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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171633
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20241205BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088752
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
(72)【発明者】
【氏名】前田 夏奈美
(72)【発明者】
【氏名】舩木 速人
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251BA11
5F251JA03
(57)【要約】
【課題】少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄を表現でき、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる意匠性および発電効率に優れた印刷物を備えた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】印刷物2は、複数の第1色ドット11により構成された第1色パターン層10と複数の第2色ドット21により構成された第2色パターン層20とを備える。各第1色ドット11は、第1色用バインダー12と、バインダー内部に分散された複数の第1色顔料チップ13とを含む。各第2色ドット21は、第2色用バインダー22と、バインダー内部に分散された複数の第2色顔料チップ23とを含む。複数の第1色顔料チップ13は、互いに異なる第1干渉光15a,15bを生成する複数色の第1干渉顔料14a,14bであり、複数の第2色顔料チップ23は、第1干渉顔料14a,14bが示す混色とは異なる単色の第2干渉光25を生成する第2干渉顔料24である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルと、
前記太陽電池セルの受光面側に配置され、透光性基材と絵柄印刷層とを有する印刷物と、を備える太陽電池モジュールであって、
前記絵柄印刷層は、
前記透光性基材の一方の面上に設けられ、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層と、
前記第1色パターン層の上に設けられ、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層と、を有し、
前記複数の第1色ドットのそれぞれが、第1色用バインダーと前記第1色用バインダーの内部に分散された複数の第1色顔料チップとを含み、
前記複数の第2色ドットのそれぞれが、第2色用バインダーと前記第2色用バインダーの内部に分散された複数の第2色顔料チップとを含み、
前記複数の第1色顔料チップと前記複数の第2色顔料チップとのうちのいずれか一方は、互いに異なる第1干渉光をそれぞれ生成する複数色の第1干渉顔料であり、
前記複数の第1色顔料チップと前記複数の第2色顔料チップとのうちの他方は、前記複数の第1干渉顔料が示す混色とは異なる単色の第2干渉光を生成する第2干渉顔料であり、
前記複数の第1干渉光と前記第2干渉光とを加法混色する、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第2色パターン層の上に設けられ、複数のシルバードットにより構成された白色パターン層を更に備え、
前記複数のシルバードットのそれぞれが、シルバー用バインダーと前記シルバー用バインダーの内部に分散された複数のシルバー顔料チップとを含む、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記絵柄印刷層に対して前記透光性基材とは反対側の最表面上に設けられた透過性スモーク印刷層を更に備える、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1干渉顔料と前記第2干渉顔料とのそれぞれは、粒径が25μm以上60μm以下の二酸化チタン被覆雲母を含む、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記複数の第1色顔料チップの含有率は、前記第1色用バインダーを100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であり、
前記複数の第2色顔料チップの含有率は、前記第2色用バインダーを100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指して、建物でのエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及が求められている。ZEBとは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことである。建物の中では人が活動している為、エネルギー消費量を完全にゼロにすることは不可能だが、省エネによって使うエネルギーを削減し、創エネによって使う分のエネルギーを作る事で、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにする事が可能である。
【0003】
化石燃料を使用しない創エネ方法としては、例えば太陽光発電や、風力発電、バイオマス発電等がある。ビルにおける創エネ方法として、設置場所や費用を考慮すると太陽光発電が適している。
【0004】
ビルの屋上の面積は、空調等の室外機で占められており、発電量を得る為には、屋上以外に壁面に太陽電池モジュールを設置する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5725581号公報
【特許文献2】特許第6839319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の印刷物は、第1色パターン層、第2色パターン層、及び第3色パターン層を備えており、それぞれのパターン層が含む顔料チップが、赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料のいずれかである。この印刷物では、従来の印刷よりも色の発色を鮮やかにするために、パターン層の数が多くなっている。特許文献2に記載の加飾シートは、複数種類の干渉顔料を含み、第1混色を呈する第1図柄層と、複数種類の干渉顔料を含み、当該第1混色とは異なる第2混色を呈する第2図柄層と、を備える。この加飾シートでは、第1図柄層及び第2図柄層のそれぞれが複数種類の干渉顔料を含むため、印刷時の調色作業や見当合わせ作業が煩雑となるおそれがある。そのため、太陽電池モジュールに引用文献1,2の印刷物を組み合わせるとこれらの問題が生じるおそれがある。また、太陽電池モジュールは、太陽光を受光して発電するため、太陽光が印刷物で過度に遮られてしまうと、発電効率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄を表現でき、かつ、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる印刷物を備え、発電効率の低下を抑制できる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、一側面として、太陽電池セルと、太陽電池セルの受光面側に配置され、透光性基材と絵柄印刷層とを有する印刷物と、を備える太陽電池モジュールに関する。この太陽電池モジュールでは、絵柄印刷層は、透光性基材の一方の面上に設けられ、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層と、第1色パターン層の上に設けられ、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層と、を有する。この印刷物では、複数の第1色ドットのそれぞれが、第1色用バインダーと第1色用バインダーの内部に分散された複数の第1色顔料チップとを含み、複数の第2色ドットのそれぞれが、第2色用バインダーと第2色用バインダーの内部に分散された複数の第2色顔料チップとを含み、複数の第1色顔料チップと複数の第2色顔料チップとのうちのいずれか一方は、互いに異なる第1干渉光をそれぞれ生成する複数色の第1干渉顔料であり、複数の第1色顔料チップと複数の第2色顔料チップとのうちの他方は、複数の第1干渉顔料が示す混色とは異なる単色の第2干渉光を生成する第2干渉顔料であり、複数の第1干渉光と第2干渉光とを加法混色する。
【0009】
この太陽電池モジュールでは、第1色パターン層及び第2色パターン層のうちいずれかのパターン層が互いに異なる干渉光を生成する複数色の干渉顔料を含むため、少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄表現を実現できる。さらに、この印刷物では、複数の干渉光を生成する干渉顔料を含むパターン層は、第1色パターン層及び第2色パターン層のうちいずれか1層でよいため、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる。したがって、この印刷物によれば、少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄を表現でき、かつ、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる。また、印刷物は、これらの効果を得つつも、太陽電池セルへの太陽光に対する透過性を確保することで、太陽電池モジュールの発電効率の低下を抑制することができる。
【0010】
[2]上記[1]の太陽電池モジュールは、第2色パターン層の上に設けられ、複数のシルバードットにより構成された白色パターン層を更に備え、複数のシルバードットのそれぞれが、シルバー用バインダーとシルバー用バインダーの内部に分散された複数のシルバー顔料チップとを含んでもよい。この場合、第1色パターン層と第2色パターン層との発色性が優れると共に、絵柄印刷層が白っぽい印象を与える絵柄を有することができる。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の太陽電池モジュールは、絵柄印刷層に対して透光性基材側とは反対側の最表面上に設けられた透過性スモーク印刷層を更に備えてもよい。この場合、第1色パターン層と第2色パターン層との発色性がより優れる。さらに、透過性スモーク印刷層が透過性を有するため、太陽電池モジュールの発電効率の低下が良好に抑制される。
【0012】
[4]上記[1]~[3]のいずれかの太陽電池モジュールでは、第1干渉顔料と第2干渉顔料とのそれぞれは、粒径が25μm以上60μm以下の二酸化チタン被覆雲母を含んでもよい。粒径が25μm以上の二酸化チタン被覆雲母を含む場合、絵柄印刷層の透過性と発色性とを良好にすることができる。粒径が60μm以下の二酸化チタン被覆雲母を含む場合、絵柄印刷層の解像度及び階調性が低下することを抑制できる。
【0013】
[5]上記[1]~[4]のいずれかの太陽電池モジュールでは、複数の第1色顔料チップの含有率は、第1色用バインダーを100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であり、複数の第2色顔料チップの含有率は、第2色用バインダーを100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であってもよい。複数の第1色顔料チップの含有率が0.5重量部以上の範囲内である場合、第1色パターン層の絵柄が良好に表現される。複数の第1色顔料チップの含有率が20重量部以下の範囲内である場合、第1色パターン層の塗膜性と透過性とが低下することを抑制できる。同様に、複数の第2色顔料チップの含有率が、第2色用バインダーを100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である場合、第2色パターン層の絵柄が良好に表現されつつ、第2色パターン層の塗膜性と透過性とが低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄を表現でき、かつ、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる印刷物を備え、発電効率の低下を抑制できる太陽電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールを模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す太陽電池モジュールが備える印刷物を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図2に示す印刷物が備える絵柄印刷層を模式的に示す断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールの印刷物を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図4に示す印刷物が備える白色パターン層を模式的に示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールの印刷物を模式的に示す断面図である。
図7図7は、第4実施形態に係る太陽電池モジュールの印刷物を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
一般的に、太陽電池モジュールに埋め込まれている太陽電池セルの表面は、黒色又は濃紺色を呈しているだけであるので、その意匠性の向上の目的で、太陽電池モジュールの外観を種々に着色する試みが為されているところ、本実施形態においては、太陽電池セルの発電量の低下を非常に低く抑えつつ、太陽電池モジュールの外観における意匠性を改善することが可能な態様にて、太陽電池モジュールの表面に印刷物が適用される。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールを模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す太陽電池モジュールが備える印刷物を模式的に示す断面図である。図3は、図2に示す印刷物が備える絵柄印刷層を模式的に示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、背面材100上に、薄板状の太陽電池セルSCがその受光面を上向きにして封止材層111に埋め込まれた状態で載置される。太陽電池セルSCの受光面側には、太陽電池セルSCを保護する目的で表面板112が積層され接着される。太陽電池モジュール1を着色する目的で表面板112上に印刷物2が積層される。印刷物2の上にハードコート層(クリア層とも称される。)116が積層された状態となっている。
【0020】
太陽電池セルSCは、結晶系・アモルファス系シリコン、薄膜シリコン、ペロブスカイト系、カルコパイライト系、III-V族系、CdTe、CIS等の0.2mm程度の厚みの薄板状に形成された、主に可視光領域の波長の光を吸収して発電する光電変換素子であってよい。封止材層111は、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、シリコン樹脂等の透明な材料にて、図示の如く、太陽電池セルSCを囲繞し、1mm程度の厚みに層状にとなるように形成されたものであってよい。
【0021】
背面材100は、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ガラス、金属(アルミニウムなど)が層状、フィルム状、又は板状に形成されたものであってよい。表面板112は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ガラスなどの透明な材料から3mm程度の厚みに形成された板状部材であってよい。表面板112と封止材層111、及び、背面材100と封止材層111との間は、封止材層111の接着力で接着されてよい。
【0022】
ハードコート層116は、加飾層を保護する目的で積層されてよく、例えば、車両等の塗装表面に適用されるものと同様であってよい。ハードコート層116の厚みは、5~50μm、好ましくは、10~40μm、更に好ましくは、15~30μmであってよい。ハードコート層116の材料としては、紫外線照射や電子線等で硬化する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物や熱硬化型コーティング組成物等を使用してよい。
【0023】
図2に示すように、印刷物2は、絵柄を表現するためのシートであり、透光性基材4と、絵柄印刷層5と、透過性スモーク印刷層30と、を備える。
【0024】
透光性基材4は、可視光透過性を有する基材である。透光性基材4は、例えば、透明性を有する樹脂製である。透明性を有する樹脂としてPET、PMMA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素等が挙げられる。透光性基材4は、ガラス基材であってもよい。透光性基材4の厚さは、例えば、25μm~250μmである。ガラス基材の場合は、例えば、数mm~10mm程度である。なお、必要に応じて、透光性基材4の表面側(絵柄印刷層5とは反対側)に表面保護層を設けていてもよい。
【0025】
絵柄印刷層5は、印刷物2の絵柄を表現する層である。絵柄印刷層5は、透光性基材4の一方の面4a上に設けられた第1色パターン層10と、第1色パターン層10の上に設けられた第2色パターン層20と、を備える。
【0026】
第1色パターン層10は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷によって、面4a上に設けることができる。第1色パターン層10は、図3に示すように、複数の第1色ドット11により構成されている。ここで、「ドット」とは、印刷画像を構成する要素となる点の意味であり、その形状は円形に限定されるものではなく、矩形や多角形やその他の形状でもかまわない。複数の第1色ドット11のそれぞれが、第1色用バインダー12と第1色用バインダー12の内部に分散された複数の第1色顔料チップ13とを含んでいる。複数の第1色顔料チップ13の含有率は、第1色用バインダー12を100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0027】
第1色用バインダー12としては、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。第1色パターン層10の厚さは、例えば、1μm~10μmである。なお、第1色パターン層10には硬化剤を含有させてもよい。この場合、第1色パターン層10の耐熱性、及び、第1色パターン層10の透光性基材4への密着性を向上させることができる。
【0028】
第1実施形態では、複数の第1色顔料チップ13は、互いに異なる干渉光を生成する複数色の第1干渉顔料14a,14bである。第1干渉顔料14a,14bのそれぞれは、可視光透過性を有する薄片(不図示)と、当該薄片を被覆する金属酸化膜(不図示)とから構成される。透光性基材4側から第1色パターン層10への入射光のうち金属酸化膜の表面において反射される光と、金属酸化膜内を通過し、薄片の表面において反射される光とが干渉し、干渉光が生成される。金属酸化膜の膜厚と金属酸化膜の屈折率とを調整することにより、所望の波長を有する干渉光を生成できる。
【0029】
第1実施形態では、第1干渉顔料14a,14bのそれぞれは、二酸化チタン被覆雲母である。当該二酸化チタン被覆雲母の粒径範囲は、例えば、25μm以上60μm以下の範囲を含む。なお、ここで、「粒径」とは、粒子断面の最長径を意味する。第1干渉顔料14a,14bを構成する薄片は、雲母以外であってもよく、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、ポリケイ酸塩であってもよい。第1干渉顔料14a,14bを構成する金属酸化膜は、二酸化チタン以外であってもよく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズであってもよい。
【0030】
第1干渉顔料14a,14bのそれぞれからは、第1色パターン層10へ入射光Eが入射することにより、互いに異なる第1干渉光15a,15bのそれぞれが生成される。すなわち、第1干渉光15a,15bの各波長は、互いに異なっている。これにより、第1干渉顔料14a,14bは、混色を示す。第1干渉顔料14a,14bのそれぞれは、例えば、赤色干渉顔料(赤色パール顔料)、及び、金色干渉顔料(金色パール顔料)のそれぞれである。この場合、第1干渉光15a,15bのそれぞれは、赤色、及び、金色のそれぞれを示す。第1干渉顔料14a,14bの各配合量は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0031】
第2色パターン層20は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷によって、第1色パターン層10上に設けることができる。第2色パターン層20は、図3に示すように、複数の第2色ドット21により構成されている。ここで、「ドット」とは、印刷画像を構成する要素となる点の意味であり、その形状は円形に限定されるものではなく、矩形や多角形やその他の形状でもかまわない。複数の第2色ドット21のそれぞれが、第2色用バインダー22と第2色用バインダー22の内部に分散された複数の第2色顔料チップ23とを含んでいる。複数の第2色顔料チップ23の含有率は、第2色用バインダー22を100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0032】
第2色用バインダー22としては、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。第2色パターン層20の厚さは、例えば、1μm~10μmである。なお、第2色パターン層20には硬化剤を含有させてもよい。この場合、第2色パターン層20の耐熱性、及び、第2色パターン層20の第1色パターン層10への密着性を向上させることができる。
【0033】
第1実施形態では、複数の第2色顔料チップ23は、第1干渉顔料14a,14bが示す混色とは異なる単色の干渉光を生成する第2干渉顔料24である。第2干渉顔料24は、可視光透過性を有する薄片(不図示)と、当該薄片を被覆する金属酸化膜(不図示)とから構成される。透光性基材4側から第2色パターン層20への入射光のうち金属酸化膜の表面において反射される光と、金属酸化膜内を通過し、薄片の表面において反射される光とが干渉し、干渉光が生成される。金属酸化膜の膜厚と金属酸化膜の屈折率とを調整することにより、所望の波長を有する干渉光を生成できる。
【0034】
第1実施形態では、第2干渉顔料24は、二酸化チタン被覆雲母である。当該二酸化チタン被覆雲母の粒径範囲は、例えば、25μm以上60μm以下の範囲を含む。なお、ここで、「粒径」とは、粒子断面の最長径を意味する。第2干渉顔料24を構成する薄片は、雲母以外であってもよく、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、ポリケイ酸塩であってもよい。第2干渉顔料を24構成する金属酸化膜は、二酸化チタン以外であってもよく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズであってもよい。
【0035】
第2干渉顔料24からは、第2色パターン層20へ入射光Eが入射することにより、単色の第2干渉光25が生成される。これにより、第2干渉顔料24は、単色を示す。第2干渉顔料24は、第1干渉顔料14a,14bが示す混色とは異なる単色の第2干渉光25を生成する干渉顔料であればよく、例えば、緑色干渉顔料(緑色パール顔料)である。この場合、第2干渉光25は、緑色を示す。
【0036】
透過性スモーク印刷層30は、印刷物2を透過する視点手前側からの光を減衰させる機能を有している。透過性スモーク印刷層30は、絵柄印刷層5に対して透光性基材4とは反対側の最表面上に設けられる。第1実施形態では、透過性スモーク印刷層30は、図2に示すように、第2色パターン層20上に設けられる。透過性スモーク印刷層30は、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系等の樹脂バインダーにカーボンブラックを少量分散させたインキを用いて、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷によって、第2色パターン層20上に設けることができる。透過性スモーク印刷層30の厚さは、例えば、1μm~10μmである。
【0037】
印刷物2では、第1干渉顔料14a,14bが生成する第1干渉光15a,15bと、第2干渉顔料24が生成する第2干渉光25とを加法混色することにより、絵柄が表現されている。
【0038】
印刷物2の全光線透過率は、例えば、30%~70%である。特に、太陽電池モジュール1の発電効率の低下を抑制するため、50%以上であってよい。ここでいう全光線透過率は分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、分光光度計UV-3600)を使用して全光線透過率を測定した値を意味する。
【0039】
以上に説明した第1実施形態に係る印刷物2では、第1色パターン層10が第1干渉顔料14a,14bを含み、第2色パターン層20が第2干渉顔料24を含むため、少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄表現を実現できる。さらに、印刷物2では、互いに異なる干渉光を生成する干渉顔料を含むパターン層は、第1色パターン層10及び第2色パターン層20のうち第1色パターン層10のみであるため、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる。したがって、印刷物2によれば、少ない印刷層数であっても立体感のある絵柄を表現でき、かつ、印刷時の調色作業や見当合わせ作業を簡便化できる。また、印刷物2は、これらの効果を得つつも、太陽電池セルSCへの太陽光に対する透過性を確保することで、太陽電池モジュール1の発電効率の低下を抑制することができる。
【0040】
第1実施形態では、太陽電池モジュール1の印刷物2は、第2色パターン層20上に設けられた透過性スモーク印刷層30を備えている。これにより、第1色パターン層10と第2色パターン層20との発色性がより優れる。さらに、透過性スモーク印刷層30が透過性を有するため、太陽電池モジュール1の発電効率の低下が良好に抑制される。
【0041】
第1実施形態では、第1干渉顔料14a,14bと第2干渉顔料24とのそれぞれは、粒径が25μm以上60μm以下の二酸化チタン被覆雲母を含んでいる。粒径が25μm以上の二酸化チタン被覆雲母を含む場合、絵柄印刷層5の透過性と発色性とを良好にすることができる。粒径が60μm以下の二酸化チタン被覆雲母を含む場合、絵柄印刷層5の解像度及び階調性が低下することを抑制できる。
【0042】
第1実施形態では、複数の第1色顔料チップ13の含有率は、第1色用バインダー12を100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であり、複数の第2色顔料チップ23の含有率は、第2色用バインダーを100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。複数の第1色顔料チップ13の含有率が0.5重量部以上の範囲内であるため、第1色パターン層10の絵柄が良好に表現される。複数の第1色顔料チップ13の含有率が20重量部以下の範囲内であるため、第1色パターン層10の塗膜性と透過性とが低下することを抑制できる。同様に、複数の第2色顔料チップ23の含有率が、第2色用バインダー22を100重量部とした場合、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であるため、第2色パターン層20の絵柄が良好に表現されつつ、第2色パターン層20の塗膜性と透過性とが低下することを抑制できる。
【0043】
第1実施形態では、印刷物2の全光線透過率が30%~70%である。全光線透過率が30%以上である場合、印刷物2が太陽電池セルSCの前方に置かれた際、画面の画像の光によって絵柄印刷層5が視認しにくくなり、画像がより鮮明に視認される。全光線透過率が70%以下である場合、画面が黒色であっても、絵柄印刷層5の絵柄が暗く見えることを抑制できる。
【0044】
例えば、「全光線透過率 30%未満:絵柄の視認性:〇、発電効率:×」「全光線透過率 30%以上~70%未満: 絵柄の視認性:〇、発電効率:〇」「全光線透過率 70%以上: 絵柄の視認性:×、発電効率:〇」となる。なお、「絵柄の視認性」は、太陽電池セル前に印刷物2を重ねた場合に、1m離れて太陽電池セルの境界が確認出来ない場合「〇」とし、確認出来る場合を「×」とした。「発電効率」は、太陽電池セル前に印刷物2を重ねた場合、発電量が、印刷が無い場合と印刷がある場合の比が0.5以上の場合を「〇」とした。
【0045】
[第2実施形態]
以下では、図4及び図5を参照しながら、第2実施形態に係る印刷物2Aを説明する。なお、第2実施形態の説明において上記第1実施形態と重複する記載は省略し、上記第1実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第2実施形態に上記第1実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0046】
図4は、第2実施形態に係る印刷物を模式的に示す断面図である。図5は、図4に示す印刷物が備える白色パターン層を模式的に示す断面図である。印刷物2Aは、透光性基材4と、絵柄印刷層5とを備える。印刷物2Aは、第2色パターン層20の上に設けられた白色パターン層40を更に備える。
【0047】
白色パターン層40は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷によって、第2色パターン層20上に設けることができる。白色パターン層40は、図5に示すように、複数のシルバードット41により構成されている。ここで、「ドット」とは、印刷画像を構成する要素となる点の意味であり、その形状は円形に限定されるものではなく、矩形や多角形やその他の形状でもかまわない。複数のシルバードット41のそれぞれが、シルバー用バインダー42とシルバー用バインダー42の内部に分散された複数のシルバー顔料チップ43とを含んでいる。複数のシルバー顔料チップ43の含有率は、シルバー用バインダー42を100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0048】
シルバー用バインダー42としては、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。白色パターン層40の厚さは、例えば、1μm~10μmである。なお、白色パターン層40には硬化剤を含有させてもよい。この場合、白色パターン層40の耐熱性、及び、白色パターン層40の第2色パターン層20への密着性を向上させることができる。
【0049】
以上に説明した印刷物2Aの構成であっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。さらに、第2実施形態では、第2色パターン層20の上に設けられ、複数のシルバードット41により構成された白色パターン層40を備え、複数のシルバードット41のそれぞれが、シルバー用バインダー42とシルバー用バインダー42の内部に分散された複数のシルバー顔料チップ43とを含んでいる。これにより、第1色パターン層10と第2色パターン層20との発色性が優れると共に、絵柄印刷層5が白っぽい印象を与える絵柄を有することができる。
【0050】
[第3実施形態]
以下では、図6を参照しながら、第3実施形態に係る印刷物2Bを説明する。なお、第3実施形態の説明において上記第1、第2実施形態と重複する記載は省略し、上記第1、第2実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第3実施形態に上記第1、第2実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0051】
図6は、第3実施形態に係る印刷物を模式的に示す断面図である。印刷物2Bは、透光性基材4と、絵柄印刷層5とを備える。すなわち、印刷物2Bは、透過性スモーク印刷層30及び白色パターン層40を備えていない。以上に説明した印刷物2Bの構成であっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0052】
[第4実施形態]
以下では、図7を参照しながら、第4実施形態に係る印刷物2Cを説明する。なお、第4実施形態の説明において上記第1、第2、第3実施形態と重複する記載は省略し、上記第1、第2、第3実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第4実施形態に上記第1、第2、第3実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0053】
図7は、第4実施形態に係る印刷物を模式的に示す断面図である。印刷物2Cは、透光性基材4と、絵柄印刷層5と、白色パターン層40と、透過性スモーク印刷層30とを備える。白色パターン層40が第2色パターン層20上に設けられ、透過性スモーク印刷層30が白色パターン層40上に設けられている。以上に説明した印刷物2Cの構成であっても、上記第1、第2、第3実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0054】
本発明による太陽電池モジュールは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、第2色パターン層が互いに異なる第1干渉光を生成する複数色の第1干渉顔料を含み、第1色パターン層が複数の第1干渉顔料が示す混色とは異なる単色の第2干渉光を生成する第2干渉顔料を含んでいてもよい。また、上記各実施形態では、第1色顔料チップが2色の第1干渉顔料であったが、第1色顔料チップは、3色以上の第1干渉顔料であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…太陽電池モジュール、2,2A,2B,2C…印刷物、4…透光性基材、5…絵柄印刷層、10…第1色パターン層、11…第1色ドット、12…第1色用バインダー、13…第1色顔料チップ、14a,14b…第1干渉顔料、15a,15b…第1干渉光、20…第2色パターン層、21…第2色ドット、22…第2色用バインダー、23…第2色顔料チップ、24…第2干渉顔料、25…第2干渉光、30…透過性スモーク印刷層、40…白色パターン層、41…シルバードット、42…シルバー用バインダー、43…シルバー顔料チップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7