(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171666
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01H50/54 G
H01H50/54 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088803
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】安田 知広
(72)【発明者】
【氏名】栗田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宏
(57)【要約】
【課題】可動接触子の回転量が大きくなることを抑制する。
【解決手段】電磁継電器は、一対の固定接触子と、一対の固定接触子に対して第1方向(D1)に近接及び離間し、第1方向に延びる所定軸線(C1)を中心として回転し得る可動接触子(15)と、消弧室が形成されたハウジングと、可動接触子と共に回転する部材に接続され、第1方向に垂直な第2方向(D2)に突出する当接部材(31,36)と、ハウジングに接続され、当接部材の先端部(31a,36a)が挿入される凹部(42、47)が形成された被当接部材(41,46)と、を備える。当接部材の先端部の外面と凹部の内面との間にクリアランス(A)が設定されており、可動接触子が所定軸線を中心として回転した際に、凹部において当接部材に対して第1方向及び第2方向に垂直な第3方向(D3)に配置された内面に、当接部材の先端部の外面が当接して可動接触子の回転が規制される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で配置された一対の固定接触子(11,12)と、前記一対の固定接触子に対して第1方向(D1)に近接及び離間して前記一対の固定接触子の間を導通及び遮断し、前記第1方向に延びる所定軸線(C1)を中心として回転し得る可動接触子(15)と、前記一対の固定接触子と前記可動接触子との接触部を収納し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室(22,23)が形成されたハウジング(21)と、を備える電磁継電器(10)であって、
前記可動接触子と共に回転する部材(15,30)に接続され、前記第1方向に垂直な第2方向(D2)に突出する当接部材(31,36,131,136,231,236,331,336)と、
前記ハウジングに接続され、前記当接部材の先端部(31a,36a,131a,136a,231a,236a,331a,336a)が挿入される凹部(42,47,342,347)が形成された被当接部材(41,46,341,346)と、を備え、
前記当接部材の前記先端部の外面(31b,31c,331b,336b)と前記凹部の内面(42a,42b,42c,342a,342b,347a,347b)との間にクリアランス(A,B)が設定されており、
前記可動接触子が前記所定軸線を中心として回転した際に、前記凹部において前記当接部材に対して前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向(D3)に配置された内面(42a,42b,342a,342b,347a,347b)に、前記当接部材の前記先端部の前記外面(31b,331b,336b)が当接して前記可動接触子の回転が規制される、電磁継電器。
【請求項2】
前記可動接触子は長手方向を有する形状に形成され、
前記可動接触子における前記長手方向の両端部(15a,15b)が、前記一対の固定接触子に対してそれぞれ近接及び離間し、
前記長手方向に垂直であり且つ前記可動接触子における前記長手方向の中央を通る仮想平面(S2)が、前記被当接部材の前記凹部(42,47)を通過している、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記仮想平面は前記当接部材(31,36)を通過している、請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記可動接触子は長手方向を有する形状に形成され、
前記第1方向及び前記長手方向に垂直な前記可動接触子の短手方向において、前記短手方向に垂直であり且つ前記可動接触子における前記短手方向の中央を通る仮想平面(S1)が、前記被当接部材の前記凹部(342,347)を通過している、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記仮想平面は前記当接部材(331,336)を通過している、請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記当接部材及び前記被当接部材により構成される回転規制機構(40,45,340,345)は、前記可動接触子に対して両側に1つずつ設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、所定間隔を保って配置された一対の固定接触子と、一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子と、可動接触子の側縁と摺接して可動接触子の回転を規制する可動接触子ガイド部材と、を備える電磁継電器がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電磁継電器において、可動接触子と可動接触子ガイド部材との組付性、及びそれらの摺動を良好にするためには、可動接触子と可動接触子ガイド部材との間に最低限のクリアランスが必要になる。可動接触子(当接部材)と可動接触子ガイド部材(被当接部材)との間にクリアランスを設定した場合には、以下の問題が生じることに本願発明者らは着目した。すなわち、可動接触子が回転時に可動接触子ガイド部材に近付く方向と、クリアランスの幅方向との関係によって、可動接触子ガイド部材により回転が規制されるまでの可動接触子の回転量が大きくなるおそれがある。可動接触子の回転量が大きくなった場合は、消弧室のうち固定接触子と可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばすために利用可能な空間が小さくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、可動接触子の回転を規制する当接部材と被当接部材との間にクリアランスを設定した電磁継電器において、可動接触子の回転量が大きくなることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
所定間隔で配置された一対の固定接触子(11,12)と、前記一対の固定接触子に対して第1方向(D1)に近接及び離間して前記一対の固定接触子の間を導通及び遮断し、前記第1方向に延びる所定軸線(C1)を中心として回転し得る可動接触子(15)と、前記一対の固定接触子と前記可動接触子との接触部を収納し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室(22,23)が形成されたハウジング(21)と、を備える電磁継電器(10)であって、
前記可動接触子と共に回転する部材(15,30)に接続され、前記第1方向に垂直な第2方向(D2)に突出する当接部材(31,36,131,136,231,236,331,336)と、
前記ハウジングに接続され、前記当接部材の先端部(31a,36a,131a,136a,231a,236a,331a,336a)が挿入される凹部(42,47,342,347)が形成された被当接部材(41,46,341,346)と、を備え、
前記当接部材の前記先端部の外面(31b,31c,331b,336b)と前記凹部の内面(42a,42b,42c,342a,342b,347a,347b)との間にクリアランス(A,B)が設定されており、
前記可動接触子が前記所定軸線を中心として回転した際に、前記凹部において前記当接部材に対して前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向(D3)に配置された内面(42a,42b,342a,342b,347a,347b)に、前記当接部材の前記先端部の前記外面(31b,331b,336b)が当接して前記可動接触子の回転が規制される。
【0007】
上記構成によれば、一対の固定接触子は所定間隔で配置されている。可動接触子は、前記一対の固定接触子に対して第1方向に近接及び離間して、前記一対の固定接触子の間を導通及び遮断する。ハウジングは、前記一対の固定接触子と前記可動接触子との接触部を収納し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室が形成されている。可動接触子は、前記第1方向に延びる所定軸線を中心として回転し得る。このため、可動接触子の回転量が大きくなった場合は、消弧室のうち固定接触子と可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばすために利用可能な空間が小さくなるおそれがある。
【0008】
当接部材は、前記可動接触子と共に回転する部材に接続され、前記第1方向に垂直な第2方向に突出している。被当接部材は、前記ハウジングに接続され、前記当接部材の先端部が挿入される凹部が形成されている。このため、前記可動接触子が前記所定軸線を中心として回転した際に、前記凹部の内面に前記当接部材の前記先端部の外面が当接することにより、前記可動接触子の回転を規制することができる。さらに、前記当接部材の前記先端部の外面と前記凹部の内面との間にクリアランスが設定されている。このため、当接部材と被当接部材との組付性を良好にすることができる。
【0009】
ここで、前記可動接触子が前記所定軸線を中心として回転した際に、前記凹部において前記当接部材に対して前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向に配置された内面に、前記当接部材の前記先端部の前記外面が当接して前記可動接触子の回転が規制される。このため、前記可動接触子が前記所定軸線を中心として回転した際に、例えば当接部材に対して前記第2方向に配置された面に前記当接部材が当接する場合と比較して、当接部材が被当接部材に近付く方向とクリアランスの幅方向とを平行に近付けやすくなる。したがって、可動接触子の単位回転量当たりにおけるクリアランスの幅方向への当接部材の移動量を大きくすることができ、被当接部材に当接部材が当接して回転が規制されるまでの可動接触子の回転量が大きくなることを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記可動接触子は長手方向を有する形状に形成され、前記可動接触子における前記長手方向の両端部(15a,15b)が、前記一対の固定接触子に対してそれぞれ近接及び離間し、前記長手方向に垂直であり且つ前記可動接触子における前記長手方向の中央を通る仮想平面(S2)が、前記被当接部材の前記凹部(42,47)を通過している。
【0011】
上記構成によれば、前記可動接触子は長手方向を有する形状に形成され、前記可動接触子における前記長手方向の両端部が、前記一対の固定接触子に対してそれぞれ近接及び離間する。このため、アークは可動接触子における長手方向の両端部に生じることとなる。そして、前記長手方向に垂直であり且つ前記可動接触子における前記長手方向の中央を通る仮想平面が、前記被当接部材の前記凹部を通過している。このため、前記被当接部材の前記凹部は可動接触子の長手方向の両端部から離れた位置に配置され、その凹部に当接部材の先端部が挿入される。したがって、当接部材及び被当接部材がアークから影響を受けることを抑制することができる。
【0012】
第3の手段では、第2の手段を前提として、前記仮想平面は前記当接部材(31,36)を通過している。こうした構成によれば、可動接触子の長手方向の中央に当接部材を配置しやすくなり、可動接触子及び当接部材を含む形状を可動接触子の長手方向の中央に関して対称に近付けやすくなる。
【0013】
また、第4の手段のように、前記可動接触子は長手方向を有する形状に形成され、前記第1方向及び前記長手方向に垂直な前記可動接触子の短手方向において、前記短手方向に垂直であり且つ前記可動接触子における前記短手方向の中央を通る仮想平面(S1)が、前記被当接部材の前記凹部(342,347)を通過している、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、前記被当接部材の前記凹部は可動接触子の長手方向に配置され、その凹部に当接部材の先端部が挿入される。したがって、可動接触子の長手方向に当接部材を突出させることができ、可動接触子に当接部材を接続しやすくなる。
【0014】
第5の手段では、第4の手段を前提として、前記仮想平面は前記当接部材(331,336)を通過している。こうした構成によれば、可動接触子の短手方向の中央に当接部材を配置しやすくなり、可動接触子及び当接部材を含む形状を可動接触子の短手方向の中央に関して対称に近付けやすくなる。
【0015】
第6の手段では、前記当接部材及び前記被当接部材により構成される回転規制機構(40,45,340,345)は、前記可動接触子に対して両側に1つずつ設けられている。こうした構成によれば、一方の回転規制機構において被当接部材に当接部材が当接した後に、その当接位置を中心としてさらに可動接触子が回転することを、他方の回転規制機構により抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】可動接触子及び保持部材の回転量が小さい場合において消弧室のうちアークを引き伸ばすために利用可能な空間を示す平面図。
【
図3】可動接触子及び保持部材の回転量が大きい場合において消弧室のうちアークを引き伸ばすために利用可能な空間を示す平面図。
【
図4】比較例の電磁継電器における可動接触子の回り止め構造を示す平面図。
【
図5】
図4の可動接触子の回転が規制された状態を示す平面図。
【
図6】比較例の電磁継電器のクリアランスと回転角度との関係を示す平面図。
【
図9】クリアランスと回転角度との関係を示す平面図。
【
図10】可動接触子の回転規制機構の変更例を示す平面図。
【
図11】可動接触子の回転規制機構の他の変更例を示す平面図。
【
図12】可動接触子の回転規制機構の他の変更例を示す平面図。
【
図13】可動接触子の回転規制機構の他の変更例を示す平面図。
【
図14】可動接触子の回転規制機構の他の変更例を示す平面図。
【
図15】可動接触子の回転規制機構の他の変更例を拡大して示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ハイブリッド車両や電気自動車において電源とインバータとの間に接続される電磁継電器に具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、電磁継電器10は、磁気ヨーク74、プレート75、電磁コイル71、シャフト72、スプリング73、可動コア77、ハウジング21、可動接触子15、固定接触子11,12、絶縁部材85、スプリング86、保持部材30、第1磁石51、第2磁石52等を備えている。
【0019】
磁気ヨーク74は、側面視において「U」字状に形成されている。磁気ヨーク74の開放端には、プレート75が固定されている。磁気ヨーク74の底部の中央には、円筒状の補助ヨーク76が固定されている。補助ヨーク76の内部に、可動コア77が第1方向D1に往復動可能に収納されている。可動コア77及び補助ヨーク76の外周に電磁コイル71が設けられている。磁気ヨーク74、プレート75、補助ヨーク76、及び可動コア77により磁気回路が構成されている。スプリング73は、可動コア77をプレート75(ひいては固定接触子11,12)から離す方向へ付勢している。
【0020】
可動コア77には、円柱状のシャフト72が接続されている。シャフト72の中心軸線C1(所定軸線)は、第1方向D1に延びている。シャフト72は、プレート75を貫通している。シャフト72には、絶縁部材85及びスプリング86を介して可動接触子15が接続(連結)されている。可動接触子15(可動端子)は、導電性の材料により矩形板状に形成されている。すなわち、可動接触子15は、矩形の長辺の長さ方向に長手方向を有しており、矩形の短辺の長さ方向に短手方向を有している。保持部材30は、絶縁部材85に対して可動接触子15を保持している。保持部材30は、絶縁部材85に固定されている。保持部材30と可動接触子15とは摺動可能であり、保持部材30は可動接触子15の摺動をガイドする。
【0021】
ハウジング21(カプセル)は、絶縁性且つ透磁性の材料(例えば樹脂やセラミック)により、有底四角筒状に形成されている。ハウジング21の底部を貫通して、一対の固定接触子11,12が取り付けられている。固定接触子11,12(固定端子)は、導電性の材料により形成され、所定間隔で配置されている。固定接触子11,12の並ぶ方向と、可動接触子15の長手方向とが一致している。可動接触子15における長手方向の両端部15a,15bに、固定接触子11,12がそれぞれ対向している。ハウジング21は、固定接触子11,12及び可動接触子15の互いに対向する部分、すなわち固定接触子11,12と可動接触子15とが接触する部分である接触部(接点部)を収納している。
【0022】
電磁コイル71に電流が流れていない状態において、固定接触子11,12と可動接触子15とはスプリング73の付勢力により離間している。電磁コイル71に電流が流れると、可動コア77にプレート75(ひいては固定接触子11,12)へ近付ける方向の電磁力が作用する。これにより、シャフト72、絶縁部材85、及びスプリング86を介して可動コア77に接続された可動接触子15が、スプリング73の付勢力に抗して固定接触子11,12へ近付く方向へ移動して固定接触子11,12に接触する。このとき、可動接触子15は、スプリング86の付勢力により固定接触子11,12に押し付けられる。これにより、固定接触子11と固定接触子12とが、可動接触子15により導通させられる。すなわち、可動接触子15は、一対の固定接触子11,12に対して第1方向D1に近接及び離間して、一対の固定接触子11,12の間を導通及び遮断する。詳しくは、可動接触子15における長手方向の両端部15a,15bが、一対の固定接触子11,12に対してそれぞれ近接及び離間する。なお、保持部材30は、スプリング86が縮む際に可動接触子15をガイドする。
【0023】
固定接触子11,12と可動接触子15とが、接触した状態から離れた状態に移行する際に、固定接触子11,12と可動接触子15との間にアークが生じることがある。これに対して、ハウジング21の内部には、アークを引き伸ばして遮断するための空間である消弧室22,23が形成されている。消弧室22,23は、可動接触子15の短手方向において可動接触子15の側方(
図1では紙面に垂直な方向)に形成されている。第1磁石51は、固定接触子11と可動接触子15との間に生じたアークを、消弧室22の方向へ引き伸ばす磁力を作用させる。第2磁石52は、固定接触子12と可動接触子15との間に生じたアークを、消弧室23の方向へ引き伸ばす磁力を作用させる。
【0024】
可動接触子15及び保持部材30は、第1方向D1に往復動する際に、中心軸線C1を中心として回転するおそれがある(回転し得る)。
図2は、可動接触子15及び保持部材30の回転量が小さい場合において消弧室22のうちアークを引き伸ばすために利用可能な空間R1(実線の円)を示す平面図である。
図3は、可動接触子15及び保持部材30の回転量が大きい場合において消弧室22のうちアークを引き伸ばすために利用可能な空間R2(実線の円)を示す平面図である。なお、
図2,3では、可動接触子15及び保持部材30の回転量を誇張して示している。例えば、固定接触子11と可動接触子15との間に生じたアークは矢印の方向へ引き伸ばされる。このため、
図3に示すように可動接触子15及び保持部材30の回転量が大きい場合に利用可能な空間R2は、
図2に示すように可動接触子15及び保持部材30の回転量が小さい場合に利用可能な空間R1よりも小さくなる。したがって、可動接触子15及び保持部材30の回転量が大きくなると、消弧室22,23によりアークを遮断する効果が低下するおそれがある。なお、消弧室22,23を大きくした場合は、電磁継電器10の体格が拡大することが避けられない。これに対して、電磁継電器が、可動接触子及び保持部材の回転を止める回り止め構造を備えている場合がある。
【0025】
図4は、比較例の電磁継電器における可動接触子915及び保持部材930の回り止め構造を示す平面図である。比較例の電磁継電器は、可動接触子915及び保持部材930が中心軸線C1を中心として回転した際に、保持部材930の側部931,936がそれぞれ当接する被当接部材941,946を備えている。側部931,936は、可動接触子915に対して第1方向D1に垂直な第2方向D2(可動接触子915の短手方向)に突出して(張り出して)いる。側部931,936と被当接部材941,946との間には、クリアランスAがそれぞれ設定されている。クリアランスAの幅方向(設定方向)と、可動接触子915に対して側部931,936が突出する第2方向D2とが一致している。
【0026】
矢印で示すように可動接触子915が中心軸線C1を中心として回転すると、
図5に示すように被当接部材941,946に側部931,936がそれぞれ当接する。詳しくは、被当接部材941において第2方向D2のうち側部931側に配置された面941aに側部931が当接し、被当接部材946において第2方向D2のうち側部936側に配置された面946aに側部936が当接する。
【0027】
この際に、
図6に示すように、側部931の角部(第2方向D2の端部且つ第3方向D3の端部)は破線の円の周方向に移動し、可動接触子915は角度θ1だけ回転する。なお、第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2に垂直な方向である。このとき、側部931の角部が被当接部材941に近付く方向(破線の円に沿った方向)とクリアランスAの幅方向(設定方向)とは、大きく異なっている(平行に近くない状態になっている)。ここで、第1方向D1及び可動接触子915の長手方向に垂直な可動接触子915の短手方向(第2方向D2)において、短手方向に垂直であり且つ可動接触子915における短手方向の中央を通る面を仮想平面S1とする。仮想平面S1は、クリアランスAの幅方向(設定方向)における可動接触子15の中央を通り且つクリアランスAの幅方向に垂直な平面である。比較例の電磁継電器では、側部931における面941aに当接する当接点P1と仮想平面S1との距離X1が比較的長くなっている。距離X1が長いほど、可動接触子15が単位角度(単位回転量)だけ回転した際に当接点P1がクリアランスAの幅方向へ移動する距離が短くなる。このため、当接点P1が第2方向D2へクリアランスAだけ移動するまでに可動接触子915が回転する角度θ1が比較的大きくなる。
【0028】
そこで、
図7に示すように、本実施形態では、ピン31及び被当接部材41により構成される回転規制機構40と、ピン36及び被当接部材46により構成される回転規制機構45とを備えている。回転規制機構40,45は、可動接触子15に対して第2方向D2の両側にそれぞれ設けられている。なお、
図7以降の図において、クリアランスAを誇張して示している。
【0029】
ピン31,36(当接部材)は、可動接触子15又は保持部材30に、直接又は他の部材を介して取り付けられている。すなわち、ピン31,36は、可動接触子15と共に回転する部材に接続(連結)されている。ピン31,36(棒状部材)は、例えば絶縁材料により円柱状に形成され、可動接触子15に対して第1方向D1に垂直な第2方向D2(可動接触子15の短手方向)に突出している。なお、被当接部材41,46が絶縁材料により形成されていれば、ピン31,36が絶縁材料以外により形成されていてもよい。また、ピン31,36(当接部材)は、可動接触子15の一部、又は保持部材30の一部であってもよい。可動接触子15と共に回転する部材は、可動接触子15そのものでもよいし、可動接触子15と一体で(一体的に)回転する部材でもよい。
【0030】
被当接部材41,46は、上記ハウジング21の一部又はハウジング21に取り付けられた所定部材により形成されている、すなわちハウジング21に接続(連結)されている。被当接部材41,46は、例えば絶縁材料により、第1方向D1に延びるように形成されている。被当接部材41,46には、それぞれ凹部42,47が形成されている。凹部42,47は、一定断面形状で第1方向D1に延びており、断面形状は例えば矩形(矩形状)である。
【0031】
凹部42,47の内部に、ピン31,36の先端部31a,36aがそれぞれ挿入されている。ピン31,36と被当接部材41,46との間には、クリアランスがそれぞれ設定されている。詳しくは、
図8に示すように、ピン31の外周面31b(外面)と、凹部42の側面42a,42b(内面)との間にそれぞれクリアランスAが設定されている。ピン31の頂面31c(外面)と、凹部42の底面42c(内面)との間にクリアランスBが設定されている。例えば、クリアランスBの幅は、クリアランスAの幅よりも広い。クリアランスAの幅方向(設定方向)と、第1方向D1及び第2方向D2に垂直な第3方向D3とが一致している。なお、回転規制機構45も、回転規制機構40と同様の構成を備えている。
【0032】
可動接触子15が中心軸線C1を中心として回転すると、被当接部材41,46にピン31,36がそれぞれ当接する。詳しくは、被当接部材41の凹部42における側面42aにピン31が当接し、被当接部材46の凹部47における側面にピン36が当接する。すなわち、可動接触子15が中心軸線C1を中心として回転した際に、凹部42,47においてそれぞれピン31,36に対して第1方向D1及び第2方向D2に垂直な第3方向D3に配置された側面に、ピン31,36の先端部31a,36aの外周面(外面)がそれぞれ当接して可動接触子15の回転が規制される。
【0033】
この際に、
図9に示すように、ピン31は破線の円の周方向に移動し、可動接触子15は角度θ2だけ回転する。このとき、ピン31が被当接部材41に近付く方向(破線の円に沿った方向)とクリアランスAの幅方向(設定方向)とは、略等しくなっている(平行に近い状態になっている)。ここで、可動接触子15の長手方向(第3方向D3)に垂直であり且つ可動接触子15における長手方向の中央を通る面を仮想平面S2とする。仮想平面S2は、クリアランスAの幅方向(設定方向)における可動接触子15の中央を通り且つクリアランスAの幅方向に垂直な平面である。仮想平面S2は、被当接部材41,46の凹部42,47の中央を通過している。仮想平面S2は、ピン31,36の中心軸線を通過している。電磁継電器10では、ピン31における凹部42の側面42aに当接する当接点P2と仮想平面S2との距離X2が上記比較例の距離X1よりも短くなっている。距離X2が短いほど、可動接触子15が単位角度(単位回転量)だけ回転した際に当接点P2がクリアランスAの幅方向へ移動する距離が長くなる。このため、当接点P2が第3方向D3へクリアランスA(比較例のクリアランスAと同一)だけ移動するまでに可動接触子15が回転する角度θ2は、比較例の角度θ1よりも小さくなる。
【0034】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0035】
・ピン31,36は、可動接触子15と共に回転する保持部材30に接続され、第1方向D1に垂直な第2方向D2に突出している。被当接部材41,46は、ハウジング21に接続され、ピン31,36の先端部31a,36aがそれぞれ挿入される凹部42,47が形成されている。このため、可動接触子15が中心軸線C1を中心として回転した際に、凹部42の側面42a,42bにピン31の先端部31aの外周面31bが当接することにより、可動接触子15の回転を規制することができる。さらに、ピン31の先端部31aの外周面31bと凹部42の側面42a,42bとの間にクリアランスAが設定されている。このため、ピン31と被当接部材41との組付性を良好にすることができる。
【0036】
・可動接触子15が中心軸線C1を中心として回転した際に、凹部42においてピン31に対して第1方向D1及び第2方向D2に垂直な第3方向D3に配置された側面42a,42bに、ピン31の先端部31aの外周面31bが当接して可動接触子15の回転が規制される。このため、可動接触子15が中心軸線C1を中心として回転した際に、ピン31,36に対して第2方向D2に配置された面941a,946aに保持部材930の側部931,936がそれぞれ当接する比較例と比較して、ピン31,36がそれぞれ被当接部材41,46に近付く方向とクリアランスAの幅方向とを平行に近付けやすくなる。したがって、可動接触子15の単位回転量当たりにおけるクリアランスAの幅方向へのピン31,36の移動量を大きくすることができ、被当接部材41,46にそれぞれピン31,36が当接して回転が規制されるまでの可動接触子15の回転量が大きくなることを抑制することができる。
【0037】
・可動接触子15は長手方向を有する矩形板状に形成され、可動接触子15における長手方向の両端部15a,15bが、一対の固定接触子11,12に対してそれぞれ近接及び離間する。このため、アークは可動接触子15における長手方向の両端部15a,15bに生じることとなる。そして、長手方向に垂直であり且つ可動接触子15における長手方向の中央を通る仮想平面S2が、被当接部材41,46の凹部42,47を通過している。このため、被当接部材41,46の凹部42,47は可動接触子15の長手方向の両端部15a,15bから離れた位置に配置され、その凹部42,47にピン31,36の先端部31a,36aが挿入される。したがって、ピン31,36及び被当接部材41,46がアークから影響を受けることを抑制することができる。
【0038】
・仮想平面S2はピン31,36を通過している。こうした構成によれば、可動接触子15の長手方向の中央にピン31,36を配置しやすくなり、可動接触子15及びピン31,36を含む形状を可動接触子15の長手方向の中央に関して対称に近付けやすくなる。詳しくは、仮想平面S2はピン31,36の中心軸線をそれぞれ通過している。こうした構成によれば、可動接触子15の長手方向の中央にピン31,36を配置することができ、可動接触子15及びピン31,36を含む形状を可動接触子15の長手方向の中央に関して対称にすることができる。
【0039】
・ピン31及び被当接部材41により構成される回転規制機構40と、ピン36及び被当接部材46により構成される回転規制機構45は、可動接触子15に対して第2方向D2の両側にそれぞれ設けられている。こうした構成によれば、例えば回転規制機構40において被当接部材41にピン31が当接した後に、その当接位置を中心としてさらに可動接触子15が回転することを、回転規制機構45により抑制することができる。
【0040】
・可動接触子15に接続されたピン31,36と被当接部材41,46とにより、可動接触子15の回転を規制する。このため、可動コア77から可動接触子15まで接続する部材の回転を規制することで可動接触子15の回転を規制する場合と比較して、アークの起点となる可動接触子15自体の回転を確実に規制することができる。
【0041】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0042】
・
図10に示すように、仮想平面S2が、ピン31,36における中心軸線から外れた位置を通過している構成を採用することもできる。仮想平面S2は、被当接部材41,46の凹部42,47の中央を通過している。
【0043】
・
図11に示すように、仮想平面S2が、ピン31,36を通過していない構成を採用することもできる。仮想平面S2は、被当接部材41,46の凹部42,47の中央を通過している。
【0044】
・ピン31,36(当接部材)は、円柱状に限らず、四角柱状や平板状に形成されていてもよい。
【0045】
・
図12に示すように、屈曲部を有する柱状又は屈曲部を有する板状に形成された当接部材131,136を採用することもできる。この場合であっても、当接部材131,136は可動接触子15に対して第2方向D2に突出している。そして、当接部材131,136の先端部131a,136aが、被当接部材41,46の凹部42,47に挿入されていればよい。
【0046】
・
図13に示すように、可動接触子15から仮想平面S2に斜めに延びる柱状又は斜めに延びる板状に形成された当接部材231,236を採用することもできる。この場合であっても、当接部材231,236は可動接触子15に対して第2方向D2に突出している。そして、当接部材231,236の先端部231a,236aが、被当接部材41,46の凹部42,47に挿入されていればよい。
【0047】
・仮想平面S2が、被当接部材41,46の凹部42,47における中央から外れた位置を通過している構成を採用することもできる。
【0048】
・
図14に示すように、電磁継電器10は、ピン331及び被当接部材341により構成される回転規制機構340と、ピン336及び被当接部材346により構成される回転規制機構345とを備えていてもよい。回転規制機構340,345は、可動接触子15に対して第3方向D3の両側にそれぞれ設けられている。ピン331,336(当接部材)は、可動接触子15に接続され、第3方向D3に突出している。被当接部材341,346は、被当接部材41,46と同一の形状であり、可動接触子15に対して第3方向D3の両側にそれぞれ配置されている。被当接部材341,346の凹部342,347にピン331,336の先端部331a,336aがそれぞれ挿入されている。ピン331,336の先端部331a,336aの外周面331b,336b(外面)と凹部342,347の側面342a,342b,347a,347bとの間に、それぞれクリアランスAが設定されている。第1方向D1及び可動接触子15の長手方向(第3方向D3)に垂直な可動接触子15の短手方向(第2方向D2)において、短手方向に垂直であり且つ可動接触子15における短手方向の中央を通る仮想平面S1が、被当接部材341,346の凹部342,347の中央を通過している。仮想平面S1はピン331,336の中心軸線を通過している。
【0049】
上記構成によれば、可動接触子15が中心軸線C1を中心として回転した際に、凹部342,347においてピン331,336に対して第2方向D2に配置された側面342a,342b,347a,347bに、ピン331,336の先端部331a,336aの外周面331b,336bが当接して可動接触子15の回転が規制される。このため、ピン331,336がそれぞれ被当接部材341,346に近付く方向とクリアランスAの幅方向(設定方向)とを平行に近付けやすくなる。したがって、可動接触子15の単位回転量当たりにおけるクリアランスAの幅方向へのピン331,336の移動量を大きくすることができ、被当接部材341,346にそれぞれピン331,336が当接して回転が規制されるまでの可動接触子15の回転量が大きくなることを抑制することができる。また、被当接部材341,346の凹部342,347は可動接触子15の長手方向に配置され、その凹部342,347にピン331,336の先端部331a,336aが挿入されている。したがって、可動接触子15の長手方向にピン331,336を突出させることができ、可動接触子15にピン331,336を接続しやすくなる。さらに、可動接触子15の短手方向の中央にピン331,336を配置することができ、可動接触子15及び3ピン31,336を含む形状を可動接触子15の短手方向の中央に関して対称にすることができる。
【0050】
なお、仮想平面S1が、ピン331,336における中心軸線から外れた位置を通過している構成を採用することもできる。仮想平面S1が、ピン331,336を通過していない構成を採用することもできる。仮想平面S1が、被当接部材341,346の凹部342,347における中央から外れた位置を通過している構成を採用することもできる。これらの場合であっても、ピン331,336の先端部331a,336aが、被当接部材341,346の凹部342,347に挿入されていればよい。
【0051】
・
図15に示すように、ピン31の先端部31aにおいて凹部42の底面42c側の部分(先端面)が丸く(曲面に)なっていてもよい。その場合であっても、当接点P2が凹部42の側面42a(内面)に当接する構成であれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、当接点P2及び側面42aが衝突により損傷することを抑制することができる。なお、クリアランスAの幅よりも、クリアランスBの幅が狭くなっていてもよい。また、他のピン36,331,336等においても、同様の構成を採用することできる。
【0052】
・電磁継電器10は回転規制機構40,45の一方のみを備えていてもよい。また、電磁継電器10は回転規制機構340,345の一方のみを備えていてもよい。
【0053】
・被当接部材41,46,341,346の凹部42,47,342,347は、一定断面形状で第1方向D1に延びる形状に限らず、一定断面形状で第2方向D2に延びる形状であってもよい。その場合に、凹部の断面形状は、矩形に限らず、円形等であってもよい。
【0054】
・可動接触子15は、矩形板状に限らず、多角形板状や楕円板状(長手方向を有する形状)であってもよい。また、可動接触子15は、板状に限らず、棒状や柱状(長手方向を有する形状)であってもよい。
【0055】
なお、上記実施形態及びその変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10…電磁継電器、11…固定接触子、12…固定接触子、15…可動接触子、21…ハウジング、22…消弧室、23…消弧室、31…ピン、31a…先端部、31b…外周面、36…ピン、36a…先端部、41…被当接部材、42…凹部、42a…側面、42b…側面、46…被当接部材、47…凹部、131…当接部材、131a…先端部、136…当接部材、136a…先端部、231…当接部材、231a…先端部、236…当接部材、236a…先端部、331…ピン、331a…先端部、331b…外周面、336…ピン、336a…先端部、336b…外周面、341…被当接部材、342…凹部、342a…側面、342b…側面、346…被当接部材、347…凹部、347a…側面、347b…側面、A…クリアランス、C1…中心軸線、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向。