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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017167
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】回転機械用ディスク、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/02 20060101AFI20240201BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240201BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F01D5/02
F01D25/00 L
F01D25/00 F
F02C7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119636
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】菱川 遼悟
(72)【発明者】
【氏名】竹田 敏広
(72)【発明者】
【氏名】永井 友人
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202AA02
3G202AA11
(57)【要約】
【課題】低廉かつ簡素で、より軽量な構造を有する回転機械用ディスク、及び回転機械を提供する。
【解決手段】回転機械用ディスクは、軸線を中心とする環状をなし、軸線に対する径方向内側の部分を形成し、相対的に密度が高く、かつ剛性が高い第一の材料で形成された内径側部材と、内径側部材の径方向外側に結合され、相対的に密度が低く、かつ剛性が高い第二の材料で形成された外径側部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とする環状をなし、前記軸線に対する径方向内側の部分を形成し、相対的に密度が高く、かつ剛性が高い第一の材料で形成された内径側部材と、
該内径側部材の径方向外側に結合され、相対的に密度が低く、かつ剛性が高い第二の材料で形成された外径側部材と、
を備える回転機械用ディスク。
【請求項2】
前記第一の材料は金属材料であり、前記第二の材料は、繊維材、及び該繊維材に含侵された基材を有する複合材料である請求項1に記載の回転機械用ディスク。
【請求項3】
前記内径側部材のさらに径方向内側に結合され、少なくとも径方向及び周方向に延びる複数の梁を有する内径側ラティス構造体をさらに備える請求項1又は2に記載の回転機械用ディスク。
【請求項4】
前記内径側部材と前記外径側部材とを結合する結合部をさらに有し、
該結合部は、少なくとも径方向及び周方向に延びる複数の梁を有し、前記内径側部材に一体に結合された中間ラティス構造体と、
前記外径側部材を形成する前記複合材料の前記基材で形成され、前記中間ラティス構造体の空隙を埋める結合用基材と、
を有する請求項2に記載の回転機械用ディスク。
【請求項5】
軸線を中心とする環状をなし、前記軸線に対する径方向内側の部分を形成し、相対的に密度が低く、かつ剛性が低い第三の材料で形成された内径側部材と、
径方向外側の部分を形成し、相対的に密度が高く、かつ剛性が高い第四の材料で形成された外径側部材と、
を備える回転機械用ディスク。
【請求項6】
前記第三の材料は、少なくとも径方向及び周方向に延びる複数の梁を有するラティス構造体であり、前記第四の材料は、中実の金属材料である請求項5に記載の回転機械用ディスク。
【請求項7】
請求項1に記載の回転機械用ディスクと、
該回転機械用ディスクから径方向外側に向かって延びるとともに周方向に配列された複数のブレードと、
該ブレードを外周側から覆うケーシングと、
を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械用ディスク、及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械の一種であるターボファンエンジンは、ターボファンと、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、を備えている。このうち、ターボファンのファンブレード、圧縮機の動翼、及びタービンの動翼は、軸線に沿って延びるシャフトに結合されており、当該シャフトとともに軸線回りに回転する。ターボファンは、シャフトに対して、ディスクと呼ばれる部材を介して結合されている。ディスクは、軸線を中心とする環状をなしている。
【0003】
ファンブレードをディスクに結合するための技術として、例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。この技術では、ファンブレードに相当する第一の部材の基端、及びディスクに相当する第二の部材の外周面に、互いに噛み合う複数の突起が三次元積層造形によって形成されている。これにより、第一の部材が第二の部材に対して結合されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-82773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように三次元積層造形を用いて形成された複雑な構造物によって部材同士を機械的に結合する場合、結合個所に要する部材により軽量化が妨げられる虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より軽量な構造を有する回転機械用ディスク、及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械用ディスクは、軸線を中心とする環状をなし、前記軸線に対する径方向内側の部分を形成し、密度が高く、かつ剛性が高い第一の材料で形成された内径側部材と、該内径側部材の径方向外側に結合され、密度が低く、かつ剛性が高い第二の材料で形成された外径側部材と、を備える。
【0008】
本開示に係る回転機械用ディスクは、軸線を中心とする環状をなし、前記軸線に対する径方向内側の部分を形成し、密度が低く、かつ剛性が低い第三の材料で形成された内径側部材と、径方向外側の部分を形成し、密度が高く、かつ剛性が高い第四の材料で形成された外径側部材と、を備える。
【0009】
本開示に係る回転機械は、上記の回転機械用ディスクと、該ディスクから径方向外側に向かって延びるとともに周方向に配列された複数のブレードと、該ブレードを外周側から覆うケーシングと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、より軽量な構造を有する回転機械用ディスク、及び回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第一実施形態に係る回転機械としてのターボファンエンジンの構成を示す模式断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るファンブレードとディスクの構成を示す断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るディスクの断面図であって、図2のIII-III線における断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係るディスクの断面図である。
図5】本開示の第三実施形態に係るディスクの断面図である。
図6】本開示の第三実施形態に係るディスクを軸線方向から見た断面図である。
図7】本開示の第三実施形態に係るディスクの第一変形例を示す軸線方向の断面図である。
図8】本開示の第三実施形態に係るディスクの第二変形例を示す軸線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る回転機械としてのターボファンエンジン1、及び回転機械用ディスク41としてのディスク41の構成について、図1から図3を参照して説明する。
【0013】
(ターボファンエンジンの構成)
ターボファンエンジン1は、例えば航空機に取り付けられて推力装置としての機能を果たす。図1に示すように、ターボファンエンジン1は、圧縮機10と、燃焼器20と、タービン30と、ターボファン40と、ダクト50と、を備えている。
【0014】
圧縮機10は、外部の空気を圧縮して高圧の圧縮空気を生成する。圧縮機10は、圧縮機ロータ11と、圧縮機動翼12と、圧縮機ケーシング13と、圧縮機静翼14と、を有している。圧縮機ロータ11は、軸線Oに沿って延びる柱状をなしている。圧縮機ロータ11は、不図示の軸受装置によって、軸線O回りに回転可能に支持されている。圧縮機ロータ11の外周面には、径方向外側に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼12が設けられている。圧縮機動翼12の列は、軸線O方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0015】
圧縮機ケーシング13は、圧縮機ロータ11、及び圧縮機動翼12を外周側から覆う筒状をなしている。圧縮機ケーシング13の内周面には、径方向内側に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼14が設けられている。圧縮機静翼14の列は軸線O方向に間隔をあけて複数設けられている。また、圧縮機静翼14の列と、圧縮機動翼12の列は軸線O方向に交互になるように配列されている。圧縮機ケーシング13には、軸線O方向一方側から流れてくる空気を取り込むための吸気口15が設けられている。以下の説明では、この吸気口15から空気が流れ去る方向を下流側と呼び、その反対側を上流側と呼ぶ。
【0016】
燃焼器20は、圧縮機ケーシング13の下流側に設けられている。燃焼器20は、圧縮機10が生成した圧縮空気に燃料を混合して燃焼させることで、高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼器20は、圧縮機ケーシング13と、タービンケーシング33(後述)の間に設けられている。詳しくは図示しないが、燃焼器20としてはアニュラー型やカン型、カニュラー型のものが好適に用いられる。
【0017】
タービン30は、燃焼器20が生成した燃焼ガスによって回転駆動されることで、下流側に向かって空気を圧送して推力の少なくとも一部を発生させる。タービン30は、タービンロータ31と、タービン動翼32と、タービンケーシング33と、タービン静翼34と、を有する。タービンロータ31は、軸線Oに沿って延びる柱状をなしている。つまり、タービンロータ31は、上述の圧縮機ロータ11と同軸上に配置されている。タービンロータ31の外周面には、径方向外側に向かって延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼32が設けられている。タービン動翼32の列は、軸線O方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0018】
タービンケーシング33は、タービンロータ31、及びタービン動翼32を外周側から覆う筒状をなしている。タービンケーシング33の内周面には、径方向内側に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼34が設けられている。タービン静翼34の列は軸線O方向に間隔をあけて複数設けられている。また、タービン静翼34の列と、タービン動翼32の列は軸線O方向に交互になるように配列されている。タービンケーシング33の下流側には、タービン30が圧送した排気を下流側に向かって排出するための排気口35が形成されている。
【0019】
圧縮機ロータ11とタービンロータ31とは、軸線O上で同軸に接続されることで、ロータ61を形成する。圧縮機ケーシング13とタービンケーシング33とは、軸線Oを中心として一体に接続されることで、ケーシング62を形成する。つまり、ロータ61は、ケーシング62の内部で軸線O回りに回転可能である。
【0020】
ターボファン40は、ロータ61の上流側の端部に取り付けられている。ターボファン40は、上述のケーシング62の内側の領域と、ケーシング62の外側の領域(後述するダクト50で区画されるバイパス流路F)に空気を供給するために設けられている。ターボファン40は、ロータ61の先端に固定されたディスク41と、ディスク41の外周面から径方向外側に向かって延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のファンブレード42と、を有する。
【0021】
ディスク41は、軸線Oを中心とする環状をなしている。図2に示すように、ディスク41は、軸線Oを中心とする円筒状をなすディスク本体43と、ディスク本体43から径方向内側に向かって突出するとともに軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のリブ44と、を有する。これらリブ44のうちの1つが上記のロータ61に固定されることで、ディスク41はロータ61とともに軸線O回りに回転する。ファンブレード42は、ディスク本体43の外周面に取り付けられている。ファンブレード42は、例えばCFRPやGFRP等の複合材料で形成されている。また、ファンブレード42の外径は、ケーシング62の外径よりも大きく設定されている。
【0022】
ダクト50は、ファンブレード42、及びケーシング62を外周側から覆っている。ダクト50は、軸線Oを中心とする筒状をなしている。ダクト50の内側に形成される空間のうち、ダクト50の内周面とケーシング62の外周面との間に形成される空間は、バイパス流路Fとされている。
【0023】
ターボファンエンジン1を駆動するに当たっては、ロータ61を電動機等で軸線O回りに回転駆動する。すると、圧縮機10が圧縮空気を生成し、燃焼器20に送る。燃焼器20は、圧縮空気に燃料を混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスがタービン動翼32に接触することで、当該タービン動翼32を介してロータ61に軸線O回りの回転力が与えられる。この回転力は、ロータ61を通じて圧縮機10にも伝えられ、当該圧縮機10の駆動力ともなる。また、ターボファン40もロータ61と一体となって回転駆動されることで、バイパス流路F、及び圧縮機10に外部の空気を送り込む。このようなサイクルが連続的に生じることで、ターボファンエンジン1が運転される。
【0024】
(ディスクの構成)
次いで、図3を参照してディスク41の詳細な構成について説明する。このディスク41は、内径側部材71と、外径側部材72と、ジョイント73と、を有する。内径側部材71は、環状をなすディスク41の径方向内側の部分を形成している。具体的には、内径側部材71は、ディスク41の径方向寸法の10%~70%を占めている。さらに望ましくは、内径側部材71は、ディスク41の径方向寸法の10%~50%を占めている。内径側部材71は第一の材料81によって形成されている。第一の材料81として具体的には、アルミ合金等の中実の金属材料が用いられる。つまり、第一の材料81は、密度が高く、かつ剛性が高い。
【0025】
外径側部材72は、内径側部材71の外周側にジョイント73を介して結合されている。外径側部材72は、ディスク41の径方向外側の部分を形成している。外径側部材72は、ディスク41の径方向寸法の30%~90%を占めている。さらに望ましくは、外径側部材72は、ディスク41の径方向寸法の50%~90%を占めている。外径側部材72は、第二の材料82によって形成されている。第二の材料82は、複合材料である。より具体的には、第二の材料82としては、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fibre Reinforced Plastics)や、ガラス繊維強化樹脂(GFRP:Glass Fibre Reinforced Plastics)、及びセラミックス複合材料(CMC:Ceramics Matrix Composite)が好適に用いられる。つまり、この第二の材料82では、炭素繊維やガラス繊維に基材となる樹脂を含侵硬化させた複合材料が用いられる。なお、その他の複合材料を第二の材料82として用いることも可能である。第二の材料82は、第一の材料81に比して密度が低い一方で、剛性は第一の材料81と同程度に高い。
【0026】
ジョイント73は、内径側部材71と外径側部材72とを結合している。ジョイント73して具体的には、溶着接合による接合部、摩擦重ね接合による接合部、及びナノモールディング接合による接合部が挙げられる。
【0027】
(作用効果)
ここで、航空機用エンジンとして用いられるターボファンエンジン1では、航続性能や燃料消費率の向上と、信頼性の向上とを両立するために、各部材の軽量化と高強度化とが要請される。しかしながら、上述したディスク41のような回転駆動される環状の部材では、内周側になるほど周方向応力が大きく、外周側になるほど周方向応力が小さくなる傾向にある。
【0028】
上記構成によれば、回転力が加わった際により大きな周方向応力が発生する径方向内側の部分が、高密度で高剛性、及び高強度信頼性を有する第一の材料81で形成されている。これにより、当該周方向応力に対して十分に抗することができる。一方で、周方向応力が相対的に小さい径方向外側の部分は、低密度かつ高剛性を有する第二の材料82で形成されている。これにより、径方向に密度の勾配が形成されることで、径方向位置に応じて必要十分な強度を持たせることが可能となる。したがって、例えばディスク41を一の材料によって一体に形成した場合に比べて、不必要に強度が高く、重量が過大となっていた部分を削減することができる。その結果、ディスク41全体としての必要な強度を維持しつつも十分な軽量化を図ることができる。さらに、部品点数を増やすことなく、上記のような剛性の確保と軽量化とを実現できることから、追加の部品使用による重量増加や故障リスク増加の可能性も低減することができる。
【0029】
さらに、上記構成によれば、径方向内側の第一の材料81としてアルミ合金等の金属材料を用いることで容易に必要強度を確保しつつも、径方向外側の第二の材料82として複合材料を用いることで、低密度化、つまり、軽量化を容易に図ることができる。これにより、当該外径側部材72に起因する遠心力を低減することができるため、重畳的に内径側部材71に加わる負荷を低減することもできる。したがって、ディスク41の信頼性をさらに高めることができる。また、複合材料は強度剛性が高いことに加えて、振動特性にも優れることから、ディスク41全体としての振動軽減も実現することが可能となる。加えて、繊維材の配向性を変えることで、複合材料に異方性を持たせることができるため、必要な応力裕度を確保しつつも最大限まで軽量化を図ることができる。つまり、外径側部材72の内部でも密度勾配を精緻にコントロールすることが可能となる。これにより、強度設計が最適化され、さらなる軽量化を実現することができる。
【0030】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0031】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、図4を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図4に示すように、本実施形態に係るディスク41は、第一実施形態で説明した内径側部材71、及び外径側部材72に加えて、内径側ラティス構造体74と、結合部75と、をさらに有する。
【0032】
内径側ラティス構造体74は、内径側部材71のさらに径方向内側に設けられている。内径側ラティス構造体74は、少なくとも周方向、及び径方向に延びる複数の梁を有する。これら梁の端部同士が接続されることで、ラティス構造が形成されている。内径側ラティス構造体74は、低密度であることから、内径側部材71を形成する中実の金属材料に比べて軽量である。また、内径側ラティス構造体74は、内径側部材71に比べて剛性も低い。さらに、この内径側ラティス構造体74は、三次元積層造形によって内径側部材71と一体に形成されることが望ましい。
【0033】
結合部75は、内径側部材71と外径側部材72とを径方向に結合するために設けられている。結合部75は、中間ラティス構造体91と、結合用基材92と、を有する。中間ラティス構造体91は、上述した内径側ラティス構造体74と同様の構成を有する。中間ラティス構造体91は、内径側部材71の外周面に一体に形成されている。中間ラティス構造体91の形成には、三次元積層造形が好適に用いられる。結合用基材92は、外径側部材72を形成する複合材料のうち、繊維に含侵される基材のみからなる部材である。つまり、中間ラティス構造体91の梁同士の間に形成される空隙に、基材を含侵することによって、これら中間ラティス構造体91と結合用基材92とが結合されている。
【0034】
(作用効果)
上記構成によれば、低密度かつ低剛性の内径側ラティス構造体74を有することによって、回転力を加えた場合に、当該内径側ラティス構造体74は優先的に変形しようとする。このため、内径側ラティス構造体74が負担する周方向応力が小さくなる。これにより、径方向における周方向応力の分布が均一化される。その結果、例えばディスク41を一の材料によって一体に形成した場合に比べて、不必要に強度剛性が高く、重量が過大となっていた部分を削減することができる。これにより、ディスク41全体の軽量化を図ることが可能となる。
【0035】
さらに、上記構成によれば、内径側部材71と外径側部材72とは結合部75によって結合される。結合部75は、内径側部材71に一体に形成された中間ラティス構造体91と、この中間ラティス構造体91に含侵された複合材料の一部の基材とによって構成される。これにより、他の機械的な接合方法を採った場合に比べて、内径側部材71と外径側部材72とをより強固に結合することが可能となる。また、結合の信頼性が高いことから、点検頻度を減らすこともできる。これにより、メンテナンスコストの削減も実現することが可能となる。
【0036】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0037】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、図5図6を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図5又は図6に示すように、本実施形態に係るディスク41では、内径側部材71、及び外径側部材72を形成する材料が上記の各実施形態とは異なっている。
【0038】
内径側部材71は、第三の材料83によって形成されている。第三の材料83は、ラティス構造体76である。ラティス構造体76は、上述した内径側ラティス構造体74と同様の構成を有している。つまり、ラティス構造体76は、少なくとも周方向、及び径方向に延びる複数の梁を有している。外径側部材72は、第四の材料84によって形成されている。第四の材料84は、具体的には、アルミ合金等の中実の金属材料である。したがって、第三の材料83は、第四の材料84に比べて相対的に密度が低く、かつ剛性が低い。反対に第四の材料84は、第三の材料83に比べて相対的に密度が高く、かつ剛性が高い。これら内径側部材71と外径側部材72は、同一の材料で一体に形成されている。つまり、第三の材料83、及び第四の材料84は同一の材料(上記のアルミ合金等)によって形成されている。内径側部材71、及び外径側部材72を作成するに当たっては、三次元積層造形を用いることが望ましい。なお、内径側部材71と外径側部材72を異なる材料で形成することも可能である。
【0039】
(作用効果)
上記構成によれば、低密度かつ低剛性の第三の材料83で形成された内径側部材71を有することによって、回転力を加えた場合に、当該内径側部材71は優先的に変形しようとする。このため、内径側部材71が負担する周方向応力が小さくなる。これにより、径方向における周方向応力の分布が均一化される。その結果、例えばディスク41を一の材料によって一体に形成した場合に比べて、不必要に強度剛性が高く、重量が過大となっていた部分を削減することができる。これにより、ディスク41全体の軽量化を図ることが可能となる。
【0040】
さらに、上記構成によれば、第三の材料83としてラティス構造体76を用いることによって、複数の梁によって多数の空隙が形成されるため、内径側部材71の低密度化と低剛性化を容易に実現することができる。これにより、内径側部材71の軽量化を図ることができる。また、第四の材料84として中実の金属材料を用いることによって、内径側部材71に比べて、外径側部材72の高密度化と高剛性化を容易に実現することができる。
【0041】
以上、本開示に第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0042】
例えば、第一変形例として図7に示すように、ラティス構造体76の梁の延びる方向を変更することが可能である。同図の例では、一の梁が、径方向に延びるとともに径方向の中央部で周方向に凸となるように湾曲した形状を有している。このような梁が周方向に連続し、かつ互いに接続されるように配置されることでラティス構造体76が形成されている。このような構成によっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
また、図8に第二変形例として示すように、ラティス構造体76の一部の梁の太さ(径)を変えることも可能である。同図の例では、径方向に延びる梁(径方向梁101)の太さが、周方向に延びる梁(周方向梁102)の太さよりも大きくなっている。このように、方向に応じて梁の太さを違えることによって、ラティス構造体76の構造強度に異方性を持たせることができる。つまり、ラティス構造体76の応力分布を恣意的に変化させ、適正化することが可能となる。これにより、ディスク41の強度設計をさらに最適化することができる。
【0044】
<付記>
各実施形態に記載の回転機械用ディスク41、及び回転機械は、例えば以下のように把握される。
【0045】
(1)第1の態様に係る回転機械用ディスク41は、軸線Oを中心とする環状をなし、前記軸線Oに対する径方向内側の部分を形成し、相対的に密度が高く、かつ剛性が高い第一の材料81で形成された内径側部材71と、該内径側部材71の径方向外側に結合され、相対的に密度が低く、かつ剛性が高い第二の材料82で形成された外径側部材72と、を備える。
【0046】
上記構成によれば、回転力が加わった際により大きな周方向応力が発生する径方向内側の部分が、高密度で、かつ高剛性と高強度信頼性を有する第一の材料81で形成されている。これにより、当該周方向応力に対して十分に抗することができる。一方で、周方向応力が相対的に小さい径方向外側の部分は、低密度かつ高剛性を有する第二の材料82で形成されている。これにより、剛性を維持しつつも軽量化を図ることができる。
【0047】
(2)第2の態様に係る回転機械用ディスク41は、(1)の回転機械用ディスク41であって、前記第一の材料81は金属材料であり、前記第二の材料82は、繊維材、及び該繊維材に含侵された基材を有する複合材料である。
【0048】
上記構成によれば、径方向内側の第一の材料81として金属材料を用いることで高剛性を確保しつつも、径方向外側の第二の材料82として複合材料を用いることで、低密度化、つまり、軽量化を図ることができる。また、複合材料は振動特性に優れることから、回転機械用ディスク41全体としての振動軽減も実現することが可能となる。加えて、繊維材の配向性を変えることで、複合材料に異方性を持たせることができるため、必要な応力裕度を確保しつつも最大限まで軽量化を図ることができる。
【0049】
(3)第3の態様に係る回転機械用ディスク41は、(1)又は(2)の回転機械用ディスク41であって、前記内径側部材71のさらに径方向内側に結合され、少なくとも径方向及び周方向に延びる複数の梁を有する内径側ラティス構造体74をさらに備える。
【0050】
上記構成によれば、低密度かつ低剛性の内径側ラティス構造体74を有することによって、回転力を加えた場合に、当該内径側ラティス構造体74は優先的に変形しようとする。このため、内径側ラティス構造体74が負担する周方向応力が小さくなる。これにより、径方向における周方向応力の分布が均一化されるとともに、回転機械用ディスク41全体の軽量化を図ることが可能となる。
【0051】
(4)第4の態様に係る回転機械用ディスク41は、(2)又は(3)の回転機械用ディスク41であって、前記内径側部材71と前記外径側部材72とを結合する結合部75をさらに有し、該結合部75は、少なくとも径方向及び周方向に延びる複数の梁を有し、前記内径側部材71に一体に結合された中間ラティス構造体91と、前記外径側部材72を形成する前記複合材料の前記基材で形成され、前記中間ラティス構造体91の空隙を埋める結合用基材92と、を有する。
【0052】
上記構成によれば、内径側部材71と外径側部材72とは結合部75によって結合される。結合部75は、内径側部材71に一体に形成された中間ラティス構造体91と、この中間ラティス構造体91に含侵された複合材料の一部の基材とによって構成される。これにより、内径側部材71と外径側部材72とをより強固に結合することが可能となる。
【0053】
(5)第5の態様に係る回転機械用ディスク41は、軸線Oを中心とする環状をなし、前記軸線Oに対する径方向内側の部分を形成し、相対的に密度が低く、かつ剛性が低い第三の材料83で形成された内径側部材71と、径方向外側の部分を形成し、相対的に密度が高く、かつ剛性が高い第四の材料84で形成された外径側部材72と、を備える。
【0054】
上記構成によれば、低密度かつ低剛性の第三の材料83で形成された内径側部材71を有することによって、回転力を加えた場合に、当該内径側部材71は優先的に変形しようとする。このため、内径側部材71が負担する周方向応力が小さくなる。これにより、径方向における周方向応力の分布が均一化されるとともに、回転機械用ディスク41全体の軽量化を図ることが可能となる。
【0055】
(6)第6の態様に係る回転機械用ディスク41は、(5)の回転機械用ディスク41であって、前記第三の材料83は、少なくとも径方向及び周方向に延びる複数の梁を有するラティス構造体76であり、前記第四の材料84は、中実の金属材料である。
【0056】
上記構成によれば、第三の材料83としてラティス構造体76を用いることによって、内径側部材71の低密度化と低剛性化を容易に実現することができる。また、第四の材料84として中実の金属材料を用いることによって、外径側部材72の高密度化と高剛性化を容易に実現することができる。
【0057】
(7)第7の態様に係る回転機械用ディスク41は、(1)から(6)のいずれか一態様に係る回転機械用ディスク41と、該回転機械用ディスク41から径方向外側に向かって延びるとともに周方向に配列された複数のブレードと、該ブレードを外周側から覆うケーシング62と、を備える。
【0058】
上記構成によれば、軽量化された回転機械用ディスク41を有することで、より安定的かつ効率的に運転可能な回転機械を実現することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…ターボファンエンジン
10…圧縮機
11…圧縮機ロータ
12…圧縮機動翼
13…圧縮機ケーシング
14…圧縮機静翼
15…吸気口
20…燃焼器
30…タービン
31…タービンロータ
32…タービン動翼
33…タービンケーシング
34…タービン静翼
35…排気口
40…ターボファン
41…ディスク
42…ファンブレード
43…ディスク本体
44…リブ
50…ダクト
61…ロータ
62…ケーシング
71…内径側部材
72…外径側部材
73…ジョイント
74…内径側ラティス構造体
75…結合部
76…ラティス構造体
81…第一の材料
82…第二の材料
83…第三の材料
84…第四の材料
91…中間ラティス構造体
92…結合用基材
101…径方向梁
102…周方向梁
F…バイパス流路
O…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8