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特開2024-171625医療情報処理システム、医療情報処理方法および医療情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171625
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医療情報処理システム、医療情報処理方法および医療情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20241205BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088739
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 智
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】ユーザが実際に受診する前に納得感の高い判断を容易に行うこと。
【解決手段】実施形態に係る医療情報処理システムは、仮想空間内のデジタルツイン病院から、ユーザに対する仮想診療により生成された仮想診療情報を取得する仮想受診部と、複数の前記デジタルツイン病院から取得された複数の前記仮想診療情報に基づいて分析情報を生成する分析部と、前記ユーザに前記分析情報を提示する情報提示部と、を備える。前記仮想診療は前記デジタルツイン病院に対応する現実の病院に関する情報と、前記ユーザの医療関連情報とに基づいて行われる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間内のデジタルツイン病院から、ユーザに対する仮想診療により生成された仮想診療情報を取得する仮想受診部であって、前記仮想診療は前記デジタルツイン病院に対応する現実の病院に関する情報と、前記ユーザの医療関連情報とに基づいて行われる、仮想受診部と、
複数の前記デジタルツイン病院から取得された複数の前記仮想診療情報に基づいて分析情報を生成する分析部と、
前記ユーザに前記分析情報を提示する情報提示部と、
を備える医療情報処理システム。
【請求項2】
前記分析情報は、前記複数のデジタルツイン病院から提案された治療方法を比較可能に表示するための情報である、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項3】
前記分析情報は、前記複数のデジタルツイン病院から提案された治療方法を回答数の多い順にグラフ表示するための情報である、請求項2に記載の医療情報処理システム。
【請求項4】
前記分析情報は、前記複数のデジタルツイン病院を比較可能に表示するための情報である、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項5】
前記分析情報は、前記複数のデジタルツイン病院から提案された治療方法のうちのある治療方法について、前記複数のデジタルツイン病院を治療成績が良い順にグラフ表示するための情報である、請求項4に記載の医療情報処理システム。
【請求項6】
前記分析情報は、前記複数のデジタルツイン病院に対応する現実の病院に所属する医師を比較可能に表示するための情報である、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項7】
DTH選択条件および/または前記医療関連情報に基づいて、前記仮想空間に設けられた複数のデジタルツイン病院の中から前記ユーザの仮想診療を行う少なくとも1つのデジタルツイン病院を抽出するDTH抽出部を備える、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項8】
前記仮想受診部は、前記抽出された複数のデジタルツイン病院のうち前記ユーザにより許可されたデジタルツイン病院にのみ前記医療関連情報を開示する、請求項7に記載の医療情報処理システム。
【請求項9】
前記仮想受診部は、前記抽出された複数のデジタルツイン病院に同時に前記医療関連情報を開示する、請求項7に記載の医療情報処理システム。
【請求項10】
前記医療関連情報は、前記ユーザの主訴、医療情報、生体情報および行動情報のうち少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項11】
前記現実の病院に関する情報は、当該病院が保有する医療リソースに関する情報を含む、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項12】
前記仮想診療情報は、前記仮想診療による診断結果、および前記デジタルツイン病院に対応する現実の病院が提供可能な医療に関する情報を含む、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項13】
前記仮想受診部は、あるデジタルツイン病院から取得した仮想診療情報を他のデジタルツイン病院に開示しない、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項14】
前記ユーザおよび/または前記デジタルツイン病院は匿名化されている、請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項15】
仮想空間内のデジタルツイン病院から、ユーザに対する仮想診療により生成された仮想診療情報を取得する工程であって、前記仮想診療は前記デジタルツイン病院に対応する現実の病院に関する情報と、前記ユーザの医療関連情報とに基づいて行われる、工程と、
複数の前記デジタルツイン病院から取得された複数の前記仮想診療情報に基づいて分析情報を生成する工程と、
前記ユーザに前記分析情報を提示する工程と、
を備える医療情報処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の医療情報処理方法をコンピュータに実行させる医療情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医療情報処理システム、医療情報処理方法および医療情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタバース等の仮想空間を利用した様々なビジネスが検討されている。医療分野については、実際に来院する前に仮想空間で病院のツアーを体験したり、外出が困難な患者のためのコミュニティや治療の疑似体験を提供することが検討されている。
【0003】
また、仮想空間内に設けられた病院において医師のアバターに質問したり、指導を受けるための健康管理システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-179501号公報
【特許文献2】国際公開第2019/102749号
【特許文献3】特開2006-277559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザが実際に受診する前に納得感の高い判断を容易に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記の課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医療情報処理システムは、仮想空間内のデジタルツイン病院から、ユーザに対する仮想診療により生成された仮想診療情報を取得する仮想受診部と、複数の前記デジタルツイン病院から取得された複数の前記仮想診療情報に基づいて分析情報を生成する分析部と、前記ユーザに前記分析情報を提示する情報提示部と、を備える。前記仮想診療は前記デジタルツイン病院に対応する現実の病院に関する情報と、前記ユーザの医療関連情報とに基づいて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る医療情報処理システムの構成の一例を示す図。
図2】実施形態に係るサーバの構成の一例を示すブロック図。
図3】実施形態に係る端末の構成の一例を示すブロック図。
図4】実施形態に係る医療情報処理システムで実行される処理内容の一例を説明するフローチャート。
図5A】実施形態に係る端末に表示される出力画面の第1の例を示す図。
図5B】実施形態に係る端末に表示される出力画面の第2の例を示す図。
図5C】実施形態に係る端末に表示される出力画面の第3の例を示す図。
図5D】実施形態に係る端末に表示される出力画面の第4の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る医療情報処理システムについて説明する。なお、以下の説明において実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0009】
図1は、実施形態に係る医療情報処理システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る医療情報処理システム1は、サーバ10と、ユーザ(患者、相談者等)が使用する端末20とを備えている。サーバ10および端末20は、通信ネットワークNを介して互いに通信可能に接続されている。なお、複数台の端末20がサーバ10に接続されてもよい。また、サーバ10は、ユーザのPHR(Personal Health Record)等のデータを保存する電子カルテシステムなど、他のシステムに接続されてもよい。
【0010】
本実施形態に係る医療情報処理システム1は、以下詳しく説明するように、メタバース空間等の仮想空間に設けられたデジタルツイン病院(Digital Twin Hospital:DTH)に対して、ユーザ(患者等)の医療関連情報を提示して仮想受診を行い、デジタルツイン病院から得た仮想診療の結果を含む仮想診療情報を比較、分析し、分析結果をユーザに提示するように構成されている。デジタルツイン病院は、現実の病院のデジタルツインであり、対応する現実の病院が有する医師、医療スタッフ、医療設備等の医療リソースや、医療技術(治療対応能力)等を反映したデジタルデータを有する。なお、ユーザは、仮想空間内に作成した匿名のアバターを操作して仮想受診を行うことが可能である。
【0011】
サーバ10は、図2に示すように、メモリ11と、ディスプレイ12と、入力インタフェース13と、通信インタフェース14と、処理回路15とを備えている。以下、サーバ10の各構成の詳細について説明する。
【0012】
メモリ11は、処理回路15に接続されており、処理回路15で使用される各種の情報を記憶する。メモリ11は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0013】
メモリ11には、処理回路15が各機能を実行するのに必要な各種のプログラム、およびプログラムにより処理される各種のデータ等が記憶される。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。なお、メモリ11にユーザごとの医療関連情報(後述)が記憶されてもよい。
【0014】
ディスプレイ12は、各種の画像や情報を表示する。たとえば、ディスプレイ12は、各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。本実施形態においては、ディスプレイ12は、たとえば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。
【0015】
入力インタフェース13は、各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路15に出力する。この入力インタフェース13は、たとえば、マウスやキーボード、タッチパネル、トラックボール、手動スイッチ、フットスイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。
【0016】
通信インタフェース14は、各種の通信プロトコルに従ってインターネット等の外部の通信ネットワークを介して他の装置との通信を実現する。通信インタフェース14が準拠する通信プロトコルの種類は特に限定されない。本実施形態において、サーバ10は、通信インタフェース14を介して端末20との通信を行う。また、サーバ10は、通信インタフェース14を介して、デジタルツイン病院に対応する現実の病院との通信を行ってもよい。
【0017】
処理回路15は、各種の演算を行う演算回路であり、サーバ10の動作を制御する。この処理回路15は、たとえば、ユーザが設定したDTH選択条件に基づいて複数のデジタルツイン病院を抽出し、抽出された複数のデジタルツイン病院にユーザの医療関連情報を開示する。そして、各デジタルツイン病院から仮想受診の結果を受信した後、受信した結果を比較分析して分析情報を生成し、分析情報を端末20に出力する。
【0018】
かかる機能を実現するために、処理回路15は、図2に示すように、情報取得機能151と、DTH抽出機能152と、仮想受診機能153と、分析機能154と、情報出力機能155とを有する。情報取得機能151は情報取得部の一例であり、DTH抽出機能152はDTH抽出部の一例であり、仮想受診機能153は仮想受診部の一例であり、分析機能154は分析部の一例であり、情報出力機能155は情報出力部の一例である。
【0019】
本実施形態では、情報取得機能151、DTH抽出機能152、仮想受診機能153、分析機能154および情報出力機能155により実行される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ11に格納されている。処理回路15は、プロセッサであり、メモリ11からプログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、図2の処理回路15内に示された各機能を有することとなる。
【0020】
なお、図2においては、情報取得機能151、DTH抽出機能152、仮想受診機能153、分析機能154および情報出力機能155の各処理機能が単一の処理回路15によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られない。たとえば、処理回路15は、複数の独立したプロセッサを組み合わせたものとして構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしてもよい。処理回路15が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0021】
次に、処理回路15の各機能の詳細について説明する。
【0022】
情報取得機能151は、メモリ11、端末20、外部のサーバ・システム等から各種の情報を取得する。たとえば、情報取得機能151は、端末20から、ユーザが入力した情報(DTH選択条件等)を取得する。また、情報取得機能151は、端末20からユーザの医療関連情報を取得する。なお、医療関連情報は、外部のサーバ・システムから取得されてもよい。
【0023】
DTH選択条件は、仮想空間内の複数のデジタルツイン病院から少なくとも1つのデジタルツイン病院を抽出するためにユーザが設定する条件である。DTH選択条件は、たとえば、デジタルツイン病院に対応する現実の病院の存在する場所(県名、町名など)、通院時間、設備条件、費用などである。なお、DTH選択条件は、病院の評判(同様の症状の他の人の口コミ等を含む)、治療費用等に関する条件であってもよい。
【0024】
医療関連情報は、ユーザの主訴、医療情報、生体情報および行動情報のうち少なくともいずれか一つを含む情報である。医療情報は、ユーザの健康診断の結果、現実の病院での過去の診療結果(診断結果、検査結果等)、服薬歴等に関する情報を含む情報である。生体情報は、体温、血圧、心拍数等の情報であり、たとえば、ウェアラブルセンサで取得された情報である。行動情報は、ユーザの移動履歴(たとえば、一日あたりの移動距離、歩数)等の行動に関する情報である。
【0025】
DTH抽出機能152は、DTH選択条件および/または医療関連情報に基づいて、仮想空間に設けられた複数のデジタルツイン病院の中から、ユーザの仮想診療を行う少なくとも1つのデジタルツイン病院を抽出する。たとえば、DTH抽出機能152は、ユーザが指定したエリアに現実の病院があり、かつユーザの主訴に対応した診療科を有するデジタルツイン病院を抽出する。なお、DTH抽出機能152は、ユーザが特定の病院(現実の病院またはデジタルツイン病院)を指定した場合、当該病院に対応するデジタルツイン病院を抽出してもよい。また、DTH抽出機能152は、診療科が不明または1つの診療科に特定できない場合、総合病院のデジタルツイン病院を抽出してもよい。DTH抽出機能152は、条件に合致するデジタルツイン病院を抽出できない場合はその旨を出力してもよい。
【0026】
仮想受診機能153は、ユーザの医療関連情報をデジタルツイン病院に開示し、当該デジタルツイン病院から、ユーザに対する仮想診療により生成された仮想診療情報を取得する。ここで、仮想診療は、デジタルツイン病院に対応する現実の病院に関する情報と、ユーザの医療関連情報とに基づいてデジタルツイン病院において行われる。
【0027】
ここで、現実の病院に関する情報は、当該病院が保有する医療リソース(医療設備、機器、医師、医療スタッフ等)に関する情報を含む。また、医療リソースの医師に関する情報は、医療行為、治療方法ごとの治療成績、経験症例数、得意手技等の情報を含んでもよい。
【0028】
仮想診療により生成される仮想診療情報は、仮想診療による診断結果、および仮想受診したデジタルツイン病院に対応する現実の病院が提供可能な医療に関する情報(治療方法、治療フロー、治療成績等)を含む。なお、仮想診療情報は、提供可能な医療の治療成績、現実の病院に所属する医師に関する情報を含んでもよい。
【0029】
DTH抽出機能152により複数のデジタルツイン病院が抽出された場合、仮想受診機能153は、抽出された複数のデジタルツイン病院にユーザの医療関連情報を同時に、または順次に開示し、各デジタルツイン病院から仮想診療情報を取得してもよい。複数のデジタルツイン病院に医療関連情報を同時に開示することにより、効率良く仮想診療を受診できる。
【0030】
なお、仮想受診機能153は、DTH抽出機能152により抽出された複数のデジタルツイン病院のうち、ユーザにより許可されたデジタルツイン病院にのみ医療関連情報を開示してもよい。たとえば、DTH抽出機能152により抽出されたデジタルツイン病院の情報(対応する現実の病院の場所、通院時間など)を端末20に表示し、ユーザは提示されたデジタルツイン病院から仮想診療を受診するデジタルツイン病院を選択する。仮想受診機能153は、ユーザに選択されたデジタルツイン病院にのみ医療関連情報を開示して仮想診療を行わせる。
【0031】
なお、デジタルツイン病院間で仮想診療結果を参照可能とした場合、仮想診療結果に何らかの恣意的な変更が加えられるおそれがある。そこで、仮想受診機能153は、あるデジタルツイン病院から取得した仮想診療情報を他のデジタルツイン病院に開示しないようにしてもよい。すなわち、デジタルツイン病院から取得した仮想診療情報は仮想受診したユーザにのみ提供されるようにしてもよい。
【0032】
分析機能154は、複数のデジタルツイン病院から取得された複数の仮想診療情報に基づいて分析情報を生成する。複数のデジタルツイン病院から取得された複数の仮想診療情報は、同時に受診した仮想診療に対するものでもよいし、あるいは異なるタイミングで行われた仮想診療に対するものでもよい。
【0033】
生成される分析情報は、複数のデジタルツイン病院から提案された治療方法を比較可能に表示するための情報であってもよい。この場合、分析機能154は、複数のデジタルツイン病院から提案(回答)された治療方法ごとに回答数をカウントすることにより分析情報を生成する。
【0034】
また、生成される分析情報は、複数のデジタルツイン病院を比較可能に表示するための情報であってもよい。この場合、分析機能154は、ある治療方法について、病院ごとの治療成績を仮想診療情報から取得し、比較することにより分析情報を生成する。
【0035】
情報出力機能155は、各種情報を出力する。たとえば、情報出力機能155は、分析機能154により生成された分析情報を端末20に出力する。
【0036】
次に、図3を参照して端末20の詳細について説明する。図3は、本実施形態に係る端末20の構成の一例を示すブロック図である。
【0037】
図3に示すように、端末20は、メモリ21と、ディスプレイ22と、入力インタフェース23と、通信インタフェース24と、処理回路25とを備えている。
【0038】
メモリ21は、処理回路25に接続されており、処理回路25が各機能を実行するのに必要な各種のプログラム、およびプログラムにより処理される各種のデータ等が記憶される。メモリ21は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0039】
ディスプレイ22は、各種の画像や情報を表示する。たとえば、ディスプレイ22は、サーバ10から受信した分析情報を表示する。また、ディスプレイ22は、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。本実施形態においては、ディスプレイ22は、たとえば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。なお、ディスプレイ22はタッチパネルにより構成されてもよい。この場合、ディスプレイ22は、入力インタフェース23も兼ねる。
【0040】
入力インタフェース23は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路25に出力する。この入力インタフェース23は、たとえば、マウスやキーボード、トラックボール、手動スイッチ、フットスイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。
【0041】
通信インタフェース24は、通信ネットワークNの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装している。通信インタフェース24は、各種プロトコルに従って、通信ネットワークNを介して他の装置との通信を実現する。本実施形態においては、端末20は、通信インタフェース24を介してサーバ10との通信を行う。
【0042】
処理回路25は、各種の演算を行う演算回路である。この処理回路25は、入力インタフェース23を介してユーザが入力した情報や指示を受け付けるとともに、通信インタフェース24を介してサーバ10から受信した情報(分析情報等)をディスプレイ22に表示する。かかる機能を実現するために、処理回路25は、図3に示すように、情報受付機能251と、情報提示機能252とを有する。情報受付機能251は情報受付部の一例であり、情報提示機能252は情報提示部の一例である。
【0043】
本実施形態では、情報受付機能251および情報提示機能252により実行される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ21に格納されている。処理回路25は、プロセッサであり、メモリ21からプログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路25は、図3の処理回路25内に示された各機能を有することとなる。
【0044】
なお、図3においては、情報受付機能251および情報提示機能252の各処理機能が単一の処理回路25によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られない。たとえば、処理回路25は、複数の独立したプロセッサを組み合わせたものとして構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路25が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0045】
情報受付機能251は、入力インタフェース23を介してユーザが入力した情報や指示を受け付ける。入力される情報には、DTH選択条件などが含まれる。また、ユーザの指示には、仮想診療を受診するデジタルツイン病院の選択などが含まれる。なお、情報受付機能251は、ユーザが仮想空間内にアバターを作成する際に必要な情報を受け付けてもよい。
【0046】
情報提示機能252は、ディスプレイ22等の出力デバイスにより、ユーザに各種情報を提示する。たとえば、情報提示機能252は、サーバ10で生成された分析情報をディスプレイ22に表示させる。
【0047】
<医療情報処理システムの動作例>
図4を参照して、上述の医療情報処理システム1を用いた医療情報処理方法について説明する。図4は医療情報処理システム1で実行される処理内容の一例を説明するフローチャートである。
【0048】
以下の説明では、ユーザは、デジタルツイン病院が設けられた仮想空間に、ユーザの医療関連情報が付与されたアバターを事前に作成しているものとする。この場合、アバターに付与された医療関連情報は、データの真正性を証明するために、ブロックチェーン等の技術を用いてNFT(Non-Fungible Token)として構成されてもよい。また、アバター(ユーザ)は匿名化されてもよい。また、仮想空間内のデジタルツイン病院は匿名化されていてもよい。
【0049】
まず、サーバ10の情報取得機能151は、ユーザの医療関連情報を取得する(ステップS1)。ここでは、アバターからユーザの医療関連情報を取得する。
【0050】
次に、サーバ10の情報取得機能151は、端末20から、ユーザが設定したDTH選択条件を取得する(ステップS2)。
【0051】
次に、サーバ10のDTH抽出機能152は、ステップS1で取得された医療関連情報およびステップS2で取得されたDTH選択条件に基づいて、複数のデジタルツイン病院を抽出する(ステップS3)。なお、抽出されるデジタルツイン病院は、対応する現実の病院が日本国内に存在するものに限らず、海外に存在するものであってもよい。
【0052】
次に、サーバ10の仮想受診機能153は、ステップS3で抽出されたデジタルツイン病院に対し、ステップS1で取得された医療関連情報を開示する(ステップS4)。たとえば、仮想受診機能153は、ステップS3で抽出された複数のデジタルツイン病院のすべてに医療関連情報を開示する。
【0053】
次に、サーバ10の仮想受診機能153は、ステップS4で医療関連情報を開示されたデジタルツイン病院から、仮想診療により生成された仮想診療情報を取得する(ステップS5)。ステップS4で医療関連情報を開示されたデジタルツイン病院は、当該医療関連情報と、当該デジタルツイン病院に対応する現実の病院に関する情報とに基づいてアバターに対する仮想診療を行う。
【0054】
たとえば、デジタルツイン病院は、実際に保有する設備、医師を含む医療リソースや医療技術、過去の同様の治療経験に基づいて、保有する医療リソースで実現ないし予測される診療結果、仮想治療フローおよび治療成績を仮想診療情報として出力する。病院ごとに保有設備や医師の能力・経験値等が異なるため、仮想治療フローは、病院の実情に沿った現実的なフローを過去の治療経験に照らし合わせて作成される。同様の症例の経験がない場合は、適切な医療を提供できないという仮想診療結果もあり得る。また、同一の病院に複数の医師がいる場合、医師ごとに経験値、手順等が異なるため、一つのデジタルツイン病院は医師ごとに仮想治療フローを提案(回答)してもよい。あるいは、最も治療成績の良い医師による確度の高い仮想治療フローのみを回答してもよい。
【0055】
なお、複数のデジタルツイン病院に医療関連情報が開示された場合、複数のデジタルツイン病院が同時に仮想診療を行ってもよい。仮想受診機能153は、各デジタルツイン病院から仮想診療情報を取得する。
【0056】
次に、サーバ10の分析機能154は、ステップS5で取得された仮想診療情報に基づいて分析情報を生成する(ステップS6)。本ステップで生成された分析情報は、情報出力機能155により端末20に送信される。
【0057】
分析情報は、たとえば、複数のデジタルツイン病院から提案された治療方法を比較可能に表示するための情報である。分析情報は、複数のデジタルツイン病院を比較可能に表示するための情報であってもよい。あるいは、分析情報は、複数のデジタルツイン病院に対応する現実の病院に所属する医師を比較可能に表示するための情報であってもよい。
【0058】
なお、分析情報は、デジタルツイン病院から回答された治療方法について、標準的な臨床エビデンスまたは診療ガイドラインとの比較結果を含んでもよい。たとえば、分析情報は、ある治療方法が診療ガイドラインで推奨されている方法である旨の情報を含んでもよい。
【0059】
次に、端末20の情報提示機能252は、サーバ10から受信した分析情報をユーザ(アバター)に提示する(ステップS7)。ここでは、情報提示機能252は、端末20のディスプレイ22に分析情報を表示させる。図5A図5Dは、端末20に表示される画面の例を示している。
【0060】
図5Aでは、複数のデジタルツイン病院から回答された治療方法が回答数の多い順に棒グラフにより表示されている。この例では、治療方法M1の回答数が最も多く、治療方法M2,M3がそれに続いている。これにより、ユーザは、どのような治療方法があるのかを容易に知ることができるとともに、どの治療方法が最も一般的であるのか容易に把握することができる。このように、端末20には、複数のデジタルツイン病院から提案された治療方法が比較可能に表示される。
【0061】
なお、図5Aの画面において、ある治療方法(例えば治療方法M2)が診療ガイドラインで推奨されている方法である旨を表示してもよい。これにより、ユーザは、治療方法M2は回答数が最多でないものの、標準的な治療方法であると理解することができる。
【0062】
また、図5Aの画面において、各治療方法のエビデンスレベルを表示してもよい。これにより、ユーザは、少ない症例数で確度の低い治療法なのか、十分なエビデンスが揃った信頼度の高い治療法なのかを把握することができる。このように多面的な分析結果を提示することで、ユーザは提示された治療方法について、より公平かつ多面的な深い理解を得ることができる。
【0063】
図5Bでは、提案された治療方法のうちのある治療方法(ここでは治療方法M1)について、治療成績(成功率)が良い順にデジタルツイン病院が棒グラフにより表示されている。この例では、デジタルツイン病院H1が最も成功率が高く、デジタルツイン病院H2,H3がそれに続いている。これにより、ユーザは、どの病院において治療方法M1を受けることができるのかを容易に知ることができるとともに、どの病院が最も治療成績が良いのかを容易に把握することができる。このように、端末20には、複数のデジタルツイン病院が比較可能に表示される。
【0064】
図5Cでは、提案された治療方法のうちのある治療方法(ここでは治療方法M1)について、治療成績(成功率)が良い順に、複数のデジタルツイン病院に対応する現実の病院に所属する医師が棒グラフにより表示されている。図5Cにおいて、たとえば、医師H1-Daは、デジタルツイン病院H1に対応する現実の病院に所属する医師Daを示している。他についても同様である。この例では、デジタルツイン病院H1の医師Daが最も成功率が高く、デジタルツイン病院H3の医師Db、デジタルツイン病院H4の医師Dcがそれに続いている。これにより、ユーザは、どの病院のどの医師が治療方法M1を行えるのかを容易に知ることができるとともに、どの病院のどの医師が最も治療成績が良いのかを容易に把握することができる。その結果、ユーザは、より精度良く、治療方法の選択や病院、医師の選択を行うことができる。
【0065】
なお、図5Aの画面においてユーザが治療方法を選択することで、図5Bまたは図5Cの画面が表示されるようにしてもよい。また、ユーザが病院名等による先入観を抱かないように、図5B図5Cにおいて、病院、診療科、医師を匿名化した状態でユーザに提示してもよい。
【0066】
また、図5A図5Cにおいて棒グラフが用いられていたが、グラフの種類は折れ線グラフ、円グラフなど他の種類であってもよい。
【0067】
また、グラフ表示に限らず、表形式を用いてもよい。図5Dは、図5Cに対応する表の例を示している。この例のように、医師ごとの詳細情報(治療成績、経験症例数、特異手技など)を表示してもよい。なお、デジタルツイン病院・医師の表示順序は、表の上から治療成績の良い順に医師を表示してもよいし、五十音順など所定の順序にしたがって表示してもよい。
【0068】
上記の医療情報処理方法は一例に過ぎず、以下のように様々な変形が可能である。
【0069】
たとえば、ユーザがDTH選択条件の設定を望まない場合(特段の条件を設けずに仮想受診したい場合)、ステップS2を省略してもよい。この場合、DTH抽出機能152は、医療関連情報のみに基づいてデジタルツイン病院を抽出する。
【0070】
また、ステップS3において、DTH抽出機能152は、医療関連情報を考慮せず、ユーザが指定したデジタルツイン病院を抽出してもよい。すなわち、DTH抽出機能152は、DTH選択条件にのみ基づいてデジタルツイン病院を抽出してもよい。
【0071】
また、ステップS4において、仮想受診機能153は、ステップS3で抽出された複数のデジタルツイン病院のうち、ユーザが許可したデジタルツイン病院にのみ医療関連情報を開示してもよい。この場合、サーバ10はステップS3で抽出されたデジタルツイン病院に関する情報(たとえば、デジタルツイン病院の名称、対応する現実の病院の住所等)を端末20に送信する。端末20はサーバ10から受信したデジタルツイン病院に関する情報をディスプレイ22に表示する。ユーザは仮想診療を希望するデジタルツイン病院を選択する。仮想受診機能153は、ユーザが選択したデジタルツイン病院に医療関連情報を開示する。
【0072】
また、分析情報を提示されたユーザは、所期の病院が見つからなかった場合、DTH選択条件を変更し、再度仮想診療を受診してもよい。たとえば、国内のデジタルツイン病院で良い結果が得られなかった場合、ユーザは海外のデジタルツイン病院を含めるようにDTH選択条件を変更し、仮想診療を再度受診してもよい。ユーザは、医療関連情報を修正し、仮想診療を再度受診してもよい。
【0073】
また、実施形態に係る複数のデジタルツイン病院による仮想診療をビジネスモデルとして成立させるために、たとえば、仮想受診を行ったデジタルツイン病院(または所属医師)に対して仮想通貨が支払われるようにしてもよい。さらに、ユーザが実際に受診しようと決めた際、現実の病院に仮想診療情報と共にユーザの個人情報が開示され、当該病院にはさらに追加の仮想通貨が支払われ、現実の保険診療に移行するようにしてもよい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、仮想空間内のデジタルツイン病院から、ユーザに対する仮想診療により生成された仮想診療情報を取得し、複数のデジタルツイン病院から取得された複数の仮想診療情報に基づいて分析情報を生成し、ユーザに分析情報を提示する。これにより、ユーザは、どの病院、どの医師にアクセスすべきか、どの治療方法を採用すべきかなど、実際に受診する前に納得感の高い判断を容易に行うことができる。
【0075】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、メモリ11に保存されたプログラムを読み出して実行することにより機能を実現する。なお、メモリ11にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサは、プロセッサ単一の回路として構成されている場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて、1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0076】
また、図4で説明した医療情報処理方法は、予め用意された医療情報処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医療情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医療情報処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD) 、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0077】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置及び方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置及び方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0078】
1 医療情報処理システム
10 サーバ
11 メモリ
12 ディスプレイ
13 入力インタフェース
14 通信インタフェース
15 処理回路
151 情報取得機能
152 DTH抽出機能
153 仮想受診機能
154 分析機能
155 情報出力機能
20 端末
21 メモリ
22 ディスプレイ
23 入力インタフェース
24 通信インタフェース
25 処理回路
251 情報受付機能
252 情報提示機能
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D