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特開2024-171665リアクトル、コンバータおよび電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171665
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータおよび電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 F
H01F37/00 H
H01F37/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088801
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】高井 良典
(72)【発明者】
【氏名】名田 將人
(57)【要約】
【課題】薄型のリアクトル、コンバータおよび電力変換装置を提供する。
【解決手段】リアクトルは、巻線で構成されたコイルと、前記コイルの内側に配置された内側コア部および前記コイルの外側に配置された外側コア部を有する磁性コアと、を備え、前記外側コア部は、切欠を有すると共に、前記切欠から前記巻線の端部が引き出されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線で構成されたコイルと、
前記コイルの内側に配置された内側コア部および前記コイルの外側に配置された外側コア部を有する磁性コアと、を備え、
前記外側コア部は、切欠を有すると共に、前記切欠から前記巻線の端部が引き出された、
リアクトル。
【請求項2】
前記コイルの端面と前記外側コア部との間に配置されるスペーサを備え、
前記スペーサは、前記巻線の端部が引き出された切欠を有する、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記コイルは、
互いに並列されかつ独立した部材である第一巻回部および第二巻回部と、
前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部および第二の巻線端部と、
前記第二巻回部から引き出された第三の巻線端部および第四の巻線端部と、を有し、
前記外側コア部は、
前記コイルの第一の端面に向き合う第一外側コア部と、
前記コイルの第二の端面に向き合う第二外側コア部と、を有し、
前記切欠は、
前記第一外側コア部の第一の端部と第二の端部のいずれかに設けられた第一切欠と、
前記第一外側コア部の前記第一の端部と前記第二の端部との間に設けられた第二切欠と、
前記第二外側コア部の第一の端部と第二の端部のいずれかに設けられた第三切欠と、
前記第二外側コア部の前記第一の端部と前記第二の端部との間に設けられた第四切欠と、を有し、
前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、
前記第二の巻線端部が前記第四切欠から引き出され、
前記第三の巻線端部が前記第二切欠から引き出され、
前記第四の巻線端部が前記第三切欠から引き出されている、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記コイルは、
互いに並列されかつ独立した部材である第一巻回部および第二巻回部と、
前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部および第二の巻線端部と、
前記第二巻回部から引き出された第三の巻線端部および第四の巻線端部と、を有し、
前記外側コア部は、
前記コイルの第一の端面に向き合う第一外側コア部と、
前記コイルの第二の端面に向き合う第二外側コア部と、を有し、
前記切欠は、
前記第一外側コア部の第一の端部に設けられた第一切欠と、
前記第一外側コア部の第二の端部に設けられた第二切欠と、
前記第二外側コア部の第一の端部に設けられた第三切欠と、
前記第二外側コア部の第二の端部に設けられた第四切欠と、を有し、
前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、
前記第二の巻線端部が前記第四切欠から引き出され、
前記第三の巻線端部が前記第二切欠から引き出され、
前記第四の巻線端部が前記第三切欠から引き出されている、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記コイルは、
互いに並列された第一巻回部および第二巻回部と、
前記第一巻回部と前記第二巻回部とをつなぐ連結部と、
前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部と、
前記第二巻回部から引き出された第二の巻線端部と、を有し、
前記連結部は、前記巻線の一部で構成され、
前記切欠は、
前記外側コア部の第一の端部と第二の端部のいずれかに設けられた第一切欠と、
前記外側コア部の前記第一の端部と前記第二の端部との間に設けられた第二切欠と、を有し、
前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、
前記第二の巻線端部が前記第二切欠から引き出されている、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記コイルは、
互いに並列された第一巻回部および第二巻回部と、
前記第一巻回部と前記第二巻回部とをつなぐ連結部と、
前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部と、
前記第二巻回部から引き出された第二の巻線端部と、を有し、
前記連結部は、前記巻線の一部で構成され、
前記切欠は、
前記外側コア部の第一の端部に設けられた第一切欠と、
前記外側コア部の第二の端部に設けられた第二切欠と、を有し、
前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、
前記第二の巻線端部が前記第二切欠から引き出されている、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記コイルの軸に沿った方向から見た前記外側コア部は、長辺と短辺とを有する矩形の包絡形状を有し、
前記短辺に対する前記長辺の比率が5.0以上である、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記コイルの軸に沿った方向から見た前記コイルは、長辺と短辺とを有する矩形の包絡形状を有し、
前記短辺に対する前記長辺の比率が2.5以上である、請求項7に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記コイルの軸に沿った方向から見た前記スペーサは、長辺と短辺とを有する矩形の包絡形状を有し、
前記短辺に対する前記長辺の比率が5.0以上である、請求項2に記載のリアクトル。
【請求項10】
前記コイルは、互いに向き合う第一コイル面および第二コイル面を有し、
前記外側コア部は、互いに向き合う第一外側コア面および第二外側コア面を有し、
前記スペーサは、互いに向き合う第一主面および第二主面を有し、
前記第一コイル面と前記第一外側コア面と前記第一主面とは面一であり、
前記第二コイル面と前記第二外側コア面と前記第二主面とは面一である、請求項2に記載のリアクトル。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項12】
請求項11に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータおよび電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のリアクトルは、コイルと磁性コアとを備える。コイルは、らせん状に巻回してなる巻線によって構成された第一巻回部および第二巻回部を有する。磁性コアは、第一ミドルコアと第二ミドルコアと第一エンドコアと第二エンドコアとを有する。第一ミドルコアは第一巻回部の内部に配置されている。第二ミドルコアは第二巻回部の内部に配置されている。第一エンドコアは、第一ミドルコアの第一端部と第二ミドルコアの第一端部とをつないでいる。第二エンドコアは、第一ミドルコアの第二端部と第二ミドルコアの第二端部とをつないでいる。第一巻回部及び第二巻回部の各々を構成する巻線の端部は、例えば第一エンドコアおよび第二エンドコアのいずれかの上部を通って引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-351722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄型のリアクトルを提供することが望まれている。リアクトルを薄型とすることができれば、小型化・軽量化に資するだけでなく、リアクトルの配置の自由度およびリアクトルの放熱構造の自由度を高めることが期待される。
【0005】
本開示は、薄型のリアクトルを提供することを目的の一つとする。本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することをさらに別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、巻線で構成されたコイルと、前記コイルの内側に配置された内側コア部および前記コイルの外側に配置された外側コア部を有する磁性コアと、を備え、前記外側コア部は、切欠を有すると共に、前記切欠から前記巻線の端部が引き出されている。
【発明の効果】
【0007】
上記リアクトルは、薄型のリアクトルを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係るリアクトルを示す斜視図である。
図2図2は、図1のリアクトルを構成するコイルを示す斜視図である。
図3図3は、図1のリアクトルを構成する磁性コアを示す斜視図である。
図4図4は、図1のリアクトルを構成するスペーサを示す斜視図である。
図5図5は、実施形態2に係るリアクトルを示す斜視図である。
図6図6は、実施形態3に係るリアクトルを示す斜視図である。
図7図7は、図6のリアクトルを構成するコイルを示す斜視図である。
図8図8は、図6のリアクトルを構成する磁性コアを示す斜視図である。
図9図9は、図6のリアクトルを構成するスペーサを示す斜視図である。
図10図10は、実施形態4に係るリアクトルを示す斜視図である。
図11図11は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
図12図12は、コンバータを備える電力変換装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一形態に係るリアクトルは、巻線で構成されたコイルと、前記コイルの内側に配置された内側コア部および前記コイルの外側に配置された外側コア部を有する磁性コアと、を備え、前記外側コア部は、切欠を有すると共に、前記切欠から前記巻線の端部が引き出されている。
【0011】
上記のリアクトルは、外側コア部に巻線の端部が嵌められる切欠を備えるため、外側コア部の表面から巻線の端部が出っ張ることを抑制できる。そのため、切欠がなく、外側コア部の表面に巻線の端部が載せられた比較構造のリアクトルに比べて外側コアを薄型にすることができる。
【0012】
(2)上記(1)のリアクトルにおいて、前記コイルの端面と前記外側コア部との間に配置されるスペーサを備え、前記スペーサは、前記巻線の端部が引き出された切欠を有してもよい。
【0013】
上記のリアクトルは、スペーサに巻線の端部が嵌められる切欠を備えるため、スペーサの表面から巻線の端部が出っ張ることを抑制できる。そのため、切欠がなく、スペーサの表面に巻線の端部が載せられた比較構造のリアクトルに比べて外側コアを薄型にすることができる。
【0014】
(3)上記(1)または(2)のリアクトルにおいて、前記コイルは、互いに並列されかつ独立した部材である第一巻回部および第二巻回部と、前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部および第二の巻線端部と、前記第二巻回部から引き出された第三の巻線端部および第四の巻線端部と、を有し、前記外側コア部は、前記コイルの第一の端面に向き合う第一外側コア部と、前記コイルの第二の端面に向き合う第二外側コア部と、を有し、前記切欠は、前記第一外側コア部の第一の端部と第二の端部のいずれかに設けられた第一切欠と、前記第一外側コア部の前記第一の端部と前記第二の端部との間に設けられた第二切欠と、前記第二外側コア部の第一の端部と第二の端部のいずれかに設けられた第三切欠と、前記第二外側コア部の前記第一の端部と前記第二の端部との間に設けられた第四切欠と、を有し、前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、前記第二の巻線端部が前記第四切欠から引き出され、前記第三の巻線端部が前記第二切欠から引き出され、前記第四の巻線端部が前記第三切欠から引き出されていてもよい。
【0015】
上記のリアクトルは、コイルが独立した2つの巻回部を備え、各巻回部が2つの巻線端部を有する。これら4つの巻線端部のうち、第一巻回部の第一の巻線端部は第一外側コア部の片端に設けた第一切欠から引き出され、第一巻回部の第二の巻線端部は第二外側コア部の中間部に設けた第四切欠から引き出される。また、第二巻回部の第三の巻線端部は第一外側コア部の中間部に設けた第二切欠から引き出され、第二巻回部の第四の巻線端部は第二外側コア部の片端に設けた第三切欠から引き出される。つまり、第一外側コア部と第二外側コア部の各々から2つの巻線端部が引き出されることになる。独立した巻回部の各々の巻線端部を互いに離れた第一外側コア部と第二外側コア部の各々から引き出すことができるため、各巻線端部同士を離れた位置に配置できる。この各巻線端部の配置により、巻線端部が接続される端子との接続作業が行い易い。
【0016】
(4)上記(1)または(2)のリアクトルにおいて、前記コイルは、互いに並列されかつ独立した部材である第一巻回部および第二巻回部と、前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部および第二の巻線端部と、前記第二巻回部から引き出された第三の巻線端部および第四の巻線端部と、を有し、前記外側コア部は、前記コイルの第一の端面に向き合う第一外側コア部と、前記コイルの第二の端面に向き合う第二外側コア部と、を有し、前記切欠は、前記第一外側コア部の第一の端部に設けられた第一切欠と、前記第一外側コア部の第二の端部に設けられた第二切欠と、前記第二外側コア部の第一の端部に設けられた第三切欠と、前記第二外側コア部の第二の端部に設けられた第四切欠と、を有し、前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、前記第二の巻線端部が前記第四切欠から引き出され、前記第三の巻線端部が前記第二切欠から引き出され、前記第四の巻線端部が前記第三切欠から引き出されていてもよい。
【0017】
上記のリアクトルは、コイルが独立した2つの巻回部を備え、各巻回部が2つの巻線端部を有する。これら4つの巻線端部のうち、第一巻回部の第一の巻線端部は第一外側コア部の片端に設けた第一切欠から引き出され、第一巻回部の第二の巻線端部は第二外側コア部の片端に設けた第四切欠から引き出される。また、第二巻回部の第三の巻線端部は第一外側コア部の別の片端に設けた第二切欠から引き出され、第二巻回部の第四の巻線端部は第二外側コア部の別の片端に設けた第三切欠から引き出される。つまり、第一外側コア部と第二外側コア部の各々の端部から2つの巻線端部が引き出されることになる。独立した巻回部の各々の巻線端部を互いに離れた第一外側コア部と第二外側コア部の各々から引き出すことができるため、各巻線端部同士を離れた位置に配置できる。この各巻線端部の配置により、巻線端部が接続される端子との接続作業が行い易い。このリアクトルは、上記(3)に記載のリアクトルよりも各々の巻線端部をより離れた位置から引き出すことができる。
【0018】
(5)上記(1)または(2)のリアクトルにおいて、前記コイルは、互いに並列された第一巻回部および第二巻回部と、前記第一巻回部と前記第二巻回部とをつなぐ連結部と、前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部と、前記第二巻回部から引き出された第二の巻線端部と、を有し、前記連結部は、前記巻線の一部で構成され、前記切欠は、前記外側コア部の第一の端部と第二の端部のいずれかに設けられた第一切欠と、前記外側コア部の前記第一の端部と前記第二の端部との間に設けられた第二切欠と、を有し、前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、前記第二の巻線端部が前記第二切欠から引き出されていてもよい。
【0019】
上記のリアクトルは、コイルが互いにつながった2つの巻回部を備え、各巻回部が1つの巻線端部を有する。これら2つの巻線端部のうち、第一巻回部の第一の巻線端部は外側コア部の片端に設けた第一切欠から引き出され、第二巻回部の第二の巻線端部は外側コア部の中間部に設けた第二切欠から引き出される。つまり、外側コア部から2つの巻線端部が引き出されることになる。互いにつながった巻回部の各々の巻線端部を外側コア部の離れた位置に設けられた第一切欠と第二切欠から引き出すことができるため、各巻線端部同士を離れた位置に配置できる。この各巻線端部の配置により、巻線端部が接続される端子との接続作業が行い易い。
【0020】
(6)上記(1)または(2)のリアクトルにおいて、前記コイルは、互いに並列された第一巻回部および第二巻回部と、前記第一巻回部と前記第二巻回部とをつなぐ連結部と、前記第一巻回部から引き出された第一の巻線端部と、前記第二巻回部から引き出された第二の巻線端部と、を有し、前記連結部は、前記巻線の一部で構成され、前記切欠は、前記外側コア部の第一の端部に設けられた第一切欠と、前記外側コア部の第二の端部に設けられた第二切欠と、を有し、前記第一の巻線端部が前記第一切欠から引き出され、前記第二の巻線端部が前記第二切欠から引き出されていてもよい。
【0021】
上記のリアクトルは、コイルが互いにつながった2つの巻回部を備え、各巻回部が1つの巻線端部を有する。これら2つの巻線端部のうち、第一巻回部の第一の巻線端部は外側コア部の片端に設けた第一切欠から引き出され、第二巻回部の第二の巻線端部は外側コア部の別の片端に設けた第二切欠から引き出される。つまり、外側コア部から2つの巻線端部が引き出されることになる。互いにつながった巻回部の各々の巻線端部を外側コア部の離れた位置に設けられた第一切欠と第二切欠から引き出すことができるため、各巻線端部同士を離れた位置に配置できる。この各巻線端部の配置により、巻線端部が接続される端子との接続作業が行い易い。このリアクトルは、上記(5)に記載のリアクトルよりも各々の巻線端部をより離れた位置から引き出すことができる。
【0022】
(7)上記(1)から(6)のいずれかのリアクトルにおいて、前記コイルの軸に沿った方向から見た前記外側コア部は、長辺と短辺とを有する矩形の包絡形状を有し、前記短辺に対する前記長辺の比率が5.0以上であってもよい。
【0023】
上記のリアクトルは、外側コア部を構成する短辺に対する長辺の比率が5.0以上であることで、扁平な薄型のリアクトルを構築できる。
【0024】
(8)上記(1)から(7)のいずれかのリアクトルにおいて、前記コイルの軸に沿った方向から見た前記コイルは、長辺と短辺とを有する矩形の包絡形状を有し、前記短辺に対する前記長辺の比率が2.5以上であってもよい。
【0025】
上記のリアクトルは、コイルを構成する短辺に対する長辺の比率が2.5以上であることで、扁平な薄型のリアクトルを構築できる。
【0026】
(9)上記(2)のリアクトルにおいて、前記コイルの軸に沿った方向から見た前記スペーサは、長辺と短辺とを有する矩形の包絡形状を有し、前記短辺に対する前記長辺の比率が5.0以上であってもよい。
【0027】
上記のリアクトルは、スペーサを構成する短辺に対する長辺の比率が5.0以上であることで、扁平な薄型のリアクトルを構築できる。
【0028】
(10)上記(2)のリアクトルにおいて、前記コイルは、互いに向き合う第一コイル面および第二コイル面を有し、前記外側コア部は、互いに向き合う第一外側コア面および第二外側コア面を有し、前記スペーサは、互いに向き合う第一主面および第二主面を有し、前記第一コイル面と前記第一外側コア面と前記第一主面とは面一であり、前記第二コイル面と前記第二外側コア面と前記第二主面とは面一であってもよい。
【0029】
上記のリアクトルは、コイル、外側コア部およびスペーサの表裏面の各々が面一となっていることで、凹凸の実質的にない表裏面を有する薄型のリアクトルを構築することができる。
【0030】
(11)本開示の一形態に係るコンバータは、上記(1)から上記(10)のいずれかに記載のリアクトルを備える。
【0031】
上記コンバータは、上記のリアクトルを備えることで、薄型に構成することができる。
【0032】
(12)本開示の一形態に係る電力変換装置は、上記(11)のコンバータを備える。
【0033】
上記電力変換装置は、上記コンバータを備えるため、薄型に構成することができる。
【0034】
《本開示の実施形態の詳細》
以下、本開示のリアクトルの詳細を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面が示す部材の大きさなどは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法関係などを表すものではない。
【0035】
《実施形態1》
(概要)
図1から図4を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。リアクトル1は、図1に示すように、コイル2と磁性コア3とを備える。コイル2は、図2に示すように、第一巻回部21および第二巻回部22と、第一巻回部21から引き出された第一の巻線端部211および第二の巻線端部212と、第二巻回部22から引き出された第三の巻線端部213および第四の巻線端部214とを備える。磁性コア3は、図3に示すように、コイル2の内側に配置された内側コア部31およびコイル2の外側に配置された外側コア部32を有する。実施形態1に係るリアクトル1の特徴の一つは、外側コア部32が第一の巻線端部211から第四の巻線端部214を引き出す第一切欠321から第四切欠324を有することにある。以下、次のようにリアクトル1の各方向および寸法の呼び名を規定し、各部の詳細を説明する。
【0036】
X1方向は、第一巻回部21および第二巻回部22の第二の端面から第一巻回部21および第二巻回部22の第一の端面に向かう方向である。第二の端面は、各巻回部21,22が第二外側コア部32sに臨む端面である。第一の端面は、各巻回部21,22が第一外側コア部32fに臨む端面である。Y1方向は、第一巻回部21の第一の側面から第二巻回部22の第二の側面に向かう方向である。第一巻回部21の第一の側面と第二巻回部22の第二の側面は、各巻回部21,22の側面のうち、互いに最も離れて位置する2つの側面である。Z1方向は、各巻回部21,22の底面から上面に向かう方向である。底面は、各巻回部21,22の側面同士をつなぐ2つの面のいずれかの面である。上面は、各巻回部21,22の側面同士をつなぐ2つの面の残りの面である。X1方向とY1方向とZ1方向は互いに直交している。X2方向、Y2方向、およびZ2方向は、それぞれX1方向の反対方向、Y1方向の反対方向、およびZ1方向の反対方向である。X1方向およびX2方向に沿ったリアクトル1およびリアクトル1の構成部材の寸法を長さ、Y1方向およびY2方向に沿ったリアクトル1およびリアクトル1の構成部材の寸法を幅、Z1方向およびZ2方向に沿ったリアクトル1およびリアクトル1の構成部材の寸法を高さということがある。
【0037】
(コイル)
コイル2は、図2に示すように、巻線で構成されている。このコイル2は、巻線がらせん状に巻回された第一巻回部21と第二巻回部22とを備える。第一巻回部21と第二巻回部22は、各々の軸と直交する方向に並列されている。つまり、第一巻回部21のY1方向に第二巻回部22が並列されている。第一巻回部21と第二巻回部22との間には、若干の隙間が設けられている。本例の第一巻回部21および第二巻回部22は、互いに独立した部材であり、かつ同一形状・同一寸法・同一構成材料である。よって、第一巻回部21の底面と第二巻回部22の底面、並びに第一巻回部21の上面と第二巻回部22の上面とは、それぞれ面一である。第一巻回部21の底面と第二巻回部22の底面が第一コイル面に相当し、第一巻回部21の上面と第二巻回部22の上面が第二コイル面に相当する。以下、主に第一巻回部21について説明を行い、第二巻回部22についての説明は省略する。
【0038】
第一巻回部21は、扁平な角筒状に構成されている。この角筒状には、角が丸められた角筒も含む。この第一巻回部21の包絡形状は長辺と短辺とを有する長方形である。包絡形状とは、第一巻回部21を第一巻回部21の軸に沿った方向から見た際、第一巻回部21を囲む最小の四角形状のことである。第一巻回部21を構成する底面および上面が上記長辺に対応する面であり、第一巻回部21を構成する両側面が上記短辺に対応する面である。底面および上面、並びに両側面はいずれも平面を有する。底面および上面の少なくとも一方を設置対象との設置面とすることで、コイル2と設置対象との接触面積を大きくしやすい。設置対象は、例えば冷媒が循環されるケースである。コイル2と設置対象との接触面積が大きいほど、リアクトル1の効率的な放熱を行うことができる。
【0039】
上記短辺に対する長辺の比率Aは、例えば1.7以上である。この比率Aは、短辺の寸法を分母とし、長辺の寸法を分子とする比率である。この比率Aの値が大きいほど扁平で薄型のリアクトル1といえる。この比率Aは、さらに2.5以上、3.0以上または4.0以上であってもよい。この比率Aの上限は、求められるリアクトル1の上限幅に応じて適宜設定すればよい。比率Aの上限の一例は、6.0である。本例における比率Aは約1.9である。
【0040】
第一巻回部21を構成する巻線は、公知の巻線が利用できる。本例の巻線は、被覆平角線を用いている。被覆平角線の導体線は、例えば銅製の平角線で構成されている。被覆平角線の絶縁被覆は、例えばエナメルからなる。本例の第一巻回部21は、被覆平角線がエッジワイズ巻きされてなる。本実施形態とは異なり、コイル2は、被覆平角線がフラットワイズ巻きされてなっていてもよい。
【0041】
第一巻回部21からは第一の巻線端部211と第二の巻線端部212とが引き出されている。第一の巻線端部211および第二の巻線端部212は、絶縁被覆が剥がされて導体線が露出されている。露出された導体線には、図示しない端子が接続される。端子は、図示しない外部装置が接続される。外部装置は、例えばコイル2に電力供給を行なう電源である。
【0042】
本例では、第一巻回部21をZ2方向に見て、第一巻回部21の対角に位置する両角部から第一の巻線端部211および第二の巻線端部212が引き出されている。第一の巻線端部211および第二の巻線端部212は巻回部21の軸に沿った方向に延びている。より具体的には、第一巻回部21の各端面を構成するターンにおいて、巻線をフラットワイズ曲げすることで第一の巻線端部211および第二の巻線端部212が引き出されている。さらに第一巻回部21をX2方向に見て、第一の巻線端部211は包絡形状の左上の角部に位置する。つまり、第一の巻線端部211は、包絡形状のY2方向の端でかつZ1方向の端に位置する。第二の巻線端部212は、第一巻回部21をX1方向に見て、包絡形状の左上の角部に位置する。つまり、第二の巻線端部212は、包絡形状のY1方向の端でかつZ1方向の端に位置する。
【0043】
(磁性コア)
磁性コア3は、コイル2の励磁により、環状の磁路を形成するための磁性部材である。本例の磁性コア3は、図3に示すように、O字状のコアである。磁性コア3は、内側コア部31と外側コア部32とを備える単一のピースである。内側コア部31は、第一巻回部21の内側に配置される第一内側コア部31fと、第二巻回部22の内側に配置される第二内側コア部31sと、を備える。外側コア部32は、第一内側コア部31fおよび第二内側コア部31sにおけるX1方向に配置される第一外側コア部32fと、第一内側コア部31fおよび第二内側コア部31sにおけるX2方向に配置される第二外側コア部32sと、を備える。第一内側コア部31fおよび第二内側コア部31sは、同一形状・同一寸法・同一構成材料である。よって、第一内側コア部31fの底面と第二内側コア部31sの底面、並びに第一内側コア部31fの上面と第二内側コア部31sの上面とは、それぞれ面一である。第一内側コア部31fおよび第二内側コア部31sは、各巻回部21,22の大きさに応じて互いに間隔をあけて並列されている。第一外側コア部32fおよび第二外側コア部32sも形状および寸法がほぼ同一であり、構成材料は同一である。よって、第一外側コア部32fの底面と第二外側コア部32sの底面、並びに第一外側コア部32fの上面と第二外側コア部32sの上面とは面一である。第一外側コア部32fの底面と第二外側コア部32sの底面が第一外側コア面に相当し、第一外側コア部32fの上面と第二外側コア部32sの上面が第二外側コア面に相当する。第一外側コア部32fはX1方向に、第二外側コア部32sはX2方向に離れて配置されている。以下、主に第一内側コア部31fおよび第一外側コア部32fについて説明を行い、第二内側コア部31sおよび第二外側コア部32sについては説明を省略する。第二内側コア部31sおよび第二外側コア部32sの構成に基づく効果は、第一内側コア部31fおよび第一外側コア部32fの構成に基づく効果と共通である。
【0044】
<内側コア部>
第一内側コア部31fは、柱状の部材である。本例の第一内側コア部31fは、第一巻回部21の内周形状に応じて、扁平な角棒状に構成されている。この角棒状には、角部が丸められた角棒も含む。第一内側コア部31fの包絡形状は、長辺と短辺を有する長方形である。包絡形状とは、第一内側コア部31fを第一内側コア部31fの軸に沿った方向から見た際、第一内側コア部31fを囲む最小の四角形状のことである。第一内側コア部31fを構成する底面および上面が上記長辺に対応する面であり、第一内側コア部31fを構成する両側面が上記短辺に対応する面である。底面および上面、並びに両側面はいずれも平面を有する。第一内側コア部31fの外周面のうち、第一巻回部21と向き合う面は、全周にわたって第一巻回部21の内周面と接触している。そのため、第一巻回部21の熱は、第一内側コア部31fを通ってリアクトル1の外部に放熱しやすい。さらに、コイル2の内周における第一内側コア部31fの磁路面積を確保しやすい。
【0045】
第一内側コア部31fの短辺に対する長辺の比率Bは、例えば2.5以上である。この比率Bは、短辺の寸法を分母とし、長辺の寸法を分子とする比率である。この比率Bの値が大きいほど扁平で薄型の第一内側コア部31fといえる。この比率Bは、さらに4.0、4.5以上または5.0以上であってもよい。この比率Bの上限は、求められるリアクトル1の上限幅に応じて適宜設定すればよい。比率Bの上限の一例は7.0である。本例における比率Bは約2.8である。
【0046】
本例の第一内側コア部31fは、第一巻回部21の長さよりも長い。第一内側コア部31fの両端部には後述するスペーサ4が配置される。このスペーサ4に覆われる箇所も第一内側コア部31fである。第一内側コア部31fの外周面は、第一巻回部21の内周面およびスペーサ4の内周面に接している。後述するように、磁性コア3は、複合材料の成形体としてコイル2およびスペーサ4と共に成形されるからである。
【0047】
第一内側コア部31fは、複数の凹部31rを有する。凹部31rは、後述するスペーサ4のガイド部41g,42gに応じて成形された窪みである。凹部31rを有することで、スペーサ4と第一内側コア部31fとの結合を強固にすることができる。本例の凹部31rの形状は、第一内側コア部31fの各側面から底面および上面に及ぶC字状ある。本例の凹部31rが設けられている箇所は、磁性コア3をZ2方向に見て、第一内側コア部31fの4つの角部の近傍である。本例の凹部31rの数は、第一内側コア部31fに対して4つである。つまり、第二内側コア部31sにも4つの凹部31rが設けられているため、磁性コア3に設けられた凹部31rの数は合計8つである。凹部31rの形状、配置箇所および数は、本例に限定されるものではなく適宜選択できる。なお、凹部31rは磁性コア3の必須の構成要素ではない。
【0048】
<外側コア部>
第一外側コア部32fは、柱状の部材である。本例の第一外側コア部32fは、長さおよび高さよりも幅が長い角柱状の部材である。この角柱状には、第一外側コア部32fを構成する角部の少なくとも一つが丸められた角柱も含む。本例の第一外側コア部32fは、X1方向とZ1方向とを含む平面で切断した横断面の形状が矩形である。
【0049】
第一外側コア部32fの包絡形状は、長辺と短辺を有する長方形である。包絡形状とは、第一外側コア部32fを第一巻回部21の軸に沿った方向から見た際、第一外側コア部32fを囲む最小の四角形状のことである。第一外側コア部32fを構成する底面および上面が上記長辺に対応する面であり、第一外側コア部32fを構成する両側面が上記短辺に対応する面である。底面および上面、並びに両側面はいずれも平面を有する。
【0050】
第一外側コア部32fの短辺に対する長辺の比率Cは、例えば3.5以上である。この比率Cは、短辺の寸法を分母とし、長辺の寸法を分子とする比率である。この比率Cの値が大きいほど扁平で薄型の第一外側コア部32fといえる。この比率Cは、さらに5.0、6.0以上または7.0以上であってもよい。この比率Cの上限は、求められるリアクトル1の上限幅に応じて適宜設定すればよい。比率Cの上限の一例は10.0である。本例における比率Cは約3.9である。
【0051】
外側コア部32の幅は、コイル2の幅、つまり並列された第一巻回部21および第二巻回部22の合計幅よりも小さい。外側コア部32の幅は、コイル2の幅よりも大きくてもよいし同じでもよい。
【0052】
第一外側コア部32fの高さは、第一内側コア部31fの高さよりも大きい。つまり、第一内側コア部31fの端部と第一外側コア部32fとの間には段差が形成されている。この段差は後述するスペーサ4により埋められる。
【0053】
第一外側コア部32fは、第一切欠321および第二切欠322を備える。第一切欠321は、第一外側コア部32fのY2方向の端部に設けられている。磁束は第一内側コア部31fに向かってまたは第二内側コア部31sに向かって曲がって通るため、第一外側コア部32fのY1方向の端部またはY2方向の端部は、部分的に切り欠いても実質的に磁束の減少を招きにくい。第二切欠322は第一外側コア部32fのY1方向の端部およびY2方向の端部の間に設けられている。本例の第二切欠322は、第一外側コア部32fの中央部に設けられている。第一外側コア部32fの中央部は、主たる磁路でもある。磁路面積の減少抑制の観点から、例えば第二切欠322の深さは、第一外側コア部32fの高さの1/2未満とするとよい。この深さは、第一外側コア部32fの上面からZ2方向に向かって第二切欠322における最も遠位の位置までの寸法である。第一切欠321および第二切欠322を設ける位置は、第一の巻線端部211および第二巻回部22の第三の巻線端部213を引き出すことができる限り、上記と異なる位置であってもよい。
【0054】
第一切欠321は、第一外側コア部32fの上面および側面で構成される角部に設けられている。第一外側コア部32fをX2方向に見た第一切欠321の形状は、内角が90°の扇形である。但し、第一切欠321の形状は、扇形に限定されず、矩形または三角形状であってもよい。この第一切欠321には、第一の巻線端部211が嵌められる。第一切欠321の大きさは、第一の巻線端部211が第一外側コア部32fの包絡形状からはみ出さない程度で、かつ第一外側コア部32fの磁路面積を過度に制約しない程度の大きさである。第一の巻線端部211が第一外側コア部32fの包絡形状からはみ出さなければ、リアクトル1は外側コア部の上面に巻線端部が載せられた従来のリアクトルに比べて、高さの小さい薄型とすることができる。第一外側コア部32fの磁路面積確保の観点と第一外側コア部32fの包絡形状内に第一の巻線端部211を収納する観点からは、第一切欠321の形状および寸法は、第一の巻線端部211の形状および寸法に対応したものとしてもよい。
【0055】
第二切欠322は、第一外側コア部32fの上面から底面に向かって窪むように設けられている。第一外側コア部32fをX2方向に見た第二切欠322の形状は、U字状である。但し、第二切欠322の形状は、U字状に限定されず、矩形またはV字状であってもよい。この第二切欠322には、第二巻回部22の第三の巻線端部213が嵌められる。第二切欠322の大きさは、第三の巻線端部213が第一外側コア部32fの包絡形状からはみ出さない程度で、かつ第一外側コア部32fの磁路面積を過度に制約しない程度の大きさである。第三の巻線端部213が第一外側コア部32fの包絡形状からはみ出さなければ、リアクトル1は外側コア部の上面に巻線端部が載せられた従来のリアクトルに比べて、高さの小さい薄型とすることができる。第一外側コア部32fの磁路面積確保の観点と第一外側コア部32fの包絡形状内に第三の巻線端部213を収納する観点からは、第二切欠322の形状および寸法は、第三の巻線端部213の形状および寸法に対応したものとしてもよい。扁平なリアクトル1では、被覆平角線の長辺が第一外側コア部32fおよび第二外側コア部32sの各包絡形状の長辺に沿うように巻線を各切欠321,322,323および324に配置するとよい。換言すれば、被覆平角線の短辺が第一外側コア部32fおよび第二外側コア部32sの各包絡形状の短辺に沿うように巻線を各切欠321,322,323および324に配置するとよい。このような巻線の配置により、各切欠321,322,323および324の高さに沿った寸法を小さくでき、外側コア部32における磁路面積の減少を抑制することができる。
【0056】
第一切欠321が第一外側コア部32fのY2方向の端部に、第二切欠322が第一外側コア部32fの中央部に設けられていることで、第一巻回部21の第一の巻線端部211と第二巻回部22の第三の巻線端部213との距離を十分に確保できる。そのため、第一の巻線端部211と第三の巻線端部213の各々に端子を接続する作業が行いやすい。なお、第二外側コア部32sには、図3に示すように、Y1方向の端部に第三切欠323が設けられ、中央部に第四切欠324が設けられている。第三切欠323からは第二巻回部22から延びる第四の巻線端部214が引き出され、第四切欠324からは第一巻回部21から延びる第二の巻線端部212が引き出される。
【0057】
<磁性コアの構成材料>
磁性コア3は、複合材料の成形体で構成されている。複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散されてなる成形体である。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を分散した流動性の素材を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。本例の磁性コア3は、金型内にコイル2と後述するスペーサ4とを配置して、上記流動性の素材を充填することで成形される。この磁性コア3の成形方法については、後述する実施形態2から実施形態4においても同様である。得られる磁性コア3は、内側コア部31および外側コア部32が一体化された成形体である。複合材料の成形体で磁性コア3を構成することで、複雑形状の磁性コア3であっても容易に成形することができる。
【0058】
複合材料の成形体は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を容易に調整できる。そのため、複合材料の成形体は、磁気特性を調整し易い。その上、複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して、複雑な形状でも形成し易い。複合材料の成形体中の軟磁性粉末の含有量は、例えば20体積%以上80体積%以下である。複合材料の成形体中の樹脂の含有量は、例えば20体積%以上80体積%以下である。これらの含有量は、複合材料の成形体の体積を100%とする場合に対する割合である。
【0059】
軟磁性粉末は、例えば、軟磁性金属の粒子、被覆粒子、または軟磁性非金属の粒子で構成される。被覆粒子は、軟磁性金属の粒子と、軟磁性金属の粒子の外周に設けられた絶縁被覆とを備える。軟磁性金属は、例えば、純鉄または鉄基合金である。鉄基合金は、例えば、Fe-Si合金またはFe-Ni合金である。絶縁被覆は、例えばリン酸塩である。軟磁性非金属は、例えばフェライトである。
【0060】
複合材料の成形体を構成する樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、またはウレタン樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、またはフッ素樹脂である。ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、またはナイロン9Tである。
【0061】
複合材料の成形体はフィラーを含有していてもよい。フィラーは、例えばアルミナまたはシリカである。フィラーは、放熱性および電気絶縁性の向上に寄与する。
【0062】
必要に応じて、磁性コア3は複合材料の成形体と圧粉成形体とを組み合わせて構成されてもよい。圧粉成形体は、軟磁性粉末を圧縮成形してなる成形体である。圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して、軟磁性粉末の占める割合を高くできる。そのため、圧粉成形体を含む磁性コア3は磁気特性を高め易い。磁気特性は、例えば比透磁率または飽和磁束密度である。圧粉成形体と複合材料の成形体の具体的な組み合わせは、例えばO状の圧粉成形体の外周を覆うように複合材料の成形体を成形する。
【0063】
<スペーサ>
スペーサ4は、各巻回部21,22同士の位置決めをすると共に、磁性コア3と一体に成形されることで、コイル2と磁性コア3も一体にするための部材である。本例のスペーサ4は、図4に示すように、第一スペーサ41と第二スペーサ42との2つの部材から構成されている。第一スペーサ41と第二スペーサ42とは、同一形状・同一寸法・同一構成材料である。以下、主として第一スペーサ41について説明を行い、第二スペーサ42の説明は省略する。なお、第二スペーサ42は、第一スペーサ41と同様に、基部42bと、突部42pと、ガイド部42gと、貫通孔42hとを備える。第二スペーサ42の基部42bには、図4に示すように、Y1方向の端部に第三切欠413が設けられ、中央部に第四切欠414が設けられている。第三切欠413からは第二巻回部22から延びる第四の巻線端部214が引き出され、第四切欠414からは第一巻回部21から延びる第二の巻線端部212が引き出される。
【0064】
第一スペーサ41は、基部41bと、突部41pと、ガイド部41gとを備える。基部41bは、第一スペーサ41の主たる部位で、X1方向またはX2方向から見て、Bの字状に構成されている。Z1方向またはZ2方向から見た基部41bは矩形である。Y1方向またはY2方向から見た基部41bも矩形である。基部41bは長さと高さに対して幅が長い。
【0065】
第一スペーサ41の包絡形状、即ち基部41bの包絡形状は長辺と短辺を有する長方形である。包絡形状とは、基部41bを第一巻回部21の軸に沿った方向から見た際、基部41bを囲む最小の四角形状のことである。基部41bを構成する底面および上面が上記長辺に対応する面であり、基部41bを構成する両側面が上記短辺に対応する面である。また、基部41bおよび基部42bの各々の底面が第一主面に相当し、基部41bおよび基部42bの各々の上面が第二主面に相当する。上面、底面および両側面はいずれも平面を有する。
【0066】
基部41bの短辺に対する長辺の比率Dは、例えば3.5以上である。この比率Dは、短辺の寸法を分母とし、長辺の寸法を分子とする比率である。この比率Dの値が大きいほど扁平で薄型の基部41bといえる。この比率Dは、さらに5.0以上、6.0以上または7.0以上であってもよい。この比率Dの上限は、求められるリアクトル1の上限幅に応じて適宜設定すればよい。比率Dの上限例は11.0である。本例における比率Dは約3.9である。
【0067】
基部41bの幅は、コイル2の幅、つまり並列された第一巻回部21および第二巻回部22の合計幅と同じである。基部41bの幅は、コイル2の幅よりも大きくてもよいし小さくてもよい。基部41bの幅がコイル2の幅よりも大きければ、コイル2の絶縁被覆が損傷し難い。
【0068】
基部41bは第一切欠411および第二切欠412を備える。第一切欠411は、基部41bのY2方向の端部に設けられている。第二切欠412は、基部41bのY1方向の端部およびY2方向の端部の間に設けられている。
【0069】
第一切欠411は、基部41bの上面および側面で構成される角部に設けられている。基部41bをX2方向に見た第一切欠321の形状は、矩形である。但し、第一切欠411の形状は、矩形に限定されず、他の多角形または扇形であってもよい。この第一切欠411には、第一の巻線端部211が嵌められる。第一切欠411の大きさは、巻線の断面寸法に対応した寸法である。第一の巻線端部211が基部41bの包絡形状からはみ出さなければ、リアクトル1はスペーサ4の上面に巻線端部が載せられた従来のリアクトルに比べて、高さの小さい薄型とすることができる。巻線を適切に支持する観点からは、第一切欠411の形状および寸法は、第一の巻線端部211の形状および寸法に対応したものとしてもよい。
【0070】
第二切欠412は、基部41bの上面から底面に向かって窪むように設けられている。基部41bをX2方向に見た第二切欠412の形状は、矩形状である。但し、第二切欠412の形状は、矩形状に限定されず、他の多角形やU字状であってもよい。この第二切欠412には、第二巻回部22の第三の巻線端部213が嵌められる。第二切欠412の大きさは、巻線の断面寸法に対応した寸法である。第三の巻線端部213が基部41bの包絡形状からはみ出さなければ、リアクトル1はスペーサ4の上面に巻線端部が載せられた従来のリアクトルに比べて、高さの小さい薄型とすることができる。巻線を適切に支持する観点からは、第二切欠412の形状および寸法は、第三の巻線端部213の形状および寸法に対応したものとしてもよい。
【0071】
基部41bにおけるX2方向に臨む面は、ガイド溝41rを備える。図4ではガイド溝41rの形状が見えていないが、基部42bのガイド溝42rと同様のJ字状である。ガイド溝41rは、基部41bにおけるX2方向に臨む面のY2方向の端部と中央部との2箇所に設けられている。Y2方向の端部に設けられたガイド溝41rは、第一巻回部21における基部41bを臨むターンの巻線を第一巻回部21の底面から上面に向かって案内する。また、中央部に設けられたガイド溝41rは、第二巻回部22における基部41bを臨むターンの巻線を第二巻回部22の底面から上面に向かって案内する。ガイド溝41rに沿って第一巻回部21の上面にまで引き上げられた巻線は、フラットワイズ曲げされてX1方向に延びることで第一の巻線端部211につながる。ガイド溝41rに沿って第二巻回部22の上面にまで引き上げられた巻線は、フラットワイズ曲げされてX1方向に延びることで第三の巻線端部213につながる。
【0072】
基部41bは、2つの貫通孔41hを備えている。両貫通孔41hは、基部41bにおけるX1方向を臨む面とX2方向を臨む面とをつなぐように貫通している。各貫通孔41hには、第一内側コア部31fまたは第二内側コア部31sが貫通される。各貫通孔41hをX1方向またはX2方向に見た形状は、後述するガイド部41gが設けられた箇所を除けば、矩形状である。
【0073】
さらに基部41bは、複数のガイド部41gを備える。各ガイド部41gは、各ガイド部41gの外周に各巻回部21,22を嵌めることで、スペーサ4に対してコイル2を位置決めするための部位である。ガイド部41gは、基部41bにおけるX1方向を臨む面からX2方向に向かって突出すると共に、貫通孔41hの内周の一部にまで延びている。ガイド部41gの数は、各貫通孔41hに対して2つ、合計で4つである。本例のガイド部41gの形状はC字状である。C字状のガイド部41gは、その開口部を互いに向い合せるように各貫通孔41hの両端部に設けられている。
【0074】
突部41pは、基部41bの中央部からX2方向に向かって延びている。突部41pは、両巻回部21,22の間に介在されて、両巻回部21,22同士を区画すると共に、両巻回部21,22を位置決めする。本例の突部41pの形状は、底面および上面の幅が底面と上面との中間部の幅に比べて広いI字状である。突部41pの両側面は、各巻回部21,22の両側面に対応した円弧状の曲面を備えている。但し、突部41pの側面のうち、第二巻回部22を臨む面の上部、即ちZ1方向の領域は、平面を備えている。つまり、突部41pの上面の幅は底面の幅よりも小さい。この構成により、第二巻回部22の第三の巻線端部213を突部41pの上記平面に沿って並列して引き出すことができる。
【0075】
第一巻回部21の突部41pおよび第二巻回部22の突部42pは、互いに間隔をあけて配置されている。突部41pの底面および突部42pの底面は、Y1方向またはY2方向にずれることなく、X1方向またはX2方向に沿って並列されている。これに対して、突部41pの上面および突部42pの上面は、Y1方向およびY2方向にずれて、X1方向またはX2方向に沿って並列されている。
【0076】
スペーサ4は、絶縁性の材料によって構成されている。この材料は、例えばPPS樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂である。その他、スペーサ4の材料は、例えば不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、またはシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であっても良い。これらの樹脂にセラミックスフィラーが含有されていても良い。セラミックスフィラーは、例えばアルミナまたはシリカなどの非磁性粉末である。
【0077】
<コイル、外側コア部およびスペーサの表裏面>
上述したコイル2、外側コア部32およびスペーサ4の各々の上面同士および底面同士は、互いに面一である。そのため、リアクトル1の上面および底面の少なくとも一方を設置面とすることで、設置対象に対してコイル2、外側コア部32およびスペーサ4の全ての構成部材を面接触させることができ、効率的な放熱を行うことができる。特に、リアクトル1の上面および底面の双方を設置面とすれば、リアクトル1の表裏面から放熱を行うことができ、極めて高い放熱性を実現できる。このコイル2、外側コア部32およびスペーサ4の各々の上面同士および底面同士が面一であること、およびリアクトル1の上面および底面の少なくとも一方を設置面とすることで、効率的な放熱を行うことができることは、後述する実施形態2から実施形態4においても共通である。
【0078】
《実施形態2》
次に、実施形態1とは異なる実施形態2に係るリアクトル1を図5に基づいて説明する。実施形態2のリアクトル1は、第一の巻線端部211から第四の巻線端部214の全てを各外側コア部32の両端部から引き出す構成である。以下の説明は、主に実施形態1との相違点について行い、実施形態1との共通点については省略する。なお、図5において、第一スペーサ41のY1方向の端部には、図示しない第二切欠412が存在する。
【0079】
まず、実施形態2のリアクトル1は、コイル2の各巻線端部の引出位置が異なる。具体的には、実施形態2における第一の巻線端部211の引出位置は、実施形態1における第一の巻線端部211と同じである。第二の巻線端部212は、第一巻回部21をX1方向に見てY2方向かつZ2方向の角部から引き出され、X2方向に向かって延びている。実施形態2における第四の巻線端部214の引出位置は、実施形態1における第四の巻線端部214と同じである。第三の巻線端部213は、第二巻回部22をX2方向に見てY1方向かつZ2方向の角部から引き出され、X1方向に向かって延びている。
【0080】
このコイル2の形状に応じて、本例では、実施形態1における第二切欠322および第二切欠412は第一外側コア部32fのY1方向の端部に、実施形態1における第四切欠324および第四切欠414は第二外側コア部32sのY2方向の端部に設けられている。
【0081】
実施形態2に係るリアクトル1は、磁性コア3をZ2方向に見た際、各角部に相当する位置より第一の巻線端部211から第四の巻線端部214巻線端部の各々が引き出される。つまり、いずれの巻線端部211,212,213,214も互いの位置が離れており、各巻線端部211,212,213,214に対する端子の接続作業が行いやすい。
【0082】
《実施形態3》
次に、実施形態1とは異なる実施形態3に係るリアクトル1を図6から図9に基づいて説明する。実施形態3に係るリアクトル1は、図6に示すように、コイル2の形状が実施形態1とは異なり、それに伴って、スペーサ4の形状も実施形態1とは異なる。以下の説明は、主に実施形態1との相違点について行い、実施形態1との共通点については省略する。
【0083】
実施形態3に係るリアクトル1のコイル2は、図7に示すように、第一巻回部21と第二巻回部22とが連結部23によりつながれている。連結部23は、第一巻回部21および第二巻回部22の各々におけるX2方向の端面を構成するターン同士をつなぐZ字状の部位である。この連結部23は両巻回部21,22を構成する巻線の一部で形成されている。連結部23の途中には、接合部24が設けられている。接合部24は、第一巻回部21を構成する巻線と第二巻回部22を構成する巻線とを接合した箇所である。本例の接合部24は、第一巻回部21を構成する巻線と第二巻回部22を構成する巻線との端部同士を突き合わせて冷間圧接することにより構成されている。コイル2は、例えば、個々の巻回部21,22の大半を成形しておき、巻線の端部を冷間圧接した後、各巻回部21,22の残りを成形することで得られる。
【0084】
第一の巻線端部211は、第一巻回部21からX1方向に引き出されている。第二の巻線端部212は、第二巻回部22からX1方向に引き出されている。第一巻回部21をX2方向に見て、第一の巻線端部211は、第一巻回部21のY2方向でかつZ1方向の角部から引き出されている。第二巻回部22をX2方向に見て、第二の巻線端部212は、第二巻回部22のY2方向でかつZ1方向の角部から引き出されている。
【0085】
本例と異なり、コイル2は、第一の巻線端部211から第一巻回部21、連結部23、第二巻回部22、第二の巻線端部212に至るまでが一連の巻線で構成されてもよい。この場合、連結部23に接合部24は存在しない。
【0086】
磁性コア3および第一スペーサ41の構成は、図8および図9に示すように、実施形態1における磁性コア3および第一スペーサ41の構成と実質的に同一である。一方、第二スペーサ42は、図9に示すように、実施形態1における第二スペーサ42と構成が異なる。具体的には、第二スペーサ42の基部42bは、第一スペーサ41の基部41bが有する第一切欠411および第二切欠412に対応した切欠を有しない。また、第二スペーサ42の突部42pの形状は、第一スペーサ41の突部41pの形状と異なる。突部42pは、Z1方向に頂点を有する三角柱状の形状を有する。突部42pの底面の幅は突部41pの底面の幅と同一である。突部42pの高さは、突部41pの高さよりも低い。このような形状の突部42pを有することで、基部42bにおけるX1方向を臨む面において、連結部23を突部42pと干渉することなく配置することができる。
【0087】
そして、図6に示すように、第一の巻線端部211は、第一切欠321および第一切欠411から引き出され、第二の巻線端部212は、第二切欠322および第二切欠412から引き出される。
【0088】
《実施形態4》
次に、実施形態3と異なる実施形態4に係るリアクトル1を図10に基づいて説明する。実施形態4のリアクトル1は、第一の巻線端部211および第二の巻線端部212の各々を第一外側コア部32fの各端部から引き出す構成である。以下の説明は、主に実施形態3との相違点について行い、実施形態3との共通点については省略する。なお、図10において、第一スペーサ41のY1方向の端部には、図示しない第二切欠412が存在する。
【0089】
まず、実施形態4のリアクトル1は、コイル2の各巻線端部の引出位置が異なる。具体的には、実施形態4における第一の巻線端部211の引出位置は、実施形態3における第一の巻線端部211と同じである。第二の巻線端部212は、第二巻回部22をX2方向に見てY1方向かつZ2方向の角部から引き出され、X1方向に向かって延びている。
【0090】
このコイル2の形状に応じて、実施形態4における第二切欠322および第二切欠412は第一外側コア部32fのY1方向の端部に設けられている。
【0091】
実施形態4に係るリアクトル1は、磁性コア3をZ2方向に見た際、第一外側コア部32fの両端部に相当する位置より第一の巻線端部211および第二の巻線端部212が引き出される。つまり、いずれの巻線端部211,212も互いの位置が離れており、各巻線端部211,212に対する端子の接続作業が行いやすい。
【0092】
《実施形態5》
〔コンバータ・電力変換装置〕
実施形態1から実施形態4のリアクトル1は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態1から実施形態4のリアクトル1は、代表的には電気自動車、ハイブリッド自動車、または燃料電池自動車の車両1200に載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0093】
車両1200は、図11に示されるように、メインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータである。モータ1220は、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。図11では、車両1200の充電箇所がインレットである例が示されている。図示は省略されているものの、車両1200の充電箇所はプラグを備える形態とすることができる。
【0094】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されるインバータ1120とを有する。インバータ1120は、直流と交流との相互変換を行う。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220から出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電する。インバータ1120は、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0095】
コンバータ1110は、図12に示されるように、複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1から実施形態4のいずれかのリアクトル1を備える。このリアクトル1を備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は優れた性能を有する。
【0096】
車両1200は、コンバータ1110の他、図11に示すように、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150と、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160とを備える。補機電源用コンバータ1160は、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続される。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150および補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態1から実施形態4のリアクトル1と同様の構成を備え、適宜、大きさまたは形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータおよび降圧のみを行うコンバータに、実施形態1から実施形態4のリアクトル1を利用することもできる。
【0097】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0098】
各外側コア部に設けられる各切欠は、孔であってもよい。つまり、この明細書における切欠には孔を含む。例えば、外側コア部にX1方向またはX2方向に貫通する孔を設け、この孔の内部に各巻線端部を通してもよい。その場合、スペーサの基部から突部とは反対方向に延びる筒部を設けてもよい。その筒部の外周に外側コア部を成形し、筒部の内部に各巻線端部を通してもよい。
【0099】
各実施形態における巻線端部は、被覆平角線の長辺がY1方向またはY2方向に沿った向きとして引き出されているが、被覆平角線の長辺をZ1方向またはZ2方向に沿った向きとして引き出してもよい。その場合、引き出される巻線端部の向きに応じた切欠を外側コア部に設ければよい。
【0100】
磁性コアの形状は、O字状ではなく、θ字状であってもよい。θ字状の磁性コアは、一つのミドルコア部、二つのサイドコア部、および二つのエンドコア部を備える。ミドルコア部は、コイルの内側に配置される。サイドコア部の各々は、コイルの外側でミドルコア部と並列される。つまり、ミドルコア部は二つのサイドコア部の間に挟まれるように配置される。二つのエンドコア部の一つは、並列されたミドルコア部およびサイドコア部の第一の端部同士をつなぐ。残る一つのエンドコア部は、並列されたミドルコア部およびサイドコア部の第二の端部同士をつなぐ。換言すれば、θ字状の磁性コアは、二つのE型のコア片を一体に組み合わせたような形状である。これらミドルコア部、サイドコア部およびエンドコア部は、いずれも複合材料の成形体で一体に成形されている。コイルから引き出される各巻線端部は、いずれかのエンドコア部または双方のエンドコア部に設けられた切欠を通って引き出される。磁性コアがθ字状の場合、ミドルコア部が内側コア部、エンドコア部が外側コア部に相当する。
【符号の説明】
【0101】
1 リアクトル
2 コイル
21 第一巻回部
211 第一の巻線端部
212 第二の巻線端部
22 第二巻回部
213 第三の巻線端部
214 第四の巻線端部
23 連結部
24 接合部
3 磁性コア
31 内側コア部
31f 第一内側コア部
31s 第二内側コア部
31r 凹部
32 外側コア部
32f 第一外側コア部
321 第一切欠
322 第二切欠
32s 第二外側コア部
323 第三切欠
324 第四切欠
4 スペーサ
41 第一スペーサ
41b 基部
411 第一切欠
412 第二切欠
41r ガイド溝
41h 貫通孔
41p 突部
41g ガイド部
42 第二スペーサ
42b 基部
413 第三切欠
414 第四切欠
42r ガイド溝
41h 貫通孔
42p 突部
42g ガイド部
1100 電力変換装置
1110 コンバータ
1111 スイッチング素子
1112 駆動回路
1115 リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ
1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ
1220 モータ
1230 サブバッテリ
1240 補機類
1250 車輪
1300 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12