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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171614
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241205BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241205BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/11 110
A61B5/022 400H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088713
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AC40
4C017BD06
4C017CC02
4C017DD14
4C038VA04
4C038VB31
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB04
4C117XC05
4C117XE06
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE16
4C117XE20
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE52
4C117XJ13
4C117XJ21
4C117XJ45
(57)【要約】
【課題】 入浴に伴う被験者の状態の異常及びその予兆を、適切に発見する。
【解決手段】 本発明のモニタリングシステムSは、ミリ波を照射し、被験者からの反射波に応じた信号を出力するミリ波センサ1と、ミリ波センサ1の出力信号に基づいて、被験者のバイタル情報を取得するバイタル情報取得装置2と、を備え、ミリ波センサ1は、脱衣場に設けられ、ミリ波を照射し、脱衣場に居る被験者からの反射波に応じた信号を出力する、第1ミリ波センサ11と、浴室に設けられ、ミリ波を照射し、浴室に居る被験者からの反射波に応じた信号を出力する第2ミリ波センサ12と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波を照射し、被験者からの反射波に応じた信号を出力するミリ波センサと、
前記ミリ波センサの出力信号に基づいて、前記被験者のバイタル情報を取得するバイタル情報取得装置と、を備え、
前記ミリ波センサは、
脱衣場に設けられ、ミリ波を照射し、前記脱衣場に居る前記被験者からの反射波に応じた信号を出力する、第1ミリ波センサと、
浴室に設けられ、ミリ波を照射し、前記浴室に居る前記被験者からの反射波に応じた信号を出力する第2ミリ波センサと、を含む、モニタリングシステム。
【請求項2】
前記バイタル情報取得装置は、前記被験者が前記脱衣場に居る間に、前記被験者のバイタル情報を複数回取得し、取得した各回のバイタル情報が異常であるかを判定し、バイタル情報が異常であるという判定結果が所定回数以上続く場合、前記被験者のバイタル情報の異常を知らせるための処理を実行する、請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項3】
前記バイタル情報取得装置は、前記被験者が前記浴室に居る間に、前記被験者のバイタル情報を取得し、取得したバイタル情報が異常であるかを判定し、バイタル情報が異常であるという判定結果が得られた場合に、前記被験者のバイタル情報の異常を知らせるための処理を実行する、請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項4】
前記バイタル情報取得装置は、
前記脱衣場に居る間の前記被験者のバイタル情報に基づいて第1条件を設定し、
前記第2ミリ波センサの出力信号に基づいて、前記浴室に居る前記被験者のバイタル情報を取得し、
前記浴室に居る前記被験者のバイタル情報を示す情報が前記第1条件を満たすかを判定する、請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項5】
前記バイタル情報取得装置は、
前記浴室に居る前記被験者のバイタル情報に基づいて第2条件を設定し、
前記第1ミリ波センサの出力信号に基づいて、前記脱衣場に居る前記被験者のバイタル情報を取得し、
前記脱衣場に居る前記被験者のバイタル情報を示す情報が前記第2条件を満たすかを判定する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモニタリングシステム。
【請求項6】
前記バイタル情報取得装置は、前記被験者のバイタル情報として、前記被験者の血圧値を取得する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモニタリングシステム。
【請求項7】
前記第1ミリ波センサは、前記被験者が前記脱衣場に居る期間中の第1時間内の各時点において、ミリ波を照射し、前記被験者からの反射波に応じた信号を出力し、
前記バイタル情報取得装置は、前記第1ミリ波センサが前記第1時間内の各時点に出力した信号の各々に基づいて、前記第1時間内の各時点における前記被験者のバイタル情報を取得する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモニタリングシステム。
【請求項8】
前記第2ミリ波センサは、前記被験者が前記浴室に居る期間中の第2時間内の各時点において、ミリ波を照射し、前記被験者からの反射波に応じた信号を出力し、
前記バイタル情報取得装置は、前記第2ミリ波センサが前記第2時間内の各時点に出力した信号の各々に基づいて、前記第2時間内の各時点における前記被験者のバイタル情報を取得する、請求項7に記載のモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の状態の変化、特に、入浴に伴う状態の変化をモニタリングするためのモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の生理的状態(以下、単に状態という)が正常であるかを判定する目的で、被験者の血圧値や心拍数等のようなバイタル情報を取得する技術は、既に開発されており、実際に利用されている。特に、入浴に伴う状態の変化に関しては、血圧値の乱高下によって、ヒートショック症状を起こすリスクがあるため、入浴に際して被験者の血圧値等のバイタル情報を取得することがある。
【0003】
被験者のバイタル情報を取得する例としては、特許文献1に記載された浴槽血圧計が挙げられる。特許文献1の浴槽血圧計を利用すれば、入浴中に被験者のバイタル情報を取得し、被験者のバイタル情報が正常値であるかを判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-282223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の浴槽血圧計に使用されているセンサは、接触式のセンサであり、このようなセンサによって被験者の血圧値等のバイタル情報を取得(測定)するには手間がかかる。また、被験者が高齢者である場合、取得される血圧値が不安定になる傾向があり、例えば入浴前に血圧値を一回測定するだけでは、被験者の状態を適切に判断できない虞がある。そのため、入浴に際して被験者のバイタル情報を効率よく取得し、得られたバイタル情報から被験者の状態を適切に判定するためのモニタリングシステムが求められている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、上記の課題を解決することを目的とし、具体的には、入浴に伴う被験者の状態の異常及びその予兆を、適切に発見することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明のモニタリングシステムは、ミリ波を照射し、被験者からの反射波に応じた信号を出力するミリ波センサと、ミリ波センサの出力信号に基づいて、被験者のバイタル情報を取得するバイタル情報取得装置と、を備え、ミリ波センサは、脱衣場に設けられ、ミリ波を照射し、脱衣場に居る被験者からの反射波に応じた信号を出力する、第1ミリ波センサと、浴室に設けられ、ミリ波を照射し、浴室に居る被験者からの反射波に応じた信号を出力する第2ミリ波センサと、を含むことにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明のモニタリングシステムでは、ミリ波センサが使用されているため、脱衣場及び浴室内に居る被験者のバイタル情報を精度よく取得することができる。そして、入浴前後及び入浴中の被験者のバイタル情報が取得され、取得されたバイタル情報に基づいて、被験者の状態を適切に判定することができる。この結果、本発明のモニタリングシステムによれば、入浴に伴う被験者の状態の異常及びその予兆を、適切に発見し、入浴に起因して被験者の状態が異常になるのを防止することができる。
【0009】
また、本発明のモニタリングシステムでは、バイタル情報取得装置は、被験者が脱衣場に居る間に、被験者のバイタル情報を複数回取得し、取得した各回のバイタル情報が異常であるかを判定し、バイタル情報が異常であるという判定結果が所定回数以上続く場合、被験者のバイタル情報の異常を知らせるための処理を実行するとよい。
上記の構成では、脱衣場に居る時点での被験者のバイタル情報が異常であるかを適切に判定し、異常である場合には、そのことを介護者等に知らせることができる。
【0010】
また、本発明のモニタリングシステムでは、バイタル情報取得装置は、被験者が浴室に居る間に、被験者のバイタル情報を取得し、取得したバイタル情報が異常であるかを判定し、バイタル情報が異常であるという判定結果が得られた場合に、被験者のバイタル情報の異常を知らせるための処理を実行するとよい。
上記の構成では、浴室に居る時点での被験者のバイタル情報が異常であるかを適切に判定し、異常である場合には、そのことを介護者等に知らせることができる。
【0011】
また、本発明のモニタリングシステムでは、バイタル情報取得装置は、脱衣場に居る間の被験者のバイタル情報に基づいて第1条件を設定し、第2ミリ波センサの出力信号に基づいて、浴室に居る被験者のバイタル情報を取得し、浴室に居る被験者のバイタル情報を示す情報が第1条件を満たすかを判定するとよい。
上記の構成では、浴室に居る時点での被験者のバイタル情報が異常であるかを判定するために用いられる条件(第1条件)が、脱衣場に居る時点での被験者のバイタル情報に応じて設定される。これにより、浴室に居る時点での被験者の状態が異常であるかを、その直前に脱衣場に居た時点での被験者の状態を踏まえて適切に判定することができる。
【0012】
また、本発明のモニタリングシステムでは、バイタル情報取得装置は、浴室に居る被験者のバイタル情報に基づいて第2条件を設定し、第1ミリ波センサの出力信号に基づいて、脱衣場に居る被験者のバイタル情報を取得し、脱衣場に居る被験者のバイタル情報を示す情報が第2条件を満たすかを判定するとよい。
上記の構成では、入浴後に脱衣場に居る時点の被験者のバイタル情報が異常であるかを判定するために用いられる条件(第2条件)が、浴室に居る時点での被験者のバイタル情報に応じて設定される。これにより、入浴後の被験者の状態が異常であるかを、その直前に浴室に居た時点での被験者の状態を踏まえて適切に判定することができる。
【0013】
また、本発明のモニタリングシステムでは、バイタル情報取得装置は、被験者のバイタル情報として、被験者の血圧値を取得するとよい。
上記の構成では、バイタル情報取得装置は、ミリ波センサから出力された被験者の心拍数に関する信号を変換し、被験者のバイタル情報として血圧値の情報を取得する。これにより、被験者の入浴に際して、被験者の血圧値、及びその変動状況等をモニタリングすることができる。
【0014】
また、本発明のモニタリングシステムでは、第1ミリ波センサは、被験者が脱衣場に居る期間中の第1時間内の各時点において、ミリ波を照射し、被験者からの反射波に応じた信号を出力し、バイタル情報取得装置は、第1ミリ波センサが第1時間内の各時点に出力した信号の各々に基づいて、第1時間内の各時点における被験者のバイタル情報を取得するとよい。
上記の構成では、被験者が脱衣場に居る期間中の所定時間(第1時間)内の各時点において被験者のバイタル情報を取得する。これにより、第1時間におけるバイタル情報の変動状況から、脱衣場に居る時点での被験者の状態が異常であるかを、より適切に判定することができる。
【0015】
また、本発明のモニタリングシステムでは、第2ミリ波センサは、被験者が浴室に居る期間中の第2時間内の各時点において、ミリ波を照射し、被験者からの反射波に応じた信号を出力し、バイタル情報取得装置は、第2ミリ波センサが第2時間内の各時点に出力した信号の各々に基づいて、第2時間内の各時点における被験者のバイタル情報を取得するとよい。
上記の構成では、被験者が浴室に居る期間中の所定時間(第2時間)内の各時点において、被験者のバイタル情報を取得する。これにより、第2時間におけるバイタル情報の変動状況から、浴室に居る時点での被験者の状態が異常であるかを、より適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のモニタリングシステムによれば、ヒートショック症状のような入浴に伴う被験者の状態の異常及びその予兆を、適切に発見することができ、結果として、被験者の状態が異常になるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一つの実施形態に係るモニタリングシステムを有する脱衣場及び浴室の配置図であり、被験者及び介護者が脱衣場を使用している状況を示す例である。
図2】本発明の一つの実施形態に係るモニタリングシステムを有する脱衣場及び浴室の配置図であり、被験者及び介護者が浴室を使用している状況を示す例である。
図3】本発明の一つの実施形態に係るモニタリングシステムを示すブロック図である。
図4】被験者の計測バイタル情報の一例を示す図である。
図5】被験者の基準バイタル情報の一例を示す図である。
図6】本発明に係るモニタリングシステムの処理として、全体の情報処理フローを示す図である。
図7】本発明に係るモニタリングシステムの処理として、入浴前の一連の情報処理フローを示す図である。
図8】本発明に係るモニタリングシステムの処理として、入浴中の一連の情報処理フローを示す図である。
図9】本発明に係るモニタリングシステムの処理として、入浴後の一連の情報処理フローを示す図である。
図10】比較例に係るモニタリングシステムを有する脱衣場及び浴室の配置図である。
図11】その他の実施形態に係るモニタリングシステムを有する脱衣場及び浴室の配置図であり、被験者及び介護者が脱衣場を使用している状況を示す例である。
図12】その他の実施形態に係るモニタリングシステムを有する脱衣場及び浴室の配置図であり、被験者及び介護者が浴室を使用している状況を示す例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一つの実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、心拍数、脈拍、呼吸数(呼吸量)、血流量、血圧値、発汗量、発汗速度、皮膚抵抗、及び体温等のような人の生理的状態に関する基本的な情報であり、人の活動度合い及びコンディション等に応じて変化し得る情報を「バイタル情報」とする。また、「バイタル情報」には、上述した各値の変動状況、身体各部の筋肉の動き、顔の色(血色)、及び顔の筋肉の動き等も含まれることとする。
【0019】
また、以下の説明では、モニタリングシステムが、人のバイタル情報として血圧値及びその変動状況を取得し、得られたバイタル情報に基づいて人の状態が正常であるかを判定する。また、モニタリングシステムによって状態の異常を判定される対象になる人を「被験者」とする。また、以下の説明では、モニタリングシステムを利用して被験者の状態を監視し、被験者を介護する人を「介護者」とする。
【0020】
<<本発明の一つの実施形態について>>
本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)のモニタリングシステムSついて、図1~10を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態のモニタリングシステムSは、例えば、高齢者である被験者Hを介護する施設にて、介護者Kによって利用される。具体的には、モニタリングシステムSは、被験者Hが入浴する際にヒートショック症状等のような異常状態になるのを防止及び予防するために利用される。
【0022】
より詳しく説明すると、モニタリングシステムSは、入浴前後、及び入浴中の被験者Hのバイタル情報を取得し、各時点のバイタル情報をモニタリングする目的で利用される。すなわち、モニタリングシステムSは、図1及び2に示すように、被験者Hが脱衣場D及び浴室Yに居る間に利用され、それぞれの空間に居る時点での被験者Hのバイタル情報を取得する。なお、本実施形態では、被験者Hのバイタル情報として、血圧値及びその変動状況、並びに心拍数等が取得されることになっており、以下、これらのバイタル情報を血圧値等ともいう。
【0023】
被験者Hが脱衣場D及び浴室Yを利用する際には、図1及び2に示すように、一人の被験者Hの脱衣場Dでの脱衣及び着衣、並びに浴室Yでの入浴を、一人の介護者Kが、基本的に付き添って補助する。また、被験者Hは、浴室Yで入浴する際に浴槽Bを利用する。このとき、例えば、介護者Kは、入浴用車椅子、又は機械式入浴用ベッドを使用した半身浴、又はストレッチャー浴等の寝位入浴等の入浴を、被験者Hに対して補助するとよい。
【0024】
[本実施形態に係るモニタリングシステムの全体構成]
本実施形態に係るモニタリングシステムSの全体構成について、図1~5を参照しながら、具体的に説明する。
【0025】
モニタリングシステムSは、図1、2及び3に示すように、ミリ波を照射するミリ波センサ1と、被験者Hのバイタル情報を取得するバイタル情報取得装置2と、を備えている。
なお、ミリ波とは、周波数が30(GHz)~300(GHz)の範囲にあり、波長が1(mm)~10(mm)の範囲にある電波である。また、ミリ波は、脱衣場及び浴室内であっても良好に伝播することができ、環境温度及び湯気等の影響を受け難い。そのため、ミリ波センサを用いることで、脱衣場D及び浴室Yであっても正確なセンシングを実施することができる。
【0026】
ミリ波センサ1は、ミリ波を照射可能であり、照射したミリ波の反射波を検出する非接触式のセンサである。また、ミリ波センサ1は、バイタル情報取得装置2に向けて、検出したミリ波の反射波に応じた信号を出力する機能を有する。
【0027】
ミリ波センサ1は、図1及び2に示すように、被験者Hのバイタル情報を取得する目的で使用される。具体的に説明すると、ミリ波センサ1は、被験者Hの心臓のある位置付近からのミリ波の反射波を検出する。ここで、反射波は、被験者Hの心拍数に応じた波形を有する。そして、ミリ波センサ1は、反射波に応じた信号を、バイタル情報取得装置2に対して出力する。バイタル情報取得装置2は、ミリ波センサ1の出力信号に基づいて、被験者Hの心拍数の情報を取得することができる。
【0028】
以上のように、本実施形態において、ミリ波センサ1は、被験者Hの心拍数に応じた波形の反射波を検出するものである。そのため、ミリ波センサ1は、図1及び2に示すように、被験者Hの心臓の位置と対応するように天井、又は壁における比較的高い箇所に複数設置されるのが好ましい。この場合には、被験者Hの心臓付近に、より適切にミリ波を照射することができ、心拍数を反映したミリ波の反射波をより適切に検出することができる。
なお、脱衣場D及び浴室Yのそれぞれにおけるミリ波センサ1の設置台数は、特に限定されないが、例えば、脱衣場D及び浴室Yのそれぞれにおいて、被験者H一人が占める範囲(空間)に対して、一台以上のミリ波センサ1を設置するとよい。
【0029】
本実施形態では、ミリ波センサ1として、第1ミリ波センサ11と、第2ミリ波センサ12とが用いられる。
第1ミリ波センサ11は、図1及び2に示すように、脱衣場Dに設けられ、ミリ波を照射し、脱衣場Dに居る被験者Hからのミリ波の反射波を検出し、バイタル情報取得装置2に対して、反射波に応じた信号を出力(送信)する。また、第1ミリ波センサ11は、脱衣場Dにおいて、被験者Hの存在及び位置を検出することができる。
第2ミリ波センサ12は、図1及び2に示すように、浴室Yに設けられ、ミリ波を照射し、浴室Yに居る被験者Hからのミリ波の反射波を検出し、バイタル情報取得装置2に対して、反射波に応じた信号を出力(送信)する。また、第2ミリ波センサ12は、浴室Yにおいて、被験者Hの存在及び位置を検出することができる。
【0030】
それぞれのミリ波センサ1については、被験者H等の人の心拍数をセンシングすることができる公知のミリ波センサを利用するとよい。また、それぞれのミリ波センサ1は、連続してミリ波を照射することができるとよい。ここで、連続してミリ波を照射する形態は、ミリ波を常時照射する形態の他、ミリ波を周期的に照射する場合の周期が非常に短い形態も含む。
また、ミリ波センサ1の構造、機構、及び材質は、ミリ波を照射し、被験者Hからのミリ波の反射波を検出し、反射波に応じた信号を出力することができれば、特に限定されないが、脱衣場や浴室に設置される理由から耐水性に優れたものであることが好ましい。
【0031】
本実施形態において、各ミリ波センサ1は、設定された所定の時間内の各時点において、ミリ波を照射し、被験者Hからのミリ波の反射波を検出し、反射波に応じた信号を出力する。所定の時間は、入浴前、入浴中、及び入浴後の各段階において、被験者Hの状態(換言すると、血圧値等)が正常であるかを適切に判断するのに必要な分のバイタル情報を取得できるような時間として設定される。本実施形態では、所定の時間として、具体的には、第1時間、第2時間、第3時間、第4時間、及び第5時間が設定される。
【0032】
第1ミリ波センサ11は、第1時間内の各時点において、ミリ波を照射し、被験者Hからのミリ波の反射波を検出し、反射波に応じた信号を出力する。第1時間は、被験者Hが脱衣場Dに居る期間中の時間として設定され、第1時間には、第1時間内の被験者Hの血圧値等が正常範囲内であるかを判定するために、脱衣場Dに居る被験者Hの血圧値等が取得される。よって、第1時間としては、その時間内に誤差が少ない血圧値を所定数得ることができる時間が設定される。具体的には、例えば、第1時間は、脱衣場Dに移動した被験者Hの心拍数が安定した後の30秒間程度の時間であるとよい。なお、第1時間の長さは、特に限定されず、任意に決めてもよい。
【0033】
第2ミリ波センサ12は、第2時間及び第3時間内の各時点において、ミリ波を照射し、被験者Hからのミリ波の反射波を検出し、反射波に応じた信号を出力する。第2時間及び第3時間は、被験者Hが浴室Yに居る期間中の時間として設定される。第2時間には、第2時間内の被験者Hの血圧値等が正常範囲内であるかを判定するために、浴室Yに居る被験者Hの血圧値等が取得される。よって、第2時間としては、その時間内に誤差が少ない血圧値を所定数得ることができる時間が設定される。具体的には、例えば、第2時間は、浴室Yに移動した被験者Hの心拍数が安定した後の30秒間程度の時間であるとよい。なお、第2時間の長さは、特に限定されず、任意に決めてもよい。
【0034】
第3時間には、第3時間内の血圧値等が正常範囲内であり、且つ、入浴を継続可能な範囲内にあるか判定するために、浴槽Bに入っている被験者Hの血圧値等が取得される。よって、第3時間としては、血圧値の変動状況をリアルタイムに算出することができる時間が設定される。ここで、血圧値の変動状況には、血圧値の変動幅が含まれ、変動幅は、現時点の血圧値と直前時点の血圧値との差分でもよく、現時点の血圧値と平均血圧値との差分でもよく、あるいは、第3時間における血圧値の最大値と最小値との差分でもよい。
また、第3時間は、例えば、被験者Hが浴槽Bに入って入浴している期間中の5秒間程度の時間であるとよい。なお、第3時間の長さは、特に限定されず、任意に決めてもよい。
【0035】
第4時間は、被験者Hが浴室Y又は脱衣場Dにて移動する期間中の時間として設定される。第4時間に取得された血圧値は、被験者Hの状態の異常を判定する上で不要な情報として処理される。第4時間において取得される血圧値については、誤差が大きくなる可能性が高くなり、換言すると、第4時間としては、各時点で取得される血圧値の間で誤差が大きくなる時間が設定される。
第4時間は、例えば、被験者Hが脱衣場D及び浴室Yの間を移動する前後の60秒間程度の時間、及び、被験者Hが浴槽Bを出入りする前後の60秒間程度の時間であるとよい。なお、第4時間の長さは、特に限定されず、任意に決めてもよい。
【0036】
なお、入浴に伴うヒートショック症状は、入浴終了直後に起こりやすく、入浴終了直後には、被験者Hの血圧値を直ちに取得することが好ましい。その点を踏まえると、入浴終了直後における第4時間については、60秒より短い時間が設定されるのがよい。なお、本実施形態では、入浴終了直後の第4時間が設定されていない。その一方で、入浴開始直前及び直後、並びに入浴終了直前においては、60秒間程度の第4時間が設定されている。
【0037】
第5時間は、被験者Hが浴室Y及び脱衣場Dのそれぞれに居る期間中の時間として設定される。第5時間には、後述の基準バイタル情報4を算出するのに必要なバイタル情報、具体的には、被験者Hの入浴前及び入浴中の血圧値等が取得される。そのために、第5時間としては、その時間内に誤差が少ない血圧値を所定数得ることができる時間が設定される。具体的には、例えば、第5時間は、被験者Hの心拍数が安定した後の、30秒間程度の時間であるとよい。なお、第5時間の長さは、特に限定されず、任意に決めてもよい。
【0038】
本実施形態では、入浴前の第5時間については、入浴前の第1時間と同じ時間が設定されている。つまり、入浴前の第1時間は、入浴前の第5時間に相当し、その時間において、脱衣場Dに居る被験者Hの血圧値等が正常範囲内にあるかが判定され、また、その時間に取得された血圧値等に基づいて基準バイタル情報4が算出される。
また、本実施形態では、入浴終了前の第4時間の直前の時間(30秒間程度の時間)が、バイタル情報取得装置2によって入浴中の第5時間として設定される。
【0039】
バイタル情報取得装置2は、ミリ波センサ1から出力された信号に基づいて、被験者Hの血圧値等を取得し、取得された血圧値等に基づいて、被験者Hの状態が正常であるかを判定する処理を実行する情報処理装置である。また、バイタル情報取得装置2は、ミリ波センサ1からの出力信号を受信したり、介護者Kにバイタル情報の判定結果を、モニタ等の表示装置5を通じて知らせたりする処理を実行する機能を有する。つまり、バイタル情報取得装置2は、表示装置5にバイタル情報の判定結果を表示することにより、被験者Hのバイタル情報が異常である場合には、そのことを介護者Kに知らせることができる。
【0040】
バイタル情報取得装置2は、図3に示すように、コンピュータからなり、その構成機器として、プロセッサ21、及びメモリ22を有する。
プロセッサ21が各種の処理を実行し、取得した各種の情報をメモリ22に保存することにより、バイタル情報取得装置2は、その機能を発揮する。
バイタル情報取得装置2には、情報処理装置としての機能が備わっているが、当該情報処理装置としての機能の一部が、モニタリングシステムSが利用される介護施設の外に設置された他のコンピュータ、例えば、外部のサーバに備わっていてもよい。
【0041】
プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるとよい。
メモリ22は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成されるとよい。
【0042】
本実施形態において、バイタル情報取得装置2の設置場所は、図1及び2では、脱衣場Dであるが、バイタル情報取得装置2の通信機能が正常に機能すれば、特に限定されず、例えば、バイタル情報取得装置2が浴室Yに設けられてもよく、あるいは、介護施設において脱衣場D又は浴室Yのいずれとも異なる空間(部屋)に設けられてもよい。
【0043】
バイタル情報取得装置2は、ミリ波センサ1から出力された反射波の信号を受信し、受信した信号から、被験者Hの心拍数の情報を取得する。そして、バイタル情報取得装置2は、取得した被験者Hの心拍数の情報を変換し、被験者Hのバイタル情報として、被験者Hの血圧値の情報を取得する。
なお、センサによって計測された心拍数を血圧値に変換する方法としては、特開2021-176426号公報、及び特開2023-37552号公報に開示された方法を利用してもよい。
【0044】
また、バイタル情報取得装置2は、所定の時間内の各時点における被験者Hの心拍数及び血圧値から、当該所定の時間内での心拍数及び血圧値のそれぞれの平均値及び変動幅を算出する。なお、バイタル情報取得装置2は、所定の時間内の各時点における被験者Hの心拍数及び血圧値に基づいて、当該所定の時間内における心拍数及び血圧値以外のバイタル情報を新たに算出してもよい。
【0045】
バイタル情報取得装置2は、取得した被験者Hのバイタル情報(すなわち、血圧値等)の一部を、計測バイタル情報3及び基準バイタル情報4として、バイタル情報取得装置2内のメモリ22に保存することができる。
バイタル情報取得装置2は、被験者Hの基準バイタル情報4に基づいて、被験者Hの計測バイタル情報3を判定することで、被験者Hの状態(換言すると、バイタル情報)を適切に判定することができる。
また、バイタル情報取得装置2は、メモリ22に保存された被験者Hの基準バイタル情報4と、新たに取得した被験者Hの血圧値等とを照合して、被験者Hを識別することができてもよい。
【0046】
計測バイタル情報3は、図4に示すように、バイタル情報取得装置2により取得され、脱衣場D及び浴室Yに居る時点の被験者Hの血圧値等である。具体的には、計測バイタル情報3には、被験者Hの識別番号、情報取得の日時、情報取得時点に被験者Hが脱衣場及び浴室のどこに居たか、心拍数(回/分)、平均心拍数(回/分)、血圧値(mmHg)、平均血圧値(mmHg)、及び血圧値変動幅(mmHg)の情報等が含まれる。また、計測バイタル情報3は、被験者H毎に取得される。
【0047】
基準バイタル情報4は、図5に示すように、バイタル情報取得装置2により取得され、メモリ22に被験者H毎に保存された、被験者Hの状態異常の有無についての判定基準となるバイタル情報であり、入浴前の基準バイタル情報4と、入浴中の基準バイタル情報4とを含む。それぞれの基準バイタル情報4には、被験者H毎に、被験者Hの識別番号、情報取得の日時、平均心拍数(回/分)、平均血圧値(mmHg)、及び血圧値変動幅(mmHg)の情報等が含まれる。
また、入浴前の基準バイタル情報4は、入浴前の第1時間の各時点においてバイタル情報取得装置2によって取得されたバイタル情報(血圧値等)に基づいて得られる。
また、入浴中の基準バイタル情報4は、入浴中の第5時間の各時点においてバイタル情報取得装置2によって取得されたバイタル情報(血圧値等)に基づいて得られる。
【0048】
被験者Hの識別番号は、被験者Hのそれぞれに付与された、各被験者Hに固有の識別番号である。
平均心拍数とは、所定の時間内に取得された心拍数の平均値である。
平均血圧値とは、所定の時間内に取得された心拍数を変換して得られた血圧値の平均値である。
血圧値変動幅とは、所定の時間内における各時点の血圧値と当該所定の期間での平均血圧値との差を示す数値である。
【0049】
また、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの基準バイタル情報4に基づいて、被験者Hの状態が正常であるかを判定するための判定条件(所定の条件)を設定する。また、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの計測バイタル情報3が上述の判定条件を満たすかを判定する。
バイタル情報取得装置2は、計測バイタル情報3が上述の判定条件を満たす場合には、被験者Hのバイタル情報(状態)が正常であると判定し、計測バイタル情報3が上述の判定条件を満たさない場合には、被験者Hのバイタル情報(状態)が異常であると判定する。また、その判定結果は、バイタル情報取得装置2の機能を通じて介護者K等に知らされる。
【0050】
そして、バイタル情報取得装置2が、被験者Hのバイタル情報が正常であると判定した場合、被験者Hは、入浴を開始、継続、及び終了することができ、異常であると判定した場合、被験者Hは、入浴を開始、継続、あるいは終了することが制限される。
【0051】
また、本実施形態において、バイタル情報取得装置2は、入浴前、入浴中、及び入浴後の各時点において被験者Hのバイタル情報(血圧値等)を複数回取得し、各回のバイタル情報が異常であるかを判定してもよい。そして、異常であるという判定結果が連続して所定回数以上続く場合に、その判定結果、すなわち被験者Hのバイタル情報の異常を介護者K等に知らせてもよい。所定回数については、特に限定されないが、本実施形態では3回であることとする。
【0052】
血圧値等に対する判定基準としての判定条件は、被験者Hが入浴に伴ってヒートショック症状等の異常状態になっているかどうか、あるいはその異常状態の傾向(予兆)があるかどうかを判定するための基準値(閾値)である。本実施形態では、判定条件は、被験者Hの血圧値等に対して設定される条件値(閾値)である。また、判定条件には、第1条件、第2条件、第3条件、第4条件、及び第5条件が含まれる。これらの条件は、被験者H毎に設定され、例えば、バイタル情報取得装置2のメモリ22に保存される。
【0053】
第1条件は、被験者Hが浴室Yに居る場合に適用される条件値であり、例えば、第2時間の平均血圧値が160(mmHg)以下であり、且つ、第2時間内の各時点における血圧値の差が30(mmHg)以下であるかという条件である。ここでの血圧値の差とは、入浴前の基準バイタル情報4が示す平均血圧値と、第2時間内の各時点における計測バイタル情報3が示す血圧値との差である。
なお、第1条件による判定を通じて、被験者Hが入浴を継続することが可能であるかを確認することができる。
【0054】
第2条件は、入浴後に被験者Hが脱衣場Dに居る場合に適用される条件値であり、例えば、第1時間の平均血圧値が160(mmHg)以下であり、且つ、第1時間内の各時点における血圧値の差が30(mmHg)以下であるかという条件である。ここでの血圧値の差とは、入浴中の基準バイタル情報4が示す平均血圧値と、第1時間内の各時点における計測バイタル情報3が示す血圧値との差である。
なお、第2条件による判定を通じて、被験者Hが入浴を終了することが可能であるかを確認することができる。
【0055】
第3条件は、被験者Hが入浴中である場合に適用される条件値であり、例えば、第2時間の平均血圧値が160(mmHg)以下であり、且つ、それぞれの第3時間の計測バイタル情報3が示す平均血圧値同士の差が30(mmHg)以下であり、且つ、入浴前の基準バイタル情報4が示す平均血圧値と、それぞれの第3時間の計測バイタル情報3が示す平均血圧値との差が、30(mmHg)以下であるかという条件である。
なお、第2条件による判定を通じて、被験者Hが入浴を継続することが可能であるかを確認することができる。
また、第3条件には、他の判定条件と異なり、第3時間前に取得した計測バイタル情報3に基づいて、現在取得した計測バイタル情報3を判定する条件が含まれる。
【0056】
第4条件は、入浴前に被験者Hが脱衣場Dに居る場合に適用される条件値であり、例えば、第1時間の平均血圧値が160(mmHg)以下であるかという条件である。
なお、第4条件による判定を通じて、被験者Hが入浴を開始することが可能であるかを確認することができる。
【0057】
第5条件は、被験者Hが脱衣場D及び浴室Yの間を移動した直後に適用される条件値であり、具体的には、心拍数が正常である場合の数値範囲内であるかという条件である。なお、第5条件による判定を通じて、ミリ波センサ1が正常に動作してミリ波が正しく被験者Hの心臓付近に照射されているかを確認することができる。
【0058】
[本実施形態に係るモニタリングシステムの使用方法]
本実施形態に係るモニタリングシステムSの基本的な使用方法について、図1及び2を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、バイタル情報取得装置2が、被験者Hの血圧値等がすべて正常であると判定し、被験者Hの入浴の開始、継続、及び終了がいずれも可能であるという判定結果が、表示装置5を通じて介護者Kに知らせられるケースを想定することとする。
【0059】
まず、図1に示すように、介護者Kは、被験者Hを脱衣場Dへ連れて行き、被験者Hの脱衣場Dでの脱衣を補助する。被験者Hの脱衣が完了すると、その時点での被験者Hの心拍数が第1ミリ波センサ11によって検出され、心拍数が正常範囲内であることを確認できた場合、介護者Kは、被験者Hを所定の時間安静にさせる。その後、その時点での被験者Hの血圧値等がバイタル情報取得装置2により取得され、血圧値等が正常範囲内であることを確認できた場合、介護者Kは、被験者Hを脱衣場Dから浴室Yへ連れて行く。
【0060】
次に、図2に示すように、介護者Kは、被験者Hを浴室Yへ連れて行き、その時点での被験者Hの心拍数が第2ミリ波センサ12により検出された上で、心拍数が正常範囲内であることを確認する。被験者Hの心拍数が正常範囲内であることを確認できた場合、介護者Kは、被験者Hを浴室Yで浴槽Bに入れ(入浴させ)、被験者Hを所定の時間安静にさせる。
【0061】
そして、被験者Hを所定の時間安静にさせると、その時点での被験者Hの血圧値等がバイタル情報取得装置2により取得され、介護者Kは、血圧値等が正常範囲内であることを確認する。その後、被験者Hの血圧値等が正常範囲内であることを確認できた場合、介護者Kは、被験者Hの浴室Yでの浴槽Bへの入浴を補助する。
さらに、入浴期間中、被験者Hの血圧値等が所定間隔で取得され、介護者Kは、各時点での血圧値等が正常範囲内であることを確認し続けながら、被験者Hの入浴を継続的に補助する。
被験者Hの浴槽Bへの入浴が完了すると、介護者Kは、被験者Hを浴室Yから脱衣場Dへ連れて行く。
【0062】
その後、図1に示すように、介護者Kは、被験者Hを脱衣場Dへ連れて行き、その時点での被験者Hの心拍数が第1ミリ波センサ11によって検出されると、介護者Kは、心拍数が正常範囲内であることを確認する。被験者Hの心拍数が正常範囲内であることを確認できた場合、介護者Kは、被験者Hを、所定の時間安静にさせる。そして、入浴後の被験者Hの血圧値等がバイタル情報取得装置2により取得され、血圧値等が正常範囲内であることを確認できた場合、介護者Kは、被験者Hの脱衣場Dでの着衣を補助する。
被験者Hの着衣が完了すると、その入浴回におけるモニタリングシステムSの使用が終了する。
【0063】
[本実施形態に係るモニタリングシステムの情報処理フロー]
本実施形態に係るモニタリングシステムSの情報処理フローについて、図6~9を参照しながら、介護者K及び被験者Hの動作と併せて具体的に説明する。
【0064】
情報処理フローにおいて、情報処理装置を構成するバイタル情報取得装置2は、逐次、ミリ波センサ1及び表示装置5と通信し、ミリ波センサ1及び表示装置5との間で信号及びデータの送受信を行う。また、バイタル情報取得装置2は、ミリ波センサ1等から受信した信号に基づいて情報処理フローを実施し、同情報処理フロー中の各ステップを進める。また、情報処理フローの実施中、表示装置5の表示画面は、入浴に関する被験者Hの行動、具体的には脱衣、入浴、及び着衣の進み具合、換言すると情報処理フローの進行状況に応じて遷移する。
【0065】
以下では、主として、バイタル情報取得装置2側の処理について説明することとする。
なお、以下に説明する情報処理フローは、あくまでも一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、ステップの実施順序を入れ替えたりしてもよい。
【0066】
モニタリングシステムSによる全体的な情報処理のフロー(以下、全体処理フロー)について、図6を参照しながら説明する。
【0067】
全体処理フローとは、介護者Kの介護を受けながら被験者Hが入浴のために脱衣場D及び浴室Yを使用する場合に、モニタリングシステムSが、入浴前から入浴後までの期間に渡って被験者Hの血圧値等をモニタリングする一連の情報処理である。
具体的に説明すると、全体処理フローでは、モニタリングシステムSの処理として、図6に示すように、入浴前の情報処理フロー(以下、第1情報処理フロー)と、入浴中の情報処理フロー(以下、第2情報処理フロー)と、入浴後の情報処理フロー(以下、第3情報処理フロー)と、がこの順序で実施される。
【0068】
以降に、第1情報処理フロー、第2情報処理フロー、及び第3情報処理フローのそれぞれについて説明する。
【0069】
[入浴前の第1情報処理フロー]
第1情報処理フローは、被験者Hが入浴前に脱衣場Dに居る期間中において、被験者Hのバイタル情報、すなわち被験者Hの血圧値等をモニタリングし、血圧値等に基づいて、被験者Hの状態が正常で入浴可能であるかどうかを判定する目的で実施される。以下、第1情報処理フローの流れについて、図7を参照しながら説明する。
【0070】
第1情報処理フローは、被験者Hが脱衣場Dに居ることをバイタル情報取得装置2が認識するところから始まる。具体的に説明すると、被験者Hが脱衣場Dに居る間、脱衣場Dに設置された第1ミリ波センサ11がミリ波を照射し、被験者Hの心臓付近にて反射されたミリ波の反射波を検出する。そして、検出された反射波に応じた信号が第1ミリ波センサ11から出力され、バイタル情報取得装置2は、その出力信号を受信する。これにより、バイタル情報取得装置2は、被験者Hが脱衣場Dに居ることを認識し、また、上述の出力信号から、被験者Hの心拍数の情報を取得する(S001)。
【0071】
また、本実施形態において、バイタル情報取得装置2は、取得された被験者Hの心拍数の情報から、被験者Hを識別することができる。そして、バイタル情報取得装置2は、識別された被験者Hと対応する第5条件(詳しくは、第5条件として規定される数値範囲)をメモリ22から読み出し、ステップS001にて取得された心拍数が第5条件を満たしているかどうかを判定する(S002)。心拍数が第5条件を満たしている場合(S002:YES)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの心拍数が正常範囲内であると判定する。なお、この時点で、被験者Hの脱衣は完了していることとする。
【0072】
一方、心拍数が第5条件を満たしていない場合(S002:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの心拍数が正常範囲内でないと判定する。この場合バイタル情報取得装置2は、再度ステップS001に戻り、第1ミリ波センサ11からの出力信号を再度受信して、被験者Hの心拍数の情報を再度取得する(S001)。
【0073】
被験者Hの心拍数が正常範囲内である場合(S002:YES)、バイタル情報取得装置2は、その後の60秒間程度の時間を第4時間とし、第4時間内に第1ミリ波センサ11から受信した信号を、不要な情報として除外する。なお、この時点で、被験者Hは脱衣場D内で安静にしている。
【0074】
そして、第4時間が経過した(S003)後、バイタル情報取得装置2は、その後の30秒間程度の時間を第1時間及び第5時間として設定し、第1時間における血圧値等の計測バイタル情報3を取得する(S004)。ここで、第1時間と第5時間とは、同じ時間に設定されており、ステップS004において、バイタル情報取得装置2は、第1時間に取得した計測バイタル情報3に基づいて、入浴前の第5時間における基準バイタル情報4を算出してメモリ22に保存する(S005)。
【0075】
その後、バイタル情報取得装置2は、被験者Hと対応する第4条件(詳しくは、第4条件として規定される条件値)をメモリ22から読み出し、ステップS004にて取得された計測バイタル情報3、つまり第1時間(第5時点)の各時点に取得された血圧値等が、被験者Hと対応する第4条件を満たしているかどうかを判定する(S006)。
【0076】
計測バイタル情報3が第4条件を満たしている場合(S006:YES)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が正常範囲内であると判定し、その判定結果を介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S007)。そして、被験者Hの血圧値等が正常範囲内であるという判定結果が知らされた場合、介護者Kは、被験者Hが入浴可能であると判断する。
一方、計測バイタル情報3が第4条件を満たしていない場合(S006:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が正常範囲内でないと判定する。この場合、バイタル情報取得装置2は、ステップS005の判定回数が1回目又は2回目であるかを判定する(S008)。
【0077】
ステップS005の判定回数が1回目又は2回目であると判定された場合(S008:YES)、バイタル情報取得装置2は、再度ステップS004へと戻り、30秒間程度の時間をだい1時間として設定し、第1時間における被験者Hの血圧値等のバイタル情報を取得する(S004)。
一方、ステップS005の判定回数が1回目又は2回目でないと判定された場合(S008:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が異常であるという判定結果を、介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S009)。そして、被験者Hの血圧値等が異常であるという判定結果が知らされた場合、介護者Kは、被験者Hが入浴不可であると判断する。
【0078】
ステップS007又はステップS009の実施後、バイタル情報取得装置2が脱衣場Dにおける被験者Hの存在を認識しなくなった時点、すなわち、被験者Hが脱衣場Dから浴室Yに移動した時点で、第1情報処理フローが終了する。
【0079】
[入浴中の第2情報処理フロー]
第2情報処理フローは、被験者Hが浴室Yに居る期間中において、被験者Hのバイタル情報、すなわち被験者Hの血圧値等をモニタリングし、血圧値等に基づいて、被験者Hの状態が正常で入浴継続可能であるかどうかを判定する目的で実施される。以下、第2情報処理フローについて、図8を参照しながら説明する。
【0080】
第2情報処理フローは、被験者Hが浴室Yに居ることをバイタル情報取得装置2が認識するところから始まる。具体的に説明すると、被験者Hが浴室Yに居る間、浴室Yに設置された第2ミリ波センサ12がミリ波を照射し、被験者Hの心臓付近にて反射されたミリ波の反射波を検出する。そして、検出された反射波に応じた信号が第2ミリ波センサ12から出力され、バイタル情報取得装置2は、その出力信号を受信する。これにより、バイタル情報取得装置2は、被験者Hが浴室Yに居ることを認識し、また、上述の出力信号から、被験者Hの心拍数の情報を取得する(S021)。
【0081】
その後、バイタル情報取得装置2は、第1情報処理フローのステップS002と同様の要領で、ステップS021にて取得された心拍数が第5条件を満たしているかどうかを判定する(S022)。
【0082】
心拍数が第5条件を満たしていない場合(S022:NO)、バイタル情報取得装置2は、再度ステップS021に戻り、第2ミリ波センサ12からの出力信号を再度受信して、被験者Hの心拍数の情報を再度取得する(S021)。
【0083】
一方、心拍数が第5条件を満たしている場合(S022:YES)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの心拍数が正常範囲内であると判定し、その後の60秒間程度の時間を第4時間とし、第4時間内に第2ミリ波センサ12から受信した信号を、不要な情報として除外する。なお、この時点で、被験者Hは、浴槽B内に入り安静にしている。
【0084】
そして、第4時間が経過した(S023)後、バイタル情報取得装置2は、浴槽B内に入っている被験者Hの血圧値等のバイタル情報を取得する。具体的に説明すると、バイタル情報取得装置2は、第4時間が経過した後の30秒間程度の時間(第2時間)を第2時間として設定し、第2時間の各時点に第2ミリ波センサ12から受信した信号に基づいて、第2時間の各時点における被験者Hの血圧値等の計測バイタル情報3を取得する(S024)。
【0085】
その後、バイタル情報取得装置2は、被験者Hと対応する第1条件(詳しくは、第1条件として規定される条件値)をメモリ22から読み出し、ステップS024にて取得された計測バイタル情報3、つまり、第2時間の各時点に取得された血圧値等が、被験者Hと対応する第1条件を満たしているかどうかを判定する(S025)。
【0086】
計測バイタル情報3が第1条件を満たしている場合(S025:YES)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が正常範囲内であると判定し、その判定結果を介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S026)。そして、入浴中の被験者Hの血圧値等が正常範囲内であるという判定結果が知らされた場合、介護者Kは、被験者Hが入浴継続可能であると判断する。
【0087】
一方、計測バイタル情報3が第1条件を満たしていない場合(S025:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が正常範囲内でないと判定する。この場合、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が異常であるという判定結果を、介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S027)。そして、入浴中の血圧値等が正常範囲内でないという判定結果が知らされた場合、介護者Kは、被験者Hの入浴を中止すべきであると判断する。
【0088】
また、バイタル情報取得装置2は、ステップS026の処理を実行した場合、その後の入浴期間において5秒間程度の第3時間を一定間隔毎に繰り返し設定し、各第3時間における被験者Hの血圧値等の計測バイタル情報3を取得する(S028)。そして、バイタル情報取得装置2は、入浴中の被験者Hと対応する第3条件(詳しくは、第3条件として規定される条件値)をメモリ22から読み出し、ステップS028にて取得された計測バイタル情報3が第3条件を満たしているかを判定する(S029)。
【0089】
計測バイタル情報3が第3条件を満たしている場合(S029:YES)、バイタル情報取得装置2は、入浴中の被験者Hの血圧値等が正常範囲内であると判定し、その判定結果を介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S030)。そして、入浴中の被験者Hの血圧値等が正常範囲内であるという判定結果が知らされた場合、介護者Kは、被験者Hが入浴継続可能であると判断する。
一方、計測バイタル情報3が第3条件を満たしていない場合(S029:NO)、バイタル情報取得装置2は、入浴中の被験者Hの血圧値等が正常範囲内ではないと判定し、その判定結果を介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S027)そして、入浴中の血圧値等が正常範囲内でないという判定結果が知らされた場合、介護者Kは、被験者Hの入浴を中止すべきであると判断する。
【0090】
ステップS028において入浴中の被験者Hの血圧値等が正常範囲内であると判定した場合、バイタル情報取得装置2は、第2ミリ波センサ12から出力された信号に基づいて、入浴中の被験者Hの心拍数の情報を引き続き取得できているか、すなわち浴槽B内に被験者Hが入っているかを判定する(S031)。そして、バイタル情報取得装置2は、入浴中の被験者Hの心拍数の情報を引き続き取得できている場合(S031:YES)、ステップS028に戻り、次の第3時間における被験者Hの計測バイタル情報3を再度取得する(S028)。
【0091】
一方、入浴中の被験者Hの心拍数の情報を取得できていない場合(S031:NO)、バイタル情報取得装置2は、心拍数の情報を取得できていた期間、すなわち被験者Hが入浴していた期間の中で第5時間を設定し、第5時間内に取得された被験者Hの計測バイタル情報3から、入浴中の基準バイタル情報4を算出してメモリ22に保存する(S033)。ここで、第5時間は、入浴中の被験者Hの心拍数の情報が取得できなくなった時点、すなわち、被験者Hが浴槽Bを出た時点から第4時間に相当する時間だけ遡った時点を時点Aとし、時点Aよりもn秒前(nは、例えば30秒)の時点を時点Bとした場合、時点Bから時点Aまでの時間である。
【0092】
ステップS029において入浴中の被験者Hの血圧値等が正常範囲内ではないと判定した場合、バイタル情報取得装置2は、第2ミリ波センサ12から出力された信号に基づいて、入浴中の被験者Hの心拍数の情報が取得できていないか、すなわち浴槽B内に被験者Hが居ないかを判定する。そして、入浴中の被験者Hの心拍数の情報が取得できていないと判定した場合、バイタル情報取得装置2は、浴槽B内に被験者Hが居なくなったことを認識し(S032)、心拍数の情報を取得できていた期間、すなわち被験者Hが入浴していた期間の中で第5時間を設定し、第5時間内に取得された被験者Hの計測バイタル情報3から、入浴中の基準バイタル情報4を算出してメモリ22に保存する(S033)。
【0093】
ステップS033の実施後、バイタル情報取得装置2が浴室Yにおける被験者Hの存在を認識しなくなった時点、すなわち、被験者Hが浴室Yから脱衣場Dに移動した時点で、第2情報処理フローが終了する。
【0094】
[入浴後の第3情報処理フロー]
第3情報処理フローは、被験者Hが入浴後に脱衣場Dに居る期間中において、被験者Hのバイタル情報、すなわち被験者Hの血圧値等をモニタリングし、血圧値等に基づいて、被験者Hの状態が正常であるかどうかを判定する目的で実施される。以下、第3情報処理フローについて、図9を参照しながら説明する。
【0095】
第3情報処理フローは、入浴後の被験者Hが脱衣場Dに居ることをバイタル情報取得装置2が認識するところから始まる。具体的に説明すると、被験者Hが浴室Yから脱衣場Dに移動して脱衣場Dに居る間、脱衣場Dに設置された第1ミリ波センサ11がミリ波を照射し、被験者Hの心臓付近にて反射されたミリ波の反射波を検出する。そして、検出された反射波に応じた信号が第1ミリ波センサ11から出力され、バイタル情報取得装置2は、その出力信号を受信する。これにより、バイタル情報取得装置2は、被験者Hが脱衣場Dに居ることを認識し、また、上述の出力信号から、被験者Hの心拍数の情報を取得する(S041)。
【0096】
その後、バイタル情報取得装置2は、第1情報処理のフローのステップS002と同様の要領で、ステップS041にて取得された心拍数が第5条件を満たしているかどうかを判定する(S042)。
【0097】
被験者Hの心拍数が第5条件を満たしていない場合(S042:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの心拍数が正常範囲内ではないと判定し、再度ステップS041に戻り、被験者Hの心拍数の情報を再度取得する(S041)。
【0098】
一方、ステップS042において、心拍数が第5条件を満たしている場合(S042:YES)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの心拍数が正常範囲内であると判定し、その後の30秒間程度の時間を第1時間とし、第1時間の各時点での計測バイタル情報3を取得する(S043)。その後、バイタル情報取得装置2は、被験者Hと対応する第2条件(詳しくは、第2条件として規定される条件値)をメモリ22から読み出し、ステップS043にて取得された計測バイタル情報3、つまり、第1時間の各時点に取得された血圧値等が第2条件を満たしているかどうかを判定する(S044)。
【0099】
計測バイタル情報3が第2条件を満たしている場合(S044:YES)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が正常範囲内であると判定し、その判定結果を介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S045)。
一方、計測バイタル情報3が第2条件を満たしていない場合(S044:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が正常範囲内でないと判定する。この場合、バイタル情報取得装置2は、ステップS044の判定回数が1回目又は2回目であるかを判定する(S046)。
【0100】
ステップS044の判定回数が1回目又は2回目であると判定された場合(S046:YES)、バイタル情報取得装置2は、再度ステップS043に戻り、30秒間程度の時間を第1時間として設定し、第1時間における被験者Hの心拍数及び血圧値等のバイタル情報を取得する(S043)。
一方、ステップS044の判定回数が1回目又は2回目でないと判定された場合(S046:NO)、バイタル情報取得装置2は、被験者Hの血圧値等が異常であるという判定結果を、介護者Kに対して知らせる処理を実行する(S047)。
【0101】
ステップS045又はステップS047の実施後、バイタル情報取得装置2が脱衣場Dにおける被験者Hの存在を認識しなくなった時点、すなわち、被験者Hが着衣して脱衣場Dを出た時点で、第3情報処理フローが終了する。
【0102】
[本実施形態に係るモニタリングシステムの効果]
本実施形態に係るモニタリングシステムSがもたらす効果について、図1、2、及び10を参照しながら、具体的に説明する。
【0103】
比較例のモニタリングシステムXでは、被験者Hが入浴する際、図10に示すように、比較例に係る血圧測定器6によって、被験者Hの血圧値等のバイタル情報を定期的に取得し、正常であるかを判定する場合がある。
【0104】
しかしながら、比較例に係る血圧測定器6としては、例えば、接触式のカフ式血圧計、又はホルター心電図等が利用され、これらの種類の血圧測定器6では、被験者Hの血圧値等のバイタル情報の取得(測定)に手間がかかり、血圧値が不安定になる傾向にある高齢者に対して使用した場合に、精度よく血圧値を測定することが困難であった。また、装着式のホルター心電図用のセンサを被験者Hに装着することで、血圧値を常時モニタリングすることができるが、費用及び手間の観点から、ホルター心電図用のセンサを被験者Hすべてに装着することは、現実的に難しい。
【0105】
そのため、比較例のモニタリングシステムXでは、入浴中及び入浴前後の被験者Hのバイタル情報を効率よく取得できず、適切に被験者Hの状態の異常を発見できない可能性があり、入浴に伴う被験者Hの状態の異常及びその予兆を正しく判断できない虞があった。
【0106】
これに対して、図1、2及び3に示す、本実施形態のモニタリングシステムSは、ミリ波を照射し、被験者Hからの反射波に応じた信号を出力するミリ波センサ1と、ミリ波センサ1の出力信号に基づいて、被験者Hのバイタル情報を取得するバイタル情報取得装置2と、を備える。ミリ波センサ1は、脱衣場Dに設けられ、脱衣場Dに居る被験者Hからの反射波に応じた信号を出力する、第1ミリ波センサ11と、浴室Yに設けられ、浴室Yに居る被験者Hからの反射波に応じた信号を出力する第2ミリ波センサ12と、を含む。
【0107】
そして、本実施形態のモニタリングシステムSでは、バイタル情報取得装置2が、ミリ波センサ1から出力された被験者Hの心拍数に関する信号を変換し、被験者Hのバイタル情報として血圧値の情報を取得する。これにより、ヒートショック症状が起きる直接の原因となる血圧値及び血圧値の変動状況等の情報を取得し、入浴前後、及び入浴中の各段階における被験者Hの状態が異常であるかを、適切に判定することができる。
【0108】
本実施形態のモニタリングシステムSでは、ミリ波センサ1を利用することで、被験者Hの体勢及び位置、並びに測定環境等によってバイタル情報の測定精度が左右されにくくなり、湯気のある脱衣場D及び浴室Y内であっても、被験者Hのバイタル情報を遠隔で、且つ精度よくモニタリングすることができる。つまり、本実施形態のモニタリングシステムSによれば、入浴前後、及び入浴中の各段階における被験者Hのバイタル情報を正確に取得することができ、これにより、入浴に伴う被験者Hの状態、及びその変化状況を適切に判断することができる。
【0109】
また、本実施形態のモニタリングシステムSによれば、入浴前に取得した被験者Hのバイタル情報(血圧値等)を、入浴中の被験者Hの状態を判定する際の基準値として利用する。これにより、入浴中の被験者Hの状態が異常であるかどうかを、その被験者Hの入浴直前のバイタル情報を踏まえて適切に判断することができる。この結果、介護者Kは、脱衣場Dから浴槽Bへの移動時に被験者Hの血圧値が乱高下する事態、具体的にはヒートショック症状及びその予兆を正しく発見することができる。
【0110】
同様に、本実施形態のモニタリングシステムSによれば、入浴中に取得した被験者Hのバイタル情報(心拍数や血圧値等)を、入浴後の被験者Hの状態を判定する際の基準値として利用する。これにより、入浴後の被験者Hの状態が正常であるかを、当該被験者Hの入浴中のバイタル情報を踏まえて適切に判断することができる。この結果、介護者Kは、入浴終了後の脱衣場Dへの移動時に被験者Hの血圧値が乱高下する事態、具体的にはヒートショック症状及びその予兆を正しく発見することができる。
【0111】
また、入浴前や入浴中に取得した被験者Hのバイタル情報を、後の段階において、同じ被験者Hの状態が異常であるかどうかを判定する際の判定基準として利用することにより、被験者Hの特徴(厳密には、生理的特徴、及び身体的特徴)を考慮して判定することができる。
【0112】
また、本実施形態のモニタリングシステムSでは、被験者Hが脱衣場Dに居る場合に、バイタル情報取得装置2が、被験者Hのバイタル情報を複数回取得し、各回のバイタル情報が異常であるという判定結果が所定回数以上続く場合には、被験者Hのバイタル情報の異常を知らせるための処理を実行する。これにより、被験者Hが入浴前、あるいは入浴後に脱衣場Dに居る場合には、被験者Hのバイタル情報の異常を確実に判定し、異常である場合には、そのことを介護者Kに適切に知らせることができる。
【0113】
なお、本実施形態では、バイタル情報が異常であるという判定結果が3回以上続く場合に、バイタル情報の異常を介護者Kに知らせる。これにより、バイタル情報の異常であるという判定結果について信憑性(妥当性)が得られた場合に、そのことを介護者Kに知らせることができる。よって、例えば、何らかの原因でバイタル情報が偶発的に異常となったとしても、その時のバイタル情報が異常であると介護者Kに知らせる事態を回避することができる。
【0114】
また、被験者Hが浴室Yに居る場合には、バイタル情報取得装置2は、被験者Hのバイタル情報を取得し、バイタル情報が異常であるという判定結果が得られた場合に、被験者Hのバイタル情報の異常を知らせるための処理を実行する。これにより、被験者Hが入浴している間において、被験者Hのバイタル情報が異常であるかを判定し、異常である場合には、そのことを介護者Kに適切に知らせることができる。
【0115】
さらに、本実施形態のモニタリングシステムSでは、バイタル情報取得装置2は、ミリ波センサ1が所定の時間(具体的には、被験者Hが脱衣場Dに居る期間中の第1時間、及び被験者Hが浴室Yに居る期間中の第2時間)内の各時点に出力した信号に基づいて、当該各時点における被験者Hのバイタル情報を取得する。
これにより、被験者Hの状態を適切に判断するのに必要な分のバイタル情報を取得できるため、入浴前後、及び入浴中の各段階において、被験者Hの状態が異常であるかを、より適切に判定することができる。
【0116】
<<本発明のその他の実施形態について>>
以上までに、本発明のモニタリングシステムに関して、一つの実施形態を例に挙げて説明したが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0117】
上述した実施形態では、ミリ波センサ1が、被験者Hの心拍数に応じた信号を出力するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、ミリ波センサ1が、被験者Hの呼吸量又は呼吸速度に応じた信号、あるいは体温に応じた信号を、バイタル情報取得装置2に対して出力してもよい。
【0118】
上述した実施形態では、入浴する被験者H、すなわちバイタル情報のモニタリング対象が一人の被験者Hである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、二人以上の被験者Hが同じタイミングで入浴してもよく、この場合、上述の実施形態におけるモニタリングを利用し、二人以上の被験者Hのバイタル情報を同時期に取得し、それぞれの被験者Hのバイタル情報が異常であるかを判定してもよい。
【0119】
上述した実施形態では、バイタル情報取得装置2が脱衣場Dに設置されていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、バイタル情報取得装置2が、図11に示すように、介護施設において脱衣場D又は浴室Yのいずれとも異なる空間(部屋)に設置されていてもよい。また、バイタル情報取得装置2は、図12に示すように、二台以上設置されてもよく、例えば、脱衣場Dと浴室Yのそれぞれに設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0120】
S モニタリングシステム
X モニタリングシステム
H 被験者
K 介護者
D 脱衣場
Y 浴室
B 浴槽
1 ミリ波センサ
2 バイタル情報取得装置
3 計測バイタル情報
4 基準バイタル情報
5 表示装置
6 血圧測定器
11 第1ミリ波センサ
12 第2ミリ波センサ
21 プロセッサ
22 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12