(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171652
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/155 20060101AFI20241205BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04B7/155
H01Q1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088780
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 拡平
(72)【発明者】
【氏名】谷 竜征
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
【テーマコード(参考)】
5J047
5K072
【Fターム(参考)】
5J047AB05
5J047BB07
5K072AA22
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB22
5K072BB25
5K072DD01
5K072DD11
5K072DD15
5K072EE33
5K072GG02
5K072GG03
5K072GG06
5K072GG14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の技術に比較して、より高品質な通信を行うことができる通信システムを得る。
【解決手段】通信システム90は、建設中の建物80の最上部の上昇に応じて上昇する仮設物(タワークレーン10)に設けられ、インターネット通信を提供する人工衛星100との通信を行うアンテナ20と、アンテナ20とケーブル24で接続され、建物80の内外においてインターネット通信を行う通信機器と通信可能とされたアクセスポイント26A、26B、26Cと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設中の建物の最上部の上昇に応じて上昇する仮設物に設けられ、インターネット通信を提供する人工衛星との通信を行うアンテナと、
前記アンテナと有線で接続され、前記建物の内外においてインターネット通信を行う通信機器と通信可能とされたアクセスポイントと、
を備えた通信システム。
【請求項2】
前記仮設物は、前記建物の建設に用いるタワークレーンの旋回架台、当該タワークレーンの昇降フレーム、及び前記建物に対する外周養生の少なくとも1つである、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記アクセスポイントは、前記建物の高さ及び床面積の少なくとも一方が大きくなるに従って追加される、
請求項1又は請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記アンテナと前記アクセスポイントとの間に介在され、前記建物に設けられた稼働物の稼働に応じて生じた雑音を抑制するためのフィルタ、
を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における通信環境は、通信アプリケーションの普及に伴い、必須の環境となりつつある。
【0003】
建設現場での通信環境では、一般に、既存の通信キャリアが提供している通信網が利用されているが、近年の建設物は高層化されていることもあり、建設現場の場内においては、既存の通信キャリアによる電波の不感知帯が多い。
【0004】
この問題を解決するために適用することのできる技術として、次の技術があった。
【0005】
特許文献1には、建設対象の建物の高層部における通信状況を向上することができるようにすることを目的とした通信方法が開示されている。
【0006】
この通信方法は、タワーに載置される旋回台と、前記旋回台を支点とするジブとを備え、建物に隣接して設置され、前記旋回台の高さが変化するタワークレーンを用いた前記建物の建設現場における通信方法であって、前記建物の内部で作業する作業者が使用する携帯端末と無線通信を行い、前記携帯端末と前記建物の外部の通信機器との間の通信信号を中継する基地局に接続されるアンテナを、前記旋回台近傍の高さの前記タワークレーンの部位に設置すること、を特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、基地局のアンテナと作業者の携帯端末との間の比較的長い距離を無線通信によって通信するものとされているため、必ずしも高品質な通信を行うことができるとは限らない、という問題点があった。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、従来の技術に比較して、より高品質な通信を行うことができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る通信システムは、建設中の建物の最上部の上昇に応じて上昇する仮設物に設けられ、インターネット通信を提供する人工衛星との通信を行うアンテナと、前記アンテナと有線で接続され、前記建物の内外においてインターネット通信を行う通信機器と通信可能とされたアクセスポイントと、を備えている。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る通信システムによれば、建設中の建物の最上部の上昇に応じて上昇する仮設物に設けられ、インターネット通信を提供する人工衛星との通信を行うアンテナと、当該アンテナと有線で接続され、建物の内外においてインターネット通信を行う通信機器と通信可能とされたアクセスポイントと、を備えることで、アクセスポイントを通信機器と近い位置に配置することができる結果、従来の技術に比較して、より高品質な通信を行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る通信システムは、請求項1に記載の通信システムであって、前記仮設物が、前記建物の建設に用いるタワークレーンの旋回架台、当該タワークレーンの昇降フレーム、及び前記建物に対する外周養生の少なくとも1つであるものである。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る通信システムによれば、仮設物を、建物の建設に用いるタワークレーンの旋回架台、当該タワークレーンの昇降フレーム、及び建物に対する外周養生の少なくとも1つとすることで、これらの建設作業に用いられる仮設物を利用することができる結果、より低コストで本発明の効果を享受することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る通信システムは、請求項1又は請求項2に記載の通信システムであって、前記アクセスポイントが、前記建物の高さ及び床面積の少なくとも一方が大きくなるに従って追加されるものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る通信システムによれば、アクセスポイントを、建物の高さ及び床面積の少なくとも一方が大きくなるに従って追加することで、建物の高さ及び床面積の少なくとも一方が大きくなることに伴う通信品質の低下を補うことができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る通信システムは、請求項1又は請求項2に記載の通信システムであって、前記アンテナと前記アクセスポイントとの間に介在され、前記建物に設けられた稼働物の稼働に応じて生じた雑音を抑制するためのフィルタ、を更に備えたものである。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る通信システムによれば、アンテナとアクセスポイントとの間に介在され、建物に設けられた稼働物の稼働に応じて生じた雑音を抑制するためのフィルタを更に備えることで、稼働物の稼働に伴う雑音の影響を低減させることができる結果、当該稼働物の稼働が原因である通信品質の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、従来の技術に比較して、より高品質な通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【
図2】実施形態に係る通信システムで適用するフロアクライミングの状態の一例を示す正面図である。
【
図3】実施形態に係る通信システムの原理の説明に供する図であり、建物の高さが比較的低く、かつ、床面積が比較的狭い場合におけるアクセスポイントの設置例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る通信システムの原理の説明に供する図であり、建物の高さが高くなったり、床面積が広くなったりした場合におけるアクセスポイントの設置例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る通信システムにおけるケーブルの敷設状態の一例を示す正面図である。
【
図6】実施形態に係る通信システムの他の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の仮設物として、建物の建設で仮設されるタワークレーンを適用した場合の形態例について説明する。
【0021】
図1には、本実施形態に係る通信システム90の全体構成図が示されている。
【0022】
一例として
図1に示すように、本実施形態に係る通信システム90は、建物80の建設に用いるタワークレーン10に設けられたアンテナ20と、アンテナ20と有線で接続されたアクセスポイント26A、26B、・・・と、を備えている。なお、以下では、アクセスポイント26A、26B、・・・を区別することなく説明する場合は、「アクセスポイント26」と総称する。また、
図1では、アクセスポイント26が複数(
図1では、3台)設けられている場合が例示されているが、その数は建物80の高さ及び床面積によって変わるものであり、場合によっては1台の場合も有り得る。なお、「アクセスポイント」は「基地局」等との呼称もあるが、本明細書では、「アクセスポイント」と統一して記載する。
【0023】
本実施形態に係るアンテナ20は、インターネット通信を提供する人工衛星100との通信を行うためのものである。また、本実施形態に係るアクセスポイント26は、建物80の内外においてインターネット通信を行う通信機器(図示省略。)と通信可能とされており、本実施形態においては、通信部22を介してアンテナ20と有線で接続されている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る通信システム90では、アンテナ20がタワークレーン10の旋回架台10Aの上面に固定されている。このため、アンテナ20で送受信される信号(以下、「通信信号」という。)には、旋回架台10Aの回転駆動に応じたノイズが重畳される。これに対処するため、本実施形態に係る通信部22には、上記ノイズを抑制するためのフィルタ(図示省略。)が設けられている。なお、本実施形態では、上記フィルタとして、旋回架台10Aの回転駆動に応じて発生するノイズの周波数帯域を極力カットし、かつ、通信信号の周波数帯域を極力通過させるバンドパスフィルタを適用しているが、これに限るものではない。抑制対象とするノイズの種類や周波数帯域に応じて、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等の他の種類のフィルタの単独、及び組み合わせを適用する形態としてもよい。
【0025】
一方、
図1に示すように、本実施形態に係る通信システム90では、アンテナ20とアクセスポイント26とがケーブル24により接続されている。本実施形態では、ケーブル24として、汎用の有線LAN(Local Area Network)ケーブルを適用しているが、これに限るものではない。例えば、専用の有線LANケーブル等の他のケーブルをケーブル24として適用する形態としてもよい。また、本実施形態では、上記通信機器として、スマートフォン、タブレット端末、ノートブック型パーソナルコンピュータ等のモバイル型の端末装置を適用しているが、これに限るものではなく、据え置き型の端末装置等を上記通信機器として適用する形態としてもよい。
【0026】
また、
図1では、人工衛星100が1基のみ図示されているが、本実施形態に係る通信システム90では、通信方式として衛星コンステレーションによる通信方式を適用しているため、人工衛星100は多数用いられている。但し、この形態に限らず、人工衛星100は、インターネット通信が可能であれば、その数は限定されない。
【0027】
ところで、本実施形態に係るタワークレーン10は、建物80の建設が進むに従って建物80の上階に昇っていく、所謂フロアクライミング方式とされている。
図2は、フロアクライミングの状態の一例を示す正面図である。なお、
図2では、錯綜を回避するため、アンテナ20の図示を省略している。
【0028】
フロアクライミングでは、まず、
図2の左上の図に示すように、ベース架台10Bを基礎82に固定した状態で建物80の最上階にタワークレーン10の昇降フレーム10Cを固定する。次いで、
図2の右上の図に示すように、ベース架台10Bの基礎ボルトを開放してマスト10Dを引き上げて途中階にベース架台10Bを固定する。次いで、
図2の左下~右下の図に示すように、昇降フレーム10Cを開放してクレーン本体をクライミングさせる。以降、建物80の建設の進行に伴って、以上の動作を繰り返す。
【0029】
従って、一例として
図3に示すように、建物80の高さが比較的低く、かつ、床面積が比較的狭い場合には、アクセスポイント26は1台のみで済むが、一例として
図4に示すように、建物80の高さが高くなったり、床面積が広くなったりした場合には、アクセスポイント26は、その状況に応じて台数を増やす。なお、
図3は、本実施形態に係る通信システム90の原理の説明に供する図であり、建物の高さが比較的低く、かつ、床面積が比較的狭い場合におけるアクセスポイント26の設置例を示す図である。また、
図4は、本実施形態に係る通信システム90の原理の説明に供する図であり、建物の高さが高くなったり、床面積が広くなったりした場合におけるアクセスポイント26の設置例を示す図である。
【0030】
このように、本実施形態では、タワークレーン10としてフロアクライミング方式が適用されたものを適用しているが、これに限るものではない。例えば、建物の外の地上にベース架台を設置し、最頂部に順次マストを継ぎ足しながらクライミングする、所謂マストクライミング方式のタワークレーンをタワークレーン10として適用する形態としてもよい。
【0031】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る通信システム90における、アンテナ20からアクセスポイント26に至るケーブル24の敷設状態について説明する。
図5は、本実施形態に係るケーブル24の敷設状態を示す正面図である。なお、
図5では、錯綜を回避するために通信部22の図示を省略する。
【0032】
図5に示すように、本実施形態に係る通信システム90では、ケーブル24は、旋回架台10Aを経由し、かつ、円筒状とされたマスト10Dの側壁に設けられた導出入口10Eを介してマスト10Dの内部に導入されて垂下される。そして、ケーブル24は、マスト10Dの内部で分岐され、それまでに建設されている建物80の各階に向けて、導出入口10Eを介して導出され、対応する階に設けられたアクセスポイント26に接続される。
【0033】
以上のように構成された通信システム90では、建設に従事する作業者の各々が所持する通信機器によって近接する位置に設けられたアクセスポイント26にアクセスされ、アンテナ20を介してインターネット通信を行う。
【0034】
従って、このインターネット通信により、他の作業者との通信が可能となると共に、建物80の外部に設けられたクラウドサーバ等の各種装置にアクセル可能となる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、建設中の建物の最上部の上昇に応じて上昇する仮設物に設けられ、インターネット通信を提供する人工衛星との通信を行うアンテナと、当該アンテナと有線で接続され、建物の内外においてインターネット通信を行う通信機器と通信可能とされたアクセスポイントと、を備えている。従って、アクセスポイントを通信機器と近い位置に配置することができる結果、従来の技術に比較して、より高品質な通信を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、仮設物として、建物の建設に用いるタワークレーンの旋回架台を適用している。従って、建設作業に用いられるタワークレーンを利用することができる結果、より低コストで本発明の効果を享受することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、アクセスポイントを、建物の高さ及び床面積の少なくとも一方が大きくなるに従って追加している。従って、建物の高さ及び床面積の少なくとも一方が大きくなることに伴う通信品質の低下を補うことができる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、アンテナとアクセスポイントとの間に介在され、建物に設けられた稼働物の稼働に応じて生じた雑音を抑制するためのフィルタを更に備えている。従って、稼働物の稼働に伴う雑音の影響を低減させることができる結果、当該稼働物の稼働が原因である通信品質の低下を抑制することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、仮設物としてタワークレーン10を適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、対象とする建物に対して設けられた外周養生を仮設物として適用する形態としてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、タワークレーン10の旋回架台10Aにアンテナ20を設ける場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、タワークレーン10の昇降フレーム10Cや、マスト10Dの最上部近傍の外周足場等にアンテナ20を設ける形態としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、フィルタにより抑制する雑音としてタワークレーン10の旋回架台10Aの回転駆動に応じた雑音を適用した場合について説明したが、これに限るものではない。他の稼働物の稼働に応じて生じた雑音を、フィルタにより抑制する雑音として適用する形態としてもよいことは言うまでもない。
【0042】
更に、上記実施形態では、ケーブル24をマスト10Dの内部に敷設することで、アンテナ20とアクセスポイント26とを、マスト10Dを経由して接続する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、一例として
図6に示すように、アンテナ20とアクセスポイント26とを、マスト10Dを経由することなくケーブル24により接続する形態としてもよい。なお、
図6は、本実施形態に係る通信システム90の他の全体構成図であり、
図1と同一の構成要素には
図1と同一の参照符号を付している。
【符号の説明】
【0043】
10 タワークレーン
10A 旋回架台
10B ベース架台
10C 昇降フレーム
10D マスト
10E 導出入口
20 アンテナ
22 通信部
24 ケーブル
26 アクセスポイント
80 建物
82 基礎
90 通信システム
100 人工衛星