(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171608
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】触媒暖機システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20241205BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20241205BHJP
F02D 17/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/22 301F
F01N3/22 311Z
F02D17/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088706
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】朝長 菜月
【テーマコード(参考)】
3G091
3G092
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA14
3G091AB03
3G091BA03
3G091CA03
3G091CA13
3G091DB10
3G091EA17
3G091EA18
3G091EA30
3G091EA32
3G091FA02
3G091FA06
3G091FC07
3G091HA36
3G091HA37
3G091HB03
3G092BB01
3G092BB10
3G092CA01
3G092CB05
3G092FA15
3G092FA20
3G092GA02
3G092HE01Z
3G092HE06Z
(57)【要約】
【課題】触媒を早期に暖機することを目的とする。
【解決手段】本発明の触媒暖機システム10は、エンジン20に連結される排気通路41と、排気通路41に配置されるヒータ42と、排気通路41のうちヒータ42よりも下流に配置される触媒43と、排気通路41のうち触媒43よりも下流に配置され、排気通路41を遮断可能な第1のバルブ46と、排気通路41のうち、触媒43と第1のバルブ46の間の空間と、ヒータ42よりも上流の空間とを連通させるバイパス通路44と、を備える。第1のバルブ46により排気通路41を遮断することにより、ヒータ42によって暖められた気体が、触媒43を昇温させた後にバイパス通路44を通ってヒータ42の上流に流出され、排気通路41に再循環されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに連結される排気通路と、
前記排気通路に配置されるヒータと、
前記排気通路のうち前記ヒータよりも下流に配置される触媒と、
前記排気通路のうち前記触媒よりも下流に配置され、前記排気通路を遮断可能な第1のバルブと、
前記排気通路のうち、前記触媒と前記第1のバルブの間の空間と、前記ヒータよりも上流の空間とを連通させるバイパス通路と、を備える触媒暖機システムであって、
前記第1のバルブにより前記排気通路を遮断することにより、前記ヒータによって暖められた気体が、前記触媒を昇温させた後に前記バイパス通路を通って前記ヒータの上流に流出され、前記排気通路に再循環されることを特徴とする触媒暖機システム。
【請求項2】
前記エンジンを動作させるモータを備え、
前記モータは、前記第1のバルブにより前記排気通路を遮断している状態で燃料を噴射させないまま前記エンジンを動作させることにより前記排気通路に新気を送り込むことを特徴とする請求項1に記載の触媒暖機システム。
【請求項3】
前記バイパス通路に配置され、前記バイパス通路と前記排気通路との間の気体の流出入を制御する第2のバルブを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒暖機システム。
【請求項4】
前記第2のバルブは、
前記バイパス通路の圧力と、前記排気通路であって前記ヒータの上流の圧力との相対圧に応じて、前記バイパス通路から前記排気通路への気体の流出を制御することを特徴とする請求項3に記載の触媒暖機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒暖機システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備えた車両は、エンジンから排出された排気ガスを浄化するための触媒(触媒コンバータ)を備えている。触媒は、排気ガスに含まれている有毒成分を酸化、還元することにより浄化する。触媒により酸化、還元を促進させるには早期に触媒を暖機して活性化温度にすることが求められる。
【0003】
特許文献1には、排気マニホールドから流出した排気をタービンよりも下流にバイパスするバイパス通路が設けられており、バイパス通路に三元触媒およびEH(Electric Heater)が配置される排気処理システムが開示されている。この排気処理システムでは、エンジンを始動させる前に、EHを作動させるとともに、燃料噴射を禁止した状態でモータリングを実行する。したがって、エンジンから排出された排気は、EHで昇温されることで三元触媒を暖機することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の排気処理システムではEHで昇温され、三元触媒を暖機した排気は、そのまま外部に排出しているために、三元触媒を暖機する効率が低下してしまい、三元触媒を早期に暖機することができないという問題があった。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、触媒を早期に暖機することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンに連結される排気通路と、前記排気通路に配置されるヒータと、前記排気通路のうち前記ヒータよりも下流に配置される触媒と、前記排気通路のうち前記触媒よりも下流に配置され、前記排気通路を遮断可能な第1のバルブと、前記排気通路のうち、前記触媒と前記第1のバルブの間の空間と、前記ヒータよりも上流の空間とを連通させるバイパス通路と、を備える触媒暖機システムであって、前記第1のバルブにより前記排気通路を遮断することにより、前記ヒータによって暖められた気体が、前記触媒を昇温させた後に前記バイパス通路を通って前記ヒータの上流に流出され、前記排気通路に再循環されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、触媒を早期に暖機することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施例の触媒暖機システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施例の触媒暖機システムによる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施例の触媒暖機システムの動作の一例を説明するための図である。
【
図4】第1実施例の触媒暖機システムの動作の一例を説明するための図である。
【
図5】第2実施例の触媒暖機システムの構成の一例を示す図である。
【
図6】第2実施例の触媒暖機システムによる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態は、エンジン20に連結される排気通路41と、排気通路41に配置されるヒータ42と、排気通路41のうちヒータ42よりも下流に配置される触媒43と、排気通路41のうち触媒43よりも下流に配置され、排気通路41を遮断可能な第1のバルブ46と、排気通路41のうち、触媒43と第1のバルブ46の間の空間と、ヒータ42よりも上流の空間とを連通させるバイパス通路44と、を備える触媒暖機システム10である。触媒暖機システム10では、第1のバルブ46により排気通路41を遮断することにより、ヒータ42によって暖められた気体が、触媒43を昇温させた後にバイパス通路44を通ってヒータ42の上流に流出され、排気通路41に再循環される。一度、触媒43を昇温させた気体は、排気通路41に再循環されることから、再びヒータ42によって暖められ、触媒43を昇温するために再利用されることから、触媒43を早期に暖機することができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
(第1実施例)
図1は、第1実施例に係る触媒暖機システム10を備えた車両の概略構成を示す図である。なお、
図1は、説明の便宜上、本実施例を説明するために簡略化したものであり、車両が通常備える構成については図示されていなくても備えているものとする。
実施例に係る車両は、触媒暖機システム10を備える。触媒暖機システム10は、早期に触媒を暖機することにより、エンジンの始動直後から排気ガスを浄化できるシステムである。
【0011】
触媒暖機システム10は、内燃機関としてのエンジン20、モータ30、排気浄化装置40、制御装置60等を備える。
エンジン20は、車両を駆動させるための動力源である。エンジン20は、燃料を燃焼させることで動力を発生させる。エンジン20は、燃料を燃焼させることにより発生した排気ガスを排気浄化装置40側に排出する。
【0012】
モータ30は、駆動していないエンジン20を動作させる。具体的には、モータ30は、通電されることで、エンジン20のクランクシャフトを強性的に回転させてエンジン20を動作させる。エンジン20は、クランクシャフトの回転に応じて、機械的にピストンが往復運動するとともに吸気バルブや排気バルブが開閉する。このとき、燃料を噴射させずに、モータ30がエンジン20を動作させるとエンジン20の各部品の駆動によって、吸気管から取り込んだ気体(新気)を、燃焼させずにエンジン20を経由してそのまま排気浄化装置40に送り込むことができる。モータ30は、制御装置60によって制御される。
なお、モータ30は、エンジン20を始動するときに用いるセルモータであってもよく、ハイブリッド車両等に搭載されるエンジン20をアシストするためのモータ等であってもよい。
【0013】
排気浄化装置40は、エンジン20からの排気ガスを浄化して外部に排出する。排気浄化装置40は、排気通路41と、ヒータ42と、触媒43と、バイパス通路44と、第1のバルブ46と、第2のバルブ47と、第1の圧力センサ48と、第2の圧力センサ49と、温度センサ50とを有する。
【0014】
排気通路41は、エンジン20に連結されている通路である。具体的に、排気通路41は、エンジン20で燃焼された排気ガスを外部に排出するために流したり、吸気管から取り込まれた気体を燃焼させずにエンジン20を経由してそのまま流したりする。排気通路41は、例えば排気管から構成される。また、排気通路41は、後述するバイパス通路44の流入口45aよりも下流側に延びる下流側排気通路部41aを有する。下流側排気通路部41aは、例えばテールパイプから構成される。
【0015】
ヒータ42は、排気通路41のうち触媒43よりも上流に配置される。ヒータ42は、通電されることで発熱する。ヒータ42は、発熱することにより暖めた周辺の気体を介して触媒43を加熱する。ヒータ42は、制御装置60によって制御される。
触媒43は、排気通路41のうちヒータ42よりも下流に配置される。触媒43は、排気ガスに含まれている有毒成分を酸化、還元することにより浄化する。触媒43は、例えば三元触媒が用いられる。
【0016】
バイパス通路44は、排気通路41のうち触媒43と第1のバルブ46の間の空間と、ヒータ42よりも上流の空間とを連通させる通路である。バイパス通路44は、排気通路41のうち触媒43の下流を流れる気体を、排気通路41のうちヒータ42の上流に戻すように再循環させる。したがって、触媒43と第1のバルブ46の間の空間に隣接するバイパス通路44の開口が、排気通路41からバイパス通路44に気体が流入する流入口45aである。一方、ヒータ42よりも上流の空間に隣接するバイパス通路44の開口が、バイパス通路44から排気通路41に気体が流出する流出口45bである。バイパス通路44は、例えば気体を流すことが可能な配管から構成される。
【0017】
第1のバルブ46は、排気通路41のうち、触媒43よりも下流、更にはバイパス通路44の流入口45aよりも下流に配置される。第1のバルブ46は、開閉することで気体の流れを切替え可能である。ここでは、第1のバルブ46は、排気通路41から外部への気体の排出を制御可能である。
具体的に、第1のバルブ46は、開くことで気体を触媒43から外部に排出させ、閉じることで気体を触媒43から外部に排出させずに流入口45aからバイパス通路44に流入させる。すなわち、エンジン20で燃焼された排気ガスを外部に排出する場合には第1のバルブ46を開く。一方、吸気管から取り込まれた気体を、ヒータ42で暖めて触媒43を昇温させた後に、外部に排出させずにバイパス通路44に流入させる場合には第1のバルブ46を閉じる。したがって、第1のバルブ46を閉じることで、排気通路41が遮断可能である。
なお、
図1に示す第1のバルブ46は開いた状態である。第1のバルブ46は、例えばバタフライバルブが用いられるが、その他の形式のバルブであってもよい。第1のバルブ46は、制御装置60からの指示によって開閉を任意に制御する。
【0018】
第2のバルブ47は、バイパス通路44の流出口45bに配置される。第2のバルブ47は、開閉することで気体の流れを切替え可能である。第2のバルブ47は、バイパス通路44と排気通路41との間の気体の流出入を制御する。
具体的に、第2のバルブ47は、開くことで気体をバイパス通路44から排気通路41に流出させる。一方、第2のバルブ47は、閉じることで気体をバイパス通路44から排気通路41に流出させない、あるいは排気通路41からバイパス通路44に逆流させないようにすることができる。
なお、
図1に示す第2のバルブ47は閉じた状態である。第2のバルブ47は、例えばバタフライバルブが用いられるが、その他の形式のバルブであってもよい。第2のバルブ47は、バイパス通路44の圧力と、排気通路41であってヒータ42の上流の圧力との相対圧に基づいた制御装置60からの指示によって、バイパス通路44から排気通路41への気体の流出を制御する。
【0019】
第1の圧力センサ48は、排気通路41に配置される。具体的に、第1の圧力センサ48は、排気通路41のうちヒータ42の上流に配置される。第1の圧力センサ48は、ヒータ42の上流の空間の気体の圧力を測定する。制御装置60は、第1の圧力センサ48により測定された圧力の情報を受信する。
第2の圧力センサ49は、バイパス通路44に配置される。具体的に、第2の圧力センサ49は、バイパス通路44のうち流出口45b付近に配置される。第2の圧力センサ49は、バイパス通路44のうち流出口45b付近の気体の圧力を測定する。制御装置60は、第2の圧力センサ49により測定された圧力の情報を受信する。
温度センサ50は、排気通路41の触媒43付近に配置される。温度センサ50は、触媒43の温度あるいは触媒43付近の温度を測定する。制御装置60は、温度センサ50により測定された温度の情報を受信する。
【0020】
制御装置60は、エンジン20、モータ30、排気浄化装置40を制御する。制御装置60は、車両を制御する制御装置を兼ねていてもよく、車両を制御する制御装置と異なる装置であってもよい。また、制御装置60は、例えば、一つのECU(Electronic Control Unit)で構成したり、複数のECUが協働して構成したりしてもよい。
制御装置60は、第1の圧力センサ48、第2の圧力センサ49、温度センサ50により測定された情報に基づいて、モータ30、ヒータ42、第1のバルブ46、第2のバルブ47を制御する。
【0021】
図2は、本実施例に係る触媒暖機システム10の制御装置60が実行する処理を示すフローチャートである。
図2のフローチャートは、例えば、制御装置60のECUに含まれるCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、
図2のフローチャートは、エンジン20を駆動させていない場合であって、触媒43が活性化温度となっていない場合に実行される。ここで、エンジン20を駆動させていない場合とは、エンジン20の始動前の状態や、ハイブリッド車両等においてエンジン20の駆動を一時的に停止させてモータ30のみを駆動させている状態が含まれる。
【0022】
S10では、制御装置60は、燃料を噴射せずにモータ30に通電して作動させることにより、駆動していないエンジン20を動作させる。したがって、吸気管から取り込んだ気体(新気)が、燃焼せずにエンジン20を経由してそのまま排気浄化装置40の排気通路41に沿って流れる。また、制御装置60は、第1のバルブ46を閉めるとともにヒータ42を発熱させる。したがって、排気通路41に流れた気体は、ヒータ42によって暖められ、対流熱伝達によって触媒43を昇温させることができる。また、第1のバルブ46が閉じていることにより、触媒43を昇温させた気体は、外部に排出されずにバイパス通路44の流入口45aを通ってバイパス通路44に流入する。また、制御装置60は、カウンタT(継続時間)を0にリセットして、カウントを開始する。
【0023】
S11では、制御装置60は、バイパス通路44の圧力(流出口45bの圧力)が排気通路41の圧力よりも大きいか否かを判定する。具体的に、制御装置60は、第2の圧力センサ49により測定される圧力P2と、第1の圧力センサ48により測定される圧力P1とを比較して、バイパス通路44の流出口45bの圧力P2が排気通路41の圧力P1よりも大きい(P2>P1)か否かを判定する。バイパス通路44の流出口45bの圧力が排気通路41の圧力よりも大きい場合にはS12に進む。
【0024】
S12では、制御装置60は、第2のバルブ47を開く。このように、バイパス通路44の流出口45bの圧力が排気通路41の圧力よりも大きい場合に第2のバルブ47を開くことにより、バイパス通路44の気体をバイパス通路44の流出口45bから排気通路41に流出させることができる。
図3は、S12の処理を実行した後の触媒暖機システム10の状態を示す図である。
図3では、気体の流れを矢印A1で示している。
図3に示すように、触媒43を昇温させた気体は、外部に排出されずにバイパス通路44の流入口45aを通ってバイパス通路44に流入して、バイパス通路44の流出口45bを通って排気通路41に流出される。したがって、一度、触媒43を昇温させた気体は、排気通路41に再循環されることから、再びヒータ42によって暖められ、触媒43を昇温するために再利用されることから、触媒43を早期に暖機することができる。
【0025】
図2のフローチャートに戻り、S11においてバイパス通路44の流出口45bの圧力が排気通路41の圧力よりも大きくない場合にはS13に進む。
S13では、制御装置60は、第2のバルブ47を閉じる。このように、バイパス通路44の流出口45bの圧力が排気通路41の圧力よりも大きくない場合に第2のバルブ47を閉じることにより、排気通路41の気体が流出口45bからバイパス通路44に逆流しないようにすることができる。
【0026】
S14では、制御装置60は、触媒43が活性化温度になったか否かを判定する。具体的に、制御装置60は、温度センサ50により測定された温度に基づいて触媒43が活性化温度になったか否かを判定する。活性化温度になっていない場合にはS15に進む。
S15では、制御装置60は、バイパス通路44の圧力(流出口45bの圧力)および排気通路41の圧力が所定の条件であるか否かを判定する。具体的に、制御装置60は、第2の圧力センサ49により測定される圧力P2と、第1の圧力センサ48により測定される圧力P1とを取得して、バイパス通路44の流出口45bの圧力P2から排気通路41の圧力P1を減算した値が閾値(圧力Pth1)よりも小さく(P2-P1<Pth1)、かつバイパス通路44の流出口45bの圧力P2が閾値(圧力Pth2)よりも大きい(P2>Pth2)か否かを判定する。
【0027】
ここで、バイパス通路44の流出口45bの圧力P2から排気通路41の圧力P1を減算した値と、閾値(圧力Pth1)とを比較するのは、バイパス通路44の流出口45bから排気通路41に気体を流出させることができるか否かを判定するためである。すなわち、バイパス通路44の流出口45bの圧力P2が排気通路41の圧力P1よりもある程度大きいことにより、バイパス通路44から排気通路41に気体が流出されると推定できる。一方、バイパス通路44の流出口45bの圧力P2と排気通路41の圧力P1との差圧が小さい場合には、バイパス通路44から排気通路41に気体を流出できないために再循環が行われずに滞留していると推定できる。
また、バイパス通路44の圧力P2と、閾値(圧力Pth2)とを比較するのは、吸気管から取り込んだ気体でバイパス通路44(あるいは排気通路41)が満されているか否かを判定するためである。すなわち、バイパス通路44の圧力P2が小さいことで吸気管から気体を取り込むことができると推定できる。一方、バイパス通路44の圧力P2が大きいと吸気管から気体を取り込むことができないために再循環が行われずに気体が滞留していると推定できる。
【0028】
所定の条件を満たさない場合にはS16に進み、所定の条件を満たす場合にはS17に進む。
S16では、制御装置60は、カウンタT(継続時間)を0にリセットした上で、カウントを開始してS11に戻る。
【0029】
S17では、制御装置60は、カウンタT(継続時間)が所定の期間(Tth)よりも長いか否かを判定する。このように判定するのは、S15の所定の条件が満たす状態、すなわち再循環が行われずに気体が滞留している状態が、どの程度継続しているかを判定するためである。カウンタTが所定の期間(Tth)よりも長い場合にはS18に進み、カウンタTが所定の期間(Tth)よりも長くない場合にはS11に戻る。
【0030】
S18では、制御装置60は、第1のバルブ46を開き、第2のバルブ47を閉じる。第1のバルブ46を開くことにより、排気通路41に滞留している気体が、吸気管から取り込んだ気体によって押し出され、排気通路41から外部に排出される。このとき、排気通路41に滞留している気体はヒータ42によって暖められていることから、排気通路41内を通って外部に排出されるときに、対流熱伝達によって触媒43を昇温させながら排出される。
【0031】
図4は、S18の処理により、第1のバルブ46を開いたときの触媒暖機システム10の状態を示す図である。
図4は、気体の流れを矢印A2で示している。
図4に示すように、ヒータ42により暖められた気体が滞留している場合であっても、第1のバルブ46を開くことにより触媒43を昇温させながら、排気通路41内を通って外部に排出される。また、第2のバルブ47を閉じることにより、触媒43に熱を伝えるはずの気体がヒータ42および触媒43を通らずに、バイパス通路44を経由して外部に排出されることを防止することができる。
また、制御装置60は、第1のバルブ46を開いてから一定時間が経過することにより第1のバルブ46を閉じた上でS11に戻り、触媒43が活性化温度になるまでS11からS18までの処理を続ける。なお、S18では第2のバルブ47を閉じる場合について説明したが、第2のバルブ47を開いてもよい。
【0032】
図2のフローチャートに戻り、S14において触媒43が活性化温度になった場合にはS19に進む。
S19では、制御装置60は、モータ30の作動を停止することにより、エンジン20の動作を停止させる。したがって、吸気管から気体が取り込まれなくなる。また、制御装置60は、第1のバルブ46を開くとともに、第2のバルブ47を閉じる。更に、制御装置60は、ヒータ42の発熱を停止させる。
ここでは、触媒43が既に活性化温度になっているためにエンジン20を始動した場合であっても、エンジン20の始動直後から触媒43によって排気ガスを浄化することができる。また、第1のバルブ46が開いていることから浄化した排気ガスを排気通路41から外部に排出することができる。更に、第2のバルブ47が閉じていることから、排気ガスが、触媒43を通らずにバイパス通路44を経由して外部に排出されることを防止することができる。
S19の処理が終了することにより、
図2のフローチャートの処理を終了する。
【0033】
以上のように、本実施例によれば、触媒暖機システム10は、排気通路41のうち触媒43よりも下流に配置され、排気通路41を遮断可能な第1のバルブ46と、排気通路41のうち、触媒43と第1のバルブ46の間の空間と、ヒータ42よりも上流の空間とを連通させるバイパス通路44と、を備える。第1のバルブ46により排気通路41を遮断することにより、ヒータ42によって暖められた気体が、触媒43を昇温させた後にバイパス通路44を通ってヒータ42の上流に流出され、排気通路41に再循環される。したがって、一度、触媒43を昇温させた気体は、排気通路41に再循環されることから、再びヒータ42によって暖められ、触媒43を昇温するために再利用されることから、触媒43を早期に暖機することができる。このように、触媒43を昇温させた気体を再循環させることにより、新たに気体を取り込むよりも早期に触媒43を暖機することができる。また、再循環させるときのモータ30の出力は、新たに気体を取り込むときのモータ30の出力よりも低減させることができる。
【0034】
また、本実施例によれば、モータ30は、第1のバルブ46により排気通路41を遮断している状態で燃料を噴射させないままエンジン20を動作させることにより排気通路41に気体を送り込む。このように、モータ30により気体を排気通路41に送り込むことにより、触媒43を昇温させた気体を排気通路41に再循環されることができる。
【0035】
また、本実施例によれば、触媒暖機システム10はバイパス通路44の流出口45bに配置され、排気通路41への気体の流出を制御する第2のバルブ47を備える。第2のバルブ47を備えることにより、触媒43に熱を伝えるはずの気体がヒータ42および触媒43を通らずに、バイパス通路44を経由して外部に排出されることを防止することができる。
【0036】
また、本実施例によれば、触媒暖機システム10はバイパス通路44の圧力と、排気通路41であってヒータ42の上流の圧力との相対圧に応じて、気体の出入りを制御する第2のバルブ47を備える。第2のバルブ47を備えることにより、触媒43に熱を伝えるはずの気体がヒータ42および触媒43を通らずに、バイパス通路44を経由して外部に排出されることを防止することができる。
【0037】
(第2実施例)
図5は、第2実施例に係る触媒暖機システム110を備えた車両の概略構成を示す図である。本実施例の触媒暖機システム110は、内燃機関としてのエンジン20、モータ30、排気浄化装置140、制御装置60等を備える。本実施例の排気浄化装置140は、第1実施例の第2のバルブ47を第2のバルブ147に置換し、第1実施例の第2の圧力センサ48を削除したものである。なお、
図1と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
第2のバルブ147は、バイパス通路44の流出口45bに配置される。第2のバルブ147は、バイパス通路44と排気通路41との間の気体の流出入を制御する。第2のバルブ147は、一方向にしか流れないチェックバルブ(逆止弁)であり、バイパス通路44から排気通路41への気体の流出を許容するが、逆に排気通路41からバイパス通路44への気体の流入を禁止する。第2のバルブ147は、自身の構造に基づき、バイパス通路44の圧力と、排気通路41であってヒータ42の上流の圧力との相対圧に応じて、バイパス通路44から排気通路41への気体の流出を制御する。具体的には、第2のバルブ147は、バイパス通路44の圧力が排気通路41の圧力よりも高い場合(あるいは所定圧力以上、高い場合)に、バイパス通路44から排気通路41への気体の流出を許容する。
【0039】
図6は、本実施例に係る触媒暖機システム110の制御装置60が実行する処理を示すフローチャートである。なお、
図6のフローチャートは、
図2のフローチャートのS11~S13を削除したものであり、
図2のフローチャートと同様の処理は適宜、説明を省略する。
【0040】
S20では、制御装置60は、燃料を噴射せずにモータ30を作動させることにより、エンジン20を動作させる。また、制御装置60は、第1のバルブ46を閉めるとともにヒータ42を発熱させ、更にカウンタT(継続時間)を0にリセットして、カウントを開始する。この処理は、S10と同様の処理である。
S20の処理によって、吸気管から取り込んだ気体(新気)が、燃焼せずにエンジン20を経由してそのまま排気浄化装置40の排気通路41に沿って流れる。排気通路41に流れた気体は、ヒータ42によって暖められ、対流熱伝達によって触媒43を昇温させることができる。また、第1のバルブ46が閉じていることにより、触媒43を昇温させた気体は、外部に排出されずにバイパス通路44の流入口45aを通ってバイパス通路44に流入する。バイパス通路44の気体の圧力が排気通路41の圧力よりも高くなる(あるいは所定圧力以上、高くなる)ことにより第2のバルブ147が開くために、バイパス通路44の気体がバイパス通路44の流出口45bから排気通路41に流出される。したがって、第1実施例と同様に、一度、触媒43を昇温させた気体は、排気通路41に再循環されることから、再びヒータ42によって暖められ、触媒43を昇温するために再利用されることから、触媒43を早期に暖機することができる。
【0041】
S24では、制御装置60は、触媒43が活性化温度になったか否かを判定する。この処理は、S14と同様の処理である。活性化温度になっていない場合にはS25に進み、活性化温度になった場合にはS29に進む。
S25では、制御装置60は、バイパス通路44の圧力(流出口45bの圧力)が所定の条件であるか否かを判定する。具体的に、制御装置60は、第2の圧力センサ49により測定される圧力P2を取得して、バイパス通路44の流出口45bの圧力P2が閾値(圧力Pth2)よりも大きい(P2>Pth2)か否かを判定する。バイパス通路44の圧力P2が大きいと吸気管から気体を取り込むことができないために再循環が行われずに気体が滞留していると推定できる。
【0042】
所定の条件を満たさない場合にはS26に進み、所定の条件を満たす場合にはS27に進む。
S26では、制御装置60は、カウンタT(継続時間)を0にリセットした上で、カウントを開始してS24に戻る。この処理は、S16と同様の処理である。
S27では、制御装置60は、カウンタT(継続時間)が所定の期間(Tth)よりも長いか否かを判定する。この処理は、S17と同様の処理である。カウンタTが所定の期間(Tth)よりも長い場合にはS28に進み、カウンタTが所定の期間(Tth)よりも長くない場合にはS24に戻る。
【0043】
S28では、制御装置60は、第1のバルブ46を開く。第1のバルブ46を開くことにより、排気通路41に滞留する気体が、吸気管から取り込んだ気体によって押し出され、排気通路41から外部に排出される。また、制御装置60は、第1のバルブ46を開いてから一定時間が経過することにより第1のバルブ46を閉じる。この処理は、S18と同様の処理である。
S29では、制御装置60は、モータ30の作動を停止することにより、エンジン20の動作を停止させ、吸気管からの気体の取り込みを停止する。また、制御装置60は、第1のバルブ46を開くとともに、ヒータ42の発熱を停止させる。
ここでは、触媒43が既に活性化温度になっているためにエンジン20を始動した場合であっても、エンジン20の始動直後から触媒43によって排気ガスを浄化することができる。また、第1のバルブ46が開いていることから浄化した排気ガスを排気通路41から外部に排出することができる。更に、第2のバルブ147はチェックバルブであることから、排気ガスが、触媒43を通らずにバイパス通路44を経由して外部に排出されることを防止することができる。
S29の処理が終了することにより、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0044】
以上のように、本実施例によれば、第2のバルブ147にチェックバルブを用いることにより、制御装置60が第2のバルブ147を制御する必要がないことから、制御装置60による処理負担の軽減を図ることができる。
【0045】
以上、本発明に係る各実施例について説明したが、本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、各実施例の構成の一部または処理の一部を他の実施例の構成または処理に組み合わせてもよい。
【0046】
なお、本実施例では、第2のバルブ47,147をバイパス通路44の流出口45bに配置する場合について説明したが、バイパス通路44の流入口45aと流出口45bとの間に配置してもよい。この場合、第2のバルブ47,147はバイパス通路44の流入口45aと流出口45bとの間であって、流入口45aよりも流出口45bの近くに配置することができる。
10、110:触媒暖機システム 20:エンジン 30:モータ 40、140:排気浄化装置 41:排気通路 42:ヒータ 43:触媒 44:バイパス通路 45a:流入口 45b:流出口 46:第1のバルブ 47:第2のバルブ 48:第1の圧力センサ 49:第2の圧力センサ 50:温度センサ 60:制御装置