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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171646
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20200101AFI20241205BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20241205BHJP
   G01S 7/486 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01S7/486
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088771
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 真弥
(72)【発明者】
【氏名】山崎 翔悟
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA05
2F112CA04
2F112CA05
2F112DA02
2F112DA25
2F112EA05
2F112FA14
2F112FA41
2F112GA01
5J084AA05
5J084AB01
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
5J084AC05
5J084AC07
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA05
5J084BA36
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA32
5J084CA53
5J084CA65
5J084EA05
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】フレームレートを向上し得る測距装置を提供する。
【解決手段】複数の発光領域に区分された発光装置における発光タイミングと時間カウントの開始タイミングとを制御する制御部と、前記複数の発光領域に1対1対応するように複数の受光領域に区分された受光部と、前記時間カウント値と複数の受光信号とに基づいて、前記時間カウントが開始してから前記複数の受光領域のいずれかに前記入射光が入射するまでの経過時間を示す受光時間値を生成する時間ラッチ部と、前記受光時間値に基づいて光の飛行時間を算出する算出部と、を有し、前記複数の発光領域の各々の発光タイミングは互いに異なっており、前記複数の発光領域のうちの2つの発光タイミングの時間差はいずれも前記複数の受光領域の各々における計測期間の長さよりも短く、前記算出部は、前記受光時間値と、前記時間差とに基づいて、前記飛行時間を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間カウントが開始してからの経過時間を示す時間カウント値を出力する時間カウント部と、
複数の発光領域に区分された発光装置における発光タイミングと前記時間カウント部における前記時間カウントの開始タイミングとを制御する制御部と、
前記複数の発光領域に1対1対応するように複数の受光領域に区分された複数の画素を有し、対応する発光領域及び受光領域における発光タイミングから計測が終了するまでの計測期間において前記複数の画素の各々が入射光に基づいて受光信号を生成する受光部と、
前記時間カウント値と前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号とに基づいて、前記時間カウントが開始してから前記複数の受光領域のいずれかに前記入射光が入射するまでの経過時間を示す受光時間値を生成する時間ラッチ部と、
前記受光時間値に基づいて前記発光装置から射出された光の飛行時間を算出する算出部と、
を有し、
前記複数の発光領域の各々の発光タイミングは互いに異なっており、前記複数の発光領域のうちの2つの発光タイミングの時間差はいずれも前記複数の受光領域の各々における計測期間の長さよりも短く、
前記算出部は、前記受光時間値と、前記時間差とに基づいて、前記複数の受光領域の各々に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の発光領域のうち、最も早い時刻に発光する発光領域である基準発光領域の発光タイミングと、前記時間カウントの開始タイミングとが同期するように制御を行い、
前記時間差は、前記基準発光領域の発光タイミングと他の発光領域の発光タイミングとに基づく
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記複数の受光領域のすべてが第1計測周期における計測を終了した後、前記第1計測周期の次の第2計測周期における前記基準発光領域の発光が行われる
ことを特徴とする請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記受光時間値から前記時間差を減算することにより、前記基準発光領域以外の受光領域に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の測距装置。
【請求項5】
前記複数の受光領域のすべてが第1計測周期における計測を終了する前に、前記第1計測周期の次の第2計測周期における前記基準発光領域の発光が行われる
ことを特徴とする請求項2に記載の測距装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記受光時間値が前記時間差以上である場合に、前記受光時間値から前記時間差を減算することにより、前記基準発光領域以外の受光領域に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記受光時間値が前記時間差よりも小さい場合に、前記受光時間値から前記時間差を減算し、更に前記時間カウント値の上限値を加算することにより、前記基準発光領域以外の受光領域に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の測距装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記基準発光領域に対応する前記飛行時間として前記受光時間値を出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の測距装置。
【請求項9】
前記発光タイミングを示す発光時間信号と、前記時間カウント値とに基づいて前記時間差を生成する時間差生成部を更に有する
ことを特徴とする請求項2に記載の測距装置。
【請求項10】
前記時間差生成部は、前記発光時間信号が入力された時刻における前記時間カウント値を保持することにより前記時間差を生成する
ことを特徴とする請求項9に記載の測距装置。
【請求項11】
前記複数の発光領域は、発光タイミングが連続する2つの発光領域が互いに隣接しないように配列されている
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項12】
前記複数の発光領域における発光タイミングの順序はランダムである
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項13】
前記複数の受光領域のうちの少なくとも2つの計測期間の一部が互いに重複している
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項14】
前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号の論理和を前記時間ラッチ部に出力する論理回路を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項15】
前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号に基づいて、前記算出部の出力信号を前記複数の受光領域にそれぞれ対応する複数の出力信号として分配する選択回路を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項16】
前記複数の画素は複数の行及び複数の列をなすように配されており、
前記複数の受光領域のうちの1つは、1つの行に配された複数の画素を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項17】
前記複数の画素は複数の行及び複数の列をなすように配されており、
前記時間ラッチ部及び前記算出部は、1つの列に配された前記複数の受光領域の画素からの受光信号を共通に処理する
ことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項18】
複数の前記時間ラッチ部が、前記複数の列にそれぞれ対応して配されており、
共通の前記時間カウント値が複数の前記時間ラッチ部に入力される
ことを特徴とする請求項17に記載の測距装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の測距装置と、
前記測距装置により取得される距離情報を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【請求項20】
移動体であって、
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の測距装置と、
前記測距装置により取得される距離情報に基づいて前記移動体を制御する移動体制御部と、
を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光が照射された時刻と反射光を受けた時刻の時間差に基づいて対象物までの距離を計測する測距装置が開示されている。特許文献1の測距装置は複数の発光素子を含む発光素子アレイを備えており、複数の発光素子は発光タイミングが互いに異なる複数の領域に区分されている。この手法では、所定期間内に射出される光の平均エネルギーを低減することができるため、アイセーフティ規格を満足しつつ発光素子から射出される光の強度を高くすることができる。これにより、反射光の強度が高くなり、計測の繰り返し回数を低減することができるため、測距レンジの拡大及びフレームレートの向上の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-120630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような測距装置において、各領域に対応する計測期間は時間的に重複していない。したがって、各領域に対応する計測が時間的にシリアルに実行されるため、フレームレートが十分に確保できない場合があり得る。
【0005】
本発明は、フレームレートを向上し得る測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の一開示によれば、時間カウントが開始してからの経過時間を示す時間カウント値を出力する時間カウント部と、複数の発光領域に区分された発光装置における発光タイミングと前記時間カウント部における前記時間カウントの開始タイミングとを制御する制御部と、前記複数の発光領域に1対1対応するように複数の受光領域に区分された複数の画素を有し、対応する発光領域及び受光領域における発光タイミングから計測が終了するまでの計測期間において前記複数の画素の各々が入射光に基づいて受光信号を生成する受光部と、前記時間カウント値と前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号とに基づいて、前記時間カウントが開始してから前記複数の受光領域のいずれかに前記入射光が入射するまでの経過時間を示す受光時間値を生成する時間ラッチ部と、前記受光時間値に基づいて前記発光装置から射出された光の飛行時間を算出する算出部と、を有し、前記複数の発光領域の各々の発光タイミングは互いに異なっており、前記複数の発光領域のうちの2つの発光タイミングの時間差はいずれも前記複数の受光領域の各々における計測期間の長さよりも短く、前記算出部は、前記受光時間値と、前記時間差とに基づいて、前記複数の受光領域の各々に対応する前記飛行時間を算出することを特徴とする測距装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フレームレートを向上し得る測距装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る測距装置の概略構成例を示すハードウェアブロック図である。
図2】第1実施形態に係る測距装置の概略構成例を示す機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る測距装置の1測距期間における動作の概略を示す図である。
図4】第1実施形態に係るパルスカウント値の度数分布を視覚的に示すヒストグラムである。
図5】第1実施形態に係る受光部、時間カウント部及びTOF値生成部の構成例を示すブロック図である。
図6】第1実施形態に係る列処理部の構成例を示すブロック図である。
図7】第1実施形態に係る測距装置の動作例を示すタイミングチャートである。
図8】第2実施形態に係る測距装置の動作例を示すタイミングチャートである。
図9】第3実施形態に係る光電変換装置の全体構成を示す概略図である。
図10】第3実施形態に係るセンサ基板の構成例を示す概略ブロック図である。
図11】第3実施形態に係る回路基板の構成例を示す概略ブロック図である。
図12】第3実施形態に係る光電変換部及び画素信号処理部の1画素分の構成例を示す概略ブロック図である。
図13】第3実施形態に係るアバランシェフォトダイオードの動作を説明する図である。
図14】第4実施形態に係る機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。複数の図面にわたって同一の要素又は対応する要素には共通の符号が付されており、その説明は省略又は簡略化されることがある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る測距装置1の概略構成例を示すハードウェアブロック図である。測距装置1は、信号処理回路3、発光装置4及び受光装置5を有している。なお、本実施形態において示す測距装置1の構成は一例であり、図示された構成に限定されるものではない。
【0011】
測距装置1は、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の技術を用いて測距の対象物2までの距離を測定する装置である。測距装置1は、発光装置4から射出された光が対象物2で反射され、受光装置5で受光されるまでの時間差、すなわち光の飛行時間(TOF:Time Of Flight)に基づいて、測距装置1から対象物2までの距離を計測する。また、測距装置1は、対象物2を含む所定の測距範囲にレーザー光を射出し、反射光を画素アレイにより受光することにより、距離を二次元状に複数点測定することができる。これにより、測距装置1は、距離画像を生成して出力することができる。このような方式は、Flash LiDARと呼ばれることもある。
【0012】
受光装置5が受ける光は、対象物2からの反射光以外に太陽光等の環境光を含む。そのため、測距装置1は、複数の期間(ビン期間)の各々において入射した光の計測を行い、光量がピークとなる期間に反射光が入射したものと判定するという手法を用いて環境光の影響を低減した測距を行う。
【0013】
発光装置4は、測距装置1の外部にレーザー光等の光を射出する半導体レーザー等の装置である。信号処理回路3は、制御回路、カウンタ回路、デジタル信号の演算処理を行うプロセッサ、デジタル信号を記憶するメモリ等を含み得る。当該メモリは、例えば、半導体メモリであり得る。
【0014】
受光装置5は、入射した光に基づくパルスを含むパルス信号を生成する。受光装置5は、例えば、アバランシェフォトダイオードを光電変換素子として含む光電変換装置である。この場合、1つの光子がアバランシェフォトダイオードに入射して電荷が生成されると、アバランシェ増倍により1つのパルスが生成される。しかしながら、受光装置5は、例えば、他のフォトダイオードを用いた光電変換素子を用いたものであってもよい。また、受光装置5は、複数の光電変換素子を含み、光子が入射した光電変換素子のアドレスを示す信号を出力し得る。
【0015】
図2は、本実施形態に係る測距装置1の概略構成例を示す機能ブロック図である。測距装置1は、制御部31、発光部32、受光部33、時間カウント部34、TOF値生成部35、度数分布生成部36、距離算出部37及び出力部38を有している。発光部32及び受光部33は、図1における発光装置4及び受光装置5にそれぞれ対応する。制御部31、時間カウント部34、TOF値生成部35、度数分布生成部36、距離算出部37及び出力部38は、図1における信号処理回路3に対応する。
【0016】
発光部32は、複数の発光素子を有する。発光部32は、所定の測距範囲内にレーザー光等の光を射出する。発光部32は、複数の発光領域に区分されており、各発光領域は独立して動作可能である。
【0017】
制御部31は、発光を指示する制御信号を発光部32に出力することにより、発光部32の複数の発光領域の各々の発光タイミングを制御する。複数の発光領域の各々の発光タイミングは、互いに異なるように制御され得る。また、制御部31は、時間カウントの開始タイミングを指示する制御信号を時間カウント部34に出力する。これにより、時間カウント部34は時間カウントを開始する。制御部31は、測距フレーム期間における測距装置1全体の同期制御を行う。これにより、制御部31は、時間カウントの開始と1フレーム期間に複数回行われる発光部32の発光とを同期制御する。また、制御部31は、各発光領域の発光タイミングに応じた発光時間ラッチ信号LTを生成して、TOF値生成部35に出力する。
【0018】
時間カウント部34は、制御部31の制御に基づいて時間カウントを行うことにより、カウントを開始した時刻からの経過時間を示す時間カウント値TCを生成する。時間カウント部34は、時間カウント値TCをTOF値生成部35に出力する。時間カウント部34は、例えば、リングオシレータ、カウンタ等の回路を含み、高速かつ一定の周期で振動するクロックパルスをカウントすることにより、時間カウントを行う。
【0019】
発光部32から射出された光は測距対象物である対象物2において反射する。受光部33は、対象物2からの反射光を含む光を受光する。受光部33は、入射光に基づく電気信号のパルスを生成して、受光パルスPL(受光信号)としてTOF値生成部35に出力する。受光部33は、各々が光電変換素子を含む複数の画素を有する。複数の画素は、複数の受光領域に区分されている。受光部33の複数の受光領域は、発光部32の複数の発光領域に1対1対応するように区分されている。
【0020】
TOF値生成部35は、入力された時間カウント値TC、発光時間ラッチ信号LT及び受光パルスPLに基づいてTOF値を生成して度数分布生成部36に出力する。ここで、TOF値とは、発光から受光までの光の飛行時間を示す値である。なお、TOF値生成部35の構成及び動作については後述する。
【0021】
生成されたTOF値は度数分布生成部36において度数分布の形式で蓄積される。度数分布は、所定の時間間隔で設定された階級と、各階級に対応する期間内における入射光に基づく受光パルスPLの度数とが対応付けられた情報である。度数分布生成部36は、度数分布を記憶するメモリを含む。度数分布生成部36に1測距フレーム分の度数分布が蓄積されると、距離算出部37は、度数分布から距離情報を算出する。出力部38は算出された距離情報を外部に出力する。
【0022】
図3は、本実施形態に係る測距装置1の1測距期間における動作の概略を示す図である。図3の「測距期間」には、1測距期間に含まれる複数のフレーム期間FL1、FL2、・・・FL3が示されている。フレーム期間FL1は1測距期間における第1フレーム期間を示しており、フレーム期間FL2は1測距期間における第2フレーム期間を示しており、フレーム期間FL3は1測距期間における最終フレーム期間を示している。フレーム期間とは、測距装置1が1回の測距を行い、測距装置1から対象物2までの距離(測距結果)を示す信号を1回外部に出力する期間である。
【0023】
図3の「フレーム期間」には、フレーム期間FL1に含まれる複数のショットSH1、SH2、・・・SH3及びピーク出力OUTが示されている。ショットとは、発光部32が発光を行い、この発光に基づく受光パルスPLにより度数分布が更新される一期間である。ショットSH1は、フレーム期間FL1における第1ショットを示している。ショットSH2は、フレーム期間FL1における第2ショットを示している。ショットSH3は、フレーム期間FL1における最終ショットを示している。ピーク出力OUTは、複数のショットの信号を累積して得られたピークに基づいて、測距結果を出力する期間を示している。
【0024】
図3の「ショット」には、ショットSH1に含まれる複数のビンBN1、BN2、・・・BN3が示されている。「ビン(bin)」は、一連のパルスカウントが行われ、パルスカウントが行われる1つの時間間隔(ビン期間)を示している。ビンBN1は、ショットSH1における1番目のビンを示している。ビンBN2は、ショットSH1における2番目のビンを示している。ビンBN3は、ショットSH1における最後のビンを示している。
【0025】
図3の「時間カウント」は、時間カウント部34において生成される時間カウント値の時間変化を模式的に示している。図3に示されるように、時間カウント部34は、時間の経過に応じてカウント値をカウントアップする。したがって、時間カウント値は、ビンの番号を決めるパラメータである。
【0026】
図3の「パルスカウント」は、ビンBN1における、入射光に基づくパルスと、ビンBN1のパルスカウント値の変化を模式的に示している。図3に示されているように、受光パルスPLが立ち上がると、パルスカウント値が1だけカウントアップする。これにより、当該ビン期間内に検出された光子数がパルスカウント値として取得される。1つのビン期間が経過し、次のビン期間に移行すると、パルスカウント値はゼロにリセットされる。
【0027】
図4(a)から図4(d)は、度数分布生成部36において生成される度数分布を視覚的に示すヒストグラムである。本明細書において、度数分布とは、所定の階級幅に対応した頻度情報であって、必ずしも可視的に表示される必要はない。図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、それぞれ、第1ショット、第2ショット及び第3ショットにおける光子数(パルスカウント値に相当)のヒストグラムの例である。図4(d)は、全ショットの光子数を積算したヒストグラムの例である。横軸は、発光からの経過時間を示している。ヒストグラムの一区間が光子の検出が行われる1つのビンの期間に対応する。縦軸は、各ビン期間において検出された光子数を示している。このように、ヒストグラムは、時間に関する第1情報(横軸)と、パルス数に関する第2情報(縦軸)とを有する。具体的には、第1情報には、例えば、ビンの時間間隔の開始時刻、ビンの時間間隔の終了時刻、ビンの時間間隔の幅(分解能)等が含まれる。他方、第2情報は、例えば、各ビンの時間間隔内において検出されたパルス数である。また、同様に、度数分布も時間に関する第1情報と、パルス数に関する第2情報とを有する。
【0028】
図4(a)に示されているように、第1ショットにおいては、5つのビン期間に光子が入射している。図4(b)に示されているように、第2ショットにおいては、4つのビン期間に光子が入射している。図4(c)に示されているように、第3ショットにおいても、4つのビン期間に光子が入射している。このように、各ショットにおいて光子の入射数及び入射時刻が異なっている。これらの度数分布は、対象物2からの反射光だけでなく、反射光以外の環境光によるパルスカウント値に起因する度数を含み得る。
【0029】
図4(d)に示されているように、全ショットの光子数を積算したヒストグラムにおいては、6番目のビンBN11がピークである。図3のピーク出力OUTにおいては積算後の度数分布のピークに対応するビンの時間情報が出力される。この時間情報は、対象物2からの反射光の飛行時間を示しており、測距装置1と対象物2の間の距離の算出に用いられ得る。
【0030】
複数のショットのパルスカウント値を積算することにより、環境光によるパルスカウント値が含まれ得る場合であっても、より精度良く対象物2からの反射光に起因するパルスカウント値を含む可能性が高いビンを検出することができる。したがって、発光部32から射出される光が弱い場合であっても複数のショットが繰り返され、これらを積算する処理を採用することにより高精度に測距を行うことができる。
【0031】
次に、図5を参照しつつ、受光部33、時間カウント部34及びTOF値生成部35の構成をより詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る受光部33、時間カウント部34及びTOF値生成部35の構成例を示すブロック図である。
【0032】
図5に示されているように、受光部33は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素PXを含む。上述のように受光部33は、複数の受光領域に区分されている。図5の例では、受光部33は受光領域R1、R2、R3、R4の4つに区分されている。受光領域R1、R2、R3、R4の各々には、複数の画素PXが含まれる。同一の受光領域に属する複数の画素PXは一括して制御され、異なる受光領域に属する複数の画素PXは個別に制御される。すなわち、受光領域R1、R2、R3、R4は、受光部33の制御単位を示している。なお、上述のように、受光部33の複数の受光領域は、発光部32の複数の発光領域に1対1対応するように区分されている。そのため、発光部32も、受光領域R1、R2、R3、R4の4つにそれぞれ対応する4つの発光領域に区分されているものとする。
【0033】
なお、図5では、受光部33内の1行目、2行目、3行目及び4行目がそれぞれ、受光領域R1、R2、R3、R4である例が示されており、受光部33の1つの行が1つの受光領域に対応している。しかしながら、この構成は一例に過ぎず、本実施形態に適用可能な受光領域の設定方法はこれに限られない。また、図5では、16個の画素PXが4行及び4列に配されている例が示されているがこれも一例に過ぎず、行数、列数及び画素数は図示したものに限られない。
【0034】
TOF値生成部35は、時間差生成部35A及び複数の列処理部35Bを含む。時間差生成部35Aには、時間カウント部34から時間カウント値TCが入力され、制御部31から発光時間ラッチ信号LT2、LT3、LT4が入力される。ここで、発光時間ラッチ信号LT2、LT3、LT4(発光時間信号)は、受光領域R2、R3、R4にそれぞれ対応する3つの発光領域(基準発光領域以外の発光領域)における発光時刻を示す信号である。後述するように時間カウント値TCの基準時刻は受光領域R1に対応する発光領域(基準発光領域)の発光時間と一致している。そのため、受光領域R1にそれぞれ対応する発光領域における発光時間を示す発光時間ラッチ信号は、時間差生成部35Aにおける処理に要しないため、処理が簡略化されている。
【0035】
時間差生成部35Aは、発光時間ラッチ信号LT2、LT3、LT4が入力された時刻に時間カウント値TCをラッチすることにより時間差値TD2、TD3、TD4を生成して、複数の列処理部35Bに出力する。ここで、時間差値TD2は、受光領域R2に対応する発光領域における発光時刻と、受光領域R1に対応する発光領域における発光時刻との時間差を示す値である。時間差値TD3は、受光領域R3に対応する発光領域における発光時刻と、受光領域R1に対応する発光領域における発光時刻との時間差を示す値である。時間差値TD4は、受光領域R4に対応する発光領域における発光時刻と、受光領域R1に対応する発光領域における発光時刻との時間差を示す値である。
【0036】
列処理部35Bは、複数の画素PXの各列に対応するように配されている。列処理部35Bには、時間カウント値TCと、時間差値TD2、TD3、TD4と、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4とが入力される。受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4は、それぞれ、受光領域R1、R2、R3、R4の対応する列に配された画素PXから出力される受光パルスである。列処理部35Bは、これらの入力信号に基づいて、受光領域R1、R2、R3、R4におけるTOF値TF1、TF2、TF3、TF4をそれぞれ生成する。TOF値TF1、TF2、TF3、TF4は、度数分布生成部36に出力される。
【0037】
度数分布生成部36は、入射光が検出されると、TOF値の大きさに応じたビン番号のビンの度数を積算する処理をショットごとに繰り返すことにより度数分布を生成する。
【0038】
上述のように、時間差生成部35Aと複数の列処理部35Bは、いずれも同じ時間カウント部34から出力された同じ時間カウント値TCを参照して処理を行う。また、列処理部35Bは、1つの列の受光領域R1、R2、R3、R4の画素PXに共有されている。このように本実施形態では、時間カウント部34及びTOF値生成部35が受光部33の複数の受光領域R1、R2、R3、R4に共有される。したがって、回路規模が低減され得る。
【0039】
次に、図6を参照しつつ、列処理部35Bの構成をより詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る列処理部35Bの構成例を示すブロック図である。図6には、図5における複数の列処理部35Bのうちの1列分の構成が示されている。
【0040】
列処理部35Bは、時間ラッチ部351、OR回路352、TOF値算出部353及び選択回路354を有している。画素PXから出力された受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4は、OR回路352、TOF値算出部353及び選択回路354に入力される。時間カウント部34から出力された時間カウント値TCは、時間ラッチ部351に入力される。時間差生成部35Aから出力された時間差値TD2、TD3、TD4は、TOF値算出部353に入力される。
【0041】
OR回路352は、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4の論理和をラッチ信号として時間ラッチ部351に出力する論理回路である。時間ラッチ部351は、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4のいずれかから受光を示すハイレベルのパルスが入力された時点における時間カウント値TCの値をラッチする。そして、時間ラッチ部351は、ラッチした時間カウント値TCを受光時間値TRとしてTOF値算出部353に出力する。受光時間値TRは、時間カウントの開始から複数の受光領域R1、R2、R3、R4のいずれかに光が入射するまでの経過時間を示す。
【0042】
TOF値算出部353は、受光時間値TR、時間差値TD2、TD3、TD4及び受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4に基づいて、選択前のTOF値TFXを算出する。TOF値TFXは、受光領域R1、R2、R3、R4のうちの、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4に対応して選択された1つに対応するTOF値である。TOF値TFXは、選択回路354に入力される。
【0043】
選択回路354は、TOF値TFXを、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4に基づいて選択された出力端子に、TOF値TF1、TF2、TF3、TF4として出力する。これにより、選択回路354は、TOF値TFXを受光が発生した受光領域に対応する適切な端子に分配して出力することができる。ただし、選択回路354は、複数の受光領域において同時に受光が発生した場合にいずれの出力端子にもTOF値を出力しない等の例外処理を行ってもよい。
【0044】
TOF値算出部353は、入力された受光パルスが受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4のいずれかであるかを判定して異なる処理を行う。TOF値算出部353は、受光パルスPL2が入力された場合には、受光時間値TRから対応する時間差値TD2を減算してTOF値TFXとして出力する。TOF値算出部353は、受光パルスPL3又は受光パルスPL4が入力された場合も同様に、受光時間値TRから対応する時間差値TD3又は時間差値TD4を減算してTOF値TFXとして出力する。一方、TOF値算出部353は、受光パルスPL1が入力された場合には、受光時間値TRをそのままTOF値TFXとして出力する。時間カウント値TCのカウントの開始時刻は受光パルスPL1に対応する発光時刻と一致しているため、受光パルスPL1に対応する受光時間値TRに対する減算処理は不要である。
【0045】
以上のように、列処理部35Bは、発光タイミングが発光領域ごとに異なる場合においても1つの時間カウント部34から出力された時間カウント値TCを参照してTOF値を算出することができる。したがって、入力信号の個数が削減され、回路が簡略化されている。しかしながら、列処理部35Bの構成は図6に示されているものに限定されない。
【0046】
次に、図7を参照しつつ、測距装置1の動作をより詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る測距装置の動作例を示すタイミングチャートである。図7には、1列分の画素PXからの信号取得に関する動作が示されている。
【0047】
図7には、時間カウント開始指示のタイミング、発光時間ラッチ信号LT2、LT3、LT4のタイミング、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4のタイミング、及び時間カウント値TCの時間変化の例が示されている。また、図7には、時間差値TD2、TD3、TD4、受光時間値TR、TOF値TFX、TF1、TF2、TF3、TF4の時間変化の例が示されている。図7の横軸は経過時間を示しており、時間カウント開始指示の間隔である期間Tが図3における1ショットの期間に相当する。
【0048】
第1ショット(第1計測周期)の処理が開始する時刻t1において、受光領域R1に対応する発光領域が発光し、これとともに、時間カウント開始指示の制御信号が出力される。これにより、時間カウント部34が時間カウントを開始し、時間カウント値TCが増加を開始する。時刻t1に発光する発光領域は、複数の発光領域のうち、最も早い時刻に発光する発光領域である。
【0049】
時刻t2、t3、t4において、受光領域R2、R3、R4に対応する発光領域がそれぞれ発光する。これに伴い、時刻t2、t3、t4において、制御部31は、発光時間ラッチ信号LT2、LT3、LT4をそれぞれ出力する。また、時刻t2、t3、t4において、時間差生成部35Aは、対応する時刻の時間カウント値TCを参照することにより、時間差値TD2、TD3、TD4を生成する。これらの時間差値をそれぞれtt2、tt3、tt4とする。時間差値tt2は、時刻t2と時刻1の間の時間差に相当する。時間差値tt3は、時刻t3と時刻1の間の時間差に相当する。時間差値tt4は、時刻t4と時刻1の間の時間差に相当する。
【0050】
なお、受光領域R1、R2、R3、R4の各々において計測が可能な計測期間は、対応する発光領域の発光時刻から計測終了時までである。したがって、受光領域R1の計測期間は期間T全体である。また、受光領域R2、R3、R4の計測期間は、それぞれ、時刻t2、t3、t4以降の期間tm2、tm3、tm4である。このように、本実施形態では、受光領域R1、R2、R3、R4の計測期間の一部が互いに重複している。発光時刻である時刻t1、t2、t3、t4のうちの2つの時間差が受光領域のR1、R2、R3、R4の1つの計測期間よりも短いため、このような計測期間の重複が生じる。
【0051】
時刻p1、p2、p3、p4は、それぞれ、受光領域R1、R2、R3、R4の画素PXにおいて光子が検出される時刻であるものとする。時刻p1、p2、p3、p4において、受光領域R1、R2、R3、R4の画素PXは、それぞれ、受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4を出力する。時間ラッチ部351は、これらの時刻に時間カウント値を参照して、受光時間値TRを更新する。受光時間値TRは、時刻t1から時刻p1、p2、p3、p4のいずれかまでの時間差に相当する。これらの受光時間値をそれぞれpt1、pt2、pt3、pt4とする。
【0052】
時刻p1において、TOF値算出部353は、受光時間値pt1に相当する値pt1を有するTOF値TFXを選択回路354に出力する。選択回路354は、値pt1を有するTOF値TF1を度数分布生成部36に出力する。
【0053】
時刻p3において、TOF値算出部353は、受光時間値pt3から時間差値tt3を減算した値pt3-tt3を有するTOF値TFXを選択回路354に出力する。選択回路354は、値pt3-tt3を有するTOF値TF3を度数分布生成部36に出力する。
【0054】
時刻p2において、TOF値算出部353は、受光時間値pt2から時間差値tt2を減算した値pt2-tt2を有するTOF値TFXを選択回路354に出力する。選択回路354は、値pt2-tt2を有するTOF値TF2を度数分布生成部36に出力する。
【0055】
時刻p4において、TOF値算出部353は、受光時間値pt4から時間差値tt4を減算した値pt4-tt4を有するTOF値TFXを選択回路354に出力する。選択回路354は、値pt4-tt4を有するTOF値TF4を度数分布生成部36に出力する。
【0056】
時刻t1’は、第1ショットの次のショットである第2ショット(第2計測周期)に対応する時間カウント開始指示の制御信号が出力される時刻である。時刻t1’においても、時刻t1と同様に、受光領域R1に対応する発光領域が発光する。図7において、第1のショットとの区別のため、第2ショットに関連する符号には「’」が付されている。また、第2ショットの次のショットである第3ショットに関連する符号には「’’」が付されている。第2ショット以降の動作は第1ショットの動作と概ね同様であるため説明を省略する。なお、時刻t1’と最後の発光時刻である時刻t4との間の間隔は、時刻t4に対応する受光領域R4の画素PXにおいて測定に必要な時間が確保されるように設定される。言い換えると、複数の受光領域R1、R2、R3、R4のすべてが第1ショットにおける計測を終了したあと、第2ショットにおける最初の発光が行われる。
【0057】
本実施形態によれば、複数の発光領域に区分された発光装置と、複数の発光領域に1対1対応する複数の受光領域を有する測距装置1において、複数の受光領域の計測期間の一部が互いに重複している。これにより、複数の受光領域の計測期間が重複していない場合と比べて処理時間が短縮し、フレームレートを向上することができる。したがって、本実施形態によれば、フレームレートを向上し得る測距装置1が提供される。
【0058】
また、複数の発光領域の発光タイミングが互いに異なっているため、同時に複数の発光領域が発光する場合に比べて発光強度の瞬間的な最大値が低減される。これにより、アイセーフティ規格を満足しつつ各発光領域の発光強度を高くすることができ、測距品質が向上し得る。
【0059】
また、時間カウント部34及びTOF値生成部35が受光部33の複数の受光領域R1、R2、R3、R4に共有される。したがって、受光領域R1、R2、R3、R4の各々に対して個別にこれらを配する場合と比べて、回路規模が低減され得る。
【0060】
また、TOF値生成部35は、発光時間ラッチ信号LT2、LT3、LT4と受光パルスPL1、PL2、PL3、PL4に基づいて、各受光領域の発光間隔に相当する時間差値tt2、tt3、tt4を計測する。これにより、例えば、発光タイミングを変更する制御が短時間に行われる等の要因によりTOF値生成部35が発光間隔の情報を直接取得できない場合であっても発光間隔の情報を計測して取得することができ、TOF値の生成に用いることができる。しかしながら、事前にTOF値生成部35に発光タイミング制御の設定値が保持されていてもよく、この場合には、時間差値tt2、tt3、tt4の計測を省略して設定値をそのままTOF値の計算に使用してもよい。
【0061】
また、発光部32の複数の発光領域において、連続して発光を行う2つの発光領域は、平面視で隣接しない位置関係であってもよい。この場合、隣接する2つの発光領域の射出光が両方とも人間の1つの目に入射し得る位置関係であったとしても、短い時間間隔で目に複数の射出光が入射する可能性を低減することができ、アイセーフティの効果が向上し得る。
【0062】
また、発光部32の複数の発光領域において、各発光領域の発光順序はランダムであってもよい。この場合、各受光領域における計測期間がランダムになる。2つの測距装置1が対向するように配されているというような利用形態を想定する。この場合において、一方の測距装置1の射出光が他方の測距装置1に入射することにより、偽のTOF値が検出されることがあり得る。各発光領域の発光順序をランダムにすることにより、他の測距装置1から射出された光による偽のTOF値がばらつき、度数分布上の同じビンに偽のTOF値が蓄積されにくくなる。したがって、上述のような偽のTOF値による測距結果の誤判定の可能性が低減され得る。
【0063】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る測距装置1について、図6及び図8を参照して説明する。本実施形態の説明において、第1実施形態と共通する要素については説明を省略又は簡略化することがある。第1実施形態では全受光領域の計測が完了してから次の計測のための発光が行われているが、本実施形態では全受光領域の計測の完了を待たずに次の計測のための発光が行われる。なお、以下に示されている構成は一例に過ぎず、測距装置1により行われる処理は以下の構成に限定されるものではない。
【0064】
まず、図6を再度参照して、TOF値生成部35の動作に関して第1実施形態と異なる点を説明する。本実施形態では、TOF値算出部353は、受光時間値TRと時間差値TD2、TD3、TD4の各々との大小関係を比較する。そして、受光時間値TRがこれらの時間差以上であるか否かに応じて異なる算出処理を行う。
【0065】
まず、受光パルスPL2が入力された場合について説明する。受光時間値TRが時間差値TD2以上である場合には、TOF値算出部353は、受光時間値TRから対応する時間差値TD2を減算してTOF値TFXとして出力する。これは第1実施形態と同じ算出処理である。受光時間値TRが時間差値TD2よりも小さい場合には、TOF値算出部353は、受光時間値TRから対応する時間差値TD2を減算し、更に時間カウント値の上限値(時間カウント値のリセット直前の値)を加算してTOF値TFXとして出力する。
【0066】
受光パルスPL3が入力された場合について説明する。受光時間値TRが時間差値TD3以上である場合には、TOF値算出部353は、受光時間値TRから対応する時間差値TD3を減算してTOF値TFXとして出力する。受光時間値TRが時間差値TD3よりも小さい場合には、TOF値算出部353は、受光時間値TRから対応する時間差値TD3を減算し、更に時間カウント値の上限値(時間カウント値がリセットされる直前の値)を加算してTOF値TFXとして出力する。
【0067】
受光パルスPL4が入力された場合について説明する。受光時間値TRが時間差値TD4以上である場合には、TOF値算出部353は、受光時間値TRから対応する時間差値TD4を減算してTOF値TFXとして出力する。受光時間値TRが時間差値TD4よりも小さい場合には、TOF値算出部353は、更に受光時間値TRから対応する時間差値TD4を減算し、時間カウント値の上限値(時間カウント値がリセットされる直前の値)を加算し、TOF値TFXとして出力する。
【0068】
なお、受光パルスPL1が入力された場合の処理は第1実施形態と同様である。すなわち、TOF値算出部353は、受光時間値TRをそのままTOF値TFXとして出力する。
【0069】
なお、TOF値算出部353は、時間カウント値のリセットを検出し、その直前の値を記憶することにより時間カウント値の上限値を取得することができる。また、時間カウント部34からTOF値算出部353に時間カウント値の上限値が入力されてもよい。
【0070】
次に、図8を参照しつつ、測距装置1の動作をより詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る測距装置の動作例を示すタイミングチャートである。図8には、1列分の画素PXからの信号取得に関する動作が示されている。
【0071】
本実施形態では、第2ショットの発光タイミングである時刻t1’、t2’、t3’、t4’と、第3ショットの発光タイミングである時刻t1’’、t2’’、t3’’、t4’’とが、第1実施形態のそれらと比べて早い時刻に変更されている。また、本実施形態においては、受光領域R1、R2、R3、R4の各々において計測が可能な計測期間は、対応する発光領域の発光時刻から、次の発光時刻までである。すなわち、受光領域R1の計測期間は期間T全体である。また、受光領域R2、R3、R4の計測期間は、それぞれ、時刻t2、t3、t4以降の期間tm2、tm3、tm4である。第1実施形態では、発光時刻が速い発光領域に対応する受光領域ほど計測期間(図7における期間T、tm2、tm3、tm4)が長くなるような制御が行われている。これに対し、本実施形態では、受光領域R1、R2、R3、R4の計測期間(図8における期間T、tm2、tm3、tm4)の長さをほぼ同じにすることができるため、全体の計測期間が短縮される。
【0072】
なお、本実施形態においては計測期間の一部が次のショットの発光後の期間に重複しているため、カウント値のリセット後に受光が検出される場合がある。図8の時刻p4はそのような場合の例を示している。すなわち、図8においては、時刻t4に発せられた光の反射光が、カウント値がリセットする時刻t1’よりも後の時刻p4に受光されている。
【0073】
時刻p4において、TOF値算出部353は、受光時間値pt4から時間差値tt4を減算し、更に、期間Tの長さに相当するリセット直前の時間カウント値TCの値Tを加算する。TOF値算出部353は、この算出処理により得られた値pt4-tt4+Tを有するTOF値TFXを選択回路354に出力する。選択回路354は、値pt4-tt4+Tを有するTOF値TF4を度数分布生成部36に出力する。この算出処理により、得られる値pt4-tt4+Tは時刻t4から時刻p4の間の経過時間に相当する値であるため、本処理により適正なTOF値が出力される。
【0074】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる測距装置1が提供される。また、本実施形態の測距装置1は、全受光領域の計測完了を待たずに次の計測のための発光を行うことができるため、第1実施形態の測距装置1に比べてフレームレートが向上し得る。
【0075】
[第3実施形態]
本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態に係る測距装置1に適用され得る、アバランシェフォトダイオードを含む光電変換装置の具体的な構成例について述べる。本実施形態の構成例は一例であり、測距装置1に適用可能な光電変換装置はこれに限られない。
【0076】
図9は、本実施形態に係る光電変換装置100の全体構成を示す概略図である。光電変換装置100は、互いに積層されたセンサ基板11(第1基板)と、回路基板21(第2基板)とを有する。センサ基板11と回路基板21とは、電気的に相互に接続されている。センサ基板11は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素101が配された画素領域12を有している。回路基板21は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素信号処理部103が配された第1回路領域22と、第1回路領域22の外周に配された第2回路領域23とを有している。第2回路領域23は、複数の画素信号処理部103を制御する回路等を含み得る。センサ基板11は、入射光を受ける光入射面と、光入射面に対向する接続面とを有している。センサ基板11は、接続面側において回路基板21と接続されている。すなわち、光電変換装置100は、いわゆる裏面照射型である。
【0077】
本明細書において、「平面視」とは、光入射面とは反対側の面に対して垂直な方向から視ることを指す。また、断面とは、センサ基板11の光入射面とは反対側の面に対して垂直な方向における面を指す。なお、微視的に見て光入射面が粗面である場合もあり得るが、その場合には巨視的に見たときの光入射面を基準として平面視を定義する。
【0078】
以下では、センサ基板11と回路基板21とは、ダイシングされたチップであるものとして説明するが、センサ基板11と回路基板21とは、チップに限定されるものではない。例えば、センサ基板11と回路基板21とは、ウエハであってもよい。また、センサ基板11と回路基板21とがダイシング済みのチップである場合には、光電変換装置100は、ウエハ状態で積層した後にダイシングされることにより製造されてもよく、ダイシングされた後に積層されることにより製造されてもよい。
【0079】
図10は、センサ基板11の配置例を示す概略ブロック図である。画素領域12には、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素101が配されている。複数の画素101の各々は、光電変換素子としてアバランシェフォトダイオード(以下、APDと呼ぶ)を含む光電変換部102を基板内に有している。
【0080】
APDで生じる電荷対のうち信号電荷として用いられる電荷の導電型を第1導電型と呼ぶ。第1導電型とは、信号電荷と同じ極性の電荷を多数キャリアとする導電型を指す。また、第1導電型と反対の導電型、すなわち、信号電荷と異なる極性の電荷を多数キャリアとする導電型を第2導電型と呼ぶ。以下の説明のAPDにおいては、APDのアノードは固定電位とされており、APDのカソードから信号が取り出される。したがって、第1導電型の半導体領域とはN型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはP型半導体領域である。なお、APDのカソードが固定電位とされ、APDのアノードから信号が取り出される構成であってもよい。この場合は、第1導電型の半導体領域とはP型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはN型半導体領域である。また、以下では、APDの一方のノードを固定電位とする場合について説明するが、両方のノードの電位が変動する構成であってもよい。
【0081】
図11は、回路基板21の構成例を示す概略ブロック図である。回路基板21は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素信号処理部103が配された第1回路領域22を有している。
【0082】
また、回路基板21には、垂直走査回路110、水平走査回路111、読み出し回路112、画素出力信号線113、出力回路114及び制御信号生成部115が配されている。図10に示されている複数の光電変換部102と、図11に示されている複数の画素信号処理部103は、それぞれ、画素101ごとに設けられた接続配線を介して電気的に接続されている。
【0083】
制御信号生成部115は、垂直走査回路110、水平走査回路111及び読み出し回路112を駆動する制御信号を生成し、これらの各部に供給する制御回路である。これにより、制御信号生成部115は、各部の駆動タイミング等の制御を行う。
【0084】
垂直走査回路110は、制御信号生成部115から供給された制御信号に基づいて、複数の画素信号処理部103の各々に制御信号を供給する。垂直走査回路110は、第1回路領域22の行ごとに設けられている駆動線を介して各画素信号処理部103に対して行ごとに制御信号を供給する。なお、後述するように、この駆動線は各行について複数本であり得る。垂直走査回路110にはシフトレジスタ、アドレスデコーダ等の論理回路が用いられ得る。これにより、垂直走査回路110は、画素信号処理部103から信号を出力させる行の選択を行う。
【0085】
画素101の光電変換部102から出力された信号は、画素信号処理部103で処理される。画素信号処理部103は、光電変換部102に含まれるAPDから出力されるパルスの数をカウントすることによりデジタル信号を取得して保持する。
【0086】
画素信号処理部103は、必ずしもすべての画素101に1つずつ設けられていなくてもよい。例えば、複数の画素101によって1つの画素信号処理部103が共有されていてもよい。この場合、画素信号処理部103は、各光電変換部102から出力された信号を順次処理することにより、各画素101に対して信号処理の機能を提供する。
【0087】
水平走査回路111は、制御信号生成部115から供給された制御信号に基づいて、読み出し回路112に制御信号を供給する。画素信号処理部103は、第1回路領域22の列ごとに設けられている画素出力信号線113を介して読み出し回路112に接続されている。1つの列の画素出力信号線113は、対応する列の複数の画素信号処理部103に共有されている。画素出力信号線113は、複数の配線を含んでおり、少なくとも、各画素信号処理部103からデジタル信号を読み出し回路112に出力する機能と、信号を出力させる列を選択するための制御信号を画素信号処理部103に供給する機能とを有している。読み出し回路112は、制御信号生成部115から供給された制御信号に基づいて、出力回路114を介して光電変換装置100の外部の記憶部又は信号処理部に信号を出力する。
【0088】
画素領域12における光電変換部102の配列は1次元状に配されていてもよい。また、画素信号処理部103の機能は、必ずしもすべての画素101に1つずつ設けられていなくてもよい。例えば、複数の画素101によって1つの画素信号処理部103が共有されていてもよい。この場合、画素信号処理部103は、各光電変換部102から出力された信号を順次処理することにより、各画素101に対して信号処理の機能を提供する。
【0089】
図10及び図11に示されているように、平面視で画素領域12に重なる領域に、複数の画素信号処理部103が配された第1回路領域22が配される。そして、平面視において、センサ基板11の端と画素領域12の端との間に重なるように、垂直走査回路110、水平走査回路111、読み出し回路112、出力回路114、制御信号生成部115が配される。言い換えると、センサ基板11は、画素領域12と画素領域12の周りに配された非画素領域とを有する。そして、回路基板21において、平面視で非画素領域に重なる領域に、垂直走査回路110、水平走査回路111、読み出し回路112、出力回路114及び制御信号生成部115が配された第2回路領域23が配されている。
【0090】
なお、画素出力信号線113の配置、読み出し回路112の配置及び出力回路114の配置は図11に示されているものに限定されない。例えば、画素出力信号線113が行方向に延びて配されており、対応する行の複数の画素信号処理部103に共有される配置であってもよい。そして、各行の画素出力信号線113が接続されるように読み出し回路112が配されていてもよい。
【0091】
図12は、本実施形態に係る光電変換部102及び画素信号処理部103の1画素分の構成例を示す概略ブロック図である。図12には、センサ基板11に配された光電変換部102と回路基板21に配された画素信号処理部103との接続関係を含むより具体的な構成例が模式的に示されている。なお、図12においては図11における垂直走査回路110と画素信号処理部103との間の駆動線を駆動線213、214として示している。
【0092】
光電変換部102は、APD201を有している。画素信号処理部103は、クエンチ素子202、波形整形部210、カウンタ回路211及び選択回路212を有している。なお、画素信号処理部103は、波形整形部210、カウンタ回路211及び選択回路212の少なくとも1つを有していればよい。
【0093】
APD201は、光電変換により入射光に応じた電荷対を生成する。APD201のアノードには、電圧VL(第1電圧)が供給される。また、APD201のカソードは、クエンチ素子202の第1端子及び波形整形部210の入力端子に接続されている。APD201のカソードには、アノードに供給される電圧VLよりも高い電圧VH(第2電圧)が供給される。これにより、APD201のアノードとカソードには、APD201がアバランシェ増倍動作をするような逆バイアス電圧が供給される。逆バイアス電圧が供給されているAPD201において、入射光により電荷が生じると、この電荷がアバランシェ増倍を起こし、アバランシェ電流が発生する。
【0094】
なお、APD201に逆バイアスの電圧が供給される場合の動作モードには、ガイガーモードとリニアモードとがある。ガイガーモードはアノード及びカソードの電位差が降伏電圧より大きい電位差で動作させるモードであり、リニアモードはアノード及びカソードの電位差が降伏電圧近傍又はそれ以下で動作させるモードである。
【0095】
ガイガーモードで動作させるAPDをSPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ぶ。このとき、例えば、電圧VL(第1電圧)が-30Vであり、電圧VH(第2電圧)が1Vである。APD201は、リニアモードで動作させてもよく、ガイガーモードで動作させてもよい。SPADの場合はリニアモードのAPDに比べて電位差が大きくなりアバランシェ増倍の効果が顕著となるため、SPADであることが好ましい。
【0096】
クエンチ素子202は、アバランシェ増倍による信号増倍時に負荷回路(クエンチ回路)として機能する。クエンチ素子202は、APD201に供給する電圧を抑制して、アバランシェ増倍を抑制する(クエンチ動作)。また、クエンチ素子202は、クエンチ動作による電圧降下に応じた電流を流すことにより、APD201に供給する電圧を電圧VHへと戻す(リチャージ動作)。クエンチ素子202は、例えば、抵抗素子であり得る。
【0097】
波形整形部210は、光子検出時に得られるAPD201のカソードの電位変化を整形して、パルス信号を出力する。波形整形部210としては、例えば、インバータ回路が用いられる。図12には、波形整形部210としてインバータを1つ用いた例が示されているが、波形整形部210は、複数のインバータを直列接続した回路を用いてもよく、波形整形効果を有するその他の回路であってもよい。
【0098】
カウンタ回路211は、波形整形部210から出力されたパルス信号をカウントしてデジタル信号を保持する。また、駆動線213を介して垂直走査回路110から制御信号が供給されたとき、カウンタ回路211は保持している信号をリセットする。
【0099】
選択回路212には、図11に示されている垂直走査回路110から、図12に示されている駆動線214を介して制御信号が供給される。この制御信号に応じて、選択回路212は、カウンタ回路211と画素出力信号線113との電気的な接続、非接続を切り替える。選択回路212は、例えば、カウンタ回路211に保持されている値に応じた信号を出力するためのバッファ回路等を含む。
【0100】
なお、図12の例では、選択回路212においてカウンタ回路211と画素出力信号線113との電気的な接続、非接続の切り替えが行われているが、画素出力信号線113への信号出力を制御する手法はこれに限定されない。例えば、クエンチ素子202とAPD201との間、光電変換部102と画素信号処理部103との間等のノードにトランジスタ等のスイッチを配し、電気的な接続、非接続を切り替えることにより、画素出力信号線113への信号出力を制御してもよい。また、光電変換部102に供給される電圧VH又は電圧VLの値をトランジスタ等のスイッチを用いて変えることにより画素出力信号線113への信号出力を制御してもよい。
【0101】
図13(a)、図13(b)及び図13(c)は、本実施形態に係るAPD201の動作を説明する図である。図13(a)は、図20におけるAPD201、クエンチ素子202、波形整形部210を抜き出して示した図である。図13(a)に示されるように、APD201、クエンチ素子202及び波形整形部210の入力端子の接続ノードをnodeAとする。また、図13(a)に示されるように、波形整形部210の出力側をnodeBとする。
【0102】
図13(b)は、図13(a)におけるnodeAの電位の時間変化を示すグラフである。図13(c)は、図13(a)におけるnodeBの電位の時間変化を示すグラフである。時刻t10から時刻t11の期間において、図13(a)のAPD201には、VH-VLの電圧が印加されている。時刻t11において光子がAPD201に入射すると、APD201においてアバランシェ増倍が生じる。これにより、クエンチ素子202にアバランシェ電流が流れ、nodeAの電位は降下する。その後、電位降下量が更に大きくなり、APD201に印加される電圧が徐々に小さくなる。そして、時刻t12においてAPD201におけるアバランシェ増倍が停止する。これにより、nodeAの電圧レベルはある一定値よりも降下しなくなる。その後、時刻t12から時刻t13の期間において、nodeAには電圧VHのノードから電圧降下分を補う電流が流れ、時刻t13においてnodeAは元の電位に整定する。
【0103】
上述の過程において、nodeAの電位がある閾値よりも低い期間においてnodeBの電位はハイレベルになる。このようにして、光子の入射によって生じたnodeAの電位の降下の波形は、波形整形部210によって整形され、nodeBにパルスとして出力される。
【0104】
本実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態の測距装置1に適用され得る、アバランシェフォトダイオードを用いた光電変換装置が提供される。
【0105】
[第4実施形態]
図14(a)、図14(b)は、本実施形態における車載測距装置に関する機器のブロック図である。機器80は、上述した実施形態の測距装置1の一例である距離計測部803と、距離計測部803からの信号を処理する信号処理装置(処理装置)を有する。機器80は、対象物までの距離を計測する距離計測部803と、計測された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部804とを有する。ここで、距離計測部803は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部804は距離情報を用いて、衝突可能性を判定してもよい。
【0106】
機器80は車両情報取得装置810と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、機器80には、衝突判定部804での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU820が接続されている。また、機器80は、衝突判定部804での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置830とも接続されている。例えば、衝突判定部804の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU820はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置830は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステム等の画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。機器80のこれらの装置は上述のように車両を制御する動作の制御を行う移動体制御部として機能する。
【0107】
本実施形態では車両の周囲、例えば前方又は後方を機器80で測距する。図14(b)は、車両前方(測距範囲850)を測距する場合の機器を示している。測距制御手段としての車両情報取得装置810が、測距動作を行うように機器80又は距離計測部803に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0108】
上述では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、機器は、自動車等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、人工衛星、産業用ロボット及び民生用ロボット等の移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)、監視システム等、広く物体認識又は生体認識を利用する機器に適用することができる。
【0109】
[変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0110】
本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBである」旨(A=B)の記載があれば、「AはBではない」旨(A≠B)の記載を省略しても、本明細書は「AはBではない」旨を開示又は示唆しているものとする。なぜなら、「AはBである」旨を記載している場合には、「AはBではない」場合を考慮していることが前提だからである。
【0111】
本明細書の開示内容は、以下の構成を含む。
(構成1)
時間カウントが開始してからの経過時間を示す時間カウント値を出力する時間カウント部と、
複数の発光領域に区分された発光装置における発光タイミングと前記時間カウント部における前記時間カウントの開始タイミングとを制御する制御部と、
前記複数の発光領域に1対1対応するように複数の受光領域に区分された複数の画素を有し、対応する発光領域及び受光領域における発光タイミングから計測が終了するまでの計測期間において前記複数の画素の各々が入射光に基づいて受光信号を生成する受光部と、
前記時間カウント値と前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号とに基づいて、前記時間カウントが開始してから前記複数の受光領域のいずれかに前記入射光が入射するまでの経過時間を示す受光時間値を生成する時間ラッチ部と、
前記受光時間値に基づいて前記発光装置から射出された光の飛行時間を算出する算出部と、
を有し、
前記複数の発光領域の各々の発光タイミングは互いに異なっており、前記複数の発光領域のうちの2つの発光タイミングの時間差はいずれも前記複数の受光領域の各々における計測期間の長さよりも短く、
前記算出部は、前記受光時間値と、前記時間差とに基づいて、前記複数の受光領域の各々に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする測距装置。
(構成2)
前記制御部は、複数の発光領域のうち、最も早い時刻に発光する発光領域である基準発光領域の発光タイミングと、前記時間カウントの開始タイミングとが同期するように制御を行い、
前記時間差は、前記基準発光領域の発光タイミングと他の発光領域の発光タイミングとに基づく
ことを特徴とする構成1に記載の測距装置。
(構成3)
前記複数の受光領域のすべてが第1計測周期における計測を終了した後、前記第1計測周期の次の第2計測周期における前記基準発光領域の発光が行われる
ことを特徴とする構成2に記載の測距装置。
(構成4)
前記算出部は、前記受光時間値から前記時間差を減算することにより、前記基準発光領域以外の受光領域に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする構成3に記載の測距装置。
(構成5)
前記複数の受光領域のすべてが第1計測周期における計測を終了する前に、前記第1計測周期の次の第2計測周期における前記基準発光領域の発光が行われる
ことを特徴とする構成2に記載の測距装置。
(構成6)
前記算出部は、前記受光時間値が前記時間差以上である場合に、前記受光時間値から前記時間差を減算することにより、前記基準発光領域以外の受光領域に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする構成5に記載の測距装置。
(構成7)
前記算出部は、前記受光時間値が前記時間差よりも小さい場合に、前記受光時間値から前記時間差を減算し、更に前記時間カウント値の上限値を加算することにより、前記基準発光領域以外の受光領域に対応する前記飛行時間を算出する
ことを特徴とする構成5又は6に記載の測距装置。
(構成8)
前記算出部は、前記基準発光領域に対応する前記飛行時間として前記受光時間値を出力する
ことを特徴とする構成3乃至7のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成9)
前記発光タイミングを示す発光時間信号と、前記時間カウント値とに基づいて前記時間差を生成する時間差生成部を更に有する
ことを特徴とする構成2乃至8のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成10)
前記時間差生成部は、前記発光時間信号が入力された時刻における前記時間カウント値を保持することにより前記時間差を生成する
ことを特徴とする構成9に記載の測距装置。
(構成11)
前記複数の発光領域は、発光タイミングが連続する2つの発光領域が互いに隣接しないように配列されている
ことを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成12)
前記複数の発光領域における発光タイミングの順序はランダムである
ことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成13)
前記複数の受光領域のうちの少なくとも2つの計測期間の一部が互いに重複している
ことを特徴とする構成1乃至12のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成14)
前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号の論理和を前記時間ラッチ部に出力する論理回路を更に有する
ことを特徴とする構成1乃至13のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成15)
前記複数の受光領域の画素からそれぞれ出力された複数の前記受光信号に基づいて、前記算出部の出力信号を前記複数の受光領域にそれぞれ対応する複数の出力信号として分配する選択回路を更に有する
ことを特徴とする構成1乃至14のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成16)
前記複数の画素は複数の行及び複数の列をなすように配されており、
前記複数の受光領域のうちの1つは、1つの行に配された複数の画素を含む
ことを特徴とする構成1乃至15のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成17)
前記複数の画素は複数の行及び複数の列をなすように配されており、
前記時間ラッチ部及び前記算出部は、1つの列に配された前記複数の受光領域の画素からの受光信号を共通に処理する
ことを特徴とする構成1乃至16のいずれか1項に記載の測距装置。
(構成18)
複数の前記時間ラッチ部が、前記複数の列にそれぞれ対応して配されており、
共通の前記時間カウント値が複数の前記時間ラッチ部に入力される
ことを特徴とする構成17に記載の測距装置。
(構成19)
構成1乃至18のいずれか1項に記載の測距装置と、
前記測距装置により取得される距離情報を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
(構成20)
移動体であって、
構成1乃至18のいずれか1項に記載の測距装置と、
前記測距装置により取得される距離情報に基づいて前記移動体を制御する移動体制御部と、
を備えることを特徴とする移動体。
【0112】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0113】
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 測距装置
4 発光装置
31 制御部
32 発光部
33 受光部
34 時間カウント部
351 時間ラッチ部
353 TOF値算出部
PX 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14