0014】
本発明に用いる天然材料の粉末としては、卵殻、貝殻、方解石、石灰岩又は大理石を粉砕して得られた粉末を用いることができ、それらは卵殻カルシウム、貝殻カルシウム(ボレイ末)などと一般に称されている。また、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。このような天然材料の粉末は市場で一般に入手することができ、例えば商品名「卵殻カルシウム」(太陽化学製)、商品名「ハイセア-S」(貝殻焼成カルシウム)、商品名「ハイセア2200」(貝殻未焼成カルシウム)(以上、カイホープロダクツ製)、商品名「貝殻パウダー120」(ふるさと物産製)、商品名「ホタテ貝殻焼成パウダー」(高田化学店製)などがあり、本発明ではこれらの市販品を使用することができる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド11(A)25~90質量部、ガラス繊維(B)1~65質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)1~65質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含み、好ましくは、ポリアミド11(A)35~90質量部、ガラス繊維(B)5~50質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)5~50質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含み、更に好ましくは、ポリアミド11(A)35~80質量部、ガラス繊維(B)10~35質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)5~35質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含み、特に好ましくは、ポリアミド11(A)35~60質量部、ガラス繊維(B)10~35質量部、及び卵殻、貝殻、方解石、石灰岩及び大理石から選ばれる少なくとも1種の天然材料の粉末(C)25~35質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である。)を含む。前記の割合で成分(A)、(B)及び(C)を配合することにより、高いバイオマス度を有し、かつ、機械的強度に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
ポリアミド11(A)の前記割合が25質量部未満であると、射出成形が困難となり、一方、90質量部を超えると、機械的強度が低下する。ガラス繊維(B)の前記割合が1質量部未満であると、機械的強度が低下し、一方、65質量部を超えると、バイオマス度が低下する。前記天然材料の粉末(C)の前記割合が1質量部未満であると、機械的強度及びバイオマス度が低下し、一方、65質量部を超えると、機械的強度が低下する。
【0017】
本発明の樹脂組成物には、ポリアミド11(A)、ガラス繊維(B)及び前記天然材料の粉末(C)の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、特に限定されないが、軟化剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤等、樹脂組成物の分野で用いられている公知の添加剤が挙げられる。
【0018】
本発明の樹脂組成物において、ポリアミド11(A)、ガラス繊維(B)及び前記天然材料の粉末(C)以外の添加剤の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、成分(A)、(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、その他の添加剤の合計量は、通常10質量部以下、好ましくは3質量部以下である。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、種々公知の成形方法、具体的には、例えば、射出成形、押出成形等の各種の成形方法により、成形体とすることができるが、特に射出成形により成形することが好ましい。更に、前記成形方法で得られたシートなど成形体を熱成形などで二次加工することができる。
【0020】
本発明の成形体は特にその使用用途を限定されるものではないが、例えば、管継手、自動車用部品、土木・建材用品、電気・電子部品、衛生用品、フィルム・シートなど種々公知の用途に好適である。
【0021】
例えば、本発明の成形体が管継手である場合、高いバイオマス度を有し、かつ、継手締付部の締付破壊強度に優れたものとなる。
【実施例0022】
次に本発明について実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0023】
(実施例1~2及び比較例1~2)
(1)使用材料
(A)ポリアミド11として、アルケマ株式会社製 RilsanTM BMNO LTD-PA11を用いた。
(B)ガラス繊維及びポリアミド11として、アルケマ株式会社製ガラス繊維含有ポリアミド11RilsanTM BZM30 OTL PA11-GF30を用いた。
(C)天然材料の粉末として、高田化学店製ホタテ貝殻焼成パウダーを用いた。
前記の(A)、(B)及び(C)の材料を配合して表1に示す樹脂組成物を調製した。
【0024】
(2)成形
表1に示す実施例1~2及び比較例1~2の材料をドライブレンドして除湿乾燥機にて80℃5時間乾燥させた。その後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社NEX80II)に管継手の金型を搭載し成形を行って、
図1に示す管継手を製造した。
【0025】
(3)ネジ締付け破壊トルク測定試験
成形品の管継手のネジ部にシールテープを3周巻き、
図1に示す接続治具へ手締めした。その後、成形品の管継手を取り付けた治具を固定しトルクレンチを用いてネジ部の締付けを行い破壊した時のトルクを確認した。結果を表1及び
図2に示す。表1及び
図2において、Sample Aは2部ネジの破壊トルクを示し、Sample Bは3部ネジの破壊トルクを示す。
【0026】
【0027】
表1及び
図2から、実施例1及び2の成形体が高いバイオマス度を有し、かつ、機械的強度に優れていることがわかる。