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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171613
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20241205BHJP
   G01F 1/663 20220101ALI20241205BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F1/66 101
G01F1/663
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088712
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】増永 靖行
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和裕
(72)【発明者】
【氏名】神保 直道
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA12
2F035DA14
(57)【要約】
【課題】流体のボイド率が変動しても、高精度に流量を測定する。
【解決手段】超音波流量計は、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で管体に配置され、管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、管体に配置され、管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第1閾値未満である場合、第1超音波センサーと第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて管体内の流体の流量を算出し、第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第1閾値以上である場合、第1超音波センサーまたは第2超音波センサーの送受信間の超音波信号の周波数シフトに基づいて管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、
前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、
前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第1閾値未満である場合、前記第1超音波センサーと前記第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第1閾値以上である場合、前記第1超音波センサーまたは前記第2超音波センサーの送受信間の超音波信号の周波数シフトに基づいて前記管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える、
超音波流量計。
【請求項2】
前記第1閾値は、5%以上15%以下の範囲内である、
請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記管体内の流体の流れる方向において前記第1ボイド率センサーとは異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第2ボイド率センサーをさらに備え、
前記処理装置は、
前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第1閾値以上かつ前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満である場合、前記周波数シフトに基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第2閾値以上である場合、前記第1ボイド率センサーおよび前記第2ボイド率センサーの出力信号の相関に基づいて前記管体内の流体の流量を算出する、
請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記第2閾値は、35%以上45%以下の範囲内である、
請求項3に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記第1ボイド率センサーは、静電容量式のボイド率センサーである、
請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項6】
管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、
前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、
前記管体内の流体の流れる方向において前記第1ボイド率センサーとは異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第2ボイド率センサーと、
前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第3閾値未満である場合、前記第1超音波センサーと前記第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第3閾値以上である場合、前記第1ボイド率センサーおよび前記第2ボイド率センサーの出力信号の相関に基づいて前記管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える、
超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
配管等の管体内を流れる流体の流量を測定する流量計の一種である超音波流量計は、管体内で可動したり摩耗したりする部分を有しなくて済むことから、メンテナンス性に優れ、かつ、大口径の管体にも容易に設置可能である。
【0003】
超音波流量計は、特許文献1から3に開示されるように、一般に、配管の流体の流れる方向で互いに異なる位置に配置される1対の超音波センサー間の順方向の超音波信号の伝搬時間と逆方向の超音波信号の伝搬時間との差に基づいて流量を算出する伝搬時間差法を用いる。
【0004】
しかし、伝搬時間差法のみを用いる場合、配管内の流体に気泡が混入することにより、配管内の流体の流れが液体および気体の混在する気液二相流となると、流量の測定精度が低下してしまう。そこで、特許文献2では、超音波信号を用いてボイド率を推定し、その推定結果を用いて、伝播時間差法の算出結果を補正することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-88322号公報
【特許文献2】特開2022-34167号公報
【特許文献3】特開2016-40544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、配管内の流体の流れが気液二相流である状態であっても、高精度に流量を測定したいというニーズが高まっている。例えば、カーボンニュートラルで注目される水素サプライチェーンでは、気液二相流になりやすい液体水素の流量を高精度に測定することが望まれている。
【0007】
しかし、特許文献2では、ボイド率の推定に超音波信号を用いるので、配管の材質、肉厚、超音波センサーとの接触状態により超音波信号の振幅が変動したり、配管内を伝搬する不要な超音波信号の影響を受けたりすることにより、ボイド率の推定結果も変動してしまう。このため、特許文献2の構成では、流体の流量を高精度に測定することが難しいという問題がある。
【0008】
また、従来では、伝搬時間差法を用いる場合、伝搬時間差法を常に用いて流量の計測を行うので、流体内の気泡量が多くなりすぎると、1対の超音波センサーのうちの一方から他方へ超音波信号が到達し難くなることにより、流量を計測することが困難となってしまうという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本開示の一態様に係る超音波流量計は、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第1閾値未満である場合、前記第1超音波センサーと前記第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第1閾値以上である場合、前記第1超音波センサーまたは前記第2超音波センサーの送受信間の超音波信号の周波数シフトに基づいて前記管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える。
【0010】
本開示の他の一態様に係る超音波流量計は、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、前記管体内の流体の流れる方向において前記第1ボイド率センサーとは異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第2ボイド率センサーと、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第3閾値未満である場合、前記第1超音波センサーと前記第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第3閾値以上である場合、前記第1ボイド率センサーおよび前記第2ボイド率センサーの出力信号の相関に基づいて前記管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の超音波流量計の概略図である。
図2】第1実施形態の超音波流量計の動作を説明するためのフローチャートである。
図3】伝搬時間差法による流量計測の原理を説明するための図である。
図4】周波数シフト法による流量計測の原理を説明するための図である。
図5】第2実施形態の超音波流量計の概念図である。
図6】第2実施形態の超音波流量計の動作を説明するためのフローチャートである。
図7】ボイド率センサーを用いた相関法による流量計測の原理を説明するための図である。
図8】変形例1の超音波流量計の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際のものと適宜異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0013】
1.第1実施形態
1-1.超音波流量計の概略
図1は、第1実施形態の超音波流量計1の概略図である。超音波流量計1は、管体100内を流れる流体FLの流量を測定する装置である。
【0014】
管体100は、流体FLを輸送するための配管等の管状部材である。管体100は、例えば、ポリエチレンまたはポリ塩化ビニル等の樹脂材料で構成される。なお、管体100を構成する材料は、後述の超音波センサー11、12による検出と後述のボイド率センサー21による検出とが可能であればよく、樹脂材料に限定されない。また、管体100の形状は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0015】
流体FLは、管体100内の圧力および温度のもとで液状の媒体である。ただし、流体FLは、流体FLの一部の気化等により管体100内で液相と気相との混合状態である気液混合状態となり得る。具体的には、流体FLは、例えば、液体水素または液体窒素等の低沸点媒体である。このような低沸点媒体は、管体100内で気液混合状態になりやすい。したがって、後述するように、超音波流量計1の効果が顕著に得られる。なお、流体FLは、低沸点媒体に限定されず、低沸点媒体以外の各種液体であってもよい。ただし、流体FLが低沸点媒体のように気液混合状態になりやすい液体であるか、または、流体FLが低沸点媒体でなくとも管体100内で気液混合状態になりやすい状態で輸送される場合、超音波流量計1の効果が顕著に得られる。
【0016】
超音波流量計1は、管体100内の流体FLのボイド率に基づいて、管体100内の流体FLの流量測定方式として、伝搬時間差法と周波数シフト法とを切り替え可能に構成される。当該ボイド率は、流体FL中の単位体積あたりの気相の占める体積の割合である。
【0017】
図1に示すように、超音波流量計1は、超音波センサー11と超音波センサー12とボイド率センサー21と処理装置30とを備える。超音波センサー11は、「第1超音波センサー」の一例である。超音波センサー12は、「第2超音波センサー」の一例である。ボイド率センサー21は、「第1ボイド率センサー」の一例である。
【0018】
以下、図1に基づいて、超音波流量計1の各部を順に説明する。
【0019】
超音波センサー11、12のそれぞれは、超音波信号を送受信するセンサーである。超音波センサー11、12のそれぞれは、図示しないが、例えば、超音波振動子を構成する圧電素子と、当該圧電素子を逆圧電効果により駆動する駆動回路と、当該圧電素子の圧電効果による受信信号を検出する検出回路と、を有する。当該駆動回路は、当該圧電素子を超音波振動させることにより当該圧電素子から超音波信号を送信させる回路であり、送信回路とも称される。当該検出回路は、当該圧電素子の圧電効果により生じた電圧信号を受信信号として検出する回路であり、受信回路とも称される。
【0020】
超音波センサー11および超音波センサー12は、管体100内の流体FLの流れる方向DFにおいて互いに異なる位置で管体100に配置され、管体100内を介して超音波信号を互いに送受信可能である。図1に示す例では、超音波センサー12が超音波センサー11よりも下流の位置に配置される。ここで、超音波センサー11および超音波センサー12のそれぞれは、例えば、管体100の外周面に適宜の方法により固定される。このため、管体100の加工等を必要とせずに、超音波センサー11、12を設置することができる。
【0021】
超音波センサー11は、超音波センサー12に向けて超音波信号を送信可能であるとともに、超音波センサー12からの超音波信号を受信可能である。また、超音波センサー11は、超音波センサー11自身から送信された超音波信号が管体100内の気泡で反射される場合、その反射した超音波信号を受信可能である。
【0022】
同様に、超音波センサー12は、超音波センサー11に向けて超音波信号を送信可能であるとともに、超音波センサー11からの超音波信号を受信可能である。また、超音波センサー12は、超音波センサー12自身から送信された超音波信号が管体100内の気泡で反射される場合、その反射した超音波信号を受信可能である。
【0023】
ボイド率センサー21は、管体100に配置され、管体100内の流体FLのボイド率に応じた信号を出力するセンサーである。
【0024】
図1に示す例では、ボイド率センサー21が静電容量式のボイド率センサーである。このため、管体100の外周面にボイド率センサー21を配置することができる。この結果、ボイド率センサー21の取り付けおよびメンテナンスを容易に行うことができる。
【0025】
具体的には、ボイド率センサー21は、1対の電極21a、21bと、図示しない検出回路と、を有する。1対の電極21a、21bは、管体100を介して、互いに対向するように配置される。図1に示す例では、1対の電極21a、21bは、超音波センサー12よりも下流の位置に配置される。ここで、1対の電極21a、21bのそれぞれは、管体100の外周面に適宜の方法により固定される。このため、管体100の加工等を必要とせずに、ボイド率センサー21を設置することができる。
【0026】
1対の電極21a、21b間の静電容量は、管体100内の流体FLのボイド率に応じて変化する。当該検出回路は、1対の電極21a、21b間の静電容量に基づいて、当該ボイド率に応じた信号を出力する。なお、ボイド率センサー21の検出方式は、静電容量式に限定されず、任意である。また、ボイド率センサー21の配置は、図1に示す例に限定されず、例えば、超音波センサー12よりも上流かつ超音波センサー11の下流の位置であってもよいし、超音波センサー11よりも上流の位置であってもよい。ただし、後述の流量の測定方式の切り替えを好適に行う観点から、ボイド率センサー21の位置は、超音波センサー11、12の位置から離れすぎない位置であることが好ましい。
【0027】
処理装置30は、超音波センサー11および超音波センサー12のうちの一方または両方から出力される受信信号に基づいて、管体100内の流体FLの流量を算出する処理を実行する。ここで、処理装置30は、ボイド率センサー21の出力信号に基づいて、管体100内の流体FLの流量の算出方法を切り替える。具体的には、処理装置30は、ボイド率センサー21の検出結果に基づいて、管体100内のボイド率が閾値以上であるか否かを判断し、当該ボイド率が当該閾値未満である場合、伝搬時間差法により流量を算出し、一方、当該ボイド率が当該閾値以上である場合、ドップラー法とも称される周波数シフト法により流量を算出する。当該閾値は、「第1閾値」の一例である。これらの測定方式の詳細については、後に図3および図4に基づいて説明する。
【0028】
図1に示す例では、処理装置30が処理回路31と記憶回路32と通信回路33とを有する。
【0029】
処理回路31は、処理装置30の各部の動作を制御したり演算処理を行ったりする回路であり、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路31は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0030】
記憶回路32は、処理回路31が実行する各種プログラムと、処理回路31が処理する各種データと、を記憶する回路である。記憶回路32は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路32の一部または全部は、処理回路31に含まれてもよい。
【0031】
通信回路33は、図示しない外部装置と通信可能な回路であり、管体100内の流体FLの流量の測定結果を示す信号を出力する。当該信号は、例えば、4mA以上20mA以下程度の信号であり、アナログ信号であっても、デジタル信号であってもよい。なお、通信回路33は、処理回路31と一体でもよい。また、通信回路33は、送信する機能のみを有する構成でもよいし、送信および受信の両方の機能を有する構成でもよい。
【0032】
以上の処理装置30では、処理回路31が記憶回路32からプログラムを読み込んで実行することにより、ボイド率計測部31a、判定部31b、方式切替部31c、検出信号処理部31d、流量演算部31eおよび出力部31fとして機能する。したがって、処理装置30は、ボイド率計測部31aと判定部31bと方式切替部31cと検出信号処理部31dと流量演算部31eと出力部31fとを含む。
【0033】
ボイド率計測部31aは、ボイド率センサー21の出力信号に基づいて、管体100内の流体FLのボイド率を算出する。判定部31bは、ボイド率計測部31aの計測結果に基づいて、管体100内のボイド率が閾値以上であるか否かを判断する。方式切替部31cは、判定部31bの判定結果に基づいて、管体100内のボイド率が当該閾値未満である場合、測定方式として伝搬時間差法を設定し、一方、管体100内のボイド率が当該閾値以上である場合、測定方式として周波数シフト法を設定する。検出信号処理部31dは、方式切替部31cの設定結果に基づく測定方式に応じて、超音波センサー11および超音波センサー12のうちの一方または両方の受信信号の信号処理を行うことにより、管体100内の流体FLの流速を示す検出信号を生成する。流量演算部31eは、検出信号処理部31dで生成された検出信号に基づいて、流量を算出する。出力部31fは、流量演算部31eの演算結果を示す信号を通信回路33に出力させる。
【0034】
当該閾値は、ボイド率と流量計測精度との関係から許容する計測精度に応じて設定される。具体的には、例えば、許容する計測精度が±1%以内である場合、その計測精度を実現し得るボイド率が10%以下であることから、当該閾値が10%に設定される。
【0035】
このような観点から、閾値TH1は、5%以上15%以下の範囲内であることが好ましい。この場合、管体100内の流体FLの測定精度を高めるように、伝搬時間差法と周波数シフト法とを好適に切り替えることができる。
【0036】
1-2.超音波流量計の動作
図2は、第1実施形態の超音波流量計1の動作を示すフローチャートである。超音波流量計1では、図2に示すように、まず、ステップS10において、処理装置30が、ボイド率センサー21の出力信号に基づいて、管体100内の流体FLのボイド率を算出する。
【0037】
次に、ステップS20において、処理装置30が、ボイド率センサー21の計測結果に基づいて、管体100内のボイド率が閾値TH1以上であるか否かを判断する。閾値TH1は、「第1閾値」の一例である。
【0038】
管体100内のボイド率が閾値TH1未満である場合(ステップS20:NO)、処理装置30は、ステップS30において、超音波センサー11および超音波センサー12の両方の受信信号に基づいて、伝搬時間差法により流量を算出する。
【0039】
一方、管体100内のボイド率が閾値TH1以上である場合(ステップS20:YES)、処理装置30は、ステップS40において、超音波センサー11または超音波センサー12の受信信号に基づいて、周波数シフト法により流量を算出する。
【0040】
ステップS30またはステップS40の後、処理装置30は、ステップS50において、算出した流量を示す信号を出力する。
【0041】
その後、処理装置30は、ステップS60において、ステップ終了指示があるか否かを判断する。処理装置30は、終了指示がない場合(ステップS60:NO)、前述のステップS10に戻り、一方、終了指示がある場合(ステップS60:YES)、処理を終了する。
【0042】
1-3.伝搬時間差法
図3は、伝搬時間差法による流量計測の原理を説明するための図である。図3では、管体100内のボイド率がゼロである状態が示される。
【0043】
管体100内のボイド率が低い場合、超音波センサー11および超音波センサー12のうちの一方から他方へ超音波信号が十分な強度で到達する。このため、管体100内のボイド率が閾値未満である場合、前述のステップS30において、伝搬時間差法により流量を算出する。
【0044】
管体100を流れる流体FLの流速をVとし、超音波センサー11と超音波センサー12との間の超音波信号の伝搬距離をLとし、超音波センサー11と超音波センサー12との間を結ぶ線分と管体100の軸線とのなす角度をθとし、音速をCとすると、超音波センサー11と超音波センサー12との間の順方向(流体FLが流れる方向DF)の超音波の伝搬時間t1と逆方向(流体FLが流れる方向DFと逆方向)の超音波の伝搬時間t2とは、次の式(1)および式(2)のように表される。
t1=L/(C+Vcosθ) (1)
t2=L/(C-Vcosθ) (2)
【0045】
前述のステップS30の伝搬時間差法では、伝搬時間t1と伝搬時間t2との差である伝搬時間差Δtを計測し、次の式(3)および式(4)を用いて、流体FLの流速Vおよび流量Qを算出する。
V≒CΔt/(2Lcosθ) (3)
Q=SV/k≒SCΔt/(2kLcosθ) (4)
ここで、式(4)中、Sは、管体100内の断面積であり、kは、超音波信号の伝搬経路上の平均流速を管体100の軸線に沿う方向での平均流速に補正するための係数である。
【0046】
伝搬時間差Δtは、例えば、超音波センサー11および超音波センサー12の受信信号の波形に基づいて算出される。具体的には、超音波センサー11および超音波センサー12のそれぞれの受信信号をサンプリングすることにより、波形データを取得した後、取得した波形データの相互相関演算を行うことにより、相関関数から伝搬時間差Δtが求められる。
【0047】
以上の伝搬時間差法では、管体100内にボイド率が極めて小さい場合に流量を高精度に測定することができる。したがって、管体100内のボイド率が閾値未満である場合、伝搬時間差法により流量を算出することにより、測定結果の高精度化を図ることができる。
【0048】
以上のように、処理装置30は、ボイド率センサー21の出力信号に基づくボイド率が閾値TH1未満である場合、超音波センサー11と超音波センサー12との間の順方向での超音波信号US1と逆方向での超音波信号US2との伝搬時間差Δtに基づいて管体100内の流体FLの流量を算出する。
【0049】
1-4.周波数シフト法
図4は、周波数シフト法による流量計測の原理を説明するための図である。図4では、管体100内のボイド率が中程度である状態が示される。
【0050】
管体100内のボイド率が中程度に達すると、超音波センサー11および超音波センサー12のうちの一方から他方へ超音波信号が十分な強度で到達ことができず、この結果、超音波センサー11および超音波センサー12のそれぞれの受信信号のSN比が低下するので、流量の測定精度が低下する。
【0051】
そこで、管体100内のボイド率が閾値以上である場合、前述のステップS40において、周波数シフト法により流量を算出する。
【0052】
管体100内に気泡が存在する場合、超音波センサー11および超音波センサー12のそれぞれから送信された超音波信号は、管体100内の気泡で反射した後、送信元の超音波センサー11または超音波センサー12で受信される。このとき、反射した超音波信号の周波数は、管体100内の流体FLの流速に応じてドップラー効果の影響を受けて変化する。したがって、管体100内の流体FLの流速に応じて、超音波センサー11または超音波センサー12の送信した超音波信号と受信した超音波信号との周波数差が変化する。このため、この反射した超音波信号を受信した超音波センサー11または超音波センサー12の受信信号の周波数に基づいて、管体100内の流体FLの流速を算出することができる。また、算出した流速と前述の式(4)とに基づいて、管体100内の流体FLの流量を算出することができる。
【0053】
以上の周波数シフト法では、管体100内に気泡等の反射物が存在しない場合に流量を計測できないものの、管体100内に多くの気泡が混入した状態でも、伝搬時間差法と比較して高精度に流量を測定することができる。したがって、管体100内のボイド率が閾値以上である場合、周波数シフト法により流量を算出することにより、測定結果の高精度化を図ることができる。
【0054】
以上のように、処理装置30は、ボイド率センサー21の出力信号に基づくボイド率が閾値TH1以上である場合、超音波センサー11または超音波センサー12の送受信間の超音波信号の周波数シフトに基づいて管体100内の流体FLの流量を算出する。
【0055】
以上の超音波流量計1では、管体100内の流体FLのボイド率が閾値TH1未満である場合、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信可能であることにより、伝搬時間差法により管体100内の流体FLの流量を高精度に測定することができる。一方、管体100内の流体FLのボイド率が閾値TH1以上である場合、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信できなくても、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信可能であることにより、周波数シフト法により管体100内の流体FLの流量を高精度に測定することができる。しかも、ボイド率センサーの出力信号に基づいてこれらの測定方式の切り替えを適切に行うことができる。以上から、管体100内の流体FLのボイド率が変動しても、管体100内の液体の流量を高精度に測定することができる。
【0056】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0057】
2-1.超音波流量計の概略
図5は、第2実施形態の超音波流量計1Aの概略図である。超音波流量計1Aは、ボイド率センサー22を追加するとともに、処理装置30に代えて処理装置30Aを備えること以外は、第1実施形態の超音波流量計1と同様に構成される。ボイド率センサー22は、「第2ボイド率センサー」の一例である。
【0058】
超音波流量計1Aは、管体100内のボイド率に基づいて、管体100内の流体FLの流量測定方式として、伝搬時間差法と周波数シフト法とボイド率センサー21、22を用いた相関法とを切り替え可能に構成される。
【0059】
ボイド率センサー22は、管体100内の流体FLの流れる方向DFにおいてボイド率センサー21とは異なる位置で管体100に配置され、管体100内の流体FLのボイド率に応じた信号を出力するセンサーである。
【0060】
図5に示す例では、ボイド率センサー22が静電容量式のボイド率センサーである。このため、管体100の外周面にボイド率センサー22を配置することができる。この結果、ボイド率センサー22の取り付けおよびメンテナンスを容易に行うことができる。
【0061】
具体的には、ボイド率センサー22は、1対の電極22a、22bと、図示しない検出回路と、を有する。1対の電極22a、22bは、管体100を介して、互いに対向するように配置される。図5に示す例では、1対の電極22a、22bは、ボイド率センサー21よりも下流の位置に配置される。ここで、1対の電極22a、22bのそれぞれは、管体100の外周面に適宜の方法により固定される。このため、管体100の加工等を必要とせずに、ボイド率センサー22を設置することができる。
【0062】
1対の電極22a、22b間の静電容量は、管体100内の流体FLのボイド率に応じて変化する。当該検出回路は、1対の電極22a、22b間の静電容量に基づいて、ボイド率に応じた信号を出力する。なお、ボイド率センサー22の検出方式は、静電容量式に限定されず、任意である。また、ボイド率センサー22の配置は、図5に示す例に限定されず、例えば、ボイド率センサー21よりも上流かつ超音波センサー12の下流の位置であってもよいし、超音波センサー12よりも上流かつ超音波センサー11の下流の位置であってもよいし、超音波センサー11よりも上流の位置であってもよい。ただし、後述の相関法による流量の計測精度を高める観点から、ボイド率センサー22の位置は、ボイド率センサー21の位置から離れすぎない位置であることが好ましい。
【0063】
処理装置30Aは、ボイド率センサー21およびボイド率センサー22を用いた相関法による流量計測が可能であること以外は、第1実施形態の処理装置30と同様に構成される。
【0064】
具体的に説明すると、処理装置30Aでは、処理回路31が記憶回路32からプログラムを読み込んで実行することにより、第1実施形態の処理回路31の機能のほか、相関処理部31gとして機能する。したがって、処理装置30Aは、ボイド率計測部31aと判定部31bと方式切替部31cと検出信号処理部31dと流量演算部31eと出力部31fと相関処理部31gとを含む。
【0065】
相関処理部31gは、ボイド率センサー21およびボイド率センサー22のそれぞれの出力信号を所定時間ごとに時分割し、当該所定時間ごとの相互相関に基づいて流速を算出することにより、管体100内の流体FLの流速を示す検出信号を生成する。
【0066】
本実施形態の流量演算部31eは、管体100内のボイド率が閾値以上であるか否かを判断し、管体100内のボイド率が当該閾値未満である場合、第1実施形態と同様、検出信号処理部31dで生成された検出信号に基づいて流速を演算し、一方、管体100内のボイド率が当該閾値以上である場合、相関処理部31gで生成された検出信号に基づいて流速を演算する。
【0067】
流量演算部31eで用いる閾値は、判定部31bで用いる閾値よりも大きい値であり、ボイド率と流量計測精度との関係から許容する計測精度に応じて設定される。具体的には、例えば、許容する計測精度が±1%以内であり、かつ、その計測精度を実現し得るボイド率が40%以下であることから、流量演算部31eで用いる閾値が40%に設定される。なお、以下では、判定部31bで用いる閾値を「第1閾値」、流量演算部31eで用いる閾値を「第2閾値」という場合がある。
【0068】
このような観点から、閾値TH2は、35%以上45%以下の範囲内であることが好ましい。この場合、管体100内の流体FLの測定精度を高めるように、周波数シフト法と相関法とを好適に切り替えることができる。
【0069】
2-2.超音波流量計の動作
図6は、第2実施形態の超音波流量計1Aの動作を示すフローチャートである。超音波流量計1Aは、図6に示すように、ステップS70およびステップS80を追加したこと以外は、第1実施形態の超音波流量計1と同様に動作する。
【0070】
具体的には、管体100内のボイド率が当該閾値以上である場合(ステップS20:YES)、処理装置30Aは、ステップS70において、ボイド率センサー21の計測結果に基づいて、管体100内のボイド率が閾値TH2以上であるか否かを判断する。閾値TH2は、「第2閾値」の一例であり、閾値TH1よりも大きい。
【0071】
管体100内のボイド率が閾値TH2未満である場合(ステップS70:NO)、処理装置30Aは、ステップS40において、超音波センサー11または超音波センサー12の受信信号に基づいて、周波数シフト法により流量を算出する。
【0072】
一方、管体100内のボイド率が当該閾値以上である場合(ステップS70:YES)、処理装置30Aは、ステップS80において、ボイド率センサー21、22を用いた相関法により流量を算出する。その後、処理装置30Aは、ステップS50に移行する。
【0073】
以上のように、処理装置30Aは、ボイド率センサー21の出力信号に基づくボイド率が閾値TH1以上かつ閾値TH1よりも大きい閾値TH2未満である場合、周波数シフトに基づいて管体100内の流体FLの流量を算出する。一方、処理装置30Aは、ボイド率センサー21の出力信号に基づくボイド率が閾値TH2以上である場合、ボイド率センサー21およびボイド率センサー22の出力信号の相関に基づいて管体100内の流体FLの流量を算出する。
【0074】
2-3.ボイド率センサーの相関法
図7は、ボイド率センサー21、22を用いた相関法による流量計測の原理を説明するための図である。図7では、管体100内のボイド率が前述の図4に示す状態よりも大きい状態が示される。
【0075】
管体100内のボイド率が図4に示す状態よりもさらに大きくなると、前述の周波数シフト法でも計測に十分な強度の超音波信号を超音波センサー11または超音波センサー12で受信できなくなる。これにより、伝搬時間差法および周波数シフト法のいずれでも、流量計測が困難となる。
【0076】
そこで、管体100内のボイド率が第2閾値以上である場合、前述のステップにおいて、ボイド率センサー21、22を用いた相関法により流量を算出する。
【0077】
ここで、管体100を流れる流体FLの流速をVとし、ボイド率センサー21とボイド率センサー22との中心間の距離をLbとし、所定のボイド率を示す流体FLがボイド率センサー21とボイド率センサー22との間を通過する時間長さをΔtbとしたとき、流速Vは、以下の式で算出される。
V=Lb/Δtb
【0078】
時間長さΔtbは、ボイド率センサー21、22の出力信号に基づいて算出される。具体的には、ボイド率センサー21、22のそれぞれの出力信号をサンプリングすることにより、ボイド率の変動データを取得した後、取得したデータの相互相関演算を行うことにより、相関関数から時間長さΔtbが求められる。
【0079】
さらに、管体100内の混相流体の全体の流量をQtotalとし、管体100内の混相流体中の液相の流量をQliquidとし、管体100内の混相流体中の気相の流量をQgasとし、管体100内のボイド率をαとしたとき、これらの流量は、以下の式(5)、(6)、(7)を用いて、算出される。
total=V×A (5)
liquid=Qtotal×(1-α) (6)
gas=Qtotal×α (7)
【0080】
以上の超音波流量計1Aでは、管体100内の流体FLのボイド率が閾値TH1以上かつ閾値TH2未満である場合、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信可能であることにより、周波数シフト法により管体100内の流体FLの流量を高精度に測定することができる。一方、管体100内の流体FLのボイド率が閾値TH2以上である場合、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信できなくても、2つのボイド率センサーを用いた相関法により管体100内の流体FLの流量を高精度に測定することができる。しかも、ボイド率センサーの出力信号に基づいてこれらの測定方式の切り替えを適切に行うことができる。
【0081】
3.変形例
以上の各実施態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0082】
3-1.変形例1
前述の形態では、伝搬時間差法および周波数シフト法の両方を用いる態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、第2実施形態において、周波数シフト法が省略されてもよい。
【0083】
図8は、変形例1の超音波流量計の動作を説明するためのフローチャートである。変形例1は、図8に示すように、ステップS20に代えてステップS90を含むとともに、ステップS40に代えてステップS80を含むこと以外は、第1実施形態と同様である。
【0084】
変形例1では、ステップS10の後、ステップS90において、ボイド率センサー21の計測結果に基づいて、管体100内のボイド率が閾値TH3以上であるか否かが判断される。閾値TH3は、「第3閾値」の一例であり、例えば、前述の閾値TH1と等しい。なお、閾値TH3は、必要な測定精度に応じて決められ、閾値TH1と異なってもよい。
【0085】
管体100内のボイド率が閾値TH3未満である場合(ステップS90:NO)、第1実施形態および第2実施形態と同様、ステップS30において、超音波センサー11および超音波センサー12の両方の受信信号に基づいて、伝搬時間差法により流量が算出される。その後、ステップS50が実行される。
【0086】
一方、管体100内のボイド率が閾値TH3以上である場合(ステップS90:YES)、ステップS80において、前述の第2実施形態と同様、ボイド率センサー21およびボイド率センサー22の出力信号の相関に基づいて管体100内の流体FLの流量が算出される。その後、ステップS50が実行される。
【0087】
以上の変形例1では、管体100内の流体FLのボイド率が閾値TH3以上である場合、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信できなかったり、超音波センサー11および超音波センサー12の一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信できなかったりしても、2つのボイド率センサー21、22を用いた相関法により管体100内の流体FLの流量を高精度に測定することができる。
【0088】
3-2.変形例2
前述の形態では、超音波センサーの数が2つである態様が例示されるが、当該数は、3つ以上であってもよい。この場合、3つ以上の超音波センサーのうち、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で管体に配置され、管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な1対の超音波センサーが第1超音波センサーおよび第2超音波センサーに相当する。
【0089】
3-3.変形例3
前述の形態では、ボイド率センサーの数が1つまたは2つである態様が例示されるが、当該数は、3つ以上であってもよい。この場合、例えば、3つ以上のボイド率センサーのうち、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で管体に配置される1対のボイド率センサーが第1ボイド率センサーおよび第2ボイド率センサーに相当する。
【0090】
4.付記
以上の実施形態または変形例から、例えば以下の態様が把握される。
【0091】
本開示の好適例である第1態様の超音波流量計は、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第1閾値未満である場合、前記第1超音波センサーと前記第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第1閾値以上である場合、前記第1超音波センサーまたは前記第2超音波センサーの送受信間の超音波信号の周波数シフトに基づいて前記管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える。
【0092】
以上の第1態様では、管体内の流体のボイド率が第1閾値未満である場合、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信可能であることにより、伝搬時間差法により管体内の流体の流量を高精度に測定することができる。一方、管体内の流体のボイド率が第1閾値以上である場合、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信できなくても、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信可能であることにより、周波数シフト法により管体内の流体の流量を高精度に測定することができる。しかも、ボイド率センサーの出力信号に基づいてこれらの測定方式の切り替えを適切に行うことができる。以上から、管体内の流体のボイド率が変動しても、管体内の液体の流量を高精度に測定することができる。
【0093】
第1態様の好適例である第2態様において、前記第1閾値は、5%以上15%以下の範囲内である。以上の第2態様では、管体内の流体の測定精度を高めるように、伝搬時間差法と周波数シフト法とを好適に切り替えることができる。
【0094】
第1態様または第2態様の好適例である第3態様において、前記管体内の流体の流れる方向において前記第1ボイド率センサーとは異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第2ボイド率センサーをさらに備え、前記処理装置は、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第1閾値以上かつ前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満である場合、前記周波数シフトに基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第2閾値以上である場合、前記第1ボイド率センサーおよび前記第2ボイド率センサーの出力信号の相関に基づいて前記管体内の流体の流量を算出する。
【0095】
以上の第3態様では、管体内の流体のボイド率が第1閾値以上かつ第2閾値未満である場合、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信可能であることにより、周波数シフト法により管体内の流体の流量を高精度に測定することができる。一方、管体内の流体のボイド率が第2閾値以上である場合、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信できなくても、2つのボイド率センサーを用いた相関法により管体内の流体の流量を高精度に測定することができる。しかも、ボイド率センサーの出力信号に基づいてこれらの測定方式の切り替えを適切に行うことができる。
【0096】
第3態様の好適例である第4態様において、前記第2閾値は、35%以上45%以下の範囲内である。以上の第4態様では、管体内の流体の測定精度を高めるように、周波数シフト法と相関法とを好適に切り替えることができる。
【0097】
第1態様から第4態様のいずれかの好適例である第5態様において、前記第1ボイド率センサーは、静電容量式のボイド率センサーである。以上の第5態様では、管体の外周面に第1ボイド率センサーを配置することができる。このため、第1ボイド率センサーの取り付けおよびメンテナンスを容易に行うことができる。
【0098】
本開示の好適例である第6態様の超音波流量計は、管体内の流体の流れる方向において互いに異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内を介して超音波信号を互いに送受信可能な第1超音波センサーおよび第2超音波センサーと、前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第1ボイド率センサーと、前記管体内の流体の流れる方向において前記第1ボイド率センサーとは異なる位置で前記管体に配置され、前記管体内の流体のボイド率に応じた信号を出力する第2ボイド率センサーと、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が第3閾値未満である場合、前記第1超音波センサーと前記第2超音波センサーとの間の順方向での超音波信号と逆方向での超音波信号との伝搬時間差に基づいて前記管体内の流体の流量を算出し、前記第1ボイド率センサーの出力信号に基づくボイド率が前記第3閾値以上である場合、前記第1ボイド率センサーおよび前記第2ボイド率センサーの出力信号の相関に基づいて前記管体内の流体の流量を算出する処理装置と、を備える。
【0099】
以上の第6態様では、管体内の流体のボイド率が第3閾値未満である場合、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信可能であることにより、伝搬時間差法により管体内の流体の流量を高精度に測定することができる。一方、管体内の流体のボイド率が第3閾値以上である場合、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が他方からの超音波信号を十分な強度で受信できなかったり、第1超音波センサーおよび第2超音波センサーの一方が気泡による超音波信号の反射を十分な強度で受信できなかったりしても、2つのボイド率センサーを用いた相関法により管体内の流体の流量を高精度に測定することができる。しかも、ボイド率センサーの出力信号に基づいてこれらの測定方式の切り替えを適切に行うことができる。以上から、管体内の流体のボイド率が変動しても、管体内の液体の流量を高精度に測定することができる。
【符号の説明】
【0100】
1…超音波流量計、1A…超音波流量計、11…超音波センサー、12…超音波センサー、21…ボイド率センサー、21a…電極、21b…電極、22…ボイド率センサー、22a…電極、22b…電極、30…処理装置、30A…処理装置、31…処理回路、31a…ボイド率計測部、31b…判定部、31c…方式切替部、31d…検出信号処理部、31e…流量演算部、31f…出力部、31g…相関処理部、32…記憶回路、33…通信回路、100…管体、DF…方向、FL…流体、Q…流量、Qgas…流量、S10…ステップ、S20…ステップ、S30…ステップ、S40…ステップ、S50…ステップ、S60…ステップ、S70…ステップ、S80…ステップ、TH1…閾値、TH2…閾値、US1…超音波信号、US2…超音波信号、V…流速、t1…伝搬時間、t2…伝搬時間、Δt…伝搬時間差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8