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特開2024-171629光電変換装置、移動体、光電変換方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171629
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光電変換装置、移動体、光電変換方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/40 20230101AFI20241205BHJP
   H04N 25/773 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N25/40
H04N25/773
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088746
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 正則
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝行
(72)【発明者】
【氏名】藤森 壮也
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 拓文
(72)【発明者】
【氏名】横山 順哉
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX53
5C024GX03
5C024GX15
5C024GY39
5C024GY41
5C024GY45
5C024HX57
5C024JX42
(57)【要約】
【課題】
短時間の蓄積結果を途中で読み出すことが可能な光電変換装置を提供する。
【解決手段】
光電変換装置において、光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部と、前記パルスの数をカウントするカウンタと、前記カウンタのカウント値を記憶するメモリと、をそれぞれ備える複数の画素と、蓄積期間の開始時と終了時の前記カウンタのカウント値の差分に基づいて信号を生成し、フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、前記第1の蓄積期間は前記第2の蓄積期間よりも短く、前記第1の蓄積期間に生成される信号を前記第1の蓄積期間の終了から前記第2の蓄積期間の終了までの間に出力するように制御する制御手段と、を有する。
【選択図】 図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部と、
前記パルスの数をカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を記憶するメモリと、をそれぞれ備える複数の画素と、
蓄積期間の開始時と終了時の前記カウンタのカウント値の差分に基づいて信号を生成し、
フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、前記第1の蓄積期間は前記第2の蓄積期間よりも短く、前記第1の蓄積期間に生成される信号を前記第1の蓄積期間の終了から前記第2の蓄積期間の終了までの間に出力するように制御する制御手段と、を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1の蓄積期間と前記第2の蓄積期間は重複していることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1の蓄積期間と前記第2の蓄積期間は同時に開始することを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第2の蓄積期間の終了時がフルフレームの終了時と一致することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1の蓄積期間に生成される信号に基づき被写体を認識する認識手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記認識手段は、更に前記第2の蓄積期間に生成される信号に基づき前記被写体を認識することを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
少なくとも前記第2の蓄積期間に生成される信号を画像として表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記センサ部はアバランシェフォトダイオードを含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
移動体の動作を制御する移動制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項10】
光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部と、
前記パルスの数をカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を記憶するメモリと、をそれぞれ備える複数の画素により光電変換を行うための光電変換方法であって、
蓄積期間の開始時と終了時の前記カウンタのカウント値の差分に基づいて信号を生成し、
フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、
前記第1の蓄積期間は前記第2の蓄積期間よりも短く、
前記第1の蓄積期間に生成される信号を前記第1の蓄積期間の終了から前記第2の蓄積期間の終了までの間に出力するように制御することを特徴とする光電変換方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換装置又は請求項9に記載の移動体の各手段をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、移動体、光電変換方法、及びコンピュータプログラム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アバランシェフォトダイオード(APD)に入射する光子の数をデジタル的に計数し、計数値を光電変換されたデジタル信号として画素から出力する光電変換装置が開発されている。
【0003】
又、例えば特許文献1では、APDを有する光電変換装置において、蓄積期間が互いに重複する複数の映像を出力することができ、それにより低照度でも連写が可能となる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許7223070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば移動体に設置される車載用のカメラの撮像素子を想定した場合、通常のセンサ駆動ではフレーム単位で認識処理をかけるため、例えば30fpsの場合、33.3msごとにしか認識処理を実行できない。従って、車載用のカメラではフレーム切り替わり直後に物体が飛び込んできても、フレームの終了まで認識処理をかけることができない。
【0006】
又、車載用のカメラでは信号機によるフリッカを抑制するために一定期間(11ms)以上の蓄積期間とすることが多く、特に低照度下では蓄積期間を長くすることで明るく撮影している。しかし蓄積期間が長いので高速で動く物体には被写体ブレが生じ、認識率が下がる。
【0007】
そこで、本発明は、短時間の蓄積結果を途中で読み出すことが可能な光電変換装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1側面の光電変換装置は、
光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部と、
前記パルスの数をカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を記憶するメモリと、をそれぞれ備える複数の画素と、
蓄積期間の開始時と終了時の前記カウンタのカウント値の差分に基づいて信号を生成し、
フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、前記第1の蓄積期間は前記第2の蓄積期間よりも短く、前記第1の蓄積期間に生成される信号を前記第1の蓄積期間の終了から前記第2の蓄積期間の終了までの間に出力するように制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短時間の蓄積結果を途中で読み出すことが可能な光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の光電変換素子の構成例を示す図である。
図2】センサ基板11の構成例を示す図である。
図3】回路基板21の構成例を示す図である。
図4図2及び図3のうち、画素101及び、画素101に対応した信号処理回路103の等価回路を示した図である。
図5】APD201の動作と出力信号の関係を模式的に示した図である。
図6】実施形態に係る光電変換装置600及び移動体700の機能ブロック図である。
図7】実施形態に係るカメラ制御部605による光電変換方法を説明するための図である。
図8】分割された複数のフレームの画像の例を示す図である。
図9】実施形態におけるメモリ回路とバッファとの関係を示す図である。
図10】実施形態における光電変換素子の駆動例の詳細を示すフローチャートである。
図11図10の続きのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図において、同一の部材または要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の光電変換素子の構成例を示す図である。以下では、光電変換素子100が、センサ基板11と、回路基板21の2枚の基板が積層され、且つ電気的に接続されることにより構成される、所謂、積層構造である光電変換装置を例にとって説明する。しかしながら、センサ基板に含まれる構成と回路基板に含まれる構成が共通の半導体層に配された、所謂、非積層構造であっても良い。センサ基板11は、画素領域12を含む。回路基板21は、画素領域12で検出された信号を処理する回路領域22を含む。
【0013】
図2は、センサ基板11の構成例を示す図である。センサ基板11の画素領域12は、複数行及び列方向に渡って二次元状に複数配置された画素101を含む。画素101は、アバランシェフォトダイオード(以下、APD)を含む光電変換部102を備える。
【0014】
ここで、光電変換部102は、光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部として機能している。尚、画素領域12を成す画素アレイの行数及び列数は、特に限定されるものではない。
【0015】
図3は、回路基板21の構成例を示す図である。回路基板21は、図2の各光電変換部102で光電変換された電荷を処理する信号処理回路103、読み出し回路112、制御パルス生成部115、水平走査回路111、垂直信号線113、垂直走査回路110、出力回路114を有している。
【0016】
垂直走査回路110は、制御パルス生成部115から供給された制御パルスを受け、行方向に配列された複数の画素に、順次的に制御パルスを供給する。垂直走査回路110にはシフトレジスタやアドレスデコーダといった論理回路が用いられる。
【0017】
各画素の光電変換部102から出力された信号は、各信号処理回路103で処理される。信号処理回路103は、カウンタやメモリなどが設けられており、メモリにはデジタル値が保持される。水平走査回路111は、デジタル信号が保持された各画素のメモリから信号を読みだすために、各列を順次選択する制御パルスを信号処理回路103に入力する。
【0018】
垂直信号線113には、垂直走査回路110により選択された行の画素の信号処理回路103から信号が出力される。垂直信号線113に出力された信号は、読み出し回路112、出力回路114を介して、光電変換素子100の外部に出力される。読み出し回路112には各垂直信号線113に接続された、複数のバッファが内蔵されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、平面視で画素領域12に重なる領域に、複数の信号処理回路103が配される。そして、平面視で、センサ基板11の端と画素領域12の端との間に重なるように、垂直走査回路110、水平走査回路111、読み出し回路112、出力回路114、制御パルス生成部115が配される。
【0020】
言い換えると、センサ基板11は、画素領域12と画素領域12の周りに配された非画素領域とを有する。そして、平面視で非画素領域に重なる領域に、垂直走査回路110、水平走査回路111、読み出し回路112、出力回路114、制御パルス生成部115が配される。
【0021】
尚、垂直信号線113の配置、読み出し回路112、出力回路114の配置は、図3に示した例に限定されない。例えば、垂直信号線113が行方向に延びて配されており、読み出し回路112を垂直信号線113が延びる先に配しても良い。又、信号処理回路103は、必ずしもすべての光電変換部に1つずつ設けられる必要はなく、複数の光電変換部に対して1つの信号処理部が共有され、順次信号処理を行う構成となっていても良い。
【0022】
図4は、図2及び図3における画素101と、画素101に対応した信号処理回路103の等価回路を示した図である。
【0023】
光電変換部102に含まれるAPD201は、光電変換により入射光に応じた電荷対を生成する。APD201の2つのノードのうちの一方のノードは、駆動電圧VL(第1電圧)が供給される電源線と接続されている。又、APD201の2つのノードのうちの他方のノードは、電圧VLよりも高い駆動電圧VH(第2電圧)が供給される電源線と接続されている。
【0024】
図4では、APD201の一方のノードはアノードであり、APDの他方のノードはカソードである。APD201のアノードとカソードには、APD201がアバランシェ増倍動作をするような逆バイアス電圧が供給される。このような電圧を供給した状態とすることで、入射光によって生じた電荷がアバランシェ増倍を起こし、アバランシェ電流が発生する。
【0025】
尚、逆バイアスの電圧が供給される場合において、アノード及びカソードの電圧差が降伏電圧より大きい電圧差で動作させるガイガーモードと、アノード及びカソードの電圧差が降伏電圧近傍、もしくはそれ以下の電圧差で動作させるリニアモードがある。ガイガーモードで動作させるAPDをSPADと呼ぶ。SPADの場合、例えば、電圧VL(第1電圧)は、-30V、電圧VH(第2電圧)は、1Vである。
【0026】
信号処理回路103は、クエンチ素子202、波形整形部210、カウンタ回路211、メモリ回路212を有する。クエンチ素子202は、駆動電圧VHが供給される電源線とAPD201のアノード及びカソードのうちの一方のノードに接続される。
【0027】
クエンチ素子202は、アバランシェ増倍による信号増倍時に負荷回路(クエンチ回路)として機能し、APD201に供給する電圧を抑制して、アバランシェ増倍を抑制する働きを持つ(クエンチ動作)。又、クエンチ素子202は、クエンチ動作で電圧降下した分の電流を流すことにより、APD201に供給する電圧を駆動電圧VHへと戻す働きを持つ(リチャージ動作)。
【0028】
図4では、信号処理回路103は、クエンチ素子202の他に波形整形部210、カウンタ回路211、及びメモリ回路212を有する例を示した。
【0029】
波形整形部210は、光子検出時に得られるAPD201のカソードの電圧変化を整形して、パルス信号を出力する。波形整形部210としては、例えば、インバータ回路が用いられる。図4では、波形整形部210としてインバータを1つ用いた例を示したが、複数のインバータを直列接続した回路を用いても良いし、波形整形効果があるその他の回路を用いても良い。
【0030】
カウンタ回路211は、波形整形部210から出力されたパルスの数をカウントし、カウント値を保持する。又、駆動線213を介して制御パルスRESが供給されたとき、カウンタ回路211に保持された信号がリセットされる。ここでカウンタ回路211は、蓄積期間の開始時と終了時のカウント値の差分に基づいて信号を生成している。
【0031】
メモリ回路212には、図3の垂直走査回路110から、図4の駆動線214(図3では不図示)を介して制御パルスSELが供給され、カウンタ回路211と垂直信号線113との電気的な接続、非接続を切り替える。メモリ回路212は、カウンタのカウント値を一時的に記憶するメモリとして機能しており、画素のカウンタ回路211からの出力信号を垂直信号線113に出力する。
【0032】
尚、クエンチ素子202とAPD201との間や、光電変換部102と信号処理回路103との間にトランジスタ等のスイッチを配して、電気的な接続を切り替えても良い。同様に、光電変換部102に供給される電圧VH又は電圧VLの供給をトランジスタ等のスイッチを用いて電気的に切り替えても良い。
【0033】
図5は、APD201の動作と出力信号の関係を模式的に示した図である。波形整形部210の入力側をnodeA、出力側をnodeBとしている。時刻t0から時刻t1の間において、APD201には、VH-VLの電位差が印加されている。時刻t1において光子がAPD201に入射すると、APD201でアバランシェ増倍が生じ、クエンチ素子202にアバランシェ増倍電流が流れ、nodeAの電圧は降下する。
【0034】
電圧降下量が更に大きくなり、APD201に印加される電位差が小さくなると、時刻t2のようにAPD201のアバランシェ増倍が停止し、nodeAの電圧レベルはある一定値以下には降下しなくなる。
【0035】
その後、時刻t2から時刻t3の間において、nodeAには電圧VLから電圧降下分を補う電流が流れ、時刻t3においてnodeAは元の電位レベルに静定する。このとき、nodeAにおいて出力波形がある閾値を越えた部分は、波形整形部210で波形整形され、nodeBでパルス信号として出力される。
【0036】
次に、実施形態の光電変換装置600及び移動体700について説明する。図6は実施形態に係る光電変換装置600及び移動体700の機能ブロック図である。尚、図6に示される機能ブロックの一部は、光電変換装置600及び移動体700に含まれる不図示のコンピュータに、不図示の記憶媒体としてのメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行させることによって実現されている。
【0037】
しかし、それらの一部又は全部をハードウェアで実現するようにしても構わない。ハードウェアとしては、専用回路(ASIC)やプロセッサ(リコンフィギュラブルプロセッサ、DSP)などを用いることができる。又、図6に示される夫々の機能ブロックは、同じ筐体に内蔵されていなくても良く、互いに信号路を介して接続された別々の装置により構成しても良い。
【0038】
光電変換装置600は、図1図5で説明した光電変換素子100、結像光学系601、画像処理部603、認識部604、カメラ制御部605、記憶部606、通信部607等を有する。光電変換素子100は、光学像を光電変換するための図1図5で説明したアバランシェフォトダイオードで構成されている。
【0039】
実施形態の光電変換装置は移動体700に搭載されており、結像光学系601と光電変換素子100のセットからなるカメラユニットは例えば移動体の前方、後方、側方の少なくとも1方向を撮影するように構成されている。尚、カメラユニットを移動体700に複数設けても良い。
【0040】
画像処理部603は、光電変換素子100で取得された像信号に対して例えば黒レベル補正や、ガンマカーブ調整、ノイズリダクション、デジタルゲイン調整、デモザイク処理、データ圧縮等の画像処理を行い、最終的な画像信号を生成する。尚、光電変換素子100がRGB等のオンチップカラーフィルタを有する場合、画像処理部603においてホワイトバランス補正、色変換などの処理を行うことが望ましい。
【0041】
又、画像処理部603の出力は認識部604、移動体700のECU(Electric Control Unit)701、カメラ制御部605に供給される。認識部604は、画像信号に基づき画像認識を行うことによって周囲の人や車両等を認識し、必要に応じて警告等を発する。
【0042】
尚、本実施形態では移動体700は例えば自動車の例を用いて説明するが、移動体は航空機、電車、船舶、ドローン、AGV、ロボットなど、移動可能なものであれば、どのようなものであっても良い。
【0043】
カメラ制御部605はコンピュータとしてのCPU及びコンピュータプログラムを記憶したメモリを内蔵しており、メモリに記憶されたコンピュータプログラムをCPUが実行することにより光電変換装置600の各部の制御を行う。
【0044】
尚、カメラ制御部605は制御手段として機能しており、例えば光電変換素子100の制御パルス生成部を介して、光電変換素子100の各フレームの露光期間の長さや、制御信号CLKのタイミングの制御などを行う。
【0045】
記憶部606は、例えば、メモリカード、ハードディスク等の記録媒体を含み、画像信号を記憶、読出すことができる。通信部607は無線や有線のインターフェースを備え、生成した画像信号を光電変換装置600の外部に出力すると共に外部からの各種信号を受信する。
【0046】
ECU701はコンピュータとしてのCPU及びコンピュータプログラムを記憶したメモリを内蔵しており、メモリに記憶されたコンピュータプログラムをCPUが実行することにより移動体700の各部の制御を行う。
【0047】
ECU701の出力は車両制御部702と表示部703に供給される。車両制御部702は、ECU701の出力に基づき移動体としての車両の駆動、停止、方向制御等を行う移動制御手段として機能している。又、表示部703は表示手段として機能しており、例えば液晶デバイスや有機EL等の表示素子を含み、移動体700に搭載されている。
【0048】
表示部703は、ECU701の出力に基づき例えばGUIを用いて移動体700の運転者に対して、光電変換素子100により取得した画像や、車両の走行状態等に関する各種情報を表示する。
【0049】
尚、図6における画像処理部603、認識部604等は移動体700に搭載されていなくても良く、例えば移動体700とは別に設けられた、移動体700をリモートコントロールため、或いは移動体の走行をモニターするための外部端末等に設けても良い。
【0050】
図7は、実施形態に係るカメラ制御部605による光電変換方法を説明するための図である。本実施形態では、例えば30フルフレーム/秒で光電変換を周期的に駆動する。又、33.3msの長さの1垂直期間分のフレームをフルフレームと呼び、フルフレームを4分割したものを夫々フレームと呼ぶ。
【0051】
即ち、図7に示すように、時刻T0~時刻T12までのフルフレーム1を均等な期間(8.33ms)ずつフレーム1_1、1_2、1_3、1_4に分割している。
【0052】
尚、フレーム1_1は、フルフレーム1の開始時刻T0~時刻T1までの蓄積期間(光電変換期間)を有し、フレーム1_2は、時刻T0~時刻T2までの蓄積期間を有する。又、フレーム1_3は、時刻T0~時刻T3までの蓄積期間を有し、フレーム1_4は、時刻T0~時刻T4までの蓄積期間を有する。
【0053】
そして時刻T0においてカウンタ回路211はリセットされ、時刻T1~T4において夫々カウント値C1_1、C1_2、C1_3、C1_4をカウンタ回路211から取得している。
【0054】
又、カウント値C1_1、C1_2、C1_3、C1_4はメモリ回路212に一時的に保存される。そしてメモリ回路212に一時的に保存された1行分の信号は読み出し回路112のバッファを介して光電変換素子から逐次出力される。
【0055】
このように、本実施形態によれば、フレーム1_1の期間に蓄積された信号は時刻T1~T2にかけて読出され、認識部604で速やかに処理される。従って画像認識を速やかに行うことができる。同様に、フレーム1_2、フレーム1_3、フレーム1_4の期間に蓄積された信号は夫々時刻T2~T3、T3~T4、T4~T1にかけて順次読出され、画像認識を繰り返し行うことができる。
【0056】
図8は、分割された複数のフレームの画像の例を示す図である。図8に示すようにフレーム1_1の画像は蓄積期間が短いので暗くなるが、飛び出してきた人の被写体ブレは少ない。一方、フレーム1_2、フレーム1_3、フレーム1_4の順に、蓄積期間が長くなるので被写体ブレが生じやすくなる。尚、停止している車両や白線にはブレは生じにくく、蓄積期間が長い程コントラストが向上しやすい。
【0057】
このように、本実施形態では、フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、第1の蓄積期間は第2の蓄積期間よりも短く、第1の蓄積期間に生成される信号を第1の蓄積期間終了から第2の蓄積期間終了までの間に出力するように制御している。
【0058】
又、本実施形態では、第1の蓄積期間と第2の蓄積期間は重複しており、第1の蓄積期間と第2の蓄積期間は同時に開始する。更に、第2の蓄積期間の終了時がフルフレームの終了時と一致しており、第2の蓄積期間は前記第1の蓄積期間の整数倍となっている。
【0059】
ただし、第2の蓄積期間は前記第1の蓄積期間の整数倍である必要はない。第2の蓄積期間は第1の蓄積期間よりも長く(第1の蓄積期間は第2の蓄積期間よりも短く)、第2の蓄積期間の終了が第1の蓄積期間も終了よりも後になればよい。
【0060】
即ち、蓄積期間が短い画像と長い画像を作り、短い蓄積期間が終わるタイミングを、長い蓄積期間が終わるタイミングよりも早くしておき、短い蓄積期間が終わり次第、その画像を出力して後段の認識部に送っている。そして少なくとも第1の蓄積期間に生成される信号に基づき被写体を認識している。認識手段としての認識部604は、少なくとも第1の蓄積期間に生成される信号に基づき被写体を認識する。
【0061】
従って、従来ではフルフレーム経過しないと画像認識できなかったのに対して、本実施形態では、最短で1/4フルフレーム期間後に画像認識を行うことができ、例えば移動体が高速で移動している際に、障害物等を速やかに認識することができる。従って、速やかにブレーキをかけることなどができる。或いは障害物を早期に回避することが可能となる。
【0062】
尚、蓄積期間が長い画像はコントラストを向上させることができるので、表示用画像として用いることができる。即ち、蓄積期間が短い画像は速やかな被写体認識に適しており、蓄積期間が長い画像は表示用画像に適している。このように、本実施形態の表示装置は、少なくとも第2の蓄積期間に生成される信号を画像として表示している。
【0063】
又、本実施形態においてはAPDを用いているので、CMOSセンサと異なり、読み出すことによって蓄積された電荷が劣化することはないので蓄積期間を重複させることができる。又、読出しノイズがないので1度の蓄積で何度読み出しても元の信号が劣化しない。
【0064】
図9は、実施形態におけるメモリ回路とバッファとの関係を示す図である。図9においては、図3の信号処理回路103内のメモリ回路212を、N行M列に配列した状態を示しており、各メモリ回路はメモリ1-1~メモリN-Mのように表されている。又、図9におけるバッファ1~バッファMは図3における読み出し回路112に含まれるバッファを示している。図9における出力回路114は図3の出力回路114に対応している。
【0065】
図10は、実施形態における光電変換素子の駆動例の詳細を示すフローチャートであり、図11図10の続きのフローチャートである。尚、カメラ制御部605内のコンピュータとしてのCPU等がメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって図10図11のフローチャートの各ステップの動作が順次行われる。
【0066】
図10のステップS101において、i=1にセットする。次にステップS102において時刻Tiにおけるカウンタ回路211のカウント値Countをメモリ回路212に出力する。この時、全てのメモリ回路に対して同時に出力を行う。この動作は図7の時刻T1の動作に対応している。
【0067】
次にステップS103においてj=1をセットし、ステップS104において図9のメモリ回路j-kにおけるカウント値Count(j-k-i)をバッファに出力する。この時、1~M列同時にバッファに出力する。この動作は、図9の1行目のカウント値をバッファに取り込む動作を意味している。
【0068】
次にステップS105においてk=1にセットし、ステップS106においてバッファkのカウント値Count(j-k-i)を出力回路114に出力する。この動作は、図9の一番左の列のバッファの信号を出力回路から読出す動作に対応している。
【0069】
次にAを介して図11のステップS107に進み、ステップS107においてk<Mか判定し、YesであればステップS108においてk=k+1としてkを1アップし、Bを介してステップS106に戻りステップS106の動作を行う。この動作は図9の左から2列目のバッファの信号を出力回路から読出す動作に対応している。
【0070】
ステップS107でNoになった場合、即ち、k=Mになった場合には、図9のM列目のバッファの信号を出力回路から読出し終わったことを意味し、次にステップS109に進み、j<Nか判定する。ステップS109でYesの場合にはステップS110でj=J+1とし、jを1アップし、Cを介してステップS104に戻る。これは次の行の読出しを開始するための動作に対応している。
【0071】
ステップS109でNoと判定された場合には、全ての行の読出しが終了したことを意味するので、ステップS111に進み、j<4か否か判定する。ステップS111でYesと判定された場合にはi=i+1としiを1アップしてDを介してステップS102に戻る。この動作は次の時刻T2の読出しを開始する動作に対応している。
【0072】
ステップS111でNoと判定された場合には、時刻T4における読出しが完了したことを意味するので、ステップS113に進み、リセット信号でカウンタ回路211をリセットする。この動作は図7における時刻T4のカウンタ回路211のリセット動作に対応している。以上のようにして、光電変換素子100に蓄積された信号を順次読出すことができる。
【0073】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0074】
例えば、上記実施形態では、最短で1/4フルフレーム期間の蓄積を行っているが、認識部604における認識精度に応じて、最短の蓄積期間の長さを例えば1/5フルフレーム期間や1/3フルフレーム期間などに変更しても良い。或いは、被写体の明るさに応じて、最短の蓄積期間の長さを変更しても良い。
【0075】
更に、読出し周期を1/4フルフレーム期間ごととした場合であっても、被写体の明るさや画像認識精度などに応じて、図7のフレーム1_1の蓄積期間内の途中でカウンタ回路をリセットしても良い。それにより実質的な蓄積期間を1/4フルフレーム期間よりも短くしても良い。
【0076】
或いは図7の時刻T1などにおいて、カウンタ回路を一旦リセットしても良い。それにより、時刻T4において読出されるカウント値を調整するようにしても良い。尚、本実施形態は、以下の組み合わせを含む。
【0077】
(構成1)光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部と、前記パルスの数をカウントするカウンタと、前記カウンタのカウント値を記憶するメモリと、をそれぞれ備える複数の画素と、蓄積期間の開始時と終了時の前記カウンタのカウント値の差分に基づいて信号を生成し、フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、前記第1の蓄積期間は前記第2の蓄積期間よりも短く、前記第1の蓄積期間に生成される信号を前記第1の蓄積期間の終了から前記第2の蓄積期間の終了までの間に出力するように制御する制御手段と、を有することを特徴とする光電変換装置。
【0078】
(構成2)前記第1の蓄積期間と前記第2の蓄積期間は重複していることを特徴とする構成1に記載の光電変換装置。
【0079】
(構成3)前記第1の蓄積期間と前記第2の蓄積期間は同時に開始することを特徴とする構成2に記載の光電変換装置。
【0080】
(構成4)前記第2の蓄積期間の終了時がフルフレームの終了時と一致することを特徴とする構成1~3のいずれか1つに記載の光電変換装置。
【0081】
(構成5)少なくとも前記第1の蓄積期間に生成される信号に基づき被写体を認識する認識手段を有することを特徴とする構成1~4のいずれか1つに記載の光電変換装置。
【0082】
(構成6)前記認識手段は、更に前記第2の蓄積期間に生成される信号に基づき前記被写体を認識することを特徴とする構成5に記載の光電変換装置。
【0083】
(構成7)少なくとも前記第2の蓄積期間に生成される信号を画像として表示する表示手段を有することを特徴とする構成1~6のいずれか1つに記載の光電変換装置。
【0084】
(構成8)前記センサ部はアバランシェフォトダイオードを含むことを特徴とする構成1~7のいずれか1つに記載の光電変換装置。
【0085】
(構成9)構成1~8のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
移動体の動作を制御する移動制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【0086】
(方法)光子の受光頻度に応じた頻度でパルスを発するセンサ部と、前記パルスの数をカウントするカウンタと、前記カウンタのカウント値を記憶するメモリと、をそれぞれ備える複数の画素により光電変換を行うための光電変換方法であって、蓄積期間の開始時と終了時の前記カウンタのカウント値の差分に基づいて信号を生成し、フルフレーム内で第1の蓄積期間と第2の蓄積期間を持ち、前記第1の蓄積期間は前記第2の蓄積期間よりも短く、前記第1の蓄積期間に生成される信号を前記第1の蓄積期間の終了から前記第2の蓄積期間の終了までの間に出力するように制御することを特徴とする光電変換方法。
【0087】
(プログラム)構成1~8のいずれか1つに記載の光電変換装置又は構成9に記載の移動体の各手段をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【0088】
尚、本実施例における制御の一部又は全部を上述した実施形態の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して光電変換装置に供給するようにしても良い。そしてその光電変換装置におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしても良い。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0089】
11:センサ基板
12:画素領域
21:回路基板
22:回路領域
100:光電変換素子
101:画素
102:光電変換部
103:信号処理回路
110:垂直走査回路
111:水平走査回路
112:読み出し回路
113:垂直信号線
114:出力回路
115:制御パルス生成部
201:アバランシェフォトダイオード
202:クエンチ素子
210:波形整形部
211:カウンタ回路
212:メモリ回路
213:駆動線
600:光電変換装置
601:結像光学系
603:信号処理部
604:認識部
605:カメラ制御部
606:記憶部
607:通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11