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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171627
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】耐油剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 191/06 20060101AFI20241205BHJP
   D21H 21/28 20060101ALI20241205BHJP
   D21H 19/18 20060101ALI20241205BHJP
   D21H 19/22 20060101ALI20241205BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20241205BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20241205BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241205BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241205BHJP
   C09D 125/08 20060101ALI20241205BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20241205BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09D191/06
D21H21/28 Z
D21H19/18
D21H19/22
D21H19/20 A
D21H19/10 A
C09D201/00
C09D7/63
C09D125/08
C09D133/00
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088741
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】森山 昭則
(72)【発明者】
【氏名】原田 慎一
【テーマコード(参考)】
4J038
4L055
【Fターム(参考)】
4J038BA211
4J038CC061
4J038DG001
4J038JA16
4J038JB24
4J038KA07
4J038LA06
4J038NA07
4J038NA27
4J038PA19
4J038PB04
4J038PC10
4L055AG34
4L055AG35
4L055AG51
4L055AG63
4L055AG71
4L055AG85
4L055AH24
4L055AH37
4L055AH50
4L055BE08
4L055EA20
4L055EA32
4L055FA14
4L055FA15
4L055FA19
4L055GA05
4L055GA48
(57)【要約】
【課題】紙基材に塗布することにより、耐油性、透気度、及び、印刷適性に優れる耐油紙を得ることができる耐油剤を提供する。
【解決手段】パラフィンワックスと、バインダー樹脂と、湿潤剤とを含有する耐油剤であって、上記パラフィンワックスの含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~40質量%であり、上記バインダー樹脂の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して2~20質量%であり、上記湿潤剤は、ソルビトール、尿素、及び、グリセリンからなる群より選択される1種以上であり、上記湿潤剤の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~20質量%である耐油剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィンワックスと、バインダー樹脂と、湿潤剤とを含有する耐油剤であって、
前記パラフィンワックスの含有量が、前記耐油剤の全質量に対して10~40質量%であり、
前記バインダー樹脂の含有量が、前記耐油剤の全質量に対して2~20質量%であり、
前記湿潤剤は、ソルビトール、尿素、及び、グリセリンからなる群より選択される1種以上であり、
前記湿潤剤の含有量が、前記耐油剤の全質量に対して10~20質量%である耐油剤。
【請求項2】
前記パラフィンワックスは、融点が55~120℃である請求項1に記載の耐油剤。
【請求項3】
前記バインダー樹脂は、スチレンアクリル樹脂、及び、ウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上である請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項4】
前記湿潤剤は、ソルビトールである請求項1又は2に記載の耐油剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
耐油剤は、紙基材に塗布することにより、耐油性を付与する材料である。
耐油性を付与された紙基材は、耐油紙として主に食品用の包装容器等として幅広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、坪量が20~70g/m、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度が70秒以上である紙支持体の少なくとも片面に耐油層を設けた耐油紙であって、耐油層を構成する耐油剤が重量平均分子量5万~200万、ガラス転移温度30℃未満のアクリル系樹脂であり、かつ折り目部分におけるJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.41:2000に準じて測定したキット法による耐油度が4級以上であることを特徴とする耐油紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-172277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の耐油紙は、耐油性に優れ、フッ素化合物を含まないために、健康や環境に対する悪影響が少なく、食品用途等の包装に好適に用いることができることが開示されている。
【0006】
近年、耐油剤には、耐油性に優れる性質や、フッ素化合物を含まないことに加えて、透気度や印刷適性に優れることも要求されるようになってきた。
特許文献1では、透気度については十分では無く、印刷適性については言及されておらず、更なる改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、紙基材に塗布することにより、耐油性、透気度、及び、印刷適性に優れる耐油紙を得ることができる耐油剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、パラフィンワックスと、バインダー樹脂と、湿潤剤とを含有する耐油剤において、上記パラフィンワックス、バインダー樹脂、及び、湿潤剤の含有量を特定の範囲とし、かつ、上記湿潤剤として特定の材料を選択することにより、上述した課題を全て解決できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、パラフィンワックスと、バインダー樹脂と、湿潤剤とを含有する耐油剤であって、上記パラフィンワックスの含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~40質量%であり、上記バインダー樹脂の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して2~20質量%であり、上記湿潤剤は、ソルビトール、尿素、及び、グリセリンからなる群より選択される1種以上であり、上記湿潤剤の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~20質量%である耐油剤である。
【0010】
本発明の耐油剤において、上記パラフィンワックスは、融点が55~120℃であることが好ましい。
また、上記バインダー樹脂は、スチレンアクリル樹脂、及び、ウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
また、上記湿潤剤は、ソルビトールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、紙基材に塗布することにより、耐油性、透気度、及び、印刷適性に優れる耐油紙を得ることができる耐油剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の耐油剤は、パラフィンワックスと、バインダー樹脂と、湿潤剤とを含有する耐油剤であって、上記パラフィンワックスの含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~40質量%であり、上記バインダー樹脂の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して2~20質量%であり、上記湿潤剤は、ソルビトール、尿素、及び、グリセリンからなる群より選択される1種以上であり、上記湿潤剤の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~20質量%である。
【0013】
(パラフィンワックス)
本発明の耐油剤は、パラフィンワックスを含有する。
【0014】
上記パラフィンワックスとしては、主成分がn-パラフィン及び/又はi-パラフィン等の飽和脂肪族炭化水素、或いは、低分子量のポリエチレンで末端に水酸基を有し、蝋状の外観を有する物質等が挙げられる。
【0015】
上記パラフィンワックスは、融点が55~120℃であることが好ましく、60~110℃であることがより好ましい。
上記パラフィンワックスの融点が上記範囲であることにより、紙基材に塗布した紙基材に対して耐油性を好適に付与することができ、また乾燥工程における熱エネルギーを抑えることもできる。
【0016】
上記パラフィンワックスとしては、耐油性を好適に付与する観点から、エマルジョンの状態で使用できるものが好ましい。
【0017】
上記パラフィンワックスとしては、公知の方法により合成したものであってもよく、市販品であってもよい。
上記市販品としては、例えば、EMUSTAR-1155(融点:69℃、日本精蝋社製)、ペルトールRP-907N(融点:57℃、東邦化学工業社製)、MYW-20(融点:60℃、丸芳化学社製)、AQUACER-539(融点:90℃、BYK社製)、AQUACER-537(融点:110℃、BYK社製)等が挙げられる。
【0018】
上記パラフィンワックスの含有量は、本発明の耐油剤の全質量に対して10~40質量%である。
上記パラフィンワックスの含有量が上記範囲であることにより、透気度と機上安定性(印刷適性)とを十分に付与することができる。
上記パラフィンワックスの含有量は、耐油度及び透気度の観点から、本発明の耐油剤の全質量に対して20~32.5質量%であることが好ましい。
【0019】
(バインダー樹脂)
本発明の耐油剤は、バインダー樹脂を含有する。
【0020】
上記バインダー樹脂は、機上安定性(印刷適性)や、耐油剤の粘度調整及び製膜性を好適に付与する観点から、スチレンアクリル樹脂、及び、ウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0021】
上記バインダー樹脂は、機上安定性(印刷適性)や、耐油剤の粘度調整及び製膜性を好適に付与する観点から、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下であることが好ましい。
なお、上記Tgは、例えば、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下で測定することができる。
上記ガラス転移温度(Tg)の下限としては、製膜性を好適に付与する観点から、-10℃であることが好ましい。
【0022】
上記スチレンアクリル樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体である。
【0023】
上記スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、及びp-アセトキシスチレン等が挙げられる。
【0024】
上記アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0025】
上記スチレンアクリル樹脂は、公知の方法により合成したものであってもよく、市販品であってもよい。
上記市販品としては、PDX-7357、PDX-7616A、PDX-7326(BASF社製)等が挙げられる。
【0026】
上記ウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエステル・ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記ウレタン樹脂は、公知の方法により合成したものであってもよく、市販品であってもよい。
上記市販品としては、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス470(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0028】
上記バインダー樹脂の含有量は、本発明の耐油剤の全質量に対して2~20質量%である。
上記バインダー樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、耐油性と機上安定性(印刷適性)とを十分に付与することができる。
上記バインダー樹脂の含有量は、粘度調整の観点から本発明の耐油剤の全質量に対して2~12質量%であることが好ましい。
【0029】
(湿潤剤)
本発明の耐油剤は、湿潤剤を含有する。
【0030】
上記湿潤剤は、ソルビトール、尿素、及び、グリセリンからなる群より選択される1種以上である。
上記湿潤剤を含有することにより、機上安定性(印刷適性)を付与することができる。
【0031】
上記湿潤剤は、機上安定性(印刷適性)を好適に付与する観点から、ソルビトールであることが好ましい。
【0032】
上記湿潤剤の含有量は、本発明の耐油剤の全質量に対して10~20質量%である。
上記湿潤剤の含有量が、上記範囲であることにより、機上安定性(印刷適性)を十分に付与することができる。
【0033】
(水)
本発明の耐油剤は、水を含有してもよい。
水は、耐油剤の塗布量の調整及び粘度調整として利用することができる。
【0034】
水の含有量としては特に限定されず、耐油剤の塗布量、粘度に応じて適宜調整すればよい。
【0035】
(その他)
本発明の耐油剤は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0036】
上記添加剤としては、消泡剤、表面張力調整剤、分散剤、着色剤等が挙げられる。
上記添加剤としては、公知のものを適宜選択すればよい。
【0037】
上記添加剤の含有量としては、必要に応じて適宜調整すればよいが、例えば、本発明の耐油剤の全質量に対して0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0038】
本発明の耐油剤は、健康や環境に対する悪影響を低減する観点から、フッ素化合物を含まないことが好ましい。
【0039】
(耐油剤の製造方法)
本発明の耐油剤を製造する方法としては特に限定されず、公知の方法により各種材料を混合、分散させればよい。
例えばメディアを用いた装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で混合、分散することができる。
【0040】
(紙基材)
本発明の耐油剤は、紙基材に塗布することにより、耐油性、透気度、及び、印刷適性に優れる耐油紙を得ることができる耐油剤を提供することができる。
【0041】
上記紙基材としては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(GP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の未晒、半晒、あるいは晒パルプ、亜硫酸パルプ、古紙パルプ等が使用できる。
【0042】
本発明の耐油剤を紙基材に塗布する方法としては、塗布量を確保する観点から、フレキソ印刷、グラビア印刷、コーターが好ましい。
【0043】
本発明の耐油剤の塗布量としては、耐油性、透気度、及び、印刷適性を好適に発現させる観点から、乾燥重量が2g/m以上であることが好ましい。
【0044】
(耐油剤の物性)
本発明の耐油剤は、耐油性に優れる。
具体的には、下記測定方法により測定した耐油度(Kit)が5以上である。
上記耐油度(Kit)は、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
【0045】
上記耐油度の測定方法は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.41:2000のキット法である。
なお、紙基材としては、坪量50g/m、ステキヒトサイズ度12秒、透気抵抗度80秒のものを用い、上記耐油剤を4.0(dry)(g/m)の塗布量で塗布して、120℃に設定した熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜を形成する。
【0046】
本発明の耐油剤は、透気度に優れる。
具体的には、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度が1000秒以下である。
上記透気度は、600秒以下であることが好ましく、500秒以下であることがより好ましい。
なお、紙基材としては、坪量50g/m、ステキヒトサイズ度12秒、透気抵抗度80秒のものを用い、上記耐油剤を4.0(dry)(g/m)の塗布量で塗布して、120℃に設定した熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜を形成する。
【0047】
本発明の耐油剤は、機上安定性(印刷適性)に優れる。
上記印刷適性とは、ロングラン印刷において、印刷機上で乾かず、粘度上昇が起こりにくく、安定した印刷を行える性質である。
具体的には、200線/inchのアニロックスとチャンバードクターにより、インキを版に供給する機構を備えたフレキソ3色刷り印刷機(オリエント製)を用い、チャンバー内に作製した耐油剤を入れ、15分間アイドリング(空運転)し、アイドリング(空運転)前後の耐油剤の状態について評価する。
なお、印刷速度は、150m/minとする。
上記15分間アイドリング(空運転)し、アイドリング(空運転)前後の耐油剤の状態に大きな変化が無い(粘度上昇や、皮膜の発生が無い)場合には、印刷適性に優れると判断することができる。
【実施例0048】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0049】
実施例及び比較例の耐油剤を作製する際に用いた材料は、以下の通りである。
(パラフィンワックス)
パラフィンワックス(融点:60℃、製品名:MYW-20、丸芳化学社製)
パラフィンワックス(融点:90℃、製品名:AQUACER-539、BYK社製)
パラフィンワックス(融点:110℃、製品名:AQUACER-537、BYK社製)
(バインダー樹脂)
スチレンアクリル樹脂(Tg:9℃、製品名:PDX-7616A、BASF社製)
ウレタン樹脂(Tg:-10℃、製品名:スーパーフレックス420、第一工業製薬社製)
(湿潤剤)
ソルビトール
尿素
グリセリン
(水)
精製水
【0050】
(実施例1~11、比較例1~8)
容器に表1、2に記載の配合量(質量%)で各種材料を仕込み、ディスパーを用いて撹拌し均一に混合溶解した後、メッシュで濾過して耐油剤を作製した。
なお、表1、2に記載のバインダー樹脂の数値は、固形分を基準とした配合量を意味する。
【0051】
<耐油性>
作製した耐油剤を紙基材(坪量50g/m、ステキヒトサイズ度12秒、透気抵抗度80秒)上に表1、2に記載の塗布量でワイヤーバーを用いて塗布し、120℃に設定した熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜を形成した。
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.41:2000のキット法にて耐油度を測定した。その結果を表1、2に示した。
上記測定方法により測定した耐油度(Kit)が5以上であるものを「合格」と判断した。
【0052】
<透気度>
上記耐油性評価と同様の方法により塗膜を形成した。
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000に準じて透気度を測定した。その結果を表1、2に示した。
上記測定方法により測定した王研式透気度が1000秒以下であるものを「合格」と判断した。
【0053】
<機上安定性(印刷適性)>
200線/inchのアニロックスとチャンバードクターにより、インキを版に供給する機構を備えたフレキソ3色刷り印刷機(オリエント製)を用い、チャンバー内に作製した耐油剤を入れ、15分間アイドリング(空運転)し、アイドリング(空運転)前後の各耐油剤の状態について、以下の基準で評価した。
なお、印刷速度は、150m/minとした。
○:状態に大きな変化なし
×:粘度上昇は見られるが、水希釈により元の状態に戻る
××:粘度上昇、皮膜の発生があり、水希釈しても元の状態に戻らない
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1、2に示すように、パラフィンワックス、バインダー樹脂、及び、湿潤剤を特定の範囲で含有し、かつ、上記湿潤剤として特定の材料を選択することにより、紙基材に塗布することにより、耐油性、透気度、及び、印刷適性に優れる耐油紙を得ることができることが確認された。
【0057】
本明細書では以下の事項が開示されている。
【0058】
本開示(1)は、パラフィンワックスと、バインダー樹脂と、湿潤剤とを含有する耐油剤であって、上記パラフィンワックスの含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~40質量%であり、上記バインダー樹脂の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して2~20質量%であり、上記湿潤剤は、ソルビトール、尿素、及び、グリセリンからなる群より選択される1種以上であり、上記湿潤剤の含有量が、上記耐油剤の全質量に対して10~20質量%である耐油剤である。
本開示(2)は、上記パラフィンワックスが、融点が55~120℃である本開示(1)に記載の耐油剤である。
本開示(3)は、上記バインダー樹脂が、スチレンアクリル樹脂、及び、ウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上である本開示(1)又は(2)に記載の耐油剤である。
本開示(4)は、上記湿潤剤は、ソルビトールである本開示(1)~(3)の何れかに記載の耐油剤である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の耐油剤は、紙基材に塗布することにより、耐油性、透気度、及び、印刷適性に優れる耐油紙を得ることができる。