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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171603
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業台
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20241205BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241205BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20241205BHJP
   B65H 49/16 20060101ALI20241205BHJP
   B65H 67/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/16
B29C70/32
B65H49/16
B65H67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088698
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松井 利裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木野 義浩
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水辺 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
【テーマコード(参考)】
3F109
3F112
4F205
【Fターム(参考)】
3F109BA10
3F109CB01
3F109CB08
3F109CB15
3F109CC03
3F109CD05
3F109CD09
3F112AA09
3F112BA03
3F112DA03
3F112EA02
3F112EA09
3F112EA10
3F112EB06
3F112EB07
3F112EC03
3F112ED03
3F112FA10
3F112HA01
3F112HA08
3F112LA06
3F112TA02
4F205AD16
4F205AJ08
4F205AM14
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HB01
4F205HC02
4F205HF23
4F205HK23
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】ボビン交換作業をできるだけ速やかに行えるようにする。
【解決手段】本体部72と、円環状であり、水平方向に沿って延びる第1軸L1を中心に周方向に回転可能となるように本体部72に取り付けられており、且つ、カートリッジ60を支持する突起76を有する円環部73と、円環部73の回転を止めるためのストッパ機構80と、を備える。突起76に支持されたカートリッジ60は円環部73と共に第1軸L1を中心に周方向に回転可能である。円環部73は、周方向に互いに離隔する複数の溝73bが形成されている。ストッパ機構80は、溝73bに嵌め込み可能なローラ82が設けられており、円環部73に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能な状態で本体部72に対して取り付けられたスライダ81を有しており、ローラ82が複数の溝73bのうちの1つに嵌まることで、円環部73の回転を止める。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状であり、且つ、複数のボビンをそれぞれ支持可能な複数のボビンホルダが周方向に沿って設けられたカートリッジを着脱自在に支持可能な作業台であって、
本体部と、
円環状であり、水平方向に沿って延びる第1軸を中心に周方向に回転可能となるように前記本体部に取り付けられており、且つ、前記カートリッジを支持する支持部を有する円環部と、
前記円環部の回転を止めるためのストッパ機構と、を備えており、
前記支持部に支持された前記カートリッジは前記円環部と共に前記第1軸を中心に周方向に回転可能であり、
前記円環部は、周方向に互いに離隔する少なくとも2つの開口部が形成されており、
前記ストッパ機構は、前記開口部に嵌め込み可能な嵌込部が設けられており、前記円環部に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能な状態で前記本体部に対して取り付けられたスライダを有しており、前記嵌込部が前記少なくとも2つの開口部のうちの1つに嵌まることで、前記円環部の回転を止める作業台。
【請求項2】
前記開口部は、前記円環部の内周縁に形成された溝であり、
前記スライダは、前記円環部の前記内周縁に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能である請求項1に記載の作業台。
【請求項3】
前記スライダは、
前記本体部に対して所定方向に沿ってスライド可能に取り付けられた第1部分と、
前記嵌込部が設けられており、且つ、前記第1部分に対して前記所定方向に沿ってスライド可能に取り付けられた第2部分と、を有しており、
前記第1部分は、前記所定方向にスライドすることで、前記嵌込部が前記円環部と離隔した離隔位置と、前記離隔位置よりも下方に位置しており前記嵌込部が前記円環部の前記内周縁に接触する接触位置と、を取り、
前記嵌込部が前記円環部の前記内周縁に接触している状態で前記円環部が回転されたとき、前記円環部の前記内周縁に形成された少なくとも2つの前記溝のいずれかが前記嵌込部と接触する位置に到達すると、前記第2部分が自重により前記所定方向にスライドして前記嵌込部が前記溝に嵌まる請求項2に記載の作業台。
【請求項4】
前記所定方向は、鉛直方向である請求項3に記載の作業台。
【請求項5】
前記嵌込部は、前記第1軸と平行な回転軸周りに回転可能に構成されたローラである請求項3に記載の作業台。
【請求項6】
前記本体部は、鉛直方向に沿って延びる第2軸を中心に回転自在に構成されている請求項1に記載の作業台。
【請求項7】
前記円環部及び前記ストッパ機構は、前記第1軸の延伸方向において前記本体部の両面にそれぞれ設けられている請求項6に記載の作業台。
【請求項8】
前記ストッパ機構は、前記スライダをスライドさせるレバーを有しており、
前記レバーは、床面から800mm~1400mmの高さに設けられている請求項1~7のいずれか1項に記載の作業台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン交換作業を行うための作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱硬化性樹脂が含侵された繊維束をライナーに巻き付けて圧力容器等を製造するフィラメントワインディング装置が開示されている。かかるフィラメントワインディング装置は、ライナーの表面にフープ巻きを施すフープ巻ユニットと、ライナーの周面にヘリカル巻きを施すヘリカル巻ユニットと、を備えている。フープ巻ユニットは、ライナーに対してライナーの軸方向に相対的に移動可能である。フープ巻ユニットは、ライナーが通過可能な通過穴が形成された円盤状の回転部材と、回転部材の周方向に等間隔で配置された複数の繊維ボビン(ボビン)と、を有している。フープ巻ユニットとライナーとを相対移動させながら、回転部材を回転させることで、複数の繊維束ボビンがライナーの周囲を公転し、複数の繊維束ボビンから引き出された繊維束が同時にライナーの周面にフープ巻きされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-144407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなフィラメントワインディング装置においては、フープ巻ユニットのボビンが空になったとき、ボビン交換作業を行う必要がある。ボビン交換作業においては、空になった複数のボビンをフープ巻ユニットから取り外した後、新たな複数のボビンをフープ巻ユニットに装着する。
【0005】
ここで、複数のボビンが配置される回転部材がフープ巻ユニットの本体部から着脱自在なカートリッジとなっている場合、ボビンが空になったとき、カートリッジを本体部から取り外してボビン交換作業を行うことができる。このようなボビン交換作業は、フィラメントワインディング装置の稼働率を悪化させないためにできるだけ速やかに行う必要がある。
【0006】
本発明の目的は、ボビン交換作業をできるだけ速やかに行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明にかかる作業台は、円環状であり、且つ、複数のボビンをそれぞれ支持可能な複数のボビンホルダが周方向に沿って設けられたカートリッジを着脱自在に支持可能な作業台であって、本体部と、円環状であり、水平方向に沿って延びる第1軸を中心に周方向に回転可能となるように前記本体部に取り付けられており、且つ、前記カートリッジを支持する支持部を有する円環部と、前記円環部の回転を止めるためのストッパ機構と、を備えており、前記支持部に支持された前記カートリッジは前記円環部と共に前記第1軸を中心に周方向に回転可能であり、前記円環部は、周方向に互いに離隔する少なくとも2つの開口部が形成されており、前記ストッパ機構は、前記開口部に嵌め込み可能な嵌込部が設けられており、前記円環部に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能な状態で前記本体部に対して取り付けられたスライダを有しており、前記嵌込部が前記少なくとも2つの開口部のうちの1つに嵌まることで、前記円環部の回転を止める。
【0008】
本発明では、ストッパ機構は、円環部に形成された少なくとも2つの開口部のうちいずれかの開口部に嵌込部が嵌まることで、円環部を周方向に関して異なる位置で止めることができる。すなわち、円環部に設けられた支持部に支持されたカートリッジを周方向に関して異なる位置で止めることができる。したがって、カートリッジの周方向に沿って設けられた複数のボビンホルダに対してボビン交換作業を行う際に、カートリッジを止める位置を変更し、作業対象のボビンホルダが作業しやすい高さ位置となるように調整できる。よって、ボビン交換作業の作業性を高め、ボビン交換作業をできるだけ速やかに行えるようにできる。
【0009】
第2の発明にかかる作業台では、第1の発明において、前記開口部は、前記円環部の内周縁に形成された溝であり、前記スライダは、前記円環部の前記内周縁に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能である。
【0010】
本発明では、ストッパ機構は、円環部に形成された少なくとも2つの溝のうちいずれかの溝に嵌込部が嵌まることで、円環部を周方向に関して異なる位置で止めることができる。
【0011】
第3の発明にかかる作業台では、第2の発明において、前記スライダは、前記本体部に対して所定方向に沿ってスライド可能に取り付けられた第1部分と、前記嵌込部が設けられており、且つ、前記第1部分に対して前記所定方向に沿ってスライド可能に取り付けられた第2部分と、を有しており、前記第1部分は、前記所定方向にスライドすることで、前記嵌込部が前記円環部と離隔した離隔位置と、前記離隔位置よりも下方に位置しており前記嵌込部が前記円環部の前記内周縁に接触する接触位置と、を取り、前記嵌込部が前記円環部の前記内周縁に接触している状態で前記円環部が回転されたとき、前記円環部の前記内周縁に形成された少なくとも2つの前記溝のいずれかが前記嵌込部と接触する位置に到達すると、前記第2部分が自重により前記所定方向にスライドして前記嵌込部が前記溝に嵌まる。
【0012】
本発明では、作業者が円環部を回転させることで、円環部の内周縁に形成された少なくとも2つの溝のいずれかが嵌込部と接触する位置に到達したときに、嵌込部が溝に嵌まってカートリッジが止まる。したがって、カートリッジを止める作業の操作性がよい。また、第2部分が自重により所定方向にスライドして嵌込部が溝に嵌まるので、第2部分が付勢部材の付勢力により所定方向にスライドするような構成に比べて部品点数を削減できる。
【0013】
第4の発明にかかる作業台では、第2の発明において、前記所定方向は、鉛直方向である。
【0014】
本発明では、第2部分の自重による所定方向のスライド動作を確実にすることができる。
【0015】
第5の発明にかかる作業台では、第3及び第4の発明において、前記嵌込部は、前記第1軸と平行な回転軸周りに回転可能に構成されたローラである。
【0016】
本発明では、嵌込部(ローラ)が円環部の内周縁に接触している状態で円環部が回転されたとき、嵌込部(ローラ)が回転する。したがって、嵌込部の摩耗を抑えることができる。
【0017】
第6の発明にかかる作業台では、第1~第5のいずれかの発明において、前記本体部は、鉛直方向に沿って延びる第2軸を中心に回転自在に構成されている。
【0018】
本発明では、作業台が、本体部に支持されたカートリッジに対して作業者がボビン交換作業を行う作業エリアと、カートリッジが装着される繊維機械の動作エリアと、を分ける仕切りの役割を果たすことができる。すなわち、作業エリアと動作エリアとの境に作業台を設置し、作業エリアでのカートリッジに対するボビン交換作業が終わった後に本体部を回転させることで、ボビン交換作業を終えたカートリッジが動作エリアに移動する。
【0019】
第7の発明にかかる作業台では、第6の発明において、前記円環部及び前記ストッパ機構は、前記第1軸の延伸方向において前記本体部の両面にそれぞれ設けられている。
【0020】
本発明では、本体部の両面において、カートリッジの支持及び支持したカートリッジへのボビン交換作業をそれぞれ行うことができる。したがって、本体部の一方の面において支持したカートリッジへのボビン交換作業を行っている間に、本体部の他方の面において、ボビン交換作業を終えたカートリッジを作業台から取り外す作業や、次にボビン交換作業を行うカートリッジを作業台に取り付ける作業を行うことができる。よって、ボビン交換作業を効率よく行うことができる。
【0021】
第8の発明にかかる作業台では、第1~第7のいずれかの発明において、前記ストッパ機構は、前記スライダをスライドさせるレバーを有しており、前記レバーは、床面から800mm~1400mmの高さに設けられている。
【0022】
本発明では、ストッパ機構のレバーが、床面に立って作業する作業者の手が届きやすい高さにあるので、ボビン交換作業の作業性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
図2】フィラメントワインディング装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】(a)、(b)は、ヘリカル巻ユニットの正面図である。
図4】フープ巻ユニットの斜視図である。
図5】作業台及び交換装置を含むフィラメントワインディング装置の平面図である。
図6】作業台の正面図であり、(a)はカートリッジを支持していない状態、(b)はカートリッジを支持した状態を示す。
図7】作業台の断面図であり、(a)はカートリッジの把持が解除されている状態、(b)はカートリッジが把持されている状態を示す。
図8】作業台の断面図であり、(a)は突起が挿入孔に挿入されていない状態、(b)は突起が挿入孔に挿入された状態を示す。
図9】ストッパ機構の動作を説明するための図であり、(a)は第1部分が離隔位置にある状態、(b)は第1部分が接触位置であり且つローラが溝に嵌まっていない状態、(c)はローラが溝に嵌まった状態を示す。
図10】ボビン交換作業の手順を説明するための図である。
図11】ボビン交換作業の手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を示す斜視図である。図2は、フィラメントワインディング装置1の電気的構成を示すブロック図である。説明の便宜上、図1に示す方向(前後方向及び左右方向)を定義する。前後方向及び左右方向は、水平方向と平行な方向である。前後方向と左右方向は互いに直交する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。
【0025】
フィラメントワインディング装置1は、ライナーLに複数の繊維束(図1では図示省略)を同時に巻き付ける多給糸型のものである。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、複数のクリールスタンド3と、複数の前処理部4とを備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。巻付装置2は、円筒状のライナーLに繊維束を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば、炭素繊維などの繊維材料に熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。ライナーLの形状は、最終製品に応じて異なりうる。例えば最終製品が圧力タンクである場合、図1に示すように、円筒部の両側にドーム部を有するライナーLが使用される。ライナーLの材料としては、高強度アルミニウム、金属、樹脂などが用いられる。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成などの熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力タンクなどの最終製品を得ることができる。
【0026】
複数のクリールスタンド3は、例えば、巻付装置2の左右方向における両側に配置されている。複数のクリールスタンド3は、例えば、前後方向において巻付装置2の後端部の近傍に配置されている。各クリールスタンド3は、例えば、前後方向に延びる略直方体状のフレーム11を有する。フレーム11には、例えば、1以上のボビンホルダ群12が設けられている。ボビンホルダ群12は、例えば、後述するヘリカル巻ユニット50の複数のノズルユニット53の各々に対応して設けられている。各ボビンホルダ群12は、例えば前後方向に並んだ複数の(本実施形態では5つの)ボビンホルダ13を有する。各ボビンホルダ13は、例えば、左右方向に延びる軸を有する。各ボビンホルダ13は、繊維束が巻かれたボビン14を回転可能に支持する。本実施形態では、例えば9つのボビンホルダ群12が設けられ、その各々に5つのボビン14が装着されている(すなわち、計45個のボビン14が配置されている)。各ボビンホルダ群12に属する5つのボビン14から、5本の繊維束がまとめて供給される。クリールスタンド3から供給される複数の繊維束は、ヘリカル巻ユニット50によってライナーLに巻き付けられる。なお、図1においては2つのクリールスタンド3が図示されているが、クリールスタンド3の数はこれに限られない。また、図面の煩雑化を避けるため、図1においては、複数のボビンホルダ群12のうち1つのみが図示されている。
【0027】
複数の前処理部4は、複数の繊維束に所定の前処理(例えば張力付与等)を施すように構成されている。複数の前処理部4は、例えば、繊維束の走行方向において、対応するクリールスタンド3と、ヘリカル巻ユニット50(後述)との間に配置されている。
【0028】
(巻付装置)
巻付装置2のより具体的な構成について説明する。巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻ユニット40と、ヘリカル巻ユニット50と、を備える。
【0029】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻ユニット40、及び、ヘリカル巻ユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が設置されている。支持ユニット30及びフープ巻ユニット40は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット50は、例えば、基台20に対する位置が固定されている。第1支持ユニット31、フープ巻ユニット40、ヘリカル巻ユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0030】
支持ユニット30は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を有する。第1支持ユニット31は、フープ巻ユニット40よりも前側に配置されている。第2支持ユニット32は、ヘリカル巻ユニット50よりも後側に配置されている。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(図2参照)。移動用モータ34は、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35の動作は、制御装置5によって制御される。
【0031】
フープ巻ユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット40は、例えば、本体部41と、回転部材42と、複数(本実施形態では5個)のボビンホルダ43と、を有する。本体部41は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。回転部材42は、ライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状の部材である。回転部材42は、ライナーLの軸周りに回転可能な状態で、本体部41に支持されている。複数のボビンホルダ43は、周方向に等間隔で回転部材42に取り付けられている。各ボビンホルダ43は、前後方向に延びる回転軸を有しており、繊維束が巻かれたボビン(図示省略)を回転可能に支持する。
【0032】
フープ巻ユニット40は、移動用モータ46及び回転用モータ47を有する(図2参照)。移動用モータ46は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ47は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ46及び回転用モータ47の動作は、制御装置5によって制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置5は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビンから繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に同時にフープ巻きされる。
【0033】
ヘリカル巻ユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット50は、例えば、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、例えば基台20に固設されている。フレーム部材52は、ライナーLが通過可能な通過穴54が形成された円環状の部材である。フレーム部材52は、本体部51に支持されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心に放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に取り付けられている。
【0034】
図3(a)及び図3(b)は、ヘリカル巻ユニット50の正面図である。詳細には、図3(a)は、ライナーLの円筒部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。図3(b)は、ライナーLのドーム部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体55を有する。ガイド体55は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。各ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ56が配置されている。クリールスタンド3の各ボビンホルダ群12から引き出された5本の繊維束Fは、ガイドローラ56を経由して何れかのガイド体55に導入され、ガイド体55の先端からライナーLに供給される。
【0035】
ヘリカル巻ユニット50は、ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58を有する(図2参照)。ガイド移動用モータ57は、各ガイド体55を一斉に径方向に移動させる。ガイド回転用モータ58は、各ガイド体55を一斉に回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58の動作は、制御装置5によって制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置5は、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。これとともに、制御装置5は、各ノズルユニット53のガイド体55を、径方向に適宜移動させつつ回転軸周りに適宜回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体55の先端から5本の繊維束Fが適切に引き出され、合計で45本の繊維束FがライナーLの周面に同時にヘリカル巻きされる。
【0036】
(さらなる構成)
フィラメントワインディング装置1のさらなる構成について、図4図11を参照しつつ説明する。図4に示すように、本実施形態においては、フープ巻ユニット40の回転部材42は、本体部41に対して着脱自在なカートリッジとなっている。以降の説明においては、回転部材42をカートリッジ60と称する。後で詳述するように、カートリッジ60は、複数のボビン45を支持可能である。また、以降の説明において、カートリッジ60の構造を説明する際の方向についての言及は、本体部41に装着された姿勢のカートリッジ60に基づいて行う。
【0037】
図5に示すように、フィラメントワインディング装置1は、作業台70及び交換装置90を備えている。作業台70は、カートリッジ60に対するボビン交換作業を行うためのものである。交換装置90は、フープ巻ユニット40の本体部41に装着されるカートリッジ60を交換するためのものである。フープ巻ユニット40のボビン45が空になったとき、交換装置90はカートリッジ60を本体部41から取り外して作業台70に取り付ける。さらに交換装置90は、作業台70でボビン交換作業が行われたカートリッジ60を作業台70から取り外してフープ巻ユニット40の本体部41に装着する。
【0038】
カートリッジ60は、図4に示すように、ライナーLの軸方向(前後方向)にライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状である。カートリッジ60は、ライナーLの軸を中心に周方向に回転するように、フープ巻ユニット40の本体部41に取り付けされる。
【0039】
カートリッジ60には、複数のボビン45を支持可能な複数のボビンホルダ43(本実施形態では5つ)が周方向に沿って等間隔で設けられている。また、カートリッジ60は、繊維束ガイド65と、繊維束ガイド65を駆動するガイド用モータ66と、を有している。繊維束ガイド65は、複数のボビン45から引き出された複数の繊維束FをライナーLの周面に案内する。カートリッジ60には、図6(b)に示すように、複数のボビン45から引き出された複数の繊維束Fを繊維束ガイド65まで案内する複数のローラ69が設けられている。さらに、カートリッジ60には、繊維束Fにテンションを付与するテンション付与機構(不図示)等が設けられている。
【0040】
繊維束ガイド65は、ライナーLの径方向に延びている。繊維束ガイド65は、ライナーLの径方向に沿って移動可能に構成されている。また、繊維束ガイド65は、ライナーLの径方向に沿って延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。ガイド用モータ66は、繊維束ガイド65がライナーLの径方向に沿う移動及びライナーLの径方向に沿って延びる回転軸周りにおける回転を行うための駆動源である。ガイド用モータ66の動作は、制御装置5(図2参照)によって制御される。
【0041】
カートリッジ60は、図7及び図8に示すように、本体部61とフランジ68とを主に有している。本体部61は、略円環状である。本体部61には、上述の複数のボビンホルダ43、繊維束ガイド65、ガイド用モータ66及び複数のローラ69等が設けられている。さらに、本体部61には、前後方向に貫通する挿入孔62(図8参照)が形成されている。挿入孔62には、後述するように作業台70に設けられた突起76が挿入される。フランジ68は、本体部61の外周に取り付けられている。フランジ68は、本体部61に対してライナーLの軸周りに相対的に回転可能に構成されている。
【0042】
作業台70は、図5に示すように、巻付装置2の基台20の左方に配置されている。作業台70は、前後方向において巻付装置2の前端部の近傍に配置されている。作業台70は、作業者がカートリッジ60に対してボビン交換作業を行う作業エリアA1と、フィラメントワインディング装置1の動作エリアA2と、の境に設置されている。作業台70よりも前方側が作業エリアA1であり、作業台70よりも後方側が動作エリアA2である。
【0043】
作業台70は、図6に示すように、台座71と、台座71の上部に取り付けられた本体部72と、円環状の部材である円環部73と、ストッパ機構80と、を主に有している。円環部73及びストッパ機構80は、水平方向に沿って延びる第1軸L1の延伸方向において本体部72の両面にそれぞれ設けられている。第1軸L1は、前後方向に沿って延びている。
【0044】
後で詳述するように、円環部73はカートリッジ60を支持可能である。また、ストッパ機構80は、円環部73に支持されたカートリッジ60を周方向に位置決めできる。すなわち、本実施形態の作業台70は、本体部72の両面に円環部73及びストッパ機構80が設けられているので、本体部72の両面にそれぞれカートリッジ60を位置決め可能に支持し、位置決めされたカートリッジ60に対してボビン交換作業を行うことができる。
【0045】
円環部73は、第1軸L1を中心に周方向に回転可能となるように本体部72に取り付けられている。円環部73の内周縁には、径方向の内側に突出した突出部73aが形成されている。突出部73aには、前後方向に沿って延びる突起76が形成されている。突起76は、上述のようにカートリッジ60の本体部61に形成された挿入孔62(図8参照)に挿入可能である。図8(b)に示すように、突起76を挿入孔62に挿入することで、突起76によりカートリッジ60を支持できる。すなわち、突起76は、本発明の「支持部」に相当する。突起76に支持されたカートリッジ60の本体部61は、円環部73と共に第1軸L1を中心に周方向に回転可能となる。
【0046】
図6(a)に示すように、円環部73の内周縁には、円環部73の周方向に互いに離隔する複数の溝73bが形成されている。溝73bにより、円環部73には前後方向に開口する開口部が形成される。すなわち、溝73bは、本発明の「開口部」に相当する。本実施形態においては、5つの溝73bが円環部73の周方向に等間隔で形成されている。
【0047】
円環部73の中心部に形成された開口内には、支持プレート77が配置されている。支持プレート77は、本体部72に固定的に取り付けられている。支持プレート77には、ストッパ機構80の後述するスライダ81が取り付けられている。
【0048】
本体部72には、円環状の部材である固定部74が固定的に取り付けられている。固定部74は、円環部73の径方向外側に取り付けられている。また本体部72には、作業台70に支持されたカートリッジ60を把持可能な把持部75が設けられている。把持部75は、固定部74の周囲に等間隔で複数(本実施形態では4つ)設けられている。把持部75は、押さえ部材75aを有している。図7に示すように、押さえ部材75aは、前後方向と直交する方向に延びる軸を中心に搖動可能である。押さえ部材75aは、前後方向に関して固定部74と対向しない解除位置(図7(a)参照)と、前後方向に関して固定部74と対向する押さえ位置(図7(b)参照)と、を取り得る。
【0049】
図8(b)に示すように、突起76に支持されたカートリッジ60は、フランジ68が本体部72に取り付けられた固定部74と対向する。このように、カートリッジ60が突起76に支持された状態で、図7(b)に示すように、把持部75の押さえ部材75aを押さえ位置にする。これにより、固定部74と押さえ部材75aとによってカートリッジ60のフランジ68が挟み込まれる。このようにして、把持部75はカートリッジ60を把持する。把持部75によって把持されたカートリッジ60は、フランジ68は回転することなく、本体部61のみが回転可能である。図7(a)に示すように、押さえ部材75aが解除位置にあるとき、把持部75はカートリッジ60の把持を解除する。
【0050】
ストッパ機構80は、円環部73の回転を止めるためのものである。ストッパ機構80は、図6に示すように、上下方向に沿ってスライド可能なスライダ81と、スライダ81をスライドさせるレバー87と、を主に有している。
【0051】
スライダ81は、上下方向に沿ってスライドすることで、円環部73の内周縁に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能である。スライダ81は、図9に示すように、本体部72に対して上下方向にスライド可能に取り付けられた第1部分81aと、第1部分81aに対して上下方向にスライド可能に取り付けられた第2部分81bと、を有している。第1部分81aは、具体的には、本体部72に固定された支持プレート77に取り付けられている。すなわち、スライダ81は、支持プレート77を介して本体部72に取り付けられている。第2部分81bには、第1軸L1と平行な(前後方向に沿って延びる)回転軸周りに回転可能に構成されたローラ82が設けられている。ローラ82は、円環部73の溝73bに嵌め込み可能である。
【0052】
レバー87は、作業者が立つ床面S(図6参照)から800mm~1400mmの高さに設けられている。レバー87は、いわゆるトグルレバーである。レバー87には、上下方向に沿って延びるシャフト88が接続されている。レバー87を操作することで、シャフト88が上下方向に沿ってスライドするように構成されている。シャフト88の下端部には、スライダ81の第1部分81aが取り付けられている。すなわち、レバー87を操作することで、シャフト88と共にスライダ81の第1部分81aが上下方向に沿ってスライドする。
【0053】
レバー87は、スライダ81の第1部分81aが離隔位置となる第1位置(図9(a)の位置)と、スライダ81の第1部分81aが接触位置となる第2位置(図9(b)及び図9(c)の位置)と、を取り得る。接触位置は、離隔位置よりも下方である。第1部分81aが離隔位置にあるとき、スライダ81の第2部分81bに設けられたローラ82が、円環部73と離隔する。第1部分81aが接触位置にあるとき、ローラ82が円環部73の内周縁と接触する。
【0054】
作業者によりレバー87が第1位置から第2位置となるように操作されたとき、第1部分81aは第2部分81bと共に下向きにスライドする。レバー87が第2位置にあるとき、図9(c)に示すように、円環部73の内周縁における溝73bが形成された部分がローラ82の下方に位置すると、第2部分81bが自重により下向きにスライドする。これにより、ローラ82は複数の溝73bのうちの1つに嵌まる。ローラ82が溝73bに嵌まることで、円環部73が回転できない状態となる。
【0055】
本体部72は、台座71に対して上下方向に沿って延びる第2軸L2(図6(a)参照)を中心に回転自在に構成されている。第2軸L2は、第1軸L1と交差する。本体部72の第2軸L2周りの回転動作の駆動源は、回転用モータ79(図2参照)である。回転用モータ79の動作は、制御装置5(図2参照)によって制御される。
【0056】
本体部72は、図5に示すように、前後方向が厚み方向となる略板状である。本体部72の左右方向の両側には、サイドプレート78がそれぞれ取り付けられている。各サイドプレート78は、前後方向が厚み方向となる姿勢で本体部72に取り付けられている。各サイドプレート78は、透明な素材で構成されている。本体部72及び2枚のサイドプレート78は、作業エリアA1と動作エリアA2と、を分ける仕切りとなっている。
【0057】
交換装置90は、図5に示すように、動作エリアA2に配置されている。交換装置90は、レール91と、伸縮部92と、保持部93と、を主に備えている。レール91は、作業台70の後方に設置されている。レール91は、前後方向に延びている。伸縮部92は、レール91に沿って前後方向に移動可能である。伸縮部92は、基台20側(右側)に伸長可能である。保持部93は、カートリッジ60を保持可能に構成されている。保持部93は、伸縮部92の前方に取り付けられている。保持部93は、伸縮部92が伸縮することで前後方向においてフープ巻ユニット40の本体部41と対向する位置と、作業台70と対向する位置と、を取り得る。
【0058】
(ボビン交換作業)
ここで、図10及び図11を参照しつつ、ボビン交換作業の手順について説明する。なお、図10及び図11においては、ボビン交換作業を行う前(支持しているボビン45が空)のカートリッジ60は白塗りで示し、ボビン交換作業が行われたカートリッジ60は黒塗りで示す。
【0059】
フープ巻ユニット40のボビン45が空になったとき、まず、図10(a)に示すように、交換装置90の伸縮部92を伸長させる。これにより、保持部93がフープ巻ユニット40の本体部41と対向する。保持部93は、本体部41に装着されたカートリッジ60を保持し、本体部41からカートリッジ60を取り外す。
【0060】
次に、図10(b)に示すように、交換装置90の伸縮部92を縮めると共に、伸縮部92を前方に移動させる。そして、保持部93は、保持しているカートリッジ60を対向する作業台70に装着する。これにより、作業台70における本体部72の動作エリアA2側の面にボビン交換作業を行う前のカートリッジ60が支持される。なお、このとき、作業台70における本体部72の作業エリアA1側の面にはボビン交換作業済みのカートリッジ60が支持されていることとする。
【0061】
続いて、図11(a)に示すように、作業台70の本体部72を第2軸L2を中心に180°回転させる。これにより、作業台70の本体部72に支持されたボビン交換作業を行う前のカートリッジ60が作業エリアA1側に位置し、ボビン交換作業済みのカートリッジ60が動作エリアA2側に位置する。作業者は、作業エリアA1側に位置するカートリッジ60に対してボビン交換作業を行う。作業台70でのボビン交換作業の手順については、後述する。
【0062】
一方、交換装置90は、保持部93により作業台70に支持されているボビン交換作業済みのカートリッジ60を支持し、作業台70からカートリッジ60を取り外す。そして、図11(b)に示すように、伸縮部92を後方に移動させると共に伸長させる。さらに、保持部93は、保持しているカートリッジ60を対向するフープ巻ユニット40の本体部41に装着する。
【0063】
続いて、図9を参照しつつ、作業台70で行われるボビン交換作業の手順の一例について説明する。
【0064】
まず、作業者は、レバー87を第1位置(図9(a)に示す位置)から第2位置(図9(b)に示す位置)に移動させる。これにより、スライダ81の第2部分81bに設けられたローラ82が円環部73の内周縁に接触する。続いて、作業者は、カートリッジ60の本体部61を回転させる。このとき、本体部61と共に円環部73が回転する。また、円環部73が回転することで、円環部73の内周縁に接触するローラ82が円環部73の内周縁上で転がる。
【0065】
図9(b)に示すように、円環部73の内周縁に形成された突出部73aがローラ82と接触する位置に到達したとき、第2部分81bは上方にスライドする。また、図9(c)に示すように、円環部73の内周縁に形成された複数の溝73bのうちの1つがローラ82と接触する位置に到達したとき、第2部分81bが自重により下向きにスライドする。これにより、ローラ82は複数の溝73bのうちの1つに嵌まり、円環部73の回転が止まる。すなわち、円環部73に支持されたカートリッジ60の回転も止まる。このようにして、ストッパ機構80により、カートリッジ60が位置決めされる。
【0066】
作業者は、位置決めされた状態のカートリッジ60に対して、ボビン交換作業を行う。具体的には、各ボビンホルダ43から空のボビンを取り外し、新たなボビン45を各ボビンホルダ43に取り付ける。また、各ボビンホルダ43に支持されボビン45から引き出した繊維束Fを複数のローラ69及び繊維束ガイド65に掛ける。
【0067】
このとき作業者は、カートリッジ60に設けられた複数のボビンホルダ43のうち、適正な作業姿勢で手が届く範囲(以降、単に「適正姿勢範囲」と称する)で作業を行う。適正姿勢範囲は、床面Sに立って作業台70に正対する作業者の立体作業域における通常作業域にある範囲である。立体作業域とは、水平方向で手が届く作業域と、垂直方向で手が届く作業域と、を合わせた範囲である。通常作業域とは、軽く肘を曲げた状態で届く範囲である。したがって、適正姿勢範囲では、作業者は腰を屈めたり背伸びしたりしない適正な作業姿勢で作業を行うことができる。なお、適正姿勢範囲は、作業者の体格によって変わる。
【0068】
例えば、作業者の適正姿勢範囲が、図6(b)に示す高さH1以上且つ高さH2以下であるとする。すなわち、高さH1よりも下方及び高さH2よりも上方に位置するボビンホルダ43、ローラ69、繊維束ガイド65等には、適正な作業姿勢で作業を行うことができない。
【0069】
そこで作業者は、適正姿勢範囲の外に位置しているボビンホルダ43やローラ69等が適正姿勢範囲内となるように、カートリッジ60の位置を変更できる。すなわち、作業者は、レバー87を第2位置から第1位置に移動させる。これにより、ローラ82が溝73bから抜け出て、カートリッジ60が円環部73と共に回転可能な状態となる。そして作業者は、適正姿勢範囲の外に位置していたボビンホルダ43やローラ69等が適正姿勢範囲内となる位置でカートリッジ60を止めるように、カートリッジ60の回転及びレバー87の操作を行う。
【0070】
なお、本実施形態においては、ボビンホルダ43と溝73bとが、いずれも5つ設けられており、且つ、第1軸L1の周りに等間隔で設けられている。すなわち、ボビンホルダ43と溝73bとは、いずれも第1軸L1の周りに72°おきに設けられている。したがって、全てのボビンホルダ43を同じ高さに位置する状態でカートリッジ60を止めることができる。ここで、例えば図6(b)に示す5つのボビンホルダ43のうち、作業者が最も作業がしやすい位置にあるものが、高さH3に位置するボビンホルダ43であるとする。この場合、5つの溝73bに順番にローラ82を嵌め込むことで、各ボビンホルダ43が高さH3となる位置でカートリッジ60を止めて、高さH3に位置するボビンホルダ43に対してボビン交換作業を行うことが可能である。
【0071】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の作業台70は、円環状であり、且つ、複数のボビン45をそれぞれ支持可能な複数のボビンホルダ43が周方向に沿って設けられたカートリッジ60を着脱自在に支持可能な作業台70である。作業台70は、本体部72と、円環状であり、水平方向に沿って延びる第1軸L1を中心に周方向に回転可能となるように本体部72に取り付けられており、且つ、カートリッジ60を支持する突起76を有する円環部73と、円環部73の回転を止めるためのストッパ機構80と、を備えている。突起76に支持されたカートリッジ60は円環部73と共に第1軸L1を中心に周方向に回転可能であり、円環部73は、周方向に互いに離隔する複数の溝73bが形成されており、ストッパ機構80は、溝73bに嵌め込み可能なローラ82が設けられており、円環部73に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能な状態で本体部72に対して取り付けられたスライダ81を有しており、ローラ82が複数の溝73bのうちの1つに嵌まることで、円環部73の回転を止める。
【0072】
上述の構成により、ストッパ機構80は、円環部73に形成された複数の溝73bのうちいずれかの溝73bにローラ82が嵌まることで、円環部73を周方向に関して異なる位置で止めることができる。すなわち、円環部73に設けられた突起76に支持されたカートリッジ60を周方向に関して異なる位置で止めることができる。したがって、カートリッジ60の周方向に沿って設けられた複数のボビンホルダ43に対してボビン交換作業を行う際に、カートリッジ60を止める位置を変更し、作業対象のボビンホルダ43が作業しやすい高さ位置となるように調整できる。よって、ボビン交換作業の作業性を高め、ボビン交換作業をできるだけ速やかに行えるようにできる。
【0073】
また、上述の実施形態の作業台70では、スライダ81は、本体部72に対して所定方向に沿ってスライド可能に取り付けられた第1部分81aと、ローラ82が設けられており、且つ、第1部分81aに対して所定方向に沿ってスライド可能に取り付けられた第2部分81bと、を有している。第1部分81aは、所定方向にスライドすることで、ローラ82が円環部73と離隔した離隔位置と、離隔位置よりも下方に位置しておりローラ82が円環部73の内周縁に接触する接触位置と、を取り得る。ローラ82が円環部73の内周縁に接触している状態で円環部73が回転されたとき、円環部73の内周縁に形成された複数の溝73bのうちの1つがローラ82と接触する位置に到達すると、第2部分81bが自重により所定方向にスライドしてローラ82が溝73bに嵌まる。
【0074】
上述の構成により、作業者が円環部73を回転させることで、円環部73の内周縁に形成された複数の溝73bのうちの1つがローラ82と接触する位置に到達したときに、ローラ82が溝73bに嵌まってカートリッジが止まる。したがって、カートリッジ60を止める作業の操作性がよい。また、第2部分81bが自重により所定方向にスライドしてローラ82が溝に嵌まるので、第2部分81bが付勢部材の付勢力により所定方向にスライドするような構成に比べて部品点数を削減できる。
【0075】
さらに、上述の実施形態の作業台70では、スライダ81の第1部分81a及び第2部分81bのスライド方向は、上下方向(鉛直方向)である。したがって、第2部分81bの自重によるスライド動作を確実にすることができる。
【0076】
加えて、上述の実施形態の作業台70では、ローラ82は、第1軸L1と平行な回転軸周りに回転可能に構成されている。したがって、ローラ82が円環部73の内周縁に接触している状態で円環部73が回転されたとき、ローラ82が回転する。よって、ローラ82の摩耗を抑えることができる。
【0077】
さらに、上述の実施形態の作業台70では、本体部72は、上下方向(鉛直方向)に沿って延びる第2軸L2を中心に回転自在に構成されている。この構成では、作業台70が、本体部72に支持されたカートリッジ60に対して作業者がボビン交換作業を行う作業エリアA1と、フィラメントワインディング装置1の動作エリアA2と、を分ける仕切りの役割を果たすことができる。すなわち、作業エリアA1と動作エリアA2との境に作業台70を設置し、作業エリアA1でのカートリッジ60に対するボビン交換作業が終わった後に本体部72を回転させることで、ボビン交換作業を終えたカートリッジ60が動作エリアA2に移動する。
【0078】
また、上述の実施形態の作業台70では、円環部73及びストッパ機構80は、第1軸L1の延伸方向において本体部72の両面にそれぞれ設けられている。この構成では、本体部72の両面において、カートリッジ60の支持及び支持したカートリッジ60へのボビン交換作業をそれぞれ行うことができる。したがって、本体部72の一方の面において支持したカートリッジ60へのボビン交換作業を行っている間に、本体部72の他方の面において、ボビン交換作業を終えたカートリッジ60を作業台70から取り外す作業や、次にボビン交換作業を行うカートリッジ60を作業台70に取り付ける作業を行うことができる。よって、ボビン交換作業を効率よく行うことができる。
【0079】
さらに、上述の実施形態の作業台70では、ストッパ機構80は、スライダ81をスライドさせるレバー87を有しており、レバー87は、床面から800mm~1400mmの高さに設けられている。この構成によると、ストッパ機構80のレバー87が、床面Sに立って作業する作業者の手が届きやすい位置にあるので、ボビン交換作業の作業性をさらに高めることができる。一般的に、「作業者の手が届きやすい位置」とは、上述の適正姿勢範囲内の位置である。
【0080】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0081】
上述の実施形態においては、円環部73に設けられた突起76をカートリッジ60に形成された挿入孔62に挿入することによりカートリッジ60を支持する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、円環部73に設けられた挿入孔にカートリッジ60に形成された突起を挿入することによりカートリッジ60を支持してもよい。
【0082】
また、上述の実施形態においては、円環部73に設けられた突起76は1つであるが、これには限定されない。円環部73に複数の突起76が設けられており、且つ、カートリッジ60に複数の突起76が挿入される複数の挿入孔62が形成されていてもよい。
【0083】
さらに、上述の実施形態においては、円環部73に、5つの溝73bが円環部73の周方向に等間隔で形成されている場合について説明したが、これには限定されない。溝73bは、少なくとも2つ形成されていればよい。また、複数の溝73bは、周方向に互いに離隔していればよく、周方向に等間隔に形成されていなくてもよい。
【0084】
加えて、上述の実施形態においては、円環部73の内周縁に形成された溝73bに対して、円環部73の内周縁に近づく方向及び遠ざかる方向にスライド可能なスライダ81に設けられたローラ82(嵌込部)が嵌まる構成について説明したが、これに限定されない。すなわち例えば、嵌込部は、溝73bにより形成された開口部の開口方向(前後方向)にスライド可能なスライダに設けられていてもよい。このような場合、スライダを前後方向に沿って円環部73に近づける方向にスライドさせることで、嵌込部を溝73bに嵌め込むことができる。また、このような場合は、円環部73の内周縁に形成された溝73bに替えて孔を形成し、孔により形成された開口部に嵌込部を嵌め込む構成とすることもできる。
【0085】
さらに、上述の実施形態においては、スライダ81が、本体部72に対して上下方向(鉛直方向)に沿ってスライド可能に取り付けられた第1部分81aと、ローラ82が設けられており、且つ、第1部分81aに対して上下方向(鉛直方向)に沿ってスライド可能に取り付けられた第2部分81bと、を有している場合について説明したが、これには限定されない。
【0086】
すなわち、スライダ81は、上述のように2つの部材(第1部分81a及び第2部分81b)で構成されておらず、1つの部材で構成されるものであってもよい。ここで例えば、第1部分81aに第2部分81bが取り付けられておらず、且つ、ローラ82が第1部分81aに設けられている場合について説明する。このような場合、作業者は、円環部73を回転させ、円環部73に形成された複数の溝73bのうちの1つがローラ82を嵌め込み可能な位置に到達したときに円環部73の回転を停止させる。その後、作業者は、レバー87を操作してスライダ81(第1部分81a)を円環部73に近づける方向にスライドさせて、ローラ82を溝73bに嵌め込む。
【0087】
また、第1部分81a及び第2部分81bのスライド方向は、上下方向(鉛直方向)でなくてもよい。第1部分81a及び第2部分81bのスライド方向は、鉛直方向成分を含んでおり、第1部分81a及び第2部分81bは円環部73の内周縁に近づくほど下方に移動することが好ましい。この場合、第2部分81bが自重によりスライドしてローラ82が溝73bに嵌まる。ここで、第1部分81a及び第2部分81bが円環部73の内周縁に近づくほど上方に移動するようにスライドする場合や、第1部分81a及び第2部分81bが水平方向にスライドする場合について説明する。このような場合は、第1部分81aが接触位置に位置しローラ82が円環部73の内周縁に接触しているときに、第2部分81bを円環部73の内周縁に近づける方向に付勢する付勢部材を設けることが好ましい。このような付勢部材を設けることで、円環部73の内周縁に形成された複数の溝73bのうちの1つがローラ82と接触する位置に到達すると、第2部分81bが付勢部材の付勢力によりスライドしてローラ82が溝73bに嵌まる。
【0088】
さらに、上述の実施形態においては、ローラ82が第1軸L1と平行な回転軸周りに回転可能に構成されている場合について説明したが、これには限定されない。ローラ82に替えて、回転しない嵌込部としてもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、本体部72の左右方向の両側に、透明な素材で構成されたサイドプレート78がそれぞれ取り付けられている場合について説明したが、これには限定されない。サイドプレート78は、透明な素材で構成されていなくてもよい。また、サイドプレート78に替えて、網状のフェンスを設けてもよい。サイドプレート78は、設けられていなくてもよい。
【0090】
加えて、上述の実施形態では、本体部72は、回転用モータ79の駆動により上下方向(鉛直方向)に沿って延びる第2軸L2を中心に回転する場合について説明したが、これには限定されない。本体部72の回転動作は、手動で行われるものであってもよい。また、本体部72は、必ずしも回転自在に構成されていなくてもよい。
【0091】
さらに、上述の実施形態では、円環部73及びストッパ機構80が、第1軸L1の延伸方向において本体部72の両面にそれぞれ設けられている場合について説明したが、これには限定されない。円環部73及びストッパ機構80は、本体部72の一方の面のみに設けられていればよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、レバー87が床面から800mm~1400mmの高さに設けられている場合について説明したが、レバー87はこの範囲外の高さに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 フィラメントワインディング装置
43 ボビンホルダ
45 ボビン
60 カートリッジ
70 作業台
72 本体部
73 円環部
73b 溝(開口部)
76 突起(支持部)
80 ストッパ機構
81 スライダ
81a 第1部分
81b 第2部分
82 ローラ(嵌込部)
87 レバー
L1 第1軸
L2 第2軸
S 床面


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11