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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171606
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】乗客コンベア及び冠水防止装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20241205BHJP
   B66B 23/00 20060101ALI20241205BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B66B29/00 Z
B66B23/00 Z
B66B31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088704
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑村 秀樹
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA02
3F321AA12
3F321DA00
3F321EA00
3F321EB02
(57)【要約】
【課題】機械室に設けた電気盤が水に浸かることを抑制できる乗客コンベア及び冠水防止装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベア1は、機械室2に設置される電気盤10と、機械室2の水位を検出する水位検出装置40と、冠水防止装置100と、を備えている。冠水防止装置100は、電気盤10を上下方向に移動可能に支持し、水位検出装置40が検出した水位信号に基づいて、電気盤10を上下方向に移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物に設置され、無端状に連結された複数の踏段を備えた乗客コンベアにおいて、
前記建築構造物に設けられた機械室に設置される電気盤と、
前記機械室の水位を検出する水位検出装置と、
前記電気盤を上下方向に移動可能に支持し、前記水位検出装置が検出した水位信号に基づいて、前記電気盤を上下方向に移動させる冠水防止装置と、
を備えた乗客コンベア。
【請求項2】
複数の前記踏段は、前記建築構造物の下階床と上階床の間を走行し、
前記機械室は、前記建築構造物の前記下階床に設けた下部機械室であり、
前記電気盤は、前記下部機械室に設置される下部電気盤である
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記冠水防止装置は、
前記電気盤を支持する支持ブラケットと、
前記支持ブラケットを上下方向に移動可能に支持するブラケット駆動装置と、を有する
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記ブラケット駆動装置は、前記機械室における上下方向の上端部に設置される
請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記冠水防止装置は、
前記水位検出装置が検出した前記水位信号に基づいて、前記機械室の浸水の状態を判定する水位判定部と、
前記水位判定部が判定した判定結果に基づいて、前記ブラケット駆動装置に駆動指令を出力する動作制御部と、を有する
請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記動作制御部からの駆動指令に基づいて、前記電気盤への電力の遮断又は電力の投入を制御する電気盤電源遮断装置を備えた
請求項5に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
複数の前記踏段を駆動させる駆動機構と、
前記駆動機構の駆動を制御する乗客コンベア制御盤と、を備え、
前記水位判定部及び前記動作制御部は、前記乗客コンベア制御盤及び前記電気盤とは独立して設けられる
請求項5に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
無端状に連結された複数の踏段を備えた乗客コンベアに設置される冠水防止装置において、
建築構造物に設けられた機械室に設置される電気盤を上下方向に移動可能に支持し、
前記機械室の水位を検出する水位検出装置が検出した水位信号に基づいて、前記電気盤を上下方向に移動させる
冠水防止装置。
【請求項9】
無端状に連結された複数の踏段を備えた乗客コンベアに設置される冠水防止装置において、
建築構造物に設けられた機械室に設置される電気盤を上下方向に移動可能に支持するガイドレールと、
前記電気盤に設けられ、前記機械室の水位に応じて上下方向に移動するフロートと、
を備えた冠水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベア及び冠水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から乗客コンベアは、無端状に連結された複数の踏段が建築構造物内を循環移動している。そして、建築構造物には、電気盤を設置するための機械室が設けられる。また、機械室の浸水を検出する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、下部乗降口の下方に形成された下部ピットの浸水を検出し対応する技術が記載されている。そして、特許文献1には、下部ピットの底部に貯水升を形成するとともに、この貯水升に、浸水を検出し、浸水検出信号を出力する浸水検出手段を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-195222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、水位検出装置により機械室の浸水を検出することはできるが、機械室に設けた電気盤が水に浸かることを抑制することはできなかった。そのため、乗客コンベアを復旧させるためには、水に浸かった電気盤を交換する必要があり、復旧作業が大変煩雑なものとなっていた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、機械室に設けた電気盤が水に浸かることを抑制できる乗客コンベア及び冠水防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本目的を達成するため乗客コンベアは、建築構造物に設置され、無端状に連結された複数の踏段を備えた乗客コンベアである。乗客コンベアは、建築構造物に設けられた機械室に設置される電気盤と、機械室の水位を検出する水位検出装置と、冠水防止装置と、を備えている。冠水防止装置は、電気盤を上下方向に移動可能に支持し、水位検出装置が検出した水位信号に基づいて、電気盤を上下方向に移動させる。
【0008】
また、冠水防止装置は、無端状に連結された複数の踏段を備えた乗客コンベアに設置される冠水防止装置である。そして、冠水防止装置は、建築構造物に設けられた機械室に設置される電気盤を上下方向に移動可能に支持する。また、冠水防止装置は、機械室の水位を検出する水位検出装置が検出した水位信号に基づいて、電気盤を上下方向に移動させる。
【0009】
また、他の冠水防止装置は、無端状に連結された複数の踏段を備えた乗客コンベアに設置される冠水防止装置である。そして、冠水防止装置は、建築構造物に設けられた機械室に設置される電気盤を上下方向に移動可能に支持するガイドレールと、電気盤に設けられ、機械室の水位に応じて上下方向に移動するフロートと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の乗客コンベア及び冠水防止装置によれば、機械室に設けた電気盤が水に浸かることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態例にかかる乗客コンベアを示す概略構成図である。
図2】第1の実施の形態例にかかる乗客コンベア及び冠水防止装置の制御系を示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態例にかかる乗客コンベア及び冠水防止装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第2の実施の形態例にかかる冠水防止装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、乗客コンベア及び冠水防止装置の実施の形態例について、図1図4を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0013】
1.第1の実施の形態例
1-1.乗客コンベアの構成
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる乗客コンベアの構成について図1を参照して説明する。
図1は乗客コンベアを示す概略構成図である。
【0014】
図1に示す乗客コンベア1は、建築構造物の下階床と上階床に設置される傾斜型の乗客コンベア、いわゆるエスカレーターである。乗客コンベア1は、下部乗降床4と、複数の踏段5と、欄干6と、踏段チェーン7と、下部スプロケット8と、下部電気盤10と、冠水防止装置100と、水位検出装置40と、を備えている。下部乗降床4は、下階床3に設けた下部機械室2の上下方向の上方を覆う。
【0015】
下部電気盤10は、乗客コンベア1における下階床側に設けた各種センサや操作スイッチ等への電力の供給や信号の送受信を行う。そして、下部電気盤10は、建築構造物の上階床に設けた上部機械室に設置した乗客コンベア1全体を制御するエスカレーター制御盤(乗客コンベア制御盤)50(図2参照)と、情報を送受信可能に接続される。また、下部電気盤10と他の機器とを接続ケーブルする配線の長さは、下部電気盤10の移動量を考慮した長さに設定される。
【0016】
下部機械室2には、下部スプロケット8及び下部電気盤10、水位検出装置40、冠水防止装置100が設置されている。下部スプロケット8には、踏段チェーン7が巻き掛けられている。踏段チェーン7は、下部スプロケット8と、上階床に設置した不図示の上部スプロケットに巻き掛けられている。また、不図示の駆動機構が駆動することで、上部スプロケットが回転駆動する。上部スプロケットが回転することで、踏段チェーン7を介して下部スプロケット8が回転し、踏段チェーン7は、上部スプロケットと下部スプロケット8の間を循環移動する。なお、不図示の駆動機構は、建築構造物の上階床に設けた上部機械室に設置される。
【0017】
踏段チェーン7には、複数の踏段5が無端状に連結されている。複数の踏段5は、不図示のガイドレールに移動可能に支持されている。そして、複数の踏段5は、ガイドレールに沿って上部スプロケットと下部スプロケット8との間を循環移動し、建築構造物の下階床と上階床の間を走行する。また、複数の踏段5は、上部スプロケット及び下部スプロケット8において、その進行方向が反転する。
【0018】
複数の踏段5における進行方向と直交する幅方向の両端部には、欄干6が設置されている。欄干6の周縁部には、ハンドレールが設けられている。そして、ハンドレールは、複数の踏段5の循環移動の動作に同期して、循環移動する。
【0019】
水位検出装置40は、下部機械室2に設けた排水口M1の近傍に配置されている。そして、水位検出装置40は、下部機械室2の水位を検出する。水位検出装置40が検出した水位信号は、冠水防止装置100に出力される。
【0020】
冠水防止装置100は、ブラケット駆動装置20と、支持ブラケット21とを有している。支持ブラケット21は、略平板状に形成されている。支持ブラケット21には、下部電気盤10が固定されている。支持ブラケット21の上下方向の上端部は、下部機械室2の上下方向の上端部に配置される。
【0021】
また、支持ブラケット21の上下方向の上端部は、ブラケット駆動装置20により回動(移動)可能に支持されている。さらに、支持ブラケット21の上端部は、下部機械室2の上下方向の上端部に配置される。そのため、ブラケット駆動装置20は、下部機械室2の上端部に設置される。そして、ブラケット駆動装置20が駆動すると、支持ブラケット21は、下部電気盤10を支持した状態で、ブラケット駆動装置20を中心に上下方向の上方に向けて回動する。これにより、下部電気盤10は、冠水防止装置100の支持ブラケット21により下部機械室2の上下方向の上方である退避位置に退避される。
【0022】
なお、本例では、ブラケット駆動装置20として、支持ブラケット21を回動させる例を説明したが、これに限定されるものではない。ブラケット駆動装置20として、上下方向に延在するガイドレールに沿って支持ブラケット21を上下方向に移動させてもよく、その他各種の移動機構が適用されるものである。
【0023】
1-2.制御系の構成
次に、上述した構成を有する乗客コンベア1及び冠水防止装置100の制御系の構成について図2を参照して説明する。
図2は、乗客コンベア1及び冠水防止装置100の制御系の構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、冠水防止装置100は、水位判定部101と、動作制御部102と、信号出力部103とを有している。水位判定部101は、動作制御部102及び信号出力部103、水位検出装置40に接続されている。また、水位検出装置40の接点箇所や、水位検出装置40と水位判定部101との接続するケーブルは、防水加工が施されている。
【0025】
水位判定部101は、水位検出装置40が検出した水位信号を受信する。水位判定部101は、受信した水位信号に基づいて、下部機械室2の浸水状態を判定する。水位判定部101が判定する浸水状態としては、例えば、浸水/復旧判定と、水位上昇/下降/冠水判定等である。水位判定部101は、判定結果を動作制御部102と、信号出力部103に出力する。具体的には、水位判定部101は、浸水/復旧判定と、水位上昇/下降/冠水判定の判定結果を信号出力部103に出力する。そして、水位判定部101は、水位上昇/下降/冠水判定の判定結果を動作制御部102に出力する。
【0026】
また、乗客コンベア1は、乗客コンベア1全体を制御するエスカレーター制御盤50と、下部電気盤電源遮断装置25とを有している。エスカレーター制御盤50は、信号発報部51と、駆動機構の駆動を制御する運転制御部52とを有している。エスカレーター制御盤50は、下部電気盤10が設置される下部機械室2よりも上下方向の上方に配置される。例えば、エスカレーター制御盤50は、建築構造物の上階床に設けた上部機械室に設置される。
【0027】
動作制御部102は、ブラケット駆動装置20と、下部電気盤電源遮断装置25に接続されている。そして、動作制御部102は、水位判定部101の判定結果に基づいて、各種駆動指令をブラケット駆動装置20や下部電気盤電源遮断装置25に出力し、ブラケット駆動装置20や下部電気盤電源遮断装置25の駆動を制御する。具体的には、動作制御部102は、ブラケット駆動装置20に上昇/下降指令を出力する。ブラケット駆動装置20は、動作制御部102から出力された上昇/下降指令に基づいて、駆動し、支持ブラケット21(図1参照)を上昇又は下降させる。
【0028】
また、動作制御部102は、下部電気盤電源遮断装置25に遮断/復旧指令を出力する。下部電気盤電源遮断装置25は、下部電気盤10(図1参照)に接続されている。そして、下部電気盤電源遮断装置25は、動作制御部102から出力された遮断/復旧指令に基づいて、下部電気盤10への電力の遮断又は電力の復旧(投入)を行う。
【0029】
信号出力部103は、信号発報部51と、運転制御部52に接続されている。信号出力部103は、水位判定部101の判定結果に基づいて、下部機械室2の状態を示す状態信号を信号発報部51に出力する。また、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200などに接続されている。そして、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に、浸水/電気盤退避/冠水/復旧信号等を発報する。
【0030】
また、信号出力部103は、水位判定部101の判定結果に基づいて、駆動機構の動作を示す停止・再起動不可/解除信号を運転制御部52に出力する。そして、運転制御部52は、信号出力部103から出力された停止・再起動不可/解除信号に基づいて、駆動機構の動作を制御する。
【0031】
このように、冠水防止装置100を制御する制御部を、乗客コンベア1全体を制御するエスカレーター制御盤(乗客コンベア制御部)50や下部電気盤10とは独立して設けている。その結果、乗客コンベア1の電源が遮断した場合でも、冠水防止装置100の水位判定部(制御部)101により、浸水/復旧判定や水位上昇/下降/冠水判定を行うことができる。なお、冠水防止装置100の制御系を、エスカレーター制御盤(乗客コンベア制御部)50に設けてもよい。この場合、冠水防止装置100の制御系は、下部電気盤10とは異なる上部制御盤等の制御盤に設けることが好ましい。
【0032】
上記の各構成要素、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路の設計などによりハードウエアで実現してもよい。また、上記の各構成要素、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0033】
1-3.動作例
次に、上述した構成を有する乗客コンベア1及び冠水防止装置100の動作例について図3を参照して説明する。
図3は、乗客コンベア及び冠水防止装置の動作を示すフローチャートである。
【0034】
まず、図3に示すように、エスカレーター制御盤50の運転制御部52により駆動機構を駆動させて乗客コンベア(エスカレーター)1を運転させる(ステップS11)。次に、水位判定部101は、水位検出装置40からの水位信号を受信し、下部機械室2の浸水を検出したか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12の処理において、浸水を検出しなかった場合(ステップS12のNO判定)、ステップS12における浸水検出処理を継続して実施する。
【0035】
また、ステップS12の処理において、下部機械室2への浸水を検出したと判断した場合(ステップS12のYES判定)、運転制御部52は、乗客コンベア(エスカレーター)1を停止し、再起動不可とする。また、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に浸水による乗客コンベア1の停止を発報する(ステップS13)。
【0036】
ステップS13の処理では、まず、水位判定部101が水位検出装置40からの水位信号に基づいて、浸水判定を行い、判定結果を信号出力部103に出力する。そして、信号出力部103は、状態信号として信号発報部51に下部機械室2が浸水したことを出力する。これにより、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に浸水による乗客コンベア1の停止を発報する。
【0037】
さらに、信号出力部103は、運転制御部52に駆動機構の停止・再起動不可信号を出力する。この信号に基づいて、運転制御部52は、乗客コンベア(エスカレーター)1を停止し、再起動不可とする。
【0038】
次に、水位判定部101は、水位検出装置40からの水位信号を受信し、下部機械室2の水位が復旧位置まで下がったか否かを判断する(ステップS14)。ステップS14の処理において、下部機械室2の水位が復旧位置まで下がったと判断した場合(ステップS14のYES判定)、運転制御部52は、乗客コンベア1を再起動可とし、駆動機構を制御する。また、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に乗客コンベア1の復旧を発報する(ステップS15)。
【0039】
ステップS15の処理では、まず、水位判定部101が水位検出装置40からの水位信号に基づいて、復旧判定を行い、判定結果を信号出力部103に出力する。そして、信号出力部103は、状態信号として信号発報部51に下部機械室2の水位が復旧位置まで下がったことを出力する。これにより、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に乗客コンベア1の復旧を発報する。さらに、信号出力部103は、運転制御部52に駆動機構の解除信号を出力する。この信号に基づいて、運転制御部52は、乗客コンベア(エスカレーター)1を再起動する。
【0040】
また、ステップS14の処理において、下部機械室2の水位が復旧位置まで下がっていないと判断した場合(ステップS14のNO判定)、水位判定部101は、水位信号に基づいて、水位がさらに上昇したか否かを判断する(ステップS16)。ステップS16の処理において、水位が上昇していないと判断した場合(ステップS16のNO判定)、ステップS14の処理に戻る。
【0041】
これに対して、ステップS16の処理において、水位が上昇したと判断した場合(ステップS16のYES判定)、ステップS17の処理に移行する。ステップS17の処理では、水位判定部101は、判定結果として水位上昇判定を動作制御部102及び信号出力部103に出力する。そして、動作制御部102は、遮断指令を下部電気盤電源遮断装置25に出力すると共に、上昇指令をブラケット駆動装置20に出力する。
【0042】
次に、下部電気盤電源遮断装置25は、下部電気盤10への電力(電源)供給を遮断する。その結果、下部電気盤10が浸水により漏電することを防止することができる。また、ブラケット駆動装置20は、支持ブラケット21を上下方向の上方に向けて移動(回動)させる。これにより、支持ブラケット21に固定した下部電気盤10が水に浸かることを防止できる。その結果、水位が下がった際に、下部電気盤10を再利用することができ、乗客コンベア1の復旧作業を容易に行うことができる。
【0043】
また、ブラケット駆動装置20は、下部機械室2の上方における水に浸かりにくい場所に配置されている。下部機械室2が浸水した場合でも、確実にブラケット駆動装置20を駆動させることができ、下部電気盤10を退避させることができる。
【0044】
また、信号出力部103は、状態信号として信号発報部51に下部電気盤10の退避動作を行ったことを出力する。そして、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に下部電気盤10の退避動作を発報する。これにより、作業員は、外部の監視盤や保守センター200を通じて、下部電気盤10の状態を知ることができる。
【0045】
次に、水位判定部101は、水位信号に基づいて、水位が下降したか否かを判断する(ステップS18)。ステップS18の処理において、水位が下降していないと判断した場合(ステップS18のNO判定)、水位判定部101は、水位信号に基づいて、下部電気盤10が冠水したか否かを判断する(ステップS19)。また、ステップS18の処理において、水位が下降したと判断した場合(ステップS18のYES判定)、ステップS20の処理に移行する。ステップS20の処理については、後述する。
【0046】
また、ステップS19の処理において、下部電気盤10が冠水していないと判断した場合(ステップS19のNO判定)、ステップS18の処理に戻る。これに対して、ステップS19の処理において、下部電気盤10が冠水したと判断した場合(ステップS19のYES判定)、水位判定部101は、冠水判定を信号出力部103に出力する。そして、信号出力部103は、状態信号として下部電気盤10が冠水したことを信号発報部51に出力する。信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に下部電気盤10の冠水を発報する(ステップS21)。
【0047】
次に、水位判定部101は、水位信号に基づいて、下部電気盤10の冠水が解除されたか否かを判断する(ステップS22)。ステップS22の処理において、下部電気盤10の冠水が解除されていないと判断した場合(ステップS22のNO判定)、ステップS22の処理を継続して実施する。
【0048】
また、ステップS22の処理において、下部電気盤10の冠水が解除されたと判断した場合(ステップS22のYES判定)、水位判定部101は、解除判定を信号出力部103に出力する。そして、信号出力部103は、状態信号として下部電気盤10の冠水が解除したことを信号発報部51に出力する。信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に下部電気盤10の冠水解除を発報する(ステップS23)。ステップS23の処理が終了すると、ステップS18の処理に移行する。
【0049】
また、ステップS20の処理では、水位判定部101は、判定結果として水位下降判定を動作制御部102及び信号出力部103に出力する。そして、動作制御部102は、復旧指令を下部電気盤電源遮断装置25に出力すると共に、下降指令をブラケット駆動装置20に出力する。
【0050】
次に、下部電気盤電源遮断装置25は、電力(電源)供給を復旧させて、下部電気盤10に電力と投入する。また、ブラケット駆動装置20は、支持ブラケット21を上下方向の下方に向けて移動(回動)させて、支持ブラケット21に固定した下部電気盤10を初期位置に戻す。その結果、乗客コンベア1を再起動する際の復旧作業を容易に行うことができる。
【0051】
また、信号出力部103は、状態信号として信号発報部51に下部電気盤10の戻し動作を行ったことを出力する。そして、信号発報部51は、外部の監視盤や保守センター200に下部電気盤10の戻し動作を発報する。ステップS20の処理が終了すると、ステップS14の処理に移行する。
【0052】
上述した動作を行うことで、本例の乗客コンベア1及び冠水防止装置100の動作が完了する。
【0053】
2.第2の実施の形態例
次に、図4を参照して第2の実施の形態例にかかる冠水防止装置について説明する。
図4は、第2の実施の形態例にかかる冠水防止装置を示す概略構成図である。なお、第1の実施の形態例にかかる乗客コンベア1及び冠水防止装置100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、冠水防止装置100Bは、下部電気盤10を上下方向に沿って移動可能に支持する2つのガイドレール31、31と、フロート30とを有している。フロート30は、下部電気盤10の上下方向の下端部に設置されている。フロート30は、例えば、中空の部材により形成されており、水面W1に対して浮上可能に構成されている。そして、フロート30自体の浮力により、フロート30は、水面W1の高さに応じて上下方向に自動的に移動する。そして、フロート30の上下方向に移動に伴って、下部電気盤10がガイドレール31、31に沿って移動する。その結果、下部機械室2が浸水しても、下部電気盤10が水に浸かることを防止できる。
【0055】
また、第2の実施の形態例にかかる冠水防止装置100Bによれば、水位検出装置40を設けることなく、フロート30の浮力により下部電気盤10を自動的に移動させることができる。なお、第2の実施の形態例にかかる冠水防止装置100Bにおいても、第1の実施の形態例にかかる冠水防止装置100と同様に、水位検出装置40を設けて、下部機械室2の浸水状態を検出し、外部の監視盤や保守センター200に乗客コンベア1の状態を発報してもよい。
【0056】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる冠水防止装置100と同様であるため、それらの説明は省略する、このような構成を有する第2の実施の形態例にかかる冠水防止装置100Bにおいても、上述した第1の実施の形態例にかかる冠水防止装置100と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0058】
上述した実施の形態例では、冠水防止装置を予め備えた乗客コンベアについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、冠水防止装置を備えていない既設の乗客コンベアに対して、保守点検時やリニューアル作業時に、上述した構成を有する冠水防止装置を新たに設置してもよい。なお、さらに、冠水防止装置100の制御系をエスカレーター制御盤(乗客コンベア制御部)50とは独立して設けることで、リニューアル作業時に冠水防止装置100を設置する作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、上述した実施の形態例では、冠水防止装置100及び水位検出装置40を下部機械室2に設置する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、建築構造物の上階床に設けた上部機械室に、冠水防止装置及び水位検出装置を設置し、冠水防止装置により上部機械室に設置される上部電気盤を上下方向に移動可能に支持してもよい。
【0060】
上述した実施の形態例では、傾斜型の乗客コンベアとして、踏段間に段差が生じるエスカレーターを例に挙げて説明したが、本発明の乗客コンベアとしては、踏段間に段差が生じない複数の踏段を有する電動道路、いわゆる動く歩道にも適用できるものである。
【0061】
また、傾斜区間の少なくとも一部に、上水平区間及び下水平区間に対して平行な箇所を設けたフレームを有する乗客コンベアにも適用できるものである。さらに、傾斜区間の延設方向が湾曲して変化することで、上水平区間と下水平区間の延設方向が異なるフレームを有する乗客コンベアに対しても同様に適用できるものである。
【0062】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…乗客コンベア、 2…下部機械室、 3…下階床、 4…下部乗降床、 5…踏段、 6…欄干、 7…踏段チェーン、 8…下部スプロケット、 10…下部電気盤、 20…ブラケット駆動装置、 21…支持ブラケット、 25…下部電気盤電源遮断装置、 30…フロート、 31…ガイドレール、 40…水位検出装置、 50…エスカレーター制御盤(乗客コンベア制御部)、 51…信号発報部、 52…運転制御部、 100、100B…冠水防止装置、 101…水位判定部、 102…動作制御部、 103…信号出力部、 200…保守センター、 M1…排水口、 W1…水面
図1
図2
図3
図4