(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171628
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】苗マット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20241205BHJP
【FI】
A01G9/02 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088742
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 創
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】坂垣内 貴保
(72)【発明者】
【氏名】大井戸 直幸
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA01
2B327NC27
2B327NC41
2B327ND03
2B327RB02
2B327RB06
2B327RB13
2B327SB17
(57)【要約】
【課題】種子から延びた根がより根付きやすくする。
【解決手段】種子SDが播種される苗マット100には、苗床部1と、苗床部1に設けられる複数の播種穴部3とを備える。播種穴部3は、第1穴部31と、第2穴部32と、接続部33とを含む。第1穴部31は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向く所定方向D31に延びる。第2穴部32は、第1穴部31の所定方向D31側の端部から所定方向D31に延びる。接続部33は、第1穴部31の所定方向D31側の端部と、第2穴部32の所定方向D31と反対方向D32側の端部とを接続する。第2穴部32は、所定方向D31の端部に底部B2を有する。第1穴部31の穴幅d1は、所定方向D31に向かって一定である。第2穴部32の穴幅d2は、穴幅d1より狭く、所定方向D31に向かって一定である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子が播種される苗マットであって、
互いに対向する第1主面及び第2主面を有し、根が伸びることを許容する素材で構成されている苗床部と、
前記苗床部に設けられ、前記種子を配置するための複数の播種穴部と
を備え、
前記複数の播種穴部の各々は、前記苗床部の前記第1主面から前記第2主面に向いている所定方向に延びる第1穴部と、
前記第1穴部における前記所定方向側の端部から前記所定方向に延びる第2穴部と、
前記第1穴部における前記所定方向側の端部と、前記第2穴部における前記所定方向と反対方向側の端部とを接続する接続部と
を含み、
前記第2穴部は、前記所定方向側の端部に底部を有し、
前記第1穴部の第1穴幅は、前記所定方向に向かって一定であり、
前記第2穴部の第2穴幅は、前記第1穴幅より狭く、前記所定方向に向かって一定である、苗マット。
【請求項2】
前記第1穴幅は、前記種子のサイズより大きく、
前記第2穴幅は、前記種子のサイズより小さい、請求項1に記載の苗マット。
【請求項3】
前記第1穴部の中心と前記第2穴部の中心とは、同軸上に位置する、請求項1に記載の苗マット。
【請求項4】
前記第2穴部の前記所定方向に沿った長さは、前記第1穴部の前記所定方向に沿った長さより短い、請求項1に記載の苗マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗マットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている育苗マットは、下部層と中間層と上部層とを備える。上部層は、所定間隔で設けられた複数の播種孔を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている育苗マットでは、播種孔(播種穴部)が円柱形状又は逆円錐台形状を有している。
【0005】
播種孔(播種穴部)が円柱形状又は逆円錐台形状である場合、種子から伸びる根の方向が四方に発散し、育苗マットに根付きにくくなることがあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、種子から伸びた根がより根付きやすい苗マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る苗マットには、種子が播種される。本発明に係る苗マットは、苗床部と、前記種子を配置するための複数の播種穴部とを備える。前記苗床部は、互いに対向する第1主面及び第2主面を有し、根が伸びることを許容する素材で構成されている。前記複数の播種穴部は、前記苗床部に設けられる。前記複数の播種穴部の各々は、第1穴部と、第2穴部と、接続部とを含む。前記第1穴部は、前記苗床部の前記第1主面から前記第2主面に向いている所定方向に延びる。前記第2穴部は、前記第1穴部における前記所定方向側の端部から前記所定方向に延びる。前記接続部は、前記第1穴部における前記所定方向側の端部と、前記第2穴部における前記所定方向と反対方向側の端部とを接続する。前記第2穴部は、前記所定方向側の端部に底部を有する。前記第1穴部の第1穴幅は、前記所定方向に向かって一定である。前記第2穴部の第2穴幅は、前記第1穴幅より狭く、前記所定方向に向かって一定である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種子から伸びた根が苗マットにより根付きやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本施形態に係る苗マットを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る苗マットの播種穴部を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図2のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【
図4】実施例1、実施例2及び比較例における根あばれ率を示す表である。
【
図5】実施例4の苗マットにおける第2主面を示す図である。
【
図6】実施例3の苗マットにおける第2主面を示す図である。
【
図7】実施例5~実施例8における根あばれ率及び発芽率を示す表である。
【
図8】実施例9~実施例12における発芽率、発芽遅れ率及び良生育率を示す表である。
【
図9】実施例13~実施例16における正常苗率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解を容易にするために、三次元直交座標系のX軸、Y軸、及びZ軸を適宜図示している。例えば、X軸及びY軸は、水平方向に略平行であり、Z軸は、鉛直方向に略平行である。
【0011】
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る苗マット100を説明する。
【0012】
まず、
図1を参照して苗マット100を説明する。
図1は、本実施形態に係る苗マット100を示す斜視図である。
図1に示される苗マット100には、複数の種子が播種される。以下、種子を「種子SD」と記載する。種子SDは、例えば、野菜の種子、又は、水稲種子である。種子SDから成長した苗は、移植機械の植付爪によって苗マット100から掻き取られ、移植機械によって農地に植え付けられる。例えば、移植機械の植付爪は、種子SDから成長した苗とともに、苗マット100の一部分をブロック状に掻き取る。
【0013】
図1の例では、苗マット100は、略直方体形状(例えば、略矩形平板形状)を有する。苗マット100は、苗床部1と、複数の播種穴部3とを備える。苗床部1は、略直方体形状(例えば、略矩形平板形状)を有する。苗床部1は、第1主面F1及び第2主面F2を有する。第1主面F1及び第2主面F2は、互いに対向しており、略平行である。例えば、苗床部1の表面と裏面とのうち、第1主面F1は表面に相当し、第2主面F2は裏面に相当する。
【0014】
苗床部1は、種子SDからの根が伸びることを許容する素材で構成されている。苗床部1は、例えば、少なくとも有機質繊維資材を含む。有機質繊維資材とは、有機物によって構成される繊維材料のことである。有機質繊維資材は、例えば、ココピート、ピートモス、又は、籾殻である。また、例えば、苗床部1は、バインダー、土壌改良資材、肥料、及び/又は、土を含んでいてもよい。
【0015】
複数の播種穴部3は、苗床部1に設けられる。複数の播種穴部3の各々は、種子SDを配置するための穴部である。従って、複数の播種穴部3の各々には、種子SDが播種される。
【0016】
図1の例では、複数の播種穴部3は、略正方格子状又は略矩形格子状に配置される。具体的には、2以上の播種穴部3が第1方向D1に沿って一直線上に配置される。第1方向D1に隣り合う播種穴部3は、間隔Lxをあけて配置される。また、2以上の播種穴部3が第2方向D2に沿って一直線上に配置される。第2方向D2に隣り合う播種穴部3は、間隔Lyをあけて配置される。間隔Lxと間隔Lyとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1方向D1及び第2方向D2は、第1主面F1に略平行である。第1方向D1と第2方向D2とは、互いに略直交する。
【0017】
次に、
図2及び
図3を参照して、播種穴部3を説明する。
図2は、播種穴部3を拡大して示す平面図である。
図3は、
図2のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【0018】
図3に示すように、複数の播種穴部3の各々は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向かって延びている。具体的には、複数の播種穴部3の各々は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D31に延びている。所定方向D31は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向いている。
図3の例では、所定方向D31は、第1主面F1及び第2主面F2に略直交する。従って、所定方向D31は、
図1に示す第1方向D1及び第2方向D2に略直交する。
【0019】
具体的には、播種穴部3は、第1穴部31と、第2穴部32と、接続部33とを有する。第1穴部31は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D31に延びる。第2穴部32は、第1穴部31よりも苗床部1の第1主面F1から離隔した位置に配置される。第2穴部32は、第1穴部31における所定方向D31側の端部から所定方向D31に延びる。接続部33は、第1穴部31における所定方向D31側の端部と、第2穴部32における所定方向D31と反対方向D32側の端部とを接続する。
【0020】
加えて、本実施形態によれば、第1穴部31の穴幅d1は、所定方向D31に向かって一定である。従って、播種穴部3の開口PNが過剰に大きくなることを抑制できる。その結果、苗マット100の強度が低下することを抑制できる。本明細書において、第1穴部31の穴幅d1が一定であることは、穴幅d1が略一定であることを含む概念である。また、播種穴部3の開口PNは、第1主面F1側における第1穴部31の開口31aである。
【0021】
第2穴部32の穴幅d2は、第1穴部31の穴幅d1より狭く、所定方向D31向かって一定である。従って、接続部33の穴幅d3は、所定方向D31に向かって狭まっている。つまり、接続部33は、所定方向D31に向かって先細りになっている。
【0022】
従って、本実施形態によれば、播種穴部3における種子SDの位置の精度を向上できる。例えば、複数の播種穴部3において、種子SDの位置がばらつくことを抑制できる。播種穴部3における種子SDの位置の精度を向上できると、種子SDから成長した苗の位置の精度も向上する。従って、移植機械の植付爪によって苗を掻き取る際に、苗が折損することを効果的に抑制できる。
【0023】
なお、参考例としての播種穴部が、第1穴部31を有さずに、第2穴部32だけで構成される場合は、例えば、播種穴部が略逆円錐形状になる。従って、参考例では、播種穴部の開口が過剰に大きくなる可能性がある。その結果、参考例では、苗マットの強度が低下する可能性がある。また、播種穴部の開口が過剰に大きくなると、互いに隣接する播種穴部の開口同士が接触する可能性がある。その結果、苗マットの強度が更に低下する可能性がある。
【0024】
以上、
図3を参照して説明したように、実施形態によれば、苗マット100の強度の低下を抑制しつつ、播種穴部3における種子SDの位置の精度を向上できる。
【0025】
引き続き、
図2及び
図3を参照して播種穴部3の詳細を説明する。播種穴部3の第1穴部31は略柱体形状を有する。具体的には、第1穴部31は、壁面W1と、壁面W1に囲まれた空間SP1とを有する。壁面W1は略筒面である。従って、空間SP1は略柱体形状を有する。第1穴部31は、播種穴部3の軸線AXに対して線対称である。軸線AXは、所定方向D31に平行である。
図3の例では、軸線AXは、播種穴部3の中心を通る中心線である。
【0026】
図2及び
図3の例では、第1穴部31は略円柱形状を有する。従って、壁面W1は略円筒面である。そして、空間SP1は略円柱形状を有する。なお、第1穴部31の穴幅d1が所定方向D31に向かって一定である限りにおいては、第1穴部31の形状は特に限定されない。例えば、第1穴部31が略角柱形状を有し、壁面W1が略角筒面であり、空間SP1が略角柱形状を有していてもよい。例えば、平面視における第1穴部31の形状は、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。対称形状は、例えば、略円形、略多角形、又は、略楕円形である。本明細書において、平面視は、所定方向D31から対象物を視ることを示す。なお、穴幅d1は、所定方向D31に直交する方向における第1穴部31の長さを示す。
【0027】
第2穴部32は略円柱形状を有する。具体的には、第2穴部32は、壁面W2と、底部B2と、壁面W2及び底部B2に囲まれた空間SP2とを有する。従って、壁面W2は略円筒面である。そして、空間SP2は略円柱形状を有する。なお、第2穴部32の穴幅d2が所定方向D31に向かって一定である限りにおいては、第2穴部32の形状は特に限定されない。例えば、第2穴部32が略角柱形状を有し、壁面W2が略角筒面であり、空間SP2が略角柱形状を有していてもよい。例えば、平面視における第2穴部32の形状は、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。対称形状は、例えば、略円形、略多角形、又は、略楕円形である。本明細書において、平面視は、所定方向D31から対象物を視ることを示す。なお、穴幅d2は、所定方向D31に直交する方向における第2穴部32の長さを示す。一方、底部B2の形状は特に限定されない。例えば、底部B2は、平面形状、略錐体形状又は略半円球面を有する。
図2及び
図3の例では、底部B2は、平面形状を有する。
【0028】
本実施形態において、第2穴部32は、軸線AX上に配置される。より詳細には、第1穴部31の中心と、第2穴部32の中心とは、同軸上に位置する。
【0029】
この場合、接続部33は略錐体形状を有する。具体的には、接続部33は、壁面W3と、壁面W3に囲まれた空間SP3とを有する。壁面W3は略錐面である。従って、空間SP3は略錐体形状を有する。つまり、接続部33は、軸線AXに対して線対称である。その結果、種子SDを軸線AX上に精度良く配置できる。
【0030】
なお、接続部33の穴幅d3が所定方向D31に向かって狭まっている限りにおいては、接続部33は軸線AXに対して非対称であってもよい。言い換えると、第1穴部31の中心と、第2穴部32の中心とは、同軸上に位置していなくてもよい。この場合、例えば、第2穴部32の軸線(不図示)の位置は、軸線AXに対して偏る。なお、穴幅d3は、所定方向D31に直交する方向における接続部33の長さを示す。
【0031】
図2及び
図3の例では、接続部33は略円錐形状を有する。従って、壁面W3は略円錐面である。そして、空間SP3は略円錐形状を有する。なお、接続部33の穴幅d3が所定方向D31に向かって狭まっている限りにおいては、接続部33の形状は特に限定されない。例えば、接続部33が略角錐形状を有し、壁面W3が略角錐面であり、空間SP3が略角錐形状を有していてもよい。例えば、接続部33が略錐台形状(例えば、略円錐台形状又は略角錐台形状)を有し、壁面W3が略切頭錐面(例えば、略切頭円錐面又は略切頭角錐面)であり、空間SP3が略錐台形状(例えば、略円錐台形状又は略角錐台形状)を有していてもよい。例えば、接続部33が略半円球形状を有し、壁面W3が略半円球面であり、空間SP3が略半円球形状を有していてもよい。例えば、平面視における接続部33の形状は、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。対称形状は、例えば、略円形、略多角形、又は、略楕円形である。
【0032】
本実施形態において、穴幅d1は、種子のサイズより大きく、穴幅d2は、種子のサイズより小さいことが好ましい。具体的には、種子SDの最小径よりも、穴幅d1が大きく、穴幅d2が小さいことが好ましい。一例として、穴幅d1は、種子(例えばキャベツ)の最小径より大きい6mm以上が好ましい。また、第1穴部31の穴幅d1は、移植機械の一対の植付爪の幅(例えば12mm)以下であることが好ましい。第1穴部31の穴幅d1が、移植機械の一対の植付爪の幅より大きくなると、植付爪と種子SDから成長した苗とが干渉するため、苗マット100から掻き取りしにくくなる。一方、穴幅d2は、例えばキャベツの種子の平均的な最小径1.6mm未満であることが好ましい。
【0033】
他の例として、細長い種子SD(例えばキュウリ)において、「種子SDの最小径<穴幅d1<種子SDの最大径」である場合にも、第1穴部31を通って、種子SDを接続部33に容易に到達させることができる。一方で、「種子SDの最小径>穴幅d2」である場合、種子SDは、第2穴部32に容易に到達することなく、接続部33に留まることができる。その結果、種子SDが、播種穴部3において安定した姿勢で配置されやすくなる。なお、例えば、穴幅d1は、種子SDの最大径よりも大きくてもよい。この場合も、接続部33を通って、種子SDを第2穴部32に容易に到達させることができる。
【0034】
なお、
図3の例では、第2穴部32の所定方向D31の長さH2は、第1穴部31の所定方向D31の長さH1よりも短い。ただし、長さH2は長さH1以上であってもよい。また、播種穴部3は、第1主面F1からの深さDP3を有する。深さDP3は、長さH1と長さH2と、接続部33の所定方向D31の長さH3との和である。つまり、深さDP3は、第1主面F1から底部B2までの所定方向D31における播種穴部3の長さを示す。播種穴部3の深さDP3は、苗床部1の厚みtよりも小さい。このように、播種穴部3に底部B2が設けられ、播種穴部3が苗床部1を貫通していないことで、播種穴部3に水が溜まりやすくなり、種子SDが乾燥しにくくなるとともに、種子SDから発芽して所定方向D31に伸びた根が底部B2又は壁面W2付近の苗床部1に根が根付きやすくなる。
【0035】
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【実施例0036】
本発明の実施例1~実施例12及び比較例を説明する。
【0037】
実施例1に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例1:穴幅d1=6mm、長さH1=12mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=10mm)
【0038】
実施例2に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例2:穴幅d1=6mm、長さH1=12mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=5mm)
【0039】
比較例に係る播種穴は、以下のパラメータを有する。つまり、比較例に係る播種穴には、本実施形態における第2穴部32に相当する構成が設けられていない。
(比較例:穴幅d1=6mm、長さH1=12mm、長さH3=4mm)
【0040】
つまり、実施例1、実施例2及び比較例では、第2穴部32の長さH2のみが異なる。
【0041】
実施例1、実施例2及び比較例ごとに複数の播種穴部3を設けた苗マットにおいて、25日間での種子SDの発芽状況を観測し、種子SDの「根あばれ率」を測定した。実施例1、実施例2及び比較例において、播種穴部3以外の苗マット及び種子SDの条件は同じである。実施例1、実施例2及び比較例において、発芽した種子SDの芽(苗)が正立せず、種子SDの根が露出していると、種子SDに「根あばれ」が生じていると判断される。つまり、種子SDの「根あばれ率」が低いほど、種子SDの生育に適した環境である。
【0042】
(実施例1、実施例2及び比較例の結果)
図4は、実施例1、実施例2及び比較例における根あばれ率を示す表である。実施例1の「根あばれ率」は、0(ゼロ)%であった。実施例2の「根あばれ率」は、2%であった。比較例の「根あばれ率」は、6%であった。5mmの長さH2の第2穴部32を有する実施例2の「根あばれ率」は、比較例と比べて大幅に低下していた。更に、10mmの長さH2の第2穴部32を有する実施例1は、「根あばれ」が生じていなかった。従って、播種穴部3における第2穴部32の長さH2は、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。
【0043】
次に、本発明の実施例3及び実施例4を説明する。
【0044】
実施例3に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例3:穴幅d1=6mm、長さH1=12mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=10mm)
【0045】
実施例4に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例4:穴幅d1=6mm、長さH1=12mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=10mm)
【0046】
つまり、実施例3及び実施例4では、第2穴部32の穴幅d2のみが異なる。
【0047】
(実施例3及び実施例4の結果)
実施例3及び実施例4ごとに複数の播種穴部3を設けた苗マットにおいて、25日間での種子SDの発芽状況を観測し、種子SDの根付きの状況を測定した。実施例3及び実施例4において、播種穴部3以外の苗マット及び種子SDの条件は同じである。
【0048】
図5は、実施例4の苗マットにおける第2主面F2を示す図である。
図6は、実施例3の苗マットにおける第2主面F2を示す図である。実施例3及び実施例4を比較すると、実施例3は、実施例4に比べて、根が第2主面F2まで行き渡っている種子SDが多い。つまり、実施例3は、実施例4より根付きが良かった。従って、播種穴部3における第2穴部32の穴幅d2は、2mm以上が好ましい。
【0049】
次に、本発明の実施例5~実施例8を説明する。
【0050】
実施例5に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例5:穴幅d1=6mm、長さH1=2mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=5mm、DP3(播種穴部3の深さ)=H1+H2+H3=11mm)
【0051】
実施例6に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例6:穴幅d1=6mm、長さH1=4mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=5mm、DP3=13mm)
【0052】
実施例7に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例7:穴幅d1=6mm、長さH1=6mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=5mm、DP3=15mm)
【0053】
実施例8に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例6:穴幅d1=6mm、長さH1=8mm、長さH3=4mm、穴幅d2=2mm、長さH2=5mm)
【0054】
つまり、実施例5~実施例8では、第1穴部31の長さH1のみが異なる。
【0055】
実施例5~実施例8ごとに複数の播種穴部3を設けた苗マットにおいて、25日間での種子SDの発芽状況を観測し、種子SDの「根あばれ率」を測定した。実施例5~実施例8において、播種穴部3以外の苗マット及び種子SDの条件は同じである。
【0056】
(実施例5~実施例8の結果)
図7は、実施例5~実施例8における根あばれ率を示す表である。実施例5の「根あばれ率」は、4%であった。実施例6の「根あばれ率」は、0(ゼロ)%であった。実施例7の「根あばれ率」は、0(ゼロ)%であった。実施例8の「根あばれ率」は、0(ゼロ)%であった。つまり、長さH1が4mm未満であると、「根あばれ」が生じやすい。従って、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、4mm以上が好ましい。
【0057】
次に、本発明の実施例9~実施例12を説明する。
【0058】
実施例9に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例9:穴幅d1=8mm、長さH1=6mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3(播種穴部3の深さ)=H1+H2+H3=15mm)
【0059】
実施例10に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例10:穴幅d1=8mm、長さH1=8mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3=17mm)
【0060】
実施例11に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例11:穴幅d1=8mm、長さH1=11mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3=20mm)
【0061】
実施例12に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例12:穴幅d1=8mm、長さH1=14mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3=23mm)
【0062】
つまり、実施例9~実施例12では、第1穴部31の長さH1のみが異なる。
【0063】
実施例9~実施例12ごとに複数の播種穴部3を設けた苗マットにおいて、25日間での種子SDの発芽状況を観測し、種子SDの「発芽率」及び「発芽遅れ率」を測定した。実施例9~実施例12において、播種穴部3以外の苗マット及び種子SDの条件は同じである。「発芽率」は、実施例9~実施例12ごとに、複数の種子SDの全部に対して発芽が確認できた種子SDの割合を示す。「発芽遅れ率」は、実施例9~実施例12ごとに、発芽が確認できた種子SDのうち観測開始から所定期間のうちに発芽しなかった種子SDの、複数の種子SDの全部に占める割合を示す。
【0064】
(実施例9~実施例12の結果)
図8は、実施例9~実施例12における「発芽率」、「発芽遅れ率」及び「良生育率」を示す表である。「良生育率」は、「発芽率」から「発芽遅れ率」を引いた値である。つまり、実施例9~実施例12ごとに、複数の種子SDの全部のうち、観測開始から所定期間のうちに発芽した種子SDの割合を示す。
【0065】
実施例9の「発芽率」は、97.5%であった。実施例10の「発芽率」は、98.8%であった。実施例11の「発芽率」は、100%であった。実施例12の「発芽率」は、95%であった。以上の結果から、播種穴部3における第1穴部31の長さH1が6mm以上である場合、「発芽率」は、95%以上になることがわかる。ただし、播種穴部3における第1穴部31の長さH1が所定の長さを越えて長くなるほど、種子SDに空気(酸素)が行き渡りにくくなり、発芽しにくくなる傾向にある。
【0066】
一方、実施例9の「発芽遅れ率」は、1.3%であった。実施例10の「発芽遅れ率」は、2.5%であった。実施例11の「発芽遅れ率」は、1.3%であった。実施例12の「発芽遅れ率」は、2.6%であった。また、実施例9の「良生育率」は、96.2%であった。実施例10の「良生育率」は、96.3%であった。実施例11の「良生育率」は、98.7%であった。実施例12の「良生育率」は、92.4%であった。以上の結果から、播種穴部3における第1穴部31の長さH1が14mmより長くなると、「良生育率」が95%を下回り、許容範囲から外れてしまう。従って、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、14mm未満が好ましい。
【0067】
以上、実施例5~実施例8の結果及び実施例9~実施例12の結果から、「根あばれ」を防止するためには、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、4mm以上であることが好ましく、種子SDを良好に生育させるためには、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、14mm未満であることが更に好ましい。より詳細には、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、11mm以下であることが更に好ましい。なお、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、種子SDの品種に応じて、14mm以上であってもよい。一例として、タマネギの例を以下に説明する。
【0068】
次に、本発明の実施例13~実施例16を説明する。
【0069】
実施例13に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例13:穴幅d1=8mm、長さH1=9mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3(播種穴部3の深さ)=H1+H2+H3=18mm)
【0070】
実施例14に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例14:穴幅d1=8mm、長さH1=12mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3=21mm)
【0071】
実施例15に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例15:穴幅d1=8mm、長さH1=15mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3=24mm)
【0072】
実施例16に係る播種穴部3は、以下のパラメータを有する。
(実施例16:穴幅d1=8mm、長さH1=18mm、長さH3=4mm、穴幅d2=1mm、長さH2=5mm、DP3=27mm)
【0073】
つまり、実施例13~実施例16では、第1穴部31の長さH1のみが異なる。
【0074】
実施例13~実施例16ごとに複数の播種穴部3を設けた苗マットにおいて、25日間での種子SDの発芽状況を観測し、種子SDのうち、「根あばれ」したり、発芽したものの苗が曲がったり、播種穴部3から外に外れて成長したり、極小さく育ったりした種子SDを除く正常に生育した種子SDの割合を示す「正常苗率」を測定した。実施例13~実施例16において、播種穴部3以外の苗マット及び種子SDの条件は同じである。
【0075】
(実施例13~実施例16の結果)
図9は、実施例13~実施例16における「正常苗率」を示す表である。実施例13の「正常苗率」は、56.3%であった。実施例14の「正常苗率」は、74.1%であった。実施例15の「正常苗率」は、86.6%であった。実施例16の「正常苗率」は、82.9%であった。以上の結果から、播種穴部3における第1穴部31の長さH1が15mm以上になると、「正常苗率」が80%より高くなることがわかる。したがって、タマネギの生育に苗マット100を用いる場合、播種穴部3における第1穴部31の長さH1は、15mm以上が好ましい。
【0076】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0077】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0078】
なお、本技術は、以下のような構成をとることが可能である。
(1)種子が播種される苗マットであって、
互いに対向する第1主面及び第2主面を有し、根が伸びることを許容する素材で構成されている苗床部と、
前記苗床部に設けられ、前記種子を配置するための複数の播種穴部と
を備え、
前記複数の播種穴部の各々は、前記苗床部の前記第1主面から前記第2主面に向いている所定方向に延びる第1穴部と、
前記第1穴部における前記所定方向側の端部から前記所定方向に延びる第2穴部と、
前記第1穴部における前記所定方向側の端部と、前記第2穴部における前記所定方向と反対方向側の端部とを接続する接続部と
を含み、
前記第2穴部は、前記所定方向側の端部に底部を有し、
前記第1穴部の第1穴幅は、前記所定方向に向かって一定であり、
前記第2穴部の第2穴幅は、前記第1穴幅より狭く、前記所定方向に向かって一定である、苗マット。
(2)前記第1穴幅は、前記種子のサイズより大きく、
前記第2穴幅は、前記種子のサイズより小さい、(1)の苗マット。
(3)前記第1穴部の中心と前記第2穴部の中心とは、同軸上に位置する(1)又は(2)の苗マット。
(4)前記第2穴部の前記所定方向に沿った長さは、前記第1穴部の前記所定方向に沿った長さより短い、(1)から(3)のいずれかの苗マット。